Nとニャース・ポケモンと人間 ◆Z9iNYeY9a2
遊園地を出発したNはポケモン城へと向かうために南下していた。
しかし同じ行き先を目指す織莉子、アリスとは共にいない。
しかし同じ行き先を目指す織莉子、アリスとは共にいない。
一旦寄り道をしてから向かうと言った二人に対し、Nにもまた寄りたい場所が存在していた。
これからポケモン城に向かい、クローンポケモン達を救う。その道中が穏やかなものになるとは思っていない。
ともすれば、ポケモン達の力を借りることにもなるだろう。そうなった場合に傷ついたポケモン達を戦わせるわけにはいかない。
これからポケモン城に向かい、クローンポケモン達を救う。その道中が穏やかなものになるとは思っていない。
ともすれば、ポケモン達の力を借りることにもなるだろう。そうなった場合に傷ついたポケモン達を戦わせるわけにはいかない。
本来ならばポケモンセンターに向かうべきだったのだろうが、Nは病院に向かうことにした。
ここであれば何かしらの薬は入手できるかもしれないというのが一つ。
だが既に多くの人が立ち寄っており、自分も一度訪れた場所、あまり期待はできないことはN自身分かっていた。
それでも向かいたいと思う理由が、Nにはあった。
ここであれば何かしらの薬は入手できるかもしれないというのが一つ。
だが既に多くの人が立ち寄っており、自分も一度訪れた場所、あまり期待はできないことはN自身分かっていた。
それでも向かいたいと思う理由が、Nにはあった。
病院。
そこは海堂直也と別れた場所。そして、彼が命を落とした場所。
ゲーチスの手によって。
そこは海堂直也と別れた場所。そして、彼が命を落とした場所。
ゲーチスの手によって。
その事実を自分の中で否定しきることができないでいた。
あるいはもう分かっていたのかもしれない。自分が知らなかった世界を隠し続けたゲーチスが、本当に信じてもいい存在だったのかどうか。
行ってゲーチスの真意が、海堂の死に対する何かが分かるとも思えなかったが、それでも向かわなければならないとNは考えていた。
あるいはもう分かっていたのかもしれない。自分が知らなかった世界を隠し続けたゲーチスが、本当に信じてもいい存在だったのかどうか。
行ってゲーチスの真意が、海堂の死に対する何かが分かるとも思えなかったが、それでも向かわなければならないとNは考えていた。
その未来は、Nの中であまりにも不鮮明だったから。
「――なんて、言ったら、君は身勝手だと言うかい?」
Nがそう問いかけたのはニャース。
ニャース目線での数歩先にあたる場所を歩いている、現在の同行者。
ニャース目線での数歩先にあたる場所を歩いている、現在の同行者。
「好きにしたらいいと思うにゃ。少なくともピカチュウ達はおみゃーのことを信じているみたいにゃし。
ならそっちの判断には従うだけにゃ」
ならそっちの判断には従うだけにゃ」
ニャースはそんなNの我儘に付き合わせている形になり、Nの中には申し訳ないと思う気持ちも現れている。
それ自体はいいのだが、少しポケモンを優先しすぎる気がしたニャースは続けるように言葉を投げる。
それ自体はいいのだが、少しポケモンを優先しすぎる気がしたニャースは続けるように言葉を投げる。
「ピカチュウもリザードンも、おみゃーのことを信用してるにゃ。なら、そんなあいつらの気持ちはちゃんと受け止めてやるべきにゃ。
もし嫌なことや間違ったってことがあったら、そいつらはちゃんと言ってくれるやつにゃ」
「そうか、ありがとう。少し気が楽になったよ」
もし嫌なことや間違ったってことがあったら、そいつらはちゃんと言ってくれるやつにゃ」
「そうか、ありがとう。少し気が楽になったよ」
その言葉に心につっかえていたものが取れるように気が楽になったN。
そして、同時にその心中には疑問が湧き上がってきた。
彼はロケット団に所属しているポケモンという。
様々な他地方の組織の名、評判は聞いたことがある。
その中でもロケット団はポケモンに対しての悪事を多く働くものだという認識があった。
様々な他地方の組織の名、評判は聞いたことがある。
その中でもロケット団はポケモンに対しての悪事を多く働くものだという認識があった。
ニャースはポケモンであり、ポケモンの心をよく理解している。
そんな彼が、どうしてロケット団などに所属しているのか。
そんな彼が、どうしてロケット団などに所属しているのか。
「ニャース。君とは少しじっくりと話してみたいこともあったんだ」
「ニャ?」
「君はロケット団にいるポケモンだと聞いた。それは本当かい?」
「ニャ、本当にゃ」
「それは、君の意志でいるということかい?
トレーナーの意志でロケット団にいるということではなく?」
「ニャーはトレーナーがいない、フリーのポケモンにゃ。だからボールを投げられたら捕まえられてしまうのにゃ。
誰かに言われたってわけでもない、自分の意志でロケット団にいるのにゃ」
「ニャ?」
「君はロケット団にいるポケモンだと聞いた。それは本当かい?」
「ニャ、本当にゃ」
「それは、君の意志でいるということかい?
トレーナーの意志でロケット団にいるということではなく?」
「ニャーはトレーナーがいない、フリーのポケモンにゃ。だからボールを投げられたら捕まえられてしまうのにゃ。
誰かに言われたってわけでもない、自分の意志でロケット団にいるのにゃ」
その口調には迷いも嘘も感じられなかった。
ニャースは本心からそう言っている。
ニャースは本心からそう言っている。
「君は、ロケット団が悪の組織だってことを知って、そこにいるんだよね?」
「そうにゃ」
「そうにゃ」
そしてその肯定も早かった。
「…僕には理解できないんだ。
君は悪い存在には感じられない。なのに君はロケット団という悪に加担することに迷いを持っていない。
一体………どっちなんだ?」
君は悪い存在には感じられない。なのに君はロケット団という悪に加担することに迷いを持っていない。
一体………どっちなんだ?」
善なのか、悪なのか。
そのどっちなのかと問おうとして、何故かその部分がうまく口から出てこなかった。
そのどっちなのかと問おうとして、何故かその部分がうまく口から出てこなかった。
そんなNの問いかけの意味を察するように、ニャースは答える。
「別に、ポケモンにもいいやつや悪いやつがいてもいいんじゃにゃいかにゃ?」
「悪いポケモン、そんなものがいるのか…?」
「人間から見たら分からないものかもしれにゃいけど、ポケモンの間じゃ他のやつを騙すやつも、人のものを盗むやつもいっぱいいるにゃ。
ただそれが人間に対しては大したことのないものが多いから気にされないだけなのじゃないかにゃ」
「悪いポケモン、そんなものがいるのか…?」
「人間から見たら分からないものかもしれにゃいけど、ポケモンの間じゃ他のやつを騙すやつも、人のものを盗むやつもいっぱいいるにゃ。
ただそれが人間に対しては大したことのないものが多いから気にされないだけなのじゃないかにゃ」
悪いポケモンはいないと語るポケモンは多く、確かにそれも事実かもしれない。
しかし、だとすると進んで悪事を行う自分は何なのだろうか。
しかし、だとすると進んで悪事を行う自分は何なのだろうか。
それに生きるために人の世界では悪事にも当たることを行うポケモンも、本人にその気がなくとも普段していることを行うだけで結果的に悪事になってしまうものもいる。
それはきっと環境次第なのだろうとニャースは言う。
それはきっと環境次第なのだろうとニャースは言う。
「でも、それは人間も同じじゃないのかニャ?」
「それは、人間に近づいた君だからこそ分かることかい?」
「さあ、それはどうなのか分からないニャ」
「それは、人間に近づいた君だからこそ分かることかい?」
「さあ、それはどうなのか分からないニャ」
「じゃあもう一つ。君はどうしてそうして人間に近付こうと思ったんだい?
ポケモンにはポケモンの、素晴らしい言葉があるじゃないか」
「…まあ話せば長くなることニャし、歩きながら話すかニャ」
ポケモンにはポケモンの、素晴らしい言葉があるじゃないか」
「…まあ話せば長くなることニャし、歩きながら話すかニャ」
ポツポツと、過去の苦い思い出を語り始めたニャース。
話していくうちに、歩みは少しずつ目的地の病院に近付いていった。
話していくうちに、歩みは少しずつ目的地の病院に近付いていった。
◇
ニャースの話した昔話は、Nを絶句させるものだった。
人間の食べ物を盗まなければ生きていけないポケモン達。
好きになったポケモンのために人間になりたいと努力し、ポケモンとしての多くのものを失ってしまったこと。
そして、そんな彼に投げかけられた言葉。
人間の食べ物を盗まなければ生きていけないポケモン達。
好きになったポケモンのために人間になりたいと努力し、ポケモンとしての多くのものを失ってしまったこと。
そして、そんな彼に投げかけられた言葉。
人間と違いポケモンは純粋な生き物と信じて疑わなかったNには、驚くしかできないものだった。
「…好きなポケモンのために人間になろうとした、か…。残酷なこともあるんだな」
「その言い方は少し癇に障るニャ。
ニャーとしては苦い思い出にゃけど後悔はしていにゃいし」
「その言い方は少し癇に障るニャ。
ニャーとしては苦い思い出にゃけど後悔はしていにゃいし」
辛うじて絞り出した、同情する心境を吐露したNに釘を刺すニャース。
「それに、もしニャーが喋れるようにならなかったら、ムサシやコジロウと会うこともなかっただろうしニャ」
それは彼が語る、ロケット団の同僚である二人の人間。
苦い思い出を語る時とは対照的に、彼らのことを語るニャースの口調はいきいきとしていた。
苦い思い出を語る時とは対照的に、彼らのことを語るニャースの口調はいきいきとしていた。
出会いから多くの冒険、関わってきた様々なポケモン。
そして今Nの持つボールにいるピカチュウ、そのトレーナー・サトシ達との縁。
そして今Nの持つボールにいるピカチュウ、そのトレーナー・サトシ達との縁。
あのトレーナーを連想させるその旅路はNにとって新鮮なものばかりだった。
「確かにニャーもあいつらも、やってることは悪そのものにゃ。人のものやポケモンを盗もうとするし、珍しいポケモンがいたらたくさん捕まえようともする。
でも、あいつら自身はポケモンは大事にするし、だからこそあいつらのポケモンも悪事だって分かってても全力で尽くそうとするにゃし」
「それは、人間のエゴで悪事に付き合わせているということにはならないのかい?」
「じゃあおみゃーは例えば、他人の食べ物を自分の都合で持って行こうとするポケモンの罪を人間として問えるのかにゃ?」
「…いけないことだ…、でも同時に生きていくためには仕方のないことだ、とも思う」
「そうにゃ。
それにトレーナーにも色んなやつがいるにゃ。弱いポケモンなら捨てるやつもいるし、ポケモンハンターみたいなやつもいるし。
でも、捨てられた後で別のトレーナーの手に渡った後も捨てたトレーナーのことを互いに気にして、再会するたびに力をつけていくやつを知ってるしにゃ」
「……」
「あの学校でゲーチスってやつが語ってたことを思い出すんにゃが、あいつの言うことは、おみゃーは正しいと思っているのにゃ?」
でも、あいつら自身はポケモンは大事にするし、だからこそあいつらのポケモンも悪事だって分かってても全力で尽くそうとするにゃし」
「それは、人間のエゴで悪事に付き合わせているということにはならないのかい?」
「じゃあおみゃーは例えば、他人の食べ物を自分の都合で持って行こうとするポケモンの罪を人間として問えるのかにゃ?」
「…いけないことだ…、でも同時に生きていくためには仕方のないことだ、とも思う」
「そうにゃ。
それにトレーナーにも色んなやつがいるにゃ。弱いポケモンなら捨てるやつもいるし、ポケモンハンターみたいなやつもいるし。
でも、捨てられた後で別のトレーナーの手に渡った後も捨てたトレーナーのことを互いに気にして、再会するたびに力をつけていくやつを知ってるしにゃ」
「……」
「あの学校でゲーチスってやつが語ってたことを思い出すんにゃが、あいつの言うことは、おみゃーは正しいと思っているのにゃ?」
ニャースが思い出すのは、Nとファーストコンタクトしたあの場所での出来事。
あの時はサトシの死に対する動揺などもあってあまりニャース自身冷静ではなかった。
あの時はサトシの死に対する動揺などもあってあまりニャース自身冷静ではなかった。
だが、改めて考えてみるとあの主張はおかしいと思った。
ポケモンについてを語るゲーチスの言葉は、ある点ではそういう一面もあると言えるものだ。それ故に反論も難しいところがある。
ポケモンについてを語るゲーチスの言葉は、ある点ではそういう一面もあると言えるものだ。それ故に反論も難しいところがある。
しかし、ポケモンについてを語る言葉は、あまりにも人間視点、それも固定観念に凝り固まったような思想だ。
そしてポケモンの言葉を語るNが、ゲーチスの語る言葉に対して反論できないほどにポケモン自身の”声”を知らないとも思えなかった。
ニャースの問いかけにはそういった数々の疑問が内包されたものだった。
「…、僕には正直なところ分からない、というのが正しいんだ。
僕は、自分の城で人に辛い目に合わされたポケモンばっかりを見て育ってきた。君の語るような、幸せな声を持つポケモンに会ったのはここへ来る前の、つい最近のことだ。
だから、変えたいと思っている世界の形を知らない」
「………」
「ある人に夢について話した時、言われたんだ。『君は人を理解した方がいい』って。
そのせいかは分からないけど、それ以降色んな人を見るようになった。そうすると、なんだか世界の形が違うものに見えてきたんだ」
「たぶん、おみゃーは自分が探してる答えには少しずつ近付いていると思うにゃ。ならニャーから何か言えることはないと思うのにゃ」
「そうか。ありがとう。君と話せて、よかったよ」
僕は、自分の城で人に辛い目に合わされたポケモンばっかりを見て育ってきた。君の語るような、幸せな声を持つポケモンに会ったのはここへ来る前の、つい最近のことだ。
だから、変えたいと思っている世界の形を知らない」
「………」
「ある人に夢について話した時、言われたんだ。『君は人を理解した方がいい』って。
そのせいかは分からないけど、それ以降色んな人を見るようになった。そうすると、なんだか世界の形が違うものに見えてきたんだ」
「たぶん、おみゃーは自分が探してる答えには少しずつ近付いていると思うにゃ。ならニャーから何か言えることはないと思うのにゃ」
「そうか。ありがとう。君と話せて、よかったよ」
礼を述べるNは、ふとさっきまで話していたことの、自分の中で引っかかっていたある”言葉”についてニャースに問うた。
「そういえば、君が喋れるようになった時にニャースに言われた言葉だけど…」
――人間の言葉を喋るニャースなんて気持ち悪い
「それは、ボクみたいな人間も、そう見えるものなのかい?」
人間の言葉を喋ることが気持ち悪いとポケモンが言われるなら。
ポケモンの言葉が分かる自分が人間に対し同じことを言われるものではないか。
ポケモンの言葉が分かる自分が人間に対し同じことを言われるものではないか。
そんな疑問が浮かんできていた。
「まあ、確かに他のやつらと比べたら浮いてるのは確かにゃ。それで色々言われることもあるだろうにゃ」
ニャース自身人間目線では珍しいポケモンとして捕らえられそうになったこともあるし、ポケモンから見てもコミュニケーションツールとして利用されたこともある。
「だけど、それもいいんじゃないかにゃ。
ポケモンも、人間も、ニャーみたいなやつもおみゃーみたいなやつも、どんなやつでも見える満月は全部一緒にゃ」
ポケモンも、人間も、ニャーみたいなやつもおみゃーみたいなやつも、どんなやつでも見える満月は全部一緒にゃ」
それでもいいと言うニャースのその、詩的な表現の言葉の意味。
それを問うことは、敢えてNはしなかった。
それを問うことは、敢えてNはしなかった。
◇
海堂と最後に別れた部屋。それは木場勇治と向かい合った一室。
そこには床が割れて大きな穴が空いており。
その穴の下、瓦礫が積み重なった場所に、一山の灰が積もっていた。
そこには床が割れて大きな穴が空いており。
その穴の下、瓦礫が積み重なった場所に、一山の灰が積もっていた。
それが何なのかを理解しつつ、Nがその中に手を突っ込む。
サラサラとした手触りの粉末の中に、一つ小さな石のような塊があることに気付く。
手を抜き出すと、それは一発の銃弾だった。
サラサラとした手触りの粉末の中に、一つ小さな石のような塊があることに気付く。
手を抜き出すと、それは一発の銃弾だった。
この床の崩壊は、きっと木場勇治との戦闘の結果によるものだろう。
しかし、彼との戦いの時には海堂はまだ生きていた。
そして、この場所で瓦礫に埋もれ、身動きが取れない状態の海堂を、ゲーチスは撃ち殺したということになる。
しかし、彼との戦いの時には海堂はまだ生きていた。
そして、この場所で瓦礫に埋もれ、身動きが取れない状態の海堂を、ゲーチスは撃ち殺したということになる。
前提として、美遊が語ったゲーチスの言葉を信じるなら、だが。
「…つまり、ゲーチスは」
この場で動けない彼を、手にかけたのだ。
不慮の事故や、手違いなどではない。美遊が語ったものに合致する形で。
不慮の事故や、手違いなどではない。美遊が語ったものに合致する形で。
「…ちょっといいかニャ?そのゲーチスってやつは、お前の親ってことなのよニャ?」
「…ああ。森でポケモン達と暮らしていたボクを、育ててくれた父親だ」
「おみゃーが会ったって言った人間にひどい目にあわされたポケモン達って、連れてきたのはそいつよにゃ?」
「…ああ」
「…ああ。森でポケモン達と暮らしていたボクを、育ててくれた父親だ」
「おみゃーが会ったって言った人間にひどい目にあわされたポケモン達って、連れてきたのはそいつよにゃ?」
「…ああ」
ニャースが言わんとしていることは今のNには察することができた。
「まず、何か使えそうなものがないか、改めて探してみてほしい。
色んな人が立ち寄ったという場所だけど、まだ見ていない場所も少しはあるかもしれない」
「了解にゃ」
色んな人が立ち寄ったという場所だけど、まだ見ていない場所も少しはあるかもしれない」
「了解にゃ」
ニャースは病院内を再度探索するため離れていく。
Nは、その反対方向を歩みながら、今しがた確かに見たものに対して心の中で整理をつけようとしていた。
要するに一人になりたかったのだ。
Nは、その反対方向を歩みながら、今しがた確かに見たものに対して心の中で整理をつけようとしていた。
要するに一人になりたかったのだ。
◇
病院を駆け回ったものの、やはり幾度も他参加者が立ち寄った場所であるが故にめぼしいものを見つけることはできなかった。
薬自体はかなりの量があるものの、薬剤知識のないNとニャースが触れて大丈夫なものかと言われれば不安は拭えないため、結局ポケモン達への薬として使うことは諦めた。
薬自体はかなりの量があるものの、薬剤知識のないNとニャースが触れて大丈夫なものかと言われれば不安は拭えないため、結局ポケモン達への薬として使うことは諦めた。
「だけど、走ってたらこんなものを見つけたにゃ」
そんな時ニャースが取り出したものは一つのバッグ。
他の皆が同じように支給されているもの。おそらく誰かが落としていったものだろう。
他の皆が同じように支給されているもの。おそらく誰かが落としていったものだろう。
何か使えるものが無いか、中をまさぐるN。
「…これは」
出てきたものは。
黒を基調として金色のラインで彩られたモンスターボール、ゴージャスボール。
一見普通のモンスターボールと変わらない、しかし誰も中に入っていないモンスターボール。
黒を基調として金色のラインで彩られたモンスターボール、ゴージャスボール。
一見普通のモンスターボールと変わらない、しかし誰も中に入っていないモンスターボール。
あとは基本的な支給品と、飲食物――ポケモン用のペレットとスナック菓子が入っている程度。
うち、目を引いたのはゴージャスボールとモンスターボール。
特に、モンスターボールには説明書きがあり、スナッチボールという特殊な道具だという。
「スナッチボール?」
「…要するに、これはトレーナーが既にいるポケモンを捕まえることができる、特殊なモンスターボールらしい」
「にゃにゃ?!」
「…要するに、これはトレーナーが既にいるポケモンを捕まえることができる、特殊なモンスターボールらしい」
「にゃにゃ?!」
ニャースは驚愕の声を上げると共に、その瞳が若干、これを狙っているかのような光を見せたのをNは見逃さなかった。
「あげないからね」
「わ、分かってるにゃ。ニャーも別に欲しいなんて…」
「とりあえず、ポケモン達にはこのポケモンフーズをあげて体力を回復させるとしようか」
「わ、分かってるにゃ。ニャーも別に欲しいなんて…」
「とりあえず、ポケモン達にはこのポケモンフーズをあげて体力を回復させるとしようか」
そう言ってスナッチボールをバッグに仕舞いながら、ピカチュウ、リザードン、グレッグルを呼び出すN。
ニャースも含めて各々にポケモンフーズを配る。
ニャースも含めて各々にポケモンフーズを配る。
与えられたポケモン用固形食料を食べる彼らを見ながら、Nはボールを手に語り始める。
「でも、これが手に入ったのは幸運かもしれない」
「どういうことニャ?」
「これは、ボクが考えていることなんだけど」
「どういうことニャ?」
「これは、ボクが考えていることなんだけど」
「そもそも君やミュウツーと他のポケモン達は、参加者と支給品という扱いで大きな開きがある。
何が違うか、分かるかい?」
「ピカァ?」
「う~ん、トレーナーがいるかいないか、ということじゃないかにゃ?」
「そう。だけどもう一段階。ピカチュウ達を縛り付けているもの、それがきっとこのモンスターボールなんだ。
たぶん、僕たちに課せられたこの呪いと同じような縛りだと、ボクは考えている」
何が違うか、分かるかい?」
「ピカァ?」
「う~ん、トレーナーがいるかいないか、ということじゃないかにゃ?」
「そう。だけどもう一段階。ピカチュウ達を縛り付けているもの、それがきっとこのモンスターボールなんだ。
たぶん、僕たちに課せられたこの呪いと同じような縛りだと、ボクは考えている」
Nが話すのは、遊園地での会談時に現在の所有者がモンスターボールを持たないポケモン、ポッチャマのこと。
元々はユーフェミアという人物が所有していたらしいが、ポッチャマは彼女の目を勝手に離れて動き、彼女もまたポッチャマの預かり知らぬ場所で命を落としたという。
結果、ポッチャマのボールを持ったものはいなくなり、ポッチャマを縛るものがなくなった。
元々はユーフェミアという人物が所有していたらしいが、ポッチャマは彼女の目を勝手に離れて動き、彼女もまたポッチャマの預かり知らぬ場所で命を落としたという。
結果、ポッチャマのボールを持ったものはいなくなり、ポッチャマを縛るものがなくなった。
実際、アリスと織莉子に頼み、ポッチャマにちょっとした命令を出してもらったが、命令に拘束されている様子は一切感じられなかった。
「きっとボールを持ったポケモン達を縛っているのはこのボールなんじゃないかって思うんだ」
「ピィカァ~…」
「ニャース、君に頼みたいことがあるんだけど」
「ニャ?」
「君は機械をいじるのは得意だって言ってたよね?
このゴージャスボールを調べてみてほしいんだ。何か、ポケモンにそういった制約を化す細工がされていないか」
「ピィカァ~…」
「ニャース、君に頼みたいことがあるんだけど」
「ニャ?」
「君は機械をいじるのは得意だって言ってたよね?
このゴージャスボールを調べてみてほしいんだ。何か、ポケモンにそういった制約を化す細工がされていないか」
スナッチボールはともかくとして、ゴージャスボールのような空のモンスターボールが支給されている。
これはすなわち、モンスターボールの制約から解放されたポケモンがいずれ出てくる可能性を想定し、再度捕獲を可能とするためのものだろう。
ならば、このボールにも同じ制約を化す何かが組み込まれているはず。
これはすなわち、モンスターボールの制約から解放されたポケモンがいずれ出てくる可能性を想定し、再度捕獲を可能とするためのものだろう。
ならば、このボールにも同じ制約を化す何かが組み込まれているはず。
既にポケモンが登録されたモンスターボールを解析に使った場合ポケモンに対して悪影響を及ぼす可能性も有り得る。
現状ポケモン達に悪影響を与えずにそれが叶うものがあるとすればこの一つだけだろう。
現状ポケモン達に悪影響を与えずにそれが叶うものがあるとすればこの一つだけだろう。
「むー、でもボール自体をいじったことはないからニャ…。まあでもやるだけやってみるニャ」
「ああ、頼んだ。場所は、移動が大変ならここか、それかL達と集合場所と決めた遊園地でやってくれるといい。
それと、ピカチュウ、君はニャースと一緒にいてほしい」
「ピカァ?!!」
「ああ、頼んだ。場所は、移動が大変ならここか、それかL達と集合場所と決めた遊園地でやってくれるといい。
それと、ピカチュウ、君はニャースと一緒にいてほしい」
「ピカァ?!!」
驚くように鳴き声を上げたピカチュウ。
「リザードンは元々スタミナが強いポケモンだったからダメージの回復も早いみたいだけど、君はまだ戦いのダメージの残りが大きい。
それに君たちは長い付き合いだから少しは気を許せる仲なんだろう?」
「ピ、ピカァ…?」
それに君たちは長い付き合いだから少しは気を許せる仲なんだろう?」
「ピ、ピカァ…?」
ピカチュウは顔を顰めている。
そんなことはない、こいつは信用できないと、そう言っている。
そんなことはない、こいつは信用できないと、そう言っている。
「にゃ、ニャア、つまり今はニャアがピカチュウのトレーナーになると、そういうことでいいのかにゃ?」
「まあ、ボクは別行動になるから、その間の一時的にということになるけど」
「了解しましたニャ!このニャース、誠心誠意その仕事を頑張らせてもらうにゃ!!」
「ピカァ!!ピカチュウ!!」
「まあ、ボクは別行動になるから、その間の一時的にということになるけど」
「了解しましたニャ!このニャース、誠心誠意その仕事を頑張らせてもらうにゃ!!」
「ピカァ!!ピカチュウ!!」
ピシッと立って敬礼するニャース、対してピカチュウは抗議の声を止めない。
そんなピカチュウの肩を、慰めるようにポンと叩くグレッグル。
そんなピカチュウの肩を、慰めるようにポンと叩くグレッグル。
その様子を見て、とりあえずはピカチュウを任せるのは大丈夫だろうと判断する。
(まあ、流石にスナッチボールはあげられないけどね)
そう思いながら、もう一つのボールにも意識を向けるN。
このボールはきっと存在してはいけないものだと。
ポケモンと人間を明確に分かたれる世界を作ろうとした自分にもそれは分かる。
他者のポケモンを強引に奪うことは倫理的にも許されることではないし、このボールはきっとポケモンとトレーナーの絆すら容易く引き裂くだろう。
サトシを目の前で殺され、その下手人の手に一時的とはいえ渡ってしまい心に傷を作ったこのリザードンのように。
このボールはきっと存在してはいけないものだと。
ポケモンと人間を明確に分かたれる世界を作ろうとした自分にもそれは分かる。
他者のポケモンを強引に奪うことは倫理的にも許されることではないし、このボールはきっとポケモンとトレーナーの絆すら容易く引き裂くだろう。
サトシを目の前で殺され、その下手人の手に一時的とはいえ渡ってしまい心に傷を作ったこのリザードンのように。
そしてニャースは曲がりなりにもロケット団にいるポケモン。これを解析されたことでその技術が組織の手に渡る事態はあってはならないことだ。
今はピカチュウの面倒を見てもらうことでその気を反らすことはできたが。
今はピカチュウの面倒を見てもらうことでその気を反らすことはできたが。
ピカチュウのボールをニャースに渡し、食事を終えたリザードンとグレッグルをボールに戻すN。
「じゃあ、ニャアはここでボールの解析ができるかどうか少し調べてからここに残るか遊園地に向かうかは決めるのニャ。
まあどっちにいても用が終わったら帰りがけにでも拾ってくれたらいいにゃ」
「ああ。ボクたちは出るから。気をつけてね」
「ピィカァ…」
「諦めるニャピカチュウ。まあ今はロケット団も何もニャイからニャ。仲良く協力しようニャ」
まあどっちにいても用が終わったら帰りがけにでも拾ってくれたらいいにゃ」
「ああ。ボクたちは出るから。気をつけてね」
「ピィカァ…」
「諦めるニャピカチュウ。まあ今はロケット団も何もニャイからニャ。仲良く協力しようニャ」
ニャースへの警戒心を残し続けるピカチュウに対し、ニャースは笑いながらその肩を叩く。
その様子にピカチュウは諦めたようにため息をついた。
その様子にピカチュウは諦めたようにため息をついた。
そうして、Nはニャースを残して合流地点へと歩み始めた。
(…どうしたものかな、このスナッチボールは…)
ニャースから離れたNは、このボールに対して思いを馳せる。
無論、他者のポケモンを奪うことは例えNとていかなる場合でもするつもりはない。
だが、もしもだが。
無論、他者のポケモンを奪うことは例えNとていかなる場合でもするつもりはない。
だが、もしもだが。
弥海砂に操られたリザードンのように、本来の持ち主ではない相手にいいように利用されているポケモンを見た時には。
このボールを使ってしまうかもしれない。
このボールを使ってしまうかもしれない。
そんな時が来ないことを願いながら、Nは一人南へと足を進めた。
【D-5/病院周辺/一日目 夜中】
【N@ポケットモンスター(ゲーム)】
[状態]:疲労(小)
[装備]:サトシのリザードン@ポケットモンスター(アニメ)、タケシのグレッグル&モンスターボール@ポケットモンスター(アニメ)、スマートバックル(失敗作)@仮面ライダー555
[道具]:基本支給品×2、割れたピンプクの石、スナッチボール×1@ポケットモンスター(ゲーム)
[思考・状況]
基本:アカギに捕らわれてるポケモンを救い出し、トモダチになる
1:ポケモン城に向かい、クローンポケモン達を救う
2:世界の秘密を解くための仲間を集める
3:ゲーチスを探し、真意を確かめたい
4:スナッチボールの存在は封印したいが…
[備考]
※モンスターボールに対し、参加者に対する魔女の口づけのような何かの制約が課せられており、それが参加者と同じようにポケモン達を縛っていると考察しています。
[状態]:疲労(小)
[装備]:サトシのリザードン@ポケットモンスター(アニメ)、タケシのグレッグル&モンスターボール@ポケットモンスター(アニメ)、スマートバックル(失敗作)@仮面ライダー555
[道具]:基本支給品×2、割れたピンプクの石、スナッチボール×1@ポケットモンスター(ゲーム)
[思考・状況]
基本:アカギに捕らわれてるポケモンを救い出し、トモダチになる
1:ポケモン城に向かい、クローンポケモン達を救う
2:世界の秘密を解くための仲間を集める
3:ゲーチスを探し、真意を確かめたい
4:スナッチボールの存在は封印したいが…
[備考]
※モンスターボールに対し、参加者に対する魔女の口づけのような何かの制約が課せられており、それが参加者と同じようにポケモン達を縛っていると考察しています。
【ニャース@ポケットモンスター(アニメ)】
[状態]:ダメージ(中)、全身に火傷(処置済み)
[装備]:サトシのピカチュウ(体力:疲労(小)ダメージ(中))@ポケットモンスター(アニメ)、ゴージャスボール@ポケットモンスター(ゲーム) 、小型テレビ入ポテトチップス@DEATH NOTE(漫画)
[道具]:基本支給品一式、
[思考・状況]
基本:この場所から抜け出し、ロケット団に帰る
1:ボールを解析する
2:ニャーがピカチュウのトレーナーに…
[備考]
※参戦時期はギンガ団との決着以降のどこかです
※桜とマオとスザク以外の学園に居たメンバーの事を大体把握しました(あくまで本人目線
※桜が学園にいたデルタであることには気付いていません
[状態]:ダメージ(中)、全身に火傷(処置済み)
[装備]:サトシのピカチュウ(体力:疲労(小)ダメージ(中))@ポケットモンスター(アニメ)、ゴージャスボール@ポケットモンスター(ゲーム) 、小型テレビ入ポテトチップス@DEATH NOTE(漫画)
[道具]:基本支給品一式、
[思考・状況]
基本:この場所から抜け出し、ロケット団に帰る
1:ボールを解析する
2:ニャーがピカチュウのトレーナーに…
[備考]
※参戦時期はギンガ団との決着以降のどこかです
※桜とマオとスザク以外の学園に居たメンバーの事を大体把握しました(あくまで本人目線
※桜が学園にいたデルタであることには気付いていません
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ニャース | 161:ニャースとアクロマ・世界のカタチ |