「なー記四季ん」
「なんでぇ山仙」
「彩女ちゃん可愛ぇなー」
「手を出したら漬物やらんぞ」
「なんでぇ山仙」
「彩女ちゃん可愛ぇなー」
「手を出したら漬物やらんぞ」
『老人G』
「んーいや手ぇ出すとかそう言うんじゃないんよ。単に孫娘的なあれや」
記四季の屋敷。その縁側で人間国宝にして関西弁のファンキージジイ、三木山仙は記四季の入れた番茶を飲みながらそういった。
「ふん。急に遊びに来て言うことがそれか。あんなちんちくりんのどこがいいんでぇ?」
「なんちゅーか素直やん。色々寄り道しても最後には家に帰ってくる的な素直さや。うちらのだましにも引っかかってくれたしな」
「寄り道してる時点で素直じゃないだろう。それに引っかかったのはあいつが馬鹿だっただけだ」
いいながら記四季は山仙の湯飲みに茶を注ぐ。ついでにせんべいを二、三枚拝借していた。
森の奥から、雀の声が聞こえている。
「というかだな。素直さで言うならロクも負けていないだろう」
「さりげなーく話し逸らそうとする癖かわっとらんなー。今は彩女ちゃんの話しとるんやで? ほれ、向こうで素振りしてる振りして聞き耳たてとるかも知れへんで?」
山仙が指差す方・・・庭の隅では彩女と山仙の神姫である緑青が小枝で試合をしていた。
距離は遠く。聞こえているかどうかは判らない。
「ふん・・・別に聞かれて困る話をしてるわけじゃねぇ」
「そやねー。今話しとんのは彩女ちゃんの下着の話やしなー」
彩女の剣筋が僅かにぶれる。
「おいお前・・・」
「で実際のところどうなん? 儂は白やとおもうんやけど記四季んはしっとるん?」
「あいつはさりげなく黒とか好きだぞ。いや待て違う。何でいきなり下着の話になるんだ!」
「ん。実験や。彩女ちゃんどこまで耳がいいかのなー」
「なんだと?」
「ほれ見てみぃ。なんか急に振りが素人くさくなった上に耳こっちむいとるやん?」
山仙に言われそちらを見やる。
「・・・・・・・・・・・・・・・・・」
そこには無言で、さっきよりも妙に雑に小枝を振る彩女がいた。
当然の如くそんな隙を緑青は見逃さず、一瞬で面が決まる。
「いやーひな祭りの時もそうやったけどほんま耳いいなー。獣耳の癖に地獄耳やで」
「あぁ。開発コンセプトがどうとかで、あいつ普通の神姫より可聴領域とか広いんだよ」
「そかそかー。じゃ、内緒話もし辛いなー。・・・そいや記四季ん。なんで彩女ちゃんって名前にしたん?」
山仙のその言葉に、記四季は僅かに眉をひそめる。
彩女の名前の由来は別に隠しているわけではない。だが知られるのも気恥ずかしいと思っていた。
「・・・なんで今それを聞く?」
「いやな? 記四季んスゴイ落ち込みようだったやんか。なんかもう今にもなー・・・」
「・・・ふん。単に思いつかなかっただけだ」
記四季はそういいながら頬杖をつく。
山仙はその様子を楽しそうに見つめていた。
そのまま、無言の時間が続く。
「・・・寂しかったのさ」
静寂に耐えられなくなったのか、記四季は溜息をつきながら言った。
「あいつのために家を建て、あいつのためにここに住み、あいつのために生きてきた。それが突然いなくなっちまって、寂しかったのさ」
「・・・そか。でも歳をとるってのはそういうことやで。長く生きれば生きるほど、同じ時間を歩いてきた奴はいなくなっていく。そういうもんや」
「判っていたさ。・・・判っていたつもりだった。あいつ、最後になに言ったと思う? 『貴方はもう、自由です。これからは、貴方の道を歩んでください』だぜ? ・・・最初は、俺があいつの負担になってたんじゃないかって自分を責めたよ」
茶を啜り喉を潤し、記四季は続ける。
「そんな状態だ。孫に無理やり押し付けられたちんちくりんに、妙な名前つけちまうのも無理ないだろう」
「そか。まぁそやね。・・・でも今は責めてないんやろ?」
「あぁ。あいつはいなくなっても、俺の中に今もいる」
彩女に聞かれても問題ないように、なるべくぼかしながら記四季は言った。
「そかそかー。いやな? 実は結構心配しとったんよ。ほら、神姫に・・・そういう名前付けるってなんかこう・・・な?」
「同意を求められてもな。・・・いいたい事はわかるが」
苦笑しながら記四季はせんべいを齧る。
「ま、実際に彩女ちゃんみて記四季んみて安心したわ。昔より外出てる見たいやしなー」
「・・・お前らはどうして俺を引き篭もり扱いするんだ。散歩だって毎日してるし食料だって山から取ってきてるんだぞ」
「記四季んアウトドアヒッキーやし。っていうかアレや。記四季ん狩りに儂のやった刀でうちの流派やってみとるんやて? どや?」
「鉄花創心流もどきさ。前まではスパス使ってたんだが、一々書類書いたりするのが面倒でな」
「あーそいやスパス日本でも持てたなー。・・・いやちゃうねん。狩りの話や。実際つこてみてどうや?」
「切れ味もよくとても軽い。それに重心もいい。流石は人間国宝って所だ。しかし少々尖りすぎていて、居合じゃないと折れそうなのはどうだろうな」
「そりゃそう作ってるんやもん」
「だったら聞くな」
「いや他の人から感想貰うと参考になるんよ。今日だって本当は群菖蒲の感想聞きにきたんや」
「嘘つけ。真っ先に『竹の子の季節やな』とか言い出したのはどこのどいつだ」
「ちゃうねん。儂は『リンゴの蜂蜜漬けが食べたい』言うたんや」
「結局食い物じゃねぇか!」
「細かいこと気にしたらあかんねん。白髪になってまうで」
「とっくに総白髪だっての!」
「それはそうと松茸も食いたいな?」
「食い物から離れろよ!?」
記四季と山仙の会話は途切れることなく続いていく。
その様子を彩女が盗み聞きして、緑青に面をとられていた。
季節は春。
竹の子の美味い季節であった。
記四季の屋敷。その縁側で人間国宝にして関西弁のファンキージジイ、三木山仙は記四季の入れた番茶を飲みながらそういった。
「ふん。急に遊びに来て言うことがそれか。あんなちんちくりんのどこがいいんでぇ?」
「なんちゅーか素直やん。色々寄り道しても最後には家に帰ってくる的な素直さや。うちらのだましにも引っかかってくれたしな」
「寄り道してる時点で素直じゃないだろう。それに引っかかったのはあいつが馬鹿だっただけだ」
いいながら記四季は山仙の湯飲みに茶を注ぐ。ついでにせんべいを二、三枚拝借していた。
森の奥から、雀の声が聞こえている。
「というかだな。素直さで言うならロクも負けていないだろう」
「さりげなーく話し逸らそうとする癖かわっとらんなー。今は彩女ちゃんの話しとるんやで? ほれ、向こうで素振りしてる振りして聞き耳たてとるかも知れへんで?」
山仙が指差す方・・・庭の隅では彩女と山仙の神姫である緑青が小枝で試合をしていた。
距離は遠く。聞こえているかどうかは判らない。
「ふん・・・別に聞かれて困る話をしてるわけじゃねぇ」
「そやねー。今話しとんのは彩女ちゃんの下着の話やしなー」
彩女の剣筋が僅かにぶれる。
「おいお前・・・」
「で実際のところどうなん? 儂は白やとおもうんやけど記四季んはしっとるん?」
「あいつはさりげなく黒とか好きだぞ。いや待て違う。何でいきなり下着の話になるんだ!」
「ん。実験や。彩女ちゃんどこまで耳がいいかのなー」
「なんだと?」
「ほれ見てみぃ。なんか急に振りが素人くさくなった上に耳こっちむいとるやん?」
山仙に言われそちらを見やる。
「・・・・・・・・・・・・・・・・・」
そこには無言で、さっきよりも妙に雑に小枝を振る彩女がいた。
当然の如くそんな隙を緑青は見逃さず、一瞬で面が決まる。
「いやーひな祭りの時もそうやったけどほんま耳いいなー。獣耳の癖に地獄耳やで」
「あぁ。開発コンセプトがどうとかで、あいつ普通の神姫より可聴領域とか広いんだよ」
「そかそかー。じゃ、内緒話もし辛いなー。・・・そいや記四季ん。なんで彩女ちゃんって名前にしたん?」
山仙のその言葉に、記四季は僅かに眉をひそめる。
彩女の名前の由来は別に隠しているわけではない。だが知られるのも気恥ずかしいと思っていた。
「・・・なんで今それを聞く?」
「いやな? 記四季んスゴイ落ち込みようだったやんか。なんかもう今にもなー・・・」
「・・・ふん。単に思いつかなかっただけだ」
記四季はそういいながら頬杖をつく。
山仙はその様子を楽しそうに見つめていた。
そのまま、無言の時間が続く。
「・・・寂しかったのさ」
静寂に耐えられなくなったのか、記四季は溜息をつきながら言った。
「あいつのために家を建て、あいつのためにここに住み、あいつのために生きてきた。それが突然いなくなっちまって、寂しかったのさ」
「・・・そか。でも歳をとるってのはそういうことやで。長く生きれば生きるほど、同じ時間を歩いてきた奴はいなくなっていく。そういうもんや」
「判っていたさ。・・・判っていたつもりだった。あいつ、最後になに言ったと思う? 『貴方はもう、自由です。これからは、貴方の道を歩んでください』だぜ? ・・・最初は、俺があいつの負担になってたんじゃないかって自分を責めたよ」
茶を啜り喉を潤し、記四季は続ける。
「そんな状態だ。孫に無理やり押し付けられたちんちくりんに、妙な名前つけちまうのも無理ないだろう」
「そか。まぁそやね。・・・でも今は責めてないんやろ?」
「あぁ。あいつはいなくなっても、俺の中に今もいる」
彩女に聞かれても問題ないように、なるべくぼかしながら記四季は言った。
「そかそかー。いやな? 実は結構心配しとったんよ。ほら、神姫に・・・そういう名前付けるってなんかこう・・・な?」
「同意を求められてもな。・・・いいたい事はわかるが」
苦笑しながら記四季はせんべいを齧る。
「ま、実際に彩女ちゃんみて記四季んみて安心したわ。昔より外出てる見たいやしなー」
「・・・お前らはどうして俺を引き篭もり扱いするんだ。散歩だって毎日してるし食料だって山から取ってきてるんだぞ」
「記四季んアウトドアヒッキーやし。っていうかアレや。記四季ん狩りに儂のやった刀でうちの流派やってみとるんやて? どや?」
「鉄花創心流もどきさ。前まではスパス使ってたんだが、一々書類書いたりするのが面倒でな」
「あーそいやスパス日本でも持てたなー。・・・いやちゃうねん。狩りの話や。実際つこてみてどうや?」
「切れ味もよくとても軽い。それに重心もいい。流石は人間国宝って所だ。しかし少々尖りすぎていて、居合じゃないと折れそうなのはどうだろうな」
「そりゃそう作ってるんやもん」
「だったら聞くな」
「いや他の人から感想貰うと参考になるんよ。今日だって本当は群菖蒲の感想聞きにきたんや」
「嘘つけ。真っ先に『竹の子の季節やな』とか言い出したのはどこのどいつだ」
「ちゃうねん。儂は『リンゴの蜂蜜漬けが食べたい』言うたんや」
「結局食い物じゃねぇか!」
「細かいこと気にしたらあかんねん。白髪になってまうで」
「とっくに総白髪だっての!」
「それはそうと松茸も食いたいな?」
「食い物から離れろよ!?」
記四季と山仙の会話は途切れることなく続いていく。
その様子を彩女が盗み聞きして、緑青に面をとられていた。
季節は春。
竹の子の美味い季節であった。
後書きみたいな
ホワイトファングコラボ第二弾。
ぶっちゃけ、爺同士の会話が書いてみたかったというただそれだけの理由で書かせていただきました(汗
今回神姫たちは台詞ありません。延々と爺が縁側で茶すすりながら話してるだけです。
タイトルは某映画のもじりです。
アレは最高に面白かったな・・・ラストの大仏が(ぇ
ぶっちゃけ、爺同士の会話が書いてみたかったというただそれだけの理由で書かせていただきました(汗
今回神姫たちは台詞ありません。延々と爺が縁側で茶すすりながら話してるだけです。
タイトルは某映画のもじりです。
アレは最高に面白かったな・・・ラストの大仏が(ぇ