「……うぅーん……」
目が覚めて身体を伸ばし、ベッドから降りるディアボロ。
亀の中からでて部屋を出ると、あることに気がついた。
「……太陽がまだ出てないな」
秋の真っ只中。
守矢神社に向かっていたとき以上に秋は深まり、染まりかけていた葉を見ることは無くなった。
もっとも、あの時に山の木々の葉が全て紅葉となっていたのは、そこに住む神の力によるものだとディアボロは思っている。
それよりも、今日はいつもより早く目が覚めた。
太陽はまだ昇っていない。
「……(目も覚めてしまったな……)」
とりあえず亀の中に戻り、着替えを済ませる。
そして再び部屋の外にでるディアボロ。
「……ん?」
廊下を移動中、ディアボロが参拝道にいる『誰か』を見つけた。
が、ここからじゃよく見えない。
「(……仕方ない。確認と軽い運動を兼ねて、ちょっと接近してみるか)」
ジャンピン・ジャック・フラッシュのDISCを装備して飛ぶディアボロ。
一度参拝道の上空を通り過ぎて着陸し、その後参拝道を歩き出すというちょっと面倒なことをして参拝道にいた者に接近する。
参拝道にいた者。
その者の容姿を簡潔に言うと、少女で髪の色は緑。そして耳が生えている。
「(確かこいつは幽谷 響子(かそだに きょうこ)……なんだかんだで彼女は俺を見たことが無い……はずだ)」
その正体を確認したディアボロは少し考える。
ちなみに彼は白蓮達の邪魔にならないように、夜は『寝ている』か、『亀の中で本を読んでいる』か、『どこかにでかけている』ことが多い。
そしてディアボロはふと思いつく。
「(よし、『これ』が弾幕を受けてどこまで耐えられるか調べるか)」
そして彼がケースから取り出した一枚のDISC。
それは絶対零度を操る、一人の暗殺者が使っていたスタンドのDISC。
名は『ホワイト・アルバム』
銃弾を受けてもそれをはじき返してしまう、強力なスタンドである。
ディアボロは早速このDISCを装備し、参拝道を歩き出す。
「おはよーございます」
「……」
掃除をしていた響子が、自分に近づいてくるディアボロに気づいて挨拶をしたが、ディアボロはあえて無視をしてみる。
「おはよーございます!」
「……」
響子は無視をされて不機嫌に思うが、もう一度挨拶をしてみる。
そしてまたもや無視される。
「……どーして挨拶を返してくれないの?」
「……今は目覚めが悪い」
不機嫌そうな響子の質問に、一言だけ返事を返すディアボロ。
「挨拶を返さない奴にはおしおきしちゃうよ?」
「……やってみろ」
不敵な笑みと共に響子はディアボロに質問をするが、ディアボロはなんとも思っていない。
そしてディアボロの返事を聞いた響子は箒を地面において彼から距離を取る。
「朝のおつとめのひとつは迎え撃ち。人間の悲鳴で朝を迎えるのよ!」
そう言って響子は弾幕を撃つ。そしてそれを見たディアボロはホワイト・アルバムを出す。
弾幕が次々とホワイト・アルバムに命中するが、ディアボロへのダメージはまったくない。
衝撃による後退は、冷気でホワイト・アルバムと地面を凍らせてくっつけることで解決する。
もっとも、そんなことをしたらホワイト・アルバムの能力を解除しない限り動けなくなってしまう。
だがそれでいい。こうすることで、相手に隙を見せずに済むのだ。
そして、『凍結による接着』と『スタンド能力の解除』を交互に繰り返すことでホワイト・アルバムの発動中でも『歩く』ことができる。
それを利用して弾幕を受けながらディアボロはどんどん響子に接近していく。
接近戦では全く役に立たないが、こういう時にはそんな方法も役に立つのだ。
「えっ……な、なんで効いてないの!?」
一方、響子は慌てていた。
目の前の人間は弾幕を避けることもせずに自分に接近してきている。しかもダメージを受けているようには見えない。
後ろに下がりながら弾幕を撃つが、やっぱり効いていない。
「(弾幕はスピードは銃弾よりも遅いが、元々の衝撃が銃弾より大きい……固定していない状態で弾幕を受けたら、衝撃で後退してしまう)」
ディアボロはそう思いながらも、響子への接近を止めない。
そしてディアボロは右手を地面に置く。
すると地面が凍り、その際にできた氷は地面を這って響子を襲う。
響子は飛んで回避するが、ディアボロはすぐにホワイト・アルバムの能力を解除。
そしてハーミット・パープルのDISCを装備すると、両手からイバラを伸ばす。
『相手は飛んでこない』。そう思って5mぐらいしか距離を取っていなかった響子にイバラが両手両足に巻きつく。
何かが自分の身体に巻きつく感触に驚く響子だったが、そのまま引っ張られ、ディアボロに服をつかまれる。
そしてディアボロは響子に頭突きをする。
「懲りたか?」
「……ごめんなさい」
しゃがんで頭を押さえる響子を見ながら話すディアボロ。
彼も頭突きをしたところが痛いのだが、そこは堪える。
「……あれ?」
響子はディアボロを見上げて気がついた。
「斑点がある桃色の長髪、外見は人間の30代ぐらい、そして見えない何かを操る……」
そこまで言って響子は黙ってしまった。
ただ、表情からして自分はとんでもないことをしたと思っているらしい。
「もしかして……」
そしてだんだん響子の顔が真っ青になっていく。
「命蓮寺に居候している人間って……」
「俺のことだが?」
ディアボロの一言で、響子は身震いしだした。
それを見たディアボロはとっさの判断で、響子の口を手で塞いだ。
「このことは黙っておいてやる。だからお前も何も言うなよ」
ディアボロはそう言い、それを聞いた響子は首を縦に振る。
それを見たディアボロはハーミット・パープルとケースの中のクレイジー・ダイヤモンドのDISCを入れ替え、響子の傷を治す。
もしかしたら傷を負っていないかもしれないが、念のためだ。
「うう……喧嘩を売る相手が悪すぎた……」
「運が無かったと思って諦めな」
そう言ってディアボロは飛び去っていった。
「……頭突きしたところがまだ痛いな」
ディアボロはそう呟きながら亀の中に戻ってきた。
クレイジー・ダイヤモンドで自分を治癒することはできない。が、この程度なら治す必要も無いだろう。
「(さて……)」
ディアボロは本棚からスティール・ボール・ランの単行本を全部取り出す。
狙いは一つ。『新たなスタンド能力の獲得』だ。
「(『20thセンチュリー・ボーイ』はぜひとも入手しておきたいところだ。攻撃を全て無力化してしまう。これほど頼もしい『鎧』はない)」
本のページを次々とめくりながらディアボロは考える。
「(攻撃面は他のスタンドで補える。ホワイト・アルバムと比較すると、防御面だけは完全に勝っているが、反撃するためには別のスタンドを使うしかない。対するホワイト・アルバムは、冷気系のスタンドとしては十分な性能を持っており、スピードと攻撃は上を行っている。一長一短、といったところか)」
次にページをめくり、目に留まったのは
「『スケアリーモンスターズ』……身体能力の向上と部分的な恐竜化による戦術の増加は魅力的だな。妖怪相手に恐竜の力が何処まで通用するかはわからないが)」
そして最後。
「(そういえば第3部の『ティナー・サックス』も魅力的だな。相手を欺く、という点だけならホワイトスネイクの上をいく)」
そして必要ない単行本を本棚になおし、一冊第3部の単行本を持ってきて机に置くと、ボヘミアン・ラプソティとヘブンズ・ドアーとボーイ・Ⅱ・マンのDISCをケースから取り出す。
「さあ……始めるか」
ホワイト・アルバムとハーミット・パープルとジャンピン・ジャック・フラッシュのDISCを取り出してケースに直し、先ほどの三枚を装備する。」
さらにケースからホワイトスネイクのDISCを取り出し、装備していたキング・クリムゾンのDISCと入れ替える。
「(一つ確かめておきたいことがある。そのためにはホワイトスネイクの力が必要だ)」
ディアボロは深呼吸を一回すると、ボヘミアン・ラプソティの能力を発動した。
「(少し手間がかかったが、まあこんなものか)」
一枚のスタンドDISCをクルクル回しながらそう思うディアボロ。
DISCに宿るスタンドは『スケアリーモンスターズ』。ディエゴから奪い取った能力だ。
ボーイ・Ⅱ・マンは20thセンチュリー・ボーイとティナー・サックスを取り込んだが、スケアリーモンスターズだけはホワイトスネイクでDISC化した。
「(このDISCは『奇妙なダンジョン』にはなかったスタンドDISC。こいつを装備しようとするとどうなる?)」
ボヘミアン・ラプソティのDISCとホワイトスネイクのDISCをケースに入れ、早速スケアリーモンスターズのDISCを装備するディアボロ。
……そのまま待つが、10秒経ってもDISCが弾き出される感じはしない。
「(うまくいったか。『奇妙なダンジョン』に飛ばされた者はあらゆるスタンドDISCに適合するようになるのか?それとも俺自身の身に何かがあって、あらゆるスタンドDISCに適合するようになったのか?)」
ディアボロはそう思うが、ソファーから立ち上がってベッドに座る。
「(まあいい、『結果』はあった。スケアリーモンスターズのDISCが俺に適合するという『結果』だけは)」
スタンドDISCは『適合』すればそのDISCに宿るスタンドの能力は使える。
但し、その能力をどこまで引き出せるかは使用者次第である。
「(さて……起きるのが早すぎたな。二度寝でもするか?)」
そう思ってベッドに寝転がるディアボロ。
と、そこに水蜜がやってきた。
「あれ?起きていたんですか?」
「これから二度寝でもしようかと思っていたところだ」
ディアボロはベッドから起き上がってソファーに座る。
「……貴方に聞きたいことがあるんです」
「何だ?」
ディアボロの隣に水蜜が座り、ディアボロに質問をする。
「何故貴方はここに居候しようと思ったんですか?」
「……答えにくい質問だな」
水蜜の質問に、ちょっと嫌そうな顔をしながら返事をするディアボロ。
「最初に辿りついた場所がここだった。他の場所も考えたけど、移動のときに襲われる可能性、さらに場所が特定できないことを考えてここにした」
「『安全であること』を最優先したんですね」
ディアボロの答えにびっくりする水蜜。
どうやら、自分の予想とは違っていたようだ。
「沢山の力を持ち、敵と互角以上に戦えたとしても、それでも負ける可能性はある」
ディアボロはそう言いながらソファーから立つと、今度はベッドに寝転がる。
「昔の俺はそれを恐れすぎたのかもしれない。自分に訪れる不幸を、自分の人生を狂わされることを」
ディアボロはため息をついて起き上がる。
「だが今なら大丈夫だ。沢山の力と……」
そう言ってディアボロは笑みを浮かべると、水蜜の隣に座って
「『信頼できる仲間』がいるからな」
彼女の肩に手を乗せた。
「私たちのこと……信じてくれているんですね」
「……まぁ、な」
水蜜の言葉に、笑みを浮かべて答えるディアボロ。
「あれ、起きていたのか。意外だな」
今度はナズーリンがやってきた。
「ああ、起きるのが少し早かった」
背伸びをしながら答えるディアボロ。
「珍しいこともあるんだな」
少し驚きながら返事をするナズーリン。
「俺もビックリした。外にでてみたら太陽がまだ出ていなかったからな」
そう言って軽いあくびをするディアボロ。
「たまには早起きもありだな。俺はお前らと違ってあまり遅くまで起きていられないし」
「まあ好きにしてくれ」
そう言ってナズーリンは水蜜を連れて亀の中からでる。
「……いなくなったよな」
スケアリーモンスターズの能力を使い、嗅覚で探知する。
そして自分以外に誰も亀の中に居ないことを確認すると、メイド・イン・ヘブンの能力を得たプッチを迎撃する徐倫と同じポーズをとる。
そして右腕を恐竜化させ、ソファーの前にある机を物凄い勢いで殴る。
机はあっさりと破壊され、それを見たディアボロは驚く。
「(まさかこんなに強化されるとは……吸血鬼の破壊力には至らないかもしれないが、それでも凄まじい力だ)」
ディアボロはクレイジー・ダイヤモンドのスタンドDISCを装備し、机を直す。
「(後はこの能力を使いこなすだけ……)」
ディアボロはそう思い、ベッドに座る。
背中から翼竜の翼を生やし、恐竜の尻尾をゆらゆらと揺らしながら。
「(どこまで力を引き出せるか楽しみだ)」
ディアボロは翼竜の翼と恐竜の尻尾を体内に戻す(と表現するのが正しいのだろうか)と、ベッドに寝転がる。
「(……朝食取るまでやることが無いな。どうしよう)」
ふとディアボロはそう思うのであった。
目が覚めて身体を伸ばし、ベッドから降りるディアボロ。
亀の中からでて部屋を出ると、あることに気がついた。
「……太陽がまだ出てないな」
秋の真っ只中。
守矢神社に向かっていたとき以上に秋は深まり、染まりかけていた葉を見ることは無くなった。
もっとも、あの時に山の木々の葉が全て紅葉となっていたのは、そこに住む神の力によるものだとディアボロは思っている。
それよりも、今日はいつもより早く目が覚めた。
太陽はまだ昇っていない。
「……(目も覚めてしまったな……)」
とりあえず亀の中に戻り、着替えを済ませる。
そして再び部屋の外にでるディアボロ。
「……ん?」
廊下を移動中、ディアボロが参拝道にいる『誰か』を見つけた。
が、ここからじゃよく見えない。
「(……仕方ない。確認と軽い運動を兼ねて、ちょっと接近してみるか)」
ジャンピン・ジャック・フラッシュのDISCを装備して飛ぶディアボロ。
一度参拝道の上空を通り過ぎて着陸し、その後参拝道を歩き出すというちょっと面倒なことをして参拝道にいた者に接近する。
参拝道にいた者。
その者の容姿を簡潔に言うと、少女で髪の色は緑。そして耳が生えている。
「(確かこいつは幽谷 響子(かそだに きょうこ)……なんだかんだで彼女は俺を見たことが無い……はずだ)」
その正体を確認したディアボロは少し考える。
ちなみに彼は白蓮達の邪魔にならないように、夜は『寝ている』か、『亀の中で本を読んでいる』か、『どこかにでかけている』ことが多い。
そしてディアボロはふと思いつく。
「(よし、『これ』が弾幕を受けてどこまで耐えられるか調べるか)」
そして彼がケースから取り出した一枚のDISC。
それは絶対零度を操る、一人の暗殺者が使っていたスタンドのDISC。
名は『ホワイト・アルバム』
銃弾を受けてもそれをはじき返してしまう、強力なスタンドである。
ディアボロは早速このDISCを装備し、参拝道を歩き出す。
「おはよーございます」
「……」
掃除をしていた響子が、自分に近づいてくるディアボロに気づいて挨拶をしたが、ディアボロはあえて無視をしてみる。
「おはよーございます!」
「……」
響子は無視をされて不機嫌に思うが、もう一度挨拶をしてみる。
そしてまたもや無視される。
「……どーして挨拶を返してくれないの?」
「……今は目覚めが悪い」
不機嫌そうな響子の質問に、一言だけ返事を返すディアボロ。
「挨拶を返さない奴にはおしおきしちゃうよ?」
「……やってみろ」
不敵な笑みと共に響子はディアボロに質問をするが、ディアボロはなんとも思っていない。
そしてディアボロの返事を聞いた響子は箒を地面において彼から距離を取る。
「朝のおつとめのひとつは迎え撃ち。人間の悲鳴で朝を迎えるのよ!」
そう言って響子は弾幕を撃つ。そしてそれを見たディアボロはホワイト・アルバムを出す。
弾幕が次々とホワイト・アルバムに命中するが、ディアボロへのダメージはまったくない。
衝撃による後退は、冷気でホワイト・アルバムと地面を凍らせてくっつけることで解決する。
もっとも、そんなことをしたらホワイト・アルバムの能力を解除しない限り動けなくなってしまう。
だがそれでいい。こうすることで、相手に隙を見せずに済むのだ。
そして、『凍結による接着』と『スタンド能力の解除』を交互に繰り返すことでホワイト・アルバムの発動中でも『歩く』ことができる。
それを利用して弾幕を受けながらディアボロはどんどん響子に接近していく。
接近戦では全く役に立たないが、こういう時にはそんな方法も役に立つのだ。
「えっ……な、なんで効いてないの!?」
一方、響子は慌てていた。
目の前の人間は弾幕を避けることもせずに自分に接近してきている。しかもダメージを受けているようには見えない。
後ろに下がりながら弾幕を撃つが、やっぱり効いていない。
「(弾幕はスピードは銃弾よりも遅いが、元々の衝撃が銃弾より大きい……固定していない状態で弾幕を受けたら、衝撃で後退してしまう)」
ディアボロはそう思いながらも、響子への接近を止めない。
そしてディアボロは右手を地面に置く。
すると地面が凍り、その際にできた氷は地面を這って響子を襲う。
響子は飛んで回避するが、ディアボロはすぐにホワイト・アルバムの能力を解除。
そしてハーミット・パープルのDISCを装備すると、両手からイバラを伸ばす。
『相手は飛んでこない』。そう思って5mぐらいしか距離を取っていなかった響子にイバラが両手両足に巻きつく。
何かが自分の身体に巻きつく感触に驚く響子だったが、そのまま引っ張られ、ディアボロに服をつかまれる。
そしてディアボロは響子に頭突きをする。
「懲りたか?」
「……ごめんなさい」
しゃがんで頭を押さえる響子を見ながら話すディアボロ。
彼も頭突きをしたところが痛いのだが、そこは堪える。
「……あれ?」
響子はディアボロを見上げて気がついた。
「斑点がある桃色の長髪、外見は人間の30代ぐらい、そして見えない何かを操る……」
そこまで言って響子は黙ってしまった。
ただ、表情からして自分はとんでもないことをしたと思っているらしい。
「もしかして……」
そしてだんだん響子の顔が真っ青になっていく。
「命蓮寺に居候している人間って……」
「俺のことだが?」
ディアボロの一言で、響子は身震いしだした。
それを見たディアボロはとっさの判断で、響子の口を手で塞いだ。
「このことは黙っておいてやる。だからお前も何も言うなよ」
ディアボロはそう言い、それを聞いた響子は首を縦に振る。
それを見たディアボロはハーミット・パープルとケースの中のクレイジー・ダイヤモンドのDISCを入れ替え、響子の傷を治す。
もしかしたら傷を負っていないかもしれないが、念のためだ。
「うう……喧嘩を売る相手が悪すぎた……」
「運が無かったと思って諦めな」
そう言ってディアボロは飛び去っていった。
「……頭突きしたところがまだ痛いな」
ディアボロはそう呟きながら亀の中に戻ってきた。
クレイジー・ダイヤモンドで自分を治癒することはできない。が、この程度なら治す必要も無いだろう。
「(さて……)」
ディアボロは本棚からスティール・ボール・ランの単行本を全部取り出す。
狙いは一つ。『新たなスタンド能力の獲得』だ。
「(『20thセンチュリー・ボーイ』はぜひとも入手しておきたいところだ。攻撃を全て無力化してしまう。これほど頼もしい『鎧』はない)」
本のページを次々とめくりながらディアボロは考える。
「(攻撃面は他のスタンドで補える。ホワイト・アルバムと比較すると、防御面だけは完全に勝っているが、反撃するためには別のスタンドを使うしかない。対するホワイト・アルバムは、冷気系のスタンドとしては十分な性能を持っており、スピードと攻撃は上を行っている。一長一短、といったところか)」
次にページをめくり、目に留まったのは
「『スケアリーモンスターズ』……身体能力の向上と部分的な恐竜化による戦術の増加は魅力的だな。妖怪相手に恐竜の力が何処まで通用するかはわからないが)」
そして最後。
「(そういえば第3部の『ティナー・サックス』も魅力的だな。相手を欺く、という点だけならホワイトスネイクの上をいく)」
そして必要ない単行本を本棚になおし、一冊第3部の単行本を持ってきて机に置くと、ボヘミアン・ラプソティとヘブンズ・ドアーとボーイ・Ⅱ・マンのDISCをケースから取り出す。
「さあ……始めるか」
ホワイト・アルバムとハーミット・パープルとジャンピン・ジャック・フラッシュのDISCを取り出してケースに直し、先ほどの三枚を装備する。」
さらにケースからホワイトスネイクのDISCを取り出し、装備していたキング・クリムゾンのDISCと入れ替える。
「(一つ確かめておきたいことがある。そのためにはホワイトスネイクの力が必要だ)」
ディアボロは深呼吸を一回すると、ボヘミアン・ラプソティの能力を発動した。
「(少し手間がかかったが、まあこんなものか)」
一枚のスタンドDISCをクルクル回しながらそう思うディアボロ。
DISCに宿るスタンドは『スケアリーモンスターズ』。ディエゴから奪い取った能力だ。
ボーイ・Ⅱ・マンは20thセンチュリー・ボーイとティナー・サックスを取り込んだが、スケアリーモンスターズだけはホワイトスネイクでDISC化した。
「(このDISCは『奇妙なダンジョン』にはなかったスタンドDISC。こいつを装備しようとするとどうなる?)」
ボヘミアン・ラプソティのDISCとホワイトスネイクのDISCをケースに入れ、早速スケアリーモンスターズのDISCを装備するディアボロ。
……そのまま待つが、10秒経ってもDISCが弾き出される感じはしない。
「(うまくいったか。『奇妙なダンジョン』に飛ばされた者はあらゆるスタンドDISCに適合するようになるのか?それとも俺自身の身に何かがあって、あらゆるスタンドDISCに適合するようになったのか?)」
ディアボロはそう思うが、ソファーから立ち上がってベッドに座る。
「(まあいい、『結果』はあった。スケアリーモンスターズのDISCが俺に適合するという『結果』だけは)」
スタンドDISCは『適合』すればそのDISCに宿るスタンドの能力は使える。
但し、その能力をどこまで引き出せるかは使用者次第である。
「(さて……起きるのが早すぎたな。二度寝でもするか?)」
そう思ってベッドに寝転がるディアボロ。
と、そこに水蜜がやってきた。
「あれ?起きていたんですか?」
「これから二度寝でもしようかと思っていたところだ」
ディアボロはベッドから起き上がってソファーに座る。
「……貴方に聞きたいことがあるんです」
「何だ?」
ディアボロの隣に水蜜が座り、ディアボロに質問をする。
「何故貴方はここに居候しようと思ったんですか?」
「……答えにくい質問だな」
水蜜の質問に、ちょっと嫌そうな顔をしながら返事をするディアボロ。
「最初に辿りついた場所がここだった。他の場所も考えたけど、移動のときに襲われる可能性、さらに場所が特定できないことを考えてここにした」
「『安全であること』を最優先したんですね」
ディアボロの答えにびっくりする水蜜。
どうやら、自分の予想とは違っていたようだ。
「沢山の力を持ち、敵と互角以上に戦えたとしても、それでも負ける可能性はある」
ディアボロはそう言いながらソファーから立つと、今度はベッドに寝転がる。
「昔の俺はそれを恐れすぎたのかもしれない。自分に訪れる不幸を、自分の人生を狂わされることを」
ディアボロはため息をついて起き上がる。
「だが今なら大丈夫だ。沢山の力と……」
そう言ってディアボロは笑みを浮かべると、水蜜の隣に座って
「『信頼できる仲間』がいるからな」
彼女の肩に手を乗せた。
「私たちのこと……信じてくれているんですね」
「……まぁ、な」
水蜜の言葉に、笑みを浮かべて答えるディアボロ。
「あれ、起きていたのか。意外だな」
今度はナズーリンがやってきた。
「ああ、起きるのが少し早かった」
背伸びをしながら答えるディアボロ。
「珍しいこともあるんだな」
少し驚きながら返事をするナズーリン。
「俺もビックリした。外にでてみたら太陽がまだ出ていなかったからな」
そう言って軽いあくびをするディアボロ。
「たまには早起きもありだな。俺はお前らと違ってあまり遅くまで起きていられないし」
「まあ好きにしてくれ」
そう言ってナズーリンは水蜜を連れて亀の中からでる。
「……いなくなったよな」
スケアリーモンスターズの能力を使い、嗅覚で探知する。
そして自分以外に誰も亀の中に居ないことを確認すると、メイド・イン・ヘブンの能力を得たプッチを迎撃する徐倫と同じポーズをとる。
そして右腕を恐竜化させ、ソファーの前にある机を物凄い勢いで殴る。
机はあっさりと破壊され、それを見たディアボロは驚く。
「(まさかこんなに強化されるとは……吸血鬼の破壊力には至らないかもしれないが、それでも凄まじい力だ)」
ディアボロはクレイジー・ダイヤモンドのスタンドDISCを装備し、机を直す。
「(後はこの能力を使いこなすだけ……)」
ディアボロはそう思い、ベッドに座る。
背中から翼竜の翼を生やし、恐竜の尻尾をゆらゆらと揺らしながら。
「(どこまで力を引き出せるか楽しみだ)」
ディアボロは翼竜の翼と恐竜の尻尾を体内に戻す(と表現するのが正しいのだろうか)と、ベッドに寝転がる。
「(……朝食取るまでやることが無いな。どうしよう)」
ふとディアボロはそう思うのであった。