前話で、地球滅亡を目論んでいたバズド星人アガムスは、ついに復讐心から解き放たれる。
そして、地球全体を覆っていたスフィアバリアは消滅する。
喜びも束の間、最強のスフィア獣、マザースフィアザウルスが出現する。
アガムスが電脳魔人テラフェイザーでマザーに挑むものの、力及ばす消滅してしまう。
カナタはウルトラマンデッカーとなり、
ウルトラマントリガーと共にマザーに挑むが、敗北を喫する。
そして変身アイテム・ウルトラDフラッシャーも消滅してしまう──
ナースデッセイ号の一室で、リュウモン、イチカ、ハネジロー(HANE2)、ウルトラマントリガーことケンゴ。
ケンゴ「スフィアメガロゾーアと戦ったとき、僕と接触してエタニティコアの存在に気づいた。そして、月で記憶を調べた……」
リュウモン「ゲートは失われ、もう誰もエタニティコアに触れることができなくなったはずでは?」
HANE2「自らの時空を超える能力を利用しているようです。火星でもソルジャーの攻撃が激しくなり、身動きがとれないと報告が入っています。それに──」
リュウモン「カナタのことか……」
HANE2「体内にスフィア因子が蓄積しているようです。このままでは、命の危険が……」
カナタが憔悴しきった様子で、現れる。
カナタ「た、戦う方法は…… まだあるはずだ!」
イチカ「カナタ!?」
リュウモン「戦うって…… 一体、どうやって!?」
ケンゴ「その体じゃ、またウルトラマンになれるかどうか!?」
カナタ「アガムスが言ってた。マザーには、弱点があるって」
司令室で、ムラホシ隊長の負傷を、サワが介抱している。
カナタやリュウモンたち一同が現れる。
リュウモン「マザースフィアの弱点がわかりました」
リュウモンがムラホシに、テラフェイザーの操縦アイテム・フェイズライザーを渡す。
リュウモン「その中に、データが入っていたんです。胸部のコアを破壊すれば、マザースフィアの活動を止めることができます」
ムラホシ「今の戦力で…… いえ、地球の科学力で可能なのですか?」
リュウモン「不可能です。しかし、ウルトラマンなら」
サワ「ウルトラマンたちも、マザーに勝てなかったんじゃ?」
リュウモン「我々も協力して、作戦を行います」
ムラホシ「ウルトラマンたちと、どうやって作戦の共有を?」
カナタ「俺が…… ウルトラマンデッカーです!」
ムラホシとサワが、その言葉に衝撃を受ける。
サワ「何を言ってるの……!?」
ムラホシ「──ひとつ、聞かせてください。アスミ隊員。最近のあなたの体調不良は、ウルトラマンであることと、関係あるのですか?」
カナタ「……」
ムラホシ「そうなのですね? もしこの作戦が、あなたの命を左右するというなら、上官として簡単に許可を出すわけには──」
カナタ「それでも! 自分たちが今やるべきことはこれだって、みんなで決めました!」
イチカ「決めてない……」
イチカの目に涙が混じり、声も涙声になっている。
イチカ「決めてない。私、決めてないよ」
カナタ「……」
イチカ「だってカナタ、死んじゃうかもしれないんだよ! 決められない…… そんなの決められないよ!」
カナタ「イチカ……」
イチカ「どうして? どうしても何も言ってくれなかったの!? 言ってくれないと分からないよ! カナタは1人で戦って、1人で苦しんで…… なのに、なのに私、何も……」
カナタ「違うって、イチカ。俺は、1人だなんて一度も思ったことない」
イチカ「……」
カナタ「GUTS-SELECTに入ってから、いや、訓練校に入ってから! ずっとお前が一緒にいてくれた。お前が、みんながいてくれたから、戦ってこられたんだ」
カナタが力強く、イチカの肩に手を置く。
カナタ「大丈夫! 今度もぜってぇ負けねぇよ!」
イチカ「カナタ……」
サワ「仲間だから…… 心配を、かけたくなかったんじゃない?」
ムラホシ「訓練校時代、アスミ隊員の成績は最下位でした。1年遅れで訓練を始めて、ついていくだけでも精一杯だったはずです。知っていましたよ、あなたが1人で特訓しているのを。だからチームに必要だと思ったんです。リュウモン隊員は見つめる天才。キリノ隊員はまっすぐの天才。そしてアスミ隊員、あなたは努力の天才ですから」
カナタ「本当に…… いいチームに成長しましたね」
ムラホシ「それでリュウモン隊員、作戦というのは? ファルコンとホークの修理は進んでいますが、ナースデッセイ号は戦闘不能、テラフェイザーも動かすのがやっとのはずです」
リュウモン「これです」
リュウモンがムラホシに、タブレットを渡す。
ムラホシ「!?」
カナタ「マナカさんが、ウルトラマントリガー!?」
カナタ「イェ──イ! 大成功! 驚きました!?」
ケンゴ「もう、カナタくんがどうしてもって……」
リュウモン「俺は反対しました」
カナタ「怒らないでくださいね、ほら、スマイル・スマイル!」
イチカ「調子に乗らない!」
サワ「あなたたちに一本取られるとは……」
ムラホシ「……いいでしょう、作戦を承認します! 指揮はあなたに一任します。リュウモンソウマ、隊長代理!」
リュウモン「……はい!!」
イチカが、修理の終わったGUTSファルコンの前に立つ。
カナタとリュウモンが並ぶ。
カナタ「いいこと教えてやるよ、イチカ。ファルコンは元々無人機だから、乗り心地は最悪なんだ!」
イチカ「……TPU訓練校、宇宙開発科を舐めんな!」
イチカが笑顔でサムズアップを決める。
カナタとリュウモンも、サムズアップを返す。
リュウモン「GUTS-SELECT、出動!!」
一同「ラジャー!!」
イチカの乗るGUTSファルコン、リュウモンの乗るGUTSホークが宙を舞い、マザースフィアザウルスに立ち向かう。
スフィアソルジャーたちが群がって来る。
リュウモン「来たぞ、しっかりついてこい!!」
イチカ「ラジャー、援護お願いね!!」
GUTSファルコン、ホークが、スフィアソルジャーたちを次々に撃破する。
リュウモン「今です、マナカさぁん!!」
ファルコンからケンゴが、体1つで宙に飛び出す。
ケンゴ「うおぉぉ──っ!!」
ケンゴが一気に、グリッタートリガーエタニティに変身して、大地に降り立つ。
トリガーがマザースフィアザウルスの胸を目がけて、五指を突き立てる。
マザーからの攻撃が次々にトリガーに突き刺さるが、トリガーは手を緩めない。
ケンゴ「う…… うおぉぉ──っ!!」
リュウモン「マナカさんが吸収した、エタニティコアのエネルギーを光に変換して…… 今だ、カナタぁ!!」
カナタは1人、地上に立っている。
カナタ「うおぉぉ──っ!!」
カナタが叫びと共に駆け出す。
群がるスフィアソルジャーを、GUTSファルコンとホークが蹴散らす。
トリガーが全身にエネルギーを漲らせつつ、跳躍する。
ケンゴ「受け取れぇ──っ!!」
トリガーがエタニティコアの光を、地上のカナタ目がけて放つ。
カナタが跳躍して、そのエネルギーの奔流の中へと飛び立つ。
カナタの手に、消滅したはずのウルトラDフラッシャーが、再び現れる。
変身の解除されたケンゴが、カナタと交錯する。
カナタ「ケンゴさぁ──ん!!」
ケンゴ「カナタくぅ──ん!!」
ケンゴ「頼んだよ!!」
カナタ「はい!! デッカァァ──ッッ!!」
音声『Ultraman Decker, Dynamic Type !』
カナタが一気にウルトラマンデッカー・ダイナミックタイプに変身して、大地に降り立つ。
イチカ「やった……!」
リュウモン「いっけぇー! カナタ!!」
マザーの放つ破壊光線を、デッカーがシールドカリバーで防御する。
強力な光線の前に、デッカーが次第に押されてゆく。
リュウモン「ハネジロー、テラフェイザー起動!!」
HANE2「ラジャー!」
HANE2の乗ったテラフェイザーが再起動、押されるデッカーを支える。
カナタ「ハネジロー!」
HANE2「任せろ、カナタ!」
デッカーが光線を薙ぎ払う。
リュウモン「いけぇぇっ!!」
イチカ「カナタぁ!!」
デッカーとテラフェイザーが共に、マザー目がけて突進する。
カナタ「集めたエネルギーを、マザーに!!」
デッカーが、シールドカリバーにエネルギーを漲らせ、マザーを斬りつける。
テラフェイザーも加勢する。
しかしマザーの攻撃の前に、デッカーとテラフェイザーが倒れる。
デッカーの強化変身も解除され、基本形態のフラッシュタイプに戻ってしまう。
さらにデッカーのカラータイマーが点滅して、エネルギーの消耗を知らせる。
マザーがさらに、デッカーたちに迫る。
あわやというとき、ナースデッセイ号のキャノンがマザーに炸裂し、窮地を救う。
リュウモン「まさか!?
イチカ「隊長、副隊長!?」
ムラホシとサワが、負傷の身で必死に、ナースデッセイ号を操縦している。
サワ「間に合った!!」
ムラホシ「援護くらいならできそうです!」
GUTSファルコンとホークが合体して、GUTSグリフォンとなる。
リュウモン「総員、マザーのコアに集中攻撃!!」
ナースデッセイ号とグリフォンが、マザーのコアに集中攻撃をかける。
ケンゴも地上から、銃で援護する。
デッカーも立ち上がり、反撃を再開する。
マザースフィアザウルスの全身から、一際大量のスフィアソルジャーが放たれる。
ナースデッセイ号が、GUTSグリフォンが、スフィアに取り込まれる。
テラフェイザーが、そしてデッカーまでもが、スフィアに取り込まれてしまう。
カナタたちGUTS-SELECT一同が、、光に満ちた空間に漂っている。
カナタ「ここは…… 俺は一体……? ……俺? 俺って、何だ……?」
マザースフィアの声が響く。
マザー「全てを一つに── 全宇宙の全ての命を、一つに── 悲しみを、争いを、止めるために── 個々のまま存在しては、争いを、悲しい未来を避けられない── 全てを融合し、完全無欠の存在に、完全なる生命体に── これこそが未来── 未来は一つに、未来は一つに──」
カナタ「一つ…… 全て…… 未来…… 完全…… ……じゃねぇ!! 俺たちの未来を、勝手に決めつけるな!! 失敗することもある、間違えることだって…… でも、何度でも、何度でもやり直せばいいんだ!! 『悲しい未来は、避けられない』……だったら、その悲しみを乗り越えてやる!! 俺たちは、前へ、未来へ、進むんだぁぁぁ!!」
一同「うおおぉぉ──っっ!!」
デッカーが全身のスフィアソルジャーが吹き飛ばす。
その波動を受け、ナースデッセイ号、GUTSグリフォン、テラフェイザーを覆っていたスフィアも弾け飛ぶ。
サワ「命を一つに…… そんなこと、絶対にさせない!!」
ムラホシ「この宇宙には命の数だけ可能性が、未来があるんだ!!」
HANE2「違うからこそ、前に進めるんだ!!」
リュウモン「俺たちの未来は、俺たちが作る!!」
イチカ「未来を夢見る、邪魔をするな!!」
デッカーとGUTS-SELECT一同が一丸となり、反撃が再開される。
マザー「すべてを一つに──」
GUTSグリフォンとナースデッセイ号の同時砲撃が、マザーのコアに炸裂する
さらにテラフェイザーのバスターがコアに叩き込まれる。
マザーのコアに、次第に亀裂が走る。
ウルトラマンデッカーが突進する。
マザーの攻撃で爆炎が上がるが、デッカーは怯むことなく突き進む。
デッカー必殺のセルジェンド光線が放たれる。
マザーも破壊光線を放ち、2つの光線が空中で激突する。
カナタ「うおおぉぉ──っっ!!」
マザー「すべてを一つに── すべてを一つに── 未来は──」
カナタの気合と共にデッカーの光線の威力が勝り、空中で衝突していた光線の威力を押し戻す。
マザースフィアザウルスが必殺光線を浴び、ついに大爆発を遂げる。
イチカ「……よし!」
変身を解除したカナタが、地に立ち尽くしている。
ウルトラDフラッシャーが、ディメンションホルダーが、宙に溶けるように消滅する。
カナタ「ありがとな…… ウルトラマンデッカー」
ふと見ると、アガムスと妻のレリアたちが、カナタに微笑みかけている。
ケンゴがやって来る。
カナタの視線の先を追うと、その先にはすでに、アガムスたち──の幻影が、消えている。
ケンゴ「やったね、カナタくん」
カナタ「はい。結局、戦いの先に何があるのか、答は見つかりませんでした。でも、俺はこれからも、こうやって生きていきます。目の前にあることを一つ一つ。それが、未来に繋がると信じて!」
ケンゴ「うん、それでいいんじゃないかな」
イチカ、リュウモン、サワ、ムラホシが駆けて来る。
一同「カナタ!」「カナタ!」「アスミ隊員!」
サワ「火星のスフィアも、全部消えたって!」
カナタ「マジっすか!?」
HANE2「ああ、マジだ」
イチカ「これで未来の宇宙もきっと、平和になってるね」
カナタ「よっしゃぁ!」
HANE2「やったな、カナタ」
ムラホシ「あなたたちと戦えて、心から誇りに思います」
ケンゴ「あ! 見てください!」
空から、無数の宇宙船が降下してくる。
ケンゴ「地球へ戻ってくる宇宙船です」
避難所の人々が、地上へ現れる。
皆それぞれ電話で、地球に戻って来る人々と連絡をとっている。
その中に、カナタの祖父のダイシロウの姿もある。
人々「もしもし? え、本当か!?」「あなた!?」
ダイシロウ「えっ、トキコさん? えっ、シロウも一緒!?」
カナタやGUTS-SELECT一同が、空に向かって大きく手を振り、皆を迎える。
カナタ「父ちゃーん!!」「母ちゃーん!!」
一同「みんな──!」「おーい!」「おかえりなさーい!!」
カナタ「おかえり──!!」
たくさんの応援ありがとうございました! カナタやデッカーの物語はまだ終わらない!? |
最終更新:2023年08月27日 21:14