「保安官、何の話だね? 一体どういう経緯で我々をレースのコース上を戻らせるんだ?」
馬車に乗ったスティール氏が、隣を馬に乗って歩く小太りの保安官に質問をした。
「新聞記者が近くにいるとマズイのではと思いまして……本当はご夫人にもご遠慮願いたかった」
小太りの保安官は、すまし顔で答える。
「だから何のことだね! 私は忙しいんだぞ!」
「このレースで、『死人』が出ました」
スティール氏は、黙りこんだ。
しばらく、馬の歩く音と馬車の車輪が回る音だけがした。
「馬によっては、最高時速90キロに達するモノもいる! その時の騎手の目線は地面から高さ2m50cm辺りを滑走してるのだ! 競馬は! 四条もっとも過酷なスポーツなんだぞ! レースに事故がつきものという事は全
員が理解してるし契約書にサインもしてもらっているのだ!」
馬車の上で怒鳴るスティール氏。
二人組みの保安官の一人――痩せた保安官が、馬を止めた。
「だから一体何があるっつーんだよォーッ!?」
焦りを含んだ叫びが、荒野に響く。
「既に見えていますよ。スティールさん。目の前に……」
あくまで冷静な小太りの保安官に言われ、スティール氏は前を見た。
スティール氏の目の前には、銃が落ちていた。
悪趣味な、赤黒い色のロープがそれには絡み付いている。
肉々しい質感のロープの先は――
「妻を列車へ戻せェェェーッ! 彼女を列車に帰すんだァーッ!」
目をカッと見開き、冷や汗を流してスティール氏は叫んだ。
不死鳥は失敗を恐れない 第⑨話『鯖じゃねぇ!』
岩陰で臓物をブチ撒けているのは三人の男。
「一体何なんだこれはッ! 何故こんな風に死んでいるんだ!? 説明しろッ!」
死体を前にし、うろたえた表情を隠さないスティール氏。
「動物の仕業、ではありませんね。ハゲタカは内臓を9mも引きずり出して3本とも直線に並べはしないし、内蔵をロープ代わりにして人を引きずるクーガーもいない!まるでどうやったのか? 全く解らない!」
保安官二人までも、自分の目を疑う始末である。
「だから一体何だと言うのだーッ!」
「恐らく、殺人です。しかも走行中に行われたのでしょう。何者かがレース中の彼らを3人同時に、何らかの方法で殺害し、落馬させ、内臓を引きずりながら走り去った!……誰にも目撃されず、3千数百の選手が並走する中で……」
「バカなことを言うなッ! 何の為にこんなことをッ!」
「恐らく、動機はレースの順位を上げるためでしょう……『容疑者』は参加者全員です。捜査のためにレースを中断するお考えはありませんか?」
小太りの保安官の言葉に、スティール氏は、汗も拭かずに黙り込んだ。
ぶつぶつと言葉を呟いた後、
「レースは毎日突き進む。最早このレースは私個人の意思を越えた存在……その点に関しては大統領とて関与できない……中断なんて論外だ」歯軋りをしながら小太りの保安官の方を向いた。
彼は、表情を緩ませた。
「そうおっしゃるだろうと思って、『マウンテン・ティム』と『エイリン・ヤゴゴロ』に協力を仰ぎました」
スティール氏が気がつくと、馬が一頭、頭を垂れいていた。
それに触発され、スティール夫人の乗る馬車馬も、もう一人の保安官が乗る馬も、次々と頭を垂れた。
「どうした? 馬の様子がおかしいぞ?」
頭を下に向ける馬を、スティール氏は目を丸くして見つめる。
「それは『マウンテン・ティム』が来たからです。彼は不思議な男だ……馬たちは彼に敬意を払って頭を垂れる……」
小太りの保安官に言われてスティール氏がきょろきょろと周囲を見渡すと、彼は自分の嫁の背後に誰かいるのを見つけた。
虎にも似た柄のテンガロンハット。
牛革の手袋を嵌めた手には投げ縄が握られていて、腰のホルスターにはリボルバー拳銃が収められている。
その自身に満ちた顔つきは正にイケメン。
彼こそが『獣までもが敬意を払う男』、マウンテン・ティムだ。
そして彼の背後に、もう一人馬に乗る女性の姿が。
赤と藍色のツートンカラーで構成されたナース服。
長い銀色の髪は一本の三つ編みにまとめられている。
気品漂う穏やかな顔は、岩陰の死体を見据えていた。
彼女が『月の頭脳』、エイリン・ヤゴコロこと八意永琳だ。
また、彼女の背後には一人、フードで顔を隠す人が乗っていた。
突然に登場した彼らに、誰もが驚いた。
皆の視線を浴びる中、ティムは岩陰の花へ投げ縄を伸ばした。
投げ縄はすぐに花を捕らえ、主人であるティムへ花を届ける。
「これを」
ティムは、さっき摘み取った花を、スティール夫人へと差し出す。
「本当に結婚してるの? 残念だな……」
スティール夫人は黙って花を受け取ると、ティムは颯爽と自分の馬に跨る。
その姿を見たスティール氏は、
「依頼したとはどういうことだ? 彼は伝説のカウボーイで優勝候補。確か、今日のレースでは4位に入っていたじゃないか」
頭に次々と疑問符を浮かべる。
「彼は、私の友人で誰からも信頼を受けている人格者です」
小太りの保安官が、スティール氏の疑問に答えた。
「この広い大西部、よく彼の助けを借りて賞金首を追い回したものです」
自信たっぷりのティムと小太りの保安官に対し、スティール氏は、
「だが彼は参加選手だぞ!」
怒鳴って応じる。
「そう、だからです」
女性の声が割って入った。
「セカンド・ステージで次に犯人に狙われるのは彼かもしれません。ならばそれを逆手に取り、彼に犯人を追跡させたほうがいい……違いますか? 保安官」
割って入ったのは、永琳だった。
「流石はエイリン殿。慧眼ですね」
「いえいえ。優勝候補の一人が参加しているとなると、犯人は真っ先にそれを狙いたがるでしょうから」
「まあ、そう言う訳です。ですので、スティール氏、貴方さえよければ、彼を保安官助手として任命します」
小太りの保安官がスティール氏の応答を待つ間もなく、ティムと永琳は死体の方へと馬を進めた。
三人の人間を無理やり集めて押しつぶしたかのような形の死体を見て、ティムは眉をひそめる。
「何てことだ……怒りが湧いてくる……こんな奴がレースにいたんじゃあ、安心して走ることもままならない……このレースには私の友人だって多く参加しているんだ……」
ティムの表情は、家畜の糞に湧く蛆虫を見たかのような表情だった。
だがそれは目の前の死体ではない。この死体の作り主に向けられた表情だった。
「今まで見たこともない殺害方法ですね」
ティムの隣で、永琳は呟いた。
「この死に方、心当たりがある」
永琳の言葉を耳にしたティムが、呟いた。
「インディアンの伝説の一つに、アリゾナ砂漠のどこかで、大熊座の方角から流れ星が落ちてきた土地があると言う……そこは穢れた土地」
ティムの語りに、場の全員が耳をそばだてた。
「その土地に立ち入った者は、心の中から『不思議な力』を引き出されて身に着けるが……同時に邪悪さと禍を呼び寄せて呪われてしまうと言う」
その語りを聞いたフードの人が、永琳に耳打ちをする。
「師匠、これって……」
「今は彼の話を聞いていなさい」
「はい」
ティムの語りは続く。
「ある時、エメラルド鉱山を探しに行った奴がその土地に立ち入り、そして戻って来た時、これと同じ方法で他人を殺したと言う……そいつは罪の意識か、自殺したよ」
ティムの語りが終わり、しばしの静けさが訪れた。
「自殺したのなら、そいつは犯人ではないな」
静寂を破ったのは、スティール氏だった。
「それで、君に捜査を依頼するとして、どうやって犯人を見つけ出すと言うのだね?」
その言葉を受け、ティムはロープを足元へ垂らした。
ロープの先には、地面に付けられた幾つもの蹄の跡。
「とりあえず足跡を追跡するなら……」
ロープを動かし、一つの跡の上へと持ってくる。
「コイツだな。この中では最も凶暴な走り方をしている」
垂らされたロープの先には、山形のカケがついた蹄の跡が。
「そんなの、確証になるのでしょうか?」
隣で、永琳が首をかしげた。
「間違いない。馬が人間の血を見て興奮している。コイツの乗り手は、理論的に走る砂漠育ちだ……おや?」
ある程度周囲を見て、ティムはある物を見つけた。
死体の傍にビンが落ちている。
「保安官、あのビン、調べましたか?」
「……いや」
そういわれたティムは、ビンに目を凝らす。
「ビンの中に、血のついたボタンが入っているな」
すぐにティムは投げ縄をビンの元へと放った。
投げ縄はまるで意思を持つかのようにビンの元へと疾走し、ビンの口を掠める。
外した。この場の誰もがそう思ったが、
「お見事……マウンテン・ティム!」
小太りの保安官だけがティムを賞賛した。
よく見ると、ティムの元へと帰っていく投げ縄には、いつの間にかボタンが引っかかっていた。
「殺害方法と何か関係があるのか?」
固まりかけの血が付着したボタンを、ティムは値踏みするように見る。
「少し、そのボタンを見せてはくれませんか?」
永琳が、ティムからボタンを受け取った。
彼女は、目を凝らしてボタンを観察する。
「見たところ何の変哲もありませんね」
「師匠。そのボタン、私にも見せてくれませんか?」
彼女の後ろに座るフードの人が、手を差し出した。
「ああ、そうでしたね。貴方の眼なら、何か掴めるかも知れません」
そう言って、永琳はフードの人にボタンを渡す。
フードの人は、ボタンを凝視する。
「何か、解りましたか?」
「ええ。どう言う訳か知りませんが、このボタン、磁力を発生させています」
「そうですか。磁力……ね」
永琳は、眼を閉じて思考を巡らせる。
「磁鉄鉱も無い砂漠のド真ん中で、どうしたら磁力が発生するのでしょうか?」
「それは、さっきティムが言っていた『不思議な力』と言うものでしょう」
「『不思議な力』ですか……姫様大丈夫かなァ~」
フードの人は、そういって砂漠の青空を見上げた。
←to be continued...
次回予告
魔理沙「魔理沙だぜ。実は、見ちゃったんだぜ」
霊夢「何を?」
魔理沙「香霖のは・だ・か」
霊夢「ぶっ!(茶を噴く音)ア、アンタねぇ……!」
魔理沙「とは言っても香霖が風呂に入ろうとしている所を覗いただけだぜ」
霊夢「で、どうだったのよ」
魔理沙「いや~アレは凄かった」
霊夢「……へ?」
魔理沙「見事なものだったよ……」」
霊夢「ちょっと、教えなさいよーッ!」
魔理沙「私だけの秘密だぜ☆」
次回ッ! 不死鳥は諦めない第十話 『スピードはともかく理由を説明しろッ!』 お楽しみに!
霊夢「教えなさい! 吐けッ! 吐くんだッ!」
魔理沙「教えないよ~ん ウッフフフフ……★」
霊夢「逃げるなー!」
馬車に乗ったスティール氏が、隣を馬に乗って歩く小太りの保安官に質問をした。
「新聞記者が近くにいるとマズイのではと思いまして……本当はご夫人にもご遠慮願いたかった」
小太りの保安官は、すまし顔で答える。
「だから何のことだね! 私は忙しいんだぞ!」
「このレースで、『死人』が出ました」
スティール氏は、黙りこんだ。
しばらく、馬の歩く音と馬車の車輪が回る音だけがした。
「馬によっては、最高時速90キロに達するモノもいる! その時の騎手の目線は地面から高さ2m50cm辺りを滑走してるのだ! 競馬は! 四条もっとも過酷なスポーツなんだぞ! レースに事故がつきものという事は全
員が理解してるし契約書にサインもしてもらっているのだ!」
馬車の上で怒鳴るスティール氏。
二人組みの保安官の一人――痩せた保安官が、馬を止めた。
「だから一体何があるっつーんだよォーッ!?」
焦りを含んだ叫びが、荒野に響く。
「既に見えていますよ。スティールさん。目の前に……」
あくまで冷静な小太りの保安官に言われ、スティール氏は前を見た。
スティール氏の目の前には、銃が落ちていた。
悪趣味な、赤黒い色のロープがそれには絡み付いている。
肉々しい質感のロープの先は――
「妻を列車へ戻せェェェーッ! 彼女を列車に帰すんだァーッ!」
目をカッと見開き、冷や汗を流してスティール氏は叫んだ。
不死鳥は失敗を恐れない 第⑨話『鯖じゃねぇ!』
岩陰で臓物をブチ撒けているのは三人の男。
「一体何なんだこれはッ! 何故こんな風に死んでいるんだ!? 説明しろッ!」
死体を前にし、うろたえた表情を隠さないスティール氏。
「動物の仕業、ではありませんね。ハゲタカは内臓を9mも引きずり出して3本とも直線に並べはしないし、内蔵をロープ代わりにして人を引きずるクーガーもいない!まるでどうやったのか? 全く解らない!」
保安官二人までも、自分の目を疑う始末である。
「だから一体何だと言うのだーッ!」
「恐らく、殺人です。しかも走行中に行われたのでしょう。何者かがレース中の彼らを3人同時に、何らかの方法で殺害し、落馬させ、内臓を引きずりながら走り去った!……誰にも目撃されず、3千数百の選手が並走する中で……」
「バカなことを言うなッ! 何の為にこんなことをッ!」
「恐らく、動機はレースの順位を上げるためでしょう……『容疑者』は参加者全員です。捜査のためにレースを中断するお考えはありませんか?」
小太りの保安官の言葉に、スティール氏は、汗も拭かずに黙り込んだ。
ぶつぶつと言葉を呟いた後、
「レースは毎日突き進む。最早このレースは私個人の意思を越えた存在……その点に関しては大統領とて関与できない……中断なんて論外だ」歯軋りをしながら小太りの保安官の方を向いた。
彼は、表情を緩ませた。
「そうおっしゃるだろうと思って、『マウンテン・ティム』と『エイリン・ヤゴゴロ』に協力を仰ぎました」
スティール氏が気がつくと、馬が一頭、頭を垂れいていた。
それに触発され、スティール夫人の乗る馬車馬も、もう一人の保安官が乗る馬も、次々と頭を垂れた。
「どうした? 馬の様子がおかしいぞ?」
頭を下に向ける馬を、スティール氏は目を丸くして見つめる。
「それは『マウンテン・ティム』が来たからです。彼は不思議な男だ……馬たちは彼に敬意を払って頭を垂れる……」
小太りの保安官に言われてスティール氏がきょろきょろと周囲を見渡すと、彼は自分の嫁の背後に誰かいるのを見つけた。
虎にも似た柄のテンガロンハット。
牛革の手袋を嵌めた手には投げ縄が握られていて、腰のホルスターにはリボルバー拳銃が収められている。
その自身に満ちた顔つきは正にイケメン。
彼こそが『獣までもが敬意を払う男』、マウンテン・ティムだ。
そして彼の背後に、もう一人馬に乗る女性の姿が。
赤と藍色のツートンカラーで構成されたナース服。
長い銀色の髪は一本の三つ編みにまとめられている。
気品漂う穏やかな顔は、岩陰の死体を見据えていた。
彼女が『月の頭脳』、エイリン・ヤゴコロこと八意永琳だ。
また、彼女の背後には一人、フードで顔を隠す人が乗っていた。
突然に登場した彼らに、誰もが驚いた。
皆の視線を浴びる中、ティムは岩陰の花へ投げ縄を伸ばした。
投げ縄はすぐに花を捕らえ、主人であるティムへ花を届ける。
「これを」
ティムは、さっき摘み取った花を、スティール夫人へと差し出す。
「本当に結婚してるの? 残念だな……」
スティール夫人は黙って花を受け取ると、ティムは颯爽と自分の馬に跨る。
その姿を見たスティール氏は、
「依頼したとはどういうことだ? 彼は伝説のカウボーイで優勝候補。確か、今日のレースでは4位に入っていたじゃないか」
頭に次々と疑問符を浮かべる。
「彼は、私の友人で誰からも信頼を受けている人格者です」
小太りの保安官が、スティール氏の疑問に答えた。
「この広い大西部、よく彼の助けを借りて賞金首を追い回したものです」
自信たっぷりのティムと小太りの保安官に対し、スティール氏は、
「だが彼は参加選手だぞ!」
怒鳴って応じる。
「そう、だからです」
女性の声が割って入った。
「セカンド・ステージで次に犯人に狙われるのは彼かもしれません。ならばそれを逆手に取り、彼に犯人を追跡させたほうがいい……違いますか? 保安官」
割って入ったのは、永琳だった。
「流石はエイリン殿。慧眼ですね」
「いえいえ。優勝候補の一人が参加しているとなると、犯人は真っ先にそれを狙いたがるでしょうから」
「まあ、そう言う訳です。ですので、スティール氏、貴方さえよければ、彼を保安官助手として任命します」
小太りの保安官がスティール氏の応答を待つ間もなく、ティムと永琳は死体の方へと馬を進めた。
三人の人間を無理やり集めて押しつぶしたかのような形の死体を見て、ティムは眉をひそめる。
「何てことだ……怒りが湧いてくる……こんな奴がレースにいたんじゃあ、安心して走ることもままならない……このレースには私の友人だって多く参加しているんだ……」
ティムの表情は、家畜の糞に湧く蛆虫を見たかのような表情だった。
だがそれは目の前の死体ではない。この死体の作り主に向けられた表情だった。
「今まで見たこともない殺害方法ですね」
ティムの隣で、永琳は呟いた。
「この死に方、心当たりがある」
永琳の言葉を耳にしたティムが、呟いた。
「インディアンの伝説の一つに、アリゾナ砂漠のどこかで、大熊座の方角から流れ星が落ちてきた土地があると言う……そこは穢れた土地」
ティムの語りに、場の全員が耳をそばだてた。
「その土地に立ち入った者は、心の中から『不思議な力』を引き出されて身に着けるが……同時に邪悪さと禍を呼び寄せて呪われてしまうと言う」
その語りを聞いたフードの人が、永琳に耳打ちをする。
「師匠、これって……」
「今は彼の話を聞いていなさい」
「はい」
ティムの語りは続く。
「ある時、エメラルド鉱山を探しに行った奴がその土地に立ち入り、そして戻って来た時、これと同じ方法で他人を殺したと言う……そいつは罪の意識か、自殺したよ」
ティムの語りが終わり、しばしの静けさが訪れた。
「自殺したのなら、そいつは犯人ではないな」
静寂を破ったのは、スティール氏だった。
「それで、君に捜査を依頼するとして、どうやって犯人を見つけ出すと言うのだね?」
その言葉を受け、ティムはロープを足元へ垂らした。
ロープの先には、地面に付けられた幾つもの蹄の跡。
「とりあえず足跡を追跡するなら……」
ロープを動かし、一つの跡の上へと持ってくる。
「コイツだな。この中では最も凶暴な走り方をしている」
垂らされたロープの先には、山形のカケがついた蹄の跡が。
「そんなの、確証になるのでしょうか?」
隣で、永琳が首をかしげた。
「間違いない。馬が人間の血を見て興奮している。コイツの乗り手は、理論的に走る砂漠育ちだ……おや?」
ある程度周囲を見て、ティムはある物を見つけた。
死体の傍にビンが落ちている。
「保安官、あのビン、調べましたか?」
「……いや」
そういわれたティムは、ビンに目を凝らす。
「ビンの中に、血のついたボタンが入っているな」
すぐにティムは投げ縄をビンの元へと放った。
投げ縄はまるで意思を持つかのようにビンの元へと疾走し、ビンの口を掠める。
外した。この場の誰もがそう思ったが、
「お見事……マウンテン・ティム!」
小太りの保安官だけがティムを賞賛した。
よく見ると、ティムの元へと帰っていく投げ縄には、いつの間にかボタンが引っかかっていた。
「殺害方法と何か関係があるのか?」
固まりかけの血が付着したボタンを、ティムは値踏みするように見る。
「少し、そのボタンを見せてはくれませんか?」
永琳が、ティムからボタンを受け取った。
彼女は、目を凝らしてボタンを観察する。
「見たところ何の変哲もありませんね」
「師匠。そのボタン、私にも見せてくれませんか?」
彼女の後ろに座るフードの人が、手を差し出した。
「ああ、そうでしたね。貴方の眼なら、何か掴めるかも知れません」
そう言って、永琳はフードの人にボタンを渡す。
フードの人は、ボタンを凝視する。
「何か、解りましたか?」
「ええ。どう言う訳か知りませんが、このボタン、磁力を発生させています」
「そうですか。磁力……ね」
永琳は、眼を閉じて思考を巡らせる。
「磁鉄鉱も無い砂漠のド真ん中で、どうしたら磁力が発生するのでしょうか?」
「それは、さっきティムが言っていた『不思議な力』と言うものでしょう」
「『不思議な力』ですか……姫様大丈夫かなァ~」
フードの人は、そういって砂漠の青空を見上げた。
←to be continued...
次回予告
魔理沙「魔理沙だぜ。実は、見ちゃったんだぜ」
霊夢「何を?」
魔理沙「香霖のは・だ・か」
霊夢「ぶっ!(茶を噴く音)ア、アンタねぇ……!」
魔理沙「とは言っても香霖が風呂に入ろうとしている所を覗いただけだぜ」
霊夢「で、どうだったのよ」
魔理沙「いや~アレは凄かった」
霊夢「……へ?」
魔理沙「見事なものだったよ……」」
霊夢「ちょっと、教えなさいよーッ!」
魔理沙「私だけの秘密だぜ☆」
次回ッ! 不死鳥は諦めない第十話 『スピードはともかく理由を説明しろッ!』 お楽しみに!
霊夢「教えなさい! 吐けッ! 吐くんだッ!」
魔理沙「教えないよ~ん ウッフフフフ……★」
霊夢「逃げるなー!」