ポケットの中の戦争(後) ◆Z9iNYeY9a2
エラスモテリウムオルフェノクの巨大な顎に食らいつかれ、そのまま大きく振り回される頭部に揺さぶられるドサイドンの体。
やがて食らいつかれたその体が限界を迎えて地面に投げつけられた時、ドサイドンの体は頭を食いちぎられた無惨な屍と化していた。
やがて食らいつかれたその体が限界を迎えて地面に投げつけられた時、ドサイドンの体は頭を食いちぎられた無惨な屍と化していた。
同時に地面に倒れ伏しているサイドンにその巨大な足を振り下ろす。
サイドンの硬い体は、それでもエラスモテリウムオルフェノクの重量に耐えきれず潰れた肉片となった。
サイドンの硬い体は、それでもエラスモテリウムオルフェノクの重量に耐えきれず潰れた肉片となった。
そしてその視線がたった今入ってきたポケモン達の方に向かった時。
周囲で待機していた騎士型のナイトメアフレーム、グロースター達が動き始めた。
周囲で待機していた騎士型のナイトメアフレーム、グロースター達が動き始めた。
機械音が鳴り響くと同時に、ポケモン達の中に剣が振り下ろされる。
どうにかポケモン達は避けたものの、目の前でドサイドン達に行われた惨劇を前に恐慌状態に陥っていた。
散り散りになっていくポケモン達。そこに巨大な四肢を持ったナイトメアフレーム、エクウスが立ちふさがる。
狙われたポッチャマとテッシード、ニドキング。ハイドロポンプとミサイル針を放つも、エクウスの巨体はびくともせず。
ニドキングがシャドークローを放ち飛びかかるも振り下ろされた鎚により地面に叩きつけられる。
その体から放たれた砲撃がニドキングの体を貫いて爆発、ポッチャマとテッシードは吹き飛ばされる。
狙われたポッチャマとテッシード、ニドキング。ハイドロポンプとミサイル針を放つも、エクウスの巨体はびくともせず。
ニドキングがシャドークローを放ち飛びかかるも振り下ろされた鎚により地面に叩きつけられる。
その体から放たれた砲撃がニドキングの体を貫いて爆発、ポッチャマとテッシードは吹き飛ばされる。
開けた空へと逃げようとする飛行能力を持ったポケモン達。
ガブリアスとリザードン、サザンドラ達の元へ、一迅の風が舞ったと思うとその体が吹き飛ばされた。
空中で待機していた、飛行能力を持った銀色のナイトメアフレーム、アクイラが迫る。
その翼状の腕から放たれた電撃が3匹を襲う。サザンドラ、リザードンの体は撃ち落とされるも、電撃の効かないガブリアスはそのまま宙に留まる。
落とされ地面で電撃のダメージに苦しむ二匹に気を取られてしまったガブリアス。その眼前に、アクイラが迫り。
その鋭い翼状の腕に備えられた刃が、ガブリアスの体を切り裂いた。
ガブリアスとリザードン、サザンドラ達の元へ、一迅の風が舞ったと思うとその体が吹き飛ばされた。
空中で待機していた、飛行能力を持った銀色のナイトメアフレーム、アクイラが迫る。
その翼状の腕から放たれた電撃が3匹を襲う。サザンドラ、リザードンの体は撃ち落とされるも、電撃の効かないガブリアスはそのまま宙に留まる。
落とされ地面で電撃のダメージに苦しむ二匹に気を取られてしまったガブリアス。その眼前に、アクイラが迫り。
その鋭い翼状の腕に備えられた刃が、ガブリアスの体を切り裂いた。
ポッチャマとテッシードに追撃をかけようとするエクウス、リザードンとサザンドラに迫りくるアクイラ。
そこにピカチュウとリザードンが飛びかかる。
エクウスの鉄鎚をピカチュウのアイアンテールが弾き、アクイラの体をリザードンの力いっぱい振りかざされた拳が吹き飛ばす。
そこにピカチュウとリザードンが飛びかかる。
エクウスの鉄鎚をピカチュウのアイアンテールが弾き、アクイラの体をリザードンの力いっぱい振りかざされた拳が吹き飛ばす。
他の4機のグロースターに対しては、ゾロアーク2匹が幻影を見せることで凌いでいた。
多数に分身したゾロアーク達に対し本物を見つけ出せず攻めあぐねている4機。
その時ピカチュウに攻撃を弾かれたエクウスが声もなく、何らかの仕草をするように動く。
グロースターの1機が盾に剣を収め、それを地面に突き刺した。
地鳴りがコロシアム内に響き、地面に放出されたエネルギーに熱せられた地面が隆起してゾロアーク達へと襲いかかる。
吹き飛ばされた衝撃で周囲のイリュージョンが解除される。
多数に分身したゾロアーク達に対し本物を見つけ出せず攻めあぐねている4機。
その時ピカチュウに攻撃を弾かれたエクウスが声もなく、何らかの仕草をするように動く。
グロースターの1機が盾に剣を収め、それを地面に突き刺した。
地鳴りがコロシアム内に響き、地面に放出されたエネルギーに熱せられた地面が隆起してゾロアーク達へと襲いかかる。
吹き飛ばされた衝撃で周囲のイリュージョンが解除される。
そこでエクウスの鎚から音が鳴り響いたと同時に、エラスモテリウムオルフェノクが突撃をかけた。
一斉に退避するグロースター達。ポケモン達も急いで駆け出すが、逃げ遅れたキリキザンの体がエラスモテリウムオルフェノクの角と共にコロシアムの壁に叩きつけられる。
エラスモテリウムオルフェノクが退いた時、衝撃でひび割れた壁にキリキザンの姿はなく、ただ飛び散った血痕だけが残っていた。
一斉に退避するグロースター達。ポケモン達も急いで駆け出すが、逃げ遅れたキリキザンの体がエラスモテリウムオルフェノクの角と共にコロシアムの壁に叩きつけられる。
エラスモテリウムオルフェノクが退いた時、衝撃でひび割れた壁にキリキザンの姿はなく、ただ飛び散った血痕だけが残っていた。
体制を立て直したサザンドラと、ゾロアーク2匹が気合玉を放ち、1機のグロースターへと命中させる。
爆発し機体を損傷させう中で更にポッチャマのハイドロポンプとクローンのピカチュウの10万ボルト、テッシードのミサイル針が直撃、各部を爆発させながら地面へと倒れ伏す。
爆発し機体を損傷させう中で更にポッチャマのハイドロポンプとクローンのピカチュウの10万ボルト、テッシードのミサイル針が直撃、各部を爆発させながら地面へと倒れ伏す。
大きな爆発で機体が粉々になったその時、機体の中から黒い影が飛び出した。
髑髏を思わせる形をした黒い仮面と、黒衣をまとった魔人。それがポケモン達の元に迫り。
その拳を叩きつけてテッシードの体をグシャリという音と共に潰した。
髑髏を思わせる形をした黒い仮面と、黒衣をまとった魔人。それがポケモン達の元に迫り。
その拳を叩きつけてテッシードの体をグシャリという音と共に潰した。
混迷を極めていく状況。
その中で、ポケモン達の命が一つずつ消えていく。
しかし今必死に戦うポケモン達には、その死を悼み悲しむ時間すら与えられていなかった。
その中で、ポケモン達の命が一つずつ消えていく。
しかし今必死に戦うポケモン達には、その死を悼み悲しむ時間すら与えられていなかった。
◇
「しっかりするニャ!!」
ドサイドンが死んだ辺りのこと。
アヴァロンにてその映像を見ていたNは艦から飛び出さんとしていたのをニャースによって止められていた。
アヴァロンにてその映像を見ていたNは艦から飛び出さんとしていたのをニャースによって止められていた。
「これ以上ポケモン達を死なせるわけには……!」
「あいつらも着いてきた時点である程度は覚悟していたニャ!!
最初はぐちゃぐちゃだったけど、今はみんな必死で戦ってるのニャ!!おみゃーの指示は必要なのニャ!!」
「…っ」
「それにニャーだって、この場所で戦ってきた皆だって、仲間が死ぬのをずっと見てきたのニャ!!
皆のことを思うのニャら、友達だって思ってるニャら!!今の現状から目を反らしちゃダメなのニャ!!」
「あいつらも着いてきた時点である程度は覚悟していたニャ!!
最初はぐちゃぐちゃだったけど、今はみんな必死で戦ってるのニャ!!おみゃーの指示は必要なのニャ!!」
「…っ」
「それにニャーだって、この場所で戦ってきた皆だって、仲間が死ぬのをずっと見てきたのニャ!!
皆のことを思うのニャら、友達だって思ってるニャら!!今の現状から目を反らしちゃダメなのニャ!!」
ニャースの言葉を受けて、唇を血が出るほど噛むN。
映っているモニターに目をやる。
ガブリアスの体が切り裂かれて墜落していく。
キリキザンが体も残すことなく消える。
テッシードが振り下ろされた拳に潰される。
キリキザンが体も残すことなく消える。
テッシードが振り下ろされた拳に潰される。
砕けそうな心を支えながらも、その映像の中でふと気づく。
「あの四足の機体、もしかしてこの場の皆の司令官か…?」
見ると他の5機は皆あれの合図を受けて動いているように見える。巨角の怪物もあれがうまく操っているようで、味方への攻撃を防いでいる。
現場のポケモン達には気付けないだろう。各々の状況対応で精一杯の様子だ。
現場のポケモン達には気付けないだろう。各々の状況対応で精一杯の様子だ。
マイクをつなげて叫ぶ。
「みんな!!あの四足で鎚を持ったやつの動きを止めろ、あれが司令塔だ!!皆で集中だ、でないとおそらく勝てない!
それ以外との交戦はなるべく避けるんだ!!」
それ以外との交戦はなるべく避けるんだ!!」
Nの指示を受けたポケモン達は目的を、戦い方を見出したことで一斉に動き出す。
2匹のリザードンの火炎放射がエクウスの頭部へと襲いかかる。
鎚でその火を防ぐが、視界を塞がれた奥からゾロアークとサザンドラの気合玉が迫る。
視界を塞がれた状態での一撃だったが、相手の直感故か命中する直前に大きく飛び退くことで避ける。
鎚でその火を防ぐが、視界を塞がれた奥からゾロアークとサザンドラの気合玉が迫る。
視界を塞がれた状態での一撃だったが、相手の直感故か命中する直前に大きく飛び退くことで避ける。
そんな一同の元にグロースターとアクイラ、機体を破壊されたラウンズ兵士が迫る。
ラウンズ兵士の元にはグレッグルが迫り、身軽な動きで攻撃を交わして足に毒づきを打ち込む。脚部への攻撃に動きが鈍る。
グロースターの前にはピンプクが立ち塞がり、秘密の力を発動。コロシアムの足場の砂が巻き上がり機体の視界を塞ぎ進行を封じた。
ラウンズ兵士の元にはグレッグルが迫り、身軽な動きで攻撃を交わして足に毒づきを打ち込む。脚部への攻撃に動きが鈍る。
グロースターの前にはピンプクが立ち塞がり、秘密の力を発動。コロシアムの足場の砂が巻き上がり機体の視界を塞ぎ進行を封じた。
大きな咆哮と共にエラスモテリウムオルフェノクがエクウスが飛び退いた元へと突進をかける。
その巨体に向けて、ポッチャマが渦潮を放つ。巨大な水の渦がエラスモテリウムオルフェノクの体を押し返す。
その巨体に向けて、ポッチャマが渦潮を放つ。巨大な水の渦がエラスモテリウムオルフェノクの体を押し返す。
「今だ、その獣から先に倒すんだ!」
Nが叫ぶ。
巨体と攻撃力、何よりも何をしてくるかが読めない思考の不明さ。
Nの直感はエラスモテリウムオルフェノクが最も危険と判断していた。
だが彼を制御している様子のエクウス。その存在が邪魔でもあった。
あれが距離を取った今がチャンス。いや、今しかないかもしれない。
Nの直感はエラスモテリウムオルフェノクが最も危険と判断していた。
だが彼を制御している様子のエクウス。その存在が邪魔でもあった。
あれが距離を取った今がチャンス。いや、今しかないかもしれない。
咄嗟に空から迫るアクイラ。
その渦を消し飛ばそうと腕に溜めた電気を投げつける。
その渦を消し飛ばそうと腕に溜めた電気を投げつける。
その電気と渦の間に、小さな影が飛び込む。
2匹のピカチュウ。その片方が、尻尾をかざしてその電気を受け止めた。
その隙にもう一方のピカチュウがピカチュウを足場にその機体に飛びつき、10万ボルトを放つ。
電気により不調を起こしたのか、動きが止まるアクイラ。
その隙にもう一方のピカチュウがピカチュウを足場にその機体に飛びつき、10万ボルトを放つ。
電気により不調を起こしたのか、動きが止まるアクイラ。
そして、電気を受け止めたピカチュウは渦の中心に飛び込み。
「チュゥゥゥゥゥゥゥ!!!!!」
渦の中央で、その体から電撃を放った。
アクイラの電撃と合わせて放たれた10万ボルトは、渦の水に電気を通していく。
帯電した渦潮の中で、エラスモテリウムオルフェノクの苦しむような鳴き声が響き。
帯電した渦潮の中で、エラスモテリウムオルフェノクの苦しむような鳴き声が響き。
視界を失ったグロースターの1機が意図せず渦に突っ込み、電気に機体が耐えきれず爆散する。
その爆発に触発されるように、渦はエラスモテリウムオルフェノクを巻き込んで大爆発を引き起こした。
「やったか…!?」
地面に足をつけると同時によろけるピカチュウ。
その体を、横から飛び出したグレッグルが突き飛ばした。
その体を、横から飛び出したグレッグルが突き飛ばした。
次の瞬間、グレッグルの体を爆煙の奥から飛来した巨大な針が貫いた。
「ピカ?!」
晴れていく煙の奥から、怒りの咆哮を上げるエラスモテリウムオルフェノクの姿があった。
確かにダメージは与えたはずだった。
しかし、それで止まるような相手ではなかった。
しかし、それで止まるような相手ではなかった。
それはポケモン達の、そしてNの見誤りだった。
この殺し合いの中で、ポケモン達は殺し合いの道具として連れてこられ多くの参加者に配られた。
しかしその数に対して参加者に実際に死を与えたポケモンは少ない。
多くのポケモンが放った攻撃は、バトルの延長線上にあるもので、他者に死を与えるものではない。もしそこで死を与えようとするならば強固な覚悟、あるいは強い感情が必要になる。
主、シロナを守らんとバーサーカーに立ち塞がったガブリアスのような。
主を殺した相手へのやりきれない思い全てを己の技に乗せてぶつけたサザンドラのような。
しかしその数に対して参加者に実際に死を与えたポケモンは少ない。
多くのポケモンが放った攻撃は、バトルの延長線上にあるもので、他者に死を与えるものではない。もしそこで死を与えようとするならば強固な覚悟、あるいは強い感情が必要になる。
主、シロナを守らんとバーサーカーに立ち塞がったガブリアスのような。
主を殺した相手へのやりきれない思い全てを己の技に乗せてぶつけたサザンドラのような。
人を殺したことのない人間が銃の引き金を引くことに躊躇するように。
ポケモンにとっても死を与える攻撃というのは躊躇われるものだった。
ポケモンにとっても死を与える攻撃というのは躊躇われるものだった。
無論、そうでない攻撃でも相手を無力化することは可能だ。
だが今目の前に立ち塞がっているエラスモテリウムオルフェノクは、それが効く相手ではなかった。
体が動く限り、己の本能に任せて暴れる凶獣。
だが今目の前に立ち塞がっているエラスモテリウムオルフェノクは、それが効く相手ではなかった。
体が動く限り、己の本能に任せて暴れる凶獣。
さらにエクウスが戦線に復帰したことで指揮系統が復活した様子で状況が悪化していく。
グロースターから脱出したラウンズ兵がピンプクを握り潰さんと掴み上げる。
その腕に飛びかかったゾロアークは、ピンプクの命を救う代償に顔面を叩き潰された。
Nのゾロアークがその光景に叫び声を上げる。
その腕に飛びかかったゾロアークは、ピンプクの命を救う代償に顔面を叩き潰された。
Nのゾロアークがその光景に叫び声を上げる。
グロースターは一斉に後退し、エラスモテリウムオルフェノクが前面に突っ込んでくる。目標は電撃を浴びせた2匹のピカチュウ。
二匹のリザードンとサザンドラがその体を受け止め至近距離から炎を浴びせるが堪えている様子はない。
二匹のリザードンとサザンドラがその体を受け止め至近距離から炎を浴びせるが堪えている様子はない。
狙われていると分かったピカチュウが後退したところで、空中からアクイラが腕の刃をかざして斬りかかってきた。
回避するピカチュウを、まるで舞のようにも思える連撃を繰り出して追い詰めていく。
回避するピカチュウを、まるで舞のようにも思える連撃を繰り出して追い詰めていく。
避けることに必死なピカチュウ達はその進行先がエラスモテリウムオルフェノクの足元であることに気が付かない。
やがて距離を取られたアクイラがその腕から電撃を放出。
それはピカチュウに命中することなく、エラスモテリウムオルフェノクの脚部へと直撃。
不意の一撃に怒り、体を抑えていたリザードン達を振りほどきピカチュウ達へと意識を向ける。
それはピカチュウに命中することなく、エラスモテリウムオルフェノクの脚部へと直撃。
不意の一撃に怒り、体を抑えていたリザードン達を振りほどきピカチュウ達へと意識を向ける。
ピカチュウの目の前で咆哮が轟く。体がすくみ足が止まる。
その頭上に、巨大な足が振り上げられ。
その頭上に、巨大な足が振り上げられ。
「ピカ!!」
その体をクローンのピカチュウが突き飛ばした。
突き飛ばされた直後の一瞬。
ほんの刹那の瞬間の中で、クローンのピカチュウはピカチュウに向かって呟いた。
ほんの刹那の瞬間の中で、クローンのピカチュウはピカチュウに向かって呟いた。
これでいいんだ、と。
やがてその姿は、柱のような足の下に消えていった。
◇
「くそ、こうなったらこの戦艦の武装で援護を…!!」
『ダメロト!こんな大きな戦艦の攻撃をあの空間に使ったらポケモン達も巻き込むロト!!』
「だけど、なら僕たちはどうすればいいんだ…!!」
『ダメロト!こんな大きな戦艦の攻撃をあの空間に使ったらポケモン達も巻き込むロト!!』
「だけど、なら僕たちはどうすればいいんだ…!!」
Nは壁を叩きながらも慟哭の叫びを上げる。
あそこで戦っているポケモン達を目の前にしながら何もできない。
分かっている。今自分があそこに向かってもできることはないと。
もし向かったとしても禁止エリアの制約によって命を落とすだけ。そうでなくても無力な人間一人、何ができようか。
分かっている。今自分があそこに向かってもできることはないと。
もし向かったとしても禁止エリアの制約によって命を落とすだけ。そうでなくても無力な人間一人、何ができようか。
分かっていても、N自身の心はそれで納得はしてくれなかった。
「………」
頭を壁に叩きつけたところで、少しだけ冷静になる。
そこで、気付く。
そこで、気付く。
「ニャースは、どこに行ったんだ?」
『ろ、ロト。ニャースは、この映像を見せたらここから出ていったロト』
『ろ、ロト。ニャースは、この映像を見せたらここから出ていったロト』
それはアクロマからのメッセージの残りらしかった。
だがそれを聞いている時間はない。ここから飛び出したということはニャースの行動は一つだ。
だがそれを聞いている時間はない。ここから飛び出したということはニャースの行動は一つだ。
『それと、ニャースからの伝言ロト』
追いかけようとしたNの足を、ロトムの言葉が留める。
『もし自分に何かあっても、絶対に追いかけてこないでくれ。
Nはクローンポケモン達に未来をくれる希望なんだから、って』
Nはクローンポケモン達に未来をくれる希望なんだから、って』
◇
アヴァロンの格納庫から1機のナイトメアフレームが飛び立つ。
ランスロット・フロンティア。
ランスロット・アルビオンと共に格納されていたものの乗り手がおらず持て余していた機体。
ランスロット・アルビオンと共に格納されていたものの乗り手がおらず持て余していた機体。
それをニャースは、説明書を片手に動かしていた。
「ニャ…!こんなの、今までずっと動かしてきたメカと変わらないニャ…!!」
強がるようにそう呟くが、人間用に作られたその機体はニャースの体格で操縦しきれるものではなかった。
それでも今はとにかく動けばいいと、操縦桿とアクセルだけを必死に操作している。
それでも今はとにかく動けばいいと、操縦桿とアクセルだけを必死に操作している。
ロトム図鑑の中で、アクロマは言っていた。
『ポケモン城はクローンを生み出す装置のある施設でしたが。
もう一つ重要な役割がありました。
あの場所は会場の中でバランサー的な役割を与える施設です。おそらくその役割としては最も重要な場所でしょう。
つまりポケモン城は、エデンバイタルと最も近い場所なのですよ』
もう一つ重要な役割がありました。
あの場所は会場の中でバランサー的な役割を与える施設です。おそらくその役割としては最も重要な場所でしょう。
つまりポケモン城は、エデンバイタルと最も近い場所なのですよ』
おそらくこれは、自分に向けたメッセージなのだろう。
ニャースはこれを聞き終わってからそう感じた。
ニャースはこれを聞き終わってからそう感じた。
『だからこそあらゆる可能性が集約しやすい場所でもあります。
クローンポケモン達の可能性を測るという意味では大いに利用させてもらいました。結果は先程申し上げた通り散々なものでしたが。
彼らクローン達には持て余すものです。そしておそらく番兵として使われている者達にとっても同じでしょう。彼らは停滞した存在ですから。
ですが今を生き進み続ける者たち、ポケモンであれば、あるいは』
クローンポケモン達の可能性を測るという意味では大いに利用させてもらいました。結果は先程申し上げた通り散々なものでしたが。
彼らクローン達には持て余すものです。そしておそらく番兵として使われている者達にとっても同じでしょう。彼らは停滞した存在ですから。
ですが今を生き進み続ける者たち、ポケモンであれば、あるいは』
最後のアクロマの小さな笑みがそれをニャースの中で確信させた。
この場所が禁止エリアであることは分かっている。
その上で突っ込めというのであれば何かある。何かができる。そう信じた。
その上で突っ込めというのであれば何かある。何かができる。そう信じた。
開けたコロシアムの上部から、思い切り突っ込むニャース。
横から不意に現れた存在にアクイラは突き飛ばされた。
横から不意に現れた存在にアクイラは突き飛ばされた。
同時に、グロースター達がその存在に気付きスラッシュハーケンを放ち機体を穿つ。
肩に直撃したハーケンに腕を吹き飛ばされる。
更に駆け寄ってきた二人のラウンズ兵がコックピットを潰そうと走り寄る。
肩に直撃したハーケンに腕を吹き飛ばされる。
更に駆け寄ってきた二人のラウンズ兵がコックピットを潰そうと走り寄る。
「…!これニャ…!」
脱出装置を起動させ、コックピットを射出させる。
ここに来るという役割は果たせた以上、使い慣れぬメカに乗り続ける必要はない。
ここに来るという役割は果たせた以上、使い慣れぬメカに乗り続ける必要はない。
地面を滑っていくコックピットから飛び出したニャースの鼻を、舞い上がった土と血、煙の匂いが突く。
その視線の先では、クローンのピカチュウを目の前で潰され動けないピカチュウがいた。
その視線の先では、クローンのピカチュウを目の前で潰され動けないピカチュウがいた。
「ピカチュウ!!」
呼ぶ声を聞いてハッと顔を上げるピカチュウ。
「おみゃーは、ニャー達ロケット団がずっと追いかけてきた特別なポケモンニャ!!
こんなところで死んだりするようなやつじゃないはずニャ!!!」
こんなところで死んだりするようなやつじゃないはずニャ!!!」
体に青い炎があがる。
「ここにいるみんなを助けたいって思うニャら、おみゃーならできるはずニャ!!
自分の力を、信じるのニャ!!ニャーが保証するニャ!!!」
自分の力を、信じるのニャ!!ニャーが保証するニャ!!!」
爪を構えて走るニャース、その元にラウンズ兵が迫る。
言葉を受けたピカチュウは、エラスモテリウムオルフェノクに向けて尻尾を構えて飛び上がる。
ニャースは願った。
皆を救いたいと。
皆を救いたいと。
ピカチュウは願った。
これ以上誰も死なせたくないと。
これ以上誰も死なせたくないと。
そのために、この身の全てを出したいと、そう願い――――
◇
「そう。強い願い。感情ですよ」
どこか遠く離れた場所。
会場とは異なる世界である場所で、アクロマは呟いていた。
会場とは異なる世界である場所で、アクロマは呟いていた。
「ガブリアスがチャンピオン・シロナのため命を燃やした時もそうでした。
あなた達ポケモンの力を引き出すのは、強い絆だと」
あなた達ポケモンの力を引き出すのは、強い絆だと」
会場のことはすでに観測できない場所で、まるで会場の中を見ているかのように。
「惜しむらくは、あなた達のその極限の中で導き出した姿を、私は見ることができないことですが」
◇
コロシアムの地面から、光の柱が出現し。
ピカチュウとニャースの体を包み込んだ。
ピカチュウとニャースの体を包み込んだ。