アキラ、『光』を睨む ◆Rd1trDrhhU



 ふらつきながらも立ち上がった少年。
 それに気づいたジョウイが彼に駆け寄り、倒れそうになったその肩を慌てて支える。
 疲弊したサイキッカーを労わって……というのも、ないわけではない。
 だが、ジョウイのこの行動は、やはり打算に基づいたものだ。
 アキラが今の今までユーリルに対して行っていたマインド・リーディングの結果を、彼は一刻も早く知りたかったのだ。

 勇者だったはずの少年に何が起こったのか。
 なぜ彼はアナスタシアを殺そうとしていたのか。
 彼女はいかなる方法で、英雄をここまで破壊したのか。
 それらのことは、同じく英雄にならんとしているジョウイにとっては知らなくてはならない真実だ。
 だから彼は、アキラがユーリルの心の中で入手した情報を、彼が気絶してしまわないうちに聞き出そうとしていた。

 しかし、アキラはジョウイに寄りかかることなく。
 差し出されたその手を振りほどいて、歩き出す。
 おぼつかない足取りで、静かに眠るアナスタアシアへと歩み寄った。

「アキラ……?」
「何か、書く、もん……ある……か?」
 アキラの突然の要求に、ジョウイは怪訝な顔を見せるほかない。
 同じく不思議そうな表情をしたイスラが、参加者全員に支給されていた筆記具を投げてよこす。
 心身ともに限界を迎えようとしていたアキラは、受けとり損なって地面に転がってしまった筆記具をゆっくりと拾った。
 そのまま眠る少女のもとへフラフラと進み、その頭の傍にかがみ込む。
 彼女の整った顔にかかっている艶やかな青い髪をかき上げると、その顔に筆記具を走らせた。
 震える手で何事かを書き込んだ後……。

「……へっ…………。ざまぁ、み、や……が、れ……」
 アキラは息を切らしながら一度だけ満足げに笑い。
 直後、意識を失って、静かに倒れた。
 何事かと駆け寄ったジョウイとイスラが、相も変わらず寝息を立てているアナスタシアの顔を覗き込む。

「なんだ……これは……?」
 ジョウイがわけが分からないと言った風で、片眉を上げる。
 それは、呪いなのか。
 あるいは何かの紋章なのであろうか。
 それとも、自分たちの知らない、新たな概念か。
 二人の少年は、少女に印された字がもつ意味を考えた。

 だが、彼らが真実にたどり着くことは決してありえない。
 まさか、少年たちは思いつきもしなかっただろう。
 実はその文字の正体は、アキラがいた世界で流行っていた……ただの……。

「……僕が知るわけないだろ?」
 イスラが観念したように両手を掲げる。
 気絶した少女の額には、汚い筆跡で『肉』の一文字が刻まれていた。


【C-7橋の近く 一日目 真夜中】

イスラ・レヴィノス@サモンナイト3】
[状態]:ダメージ(中)、疲労(中)
[装備]:魔界の剣@DQ4、ミラクルシューズ@FF6
[道具]:確認済み支給品×0~1、基本支給品×2、ドーリーショット@アークザラッドⅡビジュの首輪
[思考]
基本:感情が整理できない。自分と大きく異なる存在であるヘクトルと行動し、自分の感情の正体を探る。
1:ピサロ、ユーリルを魔剣が来るまで抑える
2:次にセッツァーに出会ったときは警戒。
[参戦時期]:16話死亡直後(病魔の呪いから解かれている)
[備考]:高原、クロノ、マッシュ、ユーリル、ヘクトル、ブラッドの仲間と要注意人物を把握済み。


【ジョウイ・ブライト@幻想水滸伝Ⅱ】
[状態]:疲労(小)
[装備]:キラーピアス@DQ4
[道具]:回転のこぎり@FF6、確認済み支給品×0~1、基本支給品
[思考]
基本:更なる力を得て理想の国を作るため、他者を利用し同士討ちをさせ優勝を狙う。(突出した強者の打倒優先)
1:生き残るために利用できそうな者を見定めつつ立ち回る。可能ならば今のうちにピサロ、魔王を潰しておきたい。
2:座礁船に行く。
3:利用できそうな者がいれば共に行動。どんな相手からでも情報は得たい。
[参戦時期]:獣の紋章戦後、始まりの場所で2主人公を待っているとき
[備考]:ルッカ、リルカと参加している同作品メンバーの情報を得ました。WA2側のことは詳しく聞きました。
※紋章無しの魔法等自分の常識外のことに警戒しています。
※ピエロ(ケフカ)とピサロ、ルカ、魔王を特に警戒。
※制限の為か、二人が直接戦わなかったからか、輝く盾の紋章と黒き刃の紋章は始まりの紋章に戻っていません。
 それぞれの力としては使用可能。また、紋章に命を削られることはなくなりました。
 紋章部位 頭:バランス 右:刃 左:盾

アナスタシア・ルン・ヴァレリアWILD ARMS 2nd IGNITION
[状態]:気絶、疲労(大)、胸部に重度刺傷(傷口は塞がっている)、中度失血、自己嫌悪、キン肉マン
[装備]:絶望の鎌@クロノ・トリガー
[道具]:基本支給品、賢者の石@DQ4
[思考]
基本:生きたい。そのうち殺し合いに乗るつもり。ちょこを『力』として利用する。
0:気絶中
1:……生きるって、何?
2:あらゆる手段を使って今の状況から生き残る。
3:施設を見て回る。
4:ちょこにまた会って守ってもらいたい。
[参戦時期]:ED後
[備考]:名簿を未確認なまま解読不能までに燃やしました。
※ちょこの支給品と自分の支給品から、『負けない、生き残るのに適したもの』を選別しました。
 例えば、防具、回復アイテム、逃走手段などです。
 尚、黄色いリボンについては水着セットが一緒に入っていたため、ただのリボンだと誤解していました。
※アシュレーも参加してるのではないかと疑っています。


◆     ◆     ◆


「こりゃまた……」
 アキラがユーリルの心象世界に降り立った瞬間、彼の足裏にはジクジクと鈍い痛みが走る。
 眉をしかめながら足元を見ると、立つべき地面がすべてイバラで作られていたではないか。

「勇者の道、か」
 その声に、思わずため息が混ざる。
 天を仰げば暗雲が支配する空。
 どこか遠くからは雷鳴が響く。
 遥か彼方には微かに光るぼやけた希望が。
 そして、足元には……イバラの道。
 この世界は、ユーリルの歩んできた『勇者』という生き様をそっくりそのまま反映しているのだろう。
 すべてを犠牲にして戦ってきた、その人生の在り方を。

「そりゃあ投げ出したくもなっちまうよな」
 この空間にたどり着く前、つまりユーリルの心にダイブした瞬間のこと。
 アキラは、ある映像を覗き見てしまう。
 それは、勇者だった少年の脳内で何度も何度も再生されてきた忌まわしい記憶だった。

 うす暗い部屋で、妖艶に微笑むアナスタシア。
 彼女のひざの上では、赤毛の少女がスヤスヤと眠っていた。
 緩やかな曲線を描く唇が穏やかに語りだす、ファルガイアの神話。
 その締めくくりに勇者に投げかけられた疑問。
 そして生まれた、殺意。
 ユーリルに降りかかった事の顛末を、アキラは断片的にだが知ることとなった。

「あの女の言いたいことは分かったよ」
 サイキッカーは、トゲだらけの道の途中でうずくまる少年に語りかけた。
 災難に見舞われた彼への、多少なりともの同情を感じながら。

「…………」
 このいびつな世界の持ち主が、ゆっくりと顔をあげた。
 焦点のあわないその瞳が、訪問者の少年を音もなく拒絶する。
 しかし、アキラは臆することもなく言葉を続けた。

「確かに、お前はイケニエだ」
 まるでトドメを刺すかのように冷たく、少年は聖女に同意する。
 口元に含ませた笑みすらも、聖女のソレの完璧な再現だった。
 弱りきっていたユーリルの目が吊り上がり、アキラに対する怒りを表す。
 ガラスの割れるような音と共に、何度目かの遠雷が落ちた。

「やりたくもねぇ勇者なんかやらされてよ。
 大事なモンも全部犠牲にして……。
 他のやつらといやぁ、お前に縋りつくだけだ」
「だったら……ッ!」
 かつてアナスタシアに突きつけられた地獄。
 その再来に耐え切れなくなったユーリルが、怒りをこめて口を開く。
 唇端から滴りおちた血液が、大地のトゲをわずかに赤黒く染めた。

「だったらどうすればよかったんだよッ!
 英雄が生贄なら、あの女の言うとおりなら……」
「ふざけんじゃねぇよ」
 堰を切ってあふれ出した感情のままに、ユーリルが矢継ぎ早に言葉を連ねる。
 アキラは悲鳴のようなソレを遮って、「はッ」と馬鹿にしたように笑った。

 憤怒のボルテージをさらに引き上げ、勇者は目を血走らせる。
 しかし、彼を見下したアキラもまた、静かな怒りの火を心に灯していた。

「俺は『お前はイケニエだ』とは言ったさ。
 だがな、『英雄はイケニエだ』とは一言も言ってねーぜ」
 アキラの目がギラギラと鋭く尖る。
 直後、彼を中心として、その足元に炎の渦が巻き起こった。
 少年を守るように生まれ出でた火炎は、大地に広がる毒々しい植物を焼き払い、消し炭と化して空へと舞い上げる。
 そのまますべてを焼き殺すと思われたが、炎はものの数秒で鎮火した。
 結果として、アキラの立っている付近のイバラだけが燃え尽きる。
 彼は、直径一メートルほどの焼け野原に立っていた。

「……?」
「わかんねーか?」
 ユーリルには、アキラが何をしたのかも、何を言っているのすらも理解できない。
 その頭上を巡り続ける疑問符をまったく解決できないでいる。
 そんな彼に、サイキッカーは躊躇いもなく決定打を放った。

「お前は英雄じゃねぇっつったんだよ」
「…………ッ!」
 直球で放たれた暴言に、ユーリルの怒髪が天を衝き。
 言葉にならない咆哮が、巨大な稲妻をアキラに落とす。
 しかし、落雷は少年を避けるように捻じ曲がり、イバラの一部を黒く焦がすだけ。
 サイキッカーは涼しい顔で。
 それでいて、その心は相も変わらず燃え盛っていた。

「ついでに言やぁ、あの女が言ってた『剣の聖女』とかいうのもな」
「なッ…………?」
 何もかもを否定するような。
 そのアキラの口ぶりに、ユーリルは呆気にとられる。
 胸中を支配していたはずの憎悪すらも置き去りにして。

「ヒーローってのはな……そんなんじゃねえ」
 アキラが遠い空で微かに輝く光を睨む。
 思い返すのは、小さなころに見た特撮ヒーローのこと。
 孤児院で子供たちと見た、名前も忘れたプロレスラーのこと。
 湖に眠った機械仕掛けの女のこと。
 そして父親を殺した男のこと。

「あいつらはな、ブッ壊れてんだよ……」
 自身が憧れたものたちの生き様を脳裏に甦らせ、アキラはかつての高揚感を再燃せしめる。
 彼らの暴力的ともとれる異常な信念に、少年の目は曇天を照らすほどに輝いた。

「使命も犠牲も人類も関係ない。
 やつらはただテメーが救いたいモンを救えりゃ満足なのさ。
 他のヤツらの態度を見て、身勝手だなんだと抜かしてるお前らは……ヒーローじゃねぇッ!
 それは、ただのイケニエだ……!」
「…………」
 アキラが見てきた英雄は、自分の命を顧みようとはしなかった。
 他人の顔色を伺うものなど、ただの一人もいなかった。
 感謝の一つも求めようとはしなかった。
 彼らにとって、人を助けるということは『趣味』と呼べるレベルのものでしかないのかも知れない。

「そんなになるほど辛かったなら、勇者なんてやめちまえばよかったんだ」
「じゃあ……」
 我に返ったユーリルが、その心に怒りを呼び戻して立ち上がる。
 アキラのあまりの理不尽な理屈に、意義を申し立てるために。
 その姿は、勇者とは思えないほど頼りなく。
 衰弱しきった人間とは到底思えないほど、凛々しかった。

「じゃあ、世界を見捨てて逃げ出せばよかったのかよッ!?」
 喉を裂いてまで発したその叫びは、目の前の少年に向けてだけ発せられたものではない。
 彼を勇者に祭り上げたものたち。
 彼に頼るばかりで、何もしなかった人々。
 そして彼を勇者から引きずりおろしたアナスタシア。
 そのすべてに対して、彼の悲鳴は響いていた。

「助けたい人だけ助けて、残りの人たちの悲鳴は聞き流して……それでよかったのかッ!?」
「それでいいじゃねぇか。何がいけないんだ?」
 アキラが当然だと言わんばかりに胸を張る。
 彼の自信はその声にもハッキリと現れていた。
 ユーリルの鼓膜から伝わった振動が、全身を戦慄かせる。

「なッ……! じゃあ、救われない人たちはどうする?
 世界はどうなるッ?!」
「知るかよ」
 陰鬱としたユーリルの世界を切り裂くように。
 少年は正論をキッパリと切って捨てた。

「助けたくないなら仕方ねぇだろ。ヒーローのいねえ世界は滅ぶしかないんじゃねぇの?」
 アキラの言う『ぶっ壊れた者』。
 それは、見返りも感謝も求めずに、ただひたすらに救うもの。
 身勝手な弱者に怒りを覚えることもなく。孤独な戦場へも振り返らずに歩みだす。
 他の何を捨て去っても、大切なものだけは取りこぼさないもの。
 それを『ヒーロー』と、彼は呼ぶ。

 ブリキ大王は人類を、世界を救った。
 しかし、それは『ついで』だ。
 少年を、信念を、ひとりの女を、その女が愛した子供たちを。
 ある男が、それらを救った、その副産物として……人知れず世界は救われたのだ。

「そんな……そんなの……」
 ユーリルの体が震える。
 それは、アキラに気圧されたからではない。
 彼の世界が揺れる。
 サイキッカーの提示した可能性を殺すために。

「じゃあ聞くが、お前は『誰の』英雄になりたかったんだよ。
 世界の端っこにいる人間の生き死にまで、ぜーんぶテメーの力でどうにかするつもりだったのか?」
「…………」
 アキラが見てきた英雄たちにとって、「世界を救う」ことは手段であって目的ではない。
 自分が守りたい『誰か』にとっての英雄になることができれば、それでいいのだ。
 もちろん、その大切な『誰か』を救うために必要ならば、彼らは喜んで世界を救うだろう。
 しかし、その者たちにとって大事なことは、あくまでも『守る』こと。
 だからイケニエも糞もない。
 彼らは自らの欲望のまま、好き勝手に救っているのだから。
 自分のやりたいように、生きて、死んでいるのだ。

「俺は、松の代わりに……あいつが守ったやつらのヒーローになりてぇ。
 そのためにオディオをぶっ飛ばして、自分の世界に返らなくちゃならねぇんだ」
 アキラが言う『松』という人物のことを、ユーリルは知らない。
 その代わりに、彼はある一人の人物の姿を強く思い出していた。
 それは、この殺し合いで、一番最初に出会った少年。
 無口ながら、熱い心を胸に秘めた男。

 彼は、普通の人間だった。
 勇者の血統も、悲劇の過去も一切持ち合わせてはいない。
 それなのに、彼は世界を救ってみせた。
 他の誰に導かれるでもなく。
 たったひとつ……自分の意思で。

「もう一度聞くぞ、お前は誰のヒーローなんだ?」
 ユーリルは、ぐうの音も出せない。
 アキラの質問に対する答えが見当たらない。
 彼は、誰の英雄でもなかったから。
 ただ、提示された使命に導かれるままに世界を救った。
 本当に大切な人は、勇者になる前に既に殺されていて。
 その人たちとの思い出も、今となっては仮初で。
 彼には、誰もいなかった。

「お前がイケニエになるのはお前の自由だ。勝手にしやがれ。
 だがな、俺の邪魔をすんなら」
 アキラが、用は済んだと言わんばかりに踵を返す。
 来た道をテクテクと歩き出した。
 ユーリルは、その背中をただ呆然と見つめている。

「あの背中を否定すんなら」
 数歩進んでから、ふと立ち止まったアキラ。
 振り返ることなく、立ちすくんでいる生贄に呼びかける。

「お前を叩きのめしてでも、俺は前へ進んでやる」
 静かに放たれた宣言は、ユーリルに対する警告のようでもあり。
 まるで、自分自身への誓いの言葉のようでもあった。
 一度だけ大きく深呼吸してから、アキラはまた再び歩き出す。

「なんなんだよ、アナスタシアもお前も……」
 去り行く少年に向けて、ユーリルが吐き出した言葉は反論でもなく。
 どうしようもない、やり場のない怒りは、表しきれるものではなく。
 クロノに対して感じてしまった確かな憧れは、誤魔化しようもなく。

「なんなんだよォッ!」
 ただ、無性に気に食わなかった。
 アキラのことが不愉快で仕方がない。
 彼に何一つ反論できなかったことが、とてつもなく悔しかった。

 こんなとき、クロノならどうするのだろうか。
 彼は誰の英雄だったのだろうか。
 ユーリルは、喉をズタズタに引き裂きながら、そんなことが気になっていた。

【C-7橋の近く 一日目 真夜中】

【ユーリル(DQ4男勇者)@ドラゴンクエストIV】
[状態]:気絶、疲労(大)、ダメージ(中)、精神疲労(極大)、アナスタシアへの強い憎悪、押し寄せる深い悲しみ
[装備]:最強バンテージ@LAL、天使の羽@FF6、天空の剣(開放)@DQ4、湿った鯛焼き@LAL
[道具]:基本支給品×2(ランタンはひとつ)
[思考]
基本:アナスタシアが憎い
0:気絶中
1:アナスタシアを殺す。邪魔する人(ピサロ、魔王は優先順位上)も殺す。
2:アキラが気に食わない。
3:クロノならどうする……?
[参戦時期]:六章終了後、エンディングでマーニャと別れ一人村に帰ろうとしていたところ
[備考]:自分とクロノの仲間、要注意人物、世界を把握。
※オディオは何らかの時を超える力を持っている。
 その力と世界樹の葉を組み合わせての死者蘇生が可能。
 以上二つを考えました。
※アナスタシアへの憎悪をきっかけにちょことの戦闘、会話で抑えていた感情や人間らしさが止めどなく溢れています。
 制御する術を忘れて久しい感情に飲み込まれ引っ張りまわされています。
※ルーラは一度行った施設へのみ跳ぶことができます。
 ただし制限で瞬間移動というわけでなくいくらか到着までに時間がかかります。



◆     ◆     ◆


『エイユウッテナニ?』
 アナスタシアが、うるさい。
 ユーリルの心理世界からの帰り道にて。アキラはうんざりしていた。
 彼の表層心理は、この少女の声に支配されている。
 この空間では、同じ疑問が延々と鳴り響いていたのだ。

「俺が知るかっての」
 アキラが小さく毒づく。
 ユーリルには、好き勝手なことを言ってきた。
 だが、本当のところは、彼自身にもソレが正しいのかどうかは分からない。
 アキラだって、まだ誰の英雄にもなれてはいないのだから。

 無法松にも、アイシャにも、ミネアにも守られてしまった。
 ただ英雄の背中に隠れるばかりで、彼自身は誰のヒーローにもなれないでいる。

 ユーリルには、「立ちはだかるなら叩きのめす」などと啖呵を切ったものの……。
 ……彼の実力では、あの勇者には到底敵うはずもない。

 つまるところ、少年には課題が山積していたのだった。

「松……アンタいったい、どこで何をしてんだ?」
 しかし、それでも彼には希望があった。
 この島で、生きているだろう男であり、アキラが今度こそ救いたい人物だ。
 ユーリルと対話をしていく中で、彼はある決心をした。
 今度は自分が、無法松の英雄になろうと。
 そして、自分の世界に戻って、彼がしたように子供たちを守ると。

 それが、今の彼の支えであり。
 今まで散々守られ続けた少年が掲げる目標だ。
 その思いを胸に、彼はひたすら進む。

 決心した矢先に、無法松が再び殺されてしまうことになるなどとは……彼は考えもしなかった。

『ドウイウソンザイナノ?』
「うるせーっての」
 文句を言っても、不愉快な声は止まず。
 ただイライラだけが募っていく。
 もともと、アナスタシアのことは好きではなかった。
 そしてユーリルの心にアクセスしたせいで、彼女に対する感情はすっかり嫌悪感へと変じてしまう。

 目覚めたら、倒れてしまう前に、なんとかしてアナスタシアに一泡吹かせてやろう。
 そう誓って、アキラはユーリルの心を後にした。


【C-7橋の近く 一日目 真夜中】

【アキラ@LIVE A LIVE
[状態]:精神力消費(大)、疲労(大)、ダメージ(中)
[装備]:パワーマフラー@クロノ・トリガー、激怒の腕輪@クロノ・トリガー、デーモンスピア@DQ4
[道具]:清酒・龍殺しの空き瓶@サモンナイト3、ドッペル君@クロノ・トリガー、基本支給品×3
[思考]
基本:オディオを倒して元の世界に帰る。
1:気絶中
2:無法松の英雄になる。
3:レイ・クウゴ、アイシャ・ベルナデット(カノン)、ミネアの仇を取る。
4:どうにかして首輪を解除する。
[参戦時期]:最終編(心のダンジョン攻略済み、ストレイボウの顔を知っている。魔王山に挑む前、オディオとの面識無し)
[備考]:超能力の制限に気付きました。テレポートの使用も最後の手段として考えています。
※カノンの名をアイシャ・ベルナデット、リンの名をリンディスだと思っています。
※名簿の内容に疑問を持っています。
※無法松死亡よりも前です。
よって松のメッセージが届くとすれば、この後になります。

時系列順で読む


投下順で読む


114-4:いきてしんで――(ne pas céder sur son désir.) ユーリル 122:第四回放送・裏
アナスタシア
アキラ
イスラ 127:エラスムスの邂光現象
ジョウイ 127:エラスムスの邂光現象


タグ:

+ タグ編集
  • タグ:
最終更新:2015年08月24日 20:24