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作品





三日月の香り



210 名前:三日月の香り 1/2[sage] 投稿日:02/11/03 03:22 ID:JdDeRMRH

だいだい色の三日月を見た
夕焼けの残滓をまっすぐ追う
仕事帰りの産業道路

ビターチョコで包まれたオレンジピールは
出産祝いのお返し
うまいなこれ 
感心していたあなた

大きなお腹で辞めたあなたの部下
何度も話題に上る
身籠もったのはいつだろう
あなたは忘れっぽいから

私は菓子を食べ尽くした
あなたの帰りを待ちながら


211 名前:三日月の香り 2/2[sage] 投稿日:02/11/03 03:24 ID:JdDeRMRH

彼女に焼き餅やいているんだろう?
唐突な問いはカミングアウトの響き

彼女のこと好きなの?
うん。

似たもの夫婦とよく言われる
外見も思考も無趣味なところも
違うのは隠し事の数
私のほうが一つだけ多くなった

鼻の奥によみがえった
カカオと太陽の香りは
コンビニの角を右に曲がれば消えるだろう

尾いてくる月を
私は振りかえらないようにして
次々とかすめる流星に目を射られ
無灯火の自転車のギアを上げた
あとは直進するだけだ




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釣れる月



212 名前:釣れる月①[] 投稿日:02/11/03 06:08 ID:/M8S5hNt
古びた公営住宅群を見下ろす
鉄塔を登ってゆく赤錆びた階段で
僕ぁ釣りをするんですヨ
こう寒い夜に腹の虫が鳴くと
どうもひもじくて叶わない

女と同棲している安アパートの鍵に
マフラーの毛糸をほどいて括りつける
冷えた暗闇に放り投げて
腹の赤い鮭が釣れるのを待っているが
何度放っても薄っぺらな満月しか釣れない
ツレナイ

掌についた月の金属的な匂いに
唾が滲み出すんですよ

僕は月の奴はとても無情なんだと思っている






213 名前:釣れる月②[] 投稿日:02/11/03 06:14 ID:/M8S5hNt
いよいよ腹の虫が騒ぎ出して
気休めに何かご馳走を思い描いてみるとする
白い米に白和え
貧相なイマジネーションを恥じますよ

この星の何処かに月の欠片があるってねぇ
僕はそれは落雁みたいな味だろうなと思うけどどうだろう
そんなことを考えていたら
強い引きがあった

糸を巻いてみると
男に惚れる度に月に願掛けをするような
幼稚な女臭さを乳房に詰め込んだ女が釣れた
聞くとまだ願いが叶ったことは無いという

僕は月の奴はとても無情なんだと思っている









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月をめざす



216 名前:月をめざす[sage] 投稿日:02/11/03 08:46 ID:+s95pZ5X

ふたりもおぶうのはごめんだ
そんなこというから ますます赤んぼが欲しくなる

月の光にたっぷり濡れた夜道である

私も23になって
そろそろ孕んではみたいけれど

まずは月面を白く埋める 葛の花を摘みに向かっている

はやく摘まないとね と祖母はいう
わけはちっとも教えてくれない

みんな摘みとってしまったら 月はきっと見えなくなるのに

私は祖母の冷たい背におぶわれて
とりあえずロシアに向かっている

はやく赤んぼが欲しいから
白い月が いつも後ろにあることはいわない 

ロシアからはさらに北へ 60年ほどかけて月をめざす





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tama



224 名前:tama[sage] 投稿日:02/11/03 13:16 ID:A9WP3DaZ
自ら光を灯す街に
忘れないでと悲しく光る
誰もが忘れて夜がラメ入りの黒になったとしても
きっと僕は忘れない

雄と雌が溶解する部屋に
いいわねお二人 妖しく光る
ねろんねろんに溶け合ってお互いの境界線を忘れたとしても
きっと僕は思い出す

僕が人でなくなって
誰かが嗚咽混じりで泣いたとしても
貴方だけは無邪気に光って この世界を照らして
きっと 穏やかな波が全てを包み込む

第三世界で逢いましょう




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初めての月



228 名前:初めての月[] 投稿日:02/11/03 18:10 ID:8y/g2lcD

初めて
彼と触れあったのは
真夏の月を介してだった

深夜の携帯
ベランダに佇み
公園に腰かけて 
「ほらっ 見てごらん!」
呼びかけて来たのは
彼だった
それぞれ
黙って見上げた
ちょっと欠けた満月

何もかも吹き散らす
この世にたったひとつの
古(いにしえ)からの真珠の光
雲を友とし 雲と戯れ
人間の憂いを
見つめ続けてきた
悠久の深い明かりの下
しっかりと合わされた瞳
投げ込まれた彼の純な魂

地球を飛び出し
はるか宇宙
ひしと抱きあった

あれから
ずっとわたしのほうが
たくさん惚れている




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230 名前:月[] 投稿日:02/11/03 18:21 ID:XRLU2eMh
1
終わらない
生理の話を聞かされながら
けだるいままに流しこむ
晩餐は 幸福だ
あなたの生理の一部始終についての
卑近な感想のひとつでも思案しながら
緩慢に 箸をすすめては噛んでいる
あなたと共にする食卓の
陰影を 噛みしだいている

満ちる血の
めぐりが新しい線となって 降りてゆく
生と死のいましめの あふれるような
その色と匂いに
男のわたしがたとえ息を飲もうとも
女のあなたはむしろ活き活きとゆるんでは
煮込んだ肉を飲みこむのだ
それはもう
かすかな音で


231 名前:月[] 投稿日:02/11/03 18:22 ID:XRLU2eMh
2
あたたかい部屋の
しめった窓から見える冷たい月
あなたの肩ごしに輝くそれも 今夜は満ちている
ひと月の めぐりが新しい光となって
なめらかなあなたの肌を
すべり降りてゆく
そっと
箸を置き
まるで塑像のようなあなたの肌を
わたしの視線があぶらのようにたどり
台無しにしてしまう

あなたと月の 濡れるさまの
あまりによく似ていることにわたしは嫉妬し
満ちる血
満ちる月の
まだ消えないうちにあなたを抱きしめる
その色と
匂いにまみれたわたしは
つかのまようやく
濡れることが できる

3
月と
わたしたち
シーツに染みてゆく





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挑む月



235 名前:挑む月  (1/2)[] 投稿日:02/11/03 21:26 ID:2NFbUTAs

やはり窮屈そうだ
8階の喫茶室からだと
都心の病院
ぬるくなったコーヒー
切りとられたビルの谷間
青く透きとおる月あかりが
突き放されて
妙にしらじらしい
見えますか? 
その人は
見とどけた後
何も言わなかった

高層21階の病室
高熱の迷路
上ったり下ったり
ぶら下がったままの棘の点滴
息の上がった真っ赤な鬼気
一日も放棄されない仕事
何十年もやり続けてきたことが
すべてを打ち貫くように
平然とこなされる


236 名前:挑む月  (2/2)[] 投稿日:02/11/03 21:27 ID:2NFbUTAs

わたしが
泣いたのは一度きり
彼が口にした遺書
つい昨日まで
健康そのものの生が
死を真横においたとき

生まれて初めて
守り抜きたいと思った才能が
今ここにいる
闘いながらここにいる
リンパ腫よ
どれほどあなたが強じんに暴れても
気性の強い作品は殺せはしまい

毎日眺める
21階のエレベター前
踊り場からの景色
美しいほど平穏の極み
永遠の点滅のレインボーブリッジ
闇にゆったり沈むネオンサイン
首都高に連なる日常のヘッドライト

そこにも
ぽっかり月が浮かぶ
見るがいい
雄雄しく挑んでいる姿を




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亡骸の月



237 名前:亡骸の月[sage] 投稿日:02/11/03 21:41 ID:24dRwqY9
季節が坂道を下り
風が乾いてしまった

夜はクリスタルガラスの塊
月はデジタル処理された高解像度
降り注ぐ青い光は
幾千幾万幾億幾兆もの
プラスティックのパウダー

掬い取る手のひらを
青く照らす亡骸の月
ただ冷たく美しく

様々な
想いや
悲しみ
願いや
誓いが

息をひそめて
輝いていた




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238 名前:「月」[] 投稿日:02/11/03 22:21 ID:CCmMuQe/
冷えた風が一段と
    秋の夜空を栄えさせ
晴れわたった夜空に
      輝く夏の蛍のような星々
月がそれを照らし
      影と明かりをじんわり冷えた地面に伝える
コンクリートからは冷えが足を襲い
         野山からは生命の吐息が聞こえる
それを見守るまん丸に実った月
        手を合わせて拝んだ
           秋の実りと共に




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母なる大地



241 名前: 母なる大地[sage1] 投稿日:02/11/03 23:56 ID:pU+yzu9d

骨に似た乾く砂の上 宙は冴え 鮮やかな黒
星が鳴らすトライアングルの音が結晶化して降ってくる
夜を迎えて45時間目 クレーター・クラヴィウス


キーーンコーンテン・・・  ガッバキン トザザ・・・
“The great oddity”トマストマスは 淡々と月を穿つ
齢63の細腕で
つるはしを振るい氷層を突き スコップで脇に除ける
もうあまり汗も出ない体を玉兎の毛皮で防備して
高熱の昼 極寒の夜 お構いなしにゆっくりと

夜のため融けない氷が 積まれてテラの青を映している

「わしらの先祖が入植する前 ああ  ずーーっと前だ、
  月にも命があったと思うんだわ、なぁ?違うかトマソン?」
木精で悪酔いすると彼は 決まって私に絡むのだった
「月はずっと岩石だったわけじゃねぇ、わしが思うにだな、
  太陽の金烏こいつが。こいつが渡ってきてだなぁ(手振り)、
  木も草も茅もみーんな燃やして、そんで月は滅びたんだーわ!!
  な?な?大発見だろ!」
満面の得意で胸を逸らし その後は決まって母と踊った
肝心なところで鼻歌になる”Shall we dance?”を歌いつつ

リピートされる『大発見』と逐一議論を繰り広げるには
私も若くはなくなってしまい
  そして親父は今日も
氷の層にある筈の「証拠」 古代の月のすみびとを求めて
淡々と月を穿つ    小さくなった体で


242 名前: 母なる大地[sage2] 投稿日:02/11/03 23:58 ID:pU+yzu9d
“The great oddity”トマストマスが マイペースに氷をかく横で
“情熱の深読mist”ビリーが1.5倍速で動いている
諭しても聞こうとはしない彼の口癖は
「騙そうたってそうはいくか、金になるモンが埋まってんだろホントはよ? 俺がいただくぜ!」
小粋な妄想を掲げて 哀れなビリーは懸命に掘る
荒野にささやか 二つの影


何かうまくいかないと思う時 視線は自然と上へ回帰する
母なるテラは
どれだけ陰ろうともなお青く 無意識下の郷愁をくすぐる
先人より継いだ肉のどこかに 刻まれた楽園の記憶

唯一テラへ行ったかぐや姫はどんな『故里』を見たのだろう
親父の「海は茅原跡説」を遮って 投げてみる
“The great oddity”は息子に “great father”のような眼差しで
「先祖がどうであろうとは知らん わしらの故里はここ 月だ」と
素っ気無く断言した

名作『帝様と私』は破天荒なリメイクを受けたが
みんな どの作品も 最後に月に戻るのは同じ

  私たちの故郷は



243 名前: 母なる大地[sage3] 投稿日:02/11/03 23:59 ID:pU+yzu9d

ごく稀に ごく稀にだが
トマストマスとトマソンと その息子トマソンソンは揃い
クレーターの氷を かき出す    (そして気の毒なビリーも)
はつらつと 手持ち無沙汰に わきゃわきゃはしゃいで三者三様
つるはしスコップ小さなシャベル それぞれ気ままなペース
そんな時私たちは 母なるテラを見上げるでもなく
  一心に月に向かう
レゴリスと氷の冷たい土地に

私たちは厳格なこの養母が好きなのかも知れなかった




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最終更新:2006年11月05日 10:36