【
蔦葛】
御赦し下さい、愛しい人よ。
貴方を愛し、背きます。
覚えていますか?貴方が座敷牢に入れられたと
叔母上から聞いて無理を通して貴方の世話を買って出た日。
座敷牢で再び出会った貴方はまるで何時もと変わらなかった。
愚昧な姉も此処に至って漸く悟りました。
貴方には誰も必要ないのだと。
きっと独りだけで何処までも突き進んで仕舞えるのだと。
そしてきっと、その果てに貴方は貴方で、そして人では無くなるのだと。
だから私は貴方に着いて行きました、だから苺を道連れにする様に進言しました。
その足を引く為に、貴方が人である為の楔とする為に。
ごめんなさいね、花丸。
貴方に重荷を背負わせて、そしてその足を引こうとしています。
ごめんなさい苺。ごめんなさいお菊。ごめんなさい温羅。ごめんなさいはごろも。
ごめんなさいクラッスラ。ごめんなさいフローラ。ごめんなさいマウル。
貴女達を狗山様が人である為の楔にして、道連れにして、行き先はきっと地獄でしょうに。
それでも私は耐えられなかったのです、大好きな弟を失う事に。
全ては私の弱さ、きっと軽蔑されるでしょう。
ねぇ狗山様、貴方はこんな愚昧な手弱女、斬ってお捨てになるのかしら?
でも仕方がないの。
愛する殿方とその足に縋り付いてでも一緒に居たい。その為なら手段なんて選ばない。
女と生まれたらきっとそれは凄く自然な事だから、誰も逆らえない事だから。
嗚呼花丸。花丸。ごめんなさい。私の愛しい人、愛しい弟。愛してる、愛してるの、愛してる愛してる愛してる愛してる。好き好き好き好き好き好き好き好き。
幾度情を交わしても、伝わらぬ物があるのですね。
【
苺】
ごめんなさい苺、等とお蔦ちゃんは思っているのだろう。
そんな事絶対に言葉にしないしおくびにも出さないけれど、これでも長い付き合いだ、嫌でも解る。
馬鹿にしないで欲しい。
どんな経緯であれ、私は狗山さんに選ばれたのだ、それに対して変な憐れみや感慨を挟まれるのは業腹だ。
なんだかんだと言っても箱入りのお姫様、世間知らずは狗山さんを言えた物ではない。
そしてお蔦ちゃんも大概だが私だってまともとは言い難い。
不本意ながら皆のお母さんみたいになっているが、そんな私は嘘っぱちだ。
だって私は狗山さんに食べられたいと思っているのだから、勿論物理的に。
肉の一片、骨の一欠、血の一滴、毛筋の一本まで残さず喰らって血肉になって混ざり合いたい、己が全てを捧げたい。
そうだ、私もまた狂っている、まともじゃない。
お城で働かせて貰っている以外は至極普通の女、そう思っていた頃が懐かしい。
でも仕方が無いでしょう?
此と定めた男へと自身の全てを捧げ尽くしたい。
それこそが女の本能、雌性の性。
結局の所、お蔦ちゃんと私は似ているのだ。
相手を自分に縛り付けるか、自分を相手に縛り付けるかという違いだけ。
狗山さん、貴方にならば私は殺されたって喜べます。
願わくばどうかその後で、その歯を私に突き立てて。
【
除虫菊】
私は何も変わらない。
と言うよりも変わるべき所が存在しない。
より正確には「私」などと言うものは有って無きが如しである。
それはつまり独白すべき事由が存在しない事を意味する。
忍とは元来こういう物で、つまり私はそういう者だ。
任務を放棄したとの誹りもより上位の権限に帰属しただけと言えよう。
元より我等は皇家に仕える身、任務に忠実とさえ言える。
冒険者に身を窶すのも勿論忍としての任務だ。
循環論法?単純明快と言って欲しい。
忍とは元来こういう物で、つまり私はそういう者だ。
【
松葉独活】
戦うの大好き!狗山様も大好き!
でも狗山様の言うタイギ?とかいうのはよくわかんない!
タイギ…タイギ…体技?
ねーねー狗山様。
タイギってそんなに大事?
私は狗山様と一緒に旅して、戦って、楽しいよ!これで十分!
でも狗山様はそうじゃないんだよね?
もっとずっと、何処か遠くを見てて、でも私にはそれが見えなくて…
あーもー!!すっごくもやもやするー!なんでもやもやするかわかんないのが余計にもやもやー!
なんかもう全部、ぶっ壊したいよね。
【
鋸草】
はごろもは
かたなだ。
はごろもになったのはわりとさいきんだ。
はごろもは
つくもがみなんだという。
かたなは、ぶきだ。
よくきれる、ぶきだ。
はごろもは、なんだ?
かたなはこんなにかんがえたりしないらしい。
あいかたの
でっかいのはかんがえたりしないのか?
らくでいいな。はごろもはたいへんだぞ。
ざしきろうははごろものくろうもしらないでふりまわす。
もっとはごろもをだいじにしろ。
せっかくはごろもははごろもになったんだ。
はごろもらしいことをしたい。
ざしきろうはおんなのひとをてごめにしておめかけさんにするらしい。
はごろもはてごめにしないのかときいたらそのうちするそうだ。
はごろももおめかけさんらしいことをしたい。
【
花月】
私は既に終わった身だ。私の物語は既に幕を閉じた。此処に居る私は宛ら劇場に響く残響の様な物である筈なのだ。
アンデッド化は決して第二の生等ではない。
これは明確に宣言しておかねばならないだろう。
幸いと私は自我もハッキリとしているし記憶も残っているがこれはあくまでレアケース、たまたまでしかない。
青褪めて血の通わぬ死霊の躯。
飲食はできても身にはならないし、触れても生命の熱はない。
その上で嘗て私と共に戦った…そうさな、聖女と呼ぼうか。
聖女との思い出は尽きないし、それだけに彼女を残して斃れた事、今でも悔やむし恥とも思う。
聖女が死後に私の様な死霊へと変じなかったのは案外そう言った物を抱かずに逝けたという事だろうか?
死後の事は分からない。実際に死んだ私であっても。
聖女が信仰していた神の教えではどうだっただろうか?
大自然のマナに還るとも言うし、楽園で安らいでいるとも聞く。
少なくとも聖女は行くべき所に行けたのだろう。
最期まで付き従う事の出来なかった身としてはそうであって欲しいと祈らずには居られない。
…結局の所、未練なのだろうな。
墓守りを辞め、グザンの手を取ったという事はつまり客観的にはそういう事なのだろう。
あの時到達することを許されなかった終点へと、私はたどり着きたい。
全霊を、燃焼を、求めるからこそ駆け抜けたい。そうでなければこの慚愧を拭う術等と無いのだと。
きっとそんな事に意味は無くて、だからこそこれは只管に愚かなのだ。
軽蔑されるべきだからこそ狂おしく希ってしまうのだろうな。
【
時計草】
縺輔s縺溘∪縺√j縺ゅ?√≧繧峨≧繧峨?縺峨∋縺?☆ 縺ァ縺?☆縺ソ縺。縺ウ縺?@縲√≧繧峨≧繧峨?縺峨∋縺?☆
晴れるや、晴れるや。
寿ぎましょう、幸いましょう。
那由他由旬の万象は四象へと収束しやがて太極へと至る向上門。
一切衆生悉有仏性草木国土悉皆成仏。結末が既に定まっている以上、迷う必要が何処にありましょうや?
精霊の救い、天主の裁き、それは即ち無上無辺なる衆生の救済。
例えそれが…
ああいけませんね、私は我執を離れて我が神へとただ嬰童無畏心にて帰依するのみ。
縺輔s縺溘∪縺√j縺ゅ?√≧繧峨≧繧峨?縺峨∋縺?☆ 縺ァ縺?☆縺ソ縺。縺ウ縺?@縲√≧繧峨≧繧峨?縺峨∋縺?☆
【
桑】
オレは
奴隷、奴隷…奴隷だよな?
たまーにその辺りを本気で忘れちまいそうになる。
まるで本物の家族みてーに思っちまうんだよ。
まぁ生まれてこの方天涯孤独の身だったオレに家族なんざ居た試しがねーんだけどな!ケケッ!
というかオレが買われた意味がマジで解らねぇ…謎だ。
そりゃまぁオレだって悪趣味な変態金持ちとか奴隷使い潰して稼いでる悪徳商人みたいなのに買われなくて良かったとそれは思ってるよ?
でも敢えてオレを買う意味よ!!
見てみ!
魔族!女!人相悪りーし目つき悪りーし生まれも育ちも最悪と来たモンだ!
身体目当てにしたって乳ねーし角欠けてるし火傷の痕とかあるし!これは…話すとなげーんだがまぁ今後とも語られる様な事はねーだろな。
…ハッ!もしかしてそれが良かった……??いやだとしたら、大分アレというか…いやでもコレがグザンの好みだとしたら喜ぶべきか??
いやでもなー、あのゴシュジンサマよ?好みの女のタイプとか存在するのかね。
そもそも手伝いが必要って話で別に
盗賊だから買われた訳でもないしなー。
オイオイオイオイ…コレはいよいよ…
オレがオレである必要、無くね?
【
竜胆】
私は必ず大義を成す、宣したならば貫徹するのみ。
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最終更新:2026年04月07日 15:00