「貴女の瞳は闇夜に輝く星のようだ」もしくは「いかにして貴族の娘をたらしこむか」
豚と鶏に囲まれて育った男がみな人生の終わりまでそこに留まりたいと思っているわけではないでしょう。宮殿や城を見上げては憧れの念をつのらせる農家の息子も少なくありません。ですがこういった建物は他人の苦労をダシにして富と権力を手に入れた人々、すなわちAncariaの貴族様たちに貸し切りなのです。大理石のホールを歩き、金のスプーンで食事ができたら、どんなに素晴らしいことでしょうか。しかし彼等が貴族と会うときと言ったら、ただ早馬で走り去って行くところとすれ違って土埃をくわされる時だけなのです。
幸いなことに農家の若者でも、もう少し努力すれば誰でも、貴族の娘とお近づきになれたり、事によっては恋仲になることさえできるような裏技が、この世には存在します。
1. いかにして貴族と会うか
もちろんあなたがワイン職人の娘のマーサちゃんとブドウ搾り器の前で逢い引きしたように、プリンセスと逢うことはできません。貴族はもっと静かで平穏な場所を好みます。父親たちがそこで狩りをしたり政治を論じたりしている間、娘たちは音楽家の演奏に耳を傾けたり、侍女をからかったりしています。プリンセスに求婚しようと思うなら、貴族の少女が最も嫌うものは恐ろしい疫病でも戦争でもなく、退屈だということをよく覚えておくべきです。彼女の心を勝ち取りたいと思ったら、彼女を楽しませなくてはいけません。
始まりは彼女の近くで何度か、貴族の男が決してしないような骨折り仕事――木こりとか漁網の手入れとか、を見せるようにするだけでも十分です。男が上半身をはだけて力仕事をする様というのはそれだけで格好よく見えるものです。天気にかかわらずやりましょう!どのみち汗をかくことは損にはならないのですから。
少女がどれくらい退屈しているかにもよるとはいえ、貴族の娘と未来の婿が最初の出会いを果たすまではそう長くかかりません。多くの男たちはこの瞬間を恐がっているようですが、心配は無用です。そこまで難しい問題ではありませんよ。
2. いかにして貴族の娘に声をかけるか
まず第一に、彼女に挨拶してはいけません――向こうから話しかけてくるまで待ちましょう。そのときの返事はできるだけ短くします。ジョーク、攻撃的な発言、過剰な自己紹介も控えるべきです。わかったことが少ないほど、より彼女の興味はかき立てられるというわけです。概算で言って、彼女が100語話すたびに10語くらいで答を返すようにします。難しく聞こえるかもしれませんが、そのうち、そもそもあなたの発言は求められていないに等しいのだということがわかってきます。貴族の娘とは人の気を惹こうとするものであって、人の話を聞こうとするものではないのです。
最初の(当然ながら秘密の)逢い引きはロマンティックな雰囲気の、静かで世間から隔絶された場所がよいでしょう。木々の茂る小さな湖とか、もしくは似たような場所であれば、彼女に「素朴な人々は自分が想像もしなかったようなことを知っている」という印象を与えることができます。しかしくれぐれもその素朴な人々を彼女に近づけないように!豚飼いのマラクス君はいい仲間かもしれませんが、決して彼女と引き合わせるべき人物ではありません。あなたの両親に会いたいなどと彼女が言ってきても断るようにしましょう。子供の頃にかごの中で寝ていたところを見つけられたとか、捨て子で狼に育てられたとか言っておくのがおすすめです。
3. いかにして招待を受けるか
彼女のような生き方には興味がないというそぶりを見せて、最初の出会いの試験をパスできましたか?俗世の事柄には関心がなく、森の中の簡素な小屋で暮らす方が好みであるかのように思わせましょう。遅かれ早かれ彼女はこのダイヤの原石たるあなたを友人(今となってはもう退廃的に見える)に自慢したくてたまらなくなります。このあたりが美辞麗句を捧げるのに最適な頃合いです。心持ち控えめに、自然の事柄になぞらえた賛辞を贈りましょう。ただし間違って「君の瞳は牛よりも綺麗だね」などと言ってしまうと台無しになりますのでくれぐれも気をつけて下さい。
これらの簡単なアドバイスを実践すれば、お城の門は遠からずあなたに開かれ、もう二度とヤブ蚊だらけの納屋の裏で眠る必要はなくなることでしょう。
最終更新:2008年12月12日 16:32