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誰かが死ぬのが怖いのか?

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誰かが死ぬのが怖いのか? ◆BOMB.pP2l.



「――お姉ちゃん。今度はこっちのを着てみなよ~」
「いや、俺は、ちょっとそういうのは……」
「お姉ちゃんなんだから似合うよ。それに、”お姉ちゃん”でいるうちは俺じゃなくて……」
「す、すまん……じゃなくて、ごめんねつかさ」

真っ白な照明が眩しい百貨店の片隅に、一組の微笑ましい少女達の姿があった。
一人は頭の上の黄色いリボンが目立つのほほんとした雰囲気の少女である柊つかさ
そしてもう一人は彼女の姉である柊かがみ――の身体をとある事情により持ってしまった6/氏という少女(?)

途中で目を覚ましたつかさの手を引いて目的地である百貨店へとやって来た6/氏であるが、
とりあえずはまともな服を探そうということになり現在は専門店街の一角にある”COSPA”で衣装を漁っていた。

「なんでよりによってコスプレなんか……というか、俺……でなく、私としては男物の方がありがたいわけで」
「だめだよ、お姉ちゃんなんだから~。
 それに今はお金を払わなくてもいいんでしょう~? だったら、普段とは違うのを着てるのも見たいな」

つかさはいそいそと店内を動きまわり何着もの衣装を持ってくる。
それは、鮮やかな青の着物にフリルのアレンジを加えた一見東方と勘違いしそうになるけど全然違う某天狗の衣装だったり、
モノクロの中に緑のラインが特徴的な某歌姫の衣装だったりと色々だ。

「だから、なんでそんなに際どいのばっか選んでくるわけ?」
「こなちゃんと再会した時、こなちゃんを喜ばせようかな~って。へへへ」

柊かがみを演じ、妹の相手をしながら6/氏は少しシリアスに目の前の状況を考える。
寝逃げでリセットなんてキャラソンがあるせいだろうか、どうにも柊つかさには逃避癖があるように見えた。
自分を姉と見立てて姉妹を演じ、殺し合いとは無関係なことばかりに興味を示しそれに集中――いや、逃避している。

「(初めてのロワだから仕方ないけど、どうにかかがみと再会ぐらいはさせてやらないとな……)」
「お姉ちゃん。ほら、今度はこっちのを着てみようよ~」

そんな場合でないのは確かであったが、現実に向き合わせると妹が壊れてしまいそうな気がして、
結局そこから抜け出せないまま6/氏は彼女の逃避の時間に付き合ってしまうのであった。


 ☆ ☆ ☆


そして、そんな偽りの姉妹を監視する影が二つ。

「あれが、お前の言っていた柊かがみとその妹である柊つかさか?」
「うん。間違いないよ。おじさんはっきりと覚えているからね」

柱に半身を隠して姉妹の楽しげな時間を覗き見ているのは、相羽シンヤと園崎魅音の二人だ。
探していた柊姉妹の姿を早々に発見できたので、今はこうして離れてその様子を伺っている。

「姉であるかがみとは面識がないんだろう?」
「でも、あれだけお姉ちゃんって言ってるなら間違いないよ。よく見れば似ているしね」

ふむ、と頷くシンヤだったが元々こういった矮小な人間同士のつまらないいざこざに興味はなかった。
付き合っているのは魅音が利用できそうだからという理由からで、柊姉妹そのものには何の関心もありはしない。
だがしかし、浮かんだ疑問を放ったままにするのも気持ち悪いのでシンヤはそれを尋ねてみる。

「お前が危険だと言ったつかさだが……、あれは最初の場所で道化に殺されたやつと同じじゃないか?」
「あるぇー…… そうだっけ? おじさんあの時は夢だと思ってたからよく見ていなかったよ」

人間という存在の程度の低さに内心いらつきつつもシンヤは魅音にもう一度繰り返す。
首輪を爆発させられて殺された少女と目の前にいる柊つかさはそっくりであったということを。

「どういうことだ? 最初に殺された女こそが本当の双子の姉だったりしないのか?」
「そんなことあるわけないよ。それだったらつかさがあんなに楽しそうにしているわけないじゃない」

利用価値――といっても、放送を使って村雨を追い詰めるなどというのはいわば余興にすぎない。
だとすればつまらないことに関わるよりかはいっそここで全員殺すかと、そうシンヤが思ったとき魅音がポンと手を叩いた。

「おじさん。全部解っちゃったよ~。いやー、最初っからおかしいと思ってたんだけど謎は全て解けた!」

何が解ったのか、どうでもいいことだがとは思いつつも、シンヤは好奇心に負け魅音にそれを問いただした。
そして魅音は歳の割にはけしからん大きさの胸をはって、彼女が解き明かしたという謎を語り始める。

「名簿を見た時に圭ちゃんの名前が二つあるのを見ておかしいと思ったんだよね~。
 それにさ、死んだはずの人の名前まであるしさ~。まぁ、それは生き返らされたってことでもいいんだけどね」
「何がいいたい?」
「うん、つまりはさ……別々の世界から同じ人間が連れてこられたってことなんだと思うんだよねー。
 ついさっきまでの殺し合いの中じゃあ、別世界でも同一人物はいなかった。けど、ここではそうじゃない!
 ……と、おじさんは今理解したわけさ」

聞かされたシンヤは魅音の説に沈黙してしまっていた。
別世界から色んな者達が集められたというのはいい。しかし別世界から同じ人物が集められたという部分に不安があった。

「(もし、ここにいる兄さんが別世界の兄さんだとして……それは本当の兄さんだと言えるのか?)」

殺し合いを強要されていることに対しては、シンヤは別に悲観してはいない。
むしろ兄との決着をはっきりした形で着けられるとありがたぐらいであった。だが、それが確かなものでないとすると……。

「どうしちゃったのかな~? 黙り込んじゃって」
「いや、お前の気にすることじゃない。それよりも、あの姉妹はどうする?」
「そうだねー、根はいい子だしさ。彼女自身と私達みんなの安全のためにも保護してあげるのがいいんじゃないかな」
「……そうだな」

結局のところ、実際に会わないことにははっきりしないと結論付けてシンヤは動き出す。
ここで3人を殺すという選択肢もあったが、しかし兄やこの世界に関する情報が少しでも得られるのならば
つまりは胸中の不安を少しでも解消できるのならば、またそこにも利用価値はあるだろうとそれを保留にした。

「ちょ、ちょっと待って! 誰かがつかさ達に話しかけているよ」
「あいつは――!」

二人が物陰で推論を交わしている間に、柊姉妹は最悪の危機へと陥っていた。


その危機の名前は――……


 ☆ ☆ ☆


「――げぇっ、ラッド・ルッソ!」

最終的に身を包む衣装を某赤い悪魔のものというところで落ち着かせた6/氏は、現れた人物を見て思わずそう叫んだ。
声色から危険だといいうニュアンスを感じ取ったのか、つかさは震える身体を6/氏へと押し付けてくる。

「よう、かがみちゃんよぉ! 相変わらずのんきなようで何よりだ」

怯える二人にかまうことなくラッドは凶悪な笑みを浮かべて一歩一歩近づいてくる。
まるでご馳走を食べきるのが勿体無いから少しずつ少しずつスプーンで掬い取るような風に、
または、革靴が床を叩く音で一つ一つ相手の心に恐怖を刻み込むような風に……。

「今度こそ、俺が死ねないお前に死ってものを叩き込んでやるからよぉ……じっくり、くっきりとなぁ……」

両の拳を持ち上げギラリとした眼を向けてくるラッドに、6/氏とつかさは怖気づきあとずさる。
だがしかし、壁に仕切られた店内は逃げ回るには狭く。そして通路へと続く出入り口にはラッドが陣取っている。
まさに、絶体絶命という状況だ。

「(く、くそぉ……また、かがみのせいで”誤解”されている! しかも、相手がラッド・ルッソかよ)」

一体”どこ”のかがみがラッド・ルッソなんかに喧嘩を売ったんだよと、内心で毒づきながら6/氏はこの危機を逃れる方法を探す。
狙われているのは柊かがみの姿をした自分自身で、相手は凶暴なことで知られるあのラッド・ルッソ。
見たところラッドは素手のようだが、例え鞄の中の聖剣を取り出したとしても自分に勝ち目がないのは明白だった。

「……つ、つかさは関係ない。逃がしてくれるなら俺はどうなってもかまわない――どうだ?」
「お姉ちゃん!?」

どうせ自分は古今東西そこかしこで酷い目にあっている身。襲われるのもロワに巻き込まれるのも慣れたもの。
だとすれば、せめて何も知らないつかさだけは逃がしてやりたい。
死んだら死んだで、どこか別の場所でかがみに文句を言えばそれでいいと6/氏は投げやりな覚悟を決める。

「……お前、誰だ?」

6/氏の言葉に、彼がかがみだと思っていたラッドは眉根に皺をよせて怪訝な顔をした。
自分が死ぬと覚悟の座った目――そんなものは彼が知っているかがみにはなかったものだ。
どう見ても柊かがみにしか見えない目の前の人間が、しかしどうしてもラッドからはあの不死身の柊かがみには見えなかった。

「なんだか……いや、ずっとおかしなことばっかりだが、ここに来てからはなおのこと……」

気まぐれに殺意を振るう男に怯える二人をよそに、ラッドは首を捻ってよく解らない現状のことを考え始めた。
いきなり殺し合いをしろと言われ、さてその通りにしてみたら途中でまた別の殺し合いが始まった。
そこにいたのは自殺志願者みたいなやつばかりで、そして会えたと思ったかがみはかがみではない。

さて、これはどうすれば答えがでるのかとそうラッドが思った時――


「ちょっと待ったぁっ! 彼女達は殺させやしないよ!」


――そこに園崎魅音と、仇敵を見つけ歓喜と怒気に身体を振るわせる相羽シンヤが姿を現した。


 ☆ ☆ ☆


「――いやぁ、危ないところだったねぇ」

とりあえずここまで来れば安心かなと、魅音は来た道を振り返る。さっきまでいた百貨店はかなり遠く小さくなっていた。

「た、助けてもらって感謝する、わ」
「……あ、ありがとうございましたぁ」

そして魅音の隣には柊姉妹である6/氏とつかさが息を切らせて立っている。

「でも、さっきの人大丈夫なのかな? あの白い服の怖い人に殺されちゃわないかな……」
「いやー、なんか縁がある人らしくてさ。
 それに”ここは俺に任せて行け”なんて言われたらそれを無下にするわけにもいかないしね~」

気楽を装いながら、魅音は自分が保護した”柊つかさ”をまじまじと観察する。
面を合わせればなんらかのリアクションがあるかと思われたが、つかさにこちらを知っている様子はなかった。
つまり、このつかさは自分が前の殺し合いで一緒にいたつかさとは別人であると推測できる。

「(……うーん。寂しい気もするけど、今度こそこの子を私が守り抜いてあげないとね)」

知っていることを話して不安がらせることもないと、魅音は心の中だけで密かに決意を固める。
また、迂闊に前回の事情を伝えてしまえば、それが彼女とは全く係わりのないことだとしても豹変する引き金になりかねない。
藪を突付いて蛇を出すような結果になってしまったら、後悔しても後悔しきれない悲劇が巻き起こってしまうだろう。

「……えーと、私は柊かがみで、こっちは妹のつかさ。あなたは?」
「おっと、おじさんとしたことが自己紹介がまだだったねぇ。つい知っている人かと思ってすっかり忘れていたよ。
 私は園崎魅音。魅音って呼んでくれればいいよ」

やはりもう一人の女性は姉のかがみだったと、魅音はこっそりガッツポーズを取った。
これで懸念していた柊姉妹による惨劇を未然に防ぐことができるのだ。
三村というせっかちな少年の言っていたことも気にかかるが、殺し合いが始まって早々に確保することに成功したのである。

「で、これからどうするつもり? 私達は友達を探したいんだけど」
「そうだねぇ、とりあえずはシンヤ――あ、さっきおじさんと一緒にいた男の人のことなんだけど、
 シンヤさんと決めた待ち合わせ場所に行こうかと思うよ。そこで彼を待つつもり」
「それってどこ……?」

つかさの問いに、魅音はくるりと向けると南に見える大きな建物をビシっと指差す。

「屋内プール――って、地図に書いてある場所だよ。もう見えてきたしさっさと行っちゃおうか」
「わ~、プールかぁ。なんだか楽しそうだねお姉ちゃん♪」
「え? ……ん、まぁ……ね」

じゃあ、突っ立っているのも危ないし歩こうかと、魅音が言ったその時――ドンと、短い爆音が背後から藍色の空へと響いた。
何事かと三人が来た道を振り返ると――


「嘘……」
「うわ……」
「ば、爆弾かな……」


――彼女達がさっきまでいた百貨店の上階の一部が吹き飛ばされ、ただもうもうと白煙が狼煙のように上がっていた。





 【F-4/市街地/1日目-早朝】

 【園崎魅音@ニコロワ】
 [状態]:右腕打撲
 [装備]:
 [持物]:デイパック、支給品一式、包帯@現実、不明支給品x1
 [方針/目的]
  基本方針:つかさが豹変しないよう柊姉妹を保護する。
  0:ぽかーん……。
  1:屋内プールで待機するか、百貨店に戻るかしてシンヤと合流。
  2:柊姉妹からは目を離さないようにし、危険からも遠ざける。
  3;かがみが魔女かも知れないので一応警戒しておく。
  4:放送局に向かった三村を追い、彼を止める。
  5:放送局に向かい、そこから情報(村雨が危険など)を流す。

 [備考]
  ※死亡直前からの参戦です。
  ※6/氏(外見かがみ)が本物のかがみだと勘違いしています。


 【6/氏(外見かがみ)@オールジャンルバトルロワイアル】
 [状態];健康
 [装備]:遠坂凛の服、カリバーン@アニロワ2nd
 [持物]:デイパック、基本支給品、コッペパン@らき☆すた、不明支給品x1
 [方針/目的]
  基本方針:このロワから脱出する。
  0;ぽかーん……。
  1:とりあえず魅音と同行する。
  2:つかさの姉を演じ、彼女がかがみに会えるよう努力する。
  3:このロワについて考える。

 [備考]
  ※ランキング作成人に会うらへんからの参戦です。


 【柊つかさ@原作】
 [状態]:健康、現実逃避気味
 [装備]:
 [持物]:不明支給品x3
 [方針/目的]
  基本方針:怖いことを避ける。姉や友人と再会する。
  0:ぽかーん……。
  1:6/氏と一緒にかがみや友人を探す。
  2:6/氏に妹として接する。


 ☆ ☆ ☆


崩壊した百貨店の上部。
朝の風に白煙が流されると、そこには破壊された壁の穴から湖を見下ろす一体のテッカマンが立っていた。
決着はついた――と、そう確信するとテッカマンエビルはテックセットを解きそこに凶笑を浮かべたシンヤの姿が戻ってくる。

「……――ク、クク……クハハハハハハ! アハハハハハハハハハハハハハハ!!!
 所詮は人間! どれだけ生意気な口を利こうともテッカマンの前では虫けらにすぎない! すぎないんだ!」

先の殺し合いの中でさんざん自分をこけにした人間を滅殺し、シンヤは明けてきた空に哄笑を響き渡らせる。
ラダムとテッカマンこそが至上であると。ボルテッカによって消滅できないものはないと。人間など取るに足らないと。

「なにが人間の力だ。”人間サマの力をナめた”――だと? ク、クハハハ――……」

シンヤは先の戦いを――いや、戦いとも呼べない一方的な殺戮を思い出して更に高い笑い声をあげる。
今回、シンヤは油断なくテックセットしてテッカマンエビルへと変身し、そしてラッドには前回のような武器はなかった。
素手の人間対テッカマン。勿論、まともな勝負になるはずもなくシンヤは傷一つ負うことなく圧倒的な勝利を収めた。

「……フフ。しかし、怒りを治めるためとはいえ力を使いすぎたか。まぁ、便利な道具があるからかまいはしないけどね」

ボルテッカの光を前に驚愕の表情を浮かべていたラッドの顔を思い出し、またシンヤは笑う。
しかし、一つの因縁を精算して気が晴れたとはいえ、再び消耗してしまったことには変わりない。
瓦礫の一つに腰掛けると、不思議なテーブルクロスを鞄から取り出して失ったエネルギーを回復する作業に入る。

「前座は退場した。次は……次は兄さんの番だよ」

シンヤはこの島のどこかにいるであろう兄へと思いを馳せる。
それが、自分の知る本物の兄かどうなのかそれは今は不明だ。だがしかしそれは些細なことだとも彼は思う。
ここにいる兄が本物であろうとどうであろうと決着をつけるだけだし、本物が別にいればまたそこに赴くだけだと。


相羽シンヤは、ただ兄のことを一心に思う。





 【E-4/百貨店/1日目-早朝】

 【相羽シンヤ@アニ2】
 [状態]:疲労(中)、空腹(大)、全身に負傷(特に両腕に痛み有り)-手当済
 [装備]:ブレードのテッククリスタル@アニ2
 [持物]:デイパック、支給品一式(食料無し)、レッドアイズブラックドラゴンのカード(南夏奈)@カオスロワ
     :グルメテーブルかけ@ニコロワ残り20回、ヤクルト@ニコロワ、きしめん@ニコロワ、他食料
 [方針/目的]
  基本方針:Dボゥイとの決着をつける。
  1:食事をとる。
  2:魅音と合流するために屋内プールへと向かう。
  3:合流した後は、魅音や他の人間を利用してDボゥイを探したり、村雨を陥れたりする。
  4:人間に正体がばれないように行動。ばれたり邪魔だと感じたら殺す。
  5:村雨、かがみを殺す。(現在、かがみは保留中。情報を聞き出してから殺す)
  6:Dボゥイの分のテッククリスタルを探し出し手に入れる。
  7;ゆたかと出合ったら……?

 [備考]
  ※参戦時期はアニ2、211話「The Incarnation of Devil」内でラッドに殺される前。
  ※力の制限、特にボルテッカに関しては大きな制限が掛けられています(威力低下、疲労感と空腹感の増加など)
  ※南夏奈のカードはテラカオスに殺される直前から参戦。制限はニコロワ準拠で問題ないかと。
  ※ラッド・ルッソを殺害したと思っています。


 ☆ ☆ ☆


「……――ゲハァ! ゲフッガフッ! く、くそ……あの野郎め……ハァ…………ハァ…………」

百貨店より広い湖を挟んで反対側の縁に、ボルテッカで消し飛ばされたはずのラッド・ルッソの姿があった。
彼は湖の中から這い出てくると、体力を使い果たしたのかそのまま地面へと横たわる。

「あいつ……くそ、なんだ……ハァハァ……あのインチキは…………っ……」

何故、彼がボルテッカを喰らって生き残ることができたのか? そしてどうしてこんなところにいるのか?
それは彼に与えられていた一つの支給品――鉄化のたねのおかげであった。
鉄化。すなわち身体を一切の攻撃を受け付けなくなる状態へとする不思議な種を飲み込んだことで
彼は反物質の対消滅反応による超エネルギー破壊光線の波をやりすごしたのである。

もっとも、ラッド自身は守られたがエネルギーの奔流そのものをしのぐことはできず彼は対岸まで吹っ飛ばされたのだった。
それも地面にまで到達していればよかったのだが、不運にも割かし水の深いところに彼は落ちてしまった。
なので、彼は鉄化が解けるまで水底で恐怖の時間を過ごし、その後は溺れかけ、辛うじて現在に至るとそういう訳である。

「死ななかっただけめっけもんか……けどよ……。俺はいつの間に”不死者”なんかになっちまっていたんだ?」

鉄化でボルテッカは防いだ。だがしかし、あくまでそれはそれだけのことだった。
そこに至るまでの格闘戦……というほど立派に成立はしていなかったが、そこでラッドは相当な重症を負わされていた。
なのに、今は一切の傷が幻だったかのように消え去っている。痕跡を残しているのはボロボロになった純白のスーツだけだ。

「それにあいつ、俺に殺されたことを覚えていなかった? どういうことだ? 解らないことが随分と多いじゃねぇか……」

そもそもとして、シンヤはラッドが殺したはずなのである。彼が別人でないことはその発言と態度から確実だ。

「……あの舐めきったピエロが生き返らせてとか、なんとか言ってたか」

正直に言葉を信じるのならば、あのシンヤは死んだ後に生き返らされたんだろうとラッドは想像する。
そして、ここまでに見かけた一人と一匹。随分悲観的だったが、一度死んだのにまた殺し合いとなればそれも納得だった。
こんな状況で浮かれて跳ね回っているのは、あのブラコンの自称宇宙人ぐらいなものかもしれない。

「けど、死んだ瞬間を覚えていないか……まぁ、ショックだろうしな。忘れるってのも……って、まてよ?」

そこで、彼の中に大きな疑問が生じた。それは、つまり――自分も一度死んでいるのではないか? ということ。
前の殺し合いからこの殺し合いに来た過程。
いやそれ以前に前の殺し合いにどうやって巻き込まれたのかということすら記憶は曖昧だ。
なんとなしにいつ頃というのは分かるが、しかしどの瞬間となると頭の中に靄がかかったように思い出すことができない。

「やばいやばいやばいやばいやばい……どういうことだ? もしかして俺はすでに”死人”なのか?」

そもそもとして、途中から別のゲームに抜き出されるというのは不自然だった。
だとするならば死んだやつらを集めて、生き返らせた上でまた新しいゲームを開催するというのが道理だと思える。
この殺し合いを開催した者達に本当に死を覆す力があるのならば、そうしない方がおかしいだろう。

「なんだってんだ。あの道化達はサタンの使いで、俺達は地獄で剣闘士を演じさせられている哀れな亡者だっていうのか?」

そう考えると途端に生や死といったものが曖昧に感じられてゆく。
ラッドは人一倍生きているということを尊く捉える男だ。故に絶対的な死というものから目を背けている人間が許せない。
もし、ここが想像する通りに地獄なのだとすれば、彼にとってこの世界は何ら意味を持たないものとなる。

「俺は……俺は、どうすればいい?
 嘘かもしれない生を見て、嘘かも知れない死を見続けるのか? 終わらない螺旋階段を下りてゆくように……?」

だったら……もしそうなのだとすれば――

「俺はこの世界の神を殺す!」


――それが、ラッド・ルッソの答えだった。

その存在が神であろうが悪魔であろうが関係はない。この島での生が偽りならば、それを司るものを殺せばいい。
結果として亡者は全て滅するのか、それとも天に昇るのか、はたまたこの世界そのものが崩壊してしまうのか?
そんなことすらどうでもいい。ラッド・ルッソはただ確かめるだけだ。そこに本当の死があるのか? そして――


――神様とやらが、自分は死なないなどと思っているゆるいやつなのかを。


 ☆ ☆ ☆


数分後、そこから純白のスーツを着た男は消え、新しく漆黒のスーツを着た男が現れていた。


「とりあえず、ここにいる連中全員ぶっ殺すか。でもってその次にあの道化達だ。そして――……」


その先に神がいるのならばそいつにも死ってものを教えてやろう。




不意に訪れる死を声高に伝える者――ラッド・ルッソが煉獄の中で新しく始動する。





 【C-4/水辺/1日目-早朝】

 【ラッド・ルッソ@アニ2】
 [状態]:健康、不死者(不完全)
 [装備]:タークスの制服@カオスロワ
 [持物]:デイパック、支給品一式、テッカマンエビルのクリスタル@アニ2
 [方針/行動]
  基本方針:参加者を皆殺しにして優勝。そして主催者達も皆殺しにする。
  1:殺して、武器を奪い、そして殺す。
  2:死にたがっているやつは殺してやる。死にたがってないやつも漏れなく殺す。

 [備考]
  ※238話「ディナータイムの時間だよ(食前)」の、死亡前から参加。
  ※自分が不死者化していると気づきました。


【鉄化のたね@オールロワ】
飲み込むことで、しばらくの間その者の身体を”鉄状態(アストロン)”にする種。
鉄状態中はまったく動けなくなるが、代わりにあらゆる攻撃を受け付けなくもなる。

【タークスの制服@カオスロワ】
「ARUKU武器庫」という武器屋の店先に並んでいたFF7に登場するタークスという組織の制服。
何の変哲もないただの黒スーツのセット。

【遠坂凛の服@現地調達】
6/氏(かがみ)が百貨店内のコスプレグッズ店(COSPA)で調達したコスプレ衣装。
Fateに登場する遠坂凛の衣装で、赤いタートルネックに黒のプリーツスカート、黒のハイニーソックス。

059:GHOST IN THE SHELL 投下順 061:神は神と出会い、神の武器を持つ
059:GHOST IN THE SHELL 時系列順 062:憂鬱アンドロイド
034:おまえら人間じゃねぇ!(読者視点) 園崎魅音 081:君は僕に似ている
050:シスターバルサミコス 6/(外見かがみ)
050:シスターバルサミコス 柊つかさ
034:おまえら人間じゃねぇ!(読者視点) 相羽シンヤ 087:ETERNAL DRAGON
054:衰弱と不満 ラッド・ルッソ 080:性欲の!熱いホモ!

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