遠坂凜に送った手紙の返信はしっかりやって来た。
内容としては目下危険と思われるマスターが一名いるので、今すぐの決闘は避けたいというもの。つまり不戦協定の提案だった。
より相手の情報も得られたり、なんなら一時的に共闘してもよいのだけれど……。
まあこちらもランサーと相談して手紙の内容を決めた結果、やけに好戦的な内容になってしまった気もするからしょうがないか。
内容としては目下危険と思われるマスターが一名いるので、今すぐの決闘は避けたいというもの。つまり不戦協定の提案だった。
より相手の情報も得られたり、なんなら一時的に共闘してもよいのだけれど……。
まあこちらもランサーと相談して手紙の内容を決めた結果、やけに好戦的な内容になってしまった気もするからしょうがないか。
さてそのマスターは……アカデミーが誇る教授の中の一人、不亞ザキラ。
調査の中でマスターと考えられる人物としてマークしていたけれど、ここでほぼ確信に至らせてもらった。
独自の研究室を持つほどの凜なら、アカデミーの講師陣の情報もより得やすいんじゃないかと思う。
調査の中でマスターと考えられる人物としてマークしていたけれど、ここでほぼ確信に至らせてもらった。
独自の研究室を持つほどの凜なら、アカデミーの講師陣の情報もより得やすいんじゃないかと思う。
不亞ザキラ。天才的な頭脳の持ち主で、研究教育機関のアカデミーとしては大きく歓迎されている。
元の世界の経歴もビッグアイにある図書館で調べることが出来た。
元の世界で有名だった人物の経歴は、だいたい図書館にある各世界のことを書いた文献で調べることができる。
自分のような情報統合思念体の端末という、人間の常識からは隠れてオカルトじみている存在はそう調べられないだろうけど。
元の世界の経歴もビッグアイにある図書館で調べることが出来た。
元の世界で有名だった人物の経歴は、だいたい図書館にある各世界のことを書いた文献で調べることができる。
自分のような情報統合思念体の端末という、人間の常識からは隠れてオカルトじみている存在はそう調べられないだろうけど。
デュエルマスターズというカードゲームを遊ぶ者、デュエリストを滅ぼすことを目的とする組織ガルドの長。それが彼。
デュエルマスターズ第二回世界大会で全てのデュエリストの抹殺を宣言し、世界に知れ渡るに至る。
デュエルマスターズカードはこの世界にも文化として持ち込まれはしたが、ザキラのいた世界ほど広く普及はしていない。
危険人物の一面もありはするだろうが、アカデミーの運営自体に大きな影響はないだろう。
そして何よりザキラ本人が危険性の片鱗を見せず、一応は研究活動をこなしている。
朝倉の世界に無かった技術、例えばこの世界でも全容が解明されないEテクノロジーの理論の解析なども彼の手により大きく進歩すると期待されている。
そのためアカデミーとしては彼を教授として歓迎する姿勢となった。
デュエルマスターズ第二回世界大会で全てのデュエリストの抹殺を宣言し、世界に知れ渡るに至る。
デュエルマスターズカードはこの世界にも文化として持ち込まれはしたが、ザキラのいた世界ほど広く普及はしていない。
危険人物の一面もありはするだろうが、アカデミーの運営自体に大きな影響はないだろう。
そして何よりザキラ本人が危険性の片鱗を見せず、一応は研究活動をこなしている。
朝倉の世界に無かった技術、例えばこの世界でも全容が解明されないEテクノロジーの理論の解析なども彼の手により大きく進歩すると期待されている。
そのためアカデミーとしては彼を教授として歓迎する姿勢となった。
もちろん個人個人の感情は統一されていない。彼が信頼できるかそうでないかは意見が割れているし、
数学や物理学の未解決問題も解いてしまうその頭脳に、講師陣は歓迎だけでなく嫉妬するものもいる。
それでいて年齢としては十代後半と、生徒たちの主流年齢層と比べてもそう変わらないというのだから嫉妬もされるだろう。
数学や物理学の未解決問題も解いてしまうその頭脳に、講師陣は歓迎だけでなく嫉妬するものもいる。
それでいて年齢としては十代後半と、生徒たちの主流年齢層と比べてもそう変わらないというのだから嫉妬もされるだろう。
そのあまりの図抜け方は、マスターか上級NPCであることをすぐに疑わせて来ていた。
一応手紙の後で遠坂凜と同様にこの世界における行動履歴を調査したところ、マスターであることの裏付けがすぐに取れるに至った。
一応手紙の後で遠坂凜と同様にこの世界における行動履歴を調査したところ、マスターであることの裏付けがすぐに取れるに至った。
ザキラはあまり生徒たちへの講義へ出てくることはない。彼が担当に入っている講義の科目も、ほとんど他の人員が対応していた。
しかし、たまの講義は難解な内容だが評判は悪くない。
その威厳は年齢を思わせないくらい強いが、アカデミーの主流年齢層の若者の心理は理解していて内容はしっかり聞けば面白く理解しやすい。
なんというか、まるで何かカードゲームを紐解くかのように。
そしてその中で興味深い質問を出してきた学生を自分の研究室のメンバーとしてスカウトしたりもするという。
更にはアカデミー附属の空中船をほぼ自由に使える権限も得ているらしく、アカデミーを留守にすることもある。
キャッスルに最近は通っていたりするらしい。
直接コンタクトするのは難しいし、どのようにコンタクトを取ろうと私の方が下手になってしまうことは明らかだ。
情報統合思念体の本体へのアクセスが制限される状況下においては、有機生命的な知能の高さにおいてザキラは朝倉を上回る可能性も高い。
組むにしても戦うにしても、こちらもそれなりの準備をしなければならないだろう。それか、相手の下に取り入るか。
とりあえずザキラへの対処は考えなければならないけど、今ではないとこちらも判断した。
しかし、たまの講義は難解な内容だが評判は悪くない。
その威厳は年齢を思わせないくらい強いが、アカデミーの主流年齢層の若者の心理は理解していて内容はしっかり聞けば面白く理解しやすい。
なんというか、まるで何かカードゲームを紐解くかのように。
そしてその中で興味深い質問を出してきた学生を自分の研究室のメンバーとしてスカウトしたりもするという。
更にはアカデミー附属の空中船をほぼ自由に使える権限も得ているらしく、アカデミーを留守にすることもある。
キャッスルに最近は通っていたりするらしい。
直接コンタクトするのは難しいし、どのようにコンタクトを取ろうと私の方が下手になってしまうことは明らかだ。
情報統合思念体の本体へのアクセスが制限される状況下においては、有機生命的な知能の高さにおいてザキラは朝倉を上回る可能性も高い。
組むにしても戦うにしても、こちらもそれなりの準備をしなければならないだろう。それか、相手の下に取り入るか。
とりあえずザキラへの対処は考えなければならないけど、今ではないとこちらも判断した。
他に生徒の中にもマスターがいる可能性は想定されたが、さすがに量が多すぎて朝倉の情報処理能力でも解析には大量のリソースが必要だ。
ただ解析作業に至らずとも目立つ存在はいた。
ハイラル王国の王女という身分でアカデミーへ遊学しているゼルダ姫。
ただ解析作業に至らずとも目立つ存在はいた。
ハイラル王国の王女という身分でアカデミーへ遊学しているゼルダ姫。
その内包する魔力……理解しない概念だけれどランサーと話して、また端末のルール説明を読み覚えた。
その量はこの世界の人物としては桁違いのレベルだった。
しかしマスターとして招かれたという情報は調査しても見つからない。確実に可能性を否定はできないが。
別解として、元の世界で願望器をその身に宿していた存在……上級NPCである可能性はどうかな。
図書館で各世界に関する文献を調査すると、トライフォースという願望器の一部を宿す存在としてゼルダ姫が記載されている。
その存在は時代の違いによるか世界の違いによるか多種多様で、どのゼルダ姫に相当するのかは不明だけど。
少なくともトライフォースは、一部だけでも所持者に力を与えはするけど完成させないと完全な願望器としての役目は果たさない。
彼ら上級NPCは、何故、何のためこの世界に存在しているんだろう。
聖杯戦争の参加者に利用してもらうため……というのはやや都合が良すぎるか。
その量はこの世界の人物としては桁違いのレベルだった。
しかしマスターとして招かれたという情報は調査しても見つからない。確実に可能性を否定はできないが。
別解として、元の世界で願望器をその身に宿していた存在……上級NPCである可能性はどうかな。
図書館で各世界に関する文献を調査すると、トライフォースという願望器の一部を宿す存在としてゼルダ姫が記載されている。
その存在は時代の違いによるか世界の違いによるか多種多様で、どのゼルダ姫に相当するのかは不明だけど。
少なくともトライフォースは、一部だけでも所持者に力を与えはするけど完成させないと完全な願望器としての役目は果たさない。
彼ら上級NPCは、何故、何のためこの世界に存在しているんだろう。
聖杯戦争の参加者に利用してもらうため……というのはやや都合が良すぎるか。
どうなるにせよ、ある程度彼女と関わりを持って損はないだろうと判断できる。
準備期間ある日の放課後、ゼルダが下校するであろうルートを狙ってみる。
学生として話して、友好的な関係でも作れればいいな……。
準備期間ある日の放課後、ゼルダが下校するであろうルートを狙ってみる。
学生として話して、友好的な関係でも作れればいいな……。
◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇
なんだこれ。
キャンパス屋外の一角で、戦闘が起きている。
状況は一対多。
片方は黒と青の装束に身を包み、白い布で顔と髪の大部分を覆う金髪の男。
対するは3人の……何者かわからない存在。怪物とでも言おうかな。
概観のシルエットは人間だけれど……体格や服装はどうでもいい。
身体の所々が黒い装飾に覆われて融合していることに、何より異常さを感じずにいられない。
何故か奴らはスマホか何かで、音楽を垂れ流している。
状況は一対多。
片方は黒と青の装束に身を包み、白い布で顔と髪の大部分を覆う金髪の男。
対するは3人の……何者かわからない存在。怪物とでも言おうかな。
概観のシルエットは人間だけれど……体格や服装はどうでもいい。
身体の所々が黒い装飾に覆われて融合していることに、何より異常さを感じずにいられない。
何故か奴らはスマホか何かで、音楽を垂れ流している。
男はひらひらと攻撃をかわしながら、細い体と手脚を素早く動かし時々攻撃を入れる。
側頭部を狙った非常に滑らかな上段回し蹴り、一瞬に姿勢を低くして足を長く廻す足払い、大振りな攻撃へのカウンターで素早い手刀。
その動きは流れるように美しくて、隙もまるでなかった。
通常の人間なら即座に気絶するような攻撃や、悶え痛みに倒れるような攻撃も怪物に喰らわせているはず。
でも、怪物たちにそれらの攻撃はあまり応えていない。
怪物たちはものすごい勢いで腕や足を振り回すが、大振りで歪な動きは躱され、受け流され全く有効打になっていない。
飛びかかったりするときの動きはなんだかふわっとして、物理法則から外れているようだ。
側頭部を狙った非常に滑らかな上段回し蹴り、一瞬に姿勢を低くして足を長く廻す足払い、大振りな攻撃へのカウンターで素早い手刀。
その動きは流れるように美しくて、隙もまるでなかった。
通常の人間なら即座に気絶するような攻撃や、悶え痛みに倒れるような攻撃も怪物に喰らわせているはず。
でも、怪物たちにそれらの攻撃はあまり応えていない。
怪物たちはものすごい勢いで腕や足を振り回すが、大振りで歪な動きは躱され、受け流され全く有効打になっていない。
飛びかかったりするときの動きはなんだかふわっとして、物理法則から外れているようだ。
さて、戦闘は小規模なもので容易に介入できそう。通り道的にゼルダ姫も関わる可能性がある以上、介入しない選択肢はない。
さて、どちらに加勢するか……そんなの決まってる。
黒い装飾の怪物たちからは、人間らしい正気が感じられない。話を聞くのも難しいと推測できる。
金髪の男はより理性的に戦っているように見える。
さて、どちらに加勢するか……そんなの決まってる。
黒い装飾の怪物たちからは、人間らしい正気が感じられない。話を聞くのも難しいと推測できる。
金髪の男はより理性的に戦っているように見える。
情報制御の仕込みが足りないから、物体を槍のように変形させ投射したり相手の動きを直に制御したりはおそらく出来ない。
そして見た感じ金髪の男の単純な身体能力は仕込みの無い私よりも高い。でも、私が加勢できる程度の次元の戦いではある。
ランサーは別行動で学内のマスターやサーヴァントを調査中だけれど、念のため何かあったらいつでも来れるように念話で伝える。
そして見た感じ金髪の男の単純な身体能力は仕込みの無い私よりも高い。でも、私が加勢できる程度の次元の戦いではある。
ランサーは別行動で学内のマスターやサーヴァントを調査中だけれど、念のため何かあったらいつでも来れるように念話で伝える。
武器が何かあったほうがいいだろうけれど。
サバイバルナイフは……さすがに他の学生に見られたらまずいだろうからやめとこう。
文房具の15㎝定規を取り出し、簡単に曲がったり折れたりしない硬度に分子構造の改変を行う。
……うん、これくらいなら短時間でも完璧にできる。
サバイバルナイフは……さすがに他の学生に見られたらまずいだろうからやめとこう。
文房具の15㎝定規を取り出し、簡単に曲がったり折れたりしない硬度に分子構造の改変を行う。
……うん、これくらいなら短時間でも完璧にできる。
男が3人に囲まれ逃げ場がなくなりそうになった瞬間、足元の石を蹴とばす。
そしてそれを即座に追うように怪物に迫っていく。
頭の部分の黒い装飾に命中……したけど頭が大きくのけ反るだけで動きは止まらない。
それを布石にしようとしたのに!
しかし男は大きく舞い上がる木の葉のように飛び上がって包囲を抜けていた。なーんだ。
そしてそれを即座に追うように怪物に迫っていく。
頭の部分の黒い装飾に命中……したけど頭が大きくのけ反るだけで動きは止まらない。
それを布石にしようとしたのに!
しかし男は大きく舞い上がる木の葉のように飛び上がって包囲を抜けていた。なーんだ。
怪物はふらふらと私にも襲い掛かる。
腕の振り下ろし……簡単に定規で受け止めるけど、腕が押し込まれる!
ふわっとした動きのくせに、やっぱり攻撃はとても重い……!
腕の振り下ろし……簡単に定規で受け止めるけど、腕が押し込まれる!
ふわっとした動きのくせに、やっぱり攻撃はとても重い……!
2発目……! 定規が耐えられず、メキメキ歪んできた。
まあこうなるのも、想定してないわけではない。
3発目が来る前に飛び退こうと足に力を入れる。
相手が腕を動かし始めたところで私は飛び跳ねた……と同時に金髪の男も割り込んできた。
突進と同時に両腕を振るい、下ろされる相手の腕を弾いた。
私を逃がそうと抱え上げようともしたみたいだったけど、私自身がちゃんと逃げられたのでそれは不発。
まあこうなるのも、想定してないわけではない。
3発目が来る前に飛び退こうと足に力を入れる。
相手が腕を動かし始めたところで私は飛び跳ねた……と同時に金髪の男も割り込んできた。
突進と同時に両腕を振るい、下ろされる相手の腕を弾いた。
私を逃がそうと抱え上げようともしたみたいだったけど、私自身がちゃんと逃げられたのでそれは不発。
私と男は急加速し怪物から距離を取り、怪物3人に向き合う形になった。
男は……ランサーには及ばないけどまったく人間ではないレベルの速さだ。
男は……ランサーには及ばないけどまったく人間ではないレベルの速さだ。
「奴らをどうにかするつもりなんでしょ?手伝うわ」
「……感謝する。ひとまず距離を取ろう」
「……感謝する。ひとまず距離を取ろう」
私が一般生徒とは一線を画す身体能力の持ち主とは即座に理解したのか、すぐに共闘は受け入れてくれた。
「貴方、何でその得物を全く使わないの?」
「使えない。彼らは少し前は人間だった。そして今も本質は人間であるように見える。
武器で傷つけることはできない」
「そう……人間に戻す心当たりは?」
「使えない。彼らは少し前は人間だった。そして今も本質は人間であるように見える。
武器で傷つけることはできない」
「そう……人間に戻す心当たりは?」
なんとなく状況は理解。
近くで切り結んでみたことで彼ら怪物の情報が少しずつ分かってきた。
彼らは本質的にはこの世界の生物であり、賢者の石という情報素子に有機生命体としてのレイヤーを被せた存在のようだ。
しかし何らかの介入を受け本来の性質から変質している。情報的な侵食を他の何者かから受けている。
確かに人間らしいプロパティも内包しているようだ。
近くで切り結んでみたことで彼ら怪物の情報が少しずつ分かってきた。
彼らは本質的にはこの世界の生物であり、賢者の石という情報素子に有機生命体としてのレイヤーを被せた存在のようだ。
しかし何らかの介入を受け本来の性質から変質している。情報的な侵食を他の何者かから受けている。
確かに人間らしいプロパティも内包しているようだ。
私たち端末も有機生命体に情報的に介入する手段がある。
空間レベルで制御下にして改変するか、あるいはナノマシンを生成して体内に送り込むかといった方法で。
それと同じ方法か何かは知らないが、彼らも同様かと思われる情報制御をされているらしい。
これを解除することはできるだろうか。解除して対話できれば得られる情報も多いだろう。
空間レベルで制御下にして改変するか、あるいはナノマシンを生成して体内に送り込むかといった方法で。
それと同じ方法か何かは知らないが、彼らも同様かと思われる情報制御をされているらしい。
これを解除することはできるだろうか。解除して対話できれば得られる情報も多いだろう。
「……彼らが自身のスマートフォンから音楽を流した時、急に怪物のような姿になったんだ。
それが契機となのかもしれない」
「へえ。少し音楽のことは気になってたけど……あれを止めてみるのは良さそうね。
後から調べたいから、できれば壊さずに盗むことは出来ない?」
「わかった、やってみよう」
それが契機となのかもしれない」
「へえ。少し音楽のことは気になってたけど……あれを止めてみるのは良さそうね。
後から調べたいから、できれば壊さずに盗むことは出来ない?」
「わかった、やってみよう」
私たちが話す間に戦力差を分析したのか。男に2人が、私に1人が向かってくる。
まあ、私の特殊能力を知らなければ彼らから見たら男の方が厄介なんでしょうね。
こっそりと情報改変で補修していた定規で私は対抗しに行く。
まあ、私の特殊能力を知らなければ彼らから見たら男の方が厄介なんでしょうね。
こっそりと情報改変で補修していた定規で私は対抗しに行く。
身体の信号伝達を強化、筋繊維の動作速度のリミットを外す。
攻撃は受け止めず躱す……そしで急に姿勢を落としたり大げさな回避をして大ぶりな攻撃を誘い出してみる。
攻撃は受け止めず躱す……そしで急に姿勢を落としたり大げさな回避をして大ぶりな攻撃を誘い出してみる。
そして……だめだ、触れさせてくれない。
胸ポケットのスマホを盗もうとした瞬間、ものすごい勢いで奴は飛びのく。
そして警戒されたのか胸ポケットを手で強くふさいでこちらに視線を向ける……これは大変そうだ。
胸ポケットのスマホを盗もうとした瞬間、ものすごい勢いで奴は飛びのく。
そして警戒されたのか胸ポケットを手で強くふさいでこちらに視線を向ける……これは大変そうだ。
ふと男の方に視線を向けるも、私と同じように怪物たちはスマホを守り切り、盗難や破壊を大いに警戒している。
物理的に音楽を止めるのは難しいかもしれない……。
いや、『私なら』いくらでも他に止めさせる方法はある。
物理的に音楽を止めるのは難しいかもしれない……。
いや、『私なら』いくらでも他に止めさせる方法はある。
「あのね、音楽を中断させる方法、思いついたんだけど」
「何?」
「ちょっと私の端末でいろいろしたいから、また奴らの攻撃をかわして足止めできる?」
「何するつもりだ?足止めに集中すれば君を攻撃させないことは出来るが」
「説明はあと、じゃあよろしくね」
「何?」
「ちょっと私の端末でいろいろしたいから、また奴らの攻撃をかわして足止めできる?」
「何するつもりだ?足止めに集中すれば君を攻撃させないことは出来るが」
「説明はあと、じゃあよろしくね」
◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇
さて……個人所有の携帯端末を遠隔でいきなりハッキングするというのは、強力なハッカーでも難しい行為だ。
現代的な端末は定期的にセキュリティアップデートされ、プログラムの実行権限、アクセス権限も厳密に管理されているのだから。
相手がセキュリティに問題のあるアプリケーションを使用しているところにアクセスしたり、
オペレーティングシステム自体のセキュリティホールやバックドアを探し当て利用することも考えられはする。
しかしこの世界に来てまだ日の浅い朝倉には、それらの手法を用いるための知識も仕込みもまだ足りはしない。
それならば……?
現代的な端末は定期的にセキュリティアップデートされ、プログラムの実行権限、アクセス権限も厳密に管理されているのだから。
相手がセキュリティに問題のあるアプリケーションを使用しているところにアクセスしたり、
オペレーティングシステム自体のセキュリティホールやバックドアを探し当て利用することも考えられはする。
しかしこの世界に来てまだ日の浅い朝倉には、それらの手法を用いるための知識も仕込みもまだ足りはしない。
それならば……?
男は蚊や蚤のようにヒラヒラピョンピョンとすべての攻撃を躱し時間を稼ぐ……がほんの数十秒で音楽が途切れる。
その一方でけたたましい音をスマホは出し始めた。
怪物たちは困惑するかのように動きがぎこちなくなっていく。
その隙を見逃す男ではない。手早く3人のスマホを手を払い奪い去っていく。
ついでに追われないよう手刀も入れたが……明らかに手ごたえが違って、怪物たちは倒れる。
その一方でけたたましい音をスマホは出し始めた。
怪物たちは困惑するかのように動きがぎこちなくなっていく。
その隙を見逃す男ではない。手早く3人のスマホを手を払い奪い去っていく。
ついでに追われないよう手刀も入れたが……明らかに手ごたえが違って、怪物たちは倒れる。
スマホを持ちながら男が駆けてくる……不思議そうに、振動し画面が流れ多様な音を垂れ流すスマホを抱えながら。
途切れさせたのは……大量の通知音や着信音だった。
途切れさせたのは……大量の通知音や着信音だった。
朝倉の行ったのはハッキングとは言えないような単純な足止め。
無線通信による端末同士の接続機能が待機されているため、端末のデバイス名も公開されて近くの端末で知ることができる。
そこから端末間通信を利用し、またSNSのアカウントを探し通知を送りつけ、
電話番号がわかれば着信させ……これらをほんの数十秒で朝倉は行っていた。
無線通信による端末同士の接続機能が待機されているため、端末のデバイス名も公開されて近くの端末で知ることができる。
そこから端末間通信を利用し、またSNSのアカウントを探し通知を送りつけ、
電話番号がわかれば着信させ……これらをほんの数十秒で朝倉は行っていた。
◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇
男からスマホを受け取り、とりあえず通知を全部切りながら音楽も切ってしまう。
ふと怪物たちを見ると、黒い装飾は消えて高校生くらいの人間の姿がはっきり見えるようになっていた。
ふと怪物たちを見ると、黒い装飾は消えて高校生くらいの人間の姿がはっきり見えるようになっていた。
「ありがとう、君のおかげで彼らを止めることが出来た」
「ふふっ、一応生徒会職も持っているからこれくらいはしたかったのよ。私は朝倉涼子」
「ボクは……シーク。ハイラル王家を陰より支えるシーカー族の一員……」
「ふふっ、一応生徒会職も持っているからこれくらいはしたかったのよ。私は朝倉涼子」
「ボクは……シーク。ハイラル王家を陰より支えるシーカー族の一員……」
少し詰まったようにしてから答える男。
「ハイラル王家って、この学校のゼルダ姫の王家よね?」
「ああ。でも君の方こそ、その戦闘能力は明らかに普通の学生ではないようだけれど……?」
「私は『マスター』としてこの都市に来た一員。ちょっと特殊な世界の出身だからね」
「そうだったのか。特別待遇というのも頷ける」
「ああ。でも君の方こそ、その戦闘能力は明らかに普通の学生ではないようだけれど……?」
「私は『マスター』としてこの都市に来た一員。ちょっと特殊な世界の出身だからね」
「そうだったのか。特別待遇というのも頷ける」
彼がどのようなNPCなのかは判断できない。上級NPCは付随する存在も再現されるの?
少なくともその魔力量の測定値は前に見たゼルダ姫と比べるまでもない少ない量。
男が状況の説明続けていく。
少なくともその魔力量の測定値は前に見たゼルダ姫と比べるまでもない少ない量。
男が状況の説明続けていく。
「彼らはあの音楽の虜になっていたようだった。
彼らのカバンの中には音楽を収録したCDや、オンラインでの視聴先を記したQRコードの紙が入っている。
それをアカデミーの学生たちに押し付けるように配って回っていたんだ。
ゼルダ姫はそれを辞めさせようと、彼らに向かっていった」
「そうなの? でもあの姫様が向かっていこうと思うんだから、その時はあんな怪物じゃなかったってこと?」
「そうだ。彼らはとりあえず聞いてみろと自分のスマートフォンで音楽を流し始めた……。
すると彼らの体が少しずつ、例の黒い装飾に覆われていった。
姫様はそれにも臆さず悪いことは悪いことだと言ったが……彼らはそれを聞き正気を失い殴りかかってきた。
だから姫を守り逃がすために、ボクが表へ出てくることになったわけだ。
不思議だった。彼らは怒ってはいるのだが、襲い掛かる動きはあまり感情と連動していないようでもあった」
彼らのカバンの中には音楽を収録したCDや、オンラインでの視聴先を記したQRコードの紙が入っている。
それをアカデミーの学生たちに押し付けるように配って回っていたんだ。
ゼルダ姫はそれを辞めさせようと、彼らに向かっていった」
「そうなの? でもあの姫様が向かっていこうと思うんだから、その時はあんな怪物じゃなかったってこと?」
「そうだ。彼らはとりあえず聞いてみろと自分のスマートフォンで音楽を流し始めた……。
すると彼らの体が少しずつ、例の黒い装飾に覆われていった。
姫様はそれにも臆さず悪いことは悪いことだと言ったが……彼らはそれを聞き正気を失い殴りかかってきた。
だから姫を守り逃がすために、ボクが表へ出てくることになったわけだ。
不思議だった。彼らは怒ってはいるのだが、襲い掛かる動きはあまり感情と連動していないようでもあった」
彼らを見やる。人間に戻ってからまだ気を失い起き上がりそうにもない。
じゃあそれならと、特に顔つきの可笑しそうな奴を調べてみる。
ポケットを探ると、すぐに身分を証明するのもが出てきた。学生証だ。
文面は、月海原学園高等部 ……?
じゃあそれならと、特に顔つきの可笑しそうな奴を調べてみる。
ポケットを探ると、すぐに身分を証明するのもが出てきた。学生証だ。
文面は、月海原学園高等部 ……?
彼らはアカデミーのほど近くにある学校、月海原学園の学生であるらしい。
アカデミーで月海原学園の学生を見ることはそう珍しくない。距離が近いからというだけではなく。
講義は専用に組まれているが、部活動など課外活動は学校を超えてどちらに所属しようと自由。
附属図書館はアカデミーが試験期間でもない限り、誰もが自由に利用可能なので月海原の学生もよく訪れる。
アカデミーの図書館には専門書、図鑑、論文が多く、月海原には児童書や学習書が多くなっている。
他に月海原からアカデミーへの進学を狙う学生が、下見や研究室の訪問に来ることもある。
彼らが怪物化したという事を除けば、特に何も怪しい存在ではない。
そう……周りも彼らを怪しがる様子はなくて……なさ過ぎて。
アカデミーで月海原学園の学生を見ることはそう珍しくない。距離が近いからというだけではなく。
講義は専用に組まれているが、部活動など課外活動は学校を超えてどちらに所属しようと自由。
附属図書館はアカデミーが試験期間でもない限り、誰もが自由に利用可能なので月海原の学生もよく訪れる。
アカデミーの図書館には専門書、図鑑、論文が多く、月海原には児童書や学習書が多くなっている。
他に月海原からアカデミーへの進学を狙う学生が、下見や研究室の訪問に来ることもある。
彼らが怪物化したという事を除けば、特に何も怪しい存在ではない。
そう……周りも彼らを怪しがる様子はなくて……なさ過ぎて。
「不思議なこと……もう一つあるわ。
私達が戦ってるのに、通りかかる他の学生達の行動がおかしかったのよね。
まるで怪物を恐れているようには見えなくて。
……そう、人間同士のケンカを遠巻きに見る感じ」
「ああ、確かにそうだ。思い出してみると、確かに最初に彼らに黒い装飾が出てきた際も、
それに対して驚きを見せる学生はいなかったように思える」
私達が戦ってるのに、通りかかる他の学生達の行動がおかしかったのよね。
まるで怪物を恐れているようには見えなくて。
……そう、人間同士のケンカを遠巻きに見る感じ」
「ああ、確かにそうだ。思い出してみると、確かに最初に彼らに黒い装飾が出てきた際も、
それに対して驚きを見せる学生はいなかったように思える」
周りを見渡してみる。周りの学生たちは少ないが、その目線は称賛か関心かのように見える。
「少し、正式な学生の私が皆さんに聞いてみましょうか?」
「……そうだな。よろしく頼む」
「……そうだな。よろしく頼む」
近くの中から話しやすそうな女子学生を見つけ、向かっていき話しかける。
「ごめん! 私が来る前に何があったか教えてくれる?」
「あ、うん。何とかしてくれてありがと!」
「私、一応今期のクラスの委員長として学校の風紀を守る一端を担っているわけだし、あれくらいはしないとね。
まあアカデミーじゃなくて月海原の学生だったみたいだけど」
「月海原の学生だったんだ!
でも正直ヤバい奴らだったね。刃物持ってるあの忍者にも挑んでいってちゃんと喧嘩になってたし」
「忍者か……彼はゼルダ姫のお付きの者みたいだしそんなに怪しい者じゃないのよ」
「まあ確かに、刺して大けが負わせないで立ち回ってたのはよくやるね。
迷惑してる人も多かったし、うまく収めてくれて有難いよ!」
「そうね、あの人たち何というか……黒っぽいごてごてした装飾付けて怖かったよね」
「え? そんなんあったかな? 雰囲気が怖かったのはそうだけど」
「あ、うん。何とかしてくれてありがと!」
「私、一応今期のクラスの委員長として学校の風紀を守る一端を担っているわけだし、あれくらいはしないとね。
まあアカデミーじゃなくて月海原の学生だったみたいだけど」
「月海原の学生だったんだ!
でも正直ヤバい奴らだったね。刃物持ってるあの忍者にも挑んでいってちゃんと喧嘩になってたし」
「忍者か……彼はゼルダ姫のお付きの者みたいだしそんなに怪しい者じゃないのよ」
「まあ確かに、刺して大けが負わせないで立ち回ってたのはよくやるね。
迷惑してる人も多かったし、うまく収めてくれて有難いよ!」
「そうね、あの人たち何というか……黒っぽいごてごてした装飾付けて怖かったよね」
「え? そんなんあったかな? 雰囲気が怖かったのはそうだけど」
おかしい。私とあの男以外には彼らが怪物に見えなかった?
「ゼルダ姫にも彼ら、音楽を布教しようとしたんだって?」
「そうなんだよ、ゼルダ姫はあんな曲好きじゃないと思うけどな。
それですごい音量で流してたし、ゼルダ姫も怒るよ。
しかもブチぎれて取り押さえようとしてたし……月海原の男子生徒、礼儀とかないのかな?」
「まあまあ、全員がそういうわけじゃないよ、きっと」
「ゼルダ姫が魔法でどうにかするかと思ったけど、なんだか魔法で逃げちゃってからあの忍者が出てきたの。
人間の生徒3人くらいならあの魔法の実力なら何とかできる気がするんだけどなあ……?」
「……人間よりは明らかに抜けた身体能力だったけど?」
「え、どう見ても人間じゃなかった?あの忍者の動きに比べるまでもなく、普通の非行学生みたいだったけど……。
忍者があいつらをどうしちゃうかがちょっと心配だったし。
まあ実際に戦った人が言うなら、予想以上に強かったってことだよね。本当にありがとう」
「そうなんだよ、ゼルダ姫はあんな曲好きじゃないと思うけどな。
それですごい音量で流してたし、ゼルダ姫も怒るよ。
しかもブチぎれて取り押さえようとしてたし……月海原の男子生徒、礼儀とかないのかな?」
「まあまあ、全員がそういうわけじゃないよ、きっと」
「ゼルダ姫が魔法でどうにかするかと思ったけど、なんだか魔法で逃げちゃってからあの忍者が出てきたの。
人間の生徒3人くらいならあの魔法の実力なら何とかできる気がするんだけどなあ……?」
「……人間よりは明らかに抜けた身体能力だったけど?」
「え、どう見ても人間じゃなかった?あの忍者の動きに比べるまでもなく、普通の非行学生みたいだったけど……。
忍者があいつらをどうしちゃうかがちょっと心配だったし。
まあ実際に戦った人が言うなら、予想以上に強かったってことだよね。本当にありがとう」
おかしい。奴らの動きは明らかに人間のものではなかったのに。
◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇
3人のスマホの認証を突破して監視アプリを入れてしまう。
とっても簡単。でも直にスマホに触れるからこそできた芸当ね。
とっても簡単。でも直にスマホに触れるからこそできた芸当ね。
私の使うハッキングは2通り。
まずこの世界を動かす法則に則り、この世界で動く情報端末を利用するハッキング。
私には女子高生らしく動く機能を実装されているし、現代高校生の使うスマートフォンに類似する端末の操作も簡単。
そして一度操作方法を覚えてしまえば、元来情報に親しんできた私なら一流のハッカーにだってなれる。
まずこの世界を動かす法則に則り、この世界で動く情報端末を利用するハッキング。
私には女子高生らしく動く機能を実装されているし、現代高校生の使うスマートフォンに類似する端末の操作も簡単。
そして一度操作方法を覚えてしまえば、元来情報に親しんできた私なら一流のハッカーにだってなれる。
もう一つは、この世界の法則を超えた世界を構成する情報そのものの改変。それはまるで魔術か何かのよう。
こちらの力を、前者のこの世界の情報端末へのハッキングに応用することもできる。
対象の物体を情報制御下にするため実際に触れたり、自身が制御下とした空間に置いたりしなければならないけど、
通常のルールを無視して端末自体の電気信号を閲覧し情報を得たり、また介入して誤動作させることだってできる。
情報統合思念体本体より支援を受ければより遠隔での介入、大規模な介入もできたけど、
この聖杯戦争内では端末が保持する機能としてのごく限定的な情報改変しかできないのはちょっと大変。
こちらの力を、前者のこの世界の情報端末へのハッキングに応用することもできる。
対象の物体を情報制御下にするため実際に触れたり、自身が制御下とした空間に置いたりしなければならないけど、
通常のルールを無視して端末自体の電気信号を閲覧し情報を得たり、また介入して誤動作させることだってできる。
情報統合思念体本体より支援を受ければより遠隔での介入、大規模な介入もできたけど、
この聖杯戦争内では端末が保持する機能としてのごく限定的な情報改変しかできないのはちょっと大変。
倒れた3人もしばらくたって目が覚めだした。
あれ?シークがどこからか取り出したハープを抱えていた。
そして音を奏で始める……連なっていってそれは音楽になる。
あれ?シークがどこからか取り出したハープを抱えていた。
そして音を奏で始める……連なっていってそれは音楽になる。
「これは太陽の歌というメロディー。
一部のモンスターの動きを止める効果も持っている。
彼らに巣食う悪しき力も少しは落ち着いてくれれば良いのだけれど」
一部のモンスターの動きを止める効果も持っている。
彼らに巣食う悪しき力も少しは落ち着いてくれれば良いのだけれど」
綺麗な音楽を聴かされて……先ほど学生証を見させてもらった学生がぼそぼそ話し始めた。
「……悪くはねえな。
ちょっとすっきりした頭になんか素直に入ってくるというか……」
「そうだ、様々な良い音楽が世界にはある。
そして好みも人それぞれ。無理に他人に自分の好きな物を押し付けるべきじゃない」
「だけどよ……μの唄う楽曲こそ俺たちにとっては最高の音楽なんだよ」
「μね……貴方が布教しようとしていた曲のボーカルもμだったっけ。
どうしてそんなにバーチャルドール、μの歌が好きなの?」
ちょっとすっきりした頭になんか素直に入ってくるというか……」
「そうだ、様々な良い音楽が世界にはある。
そして好みも人それぞれ。無理に他人に自分の好きな物を押し付けるべきじゃない」
「だけどよ……μの唄う楽曲こそ俺たちにとっては最高の音楽なんだよ」
「μね……貴方が布教しようとしていた曲のボーカルもμだったっけ。
どうしてそんなにバーチャルドール、μの歌が好きなの?」
感情が高ぶるもどこか辛そうに、学生は話す。
「俺のこの世に対する恨み辛みを受け止めてくれるからだ!」
「……確かに充実した学生生活を送れてるような印象は受けないけど」
「ちっ、その通りで俺たちは陰キャラグループの一員で鬱屈してたよ。
そんな俺らにμの曲は届いた。
最初は校内放送で時々流れてたのを聞いてただけだったんだよ。
でも聞いてるうちにだんだん心に入って来て、共感してきてよお……!」
「……確かに充実した学生生活を送れてるような印象は受けないけど」
「ちっ、その通りで俺たちは陰キャラグループの一員で鬱屈してたよ。
そんな俺らにμの曲は届いた。
最初は校内放送で時々流れてたのを聞いてただけだったんだよ。
でも聞いてるうちにだんだん心に入って来て、共感してきてよお……!」
好きなものを離したいというように早口に続ける。
「聞いてると気分が乗って重い気持ちが楽になる!
何でも出来るような気分になってくるんだよ!」
「……なるほど、その結果ゼルダ姫に暴力を振るおうとしたわけか」
何でも出来るような気分になってくるんだよ!」
「……なるほど、その結果ゼルダ姫に暴力を振るおうとしたわけか」
学生が思い起こしたように下を向く。
「ゼルダ姫はμの音楽についてどう思ってるんだろう?」
「特に嫌ってはいない。貴様を止めたのも音楽の是非ではなく、
貴様の行為がアカデミー内の迷惑になっていたからだ。
それも理解できず殴りかかるくらい正気を失っていたのか?」
「特に嫌ってはいない。貴様を止めたのも音楽の是非ではなく、
貴様の行為がアカデミー内の迷惑になっていたからだ。
それも理解できず殴りかかるくらい正気を失っていたのか?」
それを聞いて何故か学生は困惑しだした。
「は?女子を本気で殴るとか、よっぽどのことがないとしねぇよ!
ちょっと無理やり聞かせようとしただけだろ!」
「殴って動けなくしてから聞かせるつもりだったのか?」
「邪魔してくるからちょっと取り押さえようとしただけじゃねえか!」
ちょっと無理やり聞かせようとしただけだろ!」
「殴って動けなくしてから聞かせるつもりだったのか?」
「邪魔してくるからちょっと取り押さえようとしただけじゃねえか!」
埒が明かないとシークが首を横に振る。
でも私は別の可能性に気付いた。
でも私は別の可能性に気付いた。
「貴方、私たちと戦って気絶したことちゃんと覚えてるの?」
「は?そっちの忍者さんがすごい動きで武器まで持ってるから、
こっちも三人がかりで何とかしようとしたんだよ」
「俺達……ちょっと調子には乗ってたな。普段ならとっとと逃げてた。
まあそっちが本気じゃなかったんだろ?」
「いや、傷付けないよう手加減はしたがそれなりに本気だったが……」
「は?そっちの忍者さんがすごい動きで武器まで持ってるから、
こっちも三人がかりで何とかしようとしたんだよ」
「俺達……ちょっと調子には乗ってたな。普段ならとっとと逃げてた。
まあそっちが本気じゃなかったんだろ?」
「いや、傷付けないよう手加減はしたがそれなりに本気だったが……」
顔を見合わせる三人とシーク。
「貴方達、体に黒い装飾が浮き出て身体能力が高まる現象に心当たりある?」
「……何のことだ? 知らないな」
「……何のことだ? 知らないな」
残り2人も頷く。
「シーク、彼ら実は何も知らないのかも」
「どういうことだ? 操られていたという事か?」
「うーん、もっと複雑そうなんだけど……まあちょっと試してみるか」
「どういうことだ? 操られていたという事か?」
「うーん、もっと複雑そうなんだけど……まあちょっと試してみるか」
端末を操作し始めながら話す。
「貴方達、μのこと好きじゃなくなったり、他の曲がもっと好きになったりすることってあると思う?」
「何だと?あるわけないだろうが。
μ以上に推せる歌姫やアイドルなんているわけないだろう!」
「昔ウズメ隊ってのが好きだったが……μはあんな風に裏切って居なくなったりしねえ!」
「なるほどね……貴方達にはμしかないのね。
私のスマホ用ヘッドホン、すごく音質のいい設定にしてあるんだけどちょっと試してみない?」
「は? 何だと? ちょっと貸せよ」
「待てよ! 俺が先だ!」
「何だと?あるわけないだろうが。
μ以上に推せる歌姫やアイドルなんているわけないだろう!」
「昔ウズメ隊ってのが好きだったが……μはあんな風に裏切って居なくなったりしねえ!」
「なるほどね……貴方達にはμしかないのね。
私のスマホ用ヘッドホン、すごく音質のいい設定にしてあるんだけどちょっと試してみない?」
「は? 何だと? ちょっと貸せよ」
「待てよ! 俺が先だ!」
シークが私の方を見て訝しむ。
「……朝倉、何をするつもりだ?」
「お願い、ちょっと暴れたらまた取り押さえてね」
「お願い、ちょっと暴れたらまた取り押さえてね」
最も聞きたがってそうな学生にヘッドホンを被せる……。
おっ、体の各部が黒い装飾に徐々に覆われていく。こういうことか。
シークが身構えるが襲い掛かってくることはない。私たちが彼らの邪魔をしてないからかな?
ヘッドホンを付けてない学生に尋ねる。
おっ、体の各部が黒い装飾に徐々に覆われていく。こういうことか。
シークが身構えるが襲い掛かってくることはない。私たちが彼らの邪魔をしてないからかな?
ヘッドホンを付けてない学生に尋ねる。
「貴方たち、彼の様子明らかに変だと思わない?」
「え? ただ喜んでるだけだろ? 俺も高品質ヘッドホン試してえよ……」
「え? ただ喜んでるだけだろ? 俺も高品質ヘッドホン試してえよ……」
シークを見ると、ほとんど布で顔を隠しながらも驚きや関心が伺える。
「この通り。
黒い装飾は、貴方と私、そしてゼルダ姫もかな?
一部の人物しか認知できていないみたい。
当人ですらもそうなったことは認知できない」
「……ふむ。事態はかなり根深くなっているようだな。
大がかりな魔術が展開されているのかもしれない」
黒い装飾は、貴方と私、そしてゼルダ姫もかな?
一部の人物しか認知できていないみたい。
当人ですらもそうなったことは認知できない」
「……ふむ。事態はかなり根深くなっているようだな。
大がかりな魔術が展開されているのかもしれない」
魔術じゃなくて情報改変の方に私は近さを感じる。
まあそういうことまで伝える意味も、まだないか。
μを利用して何かをしようとしている者がいるという事は確実だけど。
適度なところでヘッドホンを外すと、黒い装飾も徐々に引いて行った。
彼らへの質問を続ける。
まあそういうことまで伝える意味も、まだないか。
μを利用して何かをしようとしている者がいるという事は確実だけど。
適度なところでヘッドホンを外すと、黒い装飾も徐々に引いて行った。
彼らへの質問を続ける。
「μはバーチャルドールでしょ?
いくらファンとして入れ込んでも、μに向けてあなたたちが出来ることって限られてるんじゃないの?
好意を向けるべきは、μよりも作曲者のような気もするんだけど……?」
「μはただのバーチャルドールじゃねえ! 実在してる!」
いくらファンとして入れ込んでも、μに向けてあなたたちが出来ることって限られてるんじゃないの?
好意を向けるべきは、μよりも作曲者のような気もするんだけど……?」
「μはただのバーチャルドールじゃねえ! 実在してる!」
作曲者がいるなら、この騒動の黒幕もしくは近いところだろうと私は想像したけど。
ちょっと思わぬ方向で、驚きを感じる。
ちょっと思わぬ方向で、驚きを感じる。
「学校の放送でμの歌が流れる前に、時々μの口上も入るんだよ!
誰かが喋らせてのか?違う。俺はそこに意志を感じた!
俺みたいなμの歌に入れ込んだ者に語りかけてる!」
誰かが喋らせてのか?違う。俺はそこに意志を感じた!
俺みたいなμの歌に入れ込んだ者に語りかけてる!」
どういうこと?妄想や嘘というには迫真だし。
「俺たちがμの歌をたくさん聞いてたくさん布教すれば、きっとμはいずれ出てくる!
ライブとかもやってくれる! そうすれば俺たちはμにこの目で会える!」
「なるほどね……それがあなたたちの行動原理だったのね」
ライブとかもやってくれる! そうすれば俺たちはμにこの目で会える!」
「なるほどね……それがあなたたちの行動原理だったのね」
……まあ聞くのはとりあえずこのくらいで切り上げるか。
「今回のことは反省しなさい。月海原の教職員には伝えないから。
というか布教するってね……無理やり音楽を聞かせても。嫌悪感の感情が一体になりやすいのよ。
さりげなく地道に、迷惑を掛けずやりなさいよ」
「お、おう……そう言うんなら、今回のことは無かったことにしようぜ」
「ええ、無かったことにしてあげる。でも次はないからね?」
というか布教するってね……無理やり音楽を聞かせても。嫌悪感の感情が一体になりやすいのよ。
さりげなく地道に、迷惑を掛けずやりなさいよ」
「お、おう……そう言うんなら、今回のことは無かったことにしようぜ」
「ええ、無かったことにしてあげる。でも次はないからね?」
3人がアカデミーのキャンパスから去っていく。
「良かったのかあれで? 君のほうが詳しそうだったから任せてしまったが、不安がまだある」
「彼ら、無理やり否定しても聞く耳持たないでしょ。
追い詰めすぎるともっとなりふり構わなくなるかもしれないし。
今のところ対処法もわからないし、スマホも監視できることだしある程度管理していくしかないわね」
「彼ら、無理やり否定しても聞く耳持たないでしょ。
追い詰めすぎるともっとなりふり構わなくなるかもしれないし。
今のところ対処法もわからないし、スマホも監視できることだしある程度管理していくしかないわね」
不安そうな態度を続けるシーク。
「例えば『エンジェリック・コンサート』でも学校でイベントを開いて呼んでみる?
音楽的にはこの世界では最上クラスの存在じゃないの?」
「……それが彼らの好みに合致するかはわからない。
それに依存対象がすり替わるだけで根本的な解決にならないかもしれない。そうだろう?」
「うん、その通り。
いい対処法が見つかるまで、お互い協力しながら気を付けていきましょう」
音楽的にはこの世界では最上クラスの存在じゃないの?」
「……それが彼らの好みに合致するかはわからない。
それに依存対象がすり替わるだけで根本的な解決にならないかもしれない。そうだろう?」
「うん、その通り。
いい対処法が見つかるまで、お互い協力しながら気を付けていきましょう」
◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇
あの後シークとは連絡先を交換して別れた。
さて、彼ら怪物に対処する方法を、私は二つ用意してみた。
一つは生成したナノマシンの投与。アカデミーに来たμの音楽に依存した学生の情報を解析して構築してみた。
機能は単純。脳や神経に作用させμの楽曲への依存心を減退、喪失させるだけ。
二度と楽曲に侵食されなくなる、抗体といえるレベルの物は出来なかった。
けれど大幅に侵食率を低下させることができるから、しばらく怪物状態になることはないでしょう。
一つは生成したナノマシンの投与。アカデミーに来たμの音楽に依存した学生の情報を解析して構築してみた。
機能は単純。脳や神経に作用させμの楽曲への依存心を減退、喪失させるだけ。
二度と楽曲に侵食されなくなる、抗体といえるレベルの物は出来なかった。
けれど大幅に侵食率を低下させることができるから、しばらく怪物状態になることはないでしょう。
シークはとても良いヒントをくれた。音楽がトリガーとなる侵食なら、別の音楽をぶつけて対処するというのは一つの方法。
だけど私は端末として有機生命体の感情を再現していても、真に理解できてはいない。
どのような曲が、どのような演奏が彼らに響いていくのか感覚的に理解できない。
大量の曲を聴いてパターンを解析していくというのは、できなくもないかもしれないけど。
だけど私は端末として有機生命体の感情を再現していても、真に理解できてはいない。
どのような曲が、どのような演奏が彼らに響いていくのか感覚的に理解できない。
大量の曲を聴いてパターンを解析していくというのは、できなくもないかもしれないけど。
だから、正攻法ではないけれど通用しそうな別の音楽を使った方法を考えさせてもらった。これが二つ目。
月海原学園の下校放送が始まる前の時間、私は月海原の校舎に入っていく。
目指すは……放送室。
月海原学園の下校放送が始まる前の時間、私は月海原の校舎に入っていく。
目指すは……放送室。
◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇
…………
◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇
ツツジ台での日常のように、学生としての生活を過ごしている。
μはもう人間大の姿でいることにも全く支障はないけれど、やっぱり普段はマスコットの姿で私の傍にいる。
特に大きな行動はしてないけれど毎日の行動を続けてるだけで、デジヘッドはある程度目につくようになって侵食は順調に進んでいた。
学校生活も辛くない。必ずいつもの明日が来てそのたびに進歩があるという素晴らしい安心感。
μはもう人間大の姿でいることにも全く支障はないけれど、やっぱり普段はマスコットの姿で私の傍にいる。
特に大きな行動はしてないけれど毎日の行動を続けてるだけで、デジヘッドはある程度目につくようになって侵食は順調に進んでいた。
学校生活も辛くない。必ずいつもの明日が来てそのたびに進歩があるという素晴らしい安心感。
……いや、そんな気がしているだけなんだ。
本当にこのペースでデジヘッドを増やせばいいのか。もっと工夫してペースを上げた方がいいんじゃないか。
令呪を隠しているせいか他のマスターには接触していないけど、もっと情報交換したり、組んだりしてもいいんじゃないか。
不安感は時々思い出すように心の中に湧くけど、私はそれに向き合えなかった。
本当にこのペースでデジヘッドを増やせばいいのか。もっと工夫してペースを上げた方がいいんじゃないか。
令呪を隠しているせいか他のマスターには接触していないけど、もっと情報交換したり、組んだりしてもいいんじゃないか。
不安感は時々思い出すように心の中に湧くけど、私はそれに向き合えなかった。
デジヘッドは傾向的には増えてるけど、たまに減ったりもしているらしい。
一度デジヘッド化した人間も、μへの依存心が弱くなるとデジヘッドではなくなってしまう。
そうなる原因はいくつかある。
一度デジヘッド化した人間も、μへの依存心が弱くなるとデジヘッドではなくなってしまう。
そうなる原因はいくつかある。
最も有効なのは、μの元の世界で別のバーチャルドール、アリアが人々に発現させていたというカタルシスエフェクト。
発現した者は個人個人に対応した武器を手にする。
その武器は身体を傷つけることはなく精神への攻撃となり、欲望や依存といった感情を落ち着かせ安定させるという。
カタルシスエフェクトを発現できる存在は、この世界にいるんだろうか。
アリアや、さらに別の知られざるバーチャルドールがサーヴァントやNPCとして存在していたら、カタルシスエフェクトは大きな脅威となってくる。
発現した者は個人個人に対応した武器を手にする。
その武器は身体を傷つけることはなく精神への攻撃となり、欲望や依存といった感情を落ち着かせ安定させるという。
カタルシスエフェクトを発現できる存在は、この世界にいるんだろうか。
アリアや、さらに別の知られざるバーチャルドールがサーヴァントやNPCとして存在していたら、カタルシスエフェクトは大きな脅威となってくる。
とはいっても多くの世界からマスターやサーヴァント、NPCが集まっている以上、それ以外にも精神に干渉する手段はあるのかもしれない。
もしあるなら、きっとデジヘッドへの有効的な対処方法になりうるんだろう。
あとは普通に対話により精神を安定させたり、μに関わらない方法で欲望を解消する糸口を自力で見つけてデジヘッドでなくなる場合もある。
もしあるなら、きっとデジヘッドへの有効的な対処方法になりうるんだろう。
あとは普通に対話により精神を安定させたり、μに関わらない方法で欲望を解消する糸口を自力で見つけてデジヘッドでなくなる場合もある。
そして……もちろんデジヘッド化したNPCが死んでしまった場合でも、デジヘッドが減ったという結果になる。
元の世界でも本来のμの力なら、解除されたのか死んでしまったのか調べるのは簡単だっただろうけど。
元の世界でも本来のμの力なら、解除されたのか死んでしまったのか調べるのは簡単だっただろうけど。
μはこのパラディウムシティでは管理者権限がないから、どういう結果でデジヘッドが減ったか調べるには実際に情報を手に入れないといけない。
でもその糸口は見つからなくて。
心苦しさを日々の学生生活で一時的に忘れるという日々が続いてく……。
でもなにも出来ない。
やる気がないのか、何かを起こす方法がわからないのか自分でもわからない。でも辛さはある。
惰性で日々が過ぎてく。不安感は募ってく。繰り返し。繰り返し。
でもその糸口は見つからなくて。
心苦しさを日々の学生生活で一時的に忘れるという日々が続いてく……。
でもなにも出来ない。
やる気がないのか、何かを起こす方法がわからないのか自分でもわからない。でも辛さはある。
惰性で日々が過ぎてく。不安感は募ってく。繰り返し。繰り返し。
◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇
今日も下校時刻になった。
もう放送室でμの音楽が流れることまで、完全に自動化して設定されている。
がんばって投票を不自然じゃない形で操作するメソッドを考えて放送プログラムを組んだ。
もし何かあった時のために対処する一日の自由時間を増やすため……というのはただの名目。
あまり重要じゃない作業だった。何かすることで達成感を得たかっただけ。そう後で気づいちゃった。
自己嫌悪感はより増していく。
何か自分に特になる他陣営との接触が起きればいいのに……とかふと思うことは多いけど、そんな都合いいことはなく。
今日もふと思って、そして帰ろうとして。
もう放送室でμの音楽が流れることまで、完全に自動化して設定されている。
がんばって投票を不自然じゃない形で操作するメソッドを考えて放送プログラムを組んだ。
もし何かあった時のために対処する一日の自由時間を増やすため……というのはただの名目。
あまり重要じゃない作業だった。何かすることで達成感を得たかっただけ。そう後で気づいちゃった。
自己嫌悪感はより増していく。
何か自分に特になる他陣営との接触が起きればいいのに……とかふと思うことは多いけど、そんな都合いいことはなく。
今日もふと思って、そして帰ろうとして。
μの音楽が流れだした。
流れ出し…………?
なんなのこの雑音!?
それは確かにμの曲。
しかし歪につぎはぎされ、音程も速度もゆがめられてしまっている。
アレンジ? そう呼びたくない。
下手に原曲の面影が聞こえる分、不快感が非常に大きくて。
音量も大きくて私は耳をふさぎたくなる。
しかし歪につぎはぎされ、音程も速度もゆがめられてしまっている。
アレンジ? そう呼びたくない。
下手に原曲の面影が聞こえる分、不快感が非常に大きくて。
音量も大きくて私は耳をふさぎたくなる。
(μ……いったい何が起きてるの……!?)
念話でμと話す。
(誰かが放送室のパソコンを細工したはず……!
学校内の情報を少し調べてみるよ!)
学校内の情報を少し調べてみるよ!)
耳をふさぎながら、焦りはあるけど考えが周るようになってきた。
周りを見ると、デジヘッドは困惑したか、あるいはバグったゲームキャラのようにのように動きがぎこちない。
デジヘッドへの対策なの?こうなることを予想して?
周りを見ると、デジヘッドは困惑したか、あるいはバグったゲームキャラのようにのように動きがぎこちない。
デジヘッドへの対策なの?こうなることを予想して?
(こんなことするなんて……きっと私たちへの対策だよね?
デジヘッドの仕組みも理解されてるってこと……?)
(そうかもしれないけど……どうしようアカネ、なんとかしたいけど……。
ただのいたずらだったりしたらいいんだけど……)
(そうだね……だめだ。
違う、楽観的に考えてたらだめだ!
ちゃんと考えて動かないと、私たちはきっとここで……)
デジヘッドの仕組みも理解されてるってこと……?)
(そうかもしれないけど……どうしようアカネ、なんとかしたいけど……。
ただのいたずらだったりしたらいいんだけど……)
(そうだね……だめだ。
違う、楽観的に考えてたらだめだ!
ちゃんと考えて動かないと、私たちはきっとここで……)
何でこんなことに。普通に過ごしてきただけなのに。
なんでこんなひどいことが急に起きちゃうんだろう。
相手はこっちの対策がある程度できている。逃げたい。
でも……逃げてしまったらそれも終わりだ。
他の所で今から本戦に向けてまた準備をするなんて、きっと無理。
それに相手はそのまま残るんだから、いずれまた会ったらまずい。
ここで何とかしなきゃいけない。どうしたら……?
なんでこんなひどいことが急に起きちゃうんだろう。
相手はこっちの対策がある程度できている。逃げたい。
でも……逃げてしまったらそれも終わりだ。
他の所で今から本戦に向けてまた準備をするなんて、きっと無理。
それに相手はそのまま残るんだから、いずれまた会ったらまずい。
ここで何とかしなきゃいけない。どうしたら……?
「放送室にいるのは……人間一人だけみたい!
マスターか上級NPCだと思うよ!」
マスターか上級NPCだと思うよ!」
学校のシステムを大半掌握しているμが調べてくれたみたい。
校内のカメラの解析や放送室の入退室記録か、あるいは学校が支配下だからパラメータが遠隔で読めたりするのかな?
でも、これはきっと朗報。
校内のカメラの解析や放送室の入退室記録か、あるいは学校が支配下だからパラメータが遠隔で読めたりするのかな?
でも、これはきっと朗報。
(人間一人だけ……? それなら何とかなるかも。
急いで準備をして向かおう、μ!)
(うん! ちょっとデジヘッドにも手伝ってもらって頑張ってみる!)
急いで準備をして向かおう、μ!)
(うん! ちょっとデジヘッドにも手伝ってもらって頑張ってみる!)
教室を出て放送室方面へ向かっていく。
とはいっても困惑しているデジヘッドたちをどうしたらいいのかと思ったけど……
μがデジヘッドの頭にマインドホンを生み出し被せるとそっちではちゃんとした音楽が流れてるのか、まともに戻ってついてきてくれた。
マインドホンは一瞬ですぐたくさん用意もできないので、侵食度が高くて強そうなデジヘッド2人を連れていく。
私も人間一人と聞いて安心感が高まった。なんとかなりそうという気持ちはどんどん強まって、やる気に繋がる。
とはいっても困惑しているデジヘッドたちをどうしたらいいのかと思ったけど……
μがデジヘッドの頭にマインドホンを生み出し被せるとそっちではちゃんとした音楽が流れてるのか、まともに戻ってついてきてくれた。
マインドホンは一瞬ですぐたくさん用意もできないので、侵食度が高くて強そうなデジヘッド2人を連れていく。
私も人間一人と聞いて安心感が高まった。なんとかなりそうという気持ちはどんどん強まって、やる気に繋がる。
さて、放送室の前までやってきた。
鍵は掛かっている……中から締めたのかな?
まあ学校のシステムを掌握してるμにとってはそんなものないも同然だ。手をかざすだけでロックは外れる。
鍵は掛かっている……中から締めたのかな?
まあ学校のシステムを掌握してるμにとってはそんなものないも同然だ。手をかざすだけでロックは外れる。
デジヘッド2人を前に出し、μは私のポケットに隠れさせる。
デジヘッドが放送室の扉を開ける……。
デジヘッドが放送室の扉を開ける……。
◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇
…………
◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇
アカネが入ると、放送室の風景は全く普段と変わりなかった。
対面するのは青みのある髪が印象的な少女。
少女、朝倉涼子はデジヘッドに対しても何ら反応を示さず、アカネと対面する。
アカネは張り詰めた表情で言葉を発しだす。
対面するのは青みのある髪が印象的な少女。
少女、朝倉涼子はデジヘッドに対しても何ら反応を示さず、アカネと対面する。
アカネは張り詰めた表情で言葉を発しだす。
「貴方がこのめちゃくちゃな放送を流しているの?
こんなことされたら学校がめちゃくちゃなんですけど……。早く止めて」
こんなことされたら学校がめちゃくちゃなんですけど……。早く止めて」
あくまでもまだ本音は出さない。
わずかながらも相手がただの悪戯娘である可能性も捨てていない。
でもその期待は早々に消え去る。
わずかながらも相手がただの悪戯娘である可能性も捨てていない。
でもその期待は早々に消え去る。
「先に他所に沢山迷惑をかけてるのは、貴方の方でしょ?
それを差し置いて……ねえ?」
「さて……何のこと?
それに貴方が今してることと私が何してきたかとか、関係ないんじゃない?
早く放送を何とかしてよ」
それを差し置いて……ねえ?」
「さて……何のこと?
それに貴方が今してることと私が何してきたかとか、関係ないんじゃない?
早く放送を何とかしてよ」
表情がゆがむアカネだが、まだ会話を続ける。
それは何とかこれが無事に終わって欲しいという懇願のようで。
それは何とかこれが無事に終わって欲しいという懇願のようで。
「とぼけるのね? でも、貴方が何者かなんてとうに見当が付いてるのよ。
その右手、隠してるみたいだけど令呪があるんでしょ?」
その右手、隠してるみたいだけど令呪があるんでしょ?」
アカネの顔は引きつり、体は緊張か恐怖か震えだしていく。地獄の始まりが告げられた。
なお、今のμの力で行える隠蔽処理はそう高度でない。
朝倉の情報認識能力で解析すれば、本当にアカネの右手の令呪が"視えている"。
まあそんな詳細まで伝えはしないが。
なお、今のμの力で行える隠蔽処理はそう高度でない。
朝倉の情報認識能力で解析すれば、本当にアカネの右手の令呪が"視えている"。
まあそんな詳細まで伝えはしないが。
「この放送室のパソコンを通して学校内の情報は結構読ませてもらったわ。
聖杯戦争のマスターは1ヶ月前から今くらいまでの期間にこの町に来たことになっているの。
だから学生の登校履歴を見て、その時期から来始めた人を調べてみたの。
μの曲が校内放送で流れ始めた時期も調べたわ。
そう、貴方が学校に通い始めてからしばらく後のタイミングでμの曲が急に放送されだしてるのよ」
聖杯戦争のマスターは1ヶ月前から今くらいまでの期間にこの町に来たことになっているの。
だから学生の登校履歴を見て、その時期から来始めた人を調べてみたの。
μの曲が校内放送で流れ始めた時期も調べたわ。
そう、貴方が学校に通い始めてからしばらく後のタイミングでμの曲が急に放送されだしてるのよ」
朝倉はアカネとは真逆に余裕淡々と、微笑も含んだ表情で話を続ける。
「そして放送委員でもない貴方が、この加工したμの曲の放送に合わせこの場にやってきたの。
ちょうど黒い装飾付けて怪物みたいになってる二人を連れてね。
それってもう答え合わせじゃない? 新条さん」
ちょうど黒い装飾付けて怪物みたいになってる二人を連れてね。
それってもう答え合わせじゃない? 新条さん」
名前が告げられた。死刑宣告のように感じられ、もはや言葉も思いつかない。
「人間を変化させてこの怪物を生み出してるのも、一緒にいるあなたのサーヴァントの仕業なんでしょ?
自己紹介でもしあいましょうよ。こちらはまだ戦う気はないわ。
そっちが戦うつもりなら、私のサーヴァントもすぐに攻撃できるけどね。
その怪物たちくらいは余裕で撃破できるわ」
自己紹介でもしあいましょうよ。こちらはまだ戦う気はないわ。
そっちが戦うつもりなら、私のサーヴァントもすぐに攻撃できるけどね。
その怪物たちくらいは余裕で撃破できるわ」
朝倉は実際に余裕がある。
しばらく前から部屋に仕込みを行っていたため、この放送室はすでにある程度彼女の情報制御下。
死角から攻撃が飛んで来ようと、不可視の攻撃をして来ようとすぐに認知できる。
そうしたらランサーがルーンの力で認識されることなくこの場にすっと現れ、相手との戦闘態勢に入るだろう。
しばらく前から部屋に仕込みを行っていたため、この放送室はすでにある程度彼女の情報制御下。
死角から攻撃が飛んで来ようと、不可視の攻撃をして来ようとすぐに認知できる。
そうしたらランサーがルーンの力で認識されることなくこの場にすっと現れ、相手との戦闘態勢に入るだろう。
そしてμも、この部屋がおそらく敵の情報制御下だということに気が付いた。
世界を情報として認知するもの同士の感覚だ。念話でアカネに伝達する。
世界を情報として認知するもの同士の感覚だ。念話でアカネに伝達する。
(アカネ! 私達、誘い込まれちゃったかもしれない!
この部屋の物質もデータとして私は見てるけど、その権限がおかしいことになってる!
私の願いを叶える力みたいに世界を改変する力がきっと相手も使えるよ!)
(そんな……! どうすればいいの……μ?)
(きっと大丈夫。まだ私の力の方が強いはず! いざとなったら大きな怪獣でも出して部屋を壊せばいいよ!
本来のサイズにはまだ届かなくても、充分戦えるくらいにはなるよ!)
この部屋の物質もデータとして私は見てるけど、その権限がおかしいことになってる!
私の願いを叶える力みたいに世界を改変する力がきっと相手も使えるよ!)
(そんな……! どうすればいいの……μ?)
(きっと大丈夫。まだ私の力の方が強いはず! いざとなったら大きな怪獣でも出して部屋を壊せばいいよ!
本来のサイズにはまだ届かなくても、充分戦えるくらいにはなるよ!)
緊張の表情は変わらないが、少しの安堵がアカネに与えられる……ことはなく。
「なるほどね……サーヴァントの名前もバーチャルドールと同じμというのね。
そして、世界を改変する力を持ってるわけね。
でも改変を始める前に、きっと私のサーヴァントが貴方達を倒してしまうわ」
(え!? 念話が傍受されてたの!?)
(部屋が支配下だから、やろうと思えばそれくらいできるのかも。
きっと部屋の中を飛ぶ情報が監視されてるよ……!)
そして、世界を改変する力を持ってるわけね。
でも改変を始める前に、きっと私のサーヴァントが貴方達を倒してしまうわ」
(え!? 念話が傍受されてたの!?)
(部屋が支配下だから、やろうと思えばそれくらいできるのかも。
きっと部屋の中を飛ぶ情報が監視されてるよ……!)
身振りで腕を広げながら、無邪気な笑みを強める朝倉。
「話を聞いて、貴方達への興味が少し強くなったわ。
まだ悪いようにはしないから、ちゃんと話し合いましょうよ。
内容によっては、協定も結べるかも」
まだ悪いようにはしないから、ちゃんと話し合いましょうよ。
内容によっては、協定も結べるかも」
もはや念話も使えない。
笑顔のまま恐ろしいことを言うこの人が本当に怖い。信用したくない。
どうしたらいいのか、どうしたらいいのかとアカネは極限上の思考で悩む。
μも悩み続けるが、うかつな行動が即こちらの危険に繋がることを理解して動けない。
時間だけが過ぎていく。
やがて朝倉が笑みを崩さないまま、優しく、優しくない内容を伝えだす。
笑顔のまま恐ろしいことを言うこの人が本当に怖い。信用したくない。
どうしたらいいのか、どうしたらいいのかとアカネは極限上の思考で悩む。
μも悩み続けるが、うかつな行動が即こちらの危険に繋がることを理解して動けない。
時間だけが過ぎていく。
やがて朝倉が笑みを崩さないまま、優しく、優しくない内容を伝えだす。
「そちら様だって今まで一般NPCを侵食したりやることやってきてるんだし、このまま見逃す選択肢はこちらにはないわ。
助けも期待しない方がいいわ。この部屋にこれ以上入ってこれるのは、私のサーヴァントだけよ。
何もしないなら……どうしましょう?
貴方達が何かする気になるまで少しづつ痛めつけてもいいのよ?」
助けも期待しない方がいいわ。この部屋にこれ以上入ってこれるのは、私のサーヴァントだけよ。
何もしないなら……どうしましょう?
貴方達が何かする気になるまで少しづつ痛めつけてもいいのよ?」
単純な脅しだが、この状況の硬直を破るには充分な効果がある言葉だった。
「μ!」
アカネの服のポケットからμが自ら出ていく。
そして人間大になっていく。
そして人間大になっていく。
「やめて!!
アカネにそんな痛いことしないで!!!!」
アカネにそんな痛いことしないで!!!!」
μが一度アカネの方を振り向き、優しく話す。
「大丈夫、絶対に勝てない戦いでも、私がアカネを逃がすから。絶対に痛い目に合わせないよ」
まだ準備期間で元の世界へ戻れるのだから、とっとと帰るのならそれ以上追うこともないけどと朝倉が思う。
でもそれを伝える前に、アカネが動く。後ろからμの手を握り締める。
でもそれを伝える前に、アカネが動く。後ろからμの手を握り締める。
「だめだよμ。消えたりしちゃだめ……。
怖いけど、ちゃんとこの人と話し合わなきゃ。
ちゃんと話せれば、本当に私達二人とも無事でいられるかもしれない……」
怖いけど、ちゃんとこの人と話し合わなきゃ。
ちゃんと話せれば、本当に私達二人とも無事でいられるかもしれない……」
μの勇気に触発され、なけなしの勇気がわずかに奮い立った。
μの気の張った目と、アカネの涙のにじんだ目が朝倉を見据える。
μの気の張った目と、アカネの涙のにじんだ目が朝倉を見据える。
「ありがとう。とりあえず対話の環境は整ったようね」
ちゃんと話し合う以上、こちらのサーヴァントも呼ぶわ」
ちゃんと話し合う以上、こちらのサーヴァントも呼ぶわ」
スッと窓のあたりから青いサーヴァントが現れる。
姿を出すまでその気配は全く感じられなかった。
それを見て、2人は明らかに彼らが自分たちの格上だったことを察する。
姿を出すまでその気配は全く感じられなかった。
それを見て、2人は明らかに彼らが自分たちの格上だったことを察する。
「向かいの建物の屋根から頑張って様子は見てたが、ほとんど念話で状況も伝えてくれないもんだからどうなってるのか心配したわ。
まあ戦いの出番はなかったようだな。こんな学生の多い所で戦うことにならなくて良かったぜ」
「貴方はすかしたようでいて結構素の感情が出やすいから、緊張した交渉にはあまり向かないの。私が全部対応したのもそのためよ。
きっと女の子と戦いにならなくて良かったとかも思ってるんじゃない?」
「ちぇっ、そう言われるとそうなんだがな……」
「でも体制としては万全だったじゃない? 実際こうやって彼女たちと対話の場を作れたもの」
まあ戦いの出番はなかったようだな。こんな学生の多い所で戦うことにならなくて良かったぜ」
「貴方はすかしたようでいて結構素の感情が出やすいから、緊張した交渉にはあまり向かないの。私が全部対応したのもそのためよ。
きっと女の子と戦いにならなくて良かったとかも思ってるんじゃない?」
「ちぇっ、そう言われるとそうなんだがな……」
「でも体制としては万全だったじゃない? 実際こうやって彼女たちと対話の場を作れたもの」
アカネは朝倉が自身のサーヴァントと砕けた感じに話すのを見ても、気が抜ける感じがしない。
最初からこうしてくれればよかったのにとは、思ったりもする。
デジヘッドという不思議な存在だけ見たら、こちらの能力の素性は知れないから万全の体制で望むのは仕方ないのかもしれないのか?
最初からこうしてくれればよかったのにとは、思ったりもする。
デジヘッドという不思議な存在だけ見たら、こちらの能力の素性は知れないから万全の体制で望むのは仕方ないのかもしれないのか?
「このまま話しても大丈夫? 隣の怪物の二人は……まあヘッドホンをしてるから込み入った話をしても耳に入りはしないのかな」
「……怪物じゃなくてデジヘッドって呼んで。μ、ちょっと出させて」
「わかったよ」
「……怪物じゃなくてデジヘッドって呼んで。μ、ちょっと出させて」
「わかったよ」
μが手を一度握り進む方向を誘導すると、デジヘッド2人は部屋の外へ向かっていく。
μは扉を開けて待ち、2人が部屋を出る際にマインドホンを外し扉を閉めた。
アカネの精神は落ちる所まで落ち着いた安堵か自棄によるものか、逆に落ち着きを見せ始めた……。
μは扉を開けて待ち、2人が部屋を出る際にマインドホンを外し扉を閉めた。
アカネの精神は落ちる所まで落ち着いた安堵か自棄によるものか、逆に落ち着きを見せ始めた……。
◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇
「なるほどね。貴方の歌と力とデジヘッドの関係、すべて理解できたわ。
この世界に来てからの経緯もちゃんと教えてくれて、ありがとね」
この世界に来てからの経緯もちゃんと教えてくれて、ありがとね」
朝倉はほぼ一方的にμとアカネから情報を得ることに成功していた。
ステータスについて隠蔽部以外は全て把握したといってもいい。
ステータスについて隠蔽部以外は全て把握したといってもいい。
「アカデミーの学生にマスターがいたなんて……」
月海原に転入したばかりのアカネでも、月海原の学生のアカデミーに対する捻じ曲がった劣等感は理解していた。
なにせアカデミー中等部3年の内容を1年で、高等部3年の内容を1年で詰め込んで勉強してしまうエリート集団だ。
月海原からアカデミーに入学、編入学する者も多く、
彼らはエリートコースに入れたことを喜んで旅立ち、残された者には劣等感が残っていく。
なにせアカデミー中等部3年の内容を1年で、高等部3年の内容を1年で詰め込んで勉強してしまうエリート集団だ。
月海原からアカデミーに入学、編入学する者も多く、
彼らはエリートコースに入れたことを喜んで旅立ち、残された者には劣等感が残っていく。
鬱々としているところに相手のランサーが話を斬り込んでくる。
「情報とかその辺の話はあまり理解できなかったが……お前らの姿勢について質問させてもらう。
お前らの能力はこの世界の一般人を多く利用して成り立つわけだ。
魂喰いみてえに無理やり生命力を奪いはしないがな……」
「私の世界を改変する力は、私を求めてくれた人を助けて幸せにする願いを叶えるためのものでしかないの。
皆のくれた感情の力が、皆を幸せにする力になるんだよ」
「うん、μの力も使命もとても私はすごいと思った。
だから私は一緒に進んでいきたいと思ったんだけど……」
お前らの能力はこの世界の一般人を多く利用して成り立つわけだ。
魂喰いみてえに無理やり生命力を奪いはしないがな……」
「私の世界を改変する力は、私を求めてくれた人を助けて幸せにする願いを叶えるためのものでしかないの。
皆のくれた感情の力が、皆を幸せにする力になるんだよ」
「うん、μの力も使命もとても私はすごいと思った。
だから私は一緒に進んでいきたいと思ったんだけど……」
ランサーが言葉を遮る。
「だが、侵食された人々は無意識にお前たちのために戦おうとするんだろ?
無意識なうちに一般人に危険な戦いをさせるわけだ。
戦う覚悟もさせずに巻き込んで、それでいいとお前は思ってるのかよ?」
「……そう、そうだよね……おかしいような気はずっとしてるんだ。
でも、私だってデジヘッドになった人たちが死んでもいいとか思ってない。
だから学校でだけ音楽を流してるの。
学校に通うようなマスターは、一般NPCが変質したデジヘッドを無暗に殺したりなんてしない。
そう思ったから……」
無意識なうちに一般人に危険な戦いをさせるわけだ。
戦う覚悟もさせずに巻き込んで、それでいいとお前は思ってるのかよ?」
「……そう、そうだよね……おかしいような気はずっとしてるんだ。
でも、私だってデジヘッドになった人たちが死んでもいいとか思ってない。
だから学校でだけ音楽を流してるの。
学校に通うようなマスターは、一般NPCが変質したデジヘッドを無暗に殺したりなんてしない。
そう思ったから……」
フォローに入るのはランサーのマスター、朝倉の方だった。
「ランサー、彼女はもともとそういう性能のもと生まれてるの。
正攻法の戦いなんて出来ない存在なのよ。
貴方がどうこう言ってもどうにもなりはしないわ」
「そうだよな。でも気に入らねえんだよ。
聖杯戦争って中で戦い抜くことを決めたくせに、アカネ、お前には覚悟がねえだろ。
妥協と惰性で進んでるだけだろ。
そしてサーヴァントの方もそれを尊重とか言ってるせいで、何の進歩も今までない」
正攻法の戦いなんて出来ない存在なのよ。
貴方がどうこう言ってもどうにもなりはしないわ」
「そうだよな。でも気に入らねえんだよ。
聖杯戦争って中で戦い抜くことを決めたくせに、アカネ、お前には覚悟がねえだろ。
妥協と惰性で進んでるだけだろ。
そしてサーヴァントの方もそれを尊重とか言ってるせいで、何の進歩も今までない」
何も言い返せず俯き続けるアカネ。μはアカネとランサーの方っを交互に見る。
「例えば一般人に犠牲を出したくないなら、お前自身がもっと動けばいいじゃねえか。
うちのマスターはあんなに自分から前に出てるんだぜ。
お前もデジヘッドとかいうのになってるんだら、ある程度の戦う力も持ってるはずだ。
何でそれを活かそうとしねえんだよ!?」
「……わかってるよ。でも、でも……」
「へっ、そのうち少し稽古でも付けてやろうか?根性叩き直そうぜ。
こっちとしても気分転換にはちょうどいい。かなり厳しいだろうがな」
「だめ!アカネを酷い目に合わせないで!」
「ランサー、彼女の言ってることは綺麗言だけど、貴方の言ってることも綺麗言じゃない?
本来平和な世界に生きていた少女なのに、戦う覚悟を決めるなんて簡単じゃないわ」
うちのマスターはあんなに自分から前に出てるんだぜ。
お前もデジヘッドとかいうのになってるんだら、ある程度の戦う力も持ってるはずだ。
何でそれを活かそうとしねえんだよ!?」
「……わかってるよ。でも、でも……」
「へっ、そのうち少し稽古でも付けてやろうか?根性叩き直そうぜ。
こっちとしても気分転換にはちょうどいい。かなり厳しいだろうがな」
「だめ!アカネを酷い目に合わせないで!」
「ランサー、彼女の言ってることは綺麗言だけど、貴方の言ってることも綺麗言じゃない?
本来平和な世界に生きていた少女なのに、戦う覚悟を決めるなんて簡単じゃないわ」
何も言えないアカネ。
そこで朝倉が前に出て話し、ランサーはやり場のない表情で嘆息し頭を掻き始める。
そこで朝倉が前に出て話し、ランサーはやり場のない表情で嘆息し頭を掻き始める。
「他にも対策はあるんじゃない?
必要以上にデジヘッドが戦闘を自分から起こさないようにするとかね」
「それができれば、私もそうしたいけど……そんな方法ある?」
「音楽の一部に人は襲わないようなメッセージを流すのはどう?
歌詞じゃなくてもいいのよ。サブリミナル効果って知ってる?
小さな音とか、断片的に区切った音でもデジヘッドになるような人たちは認識するんじゃない?」
「あ……知ってるけど。μ、そういうことってできる?」
「うーん、やってみたことはないし効果もはっきりしないけど、そういう音源はすぐに作れると思うよ」
「じゃあ、またそのうち作ってみて。お願い」
必要以上にデジヘッドが戦闘を自分から起こさないようにするとかね」
「それができれば、私もそうしたいけど……そんな方法ある?」
「音楽の一部に人は襲わないようなメッセージを流すのはどう?
歌詞じゃなくてもいいのよ。サブリミナル効果って知ってる?
小さな音とか、断片的に区切った音でもデジヘッドになるような人たちは認識するんじゃない?」
「あ……知ってるけど。μ、そういうことってできる?」
「うーん、やってみたことはないし効果もはっきりしないけど、そういう音源はすぐに作れると思うよ」
「じゃあ、またそのうち作ってみて。お願い」
意外と朝倉は優しいのかもと思い始めてきたアカネ。
しかし先ほどの底知れなさが恐怖としてこびりつき、そのような思考を振り払う。
しかし先ほどの底知れなさが恐怖としてこびりつき、そのような思考を振り払う。
「ねえ、もっと大きな提案があるんだけど」
更に底知れないことをしてくるんじゃないのかと予感が走り――
「私を楽士としてスカウトしてみない?」
その場にいる全員が強く朝倉を見やった。
誰も言葉を発さないので朝倉が続ける。
誰も言葉を発さないので朝倉が続ける。
「貴方達も今の状況をどうにかしたいと思ってるんでしょ?
楽士になりたいと思う人なんてそうそういないでしょう?まさに最善の一手といえるんじゃない?」
「おいおい、相手の戦術に完全に乗っかるってことだろう?
そこまでやって大丈夫なのか?」
楽士になりたいと思う人なんてそうそういないでしょう?まさに最善の一手といえるんじゃない?」
「おいおい、相手の戦術に完全に乗っかるってことだろう?
そこまでやって大丈夫なのか?」
ランサーは率直に懸念点を呟く。
アカネとμは願ってもない提案ではあるのだが、さすがに予想もしていなかった言葉に反応できない。
アカネとμは願ってもない提案ではあるのだが、さすがに予想もしていなかった言葉に反応できない。
「単純に考えて楽士になるっていうのは、双方にとって非常に大きなメリットがあるんじゃない?
μは私の曲からも感情の力を集めてより強くなる。
私もμから感情の力の一部をもらったり、ちょっとした願いをかなえてもらって聖杯戦争を少し有利に進められる。
他にもデジヘッドが私の見える範囲で迷惑なことしてたら、私がそれを止めることができたりするしね」
μは私の曲からも感情の力を集めてより強くなる。
私もμから感情の力の一部をもらったり、ちょっとした願いをかなえてもらって聖杯戦争を少し有利に進められる。
他にもデジヘッドが私の見える範囲で迷惑なことしてたら、私がそれを止めることができたりするしね」
ランサーの方を向く朝倉。
「それに別に心を完全に支配されたりするわけじゃないしね。
楽士は自覚のあるデジヘッドということだから、精神面ではμへの依存ができても独立は保たれる。
強く当人の心を保つことが出来れば問題ないでしょ?」
「そうだな……お前のあの胆力なら何とかやるだろうな。そう言うなら俺は反対しないぜ」
「さて……貴方達は受け入れる?」
「ちょ、ちょっと待って」
楽士は自覚のあるデジヘッドということだから、精神面ではμへの依存ができても独立は保たれる。
強く当人の心を保つことが出来れば問題ないでしょ?」
「そうだな……お前のあの胆力なら何とかやるだろうな。そう言うなら俺は反対しないぜ」
「さて……貴方達は受け入れる?」
「ちょ、ちょっと待って」
深く思案していくアカネ。
しかし何より自分で何かしなくても事態が好転するという状況は、アカネにとって願ってもない物だった。
どれだけ悩み考える過程を経ても、提案を受け入れる選択以外はなかった。
しかし何より自分で何かしなくても事態が好転するという状況は、アカネにとって願ってもない物だった。
どれだけ悩み考える過程を経ても、提案を受け入れる選択以外はなかった。
「μ、私は受けるしかないと思うんだけど、どう思う?」
「私も色んな曲でファンを増やせると嬉しいし、将来役に立つと思う!
アカネもいいと思うなら、楽士になってもらおうよ!」
「私も色んな曲でファンを増やせると嬉しいし、将来役に立つと思う!
アカネもいいと思うなら、楽士になってもらおうよ!」
話はどんどん進んでいく。
「そうと決まれば早いわ。宜しくね、μさん」
「うん、じゃあ早速、曲を作ってみる?」
「何々? μさんの力ならそういうこともできるのかしら?」
「作曲も作詞もできなくても大丈夫だよ。時間もそんなにかからないよ。
私が少し力を貸せば、作曲する力をあなたに与えられる。
私があなたの心を読み取れば、それを曲に合った歌詞にするよ」
「なるほどね。世界を改変する力の一部かしら?
ぜひ頼むわ、μさん」
「うん。えいっ!」
「うん、じゃあ早速、曲を作ってみる?」
「何々? μさんの力ならそういうこともできるのかしら?」
「作曲も作詞もできなくても大丈夫だよ。時間もそんなにかからないよ。
私が少し力を貸せば、作曲する力をあなたに与えられる。
私があなたの心を読み取れば、それを曲に合った歌詞にするよ」
「なるほどね。世界を改変する力の一部かしら?
ぜひ頼むわ、μさん」
「うん。えいっ!」
μが頭に触れた。
情報操作で介入する側だった朝倉が、今回は逆に介入されている。
音楽を作成するという機能が、インストールされていく。
ちょっと面白い感覚かもしれない。
情報操作で介入する側だった朝倉が、今回は逆に介入されている。
音楽を作成するという機能が、インストールされていく。
ちょっと面白い感覚かもしれない。
「終わったよ。さあ、思いのまま、感覚で曲を打ち込んでみて!」
思いのまま感覚で音楽を作れと言われても、そんなもの持ち合わせてない。
どうしようかと思う朝倉。
どうしようかと思う朝倉。
「えーと、ちょっと資料が欲しいの。
実はそこまで音楽、詳しくないのよ。
盗作とかはもちろんしないから」
「うん、あなたの納得のいく音楽を作って!」
実はそこまで音楽、詳しくないのよ。
盗作とかはもちろんしないから」
「うん、あなたの納得のいく音楽を作って!」
◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇
さて……。
μは人々に愛されるアプリケーションだけど、キャラとしてのデザインも持っている。
それは人間で言うと、物語性のある歌姫のアイドルかな。
そんな人達が歌う曲って、どんな雰囲気?
μは人々に愛されるアプリケーションだけど、キャラとしてのデザインも持っている。
それは人間で言うと、物語性のある歌姫のアイドルかな。
そんな人達が歌う曲って、どんな雰囲気?
私は端末を使って情報の海に潜る。
表面的に画面にウェブページを出すだけでは、私の処理速度には遅すぎる。
私は直に端末に電気信号を流し、また返ってくる情報を読み取る。
インターネットブラウジングの並列展開だ。
表面的に画面にウェブページを出すだけでは、私の処理速度には遅すぎる。
私は直に端末に電気信号を流し、また返ってくる情報を読み取る。
インターネットブラウジングの並列展開だ。
なんとなく目についたものがある。
私やアカネのいた世界においての、日本の女性ソロアイドルの全盛期1980年代の情報。
そのころのアイドルたちの歌謡を、私は並列に聴き始める。
私やアカネのいた世界においての、日本の女性ソロアイドルの全盛期1980年代の情報。
そのころのアイドルたちの歌謡を、私は並列に聴き始める。
こういうような曲調で作ったら、きっと人々を魅了するアイドルらしさは出そうな気がする。
μの歌う歌としてはふさわしいのかな? そんなこと私にわかる訳はない。
でもまあ、今まで私が聞いたμの歌には無いジャンルなのは確か。面白そう。
μの歌う歌としてはふさわしいのかな? そんなこと私にわかる訳はない。
でもまあ、今まで私が聞いたμの歌には無いジャンルなのは確か。面白そう。
さて、たくさん聞いた音楽のデータを基に、曲調や雰囲気をパラメータ化して目指したいベクトルを明確にして、
それをさっきインストールされた音楽作成機能に流し込み……。
それをさっきインストールされた音楽作成機能に流し込み……。
「わあ、今まで歌ったことのない雰囲気の曲だよ!」
「何だが昔っぽい曲じゃない?
私の親世代かその少し上くらいがテレビでそういう曲が流れると喜んでる気がする。
そんなのウケるのかなあ?」
「俺は詳しくねえが、でもこの短時間で十分聴けるレベルの曲が出来上がるのはすこいじゃねえか」
「この世界は極端に様々な価値観の集合体よ、音楽にも大きな多様性があってもいいんじゃないの?」
「きっとそうだよ! 新たなファンを開拓できそう!
じゃあ、次は歌詞も行ってみよう!ちょっと心を読ませてもらうね!私に向かって想いを伝えて!」
「何だが昔っぽい曲じゃない?
私の親世代かその少し上くらいがテレビでそういう曲が流れると喜んでる気がする。
そんなのウケるのかなあ?」
「俺は詳しくねえが、でもこの短時間で十分聴けるレベルの曲が出来上がるのはすこいじゃねえか」
「この世界は極端に様々な価値観の集合体よ、音楽にも大きな多様性があってもいいんじゃないの?」
「きっとそうだよ! 新たなファンを開拓できそう!
じゃあ、次は歌詞も行ってみよう!ちょっと心を読ませてもらうね!私に向かって想いを伝えて!」
さて、情報統合思念体の端末という面を読まれて、
それを率直に歌詞を書かれたりしたらちょっと本性に迫り過ぎて不味いかも。
全力で女子高生のインターフェースとして女子高生らしさを展開、それを思いの形にしてμへ伝えていく。
それを率直に歌詞を書かれたりしたらちょっと本性に迫り過ぎて不味いかも。
全力で女子高生のインターフェースとして女子高生らしさを展開、それを思いの形にしてμへ伝えていく。
「あれ? 歌詞、できそうだけど……あまり強い欲望じゃないよね? どうしたの?」
「ごめんなさいね、感情や欲望をしっかり思って形にするのって、難しいのかも」
「私もとてもささやかに曖昧にしか、欲望に共感した人を幸せにできないかも。
そしてこの曲に影響された人たちの想いは、今までの楽士の曲と違って強いデジヘッドになりにくいかも……」
「そうね……でもとりあえずはそれでお願い。布石みたいなものになっちゃうけど。
本当に私の本心を奏でる曲、いずれちゃんと作りたいと思ってるの。
もっと欲望も強く反映したような曲をね。
それができたとき同じ作曲者という点で、興味を持ってもらえる人が増えるんじゃない?」
「そうだね! アカネも自分の曲なかなか作れないし、ここで1つ作れただけでもすごいよ!」
「ごめんなさいね、感情や欲望をしっかり思って形にするのって、難しいのかも」
「私もとてもささやかに曖昧にしか、欲望に共感した人を幸せにできないかも。
そしてこの曲に影響された人たちの想いは、今までの楽士の曲と違って強いデジヘッドになりにくいかも……」
「そうね……でもとりあえずはそれでお願い。布石みたいなものになっちゃうけど。
本当に私の本心を奏でる曲、いずれちゃんと作りたいと思ってるの。
もっと欲望も強く反映したような曲をね。
それができたとき同じ作曲者という点で、興味を持ってもらえる人が増えるんじゃない?」
「そうだね! アカネも自分の曲なかなか作れないし、ここで1つ作れただけでもすごいよ!」
うん、端末としての本性を隠しながらも欲望っぽいものを上手く表現した楽曲、また考えなきゃ。
アカネの表情が少し歪むのが見える。
このサーヴァント、AIだからか人の感情察するのちょっと苦手なのね。
私もパターンから外れたものを察するのは苦手だったりするけど。
アカネの表情が少し歪むのが見える。
このサーヴァント、AIだからか人の感情察するのちょっと苦手なのね。
私もパターンから外れたものを察するのは苦手だったりするけど。
「あとは……涼子にも楽士としての名前が必要だよね!」
「ああ、そうね。でもちょっとすぐには思いつかないのだけれど?」
「元の世界での楽士の皆は、本名をもじったり体、性格や趣味趣向とかの自分の特徴から連想して付けたりしてたよ」
「ああ、そうね。でもちょっとすぐには思いつかないのだけれど?」
「元の世界での楽士の皆は、本名をもじったり体、性格や趣味趣向とかの自分の特徴から連想して付けたりしてたよ」
本名をもじるのは……正体が連想されては困るからやめたほうがいい。体の特徴も同様か。それなら。
「イン・ザ・ダークなんてどう? 朝の陽ざしにも陰がある。
委員長として明るい所で活動する私が、聖杯戦争というこの世界の陰にも関わってる。
そういう相反する要素が合わさるのって、面白いんじゃない?」
「なるほど、なかなか洒落が聞いた名前を考えたな!」
「面白いよ! それにシャドウナイフみたいでかっこいいよ!」
「あ、うん、ちょっとカッコつけてる感じだけど……
まあアーティストの名前っていろんな人に覚えてもらえた方がいいし、いいんじゃないかな?」
「……やった! みんな決まったね!
じゃあ、イン・ザ・ダークで『小指でぎゅっ!』明日から流し始めるよ!」
委員長として明るい所で活動する私が、聖杯戦争というこの世界の陰にも関わってる。
そういう相反する要素が合わさるのって、面白いんじゃない?」
「なるほど、なかなか洒落が聞いた名前を考えたな!」
「面白いよ! それにシャドウナイフみたいでかっこいいよ!」
「あ、うん、ちょっとカッコつけてる感じだけど……
まあアーティストの名前っていろんな人に覚えてもらえた方がいいし、いいんじゃないかな?」
「……やった! みんな決まったね!
じゃあ、イン・ザ・ダークで『小指でぎゅっ!』明日から流し始めるよ!」
……色々やってたら、外はもう完全に暗い。
私たちのロールは学生なんだし、一応そろそろ帰ることにするかな。
私たちのロールは学生なんだし、一応そろそろ帰ることにするかな。
「じゃあ、いつでも連絡を取れるように端末の機能で同盟も結んでおきましょう」
「ああ、うん。一応これからは完全に仲間ってことになるんだね……」
「ああ、うん。一応これからは完全に仲間ってことになるんだね……」
端末を起動してみた。
二人とも一通りの機能は確認していたみたいで、スムーズに登録は進む。
二人とも一通りの機能は確認していたみたいで、スムーズに登録は進む。
「何時まで同盟は組めるのかしら?
実は、私は聖杯そのものの機能に興味があるの。
誰かが聖杯を使ったところを観察する。それでも私の目的は一応達成されるわ。
こっちのランサーの願いは死力を尽くして戦うことで、聖杯に懸ける願いはないの」
実は、私は聖杯そのものの機能に興味があるの。
誰かが聖杯を使ったところを観察する。それでも私の目的は一応達成されるわ。
こっちのランサーの願いは死力を尽くして戦うことで、聖杯に懸ける願いはないの」
ちょっと念話で念押し。そしてランサーは頷くだけ。
「あ、譲ってくれたりするの……?
私の元の世界、今ちょっと大変なことになっちゃってて。
聖杯の力を使えば、みんなが救われて幸せになれる世界へ導けるんじゃないかって思うんだよね」
「うん、アカネも私もどうしても聖杯が必要なの!」
「ええ。もしも貴方じゃなくて私が最後に残ったら、貴方の願いを叶えてもいいかもね」
私の元の世界、今ちょっと大変なことになっちゃってて。
聖杯の力を使えば、みんなが救われて幸せになれる世界へ導けるんじゃないかって思うんだよね」
「うん、アカネも私もどうしても聖杯が必要なの!」
「ええ。もしも貴方じゃなくて私が最後に残ったら、貴方の願いを叶えてもいいかもね」
聖杯の情報だけでも持ち帰れればいい。それは確かに本当だった。
ただそれは、どうしても手に入れるのが不可能だと判断した時の最後の選択肢。
自身が聖杯を手にするため最大限の努力を払い、やれることはすべてやるつもりだ。
そして万に一つもない可能性だけど、
情報統合思念体は聖杯を使うサンプルとして彼女の願いが適すると判断することは無いとは言い切れない。
だから嘘は言っていない。
ただそれは、どうしても手に入れるのが不可能だと判断した時の最後の選択肢。
自身が聖杯を手にするため最大限の努力を払い、やれることはすべてやるつもりだ。
そして万に一つもない可能性だけど、
情報統合思念体は聖杯を使うサンプルとして彼女の願いが適すると判断することは無いとは言い切れない。
だから嘘は言っていない。
そう、最後の本性はお互い伝え合わなかった。
「じゃあ基本的には最後まで組み続けるってことでいいわね?
他の陣営と会った時とか、色々なことどんどん相談してよね」
「あ……本当にいいの?
ごめん、なんか私の方ばかり得しちゃうみたいで」
「いいのよ、私だって慈善でやってるわけじゃないんだから。
貴方は貴方に出来ることをちゃんとやりなさい。
じゃあ、今後の連絡はまた端末でお願いね」
他の陣営と会った時とか、色々なことどんどん相談してよね」
「あ……本当にいいの?
ごめん、なんか私の方ばかり得しちゃうみたいで」
「いいのよ、私だって慈善でやってるわけじゃないんだから。
貴方は貴方に出来ることをちゃんとやりなさい。
じゃあ、今後の連絡はまた端末でお願いね」
◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇
帰り道。ランサーは現代の服を着て過ごし、霊体化はしていない。
この方が朝倉が夜間人に絡まれる可能性が、霊体化して一人に見せる際より有意に低い。
この方が朝倉が夜間人に絡まれる可能性が、霊体化して一人に見せる際より有意に低い。
「珍しい貴方が見れたわね。
いつもは女の子をナンパしようとしたり、無理していい顔見せようとしてる貴方があんなに真剣に話すなんて」
「何も分からずに覚悟を持たないまま死ぬのは不憫だろう、そう思っただけだ。
ずっと覚悟を決めなかったら、聖杯戦争から降ろさせてやろうかとも思ってるんだがな?」
「彼女たちの能力は侮れないわ。何かの弾みで一気に手が付けられないくらい強くなる可能性もありそうだし。
覚悟なんてなくても優勝しちゃうくらいね」
いつもは女の子をナンパしようとしたり、無理していい顔見せようとしてる貴方があんなに真剣に話すなんて」
「何も分からずに覚悟を持たないまま死ぬのは不憫だろう、そう思っただけだ。
ずっと覚悟を決めなかったら、聖杯戦争から降ろさせてやろうかとも思ってるんだがな?」
「彼女たちの能力は侮れないわ。何かの弾みで一気に手が付けられないくらい強くなる可能性もありそうだし。
覚悟なんてなくても優勝しちゃうくらいね」
ランサーはまだもやもやが取れないが、別の話題に変えることで忘れることにする。
「それならマスターの方も、さっきのは何だったんだ?
とにかく戦って聖杯を得ることが使命で、それしかないんだとお前のことを思っていたが」
「いえ、私の行動方針は一貫してる。
私の上にいる者は、聖杯の機能を解析した結果を欲していると前に言ったでしょ?
何故それが欲しいのかは、説明してなかったよね?
いい機会だしちょっと難しいけど、説明しておくわ」
とにかく戦って聖杯を得ることが使命で、それしかないんだとお前のことを思っていたが」
「いえ、私の行動方針は一貫してる。
私の上にいる者は、聖杯の機能を解析した結果を欲していると前に言ったでしょ?
何故それが欲しいのかは、説明してなかったよね?
いい機会だしちょっと難しいけど、説明しておくわ」
いい感じの男女の歩く図だが、話す内容は全くそれらしくなくて。
「私の上にいる者……情報統合思念体は、聖杯の無から情報を生み出す能力、すなわち自律進化に期待しているの。
だから私は元の世界でも、自律進化を起こす能力を持った人間の監視を任務としていたわ。
聖杯とその人間の能力の共通点は……願った者の望みに従い世界を改変する願望器でもあること。
そしてこの聖杯戦争は、願望器を有した存在を多く内包しているわ。
それは一部の上級NPCだけなのだと思ってたけど、あのサーヴァント、μも願望器としての一面を持ってるのよ。
同じく自律進化の可能性があるんじゃないかと、私は連想して期待しているの」
だから私は元の世界でも、自律進化を起こす能力を持った人間の監視を任務としていたわ。
聖杯とその人間の能力の共通点は……願った者の望みに従い世界を改変する願望器でもあること。
そしてこの聖杯戦争は、願望器を有した存在を多く内包しているわ。
それは一部の上級NPCだけなのだと思ってたけど、あのサーヴァント、μも願望器としての一面を持ってるのよ。
同じく自律進化の可能性があるんじゃないかと、私は連想して期待しているの」
ランサーは詳しい説明を省いたので理解してくれた。
「ああ? あいつを利用するってだけじゃなかったのか。
だが聖杯を手に入れることが一番の任務なんじゃなかったのか?」
「そうね、だからこれは現場判断でもあり、私自身の欲望でもあるのかな?」
彼女の能力はまだ万全じゃない。
だからより強力な状態に能力を高めさせて、何が起きるのか観察してみたいの
貴方としても、未完成な状態より万全な状態の彼女たちと戦えた方が嬉しいんじゃないの?
もし彼女と私たちが最後の陣営になったとしても、最後の1騎を決めるために戦う機会が来るはずよ」
だが聖杯を手に入れることが一番の任務なんじゃなかったのか?」
「そうね、だからこれは現場判断でもあり、私自身の欲望でもあるのかな?」
彼女の能力はまだ万全じゃない。
だからより強力な状態に能力を高めさせて、何が起きるのか観察してみたいの
貴方としても、未完成な状態より万全な状態の彼女たちと戦えた方が嬉しいんじゃないの?
もし彼女と私たちが最後の陣営になったとしても、最後の1騎を決めるために戦う機会が来るはずよ」
しかしランサーは喜びはせず、気遣うように話す。
「確かに戦士の望みとして死力を尽くし戦えるのは喜ばしいことだぜ。
だがやっぱり、俺の望みではなくお前を気遣ってのことだが、
聖杯を確実に手に入れる目的のためならとっとと排除した方がいいんじゃねえか?」
「いえ、私は過程も結果もどっちも欲しいと思ったの。
情報統合思念体からの任務は、聖杯の機能を解析するのが優先なんだけどね。
興味深い結果が予想されるなら、現場の独断で少し寄り道したっていいじゃない?
それにもともと私の生還確率は、そう高くないと見積もられてるのよ。
変わった行動をしてみた方がその確率は変動するかも。高い方向に動けば御の字よね」
「なるほど。それはそれで一本筋通ってるんだな。
俺が見込んだマスターとして変わりはないようで良かった」
だがやっぱり、俺の望みではなくお前を気遣ってのことだが、
聖杯を確実に手に入れる目的のためならとっとと排除した方がいいんじゃねえか?」
「いえ、私は過程も結果もどっちも欲しいと思ったの。
情報統合思念体からの任務は、聖杯の機能を解析するのが優先なんだけどね。
興味深い結果が予想されるなら、現場の独断で少し寄り道したっていいじゃない?
それにもともと私の生還確率は、そう高くないと見積もられてるのよ。
変わった行動をしてみた方がその確率は変動するかも。高い方向に動けば御の字よね」
「なるほど。それはそれで一本筋通ってるんだな。
俺が見込んだマスターとして変わりはないようで良かった」
何故か朝倉の表情が少しおかし気になっていく。
「変わった行動、そう、いろいろ面白いこと考えてるのよ。
例えば楽士になった私はμからその力の一端を受け取れるわ。
それをよく解析すれば、人々の欲望を私がμを通さず直接力に変えることもできるかも。
あとはデジヘッドへの侵食率を下げるナノマシンを、逆方向に作用させて強力なデジヘッド増やしたりね」
「……なかなかえぐいことも考えるんだな」
「ええ。貴方は死力を尽くせる良い戦いがしたいなら、私は貴方が出来ないようなこと色々しなきゃ」
例えば楽士になった私はμからその力の一端を受け取れるわ。
それをよく解析すれば、人々の欲望を私がμを通さず直接力に変えることもできるかも。
あとはデジヘッドへの侵食率を下げるナノマシンを、逆方向に作用させて強力なデジヘッド増やしたりね」
「……なかなかえぐいことも考えるんだな」
「ええ。貴方は死力を尽くせる良い戦いがしたいなら、私は貴方が出来ないようなこと色々しなきゃ」
ランサーはやはり朝倉を気遣い続ける。
「いい女のあんたがそこまでしなくたって、俺だって言われればいくらでも汚れ仕事くらいしてやるのに」
「へえ、でもやっぱり好きじゃないんでしょ?」
「マスターの頼みとあれば……度が過ぎなければいくらでもやってやるさ」
「へえ、でもやっぱり好きじゃないんでしょ?」
「マスターの頼みとあれば……度が過ぎなければいくらでもやってやるさ」
朝倉はここでランサーの顔を見つめる。
「ねえ、本当のことを言って? ちゃんと貴方の気持ちを教えて」
ランサーはしばらく見つめ合ってから視線をずらす。
「ああ、ああ、そんなことできれば一つもやりたくないね。
でもそううまくはいかないんだろう? 割り切るってなるとまだまだ俺はかなりもやっとする。
……ちぇっ、女の前でカッコつけさせてくれよ」
「ごめんなさいね、人の気持ちってよくわからないのよ、
特に貴方みたいな現代的な高校生から大きくずれた人のことはね。
一蓮托生の相棒なんだから、ちゃんと本音を話し合いましょう」
「はいはい、そうですねえ」
でもそううまくはいかないんだろう? 割り切るってなるとまだまだ俺はかなりもやっとする。
……ちぇっ、女の前でカッコつけさせてくれよ」
「ごめんなさいね、人の気持ちってよくわからないのよ、
特に貴方みたいな現代的な高校生から大きくずれた人のことはね。
一蓮托生の相棒なんだから、ちゃんと本音を話し合いましょう」
「はいはい、そうですねえ」
ランサーは朝倉が解りやすいんだか読めない奴なのかよく解らないと嘆息する。
彼女のことをどう思ってるのか、よく解らなくなってきた。
目的のため俺をできるだけ関わらせず汚れ仕事をしようとする彼女を尊敬したいのか、
あえて汚いことをする彼女を蔑みたいのか?
彼女のことをどう思ってるのか、よく解らなくなってきた。
目的のため俺をできるだけ関わらせず汚れ仕事をしようとする彼女を尊敬したいのか、
あえて汚いことをする彼女を蔑みたいのか?
◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇
朝倉涼子。彼女はとても恵まれていて、そしてそれに相応しい良き人格の持ち主。
作った曲を聴いて、まさに名前の通りにか朝の涼しくさわやかな明るさに包まれるみたいだと思った。
彼女のロールが月海原でなくアカデミー学生なのも、そういう面が考慮されたのかもしれない。
作った曲を聴いて、まさに名前の通りにか朝の涼しくさわやかな明るさに包まれるみたいだと思った。
彼女のロールが月海原でなくアカデミー学生なのも、そういう面が考慮されたのかもしれない。
そしてそういう彼女を、思い出せば出すたびあまり好きになれない種類の人間だと思ってしまう。
そう、コンピューターワールドのツツジ台で、
自身が望み作り上げたクラスの人気者という理想像をごく自然に体現してしまっている人物だから。
優等生的な気質の彼女は……きっと私がツツジ台でしてきたことを知ったら私のことを強く蔑むのかな。
私に湧いてくるよくわからない、暗くて辛い気持ち。
憧れか、羨みか、妬みか……不安か、恐れか、どれも持ってるけど根本はもっと違う気がする。
でも聖杯を手にするためには、こういう人物とも協力しなければならないと理性は言っている。
その点では悪くない相手だとも、思えている。
でも近くにいると心が辛いのは、どうしようもなくて。
そう、コンピューターワールドのツツジ台で、
自身が望み作り上げたクラスの人気者という理想像をごく自然に体現してしまっている人物だから。
優等生的な気質の彼女は……きっと私がツツジ台でしてきたことを知ったら私のことを強く蔑むのかな。
私に湧いてくるよくわからない、暗くて辛い気持ち。
憧れか、羨みか、妬みか……不安か、恐れか、どれも持ってるけど根本はもっと違う気がする。
でも聖杯を手にするためには、こういう人物とも協力しなければならないと理性は言っている。
その点では悪くない相手だとも、思えている。
でも近くにいると心が辛いのは、どうしようもなくて。
苦しいよ……辛いよ……。早く聖杯を手にして救われたいよ……。
◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇
この世界で初めての楽士の勧誘が偶然できちゃった。
よかったぁ……なんて、アカネのあんなつらそうなところを見た後じゃとても思えないよ。
よかったぁ……なんて、アカネのあんなつらそうなところを見た後じゃとても思えないよ。
私はアカネに聖杯を手に入れる道筋でも、できるだけ苦しんでほしくないのに。
喜びと幸せに彩られた道を歩んでほしいのに。
それでもアカネは、現状のまま歩んでいくことを望んでる。
喜びと幸せに彩られた道を歩んでほしいのに。
それでもアカネは、現状のまま歩んでいくことを望んでる。
どうしたらいいんだろう。どうすればいいんだろう。
アカネを幸せにするために何かを変えなきゃ。何か……。
アカネを幸せにするために何かを変えなきゃ。何か……。
◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇
観測するだけでは物足りない。行動を起こし反応を見ていかなければ。
それが情報統合思念体の端末、朝倉の考え。
それが情報統合思念体の端末、朝倉の考え。
同様の端末でも、派閥によっては違う行動指針を取り得ただろう。
そもそも情報統合思念体は有機生命体と世界の捉え方が異なりすぎ、聖杯を解析できても正しく使える方法を算出できるかは不明だ。
誰かに聖杯を使用させてその際の情報爆発を観察するのが、情報統合思念体としては順当な気もする。
主流派ならば主催の思惑に合致した願いを叶えるに値しそうな人物の近くに寄り添い、時には協力して観察しようとするのだろうか。
穏健派ならば主催者に近い位置に潜みこの世界を観察し、マスター権限も拘らず必要とあれば過度の干渉を防ぐためすぐ手放すのだろうか。
そもそも情報統合思念体は有機生命体と世界の捉え方が異なりすぎ、聖杯を解析できても正しく使える方法を算出できるかは不明だ。
誰かに聖杯を使用させてその際の情報爆発を観察するのが、情報統合思念体としては順当な気もする。
主流派ならば主催の思惑に合致した願いを叶えるに値しそうな人物の近くに寄り添い、時には協力して観察しようとするのだろうか。
穏健派ならば主催者に近い位置に潜みこの世界を観察し、マスター権限も拘らず必要とあれば過度の干渉を防ぐためすぐ手放すのだろうか。
しかし朝倉は急進派に属する端末であるからして、最も聖杯から情報を得られるであろう聖杯の獲得を第一に考える。それでいい。
しかし、何故涼宮ハルヒのいた世界では端末の中では権力が無かった方の朝倉が、この世界でマスターとして召喚されたのか。
聖杯を手に入れたい意思が強いほど、聖杯戦争の参加者として的確なのだと判断されたのだろうか。
しかし、何故涼宮ハルヒのいた世界では端末の中では権力が無かった方の朝倉が、この世界でマスターとして召喚されたのか。
聖杯を手に入れたい意思が強いほど、聖杯戦争の参加者として的確なのだと判断されたのだろうか。
さて、朝倉は月海原のPCで漁った学生名簿にて、ある発見をした。
『涼宮ハルヒ』の名がその中に載っていた。
彼女はゼルダのような上級NPCなのか?
あるいは自身が力を自覚していないことによって、ただのNPCとして存在いるのか?
探索するのは非効率、聖杯戦争の上で協力的な態度を得るのも大変そうだと判断し、
彼女はそれに関することを一時的に思考の脇に追いやることにした。
今はとりあえずμに関して調査を進めていきたい。それが彼女の思考となっている。
『涼宮ハルヒ』の名がその中に載っていた。
彼女はゼルダのような上級NPCなのか?
あるいは自身が力を自覚していないことによって、ただのNPCとして存在いるのか?
探索するのは非効率、聖杯戦争の上で協力的な態度を得るのも大変そうだと判断し、
彼女はそれに関することを一時的に思考の脇に追いやることにした。
今はとりあえずμに関して調査を進めていきたい。それが彼女の思考となっている。
◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇
…………
◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇
……さて、聖杯戦争初日ね。
2曲目がもうすぐ完成しそうなの。μに伝えるのが楽しみ。
タイトルはもう決まり。
2曲目がもうすぐ完成しそうなの。μに伝えるのが楽しみ。
タイトルはもう決まり。
『COOL EDITION』
【朝倉涼子@涼宮ハルヒの憂鬱】
[状態]健康、楽士化
[令呪]残り3画
[装備]サバイバルナイフ
[道具]なし
[所持金]995万QP
[思考・状況]
基本行動方針:聖杯を入手する。過程で願望器機能を持ったNPCや主従を詳しく観測してみたい。
1.μに新曲を渡す。
2.楽士としての力を試して戦ってみたいところ。
[備考]
[状態]健康、楽士化
[令呪]残り3画
[装備]サバイバルナイフ
[道具]なし
[所持金]995万QP
[思考・状況]
基本行動方針:聖杯を入手する。過程で願望器機能を持ったNPCや主従を詳しく観測してみたい。
1.μに新曲を渡す。
2.楽士としての力を試して戦ってみたいところ。
[備考]
【ランサー(クー・フーリン〔プロトタイプ〕)@Fate/Prototype】
[状態]健康
[装備]穿ちの朱槍
[道具]なし
[所持金]なし
[思考・状況]
基本行動方針:朝倉に従う。死力を尽くして戦いたい。
1.朝倉の護衛。
2.アカネの奴どうしてるかな。
[備考]
[状態]健康
[装備]穿ちの朱槍
[道具]なし
[所持金]なし
[思考・状況]
基本行動方針:朝倉に従う。死力を尽くして戦いたい。
1.朝倉の護衛。
2.アカネの奴どうしてるかな。
[備考]
【新条アカネ@SSSS.GRIDMAN】
[状態]健康、デジヘッド化
[令呪]残り3画
[装備]なし
[道具]なし
[所持金]970万QP
[思考・状況]
基本行動方針:聖杯を入手する。自分の世界とμのために。
1.順調にデジヘッドも楽士も増えてるけど本当にこのままでいいの?
2.戦う覚悟なんてできないよ……。
3.アレクシス、助けに来てくれたらな。
[備考]
家の庭にミニチュアサイズのグールギラスが番犬のようにしている。
[状態]健康、デジヘッド化
[令呪]残り3画
[装備]なし
[道具]なし
[所持金]970万QP
[思考・状況]
基本行動方針:聖杯を入手する。自分の世界とμのために。
1.順調にデジヘッドも楽士も増えてるけど本当にこのままでいいの?
2.戦う覚悟なんてできないよ……。
3.アレクシス、助けに来てくれたらな。
[備考]
家の庭にミニチュアサイズのグールギラスが番犬のようにしている。
【キャスター(μ(ミュウ))@Caligula Overdose】
[状態]健康
[装備]なし
[道具]なし
[所持金]なし
[思考・状況]
基本行動方針:アカネのために動く。自分の願いも叶えたいけど。
1.たくさんデジヘッドを増やす。楽士もスカウトしたい。
[備考]
[状態]健康
[装備]なし
[道具]なし
[所持金]なし
[思考・状況]
基本行動方針:アカネのために動く。自分の願いも叶えたいけど。
1.たくさんデジヘッドを増やす。楽士もスカウトしたい。
[備考]