四者の知略

 樹海の中、煌々と輝く陽の光を遮る大樹の下で寝息を立てる7人の男女達。
 7人の男女は皆、一様に疲弊していた。
 無理もない。平和な日常から切り離され、殺し合いの場に放り込まれてから、1日も経過していないというのに、既に何人もの死者が出ている。
 次に死ぬのは自分かも知れないという恐怖はいやでも精神を蝕んでいく。
 そして、最も精神を蝕まれ、既に他者への思いやりを失った少年は寝たふりをしながら、状況を注意深く窺っていた。
 安達明日夢である。明日夢は隙があれば、首輪に手を掛け、水のエルと同じように他の参加者の首を吹き飛ばすつもりだった。
 話しを聞く限り、今、変身できるのは明日夢しかいない。後は武器さえ封じれば、皆殺しにすることだってできるはず。
 だが、すぐにそれは無理だとわかる。1人を除き、皆一様に隙がない。
 加賀美の時と同じだ。立ち上がろうと動きを見せれば、皆、何らかの反応を示す。
 盾になる人間が増えたのはいいが、増えすぎては手に余る。
(何かいい方法は……)
 皆を離別させる上手い方法はないものかと、明日夢が思考していると、誰かが立ち上がった。
 寝込みを襲う気かと、明日夢は身を硬くする。
 しかし、その男は寝ている者には眼もくれず、南に向かって、歩き出した。
「どこへ行く、乾」
 男を制止する声。声を掛けたのは城、掛けられたのは乾だ。
「小便だよ」
「じゃあ、俺も付き合おうか。南への長い小便にな」
 城の言葉に乾は顔をしかめる。城には乾がどこに行こうとしたかわかっていた。
 真理を汚した放送の主の前にひとりで行き、ひとりで決着を着けるつもりなのだ。
「俺も行くって言ったろ。それにお前はまだ変身できない。生身のままで戦うつもりなのか?」
「俺にはもうひとつ、変身がある。俺は一刻も早く真理の仇を取りたいんだ!」
 なるほどなと、城は思う。乾は少し自棄になっているのだろう。
 自分の大切な人の遺志を継ぎ、戦うことを誓った矢先に、再び死を強く意識させられ、その人の願いを叶えなければならないという強迫観念に駆られているのだ。
 城も岬ユリ子が死んだことを聞かされた時には似たような状況に陥った。
 だから、こういう時の対処の方法は知っている。
「乾」
 城は乾の肩をポンと叩いた。そして、無理やり振り向かせると、握り締めた拳で、右頬を思いっきり殴った。
「なにしやが……」
 非難の声を上げようとする乾の胸倉を掴み、城は自分へと引き寄せた。
 乾の眼を真っ直ぐに見つめ、言葉を紡ぐ。
「いいか。お前が少女の願いを叶えたい気持ちはわかる。だが、慌ててどうする!
 仮面ライダーの使命は闇を切り裂き、光をもたらすこと。光をもたらそうとする奴が死んだんじゃ、何にもならねぇ。
 乾、お前は生き残らなきゃいけないんだぞ。お前に想いを託した少女の分まで生きて、したかったことを叶えてやらなきゃいけないんだ」
 かつて城自身が経験した想い。岬ユリ子への想い。それを真正面からぶつける。
 その言葉が持つ想いの深さを、乾の心は感じ取ったのだろう。カッとなっていた頭は幾分か冷静さを取り戻したようだ。
 乾はひとり進むことを諦め、大地へと腰を下ろす。
「わかった。あと一時間だな」
「ああ、あと一時間経ったら、皆で放送の奴を倒しに向かうぞ」
「それですが」
 突如、ふたりに掛けられる声。振り向くと、そこにはサングラスを掛けた黒づくめの男――木野がいた。
 彼の後ろを見ると、今の悶着が目覚ましになったのだろう。津上らも眼を覚まし、こちらに注目していた。
「城さん、私に提案があります」 
「提案?」
「ええ、南に向かうのは私と乾さん。後の皆さんは合流地点を決めて、そこに待機してはいかがでしょうか」
「おいおい、俺は必要ないっていうのか?」
「いえ、そういう意味ではありません。ただ、全員で行っても無駄だと言ってるのです。
 安達君や霞のジョーさんは生身ですし、天美さんは変身できるといっても女性。それに津上さんは傷が深く、しばらく安静にしておいた方が無難でしょう。
 そうなると実際に戦えるのは城さんと乾さんと私。ならば、城さんには護衛を。直接の仇であり、捕まっている天道さんの知り合いでもある乾さんと、治療ができる私とで南に向かいます。
 幸いにも私と、そして、乾さんには2通りの変身があります。余程の相手ではない限り、負けはないでしょう」
 城は木野の言葉に悩む。城は木野とほぼ同じことを考えていた。木野に言われなくても明日夢やあきらは残すつもりだったのだ。
 違うのは南に向かうのが、自分と乾のふたりを予定していたことぐらいだ。
「………」
「あなたが私を信頼していないのはわかります。私は橘を殺してしまった。そのことについて言い訳するつもりはありません。
 しかし、私も橘と交わした約束を守りたいのです。橘の願いを叶えてやりたいのです」
 悩む城を見て、木野は別のことで悩んでいると解釈したらしい。城が知らなかった事実を木野は告白した。
 木野に言われるまで、城は自分を襲ったライダー、仮面ライダーアギトが木野だということに気付いていなかった。
 それは今の木野が、自分を襲ったライダーと、既にまったく違う雰囲気を放っていたからだ。
 城は、橘の死という事実を悲しむと同時に、橘が命をかけて彼を戻したことも、また理解した。
 結果的に木野の告白は城の悩みを打ち払う。木野もまた自分らと似た事情をもつライダー。ならば、その後悔を断ち切る機会が必要だ。
「わかった。南の奴は乾とお前に任せる。俺は皆を守る。乾もそれでいいか?」
「ああ。事情はよくわからねぇが、あんたがいいならそれでいい」
「決まりだ。合流地点はここからも見えるあの一番高いビルの屋上にしよう。そこで俺たちは待っている」
 城の言葉に2人は頷いた。いや、2人だけではない。3人の会話を聞いていたジョー、津上、あきら、明日夢も頷く。
 しかし、明日夢の思惑だけは他の皆とは違っていた。
(なんとも暑苦しい人たちです。拳で分かり合うなんて何年前の思考なんでしょうか。
 でも、これで厄介払いができました。木野は人を殺したって言ってましたし、油断ができません。乾は不良みたいでなんか怖いです。
 その点、城は岬ユリ子が太鼓判を押すお人好し、利用するには最適な人種です)
 明日夢は心の中で笑みを浮かべる。
(ジョーさん。今まで守ってくれてありがとうございます。でも、もうジョーさんに用はありません。
 生身のジョーさんより、頑丈な盾が見つかりましたし、うっかり僕が水のエルを殺したことをしゃべられても困ります。
 津上さん、あなたのことはよく知りませんが、僕のために犠牲になってください。
 そして……天美)
 天美を見つめる明日夢の眼に負の感情が浮かび上がる。
(寝ている時、君は隙だらけでした。余程、この人たちを信用しているんでしょうね。
 僕は必死に生き残ろうと努力しているというのに、天美は何の努力もなしに守られているなんて不公平です。
 不公平は解消されなければいけませんよね)
 狂気は膨れ上がる。
 明日夢はあきらを知らない。あきらも心を闇に囚われかけたことを。
 あきらは明日夢を知らない。明日夢が心を闇に囚われていることを。

 一方、その頃――

 矢車たちはドラス打倒のための会議を終え、ドラスのいる研究所へと向かっていた。
 小沢澄子、氷川誠、南光太郎、結城丈二日下部ひよりリュウガ、秋山蓮、神代剣、草加雅人
 矢車想を含め、総勢10名。この戦いで生き残った参加者の3分の1にも及ぶこの集団は、それぞれが様々な思惑を持ちながらも、たった1人の参加者の打倒のために集っていた。
 それほどまでにドラスとは危険な存在だった。
 4人のライダーを相手にしながらも圧倒するPower。
 一瞬にして、6人に分身したナイトを砕くSpead。
 銃弾が切れたと見せかけて、相手の油断を誘うTactics。
 破壊された腕を一瞬にして再生させるAbility。
 そして、戦いを無邪気に楽しむ子供のような心innocence。
 全てにおいて完璧な存在。そんなドラスを倒す方法はないものと思われた。
 通常ならば。
 矢車たちは会議において、ドラス打倒の光明を見つけていた。その光明の名は『首輪』。
 ドラスは自分から宣言していた。自分の目的は首輪を外して、究極生命体に進化するためと。
 つまり、ドラスにも首輪の制限はある。
 ならば、ドラスを倒す方法は、10分間、ドラスの攻撃に耐え、制限が掛かったところで打ち倒す。
 それは、以前、矢車がグランザイラスに試みて、焦りから失敗した方法だった。
 だが、今度こそ成功するものと矢車は確信していた。今の矢車には戦うための力も、冷静な判断力も、頼れる仲間もいる。
 パーフェクトな今の状況であれば、失敗することなどあり得ない。
 しかし、それでも不安はある。
 ドラスの実力は4人がかりでも10分も持たなかった。10人がかりでも10分稼げるかどうか。
 そして、もうひとつ解き明かさなければいけない謎がある。ドラスの首に首輪はなかったという秋山とリュウガの証言だ。
 恐らくドラスは首を吹き飛ばしても死なない。それは驚異的な再生能力と腕を飛ばす能力がそれを証明している。
 首輪を外したがっている以上、首輪をしていないとは考えづらい。別の場所に首輪が付けられていると考える方が自然だ。
 人間の首のように、爆破されたら『死』しか有り得ない器官。そこに首輪が付けられているのだろう。
 ドラスを倒すためにはその場所を探ることが必須条件になる。

 ドラス戦という演目の舞台へと上がろうとする演者たち。
 だが、その内の1人は別の演目への出演を余儀なくされる。
「見つけたぞ、RX!」
 銀色の身体を持つ仮面ライダーによって。

 数分前――

 シャドームーンと相川始はF5エリアにあるビルの一室で休みを取っていた。
 第3回放送までのわずかな期間の同盟関係。そうはいっても、情報交換も共闘する気もない。ただ黙って時間が経つのを待つ。
 シャドームーンはそれこそ虚空を見続けているだけで、まったく動こうとしなかったが、始は体力の回復を待つまでの間、ディパックの中身を確認していた。
 今までは戦いに明け暮れていたため、まったく確認などしていなかったが、勝ち残るためにはあらゆる手段を講じることが必要だと思い直したからだ。
 食料として支給された乾パンをバリバリと食べる。効果など雀の涙ほどだろうが、食べないよりは身体の回復力は高まるだろう。
 食べながら、中身を確認した結果は『はずれ』。入っていたのはコンパス、地図、名簿など、恐らく他の参加者にも支給されたものと2枚のカード。
 初めにそのカードを発見したときはラウズカードかと期待したが、その期待はあっさりと裏切られた。
 使えない支給品を渡したことへのせめてものサービスのつもりなのか、カードにはメモが付けられており、使い道はわかる。
 1枚目のカードは『SURVIVE』と書かれたカード。赤い宝玉をあしらった金色の翼の絵が描かれている。
 龍騎というライダーをパワーアップさせるカードらしい。
 2枚目はギガゼールのアドベントカード。モンスターを呼べるらしいが、これも龍騎と同じシステムをもつライダーしか使えないと書かれていた。
 口が上手い奴なら交渉に使えるかも知れないが、自分には敵を強化させるだけの無用の長物だ。
 始は2枚のカードを破り捨てようと力を込める。その時、傍らに置いておいた首輪探知機に反応があった。
 1つの丸は2つ、3つとどんどん増えていっている。
「これは」
「どうした」
 何事かとシャドームーンが問いかける。
「外に誰かいる。方向からいって、こちらに向かっているわけではなさそうだが、1、2、3……全部で11だ」
(群れていることから考えて、放送の主を倒しに向かっているといったところか)
 始は窓から、探知機に映し出された集団の正体を確認する。
(ドクトルGと一緒にいた奴らか)
 幾人かの顔には見覚えがあった。スーツを着た真面目そうな中年の男性。背が高くがっしりとした警察官。
 そして、白いジャンバーとスラックスを着たさわやかそうな青年。
(あいつはビルの屋上にいた……やはり生きていたか)
 仕留め損なった獲物を前に、ジョーカーとしての本能がわずかに首をもたげる。
 だが、始はその本能をヒューマンアンデッドの力で抑え込む。
(落ち着け。ここで襲撃したところで、逃げられるか、返り討ちにあうか。狙うのは奴らと拡声器の奴との戦いが終わってからだ)

―カチャ―

 響く足音。
 いつの間にか、シャドームーンは始の隣へと来ていた。
 ただならぬ始の様子に興味を引かれたのだろう。
 始はシャドームーンを見る。ふとそのエメラルド色をした眼が光った気がした。
「……見つけたぞ」
 シャドームーンは右手を振り上げる。
「見つけたぞ、RX!」
 そして、そのまま一気に振り下ろした。たちまち、砕け散る窓ガラス。
 始が止める間もなく、シャドームーンは窓を通り、外へと躍り出た。一直線に集団の中の一人へと向かっていく。
(殺し合う相手を見つけたのか?)
 始は窓際に身を隠し、シャドームーンの行動を観察する。
 シャドームーンの狙いは白いジャンバーとスラックスの男。以前、自分が仕留め損なった男だった。
(あいつがそうか。ならば、しばらく様子を見させてもらう)
 始はシャドームーンの戦いの行方をしばらく見守ることにした。


「フン!」
 シャドームーンの拳が南光太郎の頬を掠める。
 南はその腕を取ると、動きを封じ込めようとした。
 だが、変身前の南と能力を発揮しているシャドームーンとは力の差は歴然だった。南を片手で持ち上げると、放り投げる。
 投げられた南は弧を描き、壁へと叩きつけられた。
「またお前か」
「南さんに手出しはさせません」
 追撃を掛けようとすつシャドームーンにリュウガと氷川がタックルを仕掛ける。
 しかし、その程度ではシャドームーンの歩みは止められない。
「邪魔だ」
 ふたりの頬を軽くはたく。それだけでふたりの身体は吹き飛ばされ、地面へと転がる。
 大地に伏せる南光太郎の前に立つシャドームーン。
「変身しろ、南光太郎。今こそ、お前との決着をつけてやる」
「信彦」
 南光太郎は勢いよく立ち上がると、右手を天高く突き上げた。変身するつもりなのだ。
「変……」
「ヌッ!?」
 南光太郎が、変身を決意し、言葉を紡ごうとした瞬間、シャドームーンに纏わりつく、小さな蜂型のメカたち。
 矢車が放ったゼクトマイザーより放ったマイザーボマーだ。
「逃げるぞ、南君。君は貴重な戦力だ。ドラスと戦うまでは変身は温存しておかなければいけない」
「矢車さん!……信彦、俺は他にやらなくてはならないことがある。決着を着けるのはその後だ」
 言うが否や、南光太郎はシャドームーンから逃げ出す。他の矢車をはじめとした9名も思い思いの方向へと駆け出し始める。
「おのれぇ……ふん」
 シャドームーンの手より放たれる閃光。それは地面に着弾すると地から沸き出でる稲妻となり、マイザーボマーを一瞬にして破壊する。
 破壊の際にマイザーボマーは爆発を起こすが、シャドームーンへのダメージは微々たるものだ。
「小癪な真似を」
 既に南光太郎たちは逃げた後だった。その場には誰一人いない。それでもシャドームーンは諦めるつもりはない。
 遮二無二、追い駆けようと、南が向かった方向へ駆け出そうとする。
「待て、そっちじゃない」
 そこで、始は物陰から姿を現した。首輪探知機のディスプレイとシャドームーンの顔を交互に見る。
「あの白いジャンバーの男がお前の言っていた殺し合う男か」
「そうだ。あいつは南光太郎。仮面ライダーBLACK RXだ」
 やはりかと思うと同時に、始は今がチャンスだと理解する。首輪探知機には南光太郎を特定する反応が映し出されている。
 交渉の基本は需要と供給の見極め。これを使えば、シャドームーンを利用することができるはずだ。
「……交換条件だ。今、俺には南光太郎の居場所がわかる。場所を教える代わりに、ひとつ、俺からの条件を聞いてもらう。どうだ?」
 シャドームーンは始が成か否かの不安を感じる暇さえなく、即答した。
「いいだろう。その条件は後から聞いてやる。早く南光太郎の場所を教えろ!」
 交渉成立。
「わかった。南光太郎は、誰かの首輪を持った男と北に向かっている」
 始とシャドームーンは首輪探知機が指し示す方向へと向かっていった。


「ここまで来れば大丈夫だろう」
「………」
 結城と南は建物の陰に隠れ、呼吸を整える。
 バラバラに逃げ出した南たち。だが、待ち合わせの場所は決めてあった。
 研究所に向かう途中で何者かに襲撃を受けたら、いくつかのチームに分かれ、目的地を目指す。
 矢車の計画通りだ。
 南は仮面ライダーとしての先輩に当たる結城丈二と逃げ出した。
 いや、正確には結城に引っ張られて、逃げ出した。
 南は矢車が止め、結城に引っ張られなかったら、シャドームーンと変身し、戦うつもりだった。
 今は短慮だったと反省しているが、シャドームーンを眼の前にして、気持ちが抑えきれなくなってしまった。
 ゴルゴムとの戦いの中、自らの手で命を奪った親友の復活。今の彼は記憶を失い、自分を倒すことのみを目的としているという。
 彼との戦いを避けることは出来ないだろう。だが、逆に考えることはできないだろうか。
(今の記憶を失ったシャドームーンなら、信彦に……。いや、今は考えるのはよそう。それより、早くドラスを倒さなければ)
「すいません、結城さん。ようやく落ち着きました。早く矢車さんたちと合流しま」
 光太郎の声を遮り、突如、轟音が鳴った。反射的に上を見上げると、建物が瓦礫と化し、南たちへと襲い掛かってくる。
 南と結城は紙一重でそれをかわすが、続いて、その隣の建物が爆ぜた。
「これは!」
 崩れ落ちてくる瓦礫を必死で避けていると、声が響いた。
「出て来い、南光太郎!そこに居るのはわかっている!」
「信彦」
「どうして、ここが」
 シャドームーンの手に握られた首輪探知機そこには首輪の反応が3つあった。
 そのうちの2つは不自然なほど近づいている。
 首輪探知機では誰の首輪かまではわからない。だが、首輪なら生死を問わず反応する。
 始は戦闘の最中、その特異な反応を示す人物を確認していた。そして、その人物が南光太郎と逃げるのを確認していた。
 その人物とは結城丈二。その不自然なほど近づいている2つの反応とは結城の首輪と結城が持つドクトルGの首輪の反応だ。
 シャドームーンは南光太郎を追ってきたのではない。南光太郎と一緒に行動しているであろう結城丈二を追ってきたのだ。
「早く出てこないと、風見志郎が巻き添えになるぞ!」 
 結城丈二を風見志郎として、認識しているシャドームーンは、風見志郎の名前を出し、南光太郎に揺さぶりを掛ける。
 暗に言っているのだ。お前が出てくれば、風見志郎は助けると。
 しばし待つが南光太郎は姿を現さない。もう一度、脅しとして、シャドービームを放つ。
 強力な破壊力を秘めた閃光は建物を吹き飛ばし、爆風を巻き起こす。
 その爆風に紛れて、走る影がシャドームーンの瞳に映った。
(白いジャンバーに、白いスラックス。南光太郎か)
 シャドームーンは念のため、首輪探知機で確認を行う。
 逃げていく影の反応はひとつ。その場から動かないのはふたつ。
(風見志郎を逃がすため、場所を移すつもりか?いいだろう)
 シャドームーンは逃げていく影を追った。

 シャドームーンがその場を離れ、眼で確認できないほど遠ざかってから、その場に残った男は動きだした。
 紺色の上下のスーツ。だが、それを着ているのは、顔にしわが刻まれた中年ではなく、若い青年だった。
「結城さん、無事でいてください」

「どうやら、また貴様にはいっぱいくわされたようだな」
 シャドームーンの前には白いジャンバーとスラックスを着た結城丈二の姿。
「それは首輪の探知機かなにかだろう?この首輪には特殊な金属が使われていた。恐らくそれを探知しているのだろう。
 そして、それは誰の首輪かまでは特定できない。特定できるのなら、俺が風見志郎とは言わないはずだしな」
「どういう意味だ?」
「俺は風見志郎ではない。俺の名前は結城丈二、ライダーマンだ」
 結城の告白を聞き、シャドームーンは自嘲気味に笑う。
「フッ、一体貴様は俺をどれだけ愚弄すれば気が済むのだ?」
「すまない。……すまないついでだ。今は南を見逃してくれ。今から俺たちはドラスという強敵に立ち向かわなければならない。
 ドラスを倒すためにはどうしても南の力が必要なんだ」
「……仕方あるまい。探し出したとしても、もう戦える時間は限られている。今はRXを倒すのは諦めよう。しかし!
 風見志郎!いや、結城丈二!代わりにお前を倒し、傷つけられた誇りを癒すとしよう」
 シャドームーンは両手にシャドーセイバーを召喚し、臨戦態勢を整える。
「わかった、相手になろう」
 結城丈二は思う。思えばシャドームーンとはなんとも奇妙な縁だ。彼は南を除いては、危害を加えない限り、誰も襲わないはずだった。
 それが自分のせいで2度もチームを危険に晒すことになってしまった。
(シャドームーンに責はない。全ての責任は俺にある。今こそ、責任を取るべきときだ)
「ヤァ!」
 結城丈二はライダーマンマスクを高く掲げ、それを被る。
 たちまち、ライダーマンの身体には黒のスーツ、銀のブーツ、銀の手袋、赤い装甲が実体化し、装着されていく。
 黄色いマフラーがたなびいた時、結城丈二は仮面ライダー4号、ライダーマンへと姿を変えた。
「パワーアーム!」
 ライダーマンは右腕を弧状の刃に変化させると、シャドームーンに挑みかかっていった。
 上からの力を込めた一撃。シャドームーンはシャドーセイバーを持ちながらも、あえて左腕のエルボートリガーでそれを受け止める。
 金属と金属のぶつかり合う音が響く。ライダーマンは更に力を込めるが、シャドームーンの左腕は身じろぎひとつしない。
「くっ」
 上からの攻撃を諦め、ライダーマンは腕を戻すと、今度は腹目掛けて、その腕を横薙ぎに払った。
 その攻撃はシャドームーンに命中し、火花を散らせる。
 だが、シャドームーンは呻き声ひとつ上げない。
「ドリルアーム!」
 取り出したカートリッジを挿しこませると、右腕は刃から対象を穿つドリルへと一瞬にして、その形状を変化させる。
 ライダーマンは素早くシャドームーンの腹へと、その一撃を放った。
「甘いな」
 ドリルが届くより早く、左手に握られたシャドーセイバーがその進路を遮る。先程のパワーアームと同じく、ドリルアームも身じろぎひとつしない。
 振り下ろされる右腕。シャドーセイバーはドリルアームに炸裂し、ドリル部分を真っ二つに叩き切った。
「なにっ」
 動揺するライダーマン。その隙を逃さず、繰り出された回し蹴りを頭部に受け、ライダーマンは地面へと転がされた。
「やはり以前とは大違いだな」
 以前、シャドームーンが敗北したライダーマンとの戦い。
 ライダーマンは今とまったく同じ攻撃を繰り出したが、シャドームーンの結果は異なるものだった。
 パワーアームの攻撃にエルボートリガーは砕け、腹は切り裂かれ、ドリルアームの攻撃で腹を貫かれた。
 だが、今回はパワーアームの攻撃を受け止め、腹への攻撃は我慢できる程度、ドリルアームの一撃も余裕で防ぐことができた。
「さて、止めをささせてもらうぞ」
「くっ、マシンガンアーム!」
 迫るシャドームーンを止めようと、ライダーマンはマシンガンになった腕を構えて、撃つ。
「無駄だ」
 放たれた無数の銃弾をシャドービームで瞬時に消し去り、次いで、ライダーマンの身体を焼く。
 ライダーマンからは声にならない叫び。
 やがて、痛みに悶えるライダーマンの横にシャドームーンが辿り着く。
「ロープア……」
「遅い!」
 高速の斬撃。鋭き赤の刃はライダーマンの右脇から入り、そのまま右肩へと突き抜けた。
 マシンガンからロープの射出装置へと変化しようとしていた右腕は、血を吹き上げながら、宙へと舞う。
「うぉぉぉぉぉぉぉっ!」
 銀の装甲に飛び散る赤。ライダーマンの返り血だ。
 シャドームーンは自分の眼に付いた血を拭うと、脚でライダーマンの胸を抑えて、仰向けに固定させる。
 狙いは今も疼くライダーマンに貫かれた場所。腹だ。
「死ね」
 振り下ろされるシャドーセイバー。ライダーマンのスーツを貫き、皮膚を貫き、肉を貫く。
 そして、やがてそれはもう一度皮膚を貫き、地面までを貫いた。
「げふっ!」
 ライダーマンの露出した口から血が吐かれる。
 シャドームーンはこれでようやく借りを返したことに安堵を覚えた。だが、それはライダーマンの一言で徒労に終わる。
「こ……これで満足か、シャドームーン?」
 ライダーマンは血を吐き出し、苦しみに顔を歪めながらも、それに反するかのように笑っていた。
「貴様」
 シャドームーンは理解した。ライダーマンはわざと自分に負けたのだ。わざわざ以前の自分との戦いを再現して。
 だが、ライダーマンが何故そのような行為に及んだかまでは理解できなかった。
「済まなかったな……お前を……利用…したりして。騙す…つもりはなかったんだが、あの時は……いや、言い訳だな。
 南はドラスを倒し、全てが…終わっ…たら、お前と決着を着けるだろう。それまで待ってはくれないか?」
「あいつの都合など知らん」 
「……そうか。ならシャドームーン、聞くが…南を倒したその後、お前はどうするつもりだ?」
 天道からの時と同じ質問をされ、シャドームーンは答えに窮する。
 あれから何度か考えたが、シャドームーン自身は答えを見つけることは出来なかった。
 だからこそ、RXを倒すことで、その答えを見つけようとしているのであるが。
「答えなんて……出やしない。お、お前の生きる目的は、み、南を倒すこと。ならば、もし南を倒したら……お前は存在意義をなくし、死ぬだけだ……
 だから、俺は頼む。もし南を倒したなら、お前は……南がやりたかったことをやって欲しい。それが南を倒すお前の責任だ」
「なにを馬鹿なことを」
「……氷川君を、ひよりちゃんを、みんなを……守ってやってくれ」
 ライダーマンは力を使い果たしたのか、それきりしゃべらなくなった。
 すると、自然と変身が解かれ、結城丈二の姿へと戻っていく。
 結局、ライダーマンに勝っても、シャドームーンの誇りが晴れることはなかった。
 もし、ライダーマンがわざと負けなかったとしても、自分の勝利は揺るがなかった。それはわかる。
 だが、わざと負けられるのは、やはり誇りが許さない。この誇りを晴らすためにやることは一体何なのだろうか?
「殺したのか?」
 いつの間にか、始はシャドームーンの後ろへといた。
 シャドームーンとライダーマンの戦いを見ていたのだろう。
「いや、急所は外しておいた。こいつには散々利用されたからな。今度はこちらが利用する番だ」
 急所が外れたのは偶然だった。本当は殺すつもりだったが、たまたま逸れたのだ。そうたまたま。
 だから、シャドームーンは自分の言葉通り、結城を利用するべく、肩へと担ぎ、歩き出す。
「どこへ行く」
「先程の場所でRXを待つ。お前は放送が行われた場所まで行くのだろ?ならばRXに俺のいる場所を伝えておいてくれ。
 結城丈二を返して欲しければ、来いとな」
「構わないが、さっきのと合わせて、貸しは2つだぞ」
「ふっ、借りは必ず返す。必ずな」
 会話が終わると、シャドームーンは南へ、始は北へと去っていった。各々の目的を果たすために。
 シャドームーンは結城丈二の言葉を戯言として捨て去ることにする。
 だが、その言葉は少しだけ、シャドームーンの中の何かに引っかかった。

 そして、研究所を目指すチームがもう一組――

 海岸を疾走するGトレーラー。
 赤きサイレンを回しながら走る青き車体の中では、来たるべき時に向けての会議が行われていた。
「計画は以上だ」
 黄金の仮面をつけ、将軍の名に相応しい貫禄をもった男、ジャーク将軍。
「多数の獲物が狩れるわけだな。異論はない」
 純白の服に、王子たる気品と狩猟者の如き鋭き視線の青年、ガライ。
「俺もだ。制限が掛かっている今の状態では、それがベストであろう」
 所々焼け焦げた真っ白いタイツを身に纏い、血管が浮き出る顔に透明な仮面をつけた魔人、ジェネラルシャドウ。
 三人は不適に笑う。来たるべき時、行われるだろう殺戮の宴への期待に。

 四者が目指すのは研究所。戦うべき敵はドラス。


パーフェクトミッション

 時計の針がチクタクと鳴る。
 矢車の右腕に付けられた腕時計の長針は11を指し、短針は5を指そうとしていた。
 作戦決行の時間まであと5分。
 矢車と草加、リュウガの3人は、研究所からわずかに離れた木陰に身を隠し、周囲を見張っていた。
 ドラスの放送に呼び出され、突入する者がいれば、行動を止め、仲間にするためだ。
 ドラスに少人数で挑むのはあまりにも無謀。こちらとしては仲間はひとりでも多い方がいい。
 そして、もうひとつ。これは矢車と草加の間で交わされた話で、他の仲間たちには内緒だが、自分たちの敵が来るようなことがあれば、突入させ、捨て駒にするためだ。
 だが、残念なことに今までに誰ひとり、研究所には姿を見せていなかった。
 程なくして、長針は12を指す。
「5時だ。パーフェクトミッション開始」
 研究所の前に1人の男が立つ。
 年の頃は40前後。スーツで身を固め、精悍な顔の男。
 彼は研究所の扉を開け、中へと入っていく。ドラスの弱点を探るために。
 パーフェクトミッション『序章』。矢車は自分の作戦が成功するのを祈った。


 男は研究所の中に入るとスタスタと歩みを進めていた。
 研究所の中でも戦闘が行われたのだろう。壁などを見るとへこみやヒビが見て取れる。
「いらっしゃい、おじちゃん」
 甲高い子供のような声。歓迎の言葉を上げながら、その声の主が姿を現した。
 くすんだ鋼色の身体と昆虫を模した『怪人』と呼ぶに相応しいフォルムをした生命体。
 男はそいつが自分たちの最強最悪の敵、ドラスだと瞬時に理解した。
「おじちゃんは何者かな。天道総司の仲間?拡声器のお姉ちゃんの復讐者?それとも……」
「科学者だ。デストロンのな」
「デストロン?」
 ドラスはその名前には聞き覚えがあった。立花藤兵衛から得た情報からだ。
 確か『ドクトルG』と『ヨロイ元帥』のふたりが所属している組織だったはず。
「じゃあ、おじちゃんがドクトルGなのかな?でも、聞いている特徴と違うよ」
「ほぉ、ドクトルGの名を知っていたか。俺は結城丈二。ドクトルGと同じく、デストロンに所属する科学者だ。
 ドラス、お前に協力したい。俺は偉大なる首領のために、ここからの脱出を目指している。俺をここから脱出させてくれるなら、お前の首輪を外す手助けをしよう」
「ふぅん。脱出派の人か……どうするお姉ちゃん」
 ドラスに呼ばれ、姿を現したのは妖艶な女性。モデルのようなスラリとした体型に、170cmを越す長身。
 戦場だというのに紅く塗られた唇は、男なら瞬時に魅了されそうな艶っぽさを放っている。
(こいつが影山冴子か)
「……科学者、ね。まあ願ってもない話ではあるけど、どうして協力する気になったのかしら?」
「決まっているだろう、脱出したいからだ。それ以外に理由があるか」
 冴子は真贋を確かめるためか、じっと見つめる。その瞳に何を感じたのか、冴子はゆっくりと頷いた。
「いいわ、信じましょう」
「こっちだよ、おじちゃん」
 手招きしたドラスの後に続き、研究所の中枢へと歩みを進めた。


 喫茶店『Jacaranda』の裏手に小沢、秋山、ひより、氷川、南の5人は集合していた。
 この喫茶店の近くで命を落とした城戸真司を葬るためだ。
 既に埋葬は完了し、盛られた土の上には近くから摘んできた花が供えられている。
「城戸君、あなたの遺志は私たちが継ぐわ。ひとりでも多くの人を助けて、この戦いを終わらせる。だから、安らかに眠りなさい」
 小沢は黙祷すると、それに合わせて皆、手を合わせ、頭を下げた。
 死者への弔いが終わり、その場にいた人物たちは移動の準備を開始する。
「小沢さん、本当にあなたたちも行くんですか?」
「仕方ないわ。今まで待ってたけど、結城さんにはここに辿り着けない何かがあった。
 予定では彼と私とひよりちゃんはここで待つ予定だったけど、彼が来ない以上、あなたたちの近くにいた方が安全だわ」
「すいません、シャドームーンの狙いは俺です。俺のせいでみんなにご迷惑を」
 南は頭を下げる。小沢はその頭を思いっきり叩いた。
「痛て、何するんですか!」
「はいはい、男ならガタガタ騒ぐんじゃないわよ。元からこっちに行く途中に襲われるのは想定内だったでしょ。
 あなたが気に病むことでもないわ。それでも迷惑だと思ってるんなら、態度で示しなさい。
 結城さんがいないなら、あなたがふたり分働けばいいことだわ」
 とんでもない人だと、改めて思う反面、その通りだとも南は思った。
 結城さんはこれから始まる戦いを自分に託した。自分はその思いに報いるために頑張るまでだ。 
 燃える光太郎に意外な人物から声が掛けられる。日下部ひよりだ。
「あいつは、そんなに悪い奴じゃない。だから、きっと大丈夫だ」
 ひよりのいうあいつとはシャドームーンのことだろう。
 氷川から聞いた話では、一時的にではあるがふたりと行動を共にしていたらしい。
 とても守っていたとは言えない状況ではあったそうだが、ひよりの言葉に南は希望という名の一筋の光が見えた気がした。
(俺も頑張らないとな)
「さて、行くとするか」
 準備を整えたディパックを背負い、研究所があるであろう北への道を見つめる。
 それぞれがそれぞれの決意を眼に灯し、歩みを開始した。その途中、小沢は蓮に声を掛ける。
「秋山君、サバイブのカードは持ってるわね?」
「ああ」
 蓮の手に握られたサバイブ『疾風』のカード。
 ここに来た目的は、城戸の弔いだが、わざわざ戦いを前にして、寄ることにしたのは蓮の戦力を増強する目的もあった。
 蓮は正直、気が進まなかったが、ドラスを倒し、響鬼の仇を討つため、もう一度、城戸の力を借りることを決めた。
 だから、ドラスとの戦いが終われば、カードはまた城戸に返すつもりだった。
 それほどまでにサバイブのカードは、蓮には重い。だが、そんな蓮の考えを小沢は見透かしていた。
「秋山君、君はドラスとの戦いが終わったら、そのカードを返す気でいるみたいだけど、そのカードを城戸君に返すことは許さないわ」
「なんだと」
「あなたはカードデッキを持つ限り、そのカードを持つ義務がある。逃げることは私が許さないわ」
 小沢は言いたいことだけ言うと、蓮を追い抜かし、先を歩いていく。
 蓮は満足な反論もできず、その後姿を見ているだけしかできなかった。
 集団の先頭を歩く小沢は前だけをまっすぐに見つめていた。その姿には一切の負の感情がないかのように皆には見えた。
 だが、小沢の胸の内は城戸への後悔の気持ちでいっぱいだった。
(ごめんね、城戸君。あのとき、私が君を止めていればこんなことにはならなかったかも知れないわ。
 さっき墓前で誓ったことは必ず守る。君の代わりにひとりでも多くの人を助けて、この戦いを終わらせる。
 だから、いざとなったら君の力、私が使わせてもらうわ)
 小沢の手には龍騎のカードデッキが握られていた。


 研究所の機材を使い、結城丈二は首輪の研究を進めていた。
 首輪を電子メスを使い、起爆装置に触れぬよう慎重に分解していく。
 分析を進めていく内に、首輪の機構は思ったより単純なことがわかった。
 未知の機械が使われている箇所も見られたが、それは能力の制限などを司っている箇所だ。首輪の解除には関係なさそうに思える。
「まだわからないの」
 声を掛けたのは結城丈二にとっては予想外の存在。金髪の少年の姿をしたアンデッド、キングだ。
「もう少しだ。首輪の機構は大体わかった。首輪を物理的に開錠するのは不可能といっていい。一度付けたら外れないようになっている。
 ならば、力付くで無理矢理外すしかないが、そのためには起爆装置の無力化が必要だ。その方法を今、探している」
「早くしてちょうだい。早くしないと天道君を殺さなきゃいけなくなるわ」
 冴子は怪魔稲妻剣を手に取り、天道の太腿を突き刺す。天道の太腿から流れる真っ赤な血。その光景に結城は激昂する。
「何をする!彼は脱出のための大切な人材ではないのか?」
「ふふっ、だって彼は人質ですもの。ドラス君が出した条件は天道君の仲間との科学者の交換。彼らが今度の放送までに来なければ、殺すしかないわ。
 それとも、あなたは天道君の仲間なのかしら?」
 揺さぶりを掛けている。自分が天道の仲間ではないかと疑っているのだ。
 ここに来た目的はドラスの弱点を探るため。だが、首輪の解除方法がわかれば、なおいいと研究に勤しんでいたが、放送まではあまり時間がない。
 結城は勝負に出ることにした。無言のまま、5分間首輪を弄ぶ。
「よし、わかった。これで首輪が外せる」
「本当?」
「ああ、本当だ」
 結城の発言は半分は本当だった。盗聴に使っている小さな穴。そこからピンのようなものを挿し込めば、起爆装置の信管部に辿り着き、それを断ち切れば爆破を防ぐことが出来るはずだ。
 あとは力付くで捻じ切ればいい。普通の人間の力では無理でも、変身した後ならばそれは充分可能だ。
 これは分解した首輪で試した確かな方法だ。だが、不安は残っていた。
 制限を司っている箇所と、起爆装置は隣り合っている。電子メスでも切り開くことができない制御部の解析はこれ以上、不可能。
 もし、制御部が、起爆装置に何らかの影響を与えているとすれば、この解除方法は失敗する可能性が高い。
 制御部が作動するのは、首輪が嵌められているとき。制御部が作動している状態で外せるかどうかは、現状では人体実験を行うしかない。
 だが、もう猶予はないのだ。
「早速、首輪を外そう。ドラス君、まずは君の首輪からだ」
 結城の言葉に表情がないはずのドラスがニヤリと笑ったかのように見えた。
「そうか、それが目的か。いいよ、教えてあげる。僕の首輪はね、胸の中心にある丸~い僕のコアに巻かれてるんだよ。そこが僕の本体さ」
 ドラスが告白した情報。結城が欲しかった情報だ。しかし、目的の情報が手に入っても結城は笑えない。
 その言葉が持つ意味は、自分の目的が見透かされたことを示すからだ。
「何を言ってるんだ?意味がわからないな」
 どこまで効果があるかわからないが、結城はポーカーフェイスで答えを返す。
「とぼけるんだ、まあいいけど。……じゃあ早速首輪を外してもらおうかな。但し、僕のじゃなくて天道お兄ちゃんのね」
「何?」
「脱出するためには天道お兄ちゃんの首輪を外さなきゃいけないだろ?だから、早速解除してもらおうと思ってさ。
 出来るでしょ?本当に首輪の解除方法がわかったんならさ」
 ドラスの言葉につられ、冴子とキングがニヤリと笑う。その笑みに動揺する結城。
 しかし、もうひとり、ニヤリと笑う男がいた。
「結城、早く俺の首輪を外せ」
「天道……」
「俺は大丈夫だ。なぜなら俺は天の道を行き、総てを司る男だからな」
 天道の言葉に、結城は迷いを断ち切り、天道の元へと進む。そして、首輪へと手を掛けた。
 行動を起こす前に天道の様子を確認する。身体には多数の拷問の痕が見られ、固まって黒くなった血が所々に見られる。
 身体の色は健康な肌色から灰のような色に変わり、遠くから見れば、壁の一部のようだ。
 肌の色を変えた原因と見られる壁から突き出た無数のチューブは天道の身体を固定し、身体に直接差し込まれている。
 結城はその姿を見るのが非常につらかった。何故なら天道は昔の俺の願いを叶えてくれた男なのだから。
「天道。……悪いが俺は脱出を望んではいない。俺の目的はこの戦いの頂点に立ち、全てをなかったことにすることだ」
 結城は首輪から手を放すと、天道に繋がるチューブを次々に抜いていく。
「お前……」
「ハッハッハッ。やっぱりね。結城お兄ちゃんも麻生お兄ちゃんと同じ感じがしたもの。
 やっぱりお兄ちゃんも仮面ライダーなんだね」
「俺が仮面ライダー?ふっ、どうやらワームの能力は、そのものの光さえも擬態してしまうらしいな。
 確かにこの男は仮面ライダー。一時は闇に飲み込まれながらも、闇を切り裂く光となった男だ。
 だが、俺は仮面ライダーではない」
 結城の顔が崩れていく。一瞬液状の何かになったかと思うと、その姿は別の人間の姿を形づくった。
「俺は神代剣。神に代わって剣を振るい、貴様らのような下賎な者たちを切り裂く男だ」
「へぇ~、別の人に擬態できるんだ。面白い能力だね。でも、ここで正体を現したのは失敗じゃないかな。
 丸腰でここから逃げられると思ってるの?」
 天道を担ぎ、神代はドラスを睨み付ける。同時に奪取すべきアイテムにも視線を向けた。
(あそこか)
 神代はドラスへと真っ直ぐに突進していった。ドラスは迎撃しようと構える。
 ドラスの間合いに入ろうとする瞬間、神代は銀色の怪物へと姿を変える。
 忌むべき自分の本当の姿、スコルピオワームの姿だ。
 その姿を見たドラスは驚き、一瞬反応が遅れた。それがスコルピオワームの狙い。
 スコルピオワームはクロックアップすると、ドラスの後ろにあるベルトとハイパーゼクターを手にし、一気に駆け抜けた。
「おっ、スゲェ!」
 キングがその一瞬の出来事に感嘆の声を上げた頃にはスコルピオワームはその部屋からは既に逃亡していた。
「ああっ、やられたわねドラス君」
「うん、正直びっくりしたよ。天道のお兄ちゃんやキックホッパーと同じ能力だね。ああいうのもいるんだ」
 アイテムは奪い返され、逃げられたというのに、ドラスたち3人にはまったく慌てた様子はなかった。
 それはここから逃げ出すのが、不可能とわかっていたからだ。出口に仕掛けられた蜘蛛の糸。それに絡め捕られるのがわかっていたから。
「さて、あのふたりはクモ女に任せて、また運動しにいこうかな。きっとお兄ちゃんの仲間が外にいるはずだし」
 ドラスは怪魔稲妻剣を手に取り、素振りを始める。
「擬態した科学者を潜り込ませるぐらいだ。今度は向こうも作戦立ててるはずだから、少し気合入れていかないとね」 
「だったら面白いこと考えたんだけど、どうかな?」
 キングの提案にドラスは楽しそうな笑い声を上げた。


 神代が研究所に入って、30分が過ぎた。まだ、研究所には何の変化も見られない。
 矢車たちが立てた作戦はこうだ。
 結城に化けた神代が、首輪の解析を行い、それに乗じてドラスの首輪の位置を探る。
 それがわかったところで、隙を見て、天道と共に脱出。
 先発隊がドラスと戦い、時間を稼ぎ、神代の情報を得た後発隊が制限の掛かったドラスに止めをさす。
 その間、冴子は、オーガとの対戦経験もある神代剣が抑え、あわよくば彼女も撃破する。
 トランシーバーより受けた後発隊からの連絡によれば、結城の姿は見えないものの南との合流には成功したとのこと。
 結城の役割は小沢とひよりを守ることだった。結城には悪いが、作戦に支障はない。あとは決戦を待つのみだ。
「うん?あれは……乾か。もう1人いるな」
 カイザポインターを変形させた双眼鏡を覗いていた草加が声を上げる。
 どうやら研究所に変化が現れる前に、別の訪問者が現れたらしい。
 乾という名前に、矢車は早速接触を試みる。
「乾君」
 研究所に入ろうとしたふたりを矢車は止める。
 乾は声を掛けてきた見知らぬ人物に訝しげな顔をし、警戒心を顕にしたが、その後ろに続く、人物を確認して、幾分か警戒心を緩めた。
「草加!」
「乾、生きていたか」
「お前もな」
 発した言葉を文書にして読めば、共に生きての再会を喜んでいるかのように読み取れたかも知れない。
 だが、ふたりの再会は共に相手を睨み付ける厳しいものだった。
「やめなさい」
 乾を諌めたのは、乾に同行していた黒いサングラスの男だった。
 矢車はすぐに自分の記憶の引出しから、名前を導き出す。
「申し遅れました、私は木野薫です。あなたは?」
 想定した通りの名前を名乗ったその男に、矢車も、順番に指を指し、自己紹介を行う。
「俺は矢車想リュウガ草加雅人だ」
「雅人……?」
「俺の名前がどうかしたのか?」
 木野の反応に、草加は不信の眼差しを送る。木野はその視線を見なかったかのように同じ調子で言葉を返した。
「いえ、別に。それより、あなたたちも放送の主を倒しに?」
「ああ、そうだ。丁度良かった。実は今……」
「天道?」
 パーフェクトミッションの説明を始めようとする矢車の言葉を遮り、乾が口を開いた。
 乾は研究所の入り口を見つめて、その言葉を紡いでいた。
 場に居る全員が、乾の視線の先を見る。そこには乾が紡いだ名前の人物がいた。
 まるで寝起きのような所々乱れた黒髪のスラリとした長身の男。
「天道!」
 乾は先程の草加への態度とは対照的に、笑顔を浮かべ、天道の元へと駆け寄った。
「お前、無事だったのか」
「ああ」
 天道は迎えた乾に向けて満面の笑顔を浮かべた。その顔をみた乾は一瞬にして顔をしかめる。
「!、テメェ誰だ、天道はそんな顔はしねぇ!」
 乾は偽天道の顔に正拳突きを打ち込んだ。その瞬間、偽天道は空中高く飛び上がる。
 皆が上空を見上げたときには、その姿はもはや天道の姿は留めていなかった。
 翼と一体になった手を大きく広げ、空高く滑空するその黒き姿は蝙蝠のようだった。
 それもそのはず、この生命体はドラスが蝙蝠の姿をイメージして作った新種の生命体。
 蝙蝠と人間を掛け合わせ、人型でありながらも、蝙蝠のように長く伸ばした指の間に翼を張らせる。
 創造主のいたずら心か、眼は本来の場所になく、額と手の平の中心に位置していた。
 この生命体に名はない。ただその姿から怪人はコウモリ男と呼ばれていた。
「楽しんでもらえたかな?」
 上空に注目していた視線を正面に戻すと、そこにはまた別の怪人の姿があった。
 瞬時にリュウガが反応を示す。
「ドラス!」
「ああ、あの時の黒い龍のお兄ちゃんだね。懲りずにリベンジマッチを挑みに来たのかい」
 リュウガは二度目、他の面々は初めて見るドラスの姿。
 矢車はその姿にワームを重ね、闘志を燃やし、草加と乾は真理を灰にしたと言った化け物に憎しみと怒りを顕にする。
 リュウガと木野は比較的冷静に敵を観察しながらも、その拳は強く握られていた。
「お兄ちゃんたちも中々面白いことやるよね。擬態できる怪人を送りこんでくるなんてさ。だから、僕もお返し。どうだった?」
「神代はどうした」
「僕の質問にも答えて欲しいんだけどな。まあいいや。あの怪人だったら、僕が生み出したもう一匹の怪人と戦っているよ。天道のお兄ちゃんと一緒にね。
 結構、強いから、急いだ方がいいと思うよ。最も、僕はもっと強いけどね」
 ハッハッハッと嘲るように笑いながら、ドラスはしゃべる。どうやら上機嫌のようだ。
 それが草加の怒りと憎しみをより増幅させた。
「おい、化け物。影山冴子はどこだ。貴様と一緒にいるんだろ」
 草加は得た情報から、実際に真理を灰にしたのは冴子だと確信していた。灰化はオルフェノクの能力。
 もしドラスと組んでいるのなら、真理を灰にしたのは冴子に違いない。
「うん?お姉ちゃんの知り合い?お姉ちゃんたちなら、ほら、あそこだよ」
 ドラスが指を指した先は研究所の屋上部分。そこには影山冴子キングの姿。場にそぐわず呑気に手などを振っている。
「僕とお兄ちゃんたちとの戦いを観戦するための特等席さ。だからお姉ちゃんやキング君は手を出さないよ。
 実際に戦うのは僕とコウモリ男。ちょっとしたハンディさ。1、2、3、4、5、中にいるお兄ちゃんを合わせると7人か。
 随分、人数揃えたみたいだね。でも、例え残りの参加者全員集めたって、僕には勝てないよ。
 だって、僕は神になる存在なんだからね。ハッハッハッハッハッハッハッ」
 しゃべっている途中にまたテンションが上がったのか、ついには大笑いを始めるドラス。
 そして、大笑いの最中、徐々にくすんだ鋼色をしていたドラスの体色は血を吸ったかのように赤く変色を始める。
 赤ドラス。ZO――麻生勝を取り込んだことにより、可能となったドラスの強化体。
「もういい。貴様も、あの女も、真理を殺したことを後悔させてやる」
 草加の腰には既にベルトは装着されている。草加はカイザフォンを握り締めた。
「みんな、いくぞ!」
 矢車の声に、皆それぞれの変身道具に手を添えた。
『変身!』
 5人が同じ言葉を同時に紡ぐ。

―HENSHIN― ―Complete― ―Complete―

 矢車はホッパーゼクターを、乾と草加のふたりは携帯を、リュウガはカードデッキをベルトへと差し込む。
 木野は手をクロスさせ、出現させたベルトからアギトの力を引き出した。
 展開していく装甲。進化する肉体。変身の過程は違えど、変わって行くその姿。

―Change KickHopper―

 キックホッパーへの変身が完了したことを知らせるその音声が鳴り響いたとき、その場にいる5人全員の変身が完了した。

 闇を切り裂き、光をもたらす 仮面ライダーキックホッパー

 真を貫く、黄色の弾丸 仮面ライダーカイザ

 赤き龍の影、黒き龍の闘士 仮面ライダーリュウガ

 闇を切り裂く、赤き閃光 仮面ライダーファイズ

 進化し続ける、緑色の戦士 仮面ライダーアナザーアギト

 変身した5人の仮面ライダーは、ドラスと対峙する。
「ハッハッハッハッハッハッハッ、中々壮観だね。み~んな、仮面ライダーなんだ。
 じゃあ準備も出来たことだし、始めようか!」
 先に動いたのはドラス。一直線に目標に向かって、突進していく。
 その目標に選ばれたのは、リュウガ。ドラスの手に握られた怪魔稲妻剣がリュウガに放たれる。

―GUARD VENT―

 だが、リュウガは事前に装填していたカードを発動させ、召喚された一対の盾――ドラグシールドでその攻撃を防ぐ。
 ドラスの攻撃は激しく、ドラグシールドを支える両腕に重さが圧し掛かるが、腰を落として、それに耐える。
「ふん!」
「はっ!」
 ドラスの側面を狙い、アナザーアギトが蹴りを放つ。それと同時にファイズも拳を振るった。
 両者の攻撃はドラスの腹と右肩に命中する。
「ふふっ、痛くも痒くもないよ」
 ドラスはドロップキックでドラグシールドで防御を続けるリュウガを吹き飛ばす。
「ライダーキック!ってね」
 続いて、アナザーアギトの足とファイズの腕を掴み、上空へと放り投げる。
「うわっ!」
「まずはふたりと」
 右肩にある3つの赤い点。そこにドラスは力を集中させる。光輝く3つの点。
 ドラスは空中のふたり目掛けて、充填したエネルギーを解放した。
 解放されたエネルギーはひとつになり、青白きレーザーとなった目標へと向かう。
「ちきしょう!」
 ファイズとアナザーアギトに避ける手段はない。だが、放たれたレーザーは2人には当たらなかった。

―CLOCK UP―

 レーザーが当たるより早く、加速したキックホッパーがふたりを救う。
 しかし、空はコウモリ男の領域。主をフォローするため、コウモリ男が3人へと滑空する。
「させるか」
 コウモリ男に発射される黄色をした弾丸。コウモリ男はそれを避けるが、牽制としては充分。
 3人は無事、地面へと着地する。
「ったく、君たちは何をやっているのかな?」
「うるせぇ、ちょっと油断しただけだ」
「油断?あいつは油断して、勝てるような相手じゃないんだよ」
 カイザはファイズに2つのアイテムを投げつける。
 それはファイズショットとファイズアクセル。どちらともファイズの装備だ。
「乾、矢車から作戦を聞け。そして、それ通りに動け」
「草加君!」
「わかってる。俺はあの蝙蝠の化け物を先に片付ける」
 パーティバトルでは弱い奴から潰していくのがセオリー。
 しかも、空というアドバンテージをもつコウモリ男はドラス打倒のためには非常に邪魔だ。先に潰しておく必要がある。
 そして、空を飛ぶコウモリ男には、射撃装備を持ったカイザが適切。矢車と草加のふたりはそう判断した。
 言わずとも意図が通じるのはなんとも心地よい。
 カイザはコウモリ男へと向かっていった。リュウガはドラグシールドを使い、時間を稼いでいる。 
 時間は限られている。キックホッパーはファイズとアナザーアギトにパーフェクトミッションの説明を行った。


「ハッハッハッ、どうしたの防御ばかりしてちゃ、勝てないよ!」
 リュウガはドラスの攻撃をドラグシールドで防ぎ続けていた。ドラスの力を得た怪魔稲妻剣の破壊力はドラグシールドを超える。
 一撃、一撃を受ける毎に、ドラグシールドは欠けていき、既に盾としての役割は果たせなくなってきていた。
「ちっ」
 リュウガはドラグシールドをドラスに向け、投げ捨てると、素早く、次のカードを装填する。

―SWORD VENT―

 ドラグブラッカーの尻尾を模した青竜刀――ドラグセイバーがリュウガの右手に握られた。
 リュウガはみねの部分に左手を添えると、ドラスの怪魔稲妻剣を受けた。
「やっと攻撃すると思ったら、また、防御?それじゃあ、つまらないよ」
「ふん、つまらないのなら、自分で面白くするんだな」
「ハッハッハッ、まったくだね。じゃあそうするよ」
 リュウガは突如、横からの衝撃に襲われる。突然のことに受身も取れず、リュウガは地面へと転がる。
「グッ、尻尾か」
「そうだよ。……もういいかな。お兄ちゃんとは前も戦ってるし、別のお兄ちゃんもいっぱいいる。
 お兄ちゃん、バラバラになってもらうよ」
「待ちやがれ!」
 キックホッパーからの説明を聞き終え、ファイズがドラスへと駆け寄る。
「やっと来たね」
 ファイズに背を向けたまま、ドラスは尻尾でファイズを薙ぎ払う。
 続いて、その隙を突いて攻撃に転じようとしたリュウガを、怪魔稲妻剣で切り払った。 
 そして、素早く怪魔稲妻剣を左手に持ち帰ると、右腕を自らの意思で切り離し、アナザーアギトとキックホッパーに向けて発射した。
 高速で発射されたドラスの右腕はキックホッパーの装甲を削りとり、アナザーアギトの胸から血を迸らせる。
「相談は終わったかな?時間稼ぎをして、僕の制限が来るのを待っているみたいだけど、君達なんてその気になれば、すぐ殺せるんだ。
 時間を稼ぎたかったら、精々、僕を楽しませるんだね」
 矢車はその言葉に戦慄を覚える。
(時間稼ぎを狙っていることはどこかで気付かれるとは思ってたが、まさかこうも早く気付かれるとは)
 戦いが始まってまだ2分余り。戦局はドラスの有利で進んでいた。


 カイザはカイザブレイガンとフォンブラスターを二丁拳銃のように構えて、コウモリ男を狙い撃つ。
 次々と際限なく放たれる弾丸。しかし、コウモリ男はわずかな隙間を縫って、全てかわしていく。
「チッ」
 弾丸を当てるのが、無理ならと攻撃の手を止め、カウンターを狙おうとするが、そうしても一向にコウモリ男は攻撃を行おうとしない。
(こいつの役割は単なる時間稼ぎか)
 カイザが攻めあぐねていると、ふとフォンブラスターの画面から反射した光が眼に入った。
(今のは……)
 カイザはコウモリ男に背を向け、駆け出す。
「クキュアッ!」
 さすがに逃がすつもりはないのだろう、空を翔け、カイザを追いかけてくる。
 だが、それが命取り。カイザはディパックから食料として支給された缶詰めを取り出すと、空へと投げた。
 投げられた缶詰めは回転しながらゆっくりと上がっていく。
「クキェッ?」
 カイザの意味不明の行動にコウモリ男は首を傾げる。やがて缶詰めはコウモリ男の眼前まで上ってきた。
 コウモリ男の額の瞳が、缶詰めの底面に映った蝙蝠の姿を確認する。
 最初は自分の姿かと、コウモリ男は思った。だが映し出されたその姿は、生物というよりも機械的な容姿をしていた。
「いけ、ダークウィング!」
 缶詰めから飛び出してくる蝙蝠。それはコウモリ男の左翼に突進し、力づくで風穴を空ける。
 翼による風のコントロールができなくなったコウモリ男は当然、空へと留まることが出来なくなり、落下していく。
 だが、コウモリ男が大地へと叩きつけられることはなかった。落下するより早くコウモリ男へと迫る無数の弾丸。
 今まで避けていた黄色の光弾ではなく、鉄で出来た数十発の塊。
 轟音と共にそれはコウモリ男の体をえぐり、肉片へと変えていく。
「グギュアッェ!!」
 なんとか逃げ出そうと、残った右腕の翼を精一杯動かす。しかし、コウモリ男の願いは叶わない。
 銃弾の雨に変わり、放たれた火球はコウモリ男の体を一瞬にして焼き尽くした。
「随分と早いな」
 カイザはコウモリ男を倒した男に眼を向ける。
 コウモリ男の体を抉ったガトリングガン――GX-05ケルベロスを構え、焼き尽くしたガタックバルカンを装備した、氷川が変身したライダー。
 仮面ライダーガタック・マスクドフォーム。
 そして、その後ろにはコウモリ型のミラーモンスター――ダークウィングと契約したライダー、仮面ライダーナイト。
 太陽の力を吸収したキングストーンにより変貌を遂げた世紀王、仮面ライダーBLACKRXの姿があった。
「計画では、あと2分は俺たちが戦うはずじゃあなかったかな?」
「その予定でしたが、ドラスには時間を稼ぐ計画は知られています。なら、みんなの力を合わせて戦うべきです」
 矢車の懐には通信状態のトランシーバーが入れられていた。それを使い、氷川たちは出てくるタイミングを計っていたのだ。
「馬鹿かな、君たちは?時間稼ぎがばれるのは想定内。俺たちがばれたらまずいのは伏兵の存在だ。
 まあ、もう今更言ってもしょうがないみたいだけど」
 カイザの視線の先にはドラス。ドラスはリュウガたち4人を弄びながら、カイザたち4人を見ていた。
「へぇ、伏兵か。そこまでは読みきれなかったな」
 以前、戦ったときとは倍の人数だというのにドラスに動揺は見られない。
「まあ、これで少しは面白くなるかな」
 ドラスとの戦いが開始されて3分。戦いはガタックたちを加え、更に激しさを増していく。


「ここはどこだ」
 気が付くとそこには闇が広がっていた。
 どこまでも続くかのように錯覚させる虚無の闇。空には光など微塵にもない。
 しかし、不思議なことに大地からそびえ立つ数十本の柱はしっかりと見ることが出来た。その柱と柱の間に巣くう蜘蛛の巣までも。
 物理的にはありえない空間。そこに今、ワームとなった神代と、天道のふたりはいた。
「どうやら俺たちは罠にはまったようだ。奴らの方が一枚上手だったわけだ」
 天道の言葉に、スコルピオワームはここに来る直前の記憶を引き出す。
 天道を背負い、加速する自分。外へと通じる扉を確認し、あと数メートルとなったとき、天井から一匹の蜘蛛が糸をつたり降りてきた。
 構わず突進するが、蜘蛛は突然、光を放ち、気が付くと、自分たちはこの空間にいた。
「あの蜘蛛か」
「ああ。そして、ここはあの蜘蛛が造りだしたものだろ。恐らく獲物を捕食するためのな」
「獲物、俺たちか。この俺を獲物にしようとは面白い。返り討ちにしてやる」
 スコルピオワームは耳を澄ませ、辺りに注意深く視線を這わせた。
 すると、カサカサと這うような音がする。その場所とは――
「上か!」
 見上げると、柱の上から自分目掛けて落ちてくる真っ白な物体。スコルピオワームは反射的に身を翻し、それを避ける。
 避けた場所に落ちたその物体は、身体から生えた4本の節足を使い、地響きも立てず、器用に着地する。
 それは着地するとスコルピオワームを威嚇するかのように叫び声を上げた。
「キシュァッァッァッ!」
 スコルピオワームはワームをも超越する醜悪さを持つその生物の姿に、たちまち嫌悪感を覚える。
 4本脚の蜘蛛から生えたかのような人型の上半身。人型といっても腕は4本あり、足と同じく細く長く、獲物を捕食するために先が鎌状になっている。
 顔は上半分こそ人の原型を留めているが、唇はなく、歯茎が剥き出しになったおり、下歯茎は蜘蛛の遺伝子が強いのか、二つに割れていた。
 身体にある乳房が辛うじて女性であることを主張しているが、その姿の前には何の意味ももたない。
 スコルピオワームは知った。穢れない清らかさを現す純白は、同時に醜悪なものが身に纏えば、更に醜悪さを増すことを。
「キシュァッァッァッ!」
 もう一度、叫び声を上げ、今度はスコルピオワーム目掛けて、突進を開始する。
 避ければ、天道に当たる。そう判断したスコルピオワームは醜悪なる生物――クモ女と力比べを開始する。
 突進と共に、真っ直ぐに突かれた2本の腕。それをスコルピオワームは己の両腕で押さえ込む。
 残る2本の腕は、触手で牽制、勝負は純粋な力比べとなった。
「うぉぉぉっ!」
「グジュァッ!」
 しかし、クモ女の力はスコルピオワームの予想を遥かに超えていた。軽々とスコルピオワームの身体を持ち上げると、柱を目掛けて放り投げる。
「ぐわっ」
 柱に激しく叩きつけられ、一瞬、意識が飛ぶ。それがスコルピオワームの隙となった。
 クモ女の口から測れる純白の糸。それはスコルピオワームの身体に絡みつき、柱に強く縛りつける。
「キシュッルァ」
 止めをさすためか、動けない神代に迫るクモ女。
 スコルピオワームは必死に拘束を解こうとするが、吐かれた時の柔軟さが嘘のように、糸は鎖の如き硬さを保っていた。
(こんな奴に俺のノブリス・オブルージュが止められてしまうというのか)
 友の命を犠牲にしてまで達成しようとしている自分の信念。それが今、眼の前の醜悪な怪物の手で終わりを迎えようとしている。
 スコルピオワームはそれが堪らなく悔しかった。
 だが、そのとき、天より弾丸が飛来した。その高速の弾丸は神代を拘束する糸を一瞬にして切り裂き、呆けるクモ女の顔を切り裂く。
「ギジュッァ!」
 顔を傷つけられ、悲鳴と思しき、奇怪な叫び声を上げるクモ女。
 そして、クモ女の顔を傷つけた弾丸は傷だらけの天道総司の手に握られた。
「カブトゼクター。まさか……天道、やめろ!その身体で戦うのは無理だ。こいつは俺が倒す」
 天道は柱を背に立ち上がり、人差し指を上げた右腕を天に掲げる。
「おばあちゃんが言っていた。太陽は燃え尽きる最後の時まで燃えるのを止めない。……変身」

―HENSHIN―

 ベルトにカブトゼクターがはめ込まれる。変身の機械音が鳴り響くと同時にベルトから排出されたエネルギーが銀の装甲を形作り、天道の姿を変えていく。
 青きゴーグル状の眼を持つライダー。仮面ライダーカブト・マスクドフォーム。
 カブトはカブトクナイガンを手に取ると、クモ女に光弾を次々と撃ち込んでいく。
 堪らずクモ女は柱をつたって、逃亡を計る。クモ女はカブトから見て、柱の陰に隠れるようにして動いていく。
 クモ女の動きはその巨体に似合わず敏捷だ。瞬時にしてカブトの視線から外れる。
 クモ女はカブトの後方へと回り込んでいた。後方から一気に襲い掛かり、獲物を捕獲するためだ。
 カブトの動きをつぶさに観察し、隙を見計らう。
 カブトとスコルピオワームのふたりはクモ女を探し、周囲の気配を窺っていた。
 だが、クモ女には見つからない自信があった。今いる場所は自分が創り出した異空間。この場所では自分の気配はこの空間と同化する。
 ピンと空気が張り詰める。その空気に真っ先に音を上げたのはカブトだった。
 クモ女の眼に隙だらけになったカブトの姿が映る。クモ女はカブト目掛けて飛び掛った。
「天道、後ろだ」
 スコルピオワームが声を上げるが、もう遅い。カブトはもう自分の射程範囲。クモ女は勝利を確信した。
「キャストオフ」

―CAST OFF―

 弾け飛ぶマスクドフォームの装甲。それはカブトに挑みかかっていたクモ女に向かう。
 攻撃に気をとられ、防御などしていなかったクモ女に、それは容赦なく降り注いだ。
 大きさも重さも充分なそれは先程の光弾と比べものにならない重い一撃となり、クモ女の胸、顔、腕、腹を抉っていく。
 そして、それはクモ女の勝利の確信を粉々に砕けさせた。
「お前の考えなどお見通しだ」
 わざと一箇所だけ隙をつくり、そこに罠を張る。戦術の基本。だが、所詮獣であるクモ女にそれが理解できるはずもなかった。
 クモ女は傷だらけになりながらも、上体を起こし、カブトに挑みかかろうとする。

―ONE― ―TWO― ―THREE―

 次々と押されるカブトゼクターのボタン。
 そして、カブトゼクターの角をマスクドフォームの状態に戻すことにより、その技の準備は完了し、カブトの口から止めの技の名前が紡がれる。
「ライダーキック」

―RIDER KICK―

 クモ女が最後に見たのは青白い光を絡ませたカブトの足。
 力が込められたカブトのライダーキックがクモ女の頭を吹き飛ばした。
 頭を失ったクモ女は、力を失い、カブトたちが見た小さな蜘蛛の姿へと戻っていく。
 それと同時に闇に覆われた空間は、まるで砂が風に吹き飛ばされるように一瞬にして消えていった。
 カブトとスコルピオワームの眼前には研究所の出口。
「いくぞ」
 戦いはまだ終わっていない。カブトとスコルピオワームのふたりは戦いへと通じる扉を開けた。


 ガタック、ナイト、RXを加え、ドラスとの戦いは1vs8の戦いとなっていた。
 だが、ドラスはまったく怯まない。文字通り八方から迫るガタックたちを怪魔稲妻剣、尻尾、レーザー、ロケットパンチといった技を駆使し、逆に圧倒していく。
「強すぎる」
 弱音を吐く、キックホッパー。だが、キックホッパーの考えも尤もだった。
 今はあくまで時間稼ぎが目的。防御を軸に、攻撃はあまり行ってはいない。
 だが、それでも何回かは通常ならばクリーンヒットと言ってもいい一撃は与えている。
 それにも関わらずドラスに苦しんだ様子はまったく見えない。
「おーい、お姉ちゃん。僕が赤くなって、どれぐらい経った?」
 ドラスが観戦を続ける冴子に時間の確認を行う。
「大体5分ぐらいかしら」
 応える冴子の声にもまったく悲観の色は見られない。
「5分か、それじゃあ、そろそろ本気だそうかな。1人30秒、4分で倒すよ。
 行くよ、お兄ちゃんたち。お願いだから、4分は楽しませてね」
「来るか」
 あと5分。それまでもつことが自分たちに出来るのだろうか?
 ドラスの強さを見せ付けられ、キックホッパーたちの士気は下がりきっていた。
「何しけた顔してるの!根性見せなさい!!!」
 場に響く大声。突然のその声に場にいる全員、ドラスまでもがその声の主に視線を集中させる。
「小沢さん」
「そんなしけた顔してたんじゃ、勝てるもんも勝てないわよ。後、たったの5分じゃないの。
 それぐらいの時間、実力で足りないのなら、根性で補いなさい」
「……まったく勝手なことを言ってくれる」
 憎まれ口をたたきながらも、キックホッパーの闘志には火が灯る。
 キックホッパーだけではない。ファイズにも、アナザーアギトにも、ガタックにも、RXにも、リュウガにも、ナイトにも、同じく火が灯る。
「おばあちゃんが言っていた。男はクールであるべき……沸騰したお湯は蒸発するだけだ」
「じいやが言っていた。男は燃えるもの……火薬に火を点けなければ花火は上がらない」
 ドラスが振り向けば、そこにはカブトとスコルピオワームの姿。
「天道!神代!」
「ドラスの首輪は体内の胸の部分にある。そこが奴の弱点だ」
 告げられたドラスの弱点に湧く矢車たち。しかし、その様子を見ても、ドラスは不敵にも笑った。
「ハッハッハッハッハッハッハッ、クモ女を倒したのか。弱点もバレチャッタわけだ。でも、それでも僕には勝てないよ!」
 ドラスは空へと浮いた。ドラスの能力のひとつ、空中浮遊だ。
 そして、すばやく右肩にエネルギーを集める。ただし、充填はしない。集めたエネルギーはそのまま一気に解放させる。
 マリュキュレーザー広域放射。1人に絞らず、ドラスは全員を狙った。

―CLOCK UP―

 音声と共に高速での移動を開始するカブト、キックホッパー、スコルピオワーム。
 3人はそれぞれ、リュウガ、アナザーアギト、ナイトを抱え、雨のように降り注ぐレーザーを避ける。
 そして、ファイズはファイズアクセルから引き抜いたミッションメモリーをベルトへと差し込んだ。

―Reformation―

 胸の装甲が上がり、ファイズのフォトンブラッドが一時的に銀に染まり、瞳が赤く発光する。
 クロックアップと等しき10秒間の高速移動。ファイズ・アクセルフォーム。
 ファイズはカイザとRXを安全圏へと避難させると、ドラスに向かって跳んだ。
 右腕にはミッションメモリーを差し込み、デジタルカメラからナックルパッドへと姿を変えたファイズショット。

―Rady―

 ベルトのENTERキーを押すことにより、ベルトから光の粒が送り込まれ、ファイズショットにエネルギーがチャージされる。
 ファイズのライダーパンチ、グランインパクト。ファイズはレーザーを放ち続ける右肩へその一撃を打ち込んだ。

―CLOCK OVER― ―TIMEOUT―

 高速の時を終え、ドラスへと向き直るファイズたち。
 それと同時にドラスの右肩に浮かび上がる『φ』の文字。瞬間、ドラスのレーザー発射口は爆音と共に破壊される。
「やるね、お兄ちゃん。でも、まずは1人だよ」
 ドラスの視線の先には小沢を庇い、レーザーの直撃を受けたガタックの姿があった。
 ガタックゼクターが離れ、ガタックは氷川の姿へと戻る。
「氷川君!」
「ぼ、僕は大丈夫です。ガタックの装甲は伊達じゃありません」
「ハッハッハッハッハッハッハッ、そうは言っても、骨にひびぐらいは入ってるよね?
 戦えなきゃ、一緒だよ。さて、次は君かな」
 ドラスが次に狙ったのはRX。ファイズが避難させていたのが災いした。
 距離としてはわずかだが、仲間の救援が間に合うには遠すぎる。捕らえられたら、そこに待つのは『死』のみ。
「させるか」
 キックホッパーの持ったゼクトマイザーから放たれる無数の飛蝗型爆弾マイザーボマー。
 ドラスがRXの元へ辿り着くより早く、まとわりつき、動きを抑制する。
「南さん、早く!」
 RXはその場から、皆のいる方向へと走りだす。だが、ドラスは逃がさない。
 すれ違う瞬間、尻尾を振るい、ラリアットのようにRXの首へと衝撃を与える。
「うわぁっ!」
 首が捻じ切れんばかりの衝撃に、一瞬にしてRXの意識は飛び、その変身は解除される。
「二人目、次は君だよ」
 ドラスから左腕を向けられるキックホッパー。
(ロケットパンチが来る!)
 身構えるキックホッパー。だが、左腕が飛ぶより早く、ボンッと、ドラスの左肩が爆発した。
「何!?」
 その光景に誰もが驚いた。爆発した理由はわかる。マイザーボマーが爆発したためだろう。
 しかし、今までどんなことをしても満足なダメージを与えられなかったドラスの体が、なぜマイザーボマー程度のダメージで爆破を起こしたのだろうか?
(あの場所は……そうか、ヒビキ!)
 唯一、蓮のみが理由に気づいた。左肩は以前戦ったときに響鬼が音撃で破壊した場所。
 響鬼の清めを込めた攻撃がその左肩に残り、そこを弱点としているのだ。
(弱点はあそこか!)

―SURVIVE―

 サバイブ『疾風』のカードをダークバイザーに装填し、黒き騎士から蒼き騎士へ、ナイトは姿を変える。
 ナイトサバイブとなったナイトは、ドラスに向かって、一直線に突進していった。
「よくわからないけど、これぐらいの傷じゃ僕は怯まないよ」
 ドラスは左腕を負傷したまま、体勢を整えなおすと、怪魔稲妻剣でナイトサバイブを真っ二つに切り裂く。

―TRICK VENT―

 瞬間、一気に6体に分裂するナイト。
「同じ手を食うと思ってるの!?」
 ドラスは尻尾と怪魔稲妻剣をフルに使い、5体を瞬く間に切り裂く。
「本物、見つけたよ!」
 だが、切り裂いた瞬間、それも鏡となって消えた。
「何!」
 驚きにほんの僅かの間だが、隙を見せるドラス。だが、疾風の如き素早さを持つナイトには充分な刻。
「とわっ!」
 上空から飛来した本物のナイトサバイブは、手にしたダークソードを左肩の傷口を目掛けて突き刺した。
 そして、それを下ろすことで、傷口を大きく切り開く。胸の核まであと少し。
「くっ、させないよ」
 渾身の力を込めたストレートパンチがナイトサバイブの胸に炸裂した。
 元々防御力の高くないナイトはその一撃で吹き飛ばされ、衝撃により強制的に変身が解かれる。
「これで三人目!こんな傷、すぐに再生してやるよ」
 ドラスは力を込める。すると、周りの金属がドラスの一部になろうと集まってきた。
 しかし、それらはドラスの体に吸着するより先に粉塵と化した。
 氷川と小沢。GX-05ケルベロスを氷川が構え、その体を小沢が支える。
 通常なら生身ではとても反動に耐え切れないケルベロスもそれなら撃てる。
 ふたりはありったけの弾丸で、金属を破壊していく。
「なら、その銃弾を吸収して……」
「おい!」
 ドラスへの追撃は止まらない。ドラスの前にファイズとカイザが立ち塞がる。
「さっきはよくもやってくれたな。草加!」
「君こそしくじるなよ」

―Rady―

 ファイズはファイズポインターに、カイザはカイザポインターにミッションメモリーをセット。
 共に足に装着し、ENTERキーを押す。

―Exceed Charge―

 たちまちチャージが行われ、2人の足から放たれる赤と黄の錐。それはドラスの核が存在するであろう場所を狙って放たれる。
「とりゃ!」
「ふん!」
 飛び上がったファイズとカイザはキックの体制に入り、そのまま錐と一体となる。ドリルのように錐は回転し、ナイトが切り裂いた傷口を削っていく。
「この、この僕が……神になるべき、この僕が……負けるか!!」
 ドラスは回る2つの錐に尻尾を巻きつける。そして、削り取るために回る方向とは逆に回転させた。
 光は治まり、錐から弾き飛ばされる2人。だが、2人は役目を果たしたといえる。
 ドラスの左半身は半壊し、胸の中心部は露出していた。そこにはまるで人間の心臓のようにドクドクと鼓動する丸い物体があった。
 それは体の色とは違い、赤くはなく、くすんだ鋼の色をしている。そして、それには首輪がしっかりと巻かれていた。


「ドラス君!」
 今まで余裕で観戦していた冴子がついに悲鳴を上げる。
 無敵と思われたドラスの命はまさに風前の灯に見えたからだ。ドラスは強い。
 だが、どんなに強くても首輪が爆破されたら終わりなのだ。
「いくわよ、キング君!」
 援軍に向かうため、オーガドライバーを握り締め、隣の仲間に声をかける。
「勝手に行けば」
 だが、キングから返って来た言葉は否定の言葉。
 いかにも面倒くさそうに応えたキングの態度に冴子は激昂する。
「あなた、ドラス君と組んだんじゃないの?」
「組んださ。でも、それは面白いものを見るためだよ。僕の目的は参加者の殲滅じゃないからね。
 今、滅茶苦茶面白いところじゃん。10人を相手に勝てるか、負けるかの瀬戸際。
 邪魔する気はまったくないね」
 冴子はオーガドライバーを握り締めて思った。まず先にこの裏切り者を殺すべきではないかと。
「おいおい、まさか僕から殺そうと思っている?別に相手してやってもいいけど、僕と戦っている暇はないんじゃないかな」
 悔しいがキングの言う通りだった。行動は一刻を争う。戦わないといっている相手に時間をつぶしている暇はない。
「どうしたの?早く行けば」
「言われなくても」

―0・0・0・ENTER―

 オーガフォンにコードを入力し、腰に付けたベルトに装着させる。

―Complete―

 ベルトから発せられた金色のフォトンブラッドは冴子の身体を通り、黄金の血を持つ黒き戦士へと変貌させた。
 変身を完了させたオーガは研究所の屋上から飛び降り、地面へと着地する。
 そして、ドラスを助けるため、行動を開始しようとした。
「待て。……お前の相手は俺がする」
 そこに1人の男が立ち塞がる。先ほどまで怪人の姿をしていた男、神代剣だ。一足早く制限がかかったのだろう。
「どきなさい」
「悪いがそれはできない。元々、俺の役割はあなたの足止めだ。その役目、果たさせてもらう。……変身」

―HENSHIN―

 回収したサソードヤイバーにサソードゼクターを装着し、神代剣はサソードへの変身を遂げた。

―CAST OFF―

 そして、サソードゼクターの尻尾を押し込み、素早くライダーフォームへの二段変身を完了する。
 緑の瞳に紫色の身体を持つ剣のライダー、仮面ライダーサソード。
 オーガはミッションメモリーを差し込み、オーガストランザーから光刃を伸ばした。
「殺させはしない。あの子は私の願いを叶えてくれるかも知れない存在。殺させはしない!」
 ヒステリーを起こしたかのように声を高々と上げ、サソードへと斬りかかるオーガ。2回、3回と金属音を立てながら触れ合う2本の剣。
 攻撃力でいうならフォトンブラッドにより際限なく強化できる冥界の剣、オーガストランザーの方に部はある。
 しかし、剣の腕は英国貴族の血を引き、指南も受けたサソードの方が圧倒的に上。
 その上、サソードは中身こそ違うもののオーガとの対戦経験もある。
 そして、心の余裕も勝負には影響する。ドラスを助けるため、一刻も早く倒さなければならないオーガと仲間を信じ、時間を稼ぐことが目的のサソードではそれはあまりにも違いすぎた。
「そんな剣で、俺には勝てない!」
 サソードの剣が、オーガの装甲を切り裂いた。


 ドラスは自分が孤立無援なのを知った。
 冴子はサソードに抑えられ、キングは動こうとしない。そして、目の前には大勢の敵。
 ドラスは自分の思い通りにならないことに苛立つ。そして、同時に眼の前のライダーたちに深い憎しみを持つ。
 神たる自分に逆らう愚かな人間に。
(愚か……そうか、こいつらは愚かな人間なんだ。なら、この手が使えるかも知れない)
「お兄ちゃんたちに、良いこと教えてあげようか?麻生お兄ちゃんはまだ生きてるよ」
「何!?」
「僕は麻生お兄ちゃんを吸収して、今の力を手に入れたんだ。麻生お兄ちゃんは今も僕の中で生きている。
 でも、僕が死ぬと、お兄ちゃんも死んじゃうよ!」
 矢車たちに動揺が走る。麻生本人とは直接面識のない者ばかりではあるが、それでも麻生の勇猛ぶりは拡声器を通じて、全員に知れ渡っていた。
 その麻生が生きているというのだ。動揺しないわけはない。
「ハッハッハッハッハッハッハッ、お兄ちゃんたちには麻生お兄ちゃんは殺せないよね?
 だから、僕も殺すことはできないんだよ」
 ドラスは空中に浮遊する。赤でいられる内にこの場から逃亡する気だ。
 だが、それを解っていながら、誰もが動けない。
「バイバイ、楽しかったよ、お兄ちゃんた…ち!?」

―Exceed Charge―

 加速する瞬間、撃ち込まれた黄色の弾丸が、ドラスの動きを拘束する。
 撃ったのはカイザだ。カイザブレイガンを構え、ドラスを狙っている。
「ふざけるな。真理を守れなかった男のことなど知るか。
 そいつも罰を受けるべきだ。真理が味わった苦しみの一部だけでもな!」
「草加!」
 乾が制止の声を上げるが、草加は止まらない。カイザはカイザブレイガンを手に飛んだ。
 カイザは閃光になり、ドラスへと突進、その身体へ刃を打ち付ける。
「グゥラァァッァァァ!僕が!!僕がぁぁぁっ!!!」
 ドラスの色が赤からくすんだ鋼色に変わっていき、残っていた体の部分が溶けるように剥がれ落ちていく。
「死ねェェェェェェ!!!!」
 程なくして爆発が起こった。ドラスの体は塵となり、雨のように降り注いでいく。
 持ち主を失った怪魔稲妻剣のみがそこには残り、ドラスは散った。
 地面へと降り立つと同時に、カイザへの変身が解ける。
 ドラスとの戦いは首輪の制限を待つまでもなく、10分で終わりを告げたのだ。 


 オーガは押される一方だった。
 激しいサソードの攻撃に、オーガは後退を余儀なくされ、既にドラスを目視できない位置まで押し込まれていた。
(剣の腕が違いすぎる)
 一発逆転に願いを賭け、ベルトのENTERキーを押そうとする。
 しかし、サソードはその暇も与えない。

―RIDER SLASH―

 サソードヤイバーにより発生した十字型の衝撃波がオーガに炸裂する。
「あぁぁぁぁっ!」
 あまりの衝撃にオーガのベルトは吹き飛び、たちまち変身が解除される。
 オーガの厚い装甲のおかげか、冴子は致命傷は免れるが、背中を強く打ち、今は立ち上がることが出来ない。
「レディを殺すのに抵抗はあるが……済まない。しばらく眠っていてくれ」
 サソードは止めの刃を振り上げた。
「ぐわぁぁっ!」
 だが、悲鳴を上げたのはサソードだった。
 突如、背中に激しい電撃が走る。
「な、何者だ!」
 振り返るとそこには複数の人間が立っていた。その内、特に1人の人物にサソードは眼を引かれる。
 黄金の仮面に、黒きマント。手には長い杖。その男は立っているだけで、周りの人間にカリスマと威圧感を与えた。
 まるで貴族といっても相違ない悠然とした佇まいの男は露出した唇から言葉を紡いだ。
「余の名は、ジャーク」


新生クライシス帝国

 相川始は物陰からドラスと南たちとの戦いの一部始終を見ていた。
 そして、今、激しい戦いは終わり、皆、一様に疲労している。まさに漁夫の利を狙うには最適な状況だ。
 だが、始はまだ動かない。
(あの紫のライダーが戻ってくるまで待つ。慎重を重ねるのに越したことはない)
 始の手には首輪探知機。これがあれば、ある一定の距離までは姿を隠して、対象を観察することができる。
 今はサソードとオーガの反応は外れているが、戻ってくれば、すぐにこの探知機に映し出されるはずだ。
「うん?」
 首輪探知機に新たな反応が映る。サソードかと思ったが、その反応は6つ。そして、その反応は一直線に南たちの元へと向かっていた。
「これは」
 来るのだ、今からここに新たなるチームが。
 始は生唾を飲み込む。
 もしかすると、南たちの味方かも知れない。だが、始の本能はその可能性を排除していた。
 今から現れるチームは自分にとっても、南にとっても敵。
 根拠はないが、漠然とした危機感が始の本能を刺激していた。


「これは酷い」
 変身を解いた木野が、同じく変身を解いた天道の身体を見ていた。
「よくこんな身体で戦えたものです」
 天道の体中には拷問された後が残っていた。だが、それもドラスに施された処置に比べればかわいいものだ。
 天道の体にはチューブが埋め込まれ、そこから特殊な溶液を身体に流さないと機械と生体との拒否反応が起こる仕組みだ。
 元々、生体と機械の相性は決して良くない。このままだとすぐにでも、拒否反応が現れ、そのまま死んでしまう恐れがある。
「とにかく場所を移りましょう。治療するにも設備が必要です」
 その言葉が気に入らなかったのか、傍らにいた草加が口をはさむ。
キングとかいう奴と、影山は追わないのかな?神代という奴もこのまま逃げてしまうじゃないのかい?」
「今は天道君の治療が優先です」
 予想していた答えに、草加は歯噛みする。真理の真の仇は影山冴子
 草加は今すぐにでも冴子を追いたかった。しかし、天道を治療され、脱出でもされては元も子もない。
(仕込みは出来ている。あとはチャンスさえあれば……)
 草加はその場で何か起きるのをしばし待った。

「南さん、秋山さん、しっかりしてください」
 自分も大怪我を負っているにも関わらず、気絶した南と秋山に、懸命に呼びかける氷川。
 その甲斐あってか、秋山は相変わらず深い眠りに陥っているものの、南はゆっくりと眼を開ける。
「気が付きましたか」
「はっ、ドラスは!」
「……大丈夫です。ドラスは倒しました」
 そのために麻生も犠牲になったという事実に氷川は心を痛める。
 あっさりと止めを刺した草加に反感はあったが、あの時、倒さなければならなかったのも事実。
 謂わば自分たちに代わり、泥を被った役割の草加を責めることは氷川には出来なかった。
「そうですか、よかった」
 南の笑顔を見て、氷川はしばらくの間、南には麻生のことを黙っておくことにした。

 矢車、乾、リュウガの3人は辺りの警戒を続けていた。
 一番、気をつけなければならないのは、戦いの後。漁夫の利を狙って、奇襲を掛けてこないとも限らない。
 まだ、名簿には敵となるべき人物の名前があるのだ。
「乾くん、君はもうひとつ、変身があるんだね?」
「ああ」
 ぶっきらぼうに答える乾。
「だったら、もしもの時はお願いできるか?今、襲われたら、戦えるのは君と木野さんだけだ」
「………………ああ」
 乾はオルフェノクとしての自分の姿を見せるべきか、躊躇ったが、真摯な瞳を向ける矢車に、結局、了承することにした。
 できれば変身したくはないが、その『もしも』という状況が来れば、そうも言ってられない。
 せめて、その『もしも』という状況が来ないことを乾は祈る。だが、その祈りはリュウガの言葉によって、あっさりと霧散した。
「どうやら、早速、そのもしもの時というやつが来たらしいぞ」
 リュウガの視線の先には多数の人物の姿があった。
 黄金の仮面をつけ悠然と立つ男に、白い礼服のようなものを着た眼つきの鋭い男。そして、その男に拘束されている青年。
 リュウガたちは連戦に向けて、身を硬くする。
「お前は」
 第一声を上げたのは南光太郎だった。その声に呼応して、リーダー格と思わしき人物の口が開かれる。
「ふっふっふっ、久しぶりだな南光太郎
 今の南光太郎は1度しか会ったことがないが、そのとき受けた強烈なプレッシャーは嫌でも覚えている。
「ジャーク将軍!やはり、この戦いはお前達の仕業か」
「なんのことだ?まあいい、これを見ろ!」
 ジャークは手にした杖で、白い礼服を着た男に拘束される、ひとりの青年を指した。
「助けてください」
 弱気な顔をして、助けを求める青年。その顔に見覚えがあったリュウガは、思わずその青年の名前を口にする。
上城睦月か」
 その名前に今度は木野が反応する。
(彼が上城睦月。仮面ライダーレンゲル)
 橘が最後まで心配していた彼の仲間。拘束され弱気な顔を見せる睦月に、木野はいつでも変身できるよう懐のギャレンバックルに手を添えた。
 ジャーク将軍の言葉は続く。
「こいつの命が惜しくば、天道総司の身柄と、脱出するためのアイテムとやらを渡してもらおうか?」
「誰がてめぇの言うことなんて、聞くかよ!」
 ジャーク将軍の発言に、今にも飛び掛らん勢いの乾を、矢車は制した。
 事は慎重に運ばなければならない。
 人数を見る限り、相手はジャーク将軍、ガライの2人。
 一方、こちらは戦力となるのは乾巧と木野薫。単純に2対2と数の上では互角だが、ふたりはドラスとの戦いで傷も負っている。
 いきなり襲い掛かってこないところを見ると、交渉の余地はあるはずだ。交渉で済むならそれにこしたことはない。
「ジャーク将軍といったな。お前の目的はなんだ?」
「ほぉ、他と違って、少しは話が通じるらしいな。無論、余たちの一番の目的は脱出だ。貴様らも余に従うのなら、一緒に脱出させてやっても良い」
「一緒に脱出させてやっても良いか。随分と上からの言葉だな。脱出は天道にしかできない。
 そして、首輪の解析を行えるメンバーも俺たちのチームにいる。協力を申し出るのはそちらの方ではないのか?」
「チームには優秀な指揮官と、優秀な戦士が必要であろう?それを提供してやると言ってるのだ」
「悪いがどちらとも間に合っている」
 交渉の基本は不必要な譲歩をしないこと。弱みを見せれば、そこにつけこまれ、不利益を生む。
 例え、ハッタリとはいえども、一歩も引かない、気概が必要だ。
 場に一触即発の空気が流れる。
「ふむ、交渉は決裂かな」
「そうでもないさ。俺たちの目的も脱出だ。そちらが協力を申し出るなら、こちらも断りはしない」
「ジャーク!」
 隣にいる白服の男は傍から見て分かるぐらい、イライラしている。明らかにこの提案が不服らしい。
「落ち着け、ガライ!よかろう、余も今、優先すべきは何か、それぐらい心得ているつもりだ。
 今までのことは水に流し、そちらと協力しようではないか。……友好の印だ。ガライ、睦月を解放してやれ」
 ジャーク将軍は命令するが、白服の男――ガライは睦月を放そうとしない。
「ガライ!」
 叱責にガライはしぶしぶといった様子で睦月を解放する。
 矢車は内心、溜飲を下げた。
(信用できるかどうかは別として、今は絶対に戦いを避けなければならない。
 変身できるようになるまでの2時間、時間を稼げば、後は何とでもなる)
「ときに首輪を外せる技術者というのはどなたかな?解析のための首輪を渡したいのだが」
「それは……」
「私よ!」
 言葉を濁した矢車を遮り、小沢が声を上げる。
「ほぉ」
 小沢は納得してないのだろう。激しくジャーク将軍をにらみつける。だが、それとは対象的にジャーク将軍は口元に笑みを作った。
「ふふっ、結城丈二の姿がなかったときはどうしたものかと思ったが、これで博士と脱出アイテムと使用者が揃ったわけだな。
 ガライ、暴れてよいぞ!」
 ガライはその言葉に冷酷な笑みを浮かべたかと思うと、一瞬にして白いコブラの怪人に姿を変えた。
「あんた、あの時の!ちょっと一体どういうつもり?」
 ジャーク将軍に抗議の声をあげ、詰め寄る小沢。だが、ジャーク将軍はその行動ににやりと笑うと、杖で小沢の鳩尾を突いた。
「っ」
「ふふっ、こういうことよ」
 一瞬にして、小沢の意識は飛ばされる。
 その様にガライは満足そうに微笑むと掌より剣を生み出した。そして、明確な殺意を矢車たちに向ける。
「協力するのではなかったのか!?」
 抗議の声を上げる矢車をジャークは嘲笑う。
「ふっ、なぜ余たちが下等な人間などと協力しなければならん。それに今、おぬしらは変身できぬのであろう?このチャンスを逃す手はないわ」
 凄むジャークに怯む矢車。思わず同様を含んだ声で疑問を返す。
「何故それを!」
「私が教えたのよ」
 物陰から姿を現したのは銀色の身体を持つ、海老の怪人。だが、事前の情報で、矢車はそいつが何者かわかった。
影山冴子か!」
「ドラスくんの仇、討たせてもらうわ」
 ゆっくりと迫ってくるガライとロブスターオルフェノク。
「そんなこと、させてたまるか!」
 闘志を漲らさせ、前に出た乾の顔に、黒い紋様が浮かび上がる。
「ウォォォォォォォッ!」
 咆哮と共に乾巧の姿が怪人へと変わっていく。
 全身に真っ白な獣毛が生え、背中からは刃が突き出し、顔にはたてがみを備える。
 それは白き狼の姿。影山冴子と同じく、オルフェノクでありながら、人間の心を持ち続ける怪人、ウルフオルフェノク。
(これが乾君のもうひとつの変身か)
 その姿に矢車は驚くが、事態は急を要する。呆けてはいられない。
 矢車はこの場で変身できるもう一人の人物に声を掛ける。
「木野さん!」
 木野は頷くと、懐からギャレンバックルを取り出す。ギャレンへと変身するためだ。
「な、なんでギャレンバックルを」
「詳しい説明は後だ」
 睦月の疑問の声を無視し、木野はギャレンバックルへとカテゴリーAのカードを差し込もうとする。
 だが、その手は睦月によって、抑えられた。
「何をする」
「変身はさせない。それは橘さんのものだ。それにジャーク将軍の邪魔もさせはしない」
「お前……」
 木野は睦月の眼に、深い闇がはびこっている様を見た。
「返せ!」
 睦月は力づくでギャレンバックルを奪い取る。そして、懐から自分の変身道具であるレンゲルバックルを取り出すと、カテゴリーAのカードを装填した。
 たちまち睦月の腰に巻きつくレンゲルバックル。
「変身」

―OPEN UP―

 睦月の手によって開かれるレンゲルバックル。
 そのクラブの紋章から放たれるクラブのAを模した光はたちまち人間大にまで拡大されると、近くにいた木野を障害物と認識し、弾き飛ばす。
 そして、その光は意思を持っているかのように睦月に近寄ると、その身体に纏わり、睦月をレンゲルへと変えた。
 紫に染まったレンゲルの瞳。頭部にある蜘蛛の眼のような3つの赤い玉が怪しく発光する。
「これが……橘の言っていた……睦月の……闇…か」
 木野は橘の憂慮していたことを知り、なんとかしたいという思いを持ちながらも、その意識は沈んでいった。
 レンゲルはその様を確認すると、ウルフオルフェノクへと挑んでいく。
「とりゃっ!」
 袈裟懸けに振り下ろされたレンゲルラウザーが前方の相手に集中していたウルフオルフェノクの背中を切り裂く。
「てめぇ!」
 レンゲルに反撃を試みるが、今度はその隙にガライが、ロブスターオルフェノクが剣を振るう。
 ガライ、ロブスターオルフェノク、そして、レンゲルの3人を同時に相手にし、ウルフオルフェノクは苦戦を強いられる。
 連戦の上に3vs1では勝ち目などあろうはずがない。
 徐々にウルフオルフェノクの体力は削られていった。
(あれは無理だな。ここで乾には死んでもらってもいいが、どうするかな?)
 草加にとって、今の場は望んだ展開だった。上手くいけば一気に人数を減らせる。
 だが、これからの展開を考えると、まだ手駒になりそうな奴らは確保しておきたい。しかし、それは乾でなくても構わない。
「おい、リュウガ、氷川、南、何をぼさっとしている。気絶してる奴らを連れて、研究所に避難するぞ。乾の頑張りを無駄にするつもりか!」
 お人好しの3人に心にもないことを告げ、移動を促す。
(まったく世話が……なに!)
 突如、研究所の扉が爆発を起こす。すると、それに呼応するかのように研究所の各部が爆発していく。
 たちまち立ち上っていく炎。そして、研究所からはまた別の怪人が姿を現した。
 白きタイツを着た魔人――ジェネラルシャドウ。
「ふっ、残念だったな。この施設は破壊させてもらったぞ」
 ジェネラルシャドウの手には血のように紅い刀身の剣と研究所から回収したのか複数のディバック。
 草加は燃える研究所をバックに佇むジェネラルシャドウにこの集団の恐ろしさを垣間見る。
(ちっ、これはさすがにやり過ぎだ。さあ、どうする)
 草加が視線を這わすと、リュウガたちもジェネラルシャドウを睨みつけていた。
 そして、その視線は2m前方にある大地に刺さった怪魔稲妻剣を横目に確認している。
(生身だというのに、あれで対抗するつもりか。こんな状況だというのに、なんとも馬鹿な奴らだ)
 内心悪態を突きつつ、草加はリュウガたちに指示を飛ばした。
リュウガ、氷川、南、こいつの相手は俺がする。君たちはどこでもいいから、さっさと避難しろ。今は足手まといに構っている暇はない」
(こんな奴らがいるのに、君達に今は死んでもらっちゃ困るんだよ)
 草加は腰につけていたカイザドライバーを放り投げる。そして、乾のディパックからファイズフォンとベルトを取り出すと、代わりに腰へと装着した。

―5・5・5・ENTER―

 ベルトをつけると、素早くコードを入力する。
「変身」
 装填させるファイズフォン。たちまち草加の身体には赤い閃光が走り、乾とは別のファイズが誕生する。
 ファイズは首の辺りをさわり、変身の心地を確かめる。
(やっぱり、カイザの方が合ってるかな?)
 ファイズは、ファイズショットを構え、ジェネラルシャドウに立ち向かっていった。


「な、何者だ、あいつら」
 背中に激痛が走る。神代の背中は焼け焦げていた。
 不意討ち気味に浴びた最初の電撃で、すべては決まった。
 しびれた身体は満足にうごかず、白タイツの怪人の一太刀で大地に伏せることになった。
「このままでは奴らに天道たちが」
 自分に止めを刺さなかったことから考えると、目的は参加者の抹殺ではなく、脱出。
 ただ、まったく交渉の余地もなかったことを考えると、相当危険な存在だ。
 神代は懐からブレイバックルを取り出す。今の自分はワームにもサソードにもなれない。
 だが、彼ならばまだ戦える。
「頼む、天道たちを助けてやってくれ」
 神代は自分が擬態した人格に助っ人を願う。その男は笑顔で頷いた。


「これは詰みだな」
 戦いのプロでなくとも分かるほど、その場はジャーク将軍のチームが支配していた。
 3人の怪人になす術もなく、弄ばれるウルフオルフェノク。
 同じく、善戦しているかのように見えるが、完璧にジェネラルシャドウに遊ばれているファイズ。
 その様子をジャーク将軍は満足気に見つめている。ふいに手助けをしたい衝動に駆られるが、それを始は抑える。
 これから自分がやろうとしていることは、今、ジャーク将軍たちがやっていることと何ら変わりはないのだ。
 迷いを断ち切るため、その惨状から眼を逸らす始。だが、眼を閉じても耳は聞こえる。
 始の耳に、その雄叫びが轟いた。
「ウェェェイ!」
「この声は」
 始は急ぎ、場を確認する。そこには青い体に銀色の装甲を持つカブトムシのライダーが乱入していた。
 ウルフオルフェノクに群がる3人の怪人に、剣を構え、決死に挑んでいる。
(剣崎……)
 彼が乱入することには何の不思議もない。なぜなら彼は人を守るためにライダーになった男なのだから。
「剣崎……剣崎!!」
 始は腰のベルトにつけられたバックルの中心にカテゴリーAのカードを通す。
 ブレイドたちが使うライダーシステムの元となった力。アンデッドへの擬態能力。
 一瞬にして始は姿を変える。今までのヒューマンアンデッドの姿から、マンティスアンデッドの姿へと。
 黒いスーツにハートを模したかのような赤い複眼。
 その力から伝説のアンデッドと呼ばれ、カリスという固有名称まで得たアンデッドの姿。
 複眼となった眼を使い、カリスは獲物を狙う捕食者の如く、素早く剣崎――ブレイドたちの位置関係を確認した。
 丁度良く、ブレイドはウルフオルフェノクを庇い、ガライたちから一定の間合いを取り、離れている。
 始の目的は剣崎を優勝させること。ならば、彼を殺させるわけにはいかないのだ。
「ウォォォッ!」
 カリスは物陰から飛び出すと、雄叫びを上げ、手に携えたカリスアローから光の矢を連射させた。
 不意討ちに、ガライたちは対処できず、光の矢は次々と命中していく。
 怯むガライたち。一方、現れたカリスにブレイドは喜びの声を上げた。
「始、お前も来てくれたのか!」
「ああ」
 カリスアローを構えたまま、カリスはブレイドの言葉に頷く。しかし、ふたりともわかっていた。
 再会を喜ぶのは後、今は戦いの時。
「剣崎、生きていたのか。そして、ジョーカー、お前も!」
 カリスアローのダメージから立ち直り、ふたりの共通の知り合いであるレンゲルが憎しみの声を上げる。
「睦月、またカテゴリーAに乗っ取られたのか!」
「うるさい、俺は乗っ取られてなんていない。」
 レンゲルラウザーを振り回し、ブレイドとカリスを牽制するレンゲル。
 だが、その攻撃には動揺が見られた。カテゴリーAに乗っ取られかけているといった方が正しいようだ。
「それならまた、俺たちがカテゴリーAから解放してやる!」
 振り下ろされるブレイラウザーとそれを受け止めるレンゲルラウザー。
 共に同じ先輩を持つライダー同士の戦い。一方、カリスには、ガライが対峙する。
「貴様は人間ではないようだな。何故、脆弱な生物の味方をする?」
「お前には関係のないことだ」
 カリスはカリスアローの反りを立てると、ガライへと向かっていった。


 突然の2人の乱入者に、ジャーク将軍は今が引き際であると判断する。
 目的はあくまで脱出のための『鍵』の確保。全滅が目的ではない。
「シャドウ!そろそろ引くぞ、準備を」
「了解した」
「了解?何の準備か知らないけど、ここを通すと思ってるのかな?」
 ファイティングポーズをとり、ジェネラルシャドウを威嚇するファイズ。
 その姿にジェネラルシャドウは苦笑する。
「どうやら実力の差というものがわかっていないらしいな」
 ジェネラルシャドウはサタンサーベルに力を込める。赤く光る剣。その力を一気に解き放つ。
 サタンサーベルより溢れた出た光はファイズを包み込み、一撃でその装甲を無効にした。
「……っ!!」
 一瞬にして草加へと戻るファイズ。その眼は驚きに見開かれていた。ゆっくりと草加の身体は崩れ落ちていく。
 だが、ジェネラルシャドウはその様に眼もくれず、その場から去っていく。
 その様子を確認した、ジャーク将軍は天道たちへと近寄っていった。
「確か、それがここから脱出するための鍵であったな」
 天道の手に握られるハイパーゼクター。そして、ベルト。冴子から情報は提供済みだ。
「女と共に一緒に来てもらうぞ」
「断る。太陽は等しく皆に降り注ぐものだ。お前だけのものではない」
「太陽か。その名を名乗る者はまったくどいつもこいつも」
 ジャーク将軍の杖から電撃が放たれる。その電撃は天道の身体を捉えると、傷口を激しく焼いた。
「やめろ、ジャーク将軍」
 南がジャーク将軍の杖を抑える。そして、リュウガと氷川のふたりはジャーク将軍の身体を抑えにかかる。
「しゃらくさいわ」
 だが、それもジャーク将軍の進軍を止めることは出来なかった。
 大人3人の体重を軽々と持ち上げると、南、氷川と順番に放り投げる。そして、最後のひとり、リュウガの首を握り、高々と上げた。
「ぐっ、が……ぼっ」
 脳に運ばれる酸素を妨げられ、苦しげな声を上げるリュウガ。一気に締め上げ、息の根を止めようとジャーク将軍は力を込める。
 しかし、その苦しむ顔を見て、ふと何かを思い出したジャーク将軍は手の力を緩めた。
「その顔、城戸真司か。そういえば貴様にも用があったな。一緒に来てもらおう」
 首から手を放すと同時に、落下するリュウガの鳩尾を思いっきり、杖で突く。
「……っっっ」
 たちまちリュウガの身体からは力が全て抜き出る。そして、意識は虚空へと消えていった。
 その光景を見て、矢車は焦る。このままでは全ての希望はジャーク将軍の手の中に。
 天道の傍らに残るは矢車とひよりのふたりのみ。ブレイド、カリス、ウルフオルフェノクは他の怪人と戦闘中だ。
(あと1人、あと1人誰かがいれば)
 恐怖から、動くことが出来ない矢車。しかし、矢車に代わり、ひよりが動いた。
「天道に手を出すな」
 ひよりはワームへと変身すると、ジャーク将軍に体当たりを敢行する。
「ぬぉ」
 その決死の体当たりにさすがのジャーク将軍といえども、尻餅をついた。
 だが、その一撃はジャーク将軍の感情を激しく揺さぶる。
「貴様、余に尻餅をつかせるとは、覚悟は出来ておるのだろうな?」
 背中のマントが広がり、一瞬、ジャーク将軍の姿を覆いつくす。
 そして、そのマントが天高く舞い上がると、そこには姿を変えたジャーク将軍の姿があった。
 頭から鬼のように太く長く伸びた角。身体中に装着された黄金の鎧。身軽になったその姿は一目で戦闘に特化した姿だと判断できる。
 右手には杖に代わり、獲物を重量で押し切る巨大な太刀が握られ、ただでさえ増した威圧感を更に確固たるものにしていた。
 その武人こそ、グランザイラスを超えるクライシス帝国最強の怪人、ジャークミドラ。
「死ぬがよい!」
 ジャークミドラの眼が光り、角に雷撃が充填されていく。
 その様をひよりは見ているしかなかった。恐怖のあまり身体がまったく動かないのだ。
 やがて充填が完了し、角から雷撃が放たれた。
「ひより!」
 ひよりを庇い、その身を投げ出す天道。その身に雷撃は容赦なく降り注ぐ。
「っっっっっっっ!」
 口が悲鳴を上げそうになるのを必死に抑え、その攻撃に天道は耐える。
「まったく何をしておる。余がお主に気付いて手加減せねば、お主は死ぬところであったぞ」
 天道は聞こえていないのか、聞くつもりがないのか、自分の身体よりひよりが無事かを確認した。
 庇っても雷撃はひよりまで届いていた。ひよりの姿はワームより人間のそれへと戻っている。
 ダメージを受けた証拠だ。
「大丈夫か、ひより」
「て、天道」
「ふはははっ、憐れよのう」
 ジャークミドラは天道の顎目掛けて、蹴りを放つ。そして、剣の横でひよりを逆の方向へと跳ね飛ばした。
 倒れ伏せる天道からハイパーゼクターとベルトを奪い取る。
(もう打つ手はないのか……)
 その時、ふと矢車の瞳に写るひとつのベルト。草加がファイズへの変身のため、投げ出したベルトだ。
「カイザドライバー」
 それに気付いた矢車は走った。転がるカイザドライバーに素早く近寄り、拾い上げる。
「ぬぅ、それは」
「天道は皆の希望だ。殺させるわけにはいかない」
 矢車はカイザのベルトを腰に巻く。
 変身のやり方はわかっている。あとはカイザフォンにコードを入力するだけだ。
「ふっ、よいのかな。そのベルトは呪われたベルトだぞ」
 『9』のボタンを押しかけた矢車の指が止まる。
 ジャークミドラが持つ支給品のデータブックにはカイザドライバーについても記載されていた。
 適応者以外が変身すると、変身が解けた後、灰となって消えると。
「……ハッタリか?」
「ハッタリと思うなら、変身するがよい」
 ジャークミドラのあまりに堂々とした態度に矢車は迷う。もし、その言葉が真実だったらと思うと、恐怖がどんどん沸いてくる。
 矢車の顔には汗がびっしりと浮かんでいた。
「矢車、変身するな」
 天道から掛けられる言葉。その言葉に矢車の心は折れる。
 矢車は変身を断念し、カイザフォンを持つ手を下ろした。
「そうだ、それでよい」
 これで全ての希望は費えた。絶望を味わう矢車に天道の声がまたも掛けられる。 
「早くそれを渡せ、俺が変身する」
「何!?」
「馬鹿な、余の言っていることは嘘ではない。変身すれば死ぬのだぞ」
「ひよりは俺が守る。誰にも手は出させない。矢車!」
 天道が何のつもりで変身すると言っているのかわからなかった。だが、天道はいつも自分の想像を超える発想と実力で、事態を解決へと導いてきた。
(だから今度も)
 決心した矢車は、カイザフォンとカイザドライバーを天道に向け、投げた。
「させぬわ!」
 宙に舞うカイザドライバーにジャークミドラは手を伸ばす。しかし、飛来した蜂型の爆弾が邪魔をする。
 矢車の手に握られたのはゼクトマイザー。
「最後のマイザーボマーだ」
 カイザドライバーは天道の手に。天道はカイザフォンにコードを入力した。

―9・1・3・ENTER―

「変身」
 カブトゼクターをベルトに填め込むように、カイザフォンをカイザドライバーに装填する。

―Complete―

 カイザドライバーより発せられた黄色の光が天道に巻きつき、その姿をカイザへと変える。
 カイザに変身した天道は、カイザブレイガンを手にジャークミドラに突進していった。
「うぉぉぉぉっ!」
 雄叫びを上げながら、光弾を次から次へと撃ちこんでいく。
 ジャークミドラは剣を盾代わりにそれを受け止める。だが、カイザはカイザブレイガンの引き金を引き続ける。
 あっという間に、ふたりの間合いは詰まった。

―Rady―

 素早くミッションメモリーをセット。カイザブレイガンから伸びた光刃を、ジャークミドラの機械部が露出した頭に思いっきり叩きつけた。
「グゥッ!」
 激しく飛び散る火花。鋭い痛みがジャークミドラの身体を走る。
 だが、先程とは違い、その一撃はジャークミドラの頭を冷やす結果となる。
 今の自分達の目的は抹殺ではないのだ。耳を澄ますと待ち望んでいた音も聞こえてきている。
「まあよかろう。目的のものは手に入った。ここは撤退するとしよう」
 轟音を響かせ、その場へと飛び込んでくる巨大な車両。Gトレーラーだ。
 Gトレーラーはジャークミドラの前まで来ると、その巨体を停止させる。運転席にはジェネラルシャドウが座っていた。
「準備はできたのか?」
「うむ。まあ、脱出のための鍵はひとつ減ってしまったが、このまま死に行く者に拘ったところでどうしようもあるまい」
 小沢とリュウガを担ぎ、Gトレーラーに乗り込むジャークミドラ。その様子を見たガライ、レンゲル、ロブスターオルフェノクも戦いを切り上げ、Gトレーラーに集まってくる。
「ジャーク」
「皆、ご苦労であった。目的は達せられた。ここは退くぞ」
 ガライたちは頷き、Gトレーラーへと乗り込んでいく。
「まあ、精々頑張るが良い。次に会う時は貴様らの命をいただく。その時を楽しみに待っているが良い。ウワハッハッハッハッハッハッ!!」
「フハハハハハハッ」
「フッフッフッフッフッフッ」
「あはははははっ」
「ウフフフフ」
 笑い声と共に、Gトレーラーは排気ガスを上げて、その場から走り去った。
 退いたのはジャーク将軍。しかし、勝ったのはジャーク将軍に率いられた彼ら、新生クライシス帝国であった。


「「天道」」
 嵐が過ぎ去り、矢車とひよりのふたりが心配そうに天道の名を呼ぶ。
 天道はカイザの変身を解除しない。やはりジャーク将軍の言っていることは真実なのだと矢車は確信する。
 だが、同時に天道ならなんとかしてくれるはずだと期待もしていた。きっと思いもよらぬ方法でこの状況を打開するつもりなのだ。
「矢車」
「なんだ」
 そうきっとこれから紡がれる言葉は、自分たちに希望へと導いてくれる言葉のはずだ。
 しかし、その言葉は矢車の想像していたものとまったく違った。
「ひよりを頼む」
「……お前は何を言ってるんだ?」
 天道の言葉に耳を疑う。
「俺はここまでだ。あとはお前に任せる」
「馬鹿な。お前のことだ。何か考えがあったんじゃないのか!」
 天道に詰め寄る矢車。だが、言いたいことは言ったと言わんばかりに、矢車から視線を外すと、今度はひよりへと視線を向けた。
「ひより、俺はお前を最後まで守ることはできなかった。だが、リュウガや氷川はきっとお前を助けてくれる」
 ひよりは涙を浮かべ、声が出ない。
 天道は右手でひよりの手を握る。そして、開いた左手でカイザフォンを引き抜くと、解除のボタンを押した。
 たちまち、カイザへの変身が解除されていく。身体に纏っていた黄色の光はベルトに治まり、装甲は霧散していった。
 そして、カイザの仮面が取れたとき、天道の顔は微笑んでいた。
「お前は……なぜ笑ってる?」
 泣き顔のまま、懸命に紡がれたひよりの言葉。それに天道は、ひよりの眼をまっすぐに見つめ、応えた。
「おばあちゃんが言っていた。散り際に微笑まぬものは、生まれ変われないとな」
 彼の最後の言葉は皮肉にも、別の時空の天道が紡いだ言葉と同じものだった。
 天道の肌の色が灰色に代わり、少しずつ崩れ落ちていく。天道は笑顔のまま、灰になり文字通り散った。
 ひよりの手にはわずかな灰のみが残った。


 Gトレーラーの車内。運転手を睦月へと交代し、ジャーク将軍たちは一路目的の場所を目指す。
 次の目的の場所はもうひとつの研究施設。ジャーク将軍に支給された地図にはもうひとつの研究所の存在が記されていた。
 しかも、そこは見た目からはそういう施設であることはわかりにくい。他の参加者は気付いていないだろう。
 その研究所はまさに自分達に相応しい場所といえた。
「助かったわ、もう少しでやられるところだったもの。でも、どうして助けてくれたの?」
 今回の戦果を分析しているジャーク将軍に冴子が話しかけてくる。
「ふっ、簡単な話しだ。貴様にも闇が見えた。闇を持つものこそ、我が盟友に相応しい。それだけよ」
「………」
 冴子は思う。なんとも自分はついている。仮面ライダーたちは自分と比べ物にならないほどに強い。自分ひとりでは到底生き残ることなど出来ないだろう。
 しかし、自分には理解者と言い換えても相違ない人物が付いていてくれている。それは幸運以外の何者でもない。
(ドラスくん、貴方との一時は楽しかったわ。でも、あなたは負けた。これからはジャーク将軍と頑張るわ。だから、さよならね)
 冴子はドラスに別れを告げると、傷を癒すために眠ることにした。

【ドラス 死亡】
天道総司 死亡】
残り26人
矢車想@仮面ライダーカブト】
【1日目 現時刻:夕方】
【現在地:市街地D-6】
[時間軸]:8話 ザビー資格者
[状態]:疲労と悲しみと絶望と。キックホッパーに2時間変身不可。
[装備]:ライダーブレス(ザビーゼクター破壊)。ホッパーゼクター&ホッパー用ZECTバックル。
[道具]:ゼクトマイザー。3人分のデイバック(佐伯、純子、矢車)。カイザドライバー(カイザブレイガン、カイザポインター)。
 トランシーバー(現在地から3エリア分まで相互通信可能)。
[思考・状況]
1:天道の死に深い悲しみと絶望。
2:仲間を集めてパーフェクトハーモニーで脱出!
3:戦闘力の確保。
4:リュウガに僅かに不信感。
[備考]
※1:クライシスと神崎士郎が利害の一致で手を組んでいる可能性が高いと考えています。
※2:ゼクトマイザーは制限により弾数に限りがあります。現在、弾切れです。

[大集団全員の共通事項]
時間軸にずれがあること、異世界から連れてこられたことは情報として得ました。
仲間である人物と敵であろう人物の共通認識がされました。

日下部ひより@仮面ライダーカブト】
【1日目 現時刻:夕方】
【現在地:市街地D-6】
[時間軸]:本編中盤 シシーラワーム覚醒後。
[状態]:右肩に重傷(応急処置済み)。わずかの打撲と火傷。ワームに2時間変身不可。
[装備]:なし
[道具]:なし
[思考・状況]
1:天道と加賀美の死に深い悲しみ。
2:シャドームーンはどうしているだろう?

[大集団全員の共通事項]
時間軸にずれがあること、異世界から連れてこられたことは情報として得ました。
仲間である人物と敵であろう人物の共通認識がされました。

神代剣@仮面ライダーカブト】
【1日目 現時刻:夕方】
【現在地:市街地D-6】
[時間軸]:スコルピオワームとして死んだ後。
[状態]:中程度の負傷。背中に斬撃による傷。始への憤り。剣崎に擬態中。
[装備]:サソードヤイバー。剣崎の装備一式。
[道具]:陰陽環(使い方は不明)。 ラウズアブゾーバ
    ラウズカード(スペードのA、2、3、5、6、9、10。ダイヤの7、9、J。クラブの8、9)
[思考・状況]
1:天道の死に悲しみ。
2:始が手を汚す前に自分の手で殺す。
3:この戦いに勝ち残り、ワームの存在を無かったことにすることで贖罪を行う。
4:さらに、自分以外が幸せになれる世界を創る。
5:秋山蓮といずれ決着をつける。
6:氷川の決闘の申し出を受ける。
[備考]
※1:神代は食パンを「パンに良く似た食べ物」だと思ってます。
※2:剣崎と神代剣両方の姿に切り替えることができます。剣崎の記憶にある人物と遭遇しそうなら、剣崎の姿に切り替えるつもりです。
※3:神代剣結城丈二への擬態能力を得ました。但し、ライダーマンへの変身は出来ません。
※4:神代剣は首輪の解除方法を得ました。但し、実際に首輪を解除できるかは不明です。

[大集団全員の共通事項]
時間軸にずれがあること、異世界から連れてこられたことは情報として得ました。
仲間である人物と敵であろう人物の共通認識がされました。

草加雅人@仮面ライダー555】
【1日目 現時刻:夕方】
【現在地:市街地D-6】
[時間軸]:ファイズ終盤。
[状態]:背中に切り傷。全身に強度の打撲。参加者全員への強い憎悪。冴子に特に強い憎悪。気絶中。
[装備]:ファイズドライバー(ファイズポインター、ファイズショット)
[道具]:配給品一式
[思考・状況]
1:このメンバーを利用して、冴子に復讐。
2:ゲームの参加者の皆殺し。
3:馬鹿を騙し、手駒にする。
[備考]
※1:珠純子の死を秋山蓮に擦りつけようと考えています。

[大集団全員の共通事項]
時間軸にずれがあること、異世界から連れてこられたことは情報として得ました。
仲間である人物と敵であろう人物の共通認識がされました。

秋山蓮@仮面ライダー龍騎】
【1日目 現時刻:夕方】
【現在地:市街地D-6】
[時間軸]:34話龍騎サバイブ戦闘前後。
[状態]:中度の負傷。気絶中。2時間変身不能。
[装備]:カードデッキ(ナイト)
[道具]:配給品一式。サバイブ(疾風)
[思考・状況]
1:戦いを続ける。
2:神代を逃がしはしない。
3:リュウガに話しがある。

[大集団全員の共通事項]
時間軸にずれがあること、異世界から連れてこられたことは情報として得ました。
仲間である人物と敵であろう人物の共通認識がされました。

氷川誠@仮面ライダーアギト】
【1日目 現時刻:夕方】
【現在地:市街地D-6】
[時間軸]:最終話近辺
[状態]:中程度の負傷。胸に大火傷と骨にヒビ。気絶中。2時間変身不能。
[装備]:拳銃(弾一つ消費)。手錠等の警察装備一式(但し無線は使えず、手錠はF-4のビル内に放置)。
    ガタックゼクター&ベルト。GX-05ケルベロス(但し、GX弾、手甲弾は全て消費)
[道具]:但し書きが書かれた名簿。デザートイーグル.357Magnum(4/9+1) 。
    デイバック五人分(氷川、ひより、リュウガ、岬、明日夢) 。
[思考・状況]
1:リュウガを信頼。
2:津上翔一との合流。
3:此処から脱出する。
4:神代と決闘。

[大集団全員の共通事項]
時間軸にずれがあること、異世界から連れてこられたことは情報として得ました。
仲間である人物と敵であろう人物の共通認識がされました。

南光太郎@仮面ライダーBLACK RX】
【1日目 現時刻:夕方】
【現在地:市街地D-6】
[時間軸]:第1話、RXへのパワーアップ直後】
[状態]:全身に軽度のダメージ。気絶中。2時間変身不能。
[装備]:リボルケイン
[道具]:カラオケマイク(電池切れ)。トランシーバー(現在地から3エリア分まで相互通信可能)。首輪(ドクトルG)。
[思考・状況]
1:打倒主催。その後、元の世界に戻ってクライシス帝国を倒す。
2:結城丈二を捜す。
3:シャドームーンを捜す。
4:草加を始め、闇に落ちた仮面ライダーを救う。
[備考]
※1:黒幕はクライシス帝国、神崎はその手の者であると勝手に確信しています。
※2:ガタックゼクターへの誤解は解けました。
※3:ドラスをクライシスの怪人だと思っています。

[大集団全員の共通事項]
時間軸にずれがあること、異世界から連れてこられたことは情報として得ました。
仲間である人物と敵であろう人物の共通認識がされました。

【相川 始@仮面ライダー剣】
【1日目 現時刻:夕方】
【現在地:市街地D-6】
[時間軸]:本編後。
[状態]:胸部に抉れ。腹部に切傷。2時間変身不能。
[装備]:ラウズカード(ハートのA、2、5、6)
[道具]:サバイブ(烈火)。アドベントカード(ギガゼール)。首輪探知機(レーダー)
[思考・状況]
1:思わず飛び出してしまったが、この状況をどうするか?
2:天音ちゃんを救う。
3:剣崎を優勝させる。
4:シャドームーンの伝言を南光太郎に伝える。
5:シャドームーンに借りを返してもらう。
6:ジェネラルシャドウを含め、このバトルファイトに参加している全員を殺す。
[備考]
相川始は制限に拠り、ハートのA、2以外のラウズカードでは変身出来ません。

【乾巧@仮面ライダー555】
【1日目 現時刻:夕方】
【現在地:市街地D-6】
[時間軸]:中盤くらい
[状態]:全身に中度の負傷。疲労中。応急処置済み。二時間変身不可(ウルフ&ファイズ)。
[装備]:なし
[道具]:ミネラルウォーター×2(一本は半分消費)。カレーの缶詰。乾パンの缶詰。アイロンを掛けた白いシャツ。
[思考・状況]
1:放送の内容と天道の死に絶望。
2:浅倉を倒す。
3:神崎をぶっ飛ばす。
4:ジャーク将軍たちを倒す。
5:城たちと合流する。

【木野 薫@仮面ライダーアギト】
【1日目 現時刻:夕方】
【現在地:市街地D-6】
[時間軸]:本編38話あたり
[状態]:全身に中程度の負傷(打撲、火傷、刺し傷など)、中程度の疲労。応急処置済み。2時間変身不可。
[道具]:救急箱。精密ドライバー。バタル弾。ディスカリバー。GA-04・アンタレス。
    配給品一式×4(北岡、睦月、木野、キング)。
[思考・状況]
1:浅倉を倒す。
2:睦月を闇から解放する。
3:橘の遺志を継ぎ、闇を切り裂いて光をもたらす。
4:北岡の仇をとる。
5:無力な人たちを守る。
6:医師の使命を忘れない。
[備考]
※バタル弾は改造人間のみに効果あります。

結城丈二@仮面ライダーV3】
【1日目 現時刻:夕方】
【現在地:市街地E-5】
[時間軸]:仮面ライダーBLACLRX終了後。
[状態]:中度の負傷。右腕切断。腹に刺し傷。ドクトルGに罪悪感。気絶中。
[装備]:なし
[道具]:名簿を除くディパックの中身一式
[思考・状況]
1:天道を救い、ドラスを倒す。
2:首輪の解析。首輪の解析のための施設を探す。
3:死んだらドクトルGに謝りたい。
4:シャドームーンを仮面ライダーにしたい。
[備考]
※1:カセットアームと右腕はE5エリアに放置されています。

[大集団全員の共通事項]
時間軸にずれがあること、異世界から連れてこられたことは情報として得ました。
仲間である人物と敵であろう人物の共通認識がされました。

【シャドームーン@仮面ライダーBLACK RX】
【1日目 現時刻:夕方】
【現在地:市街地E-5】
[時間軸]:RX27話以降。
[状態]:ほぼ完治。2時間戦闘不能。
[装備]:シャドーセイバー
[道具]:なし
[思考・状況]
1:結城丈二を人質に、RXを待つ。
2:サタンサーベルを探し出し、手に入れる。
[備考]
第二回放送を聞き逃しています。

【ジャーク将軍@仮面ライダーBLACK RX】
【1日目 現時刻:夕方】
【現在地:市街地D-7】
[時間軸]:ジャークミドラに改造後。
[状態]:頭部に小程度のダメージ。2時間戦闘不能。
[装備]:杖、変身後は大刀。
[道具]:支給品のデータブック(ハイパーゼクターを除く支給品のデータが記載されています)
 ネタばれ地図。首輪(ヨロイ)。ライダーブレス(コーカサス)。変身鬼弦・音錠。
 ハイパーゼクター。ベルト(カブト)。カードデッキ(龍騎)。カードデッキ(リュウガ)。コンファインベント。
 壊れたザビーゼクター。ディスクアニマル(ルリオオカミ、リョクオオザル、キハダガニ、ニビイロヘビ)
 トランシーバー(現在地から3エリア分まで相互通信可能)。精巧に出来たモデルガン。3人分のディパック(ジャーク、グランザイラス、城戸)
[思考・状況]
1:もうひとつの研究所へ向かう。
2:ラウズカードを集め、戦力の強化。
3:首輪の解析。
4:上城睦月の闇を引き出す。
5:神崎士郎を殺し、脱出する。
6:RXを殺す。
7:城戸真司リュウガ)から、神崎の目的を探る。
※ジャーク将軍は睦月より、ブレイド世界の情報と剣崎、始、橘、キング、伊坂、北岡、リュウガの情報を得ました。
※ネタばれ地図には支給品以外のラウズカードの隠し場所も書かれています。
※支給品のデータブックは、支給されたアイテムの効果が記載されています。
 余裕ができ、中身を確認したのはGトレーラー内が初めてです。
 各参加者の初期支給品も記載されています。

【ガライ@仮面ライダーJ】
【1日目 現時刻:夕方】
【現在地:市街地D-7】
[時間軸]:本編開始前。
[状態]:火傷(中程度。再生中)。二時間変身不能。
[装備]:ガライソード。装甲声刃。音撃弦・烈斬。
[道具]:なし
[思考・状況]
1:ジェネラルシャドウからサタンサーベルを奪い、勝つ。
2:どんな手を使っても生き残る。
3:ジャーク将軍と協力して、首輪を解除する。
4:ついでに生贄を手に入れる。
5:神崎士郎は残酷に壊す。
6:脆弱な生き物と組むのは気に入らない。

上城睦月@仮面ライダー剣】
【1日目 現時刻:夕方】
【現在地:市街地D-7】
[時間軸]:本編後。
[状態]:背中に大火傷。頭部に打撲。その他、身体に軽傷多数。疲労困憊。
    カテゴリーAに取り込まれかけています(若干緩和)。2時間変身不能。
[装備]:レンゲルバックル。ラウズカード(スペードのJとQ、ダイヤの3とQ、クラブのA~6、10とJ)
 ギャレンバックル。ラウズカード(ダイヤのA、2、5、6)
[道具]:配給品一式(橘)。Gトレーラー(G3ユニット、GM-01、GG-02、GS-03、GK-06、ガードアクセラー)
[思考・状況]
1:ジェネラルシャドウからカードを奪う。
2:ジャーク将軍に対する僅かな信頼。今は言うことをきく。
3:ラウズカードを集める。そのためにはキングとのゲームに乗る。
4:ジョーカーを倒す。
5:橘さんが死んだ?
※睦月は橘を偽者だと思っています。
※睦月はD7が禁止エリアと思っています。A1が禁止エリアと思っていません。
※睦月は無免許でGトレーラーを運転しています。
※橘と戦ったことは忘れています。そのため、ジャーク将軍にもそのときのことは話していません。
 ただし、何かの拍子に思い出すかも知れません。

【ジェネラルシャドウ@仮面ライダーストロンガー】
【1日目 現時刻:夕方】
【現在地:市街地D-7】
[時間軸]:37話前後
[状態]:多少の打撲と大火傷。2時間戦闘不能。
[装備]:サタンサーベル、トランプ内蔵ベルト
[道具]:ラウズカード(ダイヤの4、8。スペードの4。ハートの3、4、7、10、J、Q、K。クラブの7、Q、K)
    麻生勝の首輪(但し、分解済)。配給品一式×5(シャドウ、ドラス、立花藤兵衛、麻生勝、天道)。
[思考・状況]
1:時間まで暇つぶし。睦月を鍛える。
2:ジョーカーを倒す。
3:明日、ストロンガーと決着をつける。
4:情報収集のため、ジャークと情報交換。
5:スペードのA、クラブの8が暗示するものを探す。
※シャドウ剣はF2エリアの壁に刺さっています。

影山冴子@仮面ライダー555】
【1日目 現時刻:夕方】
【現在地:市街地D-7】
[時間軸]:本編最終話あたり
[状態]:肩にかなりの深さの裂傷。2時間は変身不可(ロブスター&オーガ)。
[装備]:オーガドライバー(オーガストランザー付属)
[道具]:首輪(園田真理)。アドベントカード(SEAL)。配給品一式。
[思考・状況]
1:生への執着。
2:ジャーク将軍の下で、首輪の解除方法を探す。
3:あきらと巧に復讐。

リュウガ@仮面ライダー龍騎】
【1日目 現時刻:夕方】
【現在地:市街地D-7】
[時間軸]:劇場版登場時期。龍騎との一騎打ちで敗れた後。
[状態]:中程度の負傷。特に背中。応急処置済み。2時間変身不能。気絶中。
[装備]:なし
[道具]:なし
[思考・状況]
1:天道を救い、ひよりを安心させる。
2:自分の今の感情の名を知りたい。
3:ひよりと天道を守るために戦う。
4:神崎に反抗。
5:城戸の死んだ現場に行きたい。
[備考]
※1:ドラグブラッカーの腹部には斬鬼の雷電斬震の傷があります。
※2:天道の死は知りません。

[大集団全員の共通事項]
時間軸にずれがあること、異世界から連れてこられたことは情報として得ました。
仲間である人物と敵であろう人物の共通認識がされました。

小沢澄子@仮面ライダーアギト】
【1日目 現時刻:夕方】
【現在地:市街地D-7】
[時間軸]:G3-X完成辺り。
[状態]:多少の打撲と火傷。気絶中。
[装備]:なし
[道具]:なし
[思考・状況]
1:城戸を救えなかった後悔。
2:首輪の解析(道具と仕組みさえ分かれば分解出来ると考えています)
3:ザビーゼクターを修理する(パーツと設備、時間さえあればザビーゼクターを修理可能だと考えています)
4:津上翔一と合流する。
5:リュウガに僅かに不信感。神代に怒り。
[備考]
※1:クライシスと神崎士郎が手を組んでいる可能性は低いと考えています。
※2:天道の死は知りません。

[大集団全員の共通事項]
時間軸にずれがあること、異世界から連れてこられたことは情報として得ました。
仲間である人物と敵であろう人物の共通認識がされました。

天美あきら@仮面ライダー響鬼】
【1日目 現時刻:夕方】
【現在地:樹海B-5】
[時間軸]:中盤くらい
[状態]:全身のダメージ小。応急処置済み。
[装備]:破れたインナー、鬼笛。ドレイクグリップ&ドレイクゼクター。
[道具]:なし
[思考・状況]
1:木野と乾の合流を待つ。
2:巧が心配。
3:明日夢と合流ができてよかった。
4:浅倉を倒す。
[備考]
※ディパック、変身鬼弦(裁鬼)、音撃弦・閻魔はC-6(浅倉と戦った辺り)に落ちてます。

安達明日夢@仮面ライダー響鬼】
【1日目 現時刻:夕方】
【現在地:樹海B-5】
[時間軸]:番組前期終了辺り。
[状態]:右手の中指先端欠損、全身の打撲。応急処置済み。
[装備]: デイパックニ人分(加賀美、影月)。影月は支給品不明です。 スマートバックル。
[道具]:果物ナイフ数本。
[思考・状況]
1:木野と乾が合流する前に利用する人物を残し、殺す。
2:特に天美に憎しみ。
※アクセルレイガンは樹海エリアC-4に放置されたままです。

【津上翔一@仮面ライダーアギト】
【1日目 現時刻:夕方】
【現在地:樹海B-5】
[時間軸]:本編終盤。
[状態]:負傷中。疲労中。応急処置済み。
[装備]:なし
[道具]:なし
[思考・状況]
1:木野と乾の合流を待つ。
2:浅倉を倒す。
3:木野さん、死んじゃ駄目ですよ。
4:元の世界へ帰る。
5:氷川、小沢と合流する。
※首輪の能力制限により、一日目のみバーニング、及びシャイニングフォームへの変身は制限されています。

【霞のジョー@仮面ライダーBLACKRX】
【1日目 現時刻:夕方】
【現在地:樹海B-5】
[時間軸]:クライシス壊滅後。
[状態]:全身に打撲。負傷大。疲労大。応急処置済み。
[装備]:サイ
[道具]:オルゴール付懐中時計
[思考・状況]
1:木野と乾の合流を待つ。
2:浅倉を倒す。
3:水のエルの使命を全うする(アギトを倒す)
4:兄貴と合流。
5:明日夢が心配。

【城茂@仮面ライダーストロンガー】
【1日目 現時刻:夕方】
【現在地:樹海B-5】
[時間軸]:デルザー軍団壊滅後
[状態]:全身に負傷中。疲労中。応急処置済み。
[装備]:V3ホッパー、パーフェクトゼクター
[道具]:支給品一式
[思考・状況]
1:木野と乾の合流を待つ。
2:浅倉を倒す。
3:殺し合いを阻止し、主催者を倒す。
4:明日、ジェネラルシャドウと決着をつける。
5:自分に掛けられた制限を理解する。
※首輪の制限により、24時間はチャージアップすると強制的に変身が解除されます。
※制限により、パーフェクトゼクターは自分で動くことが出来ません。
 パーフェクトゼクターはザビー、ドレイク、サソードが変身中には、各ゼクターを呼び出せません。
 また、ゼクターの優先順位が変身アイテム>パーフェクトゼクターになっています。
「ふんふ~ん♪」
 キングは鼻歌を歌い、研究所の裏の林へと来ていた。ある物を回収するためだ。
 そのある物は地面から生えた多数の雑草に紛れ、転がっていた。
 キングはそれを拾い上げる。それはベルト状のものが巻かれたひとつの球。
 それは呼吸をしているかのように伸縮を繰り返しており、キングが手にした途端、激しさを増した。
「まあ、そう怒るなって。最後は助けてやったろ」
 そうキングは攻撃が炸裂する瞬間、アンデッドの力を解放し、攻撃をわずかに逸らしていた。
 逸らされた攻撃はそれの仮初めの身体に命中し、爆発を起こしたのだ。
「慌てる必要はないよ。ゲームはじっくり楽しむものなんだからさ」
 キングの言葉に、落ち着いたのか、球の伸縮は規則正しさを取り戻す。
「解ってくれて、嬉しいよ」
 その球の名前はドラス。神と等しき力を持った新しき生命体である。
「さて、これからどうしようかな?あの携帯電話が誰か面白いことに使ってくれる人に渡るといいけど」
 戦いは終わらない。太陽は沈んでも闇は残り続けるのだから。

【ドラス 生存】
残り27人
キング@仮面ライダー剣】
【1日目 現時刻:夕方】
【現在地:樹海C-6】
[時間軸]:キングフォーム登場時ぐらい。
[状態]:全身に負傷中。疲労中。二時間変身不可。
[装備]:なし(ドラスの核)
[道具]:なし
[思考・状況]
1:ドラスと今の状況を楽しむ。
2:レンゲルとのゲームのため、ラウズカード探し。
3:この戦いを長引かせる。そのため、支給品を取り上げる。
4:戦いに勝ち残る。まだまだ面白いものも見たい。
5:今は戦うつもりは無い。
6:北岡に興味。しばらくしたら、また会おう。
[備考]
※携帯電話はD6エリアに放置してきました。

【ドラス@仮面ライダーZO】
【1日目 現時刻:夕方】
【現在地:樹海C-6】
[時間軸]:仮面ライダーZOとの戦闘で敗北し死亡した直後
[状態]:ネオ生命体本体部のみ。2時間身動きできません。
[装備]:なし
[道具]:なし
[思考・状況]
1:とりあえず、力を取り戻すまで休憩。と、いうか今はなにもできない。
2:望月博士なしで神になる方法を考える。
3:首輪を外しこの世界を脱出する。
4:首輪の解除のため、冴子を利用する。
5:他の参加者は殺す。ただし、冴子とキングには興味あり。

[備考]
※1:ドラスの首輪は胴体内部のネオ生命体本体に巻かれています。(盗聴機能は生きています)
※2:ドラスはドクトルG、ヨロイ元帥、ジェネラルシャドウ、マシーン大元帥の情報を得ました。
※3:麻生は首輪が外れたため、死亡扱いになりましたが、ドラスの中で生きています。ただし、ドラスが死ぬと麻生も死にます。
※4:赤ドラス化は能力発揮中のみ使用可能です。通常時は普通のドラスに戻ってしまいます。
※5:制限が緩められ、戦闘時間、戦闘不能時間に影響があるかもしれません。
[備考]
※怪魔稲妻剣、GM-01改4式(弾切れ)、拡声器はD6エリアに放置されてます。

[その他共通事項]
HONDA XR250は制限により、あらゆる能力で変化することが出来ません。
HONDA XR250は市街地D-6に放置されています。

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最終更新:2018年11月29日 17:41