宇宙の騎士テッカマンの最終回

宇宙開発センターで、天地局長により世界会議が開催された。
出席者の各国首脳たちに、外宇宙への出発を可能とするリープ航法メカが公開されている。

天地「ご覧ください。これがリープ航法メカです。スペースナイツが、ワルダスターから苦心して奪い取ったものです」
首脳「まるで生き物ですなぁ」
天地「しかし、これは明らかに人の手によって造られたメカニックなのです。どんなに遠い距離でも、空間を曲げ、一瞬にして飛び越える性能が秘められています。そして今、宇宙開発センターは、このリープ航法メカの量産に成功し、第二の地球発見の可能性を見出しました」
首脳「して、天地局長。第二の地球は一体、どこにあるのですか?」
天地「我々が地球と同じ条件の惑星を、あらゆる角度から検討して出した結果── ご覧ください」

スクリーンに目的地の天体が映し出される。

天地「地球から4.3光年。リープ航法で2週間ほどかかるところに、ケンタウルスがあります。その近くに、大気0.9気圧、酸素含量24パーセント、重力9.5G、主星、つまり太陽から距離、1億7千キロメートルという惑星があります。月こそありませんが、陸と海の比率2分の1。ここなら人類が住める、安全な星だと結論を出しました。そうです、第二の地球です!」



勝利のテッカマン



ワルダスターの攻撃をかわし、
世界会議を開催した宇宙開発センターは、
ついに全人類を第二の地球へ移住させるという
決定を得ることに成功した。

天地「スペースナイツの諸君! 君たちに、重大な任務を与える。宇宙開発センターは、リープ航法の実験に取りかかる。使用する宇宙船は、ブルーアース号。搭乗員はスペースナイツの諸君、君たちだ」
城二「局長!」
天地「城二くん。ついに、君にお父さんがやり残した仕事を受け継ぐ日がきたのだ。しっかり頼むぞ!」
城二「はい!」
天地「ひろみ」
ひろみ「わかってるわ、お父さん」
天地「アンドロー」
アンドロー「あぁ、もちろん承知さ。ムータン!」
ムータン「アンドロー」
アンドロー「いよいよ俺たちも、サンノー星へ帰れそうだな」


天地局長の指示のもと、リープ航法メカがブルーアース号に搭載される。

天地「成功です! リープ航法メカは、ブルーアース号のメカニックと合体、動き始めました」
首脳「やったね、天地くん」
天地「いえ、試練はこれからです。リープそのものがブルーアース号にどのような影響を与えるか、すべては明日の実験によって答が出ます」


城二たちスペースナイツと、一同に憧れる勝少年。

勝「いいなぁ、スペースナイツは…… 人類で初めて太陽系の外へ飛び出すんだもんね」
アンドロー「おい、ワンパク坊主。今度は密航なんからしたら、承知しないからな」
ひろみ「そうよ、勝ちゃん。リープするときに大きなショックがあるらしいの。訓練をしてないあなたには、とても無理なんだから」
勝「わかってるさ、おとなしくしてるよ。おいらだって、実験は成功してほしいからね。でも、やっぱりうらやましいや……」


地球を狙う悪党星団ワルダスター。団長のランボスが、部下の宇宙人たちに檄を飛ばしている。

ランボス「いいか! もはやドブライ様の作戦など待っておれん! わしが命令を出す! 地球人どもはブルーアース号にリープメカをセットした。ブルーアース号が実験を始める前に、この要塞空母で叩くのだ。出撃!」


その夜。城二がセンターの外に出ると、アンドローが夜空を見上げている。

城二「アンドロー?」
アンドロー「城二か? どうした、眠れないのか?」
城二「あぁ。明日はいよいよ、宇宙の果てにブルーアース号がリープする。全人類の運命が俺たちに懸かっていると思うと、とても眠れやしない」
アンドロー「あんまり考え込むな。地球人にとってリープは初めてだろうが、そんなに難しいことじゃない」
城二「お前は、ここで何してた?」
アンドロー「俺か? 星を見ていた」

城二も夜空を見上げる。

城二「珍しい……」
アンドロー「何が?」
城二「今夜は星がきれいだ。いつもは公害に汚れた大気に邪魔をされて、見えることはなかったのに。天の川か…… サンノー星は、どっちの方かな?」
アンドロー「……」
城二「……フフッ」
アンドロー「何がおかしい?」
城二「アンドロー、お前も眠れないんじゃないのか? 明日の実験が成功すれば、お前がサンノー星に帰れる日も近いからな」
アンドロー「……」


ブルーアース号の格納庫。数人の警備員が警護にあたる中、密かに勝が忍び込んでいる。

勝「へへっ。おとなしく待ってるって約束したけど、おいらだってスペースナイツの予備軍だ。黙って引っ込んでられるかい」

赤い光が瞬き、ブルーアース号の中へと入りこむのが見える。
勝が目を凝らすと、それは光体となったワルダスターの宇宙人。

勝「ワルダスターだ! よぉし!」

勝が得意のリモコンメカを、ワルダスター目がけて放つ。

声「ギャアッ!」
警備員「どうした!?」「何の音だ!?」「そこの子供、止まれ!」
勝「違う、違う! おいら、怪しい者じゃないよ。ワルダスターがブルーアース号に忍び込んだんだよ!」
警備員「何、ワルダスターだと!? ──何もないじゃないか、坊や。嘘を言っちゃ、いけないよ」
勝「本当だってば! 今、赤い火がブルーアース号の中に入ったんだよ!」
警備員「坊や!」

警備員2人が勝に詰め寄り、その1人が勝の手を捩じ上げる。

勝「痛っ! ……あっ!?」

その警備員の手、そして顔が、異形の宇宙人と化している。

警備員「坊や、ワルダスターなんか、来ていないんだよ。さぁ、調べたいことがあるから、来たまえ」
勝「くそぉ! お前たちは──」

宇宙人の化けたその警備員が、勝の口を塞ぐ。ほかの警備員たちには、その2人の顔が見えていない。

警備員「安心してください。我々で警備室へ連れて行きますから。皆さんはそのまま、警備をお願いします」
他の警備員「あぁ、よろしく」

宇宙人警備員2人が、勝を連行してゆく。残った警備員たちの1人が、勝のリモコンメカを見つける。

警備員「あの子のおもちゃか」

そこへ、城二とアンドローが顔を出す。

城二「何かあったんですか!? 通りかかったら、騒ぎが聞こえたものですから」
警備員「なぁに、子供が忍び込んだんですよ。大したことじゃありません」
城二「それは!?」
アンドロー「あのワンパク坊主のおもちゃだ!」
城二「ま、勝がどうしてここへ!?」
警備員「いや、何でも、ワルダスターがブルーアース号に忍び込んだのを見たと言って、騒ぎ出したんです」
城二「ワルダスターが!?」
警備員「しかし、ブルーアース号の中には、監視用のレーダーが張ってあります。ハエ1匹侵入してもブザーが鳴るはずです」
アンドロー「いや、もし警備員の中にワルダスターのスパイが入り込んでいたら、当然レーダーを壊しているだろう」


宇宙人2人は、勝をセンターの隅へと連れてゆき、銃を構えている。

宇宙人「フフフ、地球方式でやってやろうか。形式通り、10数えてやるからな。1、2、3……」

勝は壁を背後にし、退路はない。密かにリモコンメカのコントローラーを操作する。
格納庫で、警備員の手にしたリモコンメカが動き出す。

城二「おかしいぞ? アンドロー、念のためにブルーアース号を調べてくれ」
アンドロー「ラーサ!」


宇宙人「8、9、10!」
勝「こんちきしょう!」

勝がコントローラーを宇宙人目がけて投げつける。それと同時に、銃声。
宇宙人は手元が狂い、銃撃はかろうじて勝から外れる。

宇宙人「小僧! 地球方式がお気に召さないのなら、宇宙方式でやってやる!」

そこへ城二が、銃を手にして駆けつける。

城二「待て、ワルダスター! その子を離せ!」
宇宙人「バカめ! 撃てば、この小僧も木端微塵だ!」

宇宙人は勝を盾にする。緊張が走る中、城二は狙いを定め、引き金を引く。


格納庫では、アンドローがブルーアース号の中へ入ると、搭載されたリープ航法メカに、宇宙人たち数人が群がっている。

アンドロー「くそぉ! やっぱりリープ航法メカを狙って!」

アンドローが宇宙人たちに挑み、格闘と銃撃で宇宙人たちを一掃する。


一方の城二たち。宇宙人2人は、城二の銃撃で消滅していた。

城二「宇宙人どもが、君より大きかったから狙撃できた。またブルーアース号に忍び込もうとしたんだな?」
勝「ごめんよ、城二さん。だっておいら……」
城二「君は地球に残ると、俺たちに約束したんだ! 嘘をつくような奴は、スペースナイツに入れるわけにはいかん! 俺たちの仕事は、子供の冒険や遊びじゃないんだ」

突然の砲撃音。そして天地局長の声が響く。

天地『スペースナイツ、スペースナイツ! ただちにブルーアース号に搭乗せよ! ワルダスターが攻撃をかけてきた! 予定時間を繰り上げ、ただちにリープ航法の実験を開始する』

城二「くそぉ、ワルダスターめ!」

ワルダスターの宇宙船群がセンターに飛来。地球防衛軍の戦闘機が応戦している。

ランボス「ブルーアース号を発進させるな! 地球人共の夢と希望を、吹っ飛ばしてやるのだ!」

地球防衛軍では、シュビター長官が指揮をとる。

シュビター「全機、ブルーアース号を援護せよ! 今や、ブルーアース号に全人類の望みが託されているのだ!」


城二たちスペースナイツは、ブルーアース号に乗り込んで発進準備をすすめる。

城二「うまく発進できるといいが」
アンドロー「できなきゃ、地球もサンノー星も終わりよ」
城二「天地局長。ブルーアース号、発進準備完了!」
天地「了解。ブルーアース号は、地球防衛軍が援護する。ただちに発進せよ!」
城二「ラーサ! ブルーアース号、発進!」

ブルーアース号がカタパルトを伝い、空を目指す。ワルダスターの宇宙船が何機も群がって来る。
地球防衛軍の戦闘機が果敢に特攻。ワルダスター宇宙船が撃墜され、そして地球防衛軍機も堕ちてゆく。
そしてついにブルーアース号が空を飛び立つ。成層圏を突破。
衛星軌道上に待機している光子ロケットとドッキングを果たす。

城二「天地局長。ブルーアース号、ドッキング完了しました。ただし…… 地球防衛軍兵士の多大な犠牲を払って……」
天地「城二くん。彼らの尊い犠牲のためにも、ぜひとも実験を成功させてほしい。いいか? これから君たちが旅するケンタウルスは、まったく未知の世界だ。何が起きるか、どんな恐怖が待っているか、それはわからない。わかっていることは、君たちの任務に全人類の希望が託されているということだけだ。そのためには、言いにくいことだが…… 城二くん、アンドロー、ひろみ。君たちの中で、たとえ誰かが傷ついて倒れても、感傷に溺れず、屍を乗り越えて任務を全うしてほしい」
城二「わかっています、局長。スペースナイツは全員必ず、第二の地球を見つけて帰って来ます!」
勝「城二さん!」
城二「勝か」
勝「城二さん、成功を祈ってるよ。必ず帰って来てよ!」
城二「心配するな、勝! 帰って来たら、お前をスペースナイツのメンバーにするためにも、猛訓練して鍛えてやるから、待ってろよ! ──ブルーアース号、リープ始動!」
アンドロー「ラーサ!」
ひろみ「リープ5秒前! 4秒、3秒、2秒……」

激しい衝撃音。目の前に、ワルダスターの要塞空母が出現する。

ランボス「逃がしはせんぞ、スペースナイツ! リープできるなら、やってみろ!」
アンドロー「まずい…… ブルーアース号がリープするには、5秒の間がある。狙われたら木端微塵だ」

要塞空母から、ワルダスターの宇宙船が無数に出撃して来る。

城二「よし。ここは俺が、テッカマンが引き受ける!」
アンドロー「城二!?」
城二「天地局長の言われた通りにするんだ! 俺が奴らを引きつけている間に、リープしてくれ」
ひろみ「城二さん!? そんなことをしたら、あなたは……」
城二「心配するな、ひろみ。テッカマンは不死身さ。必ず第二の地球を見つけて、帰って来てくれよ。ペガス!」
ペガス「ラーサ」
城二「テックセッター!」

ブルーアース号からペガスが出撃。城二の変身したテッカマンが姿を現す。

ランボス「やはり出てきよったな、テッカマンめ。それっ! 今日こそ叩きのめしてやれぇ!」

テッカマンが単身、宇宙船群との戦いを繰り広げる。
長槍テックランサーが宇宙船を仕留め、ペガスも怪力で宇宙船を倒してゆく。

ひろみ「城二さん!?」
アンドロー「ひろみ、リープだ」
ひろみ「だって、アンドロー……」
アンドロー「城二の気持ちを無駄にするな。何のために奴は、群がるワルダスターの中に飛び込んでいった? 地球のため、サンノー星のため、あそこで戦っている城二のため、今、俺たちがしなくてはならないことは、わかっているだろう? ひろみ」
ひろみ「……」
アンドロー「大丈夫だ。テッカマンは、敗れはしないよ。地球防衛軍だって援護してくれるさ」
ムータン「ひろみさん、大丈夫。テッカマンは不死身だって、城二さんも言ってたじゃない
アンドロー「さぁ、リープするぞ!」

リープ航法メカが作動。遥か宇宙の彼方をめざし、ブルーアース号が虚空に姿を消す。

テッカマン「やった! ブルーアース号がリープしたぞ!」

テッカマンは1人、ペガスとともに宇宙に取り残される。

テッカマン「ひろみ、アンドロー。頼むぞ! 必ず、第二の地球を捜して来てくれ!」

ランボス「何をしておる!? ブルーアース号がリープしてしまったではないか! こうなったら、せめてテッカマンを倒せぇ! そうしないと、そうしないと…… わしゃ、ドブライ様のもとに帰れなくなっちまうんだよぉ~」

要塞空母から、宇宙船が次々に出撃して来る。

ランボス「行けぇ! 行けぇ!」

テッカマンとペガスの活躍により、ようやく宇宙船群が一掃される。
しかし、すでにテッカマンは疲労困憊し、息を切らしている。もはや、帰還する場所もない。

テッカマン「はぁ、はぁ…… ペガス!」
ペガス「ラーサ」
テッカマン「要塞空母に突っ込むぞ! 今日こそ、ランボスと決着をつけてやる! 行け、ペガス!」

ランボス「こ、来い、テッカマン! 今日は逃げんぞ! 決着をつけてやる」

テッカマンがペガスを駆り、要塞空母目がけて突進してゆく。



ブルーアース号が
第二の地球を発見することを信じて
今テッカマンは、要塞空母に突入した。
待っているのは、生か死か。

人類の勝利を信じて
行け、テッカマン! 宇宙の騎士!!


テッカマン「うぅおおぉぉ──っっ!!」


(終)

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最終更新:2017年03月16日 05:55