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幽波紋使いは鬼を狩る

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orisuta

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私は『波紋使い』
『鬼』を狩るのが仕事だ
だから今日も闇に身を投じる






夜の商店街
草木も眠る丑三つ時に、男は必死の形相でそこを走っていた

「ゼェ…ゼェ…!な、何なんだあの女はよォーーーッ!!」

「お、俺の…吸血鬼になった俺様の身体がよォーー!“アイツの手に触れただけ”でボロボロになっちまった!」

「クソックソックソッ!折角あの方に吸血鬼にして貰ったってのによォ…俺の人生はこれからだったのによォ!」

ガタタンッ!と背後から音がする
ビクリと肩を震わせて、思わず立ち止まる
直後、男の背中に激痛が走り、前のめりに地面を転がって行く

「うげェッ!?」

男は後ろを振り返る
そこに立つ凛とした女性は、冷たい目で男を見下ろしていた

「く、来るな…助けてくれ!」

女性は手にチャクラムを持ち、指先でクルクルと弄んでいる
そして一言、こう叫んだ

「“円月輪の波紋疾走(チャクラム・オーバードライブ)”ッ!」

指先から飛び出したチャクラムが宙を舞い、男の身体を切り刻む

「グギャアアアアアアアアアアアアアアアッ!」

バラバラになった男の身体が、地面に落ちるよりも速く消滅してしまった

「人の生き血を啜る悪魔には、お似合いの最後だわ」
 
 
 




***


【とある事務所】
PM:00:00


常にブラインドの下りた室内
大きな机と草臥れた社長椅子くらいしか置物のない殺風景な場所
私はここで所謂『探偵事務所』をやっている
だがそれは表向きで――

「――お客さんね」

ドアが静かに開き、おずおずとした調子で入って来た女性が恐る恐るといった感じで私に聞いた

「あ、あの…ここは『異常』が絡んだ事件を取り扱っていると聞いて――」

――本当は、『吸血鬼』を狩っている
 
 
 




***


概要はこうだ

「始まりは小さな事件だったんです」

ある朝、道端で身体中が穴だらけの猫の死体を発見した男性がいた
男性が猫に近づくと、信じられないことに猫が動き出し、男性に噛み付いたのだ
男性は驚き、手にしていた鞄で思い切り猫の頭を叩くと、それきり猫は動かなくなってしまった

「皆最初は何者かに殺されかけた猫が、男性をその『何者か』と勘違いして
最後の力を振り絞って男性に噛み付いた。……と言っていましたが」

数日後、男性は夜遅く家に帰ってくると、出迎えた奥さんを刺し殺し、寝室で眠っていた子供達までも惨殺した
男性は返り血に塗れた服を気にする様子もなく、夜の街を歩き、警察に通報された

「警察が男性を追い詰めました。ですが……」

突然、正しく突然現れた謎の人物が、一瞬で警察を気絶させてしまった
気が付いたとき既に彼等の姿は無く、今も警察は後を追っている

「――男性はとても温厚で、一家を惨殺するような事件を起こす人ではありませんでした」

「ふゥん……」

先ず間違いなく、男性は屍生人化しているだろう
そして、裏には間違いなく、『吸血鬼』が居る

「そして今、次々に街の女性が攫われているんです。それも、真昼間の商店街で!」

「……なんですって?」

吸血鬼は日の光の弱い
一連の事件の犯人が吸血鬼だとするなら、これは…

「私の姉も数日前に攫われました!お願いします…姉を…姉を助けてください…」

泣き崩れる女性を他所に、私は一人すっきりしない気持ちを抱えていた
 
 
 




***


連続する誘拐事件のせいか、商店街を歩く人の数は無く、寂しいものだった
無論女性は一人も歩いておらず、まだ正午だと言うのにシャッターの降りている店まである

「流石に…人が居ないわね」

無理もないだろうと思う
私だって『波紋』が無ければこんな場所をわざわざ歩いたりはしない

「(だけど、この方が好都合だわ)」

これだけ人が居なければ、私の姿は嫌でも目立つ
吹き抜ける風が髪を靡かせ、さながら西部劇の一場面のような静寂を作り出す

「………ッ!」

僅かに身を捩る
ギュアンッ!と通り過ぎた烈風が、衣服の一部を削ぎ取っていく
 
 
 




「『白血球』ってよォ~…スゲェーよなァ~」

青白い、気分の悪そうな、それでいて非情に好戦的な顔をした男が、私の前に立っていた
男は照りつける太陽を見上げてほくそ笑み、私を睨みつける

「体内に入った『ウィルス』をよォ、文句一つ言わず排除してるんだぜェ~?
それって物々文句言って仕事してる最近の人間の百倍は偉いよなァ~」

「貴様…吸血鬼ね。何故!?吸血鬼は日光に…紫外線に弱いはずだわ!」

「『意識』ってのも似たようなもんでよォ~…自分でも知らぬ間に『危険』を避けて生きているんだ
『あ、此処は何か嫌な感じがする』とか『この人が生理的に無理』だとかなァ~」

「質問に答えろォーーーッ!何故ッ!日光を浴びて生存出来るッ!」

「…………」

私はチャクラムを取り出し、腕をクロスさせて構える
チャクラムに『波紋』を流し、臨戦態勢に入る

「俺の『スタンド』、『メコン・デルタ』もよォ~…同じなんだな
『有害』なものはシャットアウトしてくれる。我が『メコン・デルタ』は日光も――」

「“円月輪の波紋疾走(チャクラム・オーバードライブ)”ッ!」

指先から飛び出した戦輪が男へ向かって疾駆する

「(殺ったッ!)」

だが
 
 
 




「――『波紋』すらも遮るッ!」

「ッ?!」

円月輪の波紋疾走が弾かれ、砕け散る
驚愕した次の瞬間、男が私の懐へ肉薄し、拳を振るった

「グハァッ……!!」

「UREEYYYYYYYYYYッ!!」

空中へ放り出された私の身体を連続して男の拳が襲う
波紋防御も大した意味をなさず、私の身体は派手に吹き飛ばされた

「(ク……ッ!『スタンド』…ですって…?)」

「(聞いた事がある…『生命エネルギーが造り出すパワーある像』!
奴の日光を遮る能力も『スタンド』だと言うの!?)」

「『スタンド』ってのは『スタンド』じゃあないと対抗できやしねェ…」

「だから消えろッ!『波紋使い』ッ!『ウィルス』は『白血球』に呑まれてなァーーーッ!」

「(『生命エネルギーが造り出す』……それが『スタンド』だと言うのなら)」

男が肉薄する
だが、男は私に届く一歩手前で盛大にずっこけた

「オブフゥッ!?あ、『油』だとォ!」

そう『油』だ
私の周囲に、『油』が発生している

「――これはッ!」

『油』が槍のように変化し、男の身体目掛けて突き出される
『メコン・デルタ』に激突し、槍は砕け散る
だが、男を後退させるには十分な威力だった
 
 
 




「ヌォアッ!?こ、これはッ!」

「……“油槍型の波紋疾走(オイルランス・オーバードライブ)”とでも名付けようかしら」

「馬鹿なッ!『スタンド』だとォーーーッ!?」

『油』に波紋を流すと、『油』は徐々に人型を形成していく

「『油』が集まって固まれば『人型』になるッ!この概念!!」

「ば、馬鹿な…だ、だが『メコン・デルタ』は『波紋』なんぞ……!」

「だったら、純粋なパワーでぶち壊し抜ける!」

お見舞いしてやろう
そう、純粋な力と、『波紋』が籠められたラッシュを!

「オラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラァ!」

「タ コ ス ッ!!」

『メコン・デルタ』を破壊され、私の『スタンド』のラッシュを受けた男の身体は、日光の中に消えていった



***


「『ホイップ・イット』ッ!」

「ひ、ヒィィ~~~ッ!なんなんだあの女ァーーーッ!」






私は私は『幽波紋使い』
『鬼』を狩るのが仕事だ
だから、今日も闇に身を投じる




使用させていただいたスタンド


No.664
【スタンド名】 ホイップ・イット
【本体】 波紋使い
【能力】 ただの油を発生、操作する

No.667
【スタンド名】 メコン・デルタ
【本体】 好戦的な吸血鬼
【能力】 本体に届く全ての有害なものをシャットアウトする









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