『さあ、始めるわよ。私達の革命(パーティー)を』
さぁ Party
シャンパンに
連れってってよTake me
甘いだけじゃ つまんないでしょ
More 刺激 You & Me
シャンパンに
連れってってよTake me
甘いだけじゃ つまんないでしょ
More 刺激 You & Me
『勿論よ。まずはどうする?』
ここは、グレイチャペル歓楽街「アンダーダウンエリア」
第三次産業が経済の中心となるこの区画は、老若男女の欲望が渦巻いている。
雑草が生えるように酒場が立ち、真水のように酒が消費される、パラディウムシティきっての歓楽街だ。
第三次産業が経済の中心となるこの区画は、老若男女の欲望が渦巻いている。
雑草が生えるように酒場が立ち、真水のように酒が消費される、パラディウムシティきっての歓楽街だ。
好奇心?
これバンクシー?
もっと頂戴 スパイシー
上っ面の台詞
気持ちはもう曖昧に
これバンクシー?
もっと頂戴 スパイシー
上っ面の台詞
気持ちはもう曖昧に
『まずは情報収集からね』
一言でこの町について説明するなら、「五感に悪い場所」だ。
夜でも昼ように眩しく、毒々しいネオンや建物内のどぎつい照明は視覚に悪く、アルコールやたばこの煙、怪しい薬の臭いは嗅覚に嫌な刺激を与える。
酒場や大衆食堂で提供される、味や値段より見栄えを重視した、ソースのべっとりかかった食事や強い酒は味覚を鈍くし、ひっきりなしに飛び交う喧噪や歓声が聴覚に良いわけがない。
そしてこの町に深く関わっていなくても、べとついた空気は触覚を伝ってこの場所の雰囲気になじめぬ者を何とも嫌な気分にしてくる。
もしみなさんがお望みならば、この親不孝を凝縮したような場所の、奇妙な2人の踊り子のやり取りを、お見せしましょう。
夜でも昼ように眩しく、毒々しいネオンや建物内のどぎつい照明は視覚に悪く、アルコールやたばこの煙、怪しい薬の臭いは嗅覚に嫌な刺激を与える。
酒場や大衆食堂で提供される、味や値段より見栄えを重視した、ソースのべっとりかかった食事や強い酒は味覚を鈍くし、ひっきりなしに飛び交う喧噪や歓声が聴覚に良いわけがない。
そしてこの町に深く関わっていなくても、べとついた空気は触覚を伝ってこの場所の雰囲気になじめぬ者を何とも嫌な気分にしてくる。
もしみなさんがお望みならば、この親不孝を凝縮したような場所の、奇妙な2人の踊り子のやり取りを、お見せしましょう。
Dancing Dancing with the Star
君の瞳
謎めいたキッス
君の瞳
謎めいたキッス
Dancing Dancing please don't stop
夜に溶ける
恋みたいなFeeling
夜に溶ける
恋みたいなFeeling
『私が蒔いた種からは、どんな植物の芽が出ているかしらね?』
数多く並ぶ酒場や遊技場の中でも、頭一つ抜けて大きく、中から聞こえて来る歓声もそれゆえに大きい。
そして、その酒場の中心に設置された舞台では、セクシーなフリンジを付けた3人の踊り子達が鮮やかな舞いを見せている。
彼女らの踊りは美しく、時に激しさも見せ、曲の盛り上がりに合わせて客の手拍子や歓声も一層大きくなる。
この区画に入り浸っている者達の大半は、ビッグアイ屋上の爆発など、見向きもしない。
酒場やライブハウスなどで普段から爆発に匹敵するほどの轟音など聞きなれているし、爆発に匹敵する眩しい何かが目に入ることなど日常茶飯事だ。
それ以前に、記念日など知ったこっちゃないとばかりに、年がら年中バカ騒ぎしているような場所だ。
だから聖杯戦争の開幕などお構いなしに、誰もが刹那的な快楽を享受し続けている。
ごく僅かな者達を除いて。
そして、その酒場の中心に設置された舞台では、セクシーなフリンジを付けた3人の踊り子達が鮮やかな舞いを見せている。
彼女らの踊りは美しく、時に激しさも見せ、曲の盛り上がりに合わせて客の手拍子や歓声も一層大きくなる。
この区画に入り浸っている者達の大半は、ビッグアイ屋上の爆発など、見向きもしない。
酒場やライブハウスなどで普段から爆発に匹敵するほどの轟音など聞きなれているし、爆発に匹敵する眩しい何かが目に入ることなど日常茶飯事だ。
それ以前に、記念日など知ったこっちゃないとばかりに、年がら年中バカ騒ぎしているような場所だ。
だから聖杯戦争の開幕などお構いなしに、誰もが刹那的な快楽を享受し続けている。
ごく僅かな者達を除いて。
ゆらゆら揺られてる
今夜はもう帰りたくないわ
やさしいフリをして
ハートは秘密 Distance
今夜はもう帰りたくないわ
やさしいフリをして
ハートは秘密 Distance
曲が終わり、観客席から万雷の拍手が響く。
両サイド女性はどこかホッとしたような表情を見せたが、センターで踊っていた赤のフリンジを纏った茶髪の女性は、それが当たり前という表情を浮かべていた。
かと言って、観客はちやほやしてくれるのが当たり前という横柄な態度を示さず、丁寧に会釈したのだが。
拍手の音がようやく小さくなり始めると、もう一度3人の踊り子たちはお辞儀をし、楽屋へと戻っていく。
両サイド女性はどこかホッとしたような表情を見せたが、センターで踊っていた赤のフリンジを纏った茶髪の女性は、それが当たり前という表情を浮かべていた。
かと言って、観客はちやほやしてくれるのが当たり前という横柄な態度を示さず、丁寧に会釈したのだが。
拍手の音がようやく小さくなり始めると、もう一度3人の踊り子たちはお辞儀をし、楽屋へと戻っていく。
「いやあ、3人共、今日もお疲れ様。」
酒場の支配人がへらへらとした笑みを浮かべながら、今日の給料を1人ずつ渡す。
3人の踊り子はぺこりと頭を下げて、この町で使われているお金を受け取る。
酒場の支配人がへらへらとした笑みを浮かべながら、今日の給料を1人ずつ渡す。
3人の踊り子はぺこりと頭を下げて、この町で使われているお金を受け取る。
「これ見てよ。君たちが来てから、この酒場の売り上げが5倍になってね~。これからもよろしく頼むよ~。」
支配人は締まりのない笑顔のまま、3人にタブレットを見せた。
右肩上がりになっている棒グラフが、液晶画面の中に映っている。
しかし、支配人は気づいていなかった。
酒場の売り上げを示している棒グラフとは違う所を一人の踊り子が見ていたことを。
支配人は締まりのない笑顔のまま、3人にタブレットを見せた。
右肩上がりになっている棒グラフが、液晶画面の中に映っている。
しかし、支配人は気づいていなかった。
酒場の売り上げを示している棒グラフとは違う所を一人の踊り子が見ていたことを。
「ま、こんな感じ。君たち、特にプリムロゼ君はうちの酒場の福の神、いや福の女神だよ。明日も夜9時からよろしくね~。
それと気を付けて帰りなよ。最近この町で行方不明者が出ているそうだし~。」
そう言って支配人は楽屋を後にする。
それと気を付けて帰りなよ。最近この町で行方不明者が出ているそうだし~。」
そう言って支配人は楽屋を後にする。
『気を付けて帰りなよ』。それはただのねぎらいの言葉でしかない。
だが、その言葉の後を聞いた時、赤の踊り子と緑の踊り子は踊りの時以上に真剣な表情で目を合わせた。
だが、その言葉の後を聞いた時、赤の踊り子と緑の踊り子は踊りの時以上に真剣な表情で目を合わせた。
「ユースファ、ちょっと私はサクラと話があるの。先に帰ってて。」
赤の踊り子、プリムロゼ・エゼルアートの態度は、長い付き合いの友達とは思えないほどよそよそしかった。
とは言っても、プリムロゼにとって親交があったユースファとは、この世界にいるNPCの彼女ではない。
元の世界の「サンシェイドで殺されたユースファ」のことだ。
そんなコピーでしかない彼女を友達扱いしろというのがどだい無理な話だろう。
赤の踊り子、プリムロゼ・エゼルアートの態度は、長い付き合いの友達とは思えないほどよそよそしかった。
とは言っても、プリムロゼにとって親交があったユースファとは、この世界にいるNPCの彼女ではない。
元の世界の「サンシェイドで殺されたユースファ」のことだ。
そんなコピーでしかない彼女を友達扱いしろというのがどだい無理な話だろう。
「分かったわ。私達友達なんだから無理しないようにね。」
プリムロゼの気持ちを探る訳も無く、青の踊り子はそのまま楽屋を後にした。
プリムロゼの気持ちを探る訳も無く、青の踊り子はそのまま楽屋を後にした。
「凄いわね。どうしてあんなに上手く踊れるの?」
2人だけになった楽屋で、聖杯戦争のマスター、和田垣さくらは笑顔でサーヴァントに尋ねる。
本日、正確には昨日だが、楽屋での公演の選曲は、マスターがかつて踊っていた曲だった。
『どんな曲でも構わない』とプリムロゼが言っていたのだから、和田垣が元の世界でも踊っていた曲にすることにした。
それを僅か2日でプリムロゼはマスターし、本番に臨んだ。
2人だけになった楽屋で、聖杯戦争のマスター、和田垣さくらは笑顔でサーヴァントに尋ねる。
本日、正確には昨日だが、楽屋での公演の選曲は、マスターがかつて踊っていた曲だった。
『どんな曲でも構わない』とプリムロゼが言っていたのだから、和田垣が元の世界でも踊っていた曲にすることにした。
それを僅か2日でプリムロゼはマスターし、本番に臨んだ。
「私達の目的は今日の公演の成功かしら?そんなことよりも、聖杯戦争がこれから本格的に始まるって知らせの方が重要じゃなくて?」
しかし、プリムロゼの表情は大して変わらなかった。
黙って和田垣は首を縦に振った。
黙って和田垣は首を縦に振った。
「これからどうするつもり?」
「特に方針を変えるつもりはないわ。今まで通りに情報収集を繰り返して、その裏でサーヴァントとマスターを殺す。だから『アレ』を回収してきなさいよ。万が一捨てられたらかなわないわよ。」
「そうね。」
和田垣はダンスの衣装から緑のパーカーに着替えたのち、酒場のカウンターに向かう。
「特に方針を変えるつもりはないわ。今まで通りに情報収集を繰り返して、その裏でサーヴァントとマスターを殺す。だから『アレ』を回収してきなさいよ。万が一捨てられたらかなわないわよ。」
「そうね。」
和田垣はダンスの衣装から緑のパーカーに着替えたのち、酒場のカウンターに向かう。
「おや?サクラちゃん、落とし物でもしたのかい?」
スタッフに見つかりそうになるが、黙ってバーのカウンターの下に手を入れる。
彼女が掴んだのは、何の変哲もなさそうなボールペン。
スタッフに見つかりそうになるが、黙ってバーのカウンターの下に手を入れる。
彼女が掴んだのは、何の変哲もなさそうなボールペン。
「そんな物だったら、僕がもっといい物をあげるのに。」
「いえ、これは故郷を出る時に持って出た、大事なペンなんです。」
「そりゃあ悪いことを言ったねえ。すまんすまん。」
「いえ、これは故郷を出る時に持って出た、大事なペンなんです。」
「そりゃあ悪いことを言ったねえ。すまんすまん。」
いかにもボールペンのような小さいものが転がり込んでしまい、なおかつ放置されてしまいそうな場所だが、和田垣はその場所に敢えて置いたのだ。
それを取って楽屋に戻ると、プリムロゼがスマートフォンと悪戦苦闘していた。
なおこのスマートフォンは、持ち主の和田垣とプリムロゼのみがパスコードを知っている。
それを取って楽屋に戻ると、プリムロゼがスマートフォンと悪戦苦闘していた。
なおこのスマートフォンは、持ち主の和田垣とプリムロゼのみがパスコードを知っている。
「ねえマスター、これ、前の画面に戻るにはどうすればいいの?」
「ああ、それなら、左下の三角の所をタッチすればいいのよ。」
「なるほど。」
「ああ、それなら、左下の三角の所をタッチすればいいのよ。」
「なるほど。」
サーヴァントはマスターの言うとおりにする。
PCやスマートフォン、タブレットなどの電子機器に囲まれた世界からやって来たマスターとは対照的に、サーヴァントのいた世界は、そんなものは一切なかった。
だからサーヴァントは戦いや踊りでマスターを助け、マスターは電子機器の使い方をサーヴァントに教えている。そのような協力関係が築かれていた。
PCやスマートフォン、タブレットなどの電子機器に囲まれた世界からやって来たマスターとは対照的に、サーヴァントのいた世界は、そんなものは一切なかった。
だからサーヴァントは戦いや踊りでマスターを助け、マスターは電子機器の使い方をサーヴァントに教えている。そのような協力関係が築かれていた。
画面がスクロールされて、元のページに戻ると、そこにはマイクを持ったトイプードルの女性が映っていた。
背景にはドローンが彼女を守るかのように飛んでいる。
背景にはドローンが彼女を守るかのように飛んでいる。
「はぁ……やられたわね。」
それを見ていたアヴェンジャーの表情は苦々し気だ。
「どういうことよ。」
『やられた』という言葉の意図が分からず、マスターはいぶかしげな顔でアヴェンジャーの表情を見つめる。
それを見ていたアヴェンジャーの表情は苦々し気だ。
「どういうことよ。」
『やられた』という言葉の意図が分からず、マスターはいぶかしげな顔でアヴェンジャーの表情を見つめる。
「決まってるじゃ無いの。良い会場を取られたという事よ。私も迂闊だったわ。」
「え?ちょっと待って?」
突然和田垣は、プリムロゼの話を遮るかのように驚嘆の声を上げた。
「え?ちょっと待って?」
突然和田垣は、プリムロゼの話を遮るかのように驚嘆の声を上げた。
マスターが驚いたのは、犬顔のアイドルの画像の下に書いてあった、その名前だ。
かつて和田垣が所属していたアイドルグループ、「ミステリーキッス」のメンバーにして、センターを担っていた少女だ。
ミステリーキッスが解散した際に、逮捕されたと聞いていたが、まさか彼女までもこの場所にいたとは予想外だった。
唯一気になる点としては、彼女は人間のはずなのに、なぜ犬の姿をしているのかということだったが、それは属している団体の変化に伴ったイメージチェンジだということにした。
目元や口元は元の彼女と何ら変わらないし、これぐらいの精巧なメイクなら元の世界でも不可能ではない。
ミステリーキッスが解散した際に、逮捕されたと聞いていたが、まさか彼女までもこの場所にいたとは予想外だった。
唯一気になる点としては、彼女は人間のはずなのに、なぜ犬の姿をしているのかということだったが、それは属している団体の変化に伴ったイメージチェンジだということにした。
目元や口元は元の彼女と何ら変わらないし、これぐらいの精巧なメイクなら元の世界でも不可能ではない。
「で、どうするの?まさか知り合いがいたから、戦いを止めるなんて言わないわね?」
「言う訳ないじゃん。」
「言う訳ないじゃん。」
和田垣にとって、二階堂ルイはあくまで成り上がるための同業者でしかなかった。
ミステリーキッスで共に仕事していたかつての二階堂ルイも、自分ではなく、自分がなり替わった三矢ユキを見ていた。
だからこそ彼女が三矢ユキを殺した罪で逮捕された時も、見捨てて他のアイドル事務所に河岸替えしようとしていた。
もし、二階堂ルイが自分と同じ聖杯戦争の参加者だというなら、他の参加者と同様に排除するだけだ。
知り合いだから躊躇するどころか、知っている相手だからこそ排除しやすいぐらいだ。
ミステリーキッスで共に仕事していたかつての二階堂ルイも、自分ではなく、自分がなり替わった三矢ユキを見ていた。
だからこそ彼女が三矢ユキを殺した罪で逮捕された時も、見捨てて他のアイドル事務所に河岸替えしようとしていた。
もし、二階堂ルイが自分と同じ聖杯戦争の参加者だというなら、他の参加者と同様に排除するだけだ。
知り合いだから躊躇するどころか、知っている相手だからこそ排除しやすいぐらいだ。
「それよりもアヴェンジャーが言ってた『やられた』ってどういうことなのか教えてくれない?」
「決まっているじゃない。手に入れた会場の差よ。こんな少し大きいぐらいの酒場と、どこかは分からないけど5000人入る場所じゃ、違いは分かるでしょ?」
「そういうことね……言ってることが分かったわ。」
「決まっているじゃない。手に入れた会場の差よ。こんな少し大きいぐらいの酒場と、どこかは分からないけど5000人入る場所じゃ、違いは分かるでしょ?」
「そういうことね……言ってることが分かったわ。」
二階堂ルイが何を求めて観客5000人のライブをやるかは、結局の所不明だ。
しかし、彼女ら和田垣陣営が情報収集のためにライブをやっているのと同じように、何かしら人を集めねばならない理由があるのだろう。
そうでなければ、情報が拡散され、他の聖杯戦争参加者に警戒されてしまいがちになるような真似をするわけがない。
そして、観客5000人と仰々しく書いてあるということは、集まるオーディエンスは多ければ多いほど良いはずだ。
この酒場は、確かに大きいが、それでも一度のライブで収容できる観客の数は、500人が精いっぱいだ。
収容人数は彼女のライブの観客数の10分の1に届くか否かといった程度だ。
しかし、彼女ら和田垣陣営が情報収集のためにライブをやっているのと同じように、何かしら人を集めねばならない理由があるのだろう。
そうでなければ、情報が拡散され、他の聖杯戦争参加者に警戒されてしまいがちになるような真似をするわけがない。
そして、観客5000人と仰々しく書いてあるということは、集まるオーディエンスは多ければ多いほど良いはずだ。
この酒場は、確かに大きいが、それでも一度のライブで収容できる観客の数は、500人が精いっぱいだ。
収容人数は彼女のライブの観客数の10分の1に届くか否かといった程度だ。
プリムロゼとしては、酒場で踊りを披露しながらその裏で情報収集を行うのは、元の世界にいた時からやっていたことだった。
だが、似たような方法をしてくる相手がいることは、全く考えてなかった。
だが、似たような方法をしてくる相手がいることは、全く考えてなかった。
「どうする?今から二階堂ルイのライブへ行く?」
和田垣はすぐに立ち上がろうとした。
和田垣はすぐに立ち上がろうとした。
「ダメよ。ライブの詳細は勿論、サーヴァントの情報さえ無い中向かうのは危険だわ。」
無知は一番、失敗を多く招き入れる。
それはプリムロゼが良く経験していたことだ。
無知は一番、失敗を多く招き入れる。
それはプリムロゼが良く経験していたことだ。
悪人だと分からず、ミゲルを助けてしまったゆえに、被害を悪化させてしまったアーフェンのように。
領主ヴェルナーの策に気付かず、反勢力軍の多くを犠牲にしてしまったオルベリクのように。
そしてシメオンを家族の仇ではなく、最愛の想い人だと勘違いしていた自分のように。
領主ヴェルナーの策に気付かず、反勢力軍の多くを犠牲にしてしまったオルベリクのように。
そしてシメオンを家族の仇ではなく、最愛の想い人だと勘違いしていた自分のように。
そして、和田垣にもプリムロゼにも共通して認識していたことがあった。
自分達は、弱くはないにせよ、強くも無い。
マスターは殺す覚悟こそは出来ているが、強さこそは一般人に毛が生えた程度。
サーヴァントこそ並みの怪物なら簡単に倒せるほどの実力はあるが、この聖杯戦争で全員を相手にして勝てる自信はなかった。
すなわち『いかに他の参加者の弱点になり得る情報を得るか』だけが勝つために重要なのだ。
自分達は、弱くはないにせよ、強くも無い。
マスターは殺す覚悟こそは出来ているが、強さこそは一般人に毛が生えた程度。
サーヴァントこそ並みの怪物なら簡単に倒せるほどの実力はあるが、この聖杯戦争で全員を相手にして勝てる自信はなかった。
すなわち『いかに他の参加者の弱点になり得る情報を得るか』だけが勝つために重要なのだ。
「せめてこの酒場で得た情報をまとめてからにしても、遅くはないわ。」
プリムロゼの言う通り、和田垣は先ほど酒場のカウンターの下で拾ったボールペンのスイッチを入れた。
彼女が持っていたボールペンは、ただのボールペンに非ず。
簡易的な録音システム、すなわち盗聴器の役割を果たしている。
情報集めはたしかに重要なことだが、プリムロゼのスキルを使っても、彼女のかつての仲間であるアーフェンやサイラスには劣る。
だが、それをカバーするのは彼女の愛用していた盗聴機付きボールペンだ。
そもそも酒場、特に高級な酒場は得てして社交場になりやすい。
ゆえに、誰と誰が組んでいるかとか、SNS以上に開けっ広げな話を聞くことが出来るということだ。
プリムロゼの言う通り、和田垣は先ほど酒場のカウンターの下で拾ったボールペンのスイッチを入れた。
彼女が持っていたボールペンは、ただのボールペンに非ず。
簡易的な録音システム、すなわち盗聴器の役割を果たしている。
情報集めはたしかに重要なことだが、プリムロゼのスキルを使っても、彼女のかつての仲間であるアーフェンやサイラスには劣る。
だが、それをカバーするのは彼女の愛用していた盗聴機付きボールペンだ。
そもそも酒場、特に高級な酒場は得てして社交場になりやすい。
ゆえに、誰と誰が組んでいるかとか、SNS以上に開けっ広げな話を聞くことが出来るということだ。
「良かった。きちんと作動しているわね。」
ノイズに混ざって客の喧騒が聞こえて来る。
大半は誰が誰を好きだとか、誰と誰がセックスをしたとか、あいつを殺してやるとか、酒場に来る客らしいものだ。
だが、1つ気がかりになる情報があった。
ノイズに混ざって客の喧騒が聞こえて来る。
大半は誰が誰を好きだとか、誰と誰がセックスをしたとか、あいつを殺してやるとか、酒場に来る客らしいものだ。
だが、1つ気がかりになる情報があった。
「楽園の歌姫?」
2人が共通して気になったのは、そのワード。
声の若々しさからして、この町に似つかわしくない男子学生がこの言葉を発した様だ。
ここは大人の場所と言われているが、それでも悪ぶってこの区画に顔を出し、時には区画内の酒場やカジノにまで入る者はいる。
多くの酒場やカジノ、ラブホテルは最低限の年齢確認はしているが、それも杜撰な物なので、大人びた顔をしている者ならば簡単に通れてしまう。
声の若々しさからして、この町に似つかわしくない男子学生がこの言葉を発した様だ。
ここは大人の場所と言われているが、それでも悪ぶってこの区画に顔を出し、時には区画内の酒場やカジノにまで入る者はいる。
多くの酒場やカジノ、ラブホテルは最低限の年齢確認はしているが、それも杜撰な物なので、大人びた顔をしている者ならば簡単に通れてしまう。
「マスター、もう一回今の所を再生してみて。」
繰り返し、その箇所を再生する。
ノイズや喧噪による聞き間違えが無いか、慎重に検討する。
この世界での間違った情報を鵜呑みにすることは、死につながると言っても過言ではない。
繰り返し、その箇所を再生する。
ノイズや喧噪による聞き間違えが無いか、慎重に検討する。
この世界での間違った情報を鵜呑みにすることは、死につながると言っても過言ではない。
――――…………す……え曲だったなあ!………えは………の方が良いって言っ………けど、俺はこ……のエ………い(エロい?)…えちゃん(姉ちゃん?)達の………が良かったよ!
――――お……え(おまえ?)そんなだ……ら(だから?)どう…い何だよ!やっぱり……(俺?)は……の方が好き……ぜ!………つったって………楽園の歌姫……はあるよ!!
――――まあ………かに(確かに?)……ユーの………ィック・クイ……(クイーン?)は最高だけどさ!!
――――お……え(おまえ?)そんなだ……ら(だから?)どう…い何だよ!やっぱり……(俺?)は……の方が好き……ぜ!………つったって………楽園の歌姫……はあるよ!!
――――まあ………かに(確かに?)……ユーの………ィック・クイ……(クイーン?)は最高だけどさ!!
やはり、聞こえにくくなっている部分が多い。
だが、それでも2人の学生の会話について分かったことがある。
「楽園の歌姫……ね。」
プリムロゼは怪訝な表情でその言葉を反芻する。
今日日「楽園」という言葉を聞くと、よほど頭がお花畑でない限り、何かしらの怪しさを感じてしまうだろう。
だが、それでも2人の学生の会話について分かったことがある。
「楽園の歌姫……ね。」
プリムロゼは怪訝な表情でその言葉を反芻する。
今日日「楽園」という言葉を聞くと、よほど頭がお花畑でない限り、何かしらの怪しさを感じてしまうだろう。
「誰かしらのサーヴァント、あるいは『楽園の歌姫』そのものがマスターの可能性もあるわね。」
「聞き取った声の若さからして学生かしら……というと、彼女は『アカデミー』か『月海原学園』の近くにいるかもしれないわね……。」
和田垣は未知の相手の居場所を考察する。
「聞き取った声の若さからして学生かしら……というと、彼女は『アカデミー』か『月海原学園』の近くにいるかもしれないわね……。」
和田垣は未知の相手の居場所を考察する。
「探しに行くって言うの?でも、今から行っても深夜だから閉まっているはずよ。」
「誰も探しに行くとは言ってないわ。こちらも情報が掴めないままだもの。」
学生がいる場所と目星を付けても、そういった施設が多い以上は探すのは難しい。
「誰も探しに行くとは言ってないわ。こちらも情報が掴めないままだもの。」
学生がいる場所と目星を付けても、そういった施設が多い以上は探すのは難しい。
誰もが何らかの動きを始めているというのに、情報が掴めないという理由で思うように動けないのはもどかしいものだ。
結局盗聴機の残りを再生しても、二階堂ルイのことも楽園の歌姫のことも出てこなかった。
後は歓楽街や住宅街付近に、行方不明者がこれまでの5倍近く増えているというぐらい。
結局盗聴機の残りを再生しても、二階堂ルイのことも楽園の歌姫のことも出てこなかった。
後は歓楽街や住宅街付近に、行方不明者がこれまでの5倍近く増えているというぐらい。
「どうするか決めたわ。アヴェンジャー。」
和田垣はタブレットを借りて、手慣れた手つきで操作する。
和田垣はタブレットを借りて、手慣れた手つきで操作する。
『二階堂ルイのライブのためにアカウントを作りました!!二階堂ルイが好きな人と情報の交換がしたいです!
彼女のライブについて重要なことがあれば教えてください!!
よろしければお茶でも飲みながらライブについてお話ししましょう!
彼女のライブについて重要なことがあれば教えてください!!
よろしければお茶でも飲みながらライブについてお話ししましょう!
#拡散希望
#二階堂ルイ好きとつながりたい
#二階堂ルイ
#二階堂ルイ5000人ライブ 』
#二階堂ルイ好きとつながりたい
#二階堂ルイ
#二階堂ルイ5000人ライブ 』
和田垣はすぐにいくつかのSNSのアカウントを作り、呼び掛ける。
ご丁寧に彼女の細い指のピースサインまで載せてある。
アプリによって書いてあることは若干異なるが、内容はほとんど変わらない。
女という武器を利用してカモを呼ぶ戦略は、かつて同じアイドルグループ市村しほがやらされていたことを参考にした。
ご丁寧に彼女の細い指のピースサインまで載せてある。
アプリによって書いてあることは若干異なるが、内容はほとんど変わらない。
女という武器を利用してカモを呼ぶ戦略は、かつて同じアイドルグループ市村しほがやらされていたことを参考にした。
「なるほど。いつかは戦うもの同士だとしても、目的のために同盟を組むというわけね。」
「同盟というよりかは、カモと言った方が正解かな。最も、これで引き寄せられた人が従うかどうかは、アヴェンジャーの能力にかかっているんだけどね。」
「同盟というよりかは、カモと言った方が正解かな。最も、これで引き寄せられた人が従うかどうかは、アヴェンジャーの能力にかかっているんだけどね。」
和田垣が考えた案は、彼女のライブを心待ちにしている者をSNSで呼び寄せ、それをアヴェンジャーのスキルで魅了させ、情報を引き出すということだ。
もしも魅了できない相手、あるいは自分に敵意を持っていたり、正体を知ろうとしている者ならば、秘密裏に殺害する。
もしも魅了できない相手、あるいは自分に敵意を持っていたり、正体を知ろうとしている者ならば、秘密裏に殺害する。
他にも『楽園の歌姫』について検索してみたが、『楽園』、『歌姫』というありふれた二つ名から、かなり多くの情報が入ってきて、どれがこの世界の彼女を示しているのかは分からなかった。
「とりあえず拡散が終わったわ。いつ返信が来るか分からないし、近くの店で食料の買い出しに行かない?」
「良いわね。これからいつ補給できるか分からないし。」
「とりあえず拡散が終わったわ。いつ返信が来るか分からないし、近くの店で食料の買い出しに行かない?」
「良いわね。これからいつ補給できるか分からないし。」
二人は酒場から外へ出ていく。
ここから先は、安易に別れて単独行動もすべきではない。
聖杯戦争が始まったということは、それだけどこへいても襲われる可能性が高いからだ。
マスターは鈍器を、アヴェンジャーはナイフをいつでも出せるように準備をする。
的に襲われることなく、酒場から少し離れた食料品店に入り、和田垣がパックの唐揚げを手に取ったところで、彼女の鞄に入れたスマートフォンから着信がなった。
ここから先は、安易に別れて単独行動もすべきではない。
聖杯戦争が始まったということは、それだけどこへいても襲われる可能性が高いからだ。
マスターは鈍器を、アヴェンジャーはナイフをいつでも出せるように準備をする。
的に襲われることなく、酒場から少し離れた食料品店に入り、和田垣がパックの唐揚げを手に取ったところで、彼女の鞄に入れたスマートフォンから着信がなった。
その内容とは……
【地区名F-6(簡易食料品店)/聖歴111年1月1日1:00】
【和田垣さくら@オッドタクシー】
[状態]健康
[令呪]残り3画
[装備]鈍器(詳細は後の書き手さんに)
[道具]盗聴器付きボールペン、スマートフォン(電池残り50%)
[所持金]5千QP
[思考・状況]
基本行動方針:聖杯戦争優勝
1.二階堂ルイのライブの調査、その上でどうするか決める。
2.彼女のライブについて知っている者がいれば合流し、アヴェンジャーの能力で陣営に加える
3.2の相手が自分達に敵意を持っていれば、戦闘や殺害も辞さないが、出来ればしたくない(騒ぎになりたくないため)
3.酒場に来た学生が言っていた『楽園の歌姫(μ)』も気がかり。
[状態]健康
[令呪]残り3画
[装備]鈍器(詳細は後の書き手さんに)
[道具]盗聴器付きボールペン、スマートフォン(電池残り50%)
[所持金]5千QP
[思考・状況]
基本行動方針:聖杯戦争優勝
1.二階堂ルイのライブの調査、その上でどうするか決める。
2.彼女のライブについて知っている者がいれば合流し、アヴェンジャーの能力で陣営に加える
3.2の相手が自分達に敵意を持っていれば、戦闘や殺害も辞さないが、出来ればしたくない(騒ぎになりたくないため)
3.酒場に来た学生が言っていた『楽園の歌姫(μ)』も気がかり。
【アヴェンジャー(プリムロゼ・エゼルアート)@ Octopath Traveler】
[状態]健康
[装備]短剣
[道具]2人分の食料、飲料
[所持金]1万QP
[思考・状況]
基本行動方針:和田垣を優勝させる
1.酒場の隅でNPCや和田垣と共に公演を行い、情報を集める
2.情報が集まり次第同じ聖杯戦争参加者の下へ向かい、裏で殺害する。
[状態]健康
[装備]短剣
[道具]2人分の食料、飲料
[所持金]1万QP
[思考・状況]
基本行動方針:和田垣を優勝させる
1.酒場の隅でNPCや和田垣と共に公演を行い、情報を集める
2.情報が集まり次第同じ聖杯戦争参加者の下へ向かい、裏で殺害する。