ブラックペンタゴン。
それは最果ての地で、誰にも知られることなくひっそりとそびえ立つ、漆黒の巨大建造物。
黒い外壁は月の光を一切反射せず、深淵が形を為して周囲の光すら飲みこもうとしているかのように見える。
その屋上には無数の尖塔が空を突き刺し、そこから下界に向けて放たれる赤いサーチライトが不気味に脈打つ。
赤い光は周囲をライトアップして高い外壁の漆黒を際立たせ、
そして本棟の小窓から鋭く漏れ出す白い光は、罪を裁く冷徹な天使の眼光のように罪深き者たちに睨みを利かせていた。
白い眼光と赤い脈動、そして黒い威容の三つのコントラスト。
並みの犯罪者ならばその場で心を折り、恐れおののいて膝をつくであろう。
だが、今宵この地に集うはアビスの住人たち。
悪意の坩堝を観光でも楽しむように軽い鼻歌を響かせながら歩む――そんな破綻者ばかりが集う場所だ。
今、訪れた二人も、恐れを表すどころか、観光名所に訪れた旅行者のように目を輝かせていた。
「あれがブラックペンタゴンか~。大魔王とか住んでそうだね」
「大魔王ねえ。じゃあ、オレ様はさながら勇者ってところか?」
「トビさん勇者って顔してないでしょ。
お宝探しに忍び込むケチな盗賊Aだよ。
――さあ盗賊のトビ、君にパンデモニウム偵察の任務を命じる。
邪悪な魔族を見つけたら、我々の前に誘き寄せてくれたまえ。
我が精鋭たる騎士たちがすべて滅してくれよう」
「ぬかせ」
WEB小説原作の漫画本あたりのなんたら騎士団団長のような気取ったセリフが四葉の口からすらすらと紡がれる。
その手の騎士団長は主役の当て馬だろ、としかトビには思えなかったが。
そんな彼の内心を知ってか知らずか、四葉は『ランスロット』たち4体を呼び出し、魔王城に挑む一個騎士団のようにポーズをとる。
漫画本は四葉のルーツの一つだ。
英雄物語のようなフィクションだって多数嗜んできた。
理想のシチュエーションで憧れのキャラクター設定を演じ、自分の気分を盛り上げるのはやはり楽しい。
――もっとも。
わざわざ表には出さないが、トビもネオスと共に自我を確立した世代だ。
シチュエーションにこだわらないわけではない。
本来、監獄に外観の豪華さなど不要なのだが、急激に増加する犯罪者たちを威圧するかのように、その外観も威圧的なものへと進化している。
サーチライトで朝から夜まで周囲を真昼のように照らす眠らない監獄。
現代人でも登ることはかなわない、摩天楼をも見下ろす高い外壁を備えた要塞監獄。
標高6000メートルの霊山の中腹に建てられた、この世で最も天国に最も近いと言われる天空監獄。
かつてZ計画と呼ばれていた人類救済計画の一つで、オセアニアの海洋ベースの深海基地をルーツとする海底監獄。
ある意味名所のような、個性豊かな監獄が世界には存在する。
脱獄を生き甲斐とするトビにとって、監獄の外観はギフトの包装のようなものだ。
ハリボテはいただけないが、相応の威圧や年季の入った歴史を感じる監獄からの脱出は、それに見合っただけの達成感がある。
背筋を震わせるような刺激があってこそ、心が踊る。
ブラックペンタゴンには潜入するのであり、脱獄しに行くわけではない。
とはいえ、仰々しく用意された巨大施設だ。
ワクワクさせてくれることには変わりはない。
赤い光に照らされたところで首輪が爆発したりはしないだろうが、
サイレンが鳴り、サーチライトが一斉に自分に向く、くらいの演出はあるかもしれない。
脱出不可能な監獄にあつらえた重々しい雰囲気が演出されている。それだけでも気分は乗る。
せっかくこんな大掛かりな舞台が用意されたのだ。
このシチュエーションを楽しまないのはもったいない。
「さて、と」
トビはおもむろに足元に転がっているこぶし大の石を拾いあげ。
「そこの岩陰に隠れてるヤツ。
10待ってやるから、姿見せな」
物陰から彼らを見つめる視線の主に、鋭く声を投げかけた。
■
トビは石を軽く握り、スナップを効かせて手首に軽い弾みをつけ、空中にその石を放り投げる。
こぶし大の石は回転しながら真上に上がり、ちょうど一秒で頂点に到達。
「いーち、っと」
視界の隅に石を捉えながら、落ちてくるそれをタイミングよく同じ右手で掴む。
パシっという小気味よい音が響くまで、同じく一秒。
二秒セットで一回の動作、この十回がタイムリミットだ。
容姿こそ醜男たるトビだが、その所作は洗練され、なかなかに様になっている。
「おっ! おっ! トビさんついに闘るの!? 闘っていいの!?」
「それはまあ、あちらさん次第だな」
石の手玉を二回、三回と繰り返したあたりで、視線の主に動きが見られた。
「まずはじめに申し上げておきますが」
岩陰から現れたのは一人。
少女・宮本麻衣は両手を上にあげ、降参のポーズでゆったりと近づいてきた。
「争うつもりはございません」
そして、十分な間合いを開けて足を止める。
一撃を当てるまでに、一動作が可能な距離だ。
四葉の身体能力をもってしても、一息で詰めるには厳しい距離を保ち、三人が自らの名を述べて対峙する。
■
「推測ながら、ポイント稼ぎを目当てとしたタッグだと見受けさせていただきます」
「まあ、そりゃそうだな。
自分で言うのもなんだがよ、オレ様もこんなバディを見たらアンタと同じ意見を持つに決まってるぜ」
麻衣の目線が注がれるその先にあるのは、トビたちの首輪。
死刑囚と刑期85年を表す首輪だ。
そんなポイントの塊である二人が争うことなく同行している。
傍から見ればどう見ても、大物を効率よく狩るために手を組んでいるようにしか見えない。
「なら、私などを狙ったところで旨味など皆無でしょう?
仮にそれでもこの首が欲しいのだとすれば、全力で抵抗させてもらいますが」
「まあ、それも道理だな。
たったの20Pのためだけに、リスクを負う奴なんざそうはいねェ。
いるとすりゃ、よっぽど恨みを買ったか、アル中かヘビースモーカー、あるいはポイントなんざ関係ねえバトルジャンキーくらいだろ」
「それはたとえば、後ろの彼女のように?」
「まァ、後ろのコイツみたいにだよ」
エサを前にして座り込んだ犬のようにキラキラした目を向けられて、言及しないでくれというほうが無理があるだろう。
トビと麻衣は互いに苦笑をかわす。
わくわくを隠さず尻尾をぶんぶん振る子犬系少女、四葉。
彼女のそんな態度に悪感情を抱く人間はさほど多くはないだろう。
その態度の理由が殺し合いを求めているが故である、という一点を除けば、だが。
「後ろのあなた。そんなに戦いたいのなら、お誂え向きの方が一人いますよ?
長い黒髪を束ねた格闘家のような方でした。
とても戦いたそうにしていましたが、闘争心とは裏腹に紳士的な人で。
私はどうやら、彼のお眼鏡にはかなわなかったようです」
「紳士的な黒い長髪の格闘家……あっ、それ無銘さんじゃないかな?
どうだった? 元気してた!?」
「名前は尋ねなかったので分かりませんが、気になるなら旧工業地帯のほうを探してみるといいのでは。
刑務開始から数十分ごろだったか、クレーンや工場が連鎖倒壊する音が聞こえましたので。
運が良ければそのあたりで会えるでしょう」
「トビさん! 旧工業地帯に……」
「だ・か・ら! ダメに決まってンだろ!」
「トビさんの意地悪、甲斐性ナシ、ビビり虫……」
人懐っこい子犬キャラはどこへやら、ついにイジけだして石を蹴り始める四葉。
トビと麻衣は互いに苦笑をかわす。二回目である。
「それでは、お互いに争う理由もないことが分かりましたので、私はこの辺りで……」
「おっと、ちょい待ち」
話を切り上げ、立ち去ろうとする麻衣をトビは制止する。
「一つ、聞かせな。
アンタ、これからどうするつもりなんだ?」
「どうする、と言われましても」
「日をまたぐまで、隠れてやり過ごすつもりかい?」
「それは……」
もちろん、と言いかけたところで、トビの麻衣を見る目が険しくなっていることに気付いた。
トビと四葉は大物狩りのタッグ。
麻衣は二人を邪魔する気はなく、恩赦ポイントも微々たるもの。
いわば、二人にとって路傍の石。
それが麻衣の自身への評価だった。
――何故そんな質問をぶつけてくるんだ?
答えに迷った。
沈黙の帳が降りた。
それがまずかった。
「あー、オレ様たちに恐れを為してケツまくって逃げるのは百歩譲ってしょうがねえ。
オレ様たちが強すぎるのが悪い。
だが、刑務拒否をこうも堂々と宣言されちゃあね。
連帯責任で処罰を受けちまうのは、ちょっと困るんだわ」
■
不穏な雰囲気が漂う。
剣呑さを裏から覆い尽くすように、少女からは期待感溢れる愉しげな殺意が放たれる。
――しくじった。
相手を見誤ったと、麻衣は悟らざるを得ない。
二人は刑務放棄者が出ることを望まない。
日和見の方針を表に出すべきではなかったのだ。
トビたちは、ヘルメスやジョニーとはメアリー・エバンスの始末を持ちかける形で別れた。
彼らがメアリー・エバンスを救出するか、殺害するか、それとも返り討ちに遭うか。
あそこで別れても刑務の破綻にはつながることはない。
仮に救出に成功したところでそれはトビたちの関知するところではない。
だが、麻衣とこのまま別れる選択肢はない。
ただ逃げ隠れするだけの彼女をみすみす見過ごすことは、刑務への積極性を疑われる。
他方、麻衣はトビの名を聞いて脱獄を連想しなかった。
人の事情を探らない、行儀のいい模範囚なのだろう。
アビスにしては短い刑期も、そのあらわれと言えよう。
裏を返せば、それは人の縁に乏しいということである。
トビが求めるのは、規律と調和、秩序に重きを置くクラス委員のような存在ではない。
目的達成のために、苛烈な手段ですらも戸惑わずに実行できる新進気鋭の個人事業主のような存在だ。
麻衣はトビの求めるラインに達しない。
同行者にも協力者にも依頼先にもなり得ない。
そんな麻衣に割り当てられる役割は一つ。
狂犬の"遊び相手"である。
トビと四葉の契約。
それは、護衛や協力者として同行を頼む代わりに、"遊び"や"ポイント稼ぎ"を手伝うという契約だ。
狂犬四葉はもう涎を隠そうともしていない。
ジョニー、メアリー・エバンス、無銘。彼女の求める遊び相手たち。
彼らとの戯れを次々却下したことで、不満の影がちらりと覗いた。
これ以上の引き延ばしは信頼関係のイエローゾーンに突入する。
四葉を斬り捨てる未来も来るのかも知れないが、少なくとも今ではない。
潮時だ。
数瞬のアイコンタクトをかわす。
顔を顰めていた四葉がその意味を理解し、満面の笑みを浮かべた。
その笑顔は好物――一例としてはスイーツやドリンクなど――を目の前にした女子が浮かべる極めて無垢なものだ。
しかし四葉が握るのは銀色のナイフやスプーンではなく白銀のランスやハルバードだ。
彼女が喰らうのは、その甘味と口当たりで心を蕩かせるスイーツなどではなく、血生臭く血肉飛び散る闘争のエネルギーである。
「刑務作業のサボりを見つけちゃ、仕方ないなあ。
逃げてサボってご飯抜きはいただけない!
だから、闘ろうか!
『quatre chevalier』! ここに展開だ!」
白銀の騎士たちが姫将軍を守るようにその場に陣を組めば。
「マンティズ! アルファ! ギガンテス!」
《てめぇら、うちのお嬢様に手ェ出そうってんなら、手足の一本、二本くれぇは覚悟してもらわねえとなあ!》
〔麻衣様の障害、不肖このアルファがすべて取り除きましょう〕
〈お嬢! 任せとき! あいつらみんな踏み潰しちゃるけん!〉
カマキリのマンティズ、人型バッタのアルファ、巨大カブトムシのギガンテスの三体が彼女を守るように立ち塞がる。
白銀の騎士団と昆虫型眷属の群れ。
二つの軍団は正面で相対し、戦いの幕が静かに、しかし確実に引き上げられた。
■
ブラックペンタゴンの前で激突する二つの軍団。
プレートアーマー軍団と巨大昆虫の群れは、さながら魔族の砦を攻める騎士団と、迎え撃つ魔族の守備隊のようにも見えるだろう。
「さあ、まとめてぶちかませ!」
『オジェ・ル・ダノワ』のハルバードがぶぅんと虚空を震わせれば、
〈軽かね! 棒きれか何かなんか!?〉
ギガンテスはそれに応えて巨大な角を撃ちつけ、バリバリと空間を震わせる。
《一刀流のがらんどうが二刀流に勝てるかよ!》
マンティズはカマを振り上げて威嚇のポーズを取り、
「そっちこそ! カマごと斬り飛ばされないように気を付けなよ!」
『ランスロット』と円陣を描くように対峙し、一瞬のうちに数度切り結ぶ。
〔誠に申し訳ございませんが、麻衣様はあなた方を気に入らないご様子。
速やかに片づけて御覧に入れましょう〕
アルファがその圧倒的な跳躍で四葉を直接狙ったかと思えば、
「ええ……、そんなにすぐ終わったらもったいないじゃん! もっともっと楽しもうよ!」
長弓兵『ラ・イル』が待ち構えていたかのように矢の雨を浴びせかける。
羽を器用に動かして矢雨の隙間を縫いながら急降下するアルファに対して、
下で待ち構えていた槍兵『ヘクトール』がその鋼鉄並みの外骨格ごと穿つ強烈な一撃を放った。
指揮官四葉へのダイレクトアタックは防がれ、アルファは若干離れたところへと着地することになった。
現状としては、膠着。
四葉は前線で三体相手に器用に言葉をかわしているが、
麻衣とトビの二人は少し離れたところから押し黙って戦況を眺める構図だ。
契約を履行こそしたものの、トビとしては麻衣の生死自体はどうだっていい。
適当に二、三回撃ち合った後に逃げてもいいし、ポイントと化してナイフとデイパックに換わってくれるならさらに歓迎だ。
けれど深追いをする気はない。
看守からのマークの軽減。
四葉の不満の解消。
これが主目的。
この段階で深い傷を負うことだけは避けたいところだ。
「つっても、そうは問屋が卸さねえってか」
トビを狙った白。
手に持った石で、パシッと受け止める。
{おっ、オッサン、カンいいじゃ~ん}
それは糸だった。
確かな粘性を持ったそれは、さながら釣りのようにトビの手から石を奪っていく。
糸を射出した岩のようなそれ。
軽薄な声でトビを称賛したそれは、人間大もある大蜘蛛だった。
眷属の一体、タランチュラのネビュラである。
{お嬢、悪ィ! おっさん巻き取るのしくっちまったわ!
あまりに動かねーもんだから、痺れ切らしちまってよ!
ガラ空きのお嬢を狙ってくると思ったんだがなあ?}
「おいおい、オレ様はこれでも紳士で通ってんだぜ?
アンタのごまんとある目にゃ、オレ様が淑女を後ろから襲うような野獣に見えんのか?」
トビはネビュラの脚から放たれる強靭な糸を、軽口を叩きながら、ほいほいとかわしていく。
通路いっぱいに張り巡らされた感知センサーを、その身軽さと柔らかさだけで突破したこともあるのだ。
分かりやすく直線状に放たれる糸など、6発同時に来たところで当たるはずがはない。
{襲ってきた側が言うセリフじゃなくね? あとさ、紳士って人種は、あんな狂犬引き連れんの?}
ネビュラは長弓兵『ラ・イル』から放たれる矢を、軽口混じりに糸で絡めとり、地面に叩き落していく。
タランチュラの糸は一般的に、狩りよりも滑り止めや感知用の仕掛け罠として使われるのだが、
ネビュラの糸は他の蜘蛛種の狩り用の糸に強度は劣らない。
麻衣のイメージに沿った進化である。
「ま、そこら一般の紳士野郎なら、お上品な連れを選ぶだろうがねえ。
凡夫じゃ乗りこなせねえじゃじゃ馬を御せるのもまたダンディだと思わねェか?」
{あ~、お嬢は高嶺の花すぎて眩しかったってことか?
そりゃ仕方ねえな、仕方ねえよ。
だけどな、ここだけの話、お嬢の本棚にゃ世界の拷問全集とかがあってだな……}
「トビさん! 全部聞こえてるよ!
別に否定しないけど!」
「ネビュラ! 人のプライバシーをみだりに晒さないでくれ!」
《つーかネビュラ! くっちゃべってる余裕があんならこっち来て手伝え!》
味方陣営からの叱責に、両者そろって、肩を、脚をすくめた。
「んで、まだお仲間、いるんだろ?」
{さあて、どうだかね?}
いないはずがない。トビにはその確信がある。
トビが言うのもなんだが、麻衣は明らかに戦場にはふさわしくない素人だ。
なのに、素人の割にはかなりリラックスしているように見える。
よほどの楽天家か、絶対の信頼を置く側近を手元に残しているか。
そして麻衣の性格から類推するに、前者はあり得ない。
そこまで分かっていながら、リスクを承知で飛び込むほど切羽詰まった状況でない。
「ネビュラ! そのまま弓兵とおじさんを引き付けておいて!
マンティズは剣士を牽制!
アルファ! ギガンテス! 二体で鎧一つ潰すよ!」
{おっけ~}
〔麻衣様の仰せのままに〕
《つーかお嬢様! 牽制って言うけどよ、別にこのままぶった斬っちまっても問題ないんだろう!?》
長弓兵『ラ・イル』の放つ矢をネビュラが絡めとり、戦場の片隅まで槍兵『ヘクトール』を引き付けておいたアルファが一息に舞い戻る。
『ヘクトール』はその機動力に追随できず、トビはネビュラと睨み合いだ。
フォローをしようにもネビュラの8つの目の一つが確かにトビを捉えている。
アルファは邪魔者を置き去りに、ハルバード兵『オジェ・ル・ダノワ』の背後を確保。
そのまま一息に蹴破ろうとしたところで、
〔!?〕
〈なんば起こったとや?!〉
白銀の鎧が消え、アルファの脚は空を蹴る。
《俺の相手も消えやがったぞ?》
{こっちもオッサン以外は以下おなじってな。負け、認めちったか?}
「あ~……ナイトウくん! オレ様がいくら紳士だからって、軍団全員引き受けるのはちとばかし厳しいな?」
四つの甲冑が戦場から消え失せ、麻衣と四葉との間に立つのはトビ一人。
このまま放置すれば、30秒持たないだろう。
羽虫に集られ刑罰執行完了である。
〔麻衣様、今が好機なのでは?〕
アルファの進言に、麻衣はゆっくりと首を振る。
四葉の闘志は未だ燃え盛り、これで終わったとは到底思えない。
「……深追いはしないし。
あれはきっと、私たちと同じ系統のネオスでしょ?
だから、出すも戻すも自由自在、そうだね?」
「うわ、慎重派!
まっ、そうじゃなきゃ無銘さんの誘いを断ったりはしないか!
ほんと、いいネオス持ってるのにもったいなさすぎだって!」
四葉が手を振ると、再び甲冑の四騎士は四葉の周りに展開する。
もし焦って攻めに転じていれば、召喚直後の騎士に周囲を囲まれ、無惨に打ちのめされていただろう。
「一対一×さん、三つのバトルで楽しさ三倍だよ!? おトクだよ!?」
「あいにく、私はバトルジャンキーってガラじゃないんだ。
刺せそうなら刺すし、出し抜けそうなら出し抜く。
バトルの素人に美学なんて求めないでほしいな」
「せっかく紹介してるのに~。
ってか麻衣ちゃんさ、なんか口調変わってない?」
「そりゃ、そっちが交渉の机蹴ったし。
取り繕う理由もないし、素の言葉遣いでいかせてもらうとするさ」
「もっと自分に素直になったほうがいいと思うんだよねー。
全力出してスッキリしたら絶対気持ちいいって!
だから、仕切り直そ! もう一回! もう一回!」
「……できればさ、このまま引き分けということで収めないかな?」
「ダメダメ、こんなの、ただのウォーミングアップじゃん。
本番はまだまだこれからだって、こ・れ・か・ら!」
お節介なスポーツ少女に絡まれる文学少女の構図である。
若干イラっとしたのをそっと抑え込んで、麻衣は真剣に向き合う。
騎士と眷属、誰かが動けば戦火の火蓋が再び切って落とされるだろう。
すべての注目が戦場の真ん中に集まる。
一挙一動、衣ずれの音すら聞き逃さないように、集中する。
誰もが次の動きを待つその刹那。
甘く生ぬるい風が、ふわりと頬を撫でるような気がした。
「ねえ、人間さんたち、ごきげんよう。今晩は、月が綺麗ね」
柔らかな声が、鈴がころころ鳴るように響いた。
夜闇から浮かび上がってきたかのように、その女は立っていた。
誰一人として気付かないうちに、彼女は麻衣のすぐ隣に立っていた。
■
――なんだ、こいつは?
――いつからここにいた?
最初にその異様に戦慄を覚えたのはトビであった。
トビは世界中の看守や警備たちを煙に撒いてきた経験がある。
気配断ちのネオスこそ持っていないが、その隠形技能と洞察力は世界でも指折りといえよう。
そのトビが足音一つ拾えなかった。
そこに人間がいる気配すら感じ取れなかったのだ。
超力社会になってから、あり得ないことなどない。
トビはそんなことは重々承知だ。
そして今、そのあり得ないことが起きている。
今も目を閉じて、感覚だけに頼れば、そこに銀鈴と名乗る女などいないと断言できてしまう。
白銀と漆黒で構成された容姿を視覚で捉えることができて、
鈴の鳴るような声を聴覚で聞き取ることができるという事実だけが、彼女がそこにいることを担保している。
人間としての本能がギンギンと警笛を鳴らしていた。
今すぐ逃げろと培ってきた経験が叫んでいた。
〔きちきちきちきちきちきちきちきちきちきち……〕
《しゅっ…… しゅっ……》
〈ぎぃ、ぎぃ、ぎぃ……〉
{かち、かち、かち……}
次に異様を感じ取ったのは、麻衣の眷属たちであった。
アルファから、マンティズから、ギガンテスから、ネビュラから。
あんなに饒舌だった眷属たちから、一切の言葉が消えた。
「まあ、そんなに興奮しないで。私ね、銀鈴って言うの。
少し前から人間さんたちの戯れを見ていたのだけれど、私も仲間に入れてほしくなってね」
銀鈴と名乗る存在は、子守唄のように優しく、甘い声で囁きかける。
けれど、その声の印象とは裏腹に、白く冷たい手が背筋をそっと這うかのような、ぞっとするような悪寒がトビの全身を包み込む。
無数の幽かな囁きが這いずるように取り巻き、得体の知れない不快感が心の奥底ににじり寄ってくる。
「四葉。いつでも撤退できるように準備しとけ」
「トビさん、あの人と知り合い?」
「知らん。アビスじゃ銀鈴って名前も聞いたことがねえ。
……脱獄王のオレ様が、『あれの名前を知らない』んだ。意味、分かるよな?」
得体の知れなさを差し引いても、もっと単純に、その人間離れした容姿だけでも多少のウワサは流れてくるだろう。
人の口には戸が立てられない、それはアビスでも同じことだ。
娯楽の少ないアビスにおいて、囚人間で新入りや古参の収容者の情報は必ず漏れ出て広がるものだ。
口外が堅く禁じられている囚人であっても多少のウワサくらいは立つ。
昨日今日来た囚人でないのなら、例外はただ一つ。
目の前の女はアビスの奥底に封じられた災厄、『秘匿受刑囚』である。
■
「……ぁ」
宮本麻衣は、銀鈴の顔を認識できなかった。
黒いドレスを着て、銀糸のような髪をした、青白いヒトガタがいるとしか思えなかった。
顔を確かめようにも、なぜか目のピントが合わない。
月光に浮かび上がっているはずの魔貌は、モザイクのようにぼやけてしまう。
あまりに存在する世界が違いすぎると、本能が認識を拒むという。
麻衣は比較的平和な都市で育った。
政治家の汚職や暴力沙汰等はあれど、人の縁にも恵まれていた。
そんな彼女にとって、銀鈴という存在は、祠に封じられた悪霊のように、決して関わってはいけない存在だった。
なのに、怖いもの見たさというのだろうか。
恐ろしいものに惹かれ、好奇心のままに禁忌を侵す少年少女たちのように。
麻衣もまた、光すら吸い込むその闇黒に意識を吸い込まれていた。
彼女を拒みながりも、彼女に意識の大半を奪われ、ただ現実感を伴わない傍観に身を預けた。
「あら? 麻衣ったら、大事な兵隊さんを預かっているのに、目を離しちゃダメじゃない。
うふふ、でも心配しないで。私がマイの代わりに、兵隊さんを優しく導いてあげる」
――名前なんて、教えていないのに、何故?
――そういえばアルファが名前を呼んでたっけ。
そのころから、ずっと銀鈴は麻衣たちを見つめていたのだと理解した。
〔きちきちきちきちきちきちきちきちきちきち……〕
〈ぎぃ、ぎぃ、ぎぃ……〉
{かち、かち、かち……}
《……。 ……。 ……》
怯えて歯をガタガタ鳴らすかのように、眷属たちが羽や牙を撃ちつけ音を出す。
それは指揮権を勝手に『移譲』されたことへの言葉なき抗議のようにも思えた。
けれども、できるのはそれだけ。
絶対的な差を前にしては、虚しい抗議を繰り広げるのが精々だ。
「さあ、かわいいかわいい兵隊さん。
こんなに素敵な舞台で戦えるあなたたちは幸せよ?
あの誇りたかい煌びやかな騎士さんたちを、足元に組み敷いてあげましょう?」
天使の聖歌のように心地よい声色だった。
そして、その聖歌は麻衣の眷属たちの小さな脳に染み渡った。
――一片の鉄屑も残さずに敵を蹂躙せよ。
そんな命令が、彼らの脳を支配した。
■
スタンピードという現象がある。
命の危機を感じ取るほどの悪天候や、生育環境のストレス、捕食者の存在。
異常に触発され、集団が一斉に移動をし、その進路にあるものをなぎ倒して進撃する現象だ。
あるいは四葉の愛読する漫画本で例をあげるならば、ダンジョンの異常個体に触発されて、魔物が町にあふれ出る現象と定義づけることもできるだろう。
〔きちきちきちきちきちきちきちきちきちきち!〕
〈ぎぃ! ぎぃ! ぎぃ!〉
{かち! かち! かち!}
《……! ……! ……!》
狂乱のままに目の前の敵に襲い掛かる昆虫の群れ。
WEB小説原作の漫画本の世界にて頻発する、スタンピードに他ならない。
《……! ……! ……!》
我が身を捨てて斬り込んだマンティズが、長槍兵『ヘクトール』の左腕をそのカマで斬り飛ばし、
剣士『ランスロット』に左のカマを斬り落とされる。
{かち! かち!}
ネビュラがマンティズにトドメを刺そうとしていた『オジェ・ル・ダノワ』の胴に糸を巻き付け、絡めとって引き倒せば、
『ラ・イル』が空を斬る鋭い射撃でネビュラの眼の一つを潰す。
〔きちきちきちきちきちきちきちきちきちきち!〕
アルファが上空から鉄槌のように重い脚撃を『ラ・イル』に叩き込めば。
〈ぎぃぃ!〉
ギガンテスが重機のように地面を削りながら突き進み、四騎士をまとめて弾き飛ばす。
あくまで相手を追い払うことを主眼において戦っていた時とは違う。
勝利をつかむために、命を顧みない。
手加減という文字も撤退という言葉もない。
これは撤退戦ではなく、殲滅戦である。
「ナイトウ! なんか押されてねえか!?」
「いい、いいよ! この感覚、たまらない!」
トビの撤退準備をしろという忠告をしっかりと聞き遂げておきながら、四葉はますますギラギラと目を輝かせる。
そもそも、彼女は銀鈴に慄いていない。
得体の知れない存在の登場には確かに目を奪われはしたが、彼女は彼女にとっての正気を保ったまま、敢えて何も口を挟まなかった。
だって、そのほうがもっと面白くなりそうだったから。
色々と『お誘い』こそしたが、麻衣があまり乗り気でないことくらい、察しがつく。
そんなところに、戦況を一気に加速させる存在があらわれたのだ。
散らされる騎士たち。
群れて襲いかかるモンスター。
得体の知れない雰囲気をまとわせながら現れた敵の親玉。
理不尽に訪れるピンチは、英雄譚を彩る最高のスパイスである。
秘匿受刑囚がなんたるものぞ。
命がヒリつく感覚に、背筋がぞくぞくしてくる!
「さあ、ギアを上げるよ!
鋼 人 合 体 !
」
膝をついていた『オジェ・ル・ダノワ』が光となり、四葉の元へと吸い込まれていく。
次の瞬間、そこに立っていたのは、視界の狭まるヘルム以外を装着し、完全武装していた四葉の姿であった。
騎士たちは全員、中身は空っぽのがらんどうだ。
見方を変えればそれは、武装として装着することができるということにほかならない。
ギガンテスが狂乱したようにその大角を振り回す。
人間の胴体よりも太い大角に打たれれば、人間の頭など木くずのように砕けてしまうだろう。
「あはっ、もっと派手にぶつかっておいでよ!
遠慮なんていらない! 全部叩き潰してあげるからっ!」
昆虫界最強の鉄槌のような一撃を、四葉は巨大な武器を豪快に振り抜いて、地面に叩き落とした。
体格の大きさを覆す超人的な膂力を発揮する四葉。
脳の自認に肉体が引っ張られて変質していく現象は、ネイティブ世代ではよくあることだ。
騎士に囲まれ、安全な後方から指示するだけの子供が、樹魂に憧れるはずがない。
無銘と引き分け、友人のように言葉をかわすはずがない。
英雄に憧れ、戦士たちの背中を追ってきた四葉の肉体が脆弱なはずがない。
「さあ、ぜぇ~んいん、ぶっ飛べええ!!」
巨大なハルバードを振り回して地面に叩きつければ、
その余波は地を這う蛇のようにうねりながら、裂け目を大地に刻み、黄色い土煙を舞い上がらせる。
風に揺れていた背丈の高い雑草を根ごと容赦なく引き抜き、風に散らす。
ネビュラの脚が二本千切れ飛び、アルファの鋼鉄の装甲を貫いて青い血が飛び散る。
角を地面に突き刺したまま地に伏しているギガンテスの巨躯ですらわずかに浮かび上がり、次の瞬間に地響きが巻き起こった。
■
「まあ、とても素敵だわナイトウ!
鎧をまとって自分を奮い立たせているのね!
人間さんって本当に興味深いわ!」
自分の指揮する兵が地面に沈まされているというのに、銀鈴は子供がはしゃぐように声を弾ませる。
彼女の前で繰り広げられる血みどろの乱戦と化した戦場は、呆けていた麻衣が正気を取り戻すには十分な刺激だった。
「…ぁ、……あ、……ああっ!」
眷属たちを呼び戻すことができない。
自分のネオスのはずなのに。
生まれた時からいる、自分の家族のはずなのに。
「戻れ! 戻って! みんな、戻ってよ!」
麻衣は必死で撤退命令を出すが、狂乱は止まらない。
四葉に狂戦士のように挑んでは、薙ぎ払われる。
「ねえ、麻衣。あなたの大事な兵隊さんはとても精強だと思うわ。
けれどね、なんだか力を出し切れていないように見えたの」
得体の知れない力で麻衣の眷属を掌握した、顔のぼやけた人間のような何かが麻衣に語り掛けてくる。
メアリーが麻衣に自分を出すように必死で語り掛けるが、麻衣はその勇気が出なかった。
彼女まで正気を失ってしまうことが恐ろしかったから。
「私の国でも、兵隊さんたちは最初は力を出し切れなくてね。
だから、私は兵隊さんたちを二つに分けて、戦わせてみたの。
弱い兵隊さんなんて、いらないじゃない?
だから、負けたほうには、罰を与えることにしたわ。
最初は少しやりすぎちゃったけれど、きっと心が通じたのね。
兵隊さんたちは、みるみるうちに強くなっていったわ」
言っている意味が理解できない。
今そんなことを話して、いったいなんだと言うのだろうか。
一刻一刻につき、眷属の青い血潮と赤い命の雫が混じり合い、四葉の白銀の鎧を染め上げていく。
「十回くらい繰り返したかしら。
そのころには、一人一人がとても勇猛で果敢な兵隊さんに仕上がってくれたと思うわ」
麻衣に話しかけていた何かは、いつの間にか麻衣の隣を離れ、ふっと霞のように消えていた。
声を辿ると、地に伏していたギガンテスの巨体の隣を空中をスライドするように静かに移動していた。
ギガンテスの万を超える複眼に、闇に塗りつぶされたような眼孔と、妖しく艶めく笑みを浮かべた口元が映っていた。
「麻衣の兵隊さんには、きっと痛みと恐怖が足りなかったのね。
負けてしまったら、自分がどれだけ恐ろしい目に遭うのかしら?
そんな、震えるような想像をめぐらせるだけの経験が足りなかったんだと思うの。
だから、ほら」
ゆったりと歩く銀鈴の隣で、白銀がきらめいた。
時間が止まったかのような静寂の中で、黒い何かがぼとりと鈍い音を立てて地に落ちた。
それは銀鈴の握るナイフが放つ鋭い輝きであり、それはギガンテスの触覚であった。
昆虫にとって、人間の手足にも似た大切な器官である。
それが僅かな乱れのない一閃で、無惨に斬り離されていた。
〈ぎぃぃぃぃぃ!!〉
ギガンテスの威嚇と悲鳴が入り混じった絶叫が、空間を震わす。
恐怖は眷属に伝播し、恐慌が理性と引き換えに諸刃の剣とも呼べる猛々しいエネルギーを生み出していた。
「こうするだけでみんな、とっても勇敢で強くなったでしょう?」
その光景を微笑を浮かべて眺めやりながら、銀鈴は平然と言い切った。
「……なんで?」
「え?」
「……なんで、そんなことができるんだい?」
必死で絞り出した疑問の声に対して、銀鈴は涼やかな声で言い放った。
「一人と二人で遊戯に興じているのなら、どちらに寄り添うべきかは決まっているでしょう?
たった20の子を、二人で虐めるのは感心しないわ」
それで、これか。
ああ、こいつは本当に人間の心を理解しない、化け物だったんだ。
麻衣は心の底から、そう思った。
■
「さっきより速くなって!? うわ、うわわわわ……!」
アルファはますます縦横無尽に飛び回り、マンティズの刃はさらに速く鋭くなる。
ネビュラは糸を射出しながら、大牙で四葉の肉体を挟みちぎろうとする。
その獰猛さは手負いの獣さながらである。
四葉のまとう騎士は『オジェ・ル・ダノワ』のみであり、他の三体はいまだ場に健在であるが、現在、彼らは打ち捨てられているに等しい。
散発的な攻撃をおこなっては、眷属たちにはじき返されているだけだ。
これは単純に、四葉が指揮するだけの余裕が失われているのである。
四葉の完全制御下にある騎士たちは、麻衣の眷属と違って暴走することはないが、四葉の思惑を超えることはない。
いわばコントローラを眼前に四つ置いて四画面を同時操作するようなもの。
脳のリソースを他に割かれれば、たちまちにでくの坊となってしまう。
前方から、上方から、足元から、休む間もなく襲い来る攻撃に、四葉は防戦一方、じりじりと追い込まれていた。
さらに悪いことに、四葉と白兵戦を繰り広げる三体の眷属のその後ろ。
目を疑うような光景が展開されていた。
「あートビさんごめん、やっぱりヤバいかも」
「別に謝る必要はねえよ。無理やりにでもお前を引っ張って逃げなかったオレ様が悪い」
〈ぎ、ぎ、ぎ!〉
ギガンテスが地面に角を突き刺し、固い地盤を丸ごと持ち上げた。
先ほどまで地に伏していたとは思えないほどの膂力だ。
人間など一瞬にして押し潰してしまえるほどの、20メートル四方に及ぶ広大な土塊を、4桁トンを超えようかというそれを軽々と掲げ上げたのである。
三体の眷属がその身を引く。
次の瞬間、入れ替わりに向かってくるのは大地そのものであろう。
手をこまねいていれば、二人仲良く墓標の下だ。
「ナイトウ、合わせろ!」
「おっけ!」
トビがおこなったそれは、投石にすぎない。
石を拾い、体をひねって勢いをつけ、その力が頂点に達したところで石を手放す。
だが、超力によって極限を超えたしなりから放たれる投石は、超力社会のプロ野球選手並みのスピードに及ぶ。
ターゲットはギガンテスのもう一対の触覚だった。
残された感覚器官を震わされたその巨虫は身体の均衡を崩されて、彼はよろめくように身を傾けた。
四葉はその機を逃さない。
半ば打ち捨てられていた槍騎士『ヘクトール』を手早く起き上がらせると、騎士がギガンテスの側面から槍で以って腹部を突いた。
〈ぎぃぃ……〉
ギガンテスはバランスを崩し、他の三体を巻き込む形で土塊を地面に落としてしまう。
心を追い立てるような恐怖も滾るような戦意も、眷属たちからは感じ取れない。
だから、四葉は一瞬だけ緊張を解いた。
「ナイトウ、まだだ!」
気配も前触れも一切なかった。
四葉の視界の端、するりと空気のように入り込んできたのは、微笑を浮かべた不気味な暗い影と鋭く光る刃先であった。
ナイフは四葉の頸動脈を正確に射抜く軌道で迫りくる。
――間に合わない。
四葉はそう悟った。
■
銀鈴のネオスは、一定の範囲において、自分以外のネオスを無効化するものだ。
それだけでも破格だというのに、誕生日を迎えるごとに身体能力が倍加されていく。
生誕地固定という制約はあるし、
仮に銀鈴が本条清彦のファミリーになったとしても、ファミリーになってから効力を発揮するまでに一年かかるという取り回しの悪さもある。
それらを差し引いても破格のネオスである。
そんなネオスには、刑務作業に持ち込めないという欠点のほかにも、重大な欠点があった。
四歳の誕生日、ベッドから降りたようとしたときにベッドを破壊した。
五歳の誕生日、ベッドから降りたときに床板を踏み抜いた。
六歳の誕生日、目を覚ますとベッドが割れて床にクレーターができていた。
七歳の誕生日、目を覚ますと寝室の階下にいて、穴の開いた大理石の天井を見上げていた。
十年も経てば人間をまとめて塵芥のごとく鏖殺することすら可能なネオスは、代償として日常生活に致命的に向いていなかった。
仮に彼女よりもわずか十秒前、開闢の直前に誕生した『最後のオールド』、並木旅人が同じネオスを持っていたなら、
彼は喜んでこのネオスの破壊の側面を伸ばしただろう。
だが、銀鈴は開闢の直後に誕生した『始まりのネイティブ』だ。
新たに生まれ変わったこの世界が好きだ。
自らを新人類の始祖と自覚し、受け継いだ姓こそ捨てたものの、人間が好きなことだって変わりはない。
世界を己がままにしたいだけであって、世界を壊したいわけではないのだ。
故に彼女は力のコントロールを抑え、無用な破壊を伴わない方向へと進んだ。
歩行、睡眠、会話、食器の上げ下げ。
呼吸、気配の発露、心臓の鼓動。
ありとあらゆるアクションに対して、あらゆる場面で力をコントロールし続けた。
一日二十四時間、一年三百六十五日。
文字通り休む間もない鍛錬である。
刑務作業に参加している名だたる武術家たちが力を解き放つ方向へと肉体を磨き続けてきたのだとしたら、
銀鈴は力を抑える方向へと肉体を磨き続けた。
10歳でまわりに影響を与えないために力を1/1000にまで抑えられるようになった。
11歳でまわりに影響を与えないために力を1/2000にまで抑えられるようになった。
12歳でまわりに影響を与えないために力を1/4000にまで抑えられるようになった。
ネオスから解放された常人の肉体でこれをおこなえば、それは神業的な気配断ちと同義となる。
眼前の相手に一瞬の動作の予兆すらも感じさせない、幽鬼のような身のこなしとなる。
これが、美火の目から人形に例えられた異様な印象の理屈である。
そうでもなければ、仮にどれほど恐れおののいていたとしても、
15人もの超力者を一瞬で叩きのめせる実力者が、
何をされたのかも分からないままに失明させられることはないだろう。
おぞましい雰囲気に包まれているのに、害意も殺気も不自然なまでに出所をつかみ取れない。
肉体がそこにあるのに、心臓が動いているのかどうかすらわからない。
あらゆる所作に予備動作が一切ないため、動いたのだと認識したときには既に行動が終わっている。
そのくせ、存在を意識してしまえば、その深淵たる業の深さに引き寄せられ、魂を絡めとられるように意識がとらわれてしまう。
四葉のように第六感を絡めて、殺意や闘志を嗅ぎ分けながら戦う者や、
麻衣の眷属たちのように野生の勘を頼りに戦う存在にとっての大敵である。
だが、対峙する方法は皆無ではない。
要は直感を潔く手放して、徹底的に理詰めだけで動けばいいのだ。
銀鈴のナイフは四葉の柔肌をわずかに食い破り、刃を血に濡らしていた。
トビが銀鈴に突き付けた『ラ・イル』の矢は、その白磁のような肌をかすめ、あふれ出た紅い雫が矢先を静かに染め上げていた。
■
情報収集は脱獄の基本。
牢の立地、カメラの位置、看守たちのパーソナリティ、囚人たちの性質。
ありとあらゆる情報を集め、ただ一度の本番のために徹底的に備え上げるのが基本だ。
四葉が眷属たちを抑える裏で、トビはずっと銀鈴を分析していた。
深淵の縁に立って闇の底を覗き込むような慄然を恐ろしさに耐えつつ、底知れない不気味さの正体を探っていた。
おぼろげながらなんとか納得のいく対抗策をひねり出し、打ち出された先手に食らいついた。
「オレ様は小心者でね。
オレ様の活躍に脳を焼かれた嫉妬深い野郎どもがどこから這い寄ってくるか、いつも背筋が凍る思いで目を光らせてる。
ましてや、舞踏会で視線を独り占めするくらいのご令嬢が近寄ってきたとあっちゃ、無視するなんて選択肢は消えちまうわな」
巨大な脅威を退けたその瞬間、人の安堵にぬるりと入り込んで不意を突くというのは、脱獄においても使い古された手段だ。
銀鈴は決して姿の見えない透明人間ではない。見てから防御が間に合わないスピードではない。
分かっていれば、対処は間に合う。
「こんだけ濃密で危険な匂いを撒き散らしてるってのに、アンタの存在は霧みたいにつかみどころがねえ。
第六感ってヤツさえ、かすりもしないらしい。
それがアンタのネオスかい?」
「銀鈴。銀鈴と呼んでほしいわ」
「あ~、悪かった。
そいつが銀鈴嬢のネオスかい?」
その呼び名に一瞬だけ意表を突かれるも、銀鈴は微笑を湛えてトビの問いかけを否定する。
「人間さんは私の気に当てられただけでおかしくなっちゃったことがあるの。
それは、私も退屈に感じちゃってね。
だから、みんなと少しでも仲良くなれるように、そっと気配を抑える工夫をしてみたの。
ね、これはネオスなんかじゃないわ。
どうかな? 私、ちゃんとがんばってるでしょう?」
「そうかいそうかい、そいつは恐れ入ったよ」
いくつもの超常的な現象を起こしながら、銀鈴はネオスを一切使っていないと言い切る。
それが真実なら、秘匿受刑囚として監禁されるにふさわしい危険さだ。
飼い殺しにしていないでさっさと死刑にするべきだろうと、看守たちに抗議したい気持ちだった。
「私ね、実はネオスには少し縁が遠かったの。
これまで、ネオスを操る人たちを目にする機会もほとんどなかったのよ。
なのに今、こんな風に色とりどりのネオスに触れられるなんて、まるで素敵な贈り物じゃない?
ナイトウをきゅっと追い詰めたら、次にはどんな可愛らしくて素敵なネオスの使い方を見せてくれるのかしら?
そう思うと、なんだか胸が躍っちゃって」
銀鈴の語りに乗じて、四葉にナイフの切っ先から逃れるように目線を配らせる。
だが、銀鈴は言葉を紡ぎながらも、1ミリたりともナイフの切っ先を動かさない。
取り回しの悪いハルバードで超接近戦に移行するよりは、ナイフが頸動脈を切り裂くほうがはやいだろう。
「けれどね、少しはりきりすぎちゃったかもしれないわ。
ふふふっ、それとも、トビだったかしら?
次はトビが、私に素敵なネオスのお披露目をしてくれるの?」
「おいおい、人にモノを頼むときはまず自分からって聞いたことないか?
オレ様のネオスは他人にタダで見せびらかすほど安くはねえ。
どうしても見たいってんなら、まずは銀鈴嬢のネオスを教えてくれよ」
通常、こんなやりとりで命綱たるネオスを明かすはずがない。
だから、ダメ元の口八丁である。
だが、銀鈴はなんの躊躇もなく、その命綱を口にした。
「システムA」
「……なに?」
「私からネオスの一部を奪って作られた、忌々しい装置。
これを壊すまでは、残念だけど見せてあげられないわ」
システムAがとある能力者の超力原理を研究したことで生み出されたのは囚人たちの間でも有名な話だ。
その大元が、目の前の女の超力だというのか。
だが、銀鈴の超力が本当にシステムAだというなら。
――これ以上の番狂わせは起こらない。
「そうか、システムAが銀鈴嬢のネオスなのかい。
だったら、オレ様も約束通り、ネオスを見せねえとな。
ま、派手にお披露目してやるから、しっかり見とけよ」
トビがそう宣言するや否や、銀鈴の目を、白い光が一瞬眩ませ、視界を奪った。
■
トビのネオスは『スラッガー』。
肉体のあらゆる部位を軟化させるネオスである。
だが、肉体の軟化で光を出すことなどできるはずもない。
それでは、何をしたのか?
トビが軟化させたのは、左手だ。
デジタルウォッチを装着している左手だ。
通常、左腕に装着しているデジタルウォッチを左手で操作することはできない。
だが、手首と指を過剰に折り曲げることができるのならば、ライトの操作くらいは容易い。
銀鈴が光に怯んだのは時間にして僅か0.1秒。
正しく一瞬としか言いようのない時間だ。
だがそれだけの時間があれば十分。
四葉が選択したのは逃亡でも攻撃でもなく、防御であった。
銀鈴は手刀でも貫手でもなく、ナイフを使っている。
もはや妖術としか言えない妙技の数々だが、本質的には華奢で非力なのだ。
ナイフと四葉の首の間に、0.1秒分の隙間が発生する。
展開した騎士を呼び戻すのでは間に合わない。
戻し、呼び出し、装着するの三手が必要だからだ。
だが、すでに装着している騎士、『オジェ・ル・ダノワ』のヘルムであれば、呼び出すだけの一手で済む。
遅れて追いついてきたナイフとヘルムとで金属同士がぶつかり合う甲高い音が鳴り響き、反動で銀鈴は手からナイフを取り落とした。
このタイミングでナイフを弾かれるのは想定外だったのだろう。
常に微笑を浮かべていた銀鈴が面白くなさそうに口を曲げ、これまで一度も抜かなかった銃を取り出したが……。
〈ごおおおおおおおおおっっ!!〉
「あらっ?」
銀鈴の後ろから、地響きとともに進撃してくる巨躯。倒れ伏していたギガンテスだ。
「残念ながら、宴もたけなわってところよ。
今晩のうたげは、これでお開きだ」
トビの視線はライトと共に、銀鈴を通り過ぎてはるか後ろにまで到達していた。
そこにいたのは、体を起こしていたギガンテス。
カブトムシは夜行性だが、光に集まる習性がある。
脱獄ジャンキーとなる以前に男の子を経験したトビもまた、当然そのくらいの知識はある。
ギガンテスの体躯はブルドーザーのように重剛だが、トビのネオスであれば地面と肉体の間に隙間さえあれば、回避には十分だ。
だが、どうやら今回は、回避をする必要はないらしい。
麻衣の眷属たちに降りかかった恐慌は、圧倒的な恐怖と格の違いに起因するものだ。
自分たちとそう変わらない実力の小男が、その相手に一矢報いることができるのであれば。
そんな光景を見せつけられたのであれば。
恐怖は拭われ、かけられた魔法は解ける。
散々自分を弄んだ相手に一矢報いることができるのだ。
今のギガンテスのスピードは、人類の全速力よりもほんの少し遅い程度。
いかに巨躯といえど、人体を轢き潰すにはパワーが足りない。
「ねえ、兵隊さん? 私はブラックペンタゴンから離れるつもりはないのだけど……。戻ってくれないかしら?
もしお願いを聞いてくれないのなら……ちょっとだけ心が痛むような、ひどいことをしなくちゃいけないわ」
銀鈴は向かってきたギガンテスの大角に対して、衝撃を殺して器用に掴まり、お願いと称してそっと囁く。
だが、ギガンテスはその誘惑に屈しない。
銀鈴を大角で掬いあげたあと、ひたすらにまっすぐ進撃を始めた。
その態度に失望を覚えた銀鈴は、静かにため息を漏らした。
手に握られているのは、彼女の容姿には似合わない、黒光りする鉄の筒だ。
ぱん。
ギガンテスの左目が潰れた。
ギガンテスは止まらない。
ぱん。
ギガンテスの触覚が潰れた。
ギガンテスは止まらない。
ぱん。
ギガンテスの右目が潰れた。
ギガンテスは止まらない。
麻衣から引き離すため。
ただその唯一の目的だけを瞳に焼き付け、他の何にも惑わされずに突き進む。
痛みを麻薬に変え、恐怖を陶酔の糧とし、腹に大穴が開こうが、感覚を奪われようが、
タフな肉体にモノを言わせて、決して止まらずまっすぐ突き進んでいく。
途中下車を許さない絶妙なスピードで、乗客をはるか遠くまで運んでいく。
はじめて銀鈴の顔が不快に歪むが、この巨大運送車は止まる気配がない。
ギガンテスはすでに意識を失い、命が零れ落ち、もうじき死ぬのだろうが、停止する気配は未だない。
「……少し、遊び過ぎたかしら?」
悩ましげにつぶやき、僅かに空を見上げると、バッタの眷属であるアルファが麻衣を抱えて跳躍し、戦場から離脱しているのが見えた。
銀鈴は月を見上げながら、しばらくの間、運命に身を任せることに決めた。
■
「ナメプされちゃったなあ。
銀ちゃん絶対銃のほかにも色々持ってたでしょ。
なのに、ナイフ一本しか使わせられなかったんじゃ、なんか負けた気分」
「殺されかけといてそんだけお気楽に話せるお前にゃ、素直に一目置かざるを得ないよ。
あと、ありゃ銀ちゃんってガラじゃねえだろ。どこの酒場のオヤジだ」
「じゃ、銀様?」
「わぁった、わぁった、銀ちゃんでいいよ」
確かに銀鈴はギガンテスによって先の戦場から追放された。
だが、あれでくたばったと考える楽天家はアビスには一人もいないだろう。
対面すれば対策のしようがある技術も、闇に紛れて襲われてしまえばどうしようもない。
本人の性格柄、闇討ちをしないタイプにも思えるが、刑務終了までの22時間、いきなり遭遇する可能性があるのは始末が悪い。
麻衣陣営とも小競り合いどころではない死闘となり、当然恨まれているだろう。
当初の想定はだいぶ甘かったと言わざるを得ない。
「で、割と散々な目に遭った割には、トビさん嬉しそうじゃない」
「欲しかったものが手に入ったんだ。
棚ぼたと偶然の産物なのは間違いないが、危険を冒した見返りは十分あったってことだな。
欲を言えば、デイパックも欲しかったがねえ」
軽口を叩くトビが手で弄んでいるのは一本のナイフ。
銀鈴が取り落としたものを目ざとく拾った。
推定12人が争う激戦を生き延びた報酬がたった5Pのナイフというのは、一般的に割に合わない戦果だろう。
だが、トビにとっては値千金の前進だ。
この一本でできることの幅が大きく広がる。
口元をわずかに吊り上げながら、トビはブラックペンタゴンの門に手をかけた。
■
〔麻衣様、この度の大失態、本当に申し訳ございません〕
アルファの謝罪に、麻衣は無言を貫く。
ギガンテスの反応はない。
山岳地帯で麻衣は腰を下ろし、ブラックペンタゴンを冷えた目で見降ろしていた。
「謝罪はいい。いらない。
ぬるい方針を取っていた私が悪かったんだ。
ここはアビス。極悪人たちの坩堝だったね。
その意味を、今ようやく理解したよ」
麻衣の住む地方都市は汚職などの不正はあったが、治安は比較的安定していた。
超力を気味悪がられることもあったが、同じくらいに家族や友人などの味方に恵まれていた。
いじめに遭ったこともあるが、眷属たちと共に退けたことで、心の傷を残すことはなかった。
彼女が収容されているのはアビスの中では比較的刑期の軽い犯罪者が集う平和なエリアだ。
殺人者など当たり前に存在するアビスにおいて、ヘタな挑発は命の危機に直結する。
だから、出所の可能性がある浅いエリアは秩序が保たれており、
優等生である彼女は、アビスにおいてすら他の囚人たちから強い恨みを買うこともなく、器用に日常を過ごしていた。
なまじ目立ち過ぎない程度に優秀だからこそ、彼女はこれまで悪意に強い耐性を持たずとも世を渡っていくことができた。
だが、それはこの環境において間違っていたのだろう。
麻衣の価値観は、アビスに収納されてなお、GPAによって秩序を保たれた日本国地方都市の一般的価値観だった。
ジャングルの中で毒虫に襲われた結果、警察に駆け込もうとするくらいにズレた価値観を保っていたのだ。
そもそもの話、最初に接触した際に、トビたちと麻衣はほぼ互いを同時に捉えていた。
隠形に優れるマンティズが彼らの姿をいち早く捉え、報告していたのだ。
だが、余計な刺激をしたくなかったがために、日和見の方針を取っていた。
その結果がこれだ。
眷属を一人失い、仲間は満身創痍。
健康なのは麻衣の最後の砦であるメアリー一匹のみ。
すべてが、自分の下した選択の結果である。
軽薄で醜悪な小男、トビ。
騎士気取りの異常者、四葉。
善意で悪意を振りまく蹂躙者、銀鈴。
三人を許すことはない。
トビと四葉の入っていったブラックペンタゴン。
山から見下ろせば、中央に近づく影が見える。
そして、アビスの悪意を理解した今なら、分かる。
銀鈴がどのような顔で眷属たちを使い潰していたのか、はっきりと思い出せる。
悪党の蔓延る絶海の孤島。
降り注ぐ月光の下、自身の心がこの島に蔓延る悪意に蝕まれていくのを、麻衣は底冷えのする眼差しで見つめていた。
【E-4/ブラックペンタゴン入り口/1日目・黎明】
【内藤 四葉】
[状態]:疲労(大)、各所に切り傷、打撲
[道具]:なし
[恩赦P]:0pt
[方針]
基本.気ままに殺し合いを楽しむ。恩赦も欲しい。
1.トビと連携して遊び相手を探す、または誘き出す。
2.ポイントで恩赦を狙いつつ、トビに必要な物資も出来るだけ確保。
3.もしトビさんが本当に脱獄できそうだったら、自分も乗っかろうかな。どうしよっかなぁ。
4.“無銘”さんや“大根おろし”さんとは絶対に戦わないとね!
5.あの鉄の騎士さん、もしも対立することがあったら戦いたいなぁ。
6.岩山の超力持ちさんかぁ、すっごく気になる!!出来たら戦いたい!!!(お目々キラキラ)
7.銀ちゃん、リベンジしたいけど戦いにくいからなんかキライ
※幼少期に大金卸 樹魂と会っているほか、世界を旅する中で無銘との交戦経験があります。
※ルーサー・キングの縄張りで揉めたことをきっかけに捕まっています。
【トビ・トンプソン】
[状態]:疲労(小)
[道具]:ナイフ
[恩赦P]:0pt
[方針]
基本.脱獄。
1.ブラックペンタゴンを調査する
2.内藤 四葉と共闘。彼女の餌を探しつつ、護衛役を務めてもらう。
3.首輪解除の手立てを探す。そのために交換リストで物資を確保。
4.構造や仕組みを調べる為に、他の参加者の首輪を回収したい。
5.ジョニーとヘルメスをうまく利用して工学の超力を持つ“メカーニカ”との接触を図る。
6.銀鈴との再接触には最大限警戒
7.岩山の超力持ち(恐らくメアリー・エバンスだろうな)には最大限の警戒、オレ様の邪魔をするなら容赦はしない。
※他にも確保を見越している道具が交換リストにあるかもしれません。
【E-6/山/1日目・黎明】
【宮本麻衣】
[状態]:疲労(大)
[道具]:なし
[恩赦P]:0pt
[方針]
基本.殺し合いには乗らないが、襲ってくる相手には容赦しない
1.生き残れる道を探す
2.銀鈴、四葉、トビには復讐する。手段は選ばない。
3.あの男(無銘)は気になるが、深追いすると大変なことになるので今は避ける
{ネビュラ}:脚欠損、目を一つ欠損、全身に傷
〔アルファ〕:全身に傷
《マンティズ》:左鎌欠損、全身に傷
[メアリー]:健康
〈ギガンテス〉:死亡
【E-3/草原/1日目・黎明】
【銀鈴】
[状態]:疲労(中)
[道具]:グロック19(装弾数22/19)、デイパック(手榴弾×3、催涙弾×3、食料一食分)、黒いドレス
[恩赦P]:4pt
[方針]
基本.アビスの超力無効化装置を破壊する。
1.ギガンテスの足が止まるまで待つ
2.ブラックペンタゴンを目指す。
3.人間を可愛がる。その過程で、いろんな超力を見てみたい。
※今まで自国で殺した人物の名前を全て覚えています。もしかしたら参加者と関わりがある人物も含まれているかもしれません。
※サッズ・マルティンによる拷問を経験しています。
※名簿で受刑者の姓名はすべて確認しています。
※システムAに彼女の超力が使われていることが真実であるとは限りません。また、使われていた場合にも、彼女一人の超力であるとは限りません。
最終更新:2025年03月19日 20:51