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作品





濃くておいしい哀しみ



205 名前:濃くておいしい哀しみ[] 投稿日:03/02/17 23:24 ID:i0BpBgeA
しかもビタミンDを加え
カルシウムが
吸収されやすくなっていますので
カルシウムのために
哀しみを飲む方にも
おすすめします

無脂哀しみ固形分8.7%
哀しみ脂肪分4.3%
しっかりとコクがあって
飲みごたえのある
濃い哀しみです




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夕暮



209 名前:夕暮[sage] 投稿日:03/02/18 00:37 ID:eUKWx5TP
じかに首筋に鼻を近づける
ことなる香りのようにおもえてやたら
鎖骨から顎のうらへとくちびるをすべらせていく
途中いちばんつよく香る場所をなぞる
汗の名ごりの味
そのまま首筋を伝う
さっきから何
匂い 香水それ嗅いでた
そうもっと嗅ぐ
ん
手をうつぶせなところへ背から回していく
汗の味しかしなかったよ
そ
左手で乳房をつつみ込む
乳首がふわととがる
上体をかえらせそこに
乗りかかり頭から毛布へもぐる
ゆるやかにひろまった胸に寄っていって
乳首の先を上くちびると下くちびるの間ではさんで
声が漏れるそして腕が毛布ごと頭を抱え込んでくる
こもってくる
湿り重くなり包まれその淡い闇のなかにいてふと
布一枚をはさんでいながら
顔を見合わせている気分がする


210 名前:(続き)[sage] 投稿日:03/02/18 00:37 ID:eUKWx5TP
今日へんだよ
なんで
へん
そか
毛布から顔をのぞかせるとカーテン越しに街灯りが入ってきていた
となりで身を起こしたのに合わせまた飛んでくる重たい匂い
ほぼま上にあるしろい細肩を手を伸ばしつかまえたおし
したいすっごくほんとに
そういう
してるじゃん
わらいかるく手のひらが肩にあたってくる




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ノイズライム



211 名前:ノイズライム(1)[sage] 投稿日:03/02/18 13:09 ID:wmy7+dB2
心が 
痛んで泣きたくなるような
気持ちだ
つらく切ない
悲哀 
大切な人に死なれてかなしい
誠意が通じなくてかなしい

愛し
身にしみていとしい
切ないほどにかわいい
愛

何そこの児のここだかなしき

心にしみるような趣だ
深い感興
感ずる

みちのくはいづくはあれど
塩釜の浦こぐ舟の綱手かなしも










212 名前:ノイズライム(2)[sage] 投稿日:03/02/18 13:10 ID:wmy7+dB2
見事だ
感心するほど立派だ

かなしくせられたりとて、見あさみけるとなん

貧苦がつらい

ひとりあるせがれを行く末の楽しみに、かなしき年をふりしに

悲しいにつけ愛しいにつけ
感情が痛切に迫って
心が強く打たれるさまを表す意
原義
かなしげ かなしげ かなしげ
悲しい哉
悲しいことには
残念なことには
体力の差はいかんともしがたい
かなしい
悲しい
悲しそうに
悲しげに
sadly 
sorrowfully





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流離



213 名前:流離[] 投稿日:03/02/18 14:49 ID:HrwsLcG8
オリーヴ
掬いあげれば流れ落ちる海面のゼリーの色に
奇跡的に内包されたまま残る強く若い薫

オリーヴ
撥剌とした汗のような
潮に解かれては散る大粒の珠

私はそれを持ち帰れなかった
鉄塔の袂にある 過去の石で作られた我が家に
年老いていく犬の背を撫でながら暮らしている




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はなれてゆくとき



214 名前:はなれてゆくとき[sage] 投稿日:03/02/18 15:04 ID:LQ8djGqD
「センチメンタリズムは大嫌いだ」
と
こぼしたその口に
口づけする私のことを
あなたはどうおもう?

私は知っている
あなたのような人が
一番センチメンタルだということを

それでもあなたは否定するでしょう
数え切れないほどの資料を持って
「僕は違う」というはずです

私の言うことが
当たるか外れるか
そんなことには興味はない

あなたがいまどう思っているのか
それがしりたいだけ




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へちま男



215 名前:へちま男[] 投稿日:03/02/18 16:16 ID:+TEH36AW
つまらないものですが。と、大きな包み紙
へそ曲げられて、ごま取られる前に
化粧箱ぶち破って、包み紙つんざいて
逃げ出す後ろ姿は、へちま男

それはあまりにも、つまらないものすぎる
そんなことくらい、自分が一番よく知っていた

女湯に逃げ込んだ、へちま男
あらこれがいいのよ、うふこれが一番よね
石鹸塗られて、やわらかい白肌へ
婆さんの皺も伸ばせ、黄色いへちま男

骨抜きにされて、水を抜かれたへちま男
あらいい感じだわ、うふ綺麗にしてちょうだい
化粧乗りを助けるため、乙女のすっぴんへ
存在を投げ出した、魚座のへちま男

乙女にも婆さんにも喜ばれ、利用されるだけ利用され
遂には洗面台の排水溝に消えたが、とても嬉しそうだった

生まれかわっても、きっとへちまで生まれる
ぼくはへちまだから、へちま以外のものにはなれないから

贈り物にされるなら、女性の元へだけ贈ってほしい
同性に贈られたと気づいた瞬間、ぼくはまた逃げ出そう

けっして男には価値を見出されないのだ、へちま男


216 名前:へちま男(続き)[] 投稿日:03/02/18 16:32 ID:FogvVZrd
それでもいいや、と笑いながら
男臭い黒土の畑の上、空間にぽんとお邪魔して
また生まれ変わってくるのだ、へちま男




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鶴



217 名前:鶴[] 投稿日:03/02/18 21:00 ID:JkyepYlt
笑わないことを砦にして
照りつける言葉を防ぐ
そういうのは幼いしるしだと
思わないでもなかったけれど

いつでも二・三拍遅れてしまうわたしの
こころの波際がもう
誰にも届かないというなら
もしもそうなら

満たされていた朝の折り鶴を
開いてゆく夜の指はふやけているから
息のつぎかたひとつによっても
破れて
しまいそうになる

そんな些細な仕事を、と
あなたがけして咎めずにいてくれたのは
無言の
愛撫だったのかもしれない

のばした
浅葱色の千代紙
飛び立つことのなかった
翼のかたちを残して




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笑う夏草たち



221 名前:笑う夏草たち(1)[sage] 投稿日:03/02/18 22:28 ID:PdlIu5GO
家に帰るといつも
笑顔で出迎えてくれた犬が
その日だけは横になったままで
名前を呼んでも起きなかったとしても

私は何度その光景を繰り返しても
失われたものを決して信じようとはしないだろう

何年経っても忘れられない日付がある
1997年7月27日17:

                  ジロは私の前では
眠ったことがなかった。一緒に行った家族旅行、ワゴン
車の中で一夜を過ごした時、眠る私を守るようにジロは
一晩中、私の傍で立っていた。

                      暑い夏だ
った。私は電気製品の部品を取り扱うアルバイトに追わ
れて、毎日を多忙の中で暮らしていた。あと三日だ。あ
と三日でアルバイトが終わる。夏休み最後の31日は、い
ままで遊んであげられなかったぶん、ジロといっぱい遊
んであげるんだ。

         いっぱい、遊んで、あげるんだ。

                        仕事
をしている間中、そして帰り道を歩く間中、熱射病で倒
されそうな生命を支えながら私は、ジロのことばかりを
考えていた。熱射病で死んだりしてないよね。大丈夫、
涼しい木陰にハウスはあるのだから。


222 名前:笑う夏草たち(2)[sage] 投稿日:03/02/18 22:31 ID:PdlIu5GO

                  お母さん。でも10
時から2時くらいの間は、太陽がハウスを襲うから、反
対側の木陰にジロを動かしておいてね。

                   家に帰るといつ
も、笑顔で迎えてくれるジロが、ハウスにいない。反対
側の木陰で、寝てる。寝てる。初めて見た、ジロの寝顔。

かすかに揺れた、背の高い向日葵。離れすぎたところに
置かれてあった水飲み器。私の心を突き放した、裏庭に
吹く風。固く張っていた、銀色の鎖。

                   私はジロの目や
口から入り込もうとする緑色の蝿たちを憎しみを込めて
追い払いながら、それでも奇跡を願った。いつジロが目
覚めてもいいように、蝿も蟻もやって来ない、物置小屋
の入り口に抱いていった。こんなに大きなジロが、こん
なにも軽い。ジロはギターじゃないんだから、だめだよ、
もっと柔らかく運ばれないとね。

                私はTVもつけずに御
飯を食べた。ひとりで食べた。お母さんがどこへ出掛け
たのかなんて知るはずもなく。きっとまたいつものよう
に、友達が訪ねて来て、話に夢中になって、そのまま一
緒に健康ランドにでも遊びに行ったのだろう。起きてよ、
ジロ。起きてよ、ジロ。ただそれだけを繰り返しながら
味のない御飯をひとりで食べた。食べたという記憶も残
らない御飯を。


223 名前:笑う夏草たち(3)[sage] 投稿日:03/02/18 22:34 ID:PdlIu5GO

        ドアを開けると、やはりジロは寝ていた。

私がはじめて泣いたのは、自分の部屋に入った瞬間だっ
た。誰も見ていないのに、我慢する必要はなかったのに、
なぜかそこまで堪えていた。それから五日ほどの間は、
一日の大半を泣いて過ごすことになった。

「しかしネロ
  もうじき又夏がやってくる
  新しい無限に広い夏がやってくる
  そして
  僕はやっぱり歩いてゆくだろう
  新しい夏をむかえ 秋をむかえ 冬をむかえ
  春をむかえ 更に新しい夏を期待して
  すべての新しいことを知るために
  そして
  すべての僕の質問に自ら答えるために」

家に帰るといつも
ラヴは私を出迎えてくれない



224 名前:笑う夏草たち(完)[sage] 投稿日:03/02/18 22:34 ID:PdlIu5GO
かつてジロのいたハウスの中で、尻尾のないお尻をこち
らに向けて、それでも耳と目だけはしきりにこちらを気
にしている犬は、私が近づいた途端、だまし討ちにする
ようにぶつかってくる。そっけないふりをしていても、
ちゃんと私にはわかっている。散歩中、私が建物の陰に
隠れると、ラヴは必死になって私の姿を探しはじめるこ
と。

ラヴの顔を見ていると、何も悲しくはないのに涙が零れ
てしまう時がある。去年産まれたばかりの彼女の若い肉
体の中に、蝿が潜り込む冷たさを感じてしまうことがあ
る。きっと15年。もしかしたら10年。あるいは明日にで
も。その時はやって来る。

きっと60年。もしかしたら40年。あるいは明日にでも。
その時が来るまでに、私はこの世に溢れている哀しみに
対して、答えることができるだろうか。答えたい。私の
ことばで。ジロのため、ラヴのためにも、そして私を置
いて行ってしまうすべてのものたちのためにも。

私が笑って歩き出せば、きっと彼らも笑いながら、私の
いなくなった夏をともに駆け回ってくれるだろう。

その時、きっと緑色の草原は、笑い声をあげるように揺
れているだろう。生命あった頃の、私たちのように。

~~~~~~~~~~~~~~~~~
括弧内、谷川俊太郎「ネロ」より引用




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道化



225 名前:道化 1/2[sage] 投稿日:03/02/18 23:36 ID:aeVdVqEZ
道化の眼に
人の色を見つける
見てはいけない
気付いてはいけない色に
僕はひどくうろたえる

愛想よく笑う仮面に
決して笑わない,眼

観衆は一挙手一投足に笑い,歓声を上げる

玉乗りに
ジャグリングに
マジックに

眼は,笑わない

ひたすらに,真剣に,
無表情に


226 名前:道化 2/2[sage] 投稿日:03/02/18 23:37 ID:aeVdVqEZ
愛想笑いの仮面がおどけ
観衆が笑い
僕は俯く

笑いの使徒は,
その中身は,

人であった

仮面が踊り
観衆が笑う中

僕は一人俯き
観衆に,仮面に,道化に
背を向ける


無表情に

道化の眼を宿して




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最終更新:2006年09月15日 02:48