雷鳴轟く荒野で、巨大な竜とフードを被った男が相対していた。
竜は火炎弾を吐くも、左手に紋章を浮かべた男は火炎弾をかいくぐって、竜へ突っ込んで行く。
頭上へと飛んだ男へ、竜は炎を吐くも、
男は炎を押しのけながら竜へ突っ込んで行き----大爆発。
男が、竜のいた場所に出来たクレーターの傍に下りる。
男「駄目だな・・・・俺の紋章にもう成長の余地はない・・・・」
(俺の紋章、第一紋は生産に特化している。ちなみに第二紋は威力特化型、第三紋は連射特化型の紋章だ。
俺がこれ以上強くなるには、魔法戦闘に最も適した第四紋を手に入れるしかない。
紋章は生まれつき決まって、変更は不可。だったら!)
男が光に包まれ、その頭上に浮かんだ魔法陣の元へ飛んでいき----
第1話 最強賢者、現る
馬車に乗った少年、マティアス=ヒルデスハイマーは、自分の左手に浮かんだ第四紋を見て、笑みを浮かべる。
御者「間もなく王都に到着しますよ。いやー12歳なのにもう領地から出て入学試験ですか」
マティアス「うん。早く学園に入って、強くなりたいんだ」
御者「焦りは禁物です。いくら故郷で強かったとしても、坊ちゃんの紋章は」
マティアス(!)
「近くに魔物がいるよ。こっちに向かってきてる」
御者「え?」
マティアス「結構でかい魔物だと思う。この馬車の何倍もあるかも」
御者「はっはっは、面白い事を言いますね。そんなの天災級の魔物じゃないですか」
馬が止まる。
御者「ん?」
馬車の前に人と虎を掛け合わせた様な姿の巨大な魔物が出て来た。
御者「ひぃぃい・・・・」
御者が目をつむるも、その間に轟音が響いた。
マティアス「討伐完了」
御者が目を開けると、マティアスが剣を収め、魔物が倒れていた。
マティアス「この程度の魔物なら、身体強化と斬鉄で何とかなるか」
御者「・・・・・・・!」
馬車は王都に着き、マティアスは御者と別れた。
マティアス「さすが王都だな。うちの領地とは大違いだ」
?「友達の剣が折れちゃって!どうか同じものを作ってくれませんか!」
マティアス「?」
マティアスがその声が聞えた店に入る。
その店は鍛冶屋で、少女が店主と揉めていた。
店主「そんな大声出さなくたって聞えてるよ!」
少女「あー、ごめんなさい・・・実はその子、魔物からボクを守るために魔剣を折っちゃって!」
店主「魔剣だぁ!?それと同じものを作れって!そいつは無理な注文だ」
少女「そこを何とかお願いします!」
店主「無理なことを言われてもな・・・・」
マティアスはもめ事を尻目に、並べられた武器を見る。
マティアス(この武器、質がいいな。魔法の付与は下手だけど。他に剣は・・・)
店主「やっぱ無理なもんは無理だ」
少女「お願いします!入学試験は明日なんだ!このままじゃ友達が!」
店主「そんなに急いでいるなら他を当たった方がいいんじゃないか?それに魔剣は、一人で打てる物じゃねえんだ」
少女「ここが最後の店なんだ!」
店主「この店の剣じゃダメなのか?」
少女「うーん・・・」
「このくらいの長さで、女の子が片手でブンって!振れるような奴なら!」
店主「た、確かに、そんな代物は魔法を付与してないと使い物にならないな。だが相当難しい」
マティアス「魔法の付与なら出来るよ」
少女「君それ本当?」
店主「いやいや、カッコ付けたいのは分かるが、出来ないことを出来ると言っても仕方ないぞ」
マティアス「確かに、この第四紋は魔法付与には向いてない。けど、ちょっとした魔剣くらいなら」
店主「あんた、失格紋じゃないか。だったら尚更無理な話だ」
少女「ボク、剣を注文するよ」
店主「え?」
少女は青い魔石を取り出した。
少女「この魔石が入る穴をお願い」
店主「まさかそれって」
少女「ボクは彼に賭ける事にするよ」
店主「いいのか?失敗しても剣は使えるが、魔石はパーだぞ」
少女「でも、出来る気がするんだよね。ボクの勘は結構当たるんだよ。だから少年、付与は任せた」
少女とマティアスは別室で待っていた。
少女「あ、そう言えば自己紹介がまだだったね」
アルマ「僕はアルマ。アルマ=レプシウス。親に変な所に嫁がされるのがいやで、領地から出てきました」
マティアス「俺はマティアス。マティアス=ヒルデスハイマー、マティとでも呼んでくれ」
アルマ「うん!よろしくね!マティくん」
アルマがマティアスの手を取り、マティアスは顔を赤らめた。
マティアス「・・・・・!」
アルマ「そうそう!剣の持ち主で私と一緒に領地から出て来た友達がいるんだけど!」
「アルマ」
アルマ「あっ、噂をすれば。ルリィ!」
ルリィ「アルマ、このお店はどうでした?」
少女ルリィが部屋に入ってきた。
マティアス(か、可愛い・・・・!)
ルリィ「私が当たったお店は駄目でした。やっぱり明日までに魔剣は・・・」
アルマ「あ、この人はマティ君。何と僕達のために剣に魔法を付与してくれる人です」
マティアス「ご、ご紹介に預かりました!マティアス=ヒルデスハイマーです!」
アルマ「どうして丁寧語になってるの・・・・?」
ルリィ「あ・・・・・」
マティアス(う!?今の自己紹介気持ち悪がられたか!?友達なんて出来たこと無かったから!)
アルマ「どうしたのルリィ?」
ルリィ「・・・・! わ、私はルリィ=アーベントロートです!婚約者や彼氏はいません!出来れば、ルリィって呼んでいただけると・・・」
マティアス「彼氏?」
ルリィ「え?あの、その・・・・」
マティアス(俺が知らないだけで、ここでは彼氏の有無を伝えるしきたりがあるのか)
店主「出来上がったぞ!」
マティアス「じゃあ付与を始めようか。魔石を貸してくれる?」
アルマ「え!?ここでやるの?」
マティアス「このくらいならすぐだから」
マティアス「いくよ」
ルリィ「お、お願いします」
マティアスが剣の束に魔石を入れた。
マティアス(この長さと軽さなら、実用に耐えられるように強靱化と斬鉄をかければ)
剣に2つの魔法陣が浮かんだ。
マティアス「まあこんなものか。試してくれ」
アルマ「早っ!?」
店主「いくら何でもこんな短時間で・・・」
アルマ「そうだよ!普通だったらもっと時間がかかるはず・・・」
店主「しかも、呪文を詠唱してないだろ・・・・」
ルリィ「実際に試してみましょう。付与がかかっているかどうかは、簡単に分かり・・・・」
ルリィが剣を持って行こうとするが、軽く引いただけで机を真っ二つに切った。
ルリィ「付与が、かかっています・・・・」
アルマ「何この切れ味・・・」
店主「たった数秒で・・・・・どんな手品を使ったんだ・・・・」
マティアス「普通に付与しただけだぞ」
アルマ「これを普通とは言わないよ!一体何者なのマティ君って・・・・」
店主「流石にあんな一瞬での付与は無理だ・・・だが実際には剣には魔法が付与されてるし、詠唱もしてない。
俺が打った剣だからすり替えられていてもすぐ分かる・・・そこから導かれる結論は・・・」
アルマ「ゴクリ・・・」
ルリィ「結論は・・・」
店主「坊主、魔法付与師にならないか?」
マティアス「ならないよ」
翌日、第二学園。
試験官「続いて実技試験を始める。実技は剣術と魔法になる」
受験生たち「「「はい!」」」
ルリィ「マティ君ー、マティ君も入学試験受けてたんですね」
マティアス「う、うん」
アルマ「戦術学が難しすぎだよ~・・・他の教科は全部出来たのに・・・」
ルリィ「アルマも、マティくんも一緒に合格目指して頑張りましょう」
マティアス「ああ」
アルマ「うん・・・」
試験官の剣をルリィは飛び退いてかわした。
試験官「隙だらけだ」
ルリィが試験官の剣を弾いた。
試験官「中々頑張るじゃないか。だが次は、かわせるかな!」
試験官が剣を構えるも、剣は折れていた。
試験官「あ、あ、あれぇ!?」
その隙に、ルリィが試験官に剣を突きつける。
試験官「降参だ・・・何なんだその剣は・・・・」
ルリィ「やりましたよ、マティ君」
アルマ「おめでとうルリィ!」
ルリィ「マティ君の剣のお陰です」
マティアス「いや、それは・・・」
試験官「次、マティアス・ヒルデスハイマー」
マティアス「やっと俺の番か」
ルリィ「ガンバってね、マティ君」
マティアス「ああ」
マティアス「て、あれ、試験官は?」
マティアスの相手は、ガイルという男だった。
ガイル「マティアス=ヒルデスハイマー、ルリィ=アーベントロートの剣に魔法を付与したのはお前だそうだな?」
マティアス「そうですけど、誰?」
ガイル「試験官では生ぬるい。俺が相手になってやる。お前の父、カストルが仕込んだ実力を確かめたい」
マティアス「父さんの知り合い?」
ガイル「ああ、俺を相手に善戦すれば、他の結果に関係なく合格を進言してやる」
マティアス「分かりました」
ガイルを剣を構える。
マティアス(構えが隙だらけだ。明らかに手加減をするつもりだな。先程の善戦すればという言葉もそうだが、少し、舐めすぎだな)
マティアスがガイルに突っ込んで行く。
ガイル「フッ」
マティアス(これは試験だ。正面から実力を認めさせた上で!)
ガイル「なっ!」
マティアスとガイルが剣を打ち合わせる。
ガイル「なに!俺の剣をその身体で!?」
マティアスは更なる魔法を付与し、ガイルと切り結ぶ。
やがてガイルの剣が弾き飛ばされた。
ガイル「降参だ・・・・」
試験官「騎士団長のガイル様が負けた・・・・」
アルマ「凄い!やったねルリィ!」
ルリィ「はい!何が起きたのか早過ぎてよく見えませんでした!」
試験官「続いて、魔法試験を行う!ルリィ=アーベントロート、前に」
ルルィ「はい!」
試験官「では、ファイヤアローでこの5つの的を全て攻撃して下さい」
ルリィ「我が身体に満ちる火の魔力よ!一筋の矢となりて我が前の敵を穿て!」
ルルィのファイヤアローが的を射抜いた。
アルマ「ルリィ!その調子だよ!」
マティアス「詠唱魔法か」
(その名の通り、特定の呪文を詠唱し、発動する魔法。術者の能力に関係なく使えるが、効果に対しての魔力の変換効率が非常に悪いし、詠唱中に攻撃されたら終わりだ。戦闘向きじゃない。とっくに廃れていると思ったが・・・)
そうしてる内にルリィは全ての的を壊していた。
ルリィ「やったぁ!」
受験生たち「さすが栄光紋!、エリートだな」
「俺も栄光紋に生まれたかったぜ」
マティアス(だがこの時代では、詠唱魔法と相性が良い第一紋、通称栄光紋が魔法戦闘に最も適した紋章とされている。
そして俺の持つ第四紋は・・・)
マティアス「あの、ファイヤアロー以外は禁止ですか?」
試験官「そういう訳ではありませんが、一番基本的な魔法なので。あ・・・失格紋でも他の科目が良ければ合格できるかもしれませんよ」
マティアス「ようは的を壊せばいいんですよね」
試験官「あ、はい」
マティアス(失格紋の魔法は極端に射程が短い。あの的の三分の一の距離にも届かないだろう)
「・・・・先生、もう少し離れた方がいいですよ」
試験官「え?」
マティアス「一応、指向性は持たせますが、完全に、とは言えないので」
マティアスが左手から魔法陣を浮かばせる。
アルマ「な、なんで魔法が!?詠唱してないのに!」
ルリィ「もしかして、無詠唱魔法!?」
マティアス(無詠唱魔法が衰退し、第四紋が失格紋だと蔑まれる。それがこの時代の常識だ!)
マティアスが放った火球は、大爆発を起こし、その余波で的を吹き飛ばした。
マティアス「あれ・・・ちょっとやりすぎたか・・・?」
後日。マティアスが支給された制服に袖を通した。
マティアス「うん、サイズはピッタリだな」
アルマ「マティくーん!」
ルリィとアルマも制服を着ていた。
マティアス(制服姿も可愛い・・・)
アルマ「どうしたの2人とも?」
ルリィ「あ、いやその・・・」
マティアス「ほら急がないと入学式始まるぞ!」
教師「続いて、本校校長の挨拶となります」
エデュアルト「私が校長のエデュアルトだ!私は長い話は嫌いだ。格式ばった話は第一学園に任せておこう!」
アルマ「あの人が校長先生・・・・」
エデュアルト「我が第二学園は実力が全てだ!第一学園とは違い、ここでは家柄も紋章も関係ない!ひよっ子諸君、力を磨け!以上だ!」
ルリィ「ほんとに短かったですね・・・」
エデュアルト「言い忘れていた。マティアス=ヒルデスハイマー、これが終わったら校長室に来るように」
マティアス「え・・・」
マティアスは校長室のドアをノックしようとして、止まる。
マティアス(どうして校長に呼ばれたんだ・・・・試験で校庭を破壊したせい?まさか入学初日から退学!?でもちゃんと魔法で修復したし・・・)
エデュアルト「早く入れマティアス」
マティアスの後ろにエデュアルトが立っていた。
マティアス「はい・・・・」
校長室で、マティアスは教師達に囲まれていた。
マティアス(や、やっぱりこれは・・・)
エデュアルト「マティアス=ヒルデスハイマー、君は剣術試験で騎士団長を倒し、魔法試験では無詠唱魔法を難なく使って見せた。
カストルの息子だとしてもその歳でこれだけの力を身に付けているという事は、何か特殊な事情があるのだろう。
そこを詮索するつもりはない。ただ少し協力を頼みたくてな」
マティアス「協力ですか?」
エデュアルト「ああ、君は生徒達が詠唱魔法を使うの見たろ」
マティアス「はい・・・どうしてあんな非効率なことを?無詠唱魔法の方が効率的じゃないですか」
エデュアルト「ふっ、非効率か。・・・残念だがマティアス、無詠唱魔法は失われた魔法技術なのだ」
マティアス(やはりそうか・・・・)
エデュアルト「使える人間がこの国に存在するのかどうか・・・第二学園では失われた無詠唱魔法の技術を復活させ、生徒にも教えたいと思っているのだが・・・」
マティアス「俺も賛成です!」
エデュアルト「そこに邪魔が入ってな」
マティアス「邪魔?」
エデュアルト「ああ、王都にあるもう1つの学園、王立第一学園だ。実績のある第一学園の教えは貴族に支持されている。今は我々も従うしかない状況なのだ」
マティアス「実績、ですか」
教師「これは、第一学園の研究成果です」
マティアスは第一学園の研究成果が書かれた書物を見たがーーーーー
マティアス「これが実績?詠唱魔法の事しか書かれてないのに・・・」
エデュアルト「今の学会では魔法の研究は詠唱魔法のことを指し、無詠唱魔法は認められてない」
マティアス「認めさせるには?」
エデュアルト「学園の選抜生徒が戦う対抗戦に出て、無詠唱魔法の力を見せつけるしかないだろうな」
マティアス「もしかして、それが俺に求める協力ですか」
エデュアルト「ああ!どうか我々に無詠唱魔法の技術を伝授してほしい。マティアス!お願いできるか」
マティアス「・・・分かりました」
教師達「「「おおっ!」」」
教師「これから授業を始めます。今日行うのは、無詠唱魔法です」
生徒たち「無詠唱魔法!?」
「そんな魔法あるんですか?」
「聞いたことないぞ」
教師「疑うのも無理はありません。なので、本日は特別講師である彼に教えて貰いましょう」
マティアスが生徒達の前に出て来た。
生徒「彼って確か、今回の試験に首席で合格した・・・」
アルマ「そう。マティ君です」
ルリィ「アルマが自慢しなくても」
教師「マティアス君。早速ですが、無詠唱魔法を実演して貰ってもいいですか」
マティアス「わかりました」
マティアスは魔法を発動させて飛び上がり、空中からの火球で的を撃ち抜いた。
生徒たち「無詠唱魔法・・・」
「本当に詠唱してなかった・・・」
「あいつ失格紋だろ・・・本当は魔族なんじゃないか・・・?」
教師「無詠唱魔法はマティアス君にしか使えないものではありません。ガイゼル先生」
ガイゼル「おう!」
ガイゼル「ぬん!」
「ぬんぬん!」
ガイゼルは剣を振るって火球を放ち、二発外しながらも、三発目で的を壊した。
ガイゼル「魔法が殆ど使えない俺だが、マティアスの指導の結果、たった1日でここまで出来るようになった」
教師「では各自、実践してみましょう」
生徒達「「「はい!」」」
アルマ「マティ君!出来る様になったよ!」
マティアス「本当か?」
アルマ「うん、やってみせるね」
アルマ「ぬん!ぬん!ぬぅん!」
アルマはガイゼルと同じかけ声で、火球を放っていた。
アルマ「どう?ボクの魔法は」
マティアス「かけ声までまねる必要は無いぞ」
アルマ「え」
マティアス「ルリィ、どうだ?」
ルリィ「感覚は何となく掴めてきたんですが、詠唱魔法の癖が抜けなくて・・・あ、魔力が切れちゃったみたいです」
「みんな・・・上達してますね。無詠唱のすごさを知ると、どうして詠唱魔法しか使われなくなってしまったのか、不思議に思います」
マティアス(確かにそうだ。無詠唱魔法が衰退した原因は一体・・・?)
ルリィ「マティ君?」
マティアス「・・・そうだ、手出して貰ってもいい?」
ルリィ「はい」
マティアスはルリィの手を取った。
ルリィ「あっ・・・・マ、マティ君・・・・」
マティアス「あ、えと、これは・・・魔力を渡すにはこうする必要があって・・・」
ルリィ「魔力って、渡せるんですか?」
マティアス「対象と魔力を同調させる魔法を使う。本来は付与魔法に使うものなんだが・・・」
ルリィ「付与魔法・・・」
やがてルリィも無詠唱魔法を発動できた。
ルリィ「やった!出来ましたよマティ君!」
マティアス「その調子だ」
マティアス(こうして俺は無詠唱魔法を生徒達に指導していった。そして一ヶ月が過ぎ)
アルマ「いよいよだね!」
ルリィ「今年は、魔法の申し子がいないといいんですが」
マティアス「魔法の申し子?」
ルリィ「とてつもなく強い第一学園のリーダーのことをそう呼ぶそうです。第二学園が勝てそうな年があっても、そのたびに魔法の申し子が現れて・・・」
アルマ「確か、先代の魔法師団長もそうだったはずだよ」
マティアス「どうやらそいつがいるみたいだ。魔力量は俺のだいたい10倍ってとこか」
ルリィ「10倍!?マティ君の!?」
アルマ「それって魔族級の力じゃん!」
マティアス(魔族!)
「そう言えば、魔族って人類と敵対してるんだよな」
ルリィ「勿論です!人類最大の驚異と言えば魔族です!」
アルマ「宮廷魔道士が束になって戦っても、倒せないんでしょ・・・・」
ルリィ「でも、どうして急に?」
マティアス「いや、ちょっと気になっただけだ」
マティアス(魔族か・・・この時代にも生きていたのか・・・)
マティアスは1人、競技場に出て来た。
相手の第一学園の代表は、レイシス、ギアース、そしてデビリスの3人だった。
レイシス「おい見ろ、失格紋が来たぜ」
ギアース「はっはっは!失格紋がたった1人で来たぜ」
レイシス「おいおい、仲間はどうした?おじけついてみんな逃げちまったのか?」
ギアース「失格紋!魔法の申し子デビリス様の力にひれふせ!」
第一学園教師「校長、第二の方が勝つ事を諦めたようです」
第一学園校長フェイカス「ふ、これで65連勝だな」
第二学園教師「頼んだぞ、マティアス君・・・」
デビリス「どうした!何も言い返せないのか?魔法の申し子である私の、栄光紋に怖じけついたか?」
レイシス・ギアース「「はははははは!」」
マティアス(やはりそうだ、こいつは人間じゃない。魔族だ!)
(偽装魔法を使って、姿を偽っているだけだ。紋章も人類に潜り込むための小細工)
審判「ではこれより、第六五回王立学園対抗戦を行う!はじめ!」
レイシス・ギアース「「我が身体に満ちる火の魔力よ・・・・え!?」」
レイシスとギアースが詠唱魔法を発動させようとするが、
その前にマティアスが火炎魔法を撃った。
レイシスとギアースは倒れ、デビリスは無詠唱で発動させた防御魔法で防いでいた。
審判「れ、レイシス!ギアース!共に失格!」
デビリス「こしゃくな!」
デビリスは無詠唱で火球を出した。
デビリス「あ・・・我が身に満ちる・・・」
マティアス(かかったな!こいつは詠唱する前に魔法を発動させた)
第一学園教師「あれ、今、詠唱前に魔法が・・・・」
フェイカス「・・・・・!」
第二学園教師「さっきの防御魔法と言い、彼は・・・・?」
マティアス(つまり、詠唱の振りをしているだけだ)
デビリス「穿て!」
デビリスがおなざりな詠唱で放った火球をかいくぐり、マティアスは剣を抜きデビリスに向かって行く。
マティアス「魔族の弱点は首!」
マティアスの剣を、デビリスは飛び退いてかわした。
マティアス「おい、詠唱はどうした?」
デビリス「ちっ、炎よ!」
デビリスが放った炎をマティアスはかわす。
降りてきてデビリスとマティアスが切り結ぶ。
マティアス(これではっきりした。魔法を使える魔族詠唱の振りをする。無詠唱魔法を衰退させたのは、魔族だ!)
マティアスが飛び退いた。
マティアス(魔族にとって人類の魔法は弱い方がいい。だから以前にも第一学園に潜り込み、第四紋が失格紋と呼ばれるように細工をしたのだろう)
マティアスが剣に魔法を付与する。
デビリス「くっ!炎よ!」
デビリスが火炎を放つも、マティアスは剣で切り払う。
デビリス「まさか!どうしてここまで強いんだ!」
マティアス「お前の戦闘が、下手なんだよ!」
マティアスの剣が、デビリスの脇腹を切ると、
デビリスはその姿を変えだした。
ルリィ「何が・・・起こってるの・・・・?」
デビリス「まさか・・・魔法破壊とはな・・・」
マティアス「ああ、お前に気づかれない様に魔力隠蔽も同時に付与しておいた」
デビリスは翼と角を生やした異形の姿となっていた。
生徒たち「おい!あれっ!」
「ま、まさか・・・デビリスが・・・」
「な、何が・・・・何が起こってるの・・・」
フェイカス「ま、まさか・・・デビリスは魔族・・・・!?」
エデュアルト「王宮に連絡を!生徒は直ちに避難だ!」
マティアス「さあ、どうする?」
デビリス「くそう!」
デビリスが放った火球をマティアスは防御魔法で弾いたが、
弾いた火球が競技場の壁を砕き、
マティアスがそちらを見た隙にデビリスは逃げようとする。
マティアス(撤退する魔族は全力飛翔を使う。翼を展開してから、離陸するまでおよそ1秒半。
付与に0,8秒。残り0、7秒)
「楽勝だな!」
マティアスが、デビリスの翼を切り裂いた。
デビリス「ぐあっ!」
マティアス「これで終わりだ」
マティアスの斬撃が、デビリスの背中を切り裂いた。
デビリス「がああぁ!!」
エデュアルト「魔族を倒したのか!?たった一人で・・・・」
マティアスは付与の反動で壊れた剣を見やる。
マティアス(学園の中に魔族が紛れ込むとは・・・
魔族は前世の俺、賢者ガイアスが絶滅寸前まで追い込んだはずなのに・・・
どうやら今の世界の状況はかなり深刻みたいだな・・・)
(続く)
最終更新:2023年07月06日 15:01