決斗・アヴェンジャー&ライダー

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決斗・アヴェンジャー&ライダー ◆Z9iNYeY9a2


アヴェンジャー・アイリスフィール・フォン・アインツベルン。

この世全ての悪に冒された聖杯が、擬似的にアイリスフィールの人格を得た姿。
擬似的とはいえ、その人格自体は確かにアイリスフィールのものと同一。

彼女が現界において聖杯から与えられた役割は、『イリヤスフィール・フォン・アインツベルンを愛し、その心を侵して取り込む者』

聖杯の泥の属性を得た彼女に取り込まれることは、即ち心の崩壊、そして死を意味する。
加えて、イリヤにとって母と同じ顔をしたものと戦うことは強い迷いを生み出す。



仮面ライダー4号。

ある世界において、乾巧が持つ仲間の死に対する強い悲しみをきっかけとして生み出された機械兵士。

彼が現界において聖杯から与えられた役割は、『乾巧に終末をもたらす者』

乾巧の悲しみを元に生まれ、力をつけた4号。
その力は未だ悲しみを乗り越えられていない乾巧にとって、越え難い壁となってその前に立ち塞がる。


会場からの脱出に向けた2人にとっての最後の壁として、ほむらから呼び出されたその2騎はそびえ立っていた。


閃光と共に、白い糸で編まれた多数の剣と鳥が飛来する。
イリヤはそれを見たことがある。自身の母が自分たちに対する折檻として糸で編んだ拳を繰り出したことがあった。
それを魔術的攻撃として転用するとああいった形となるのだろう。

宙を舞いながら砲撃を放ち、迫ったそれらを撃ち落とす。
衝突した魔力が弾け、剣や鳥は細かな糸となって散り散りになっていく。

横から迫った鳥を魔力の刃で切り裂く。
細かく千切れた糸が体にくっつく。

アイリに目を向けるイリヤ。
その顔が、ニヤリと笑っているように見えた。

手を大きく横に広げる姿が目に入る。

「っ!!」

体に付着した糸、宙を浮遊していた糸の残骸が一気につながってイリヤの体を縛り上げる。

「さあ、イリヤちゃん、抱擁してあげる。いらっしゃい」

身動きを封じられたまま糸で引き寄せられるように地面に落ちていくイリヤ。
下には蠢く漆黒の泥が、まるで口を開けた化け物のように大きく広がっていた。

落ちる軌道の先に、咄嗟に魔力障壁を幾重にも重ねて展開。落下速度が障壁が割れるまでの少しの間分だけ低下する。

「……、ルビー、全身に魔力放出を!」

その間に状況からの対応を見出したイリヤは、全身から魔力を放って、一気にその糸を引きちぎって吹き飛ばし。
泥に到達する直前でようやく体制を立て直して飛び立った。

『あの泥は…、桜さんのものと同質のものです!
 ですが属性の違いか、彼女のものと比べれば魔力を奪う性質はないですが侵食性が高いです、注意してください!』
「分かってる、あれに触ったらまずいってことくらい…」

後ろに飛びながら魔力弾を放つ。
弧を描きながらアイリに迫る6発の弾。しかしアイリスフィールの放った糸の鳥がそれらを撃ち落とす。

「イリヤちゃん、どうして私をそんなに拒絶するの?」
「当たり前でしょ、だってあなたは、私のお母さんじゃない」
「ふふ、確かにあなたの知るアイリスフィールじゃないのは確かよ。
 だけどね、私はアイリスフィール。あなたのお母さんとは違っていても、それは違わないのよ?
 聖杯としての役割をはたして、消えていったアイリスフィール・フォン・アインツベルン。
 衛宮切嗣を愛し、イリヤスフィール・フォン・アインツベルンを愛していた。何も違わないの」

一歩足を踏み出すアイリスフィール。
それに意識を取られた瞬間、彼女の姿は目の前から消えて。

「それにね、私とても嬉しいのよ」

横から、後ろからたくさんの手が、イリヤを抱きかかえるように迫ってきた。
ぞわっとする気配を感じたイリヤは、直感的に地面に大量の散弾を撃ち込む。

霧散していく魔力の中から、アイリスフィールの姿が形作られる。

「あなたが私の知るイリヤちゃんじゃなくても。
 娘がこんなに健やかに育ってくれる世界があったことが、とっても嬉しいの」
「……」

目の前にいるアイリスフィールは自分の知る母ではない。それを分かっていても。
彼女がアイリスフィールであるということは否定しきることができなかった。
どうしても母と被って見えてしまう。もしもの世界にいる母として。
一方で泥を使役してこちらの進行を妨げる彼女は紛れもない敵で。

その釣り合わないギャップが、イリヤの迷いを生んで全力で戦うことを阻んでいた。

「だからね、イリヤちゃん。
 あなたを、私に愛させて?」

泥の中から蠢きながら現れる手を前に、ルビーを握るイリヤの手から汗が滲んだ。


知識だけはうっすらとあった。
バーサーカーを通じて得たイリヤの記憶だ。

曰く、イリヤは母と共に過ごした時間がそう長くはない。
家を空けていていないという意味では自分と同じではあるが、向こうのイリヤはずっと孤独だった。

兄はいない。セラやリズは共に過ごすようになったのはかなり後だ。

ある日を境に、母・アイリスフィールは姿を消した。
アインツベルンの役割を果たすため聖杯戦争へと赴き、そのまま帰ってくることはなかった。

想像してしまう。
もし、無念の中で散った母が自分の子と再会できたなら、一体どんな反応をするのか。

目の前にいるものが、イリヤの想像そのものだった。

ステッキを握る腕が鈍る。
心に強い負担がかかる。

違うと分かっているのに。あれは母とは違う存在だと知っているはずなのに。
心がついてきてくれない。




繰り出された互いの拳が胸を打つ。

体を後ろに傾け衝撃を逃す4号。
対する巧は衝撃を殺し切れず後ろに吹き飛ばされた。

「木場勇治、園田真理、菊池啓太郎、巴マミ、衛宮士郎……。
 なるほど今のお前も随分と色々失ってきたようだな」
「だから、何だよ…っ!!」

起き上がりながらその顎に向けて拳を繰り出す巧。
しかしそれは到達する直前で掌で受け止められる。

「せっかくの機会だ、教えてやろう。
 俺はある世界で、お前が失ってきた命に対する後悔、悲しみを起点として生み出された存在」

言いながら拳を引き寄せて4号のカウンターの拳が頬を打った。
強い衝撃に仰け反り倒れる。

「ある世界ってのはそうだな、お前と木場勇治の世界、くらいの並行世界とでも思っておけばいい。
 まあそれはいい。重要なのは、今のお前は俺が生み出され強くなっていった世界と同じ悲しみを背負っているってことだ」

ファイズの首を掴み上げて体を起こし、その胴体に拳を叩きつける。

体の中に響き渡る衝撃に蹲る巧。
しかしそれでも堪え、反撃のため態勢を整えようと4号の胴体に掴みかかる。

「別に理解する必要はない。お前は俺に勝てない、それだけを理解っていればいいんだよ」

そこに膝打ちが加えられ、体が浮き上がる。

「ライダーパンチ!!」

腕で防御し直撃は避けるも、衝撃で大きく後ろに吹き飛ばされる。

「ぐあっ…!」

地面を転がるファイズ。

追撃に迫る4号に、咄嗟に拾い上げたフォトンバスターを向ける。
赤い光弾が放たれ、一直線に4号へと向かう。

横に転がることで回避する4号。
迫る勢いが一瞬途切れる。すかさず巧はフォトンブレイカーへと武器を変形。
肉薄してきた4号めがけてその刃を振り下ろす。

回避の隙を狙われたことで避けきれないと判断した4号は、その一撃を腕で受け止めた。
黄色のエネルギーの刃と4号の前腕がぶつかり火花を散らす。

「ちぃ」

傷付く腕の表面に舌打ちしつつも、斜めに腕を動かすことで刃を退け。
再度振りかぶられた刃を懐に入り込むことで回避。
そのままファイズの頬に向けて、突き上げる形で拳を放った。
強い衝撃が巧の頭を揺らし、勢いで吹き飛ばされ倒れ込む。

身動きが取れるようになるまでに手こずっている間に、横に落ちたファイズブラスターの刃を思い切り踏みつける4号。
エネルギーを形成していた棒状の基部が砕け散る。
続いてファイズブラスター本体目掛けて足を振り下ろそうとしたところで、横からの衝撃が4号の体を吹き飛ばした。
ふらつきながらも無理やり立ち上がった巧が飛びかかったのだ。

数歩後ろに下がりながらも、その力が入りきっていない体を掴み抑えながら、間近に迫ったファイズの目を注視する。

「ふん、そこまでしても立ち上がるか」

振りかぶられた拳を受け止め、関節から弾く形で腕を振りほどいて、中段蹴りをその腹に叩き込む。
うめき声を上げながら後ろに飛ばされるも、転がる道中でファイズブラスターを確保したことで破壊されることは防いだ様子だった。

「強化フォームでなければ俺には勝てない、か?
 無理だな。たとえその形態だったとしても、お前は俺には勝てない」
「うるせえ!」

その言葉に煽られていると感じたのか、激高した巧は更に胴に向けて拳を打ち付ける。
しかし、それを正面から受けた4号は微動だにしていない。

「必死なものだな。
 生きる理由を失ったお前が、そうまで死に場所を求めて戦うか」
「何…?」

巧の動きが一瞬止まる。
その隙を逃さず4号は巧の体を抑えるように締め上げる。

「だってそうだろう?
 今のお前に、元の世界に帰ったところで誰がお前を迎えてくれる?
 園田真理も、菊池啓太郎も、草加雅人も、木場勇治もいない世界でただ孤独に生きていくつもりか?」
「…!」

抗おうとする力が一瞬弱くなる。
畳み掛けるように、4号は巧に向けて囁く。

「皆死んだ。お前の仲間も、友も。帰ってどうなる?」
「黙れ…!」
「お前が守れなかった。お前が情けなかったから、逃げ続けていたから。
 だから皆死んだ。お前が殺したようなものだ。
 なあ、乾巧。俺には分からないんだが、誰もいない場所で、一人で行き続けていく気持ちは、どんなものなんだ?」
「黙れぇっ!!!!」


体を締めながら耳元で囁く声に、巧の力が緩まった。

「お前は、死にたいんじゃないのか、乾巧」
「止めろぉっ!!!」


その巧にとっては呪いとも思えた言葉を振り払おうと声を上げる巧。
しかし、その体の拘束は解けなかった。


考えたことはあった。
だけど、それに気付いてしまったら戦えなくなる。
そう思っていたから、考えないようにしていた。

皆死んでいった。
家族と言ってもよかった者たちも。
背中を預けて戦った仲間も。
共に道を歩んでいける友も。

失った者たちと同じくらいに出会いもあった。
手を差し伸べるべきで、しかし振りほどいてしまい悔いを残した少女。
危なっかしくて、だけど真っ直ぐで、何かあれば消えてしまいそうだからこそ守りたかった少年。
自分の戦いを見届け、その果てに背を預けて戦うことができた少女。
他にも色んな出会いがあって、その多くが消えていった。

こんな自分が、仮にここから脱出して帰ったとして。
何が残っているのだろうか。

戦う理由を、生きる理由を、見出だせるのだろうか。

考えてはいけない。
まだ、戦いは終わっていない。
皆は戦っているのに、自分だけ折れるわけにはいかない。


―――お前は、死にたいんじゃないのか?

その言葉が、乾巧の心を侵食していく。



「止めろぉっ!!!」

もがく巧、しかし拘束を解くことはできない。
そんな巧を嘲笑うかのように、体を蹴り飛ばし前に押し出す4号。

不意に自由になった体に思わず前に数歩分突き動かされる。
それでも踏ん張って振り返る巧。

「ライダーパンチ!!」

その視界に入ったのは、構えた拳を振り抜く4号の姿。
反射的に迎撃のカウンターのパンチを構え迎え撃つ巧。

互いの拳がそれぞれの胸を打つ。

「がぁっ!!」

吹き飛ばされたのは巧の体だった。
同時に、体が限界を迎えたことを知らせるかのようにファイズブラスターからファイズフォンが弾け飛ぶ。
巧からの一撃に動じることもなく拳を放った態勢から拳を引きつつ、その姿を見下ろす4号。
変身が解除された巧。ファイズブラスターはこちらの足元に、ファイズフォンはそこから離れた場所に落ちている。

そこに思い切り足を振り下ろす。
バキリ、と激しい音と立てて、ファイズブラスターは真っ二つに砕けた。

そのまま巧の傍に落ちたファイズフォンに目を向ける。
変身が解除された巧は、それを急ぎ立ち上がって拾い上げる。
当然その隙を逃す理由もない。4号は歩み寄りながら拳を巧に叩きつける。
ファイズへの変身が間に合わないと見た巧は咄嗟にその姿を灰色の怪人のものへと変化させた。

「オルフェノクの姿か。だがそれは俺の前では悪手だ」

地面を転がるウルフオルフェノク。
その姿を真っ直ぐに見据えながら、4号は腰を低く落として飛び上がる。

起き上がり、その飛び上がった4号の姿を見上げる巧。

「そうだ悪手なんだよ、この俺の前ではなぁ!!」

出合い頭に放たれた一撃と同じ態勢をこちらに向けている。
クリムゾンスマッシュによく似た、巧に直感で身の危険を感じさせたあの一撃。

そして、今の巧にはそれを回避する余裕がない。

「ライダー、―――――キック!!!!」

その飛び蹴りは、ウルフオルフェノクの胸に突き刺さり。
反動で宙を後ろに舞う4号。

そして衝撃のまま後ろに大きく吹き飛ばされる。
洞窟内の岩壁に叩きつけられるほどの衝撃を受ける巧。

オルフェノクの姿を解除され、生身に戻った巧は、ゴホッと血を吐き出して。
ゆっくりと地面に倒れた。




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