"地獄のオルフェ"

目次

  • 原詞のリブレットは1874年の改訂版で、大コーラスやバレエも織り込まれてだいぶ規模が大きくナンバーもかなりの数が追加されています。英語版のウィキペディアにオリジナル1858年版との違いが比較されていましたのでそれに従って1874年版で追加された部分は「タイトル文字グレー」で区別がつくようにしています。もっとも1874年版が取り上げられる際もいくつかのナンバーはカットされることがほとんどですし、逆に1858オリジナル版が取り上げられる際にも1874年版から取り上げられていたりしますので区別はそれほど厳密ではありません。根本的な差は出て来る人数の多寡ではないかと。

序曲

  • 1858年版では最初の舞台である田園風景を表す朴訥な音楽(羊飼いアリステの歌う牧歌)で穏やかに幕を開けます。他方1874年版はいきなり多数の登場人物を出すからでしょうか。雄大な角笛の響きに始まって、第2幕や第3幕の盛り上がるフレーズも織り込んで若干華やかさが増しています。なおオーケストラ演奏会でよく演奏される「天国と地獄」序曲は実はオッフェンバックの手になるものではなく、1860年のウィーン初演の際にカール・ビンダーによってオペレッタ全体からキャッチーなメロディを次々と繋ぎあげて作られたものです。従ってドイツ語で上演されるときには時々この序曲から始まることがありますが、オリジナルのフランス語ではやはりオッフェンバックのオリジナルでしみじみ始まることが普通です。華やかな1874年版の序曲でもこの1860ビンダー版ほどは賑やかな幕開けにはなっておりません。

第1幕

  • 古代ギリシャ・テーバイの郊外の田園
N° 1 Choeur des bergers et scène du conseil municipal
  • 幕が上がると羊飼いと羊飼い娘たちが、お昼になったから仕事を切り上げて家に帰ろうと歌います。そこへ登場するのはこの街テーバイの議員たち。市民たちの歓呼に応えて偉そうに彼ら自身の矜持を歌にします
  • 紹介のアナウンスに続いて登場するのは世の中のムードを擬人化した登場人物「世論(世間)」 これから始まるこの劇の狂言回しを務めますと語りで告げます "Qui je suis?"。これは1858年版からで、こちらは世論の語りからいきなり始まる幕開けです。
  • 再び市議会議員たちのコーラス 今度は全員で歌い皆退場します

N° 2 Couplets du Berger Joli

  • 誰も居ない舞台に登場するのは愛らしい羊飼い娘のなりをしたウーリディス(エウリディーチェ)。可愛らしい軽やかなクープレを歌いますが、その内容はご近所の羊飼いアリステに惚れているので自分の亭主には内緒よ という何ともトホホなもの。牧歌的な風景にそぐわない詞の歌です。メロディは牧歌的なんですけれど。
  • 彼女が手にした花束を恋する不倫相手アリステの小屋に投げ入れようとするところに亭主の音楽学校教師オルフェ(オルフェオ)がやってきます。彼女の後ろ姿を自分の不倫相手・ニンフのマーキアと勘違いして得意のヴァイオリンで気を惹こうとするオルフェでしたが、それが自分の女房と分かって一騒ぎ。W不倫の痴話喧嘩へと発展してゆくのでした。

N° 3. Duo du Concerto

  • お互い不倫のことはとっくにバレていたはずですが、怒ったオルフェはウーリディスに得意の長大な(1時間15分)ヴァイオリンコンチェルト攻撃をかまします。名曲を聴けと迫るオルフェにイライラしてこんな音楽ぞっとすると返すウーリディス。こうなったら別れましょうというウーリディス、オルフェもそうしたいのはやまやまでしたが、世論がなんというのかがとても気になります。そこで彼女がアリステと逢瀬を重ねる麦畑の中に何か罠を仕掛けたと仄めかして去って行くのでした。ウーリディスも他の男ならともかくアリステに何かあっては一大事と駆け出して行き舞台は再び空になります。
N° 4. Ballet Pastoral
  • 1874版ではけっこう長大な(5分程度)のバレエが羊飼いの男女たちによって踊られます

N° 5 Chanson D'Aristée

  • そこへ現れたのはアリステ、近所に住んでいるウーリディスの間男です。葦笛なんぞも吹きながらこっちはしみじみと田舎暮らしの喜びを歌っています。が歌が終わると何やら不穏な台詞。どうも良からぬ策略を巡らせているようです。そこへ駆けつけてくるウーリディス。亭主がそこの麦畑に罠を仕掛けているから入ってきちゃダメとアリステを止めますが彼は言うことを聞かずにずんずん入って行きます。それなら私も一緒と麦畑の中に入って行くウーリディスはそこで毒蛇に足を咬まれてしまいました。

N° 5 ter Mélodrame

  • 猛毒が回って倒れるウーリディスですが少しも苦しくありません。それもそのはず、羊飼いアリステの正体は冥界の王プリュトン(プルート)で今回仕掛けられた罠の黒幕だったのです。まさにその時その姿を現し、ウーリディスに色々と解説してくれるのでした。

N° 6 Invocation a la Mort

  • 死んで行くのに全然苦しみを感じないウーリディス。その陶酔感を美しいメロディで歌い上げます。どうも冥王プリュトンは彼女を地獄に連れて行くためにこれまで羊飼いに変装して策を巡らせていたようですね。オルフェはそれにまんまと乗せられた実行犯というところでしょうか。連れ去っていくウーリディスにお別れの言葉を書き遺させますが、当人も韻がイマイチと言うようにその書き置き、「女房を連れ去ってやったぞザマア見ろ」といってる感があります。

N° 6 bis Mélodrame

  • ということで冥王プリュトンは死んだウーリディスを操って戸口に別れの言葉を書かせます。その姿は演出にもよりますがまるでゾンビかキョンシーのよう。現世の用事が済んだ二人は地獄へと向かうのでした。
  • そこに戻って来たオルフェ。「私は死にました」というウーリディスの書き置きを目にして驚きますが、じわりと喜びがこみ上げてくるのでした。

N° 7 Final

  • 女房が死んでくれてこみ上げる喜びを隠せないオルフェ しかしそんな彼の周囲には「妻の死に一粒の涙も流せぬ奴など呪われてしまえ」というコーラスが聞こえてきます。
  • そうこうしている間にこの幕の冒頭に現れた「世論」が再登場。自分はこの事件の真相を知って居るし、のうのうと生きながらえているなど後の世に対しての恥。自ら地獄へと赴き妻を取り戻してこそ後世の手本となるでしょう と歌います。そうする気などさらさらなかったオルフェですが、世論の圧に負けて行かざるを得ません。
  • せめても生徒たちとのお別れをと懇願。それは良い心がけと喜ぶ世論。「人は思い通りのことはできない 結婚すれば君たちも分かる」と意味深な別れの言葉を告げるオルフェでしたが無邪気な生徒たちには伝わっていないようです。
  • いよいよ出発の時間が来て、世論とまわりの人々は「名誉が君を呼んでいる」と力強い行進曲を歌い、オルフェは世論をお供に冥界へと旅立って行くのでした。(1874版ではコーラスも交えた壮大な幕切れですが、1858年版では世論とオルフェの小デュエットのようです)

第2幕

  • 天上の世界 オリュンポス(オリンパス)

No. 8 Entracte et Choeur du Sommeil

  • 神々はまどろんでいます。何と言っても平和な天上では眠ることくらいしか楽しみがありませんから。嘆きなのか喜びなのか分かりませんが神々は「眠りよ 決して終わるな」と寝言をコーラスで歌っています。

N° 9 Couplets

  • そこへ次々と登場してくるヴェーニュス(ヴィーナス)・キュピドン(キューピッド)・マルス(マース)の神々。どうも彼ら、天上の退屈さに耐えかねて夜遊びしての朝帰りのよう。みなそれぞれ自分の今夜の成果を語りつつ眠りにつきます。(1858版ではキュピドンとヴェーニュスの2人だけでマルスは歌いません)
N° 10. Divertissement
  • 皆が眠る中を眠りの神モルフェーが現れ夢の行列を引き連れて神々にケシの花の香りを振り撒き、そして去って行きます。

N° 11 Réveil des Dieux, Couplets de Diane

  • そこへ夜の静寂を破る角笛の音。狩りの女神ディアーヌ(ダイアナ)の帰還です。賑々しい登場に神々の王ジュピテル(ジュピター 愛称ジュパン)はじめ皆目が覚めてしまいます。ディアーヌもまた夜遊びから帰って来たのですがどこか浮かぬ顔。密会しに行った相手のアクテオン(アクタイオン)がいつまで待っても現れず、仕方なく戻って来たというのです。実はこのアクテオン、女神と人間の恋愛スキャンダルが広まることを恐れるジュピテルによって鹿の姿に変えられていて、そのせいでディアーヌは逢えなかったという衝撃の事実がジュピテルの口から語られます。「世間体ばっか気にするけどあなたはどうなの」と嫌味で返すディアーヌ、そこへジュピテルの妻、ジュノン(結婚の女神ジュノー)が登場。「あんたまた何かしでかしたの? 地上で美女が一人 神さまに連れ去られたと噂になってるわよ」と亭主を一喝。ジュピテルもその話は知ってるが自分と関わりはないので今メルキュール(マーキュリー)を調査に向かわせたと答えます。
N 12. Rondo Saltarelle de Mercure
  • 丁度良いところに戻って来たメルキュール 軽快なサルタレロのリズムに乗せて自己紹介ソングを歌います。まわりもそれにつられてノリノリ。メルキュールは女を連れ去ったのは冥王プリュトンで、今から天上に申し開きにやってくることを伝えるのでした。

N 12 bis Entrée de Pluton

  • 召喚されたプリュトンが音楽に乗って登場です。
N 13. Air en Prose de Pluton
  • 申し開きにやってきたプリュトン、自分の暮らす冥界にくらべて全く優雅で幸せそうな天界を見て愚痴が止まりません。ジュピテルから女を攫ったであろうと責められている時、表が俄然騒がしくなります。

N 14. Choeur de la Révolte

  • 有名な「天国と地獄」序曲冒頭のメロディーに乗せて神々が暴君ジュピテルに反乱(革命)を企てます。「ラ・マルセイエーズ」の一節も織り込んでけっこうマジな雰囲気。世間体を気にして神々を規則で縛り付ける専制君主ジュピテルを打倒し、ネクター(神々の蜜酒)やアンブロジア(神々の不老不死の食べ物)ばかりの生活から脱しようとアジります。得意の雷撃で彼らを黙らせたジュピテルですが、天上のモラルはどうなったのだ!と口走ったために彼らから反撃を受けることとなったのでした。

N 15. Rondeau des Métamorphoses

  • 天上のモラルとか偉そうなことは言っていますが、実は女好きで裏では淫行スキャンダル三昧のジュピテル。その不行跡の数々を神々は次々にジュピテルと周囲に話して行きます。ここのところ用意してあったWikiのリブレットではディアーヌ→ヴェーニュス→キュピドンの3人の歌だけですが楽譜上ではもっと大勢の神々が次々と歌うことになっています。1874年版を見ると
    1. ディアーヌ(狩の女神):アルクメーネーをその夫に化けて誘惑した逸話
    2. ミネルヴァ(知恵の神):エウローペーを白い牡牛に化けてかどわかし子を孕ませた逸話
    3. キュベレ(大地の女神)・ポモナ(果物の神):幽閉されていたダナエのもとに黄金の雨となって侵入しペルセウスを身籠らせた逸話
    4. ヴェーニュス(美の女神):スパルタ王の妻レダに近づくために白鳥に化けた逸話
    5. フローラ(花の女神)・セレス(豊饒の女神):獣・人・草木 衣装をとっかえひっかえ。衣装代がどれほどかかったことか?
    6. キュピドン(愛の神):こんなにやたらと姿を変えるのは自分の容姿に自信がないからなんじゃないですか?
  • いやはや言われたい放題ですがそれだけのことを過去に彼はしてきているということなのですね。ちなみに楽譜は確認していませんが1858年オリジナル版ではミネルヴァ→ディアーヌ→キュピドン→ヴェーニュスと歌われているようです(英語版Wikiより)
  • と、そこへやって来たのは伝令役のメルキュール、何でも天上界に二人の侵入者ありということです。ひとりはオルフェ、そしてもう一人の名を聞いてジュピテルは震えます。その名は「世論」。ひとまず革命さわぎも、あらゆる諍いも一時休戦で何とか世間体を取り繕おうとするのでした。

N 16. Final

  • 近づいて来るオルフェと世論の2人に各人各様の思惑が語られるアンサンブル。ジュピテルがオルフェに「ここへ何しに来た」と問いかけると、世論がオルフェに返事をささやき女将のようにプロンプトします。オルフェは嫌々ながらウーリディスを返して貰うため、グルックのオペラ「オルフェとウーリディス」からの有名なアリア「On m'a ravi mon Eurydice」の一節を歌うのでした。ちなみにグルックのオペラの方は「J'ai perdu mon Eurydice」微妙に言葉は違いますね。この訴えに心動かされた女声の神々陣が同じグルックのアリアを引き継いでいく中、こんな酷いことをした犯人は誰だ ということになり、プリュトンが特定されます。極悪神プリュトンを裁き、ウーリディスを夫オルフェのもとに戻すために自ら冥界へと赴くと宣言するジュピテル。平穏過ぎて退屈な天上界を少しでも逃れたいと他の神々も冥界へ一緒に行くことになり、みなこれからの旅にわくわくしながら幕となります。

第3幕

  • 冥界 プリュトンの寝室
No. 18 Couplets des Regrets
  • うきうきとプリュトンと一緒に冥界へとやって来たウーリディスですが、2日も冥界に放置されてプリュトンの口車に乗ってしまったことを後悔しはじめていました。不倫して駆け落ちしたのは良いものの実は相手はどうしようもないロクデナシだったというありがちなシチュエーションです。まあプリュトン、この件で天界に召喚されてしまっているので仕方ないところはありますが。そこへやってきたプリュトンの召使ジョン・ステュックス(イギリス人っぽい名前ですね 何故に)。どうやら彼もウーリディスに惚れているようです。

N 19 Couplets du Roi de Béotie

  • ジョンは自分は今でこそ地獄に落ちてこんななりですが実は生前はボイオティアの王子で、世が世であればあなたにこの愛と権勢を捧げることもできたのに、と切ないラブソングを歌います。ですが幽閉されて傷心のウーリディスには届いていないよう。
N 19 bis. Mélodrame
  • そこへ賑々しい音楽が外から響いてきたのでジョンは慌ててウーリディスを別室へ匿います。
  • 冥王プリュトンを連れて現れたジュピテル、お前がウーリディスをかどわかしたのだろうと責めますがどこに証拠が?ととぼけるプリュトン。これは裁判にかけるしかなかろうとジュピテルは地獄の裁判官3人集ミノス・エアク・ラダマンテを召喚します。
N 20 Septuor du Tribunal
  • 荘厳な音楽に乗せて3重唱を歌う裁判官たち。ですが所詮地獄側の人間たちですし証人(証犬?)にも地獄の番犬セルベール(ケルベロス)。あまつさえプリュトンはセルベールにガレットを食わせて買収?します。それを見抜いたジュピテルは証拠を掴もうとセルベールの口をこじ開けようとしますが...
N 20 bis Mélodrame
  • 番犬セルベールはジュピテルの腕に咬みつきその隙にジョンはジュピテルから稲妻を発する杖を奪います。もみ合いとなるジョンとジュピテル しかし天界の王ジュピテルには敵いません。杖を奪い返したジュピテルはその場のすべての者を稲妻を発して消し去るのでした そこへ現れたのはジュピテルの息子(諸説あり)で愛の神キュピドンです。パパの本当の願いを叶えてあげる と彼は言います どうせプリュトンを裁くというのは口実で本当はウーリディスをモノにしたいんでしょと... さすが愛の神、鋭いです
N 21. Ronde des Policemen
  • キュピドン配下の警官隊が登場し、恋する尋ね人を探そうとしますが今一頼りない状況です
N 22. Récit et Couplets des Baisers
  • ウーリディスを探させた警官隊がウロウロするだけで無能なので、しびれを切らしたキュピドンはアイデアを出します。恋する女を誘い出すには「キスの音」を聞かせれば良いと。さっそく試してみたところ奥の部屋から反応ありです。さっそくこじ開けようとする警官隊ですがそれを止めるジュピテル。われわれ天界の神々にとっては狡猾さは何でもありだが暴力は絶対禁止だと。そこでキュピドンは扉の鍵穴を通り抜けられるよう、ジュピテルを蠅の姿へと変身させます。とは言いながら舞台では生身の歌手が変身するわけですのでけっこうエグいコスプレ。まるでショッカーの怪人みたいです。そういえば初代の仮面ライダーにハエ男ってのが居ましたね。あんな感じのスタイルです。第2幕で女を捕まえるためにはどんな姿にでも変身するジュピテルと揶揄されておりましたがとうとうこんな姿にまで変わるとは...
N 23. Petite Ronde du Bourdon
  • 警官隊とキュピドンは蠅の姿のジュピテルを残して退場します ジュピテルは鍵穴をやすやすと通り抜けてウーリディスの閉じ込められている部屋へと入って行くのでした

N 24 Duo de la Mouche

  • ハエの姿のジュピテルと閉じ込められて他にすることもないウーリディスは戯れます。ハエを捕まえたウーリディスにジュピテルはその正体を現し、他のたくさんの女たちにしてきたようにウーリディスを口説きます。「私をオリンポスに連れてって」と懇願するウーリディス。そのためにジュピテルは彼女をバッカスの巫女へと変装させ、地獄のパーティへと連れ出すこととしたのでした。
N 25 Scène et Ballet des Mouches
  • そこへ入って来るプリュトン。ウーリディスが奪われたことに激怒しますが後の祭り。そこへジョン・ステュックスの姿の子供たちがわらわらと登場し、この幕の初めの方でジョンの歌ったアリアを歌いながら去って行きます 1858版では子供たちではなくジョン自身が再登場しプリュトンと掛け合います ハエの姿のジュピテルに彼女が連れ去られたことを知ってハエを追いかけますが果たせません そこへ唐突に出て来たキュピドン「そんなにハエを捕まえたいの?」と魔法でハエの群れを出し、その群れはプリュトンたちを踊りながら連れ去るのでした
  • ギャロップの音楽が流れて幕。

第4幕

  • 冥界

N 26 Entracte et Choeur Infernal

  • 不穏な雰囲気の間奏曲に引き続き地獄の祝宴を冥界の王プリュトンを讃えて参加者たちが歌います。歌が一段落したところでキュピドンがそれではバッカスの巫女にバッカス神に捧げる讃歌を歌って下さいとリクエストです。

N 27 Hymne a Bacchus

  • 讃歌を歌うのはもちろん巫女に扮したウーリディス。もちろんまだ正体は明かしておりません。コーラスも交えて華やかなバッカス讃歌です。

N 28. Menuet et Galop Infernal

  • 次は天界サイドからの宴会芸の披露です。ディアーヌのヴォカリーズに続いて品のあるメヌエット。音楽に合わせてジュピテルを始めとする天上界の代表たちが踊ります。(ジュピテルと巫女に変装したウーリディスの2人だけが踊る演出もあります)
  • この上品な音楽のあとは大乱痴気な地獄のギャロップで全員がハメを外したカンカン踊り。ここのメロディは有名な序曲の中で流れる「カステラ一番 電話は二番(by 文明堂)」。地獄の祝宴も最高潮に盛り上がって行くのでした。
  • この騒ぎのどさくさに紛れて手に手を取って逃げ出そうというウーリディスとジュピテルですが、とっくにバッカスの巫女の正体を見破っているプリュトンに行く手を遮られます。ひとしきり三角関係のもみ合いになっているところに更に面倒なことにウーリディスの元亭主オルフェが世論に連れられてやって来るのでした。妻を返すと世論の前で約束してしまったことを思い出し、困ったジュピテルは第3幕でも助けて貰った策士キュピドンの知恵を借りることとします。

N 29. Mélodrame

  • キュピドンが授けた策とは、一応オルフェにはウーリディスを返すけれども、冥界を出るまでの間後ろをついて行くウーリディスの方に振り向いてはダメだという条件をつけようというものでした。

N 30. Final

  • その場の全員が固唾をのむ中、オルフェとウーリディスの二人は縦列で歩いて行きます。世論は満足いきそうな結果となりほくそ笑みますがジュピテルは面白くありません。別に別れた妻の顔なんて見たくないオルフェを何としても振り向かせようと激しい雷撃を見舞わすのでした。思わず振り返るオルフェ。すべておじゃんになって怒る世論。これでウーリディスは自分のものになるのだと喜ぶプリュトン。しかし三角関係を丸く収めるため、ジュピテルは彼女をバッカスの巫女にすることにしたのでした。ウーリディスは地上では得られなかった幸せをバッカスの巫女となってこれから得られることの喜びを、これも序曲のフィナーレで使われてたいへん有名になったメロディに乗せて歌い、全員がバッカスを讃える中で幕となります。

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@ 藤井宏行
最終更新:2025年07月19日 11:21