対訳【ボストン版】
全曲(動画対訳)
あの草を摘みとって(動画対訳)
何をお召しなのか(動画対訳)
訳者より
- ヴェルディ中期の傑作としてよく取り上げられる作品です。魅力的な音楽が次々と紡ぎ出されてきて、筋がわからなくても音楽に身を任せているだけで十分に楽しめる、そんな作品です。というよりも私の場合、このオペラの主人公にはどうも感情移入ができず、訳していても何をたわけたことを言っておるのか...とフラストレーションが溜まるばかりなので筋など追わず、音楽だけで楽しむことが圧倒的に多いのですが...
- もともとはスウェーデンの実在の国王、グスターヴォ3世の暗殺事件を題材にして書かれた戯曲をもとにしておりますが、この国王の暗殺の原因は決してこの戯曲やオペラで書かれているような不倫関係のもつれというわけではなく、もう少し複雑な政治的事情があったようです。実在の人物がその死後、ありもしなかった作り話に登場させられて愚かな行為をさせられるというのは大変気の毒に思え、こうして歴史に残るこのオペラがイタリア当局の検閲のために、舞台をアメリカのボストンに変え、架空の人物たちによって演じられるようになったことは少なくともこの国王にとっては良かったことでしょう。
- それだけでなく、私もこの作品はもっぱらボストンを舞台とした版で見聴きすることがもっぱらでしたので、最近増えてきたというオリジナルのスウェーデンバージョンは色々と違和感があります。メジャーなところではカラヤンが指揮した最後のオペラ録音として知られたDG盤(ドミンゴ/バーストウ/ヌッチ/ウィーンフィル)がグスターヴォ3世で演奏されていますが、あとは古い録音が多いせいか私が聴いたことがあるのはもっぱらボストンを舞台とした主役がリッカルド版です。(オリジナルを謳っている「グスターヴォ3世」(イェテボリ歌劇場/バルバチーニ指揮)のDynamic盤もあるようですが未聴)
- カラヤン盤のリブレットと見比べた限りですが、ボストンとスウェーデンの違いは登場人物の呼び名はともかくとしてそれほど多くなく、
- スウェーデン版では王様(Sire又はre)がボストン版では伯爵(Conte)となっているところ
- ボストン版では故郷として「イングランド」が良く出てきますが、スウェーデン版ではただの「祖国」となっています。
- このために第3幕、リッカルドが愛するアメリアを夫と共に故国に帰そうと決心するところが、ボストン版のように大西洋を隔てて遠く離れ離れになるというシチュエーションにならないため、私の目からは少々消化不良でした
- 第1幕第2場で出てくる女占い師ウルリカですが、スウェーデン版ではジプシーの血を引く、ボストン版では黒人の血を引くとなっています。どちらも被差別の民として、こういった役割をそれぞれの土地であてがわれるということなのでしょうね
- あと、細かいところの差異は色々あるようですがきりがないので省略します。音楽だけ取ると、カラヤン盤を聴く限りではボストン版との差はほとんど耳につくことはありませんでした。
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最終更新:2025年04月25日 20:11