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運命の螺旋乗り越えて(前編)

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運命の螺旋乗り越えて(前編) ◆UjRqenNurc



銃声を残して、放送は終わった。
競技場は再び、物音ひとつない静寂な空間に戻る。
たぶん、放送してたヒト、殺されちゃったんだ……

「主催側も、一枚岩じゃないって事か……」

それならつけいる隙もあるかもしれない。
あたしは広げていた名簿と地図をデイパックに戻すと、今の放送について考える。

思っていた以上に死者が多く出た。
16人……始まってからたったの6時間で16人もの死者が出たのだ。
名簿によると、参加者は総勢70名。
そのうち2割以上がこれだけの時間で死ぬなんて、尋常じゃない。
もちろん、主催者の発表をそのまま鵜呑みにはできないけれど……

それだけ、この首輪が恐ろしいって事なんだ……

当然だ。
これがある限り、あたしたちの命はあの主催者たちにいつ消されてもおかしくない。
あの弟さんを知っていた男の子のように。

死の恐怖から逃れるには、主催の言うとおり最後の一人になるしかない。
だから誰が殺し合いに乗っていてもおかしくはないんだ。
その事実こそが参加者たちに疑心暗鬼を生み、更に殺し合いを加速させるだろう。

殺されるかもしれない恐怖というものは、相手を殺す動機を簡単に与えてくれる。
どんなに怖い人でも、殺してしまえばもう怖くないからだ。
あたしが敵に回りそうだった、元ハンター・今里先生を殺した時みたいに。
そして、喜媚ちゃんを手に掛けそうになった時のように。
でもそれは、あたしたちブレード・チルドレンにとって自分の中の血に負けるということ。



ブレード・チルドレン計画。
ミズシロ・ヤイバの精子を使った人工受精により造られた子供たち。
80人造られた子供たちは、その全てが人並み外れた才覚の持ち主。
それは遺伝学上あり得ない遺伝。
旧来の人類より優れた新たなる種とすら言える、神の血の為せる技。

これからの人類社会を担う優れた人間を作り出そうというこの計画は当時、神の計画と
呼ばれたそうだ。
でもそれは悪魔の計画だった。
あたしたちの血は、社会に適応出来る年齢――成人になると目覚めると予言されている。
その年齢に達したブレード・チルドレンは、血の命ずる本能を上手くオブラードに包みながら
古き人間種を駆逐するようになると言うのだ。

新たな種が旧き種を駆逐するこの計画は、しかし鳴海清隆という一人の男性によって防がれる。
もはや新たなるブレード・チルドレンは生み出されず、残ったあたしたちにも保護という名の監視の目が付いた。
これは執行猶予期間だ。
あたしたちが人類を滅ぼす猛毒だと証明されてしまえば、逆に人類はあたしたちを生かしてはおかないだろう。
滅ぼされる前に滅ぼす。
種としての、当然の防衛本能だ。

だからあたしたちは証明しなければならない。
あたしたちが、血の宿命なんかに負けない事を。

あたしたちは信じなければならない。
あたしたちにも、希望の光が残されている事を。


「だから、恐怖に負けてちゃ駄目なんだ……
 こっちから攻めていかなきゃ、運命には立ち向かえない」

――運命の螺旋に屈するのも立ち向かうのも、あなた達それぞれの意思ひとつ。

放送の女性の言葉が、妙に頭に残る。
まるで自分たちの事を言われているようだった。
この殺し合いに参加させられたブレチルは多い。
こーすけ君、亮子ちゃん、カノン君、そしてあたし。
そしてブレチルではないけれど、盤面の重要な駒にしてあたしたちの希望の弟さん。
部外者ながら弟さんといつも一緒に居る結崎ひよのさん。
そして……

「あの男の子……何があっても歩以外には殺されないって言ってた……
 やっぱりそういう事なのかな……」

ミズシロ・ヤイバに対して清隆様が存在するように。
鳴海歩に対応する駒もまた存在していたのかも知れない。

盤面にぽつりと存在していた清隆様に匹敵するかもしれない駒。
何事も定められていない、その存在はあたしたちを救うかもしれないと思っていた。
でも、もしそれに対応する駒があるのだとしたらどこまでいっても盤面に乱れなどなく。
運命は定められた通りにしかならないのかもしれない。

「仮定に仮定を重ねてもしょうがないか……
 歩って名前二人いたし……もしかしたらそっちの関係者なのかもしれないし」

ともかく、これだけの人数が死んでいるというのに自分の知り合いが誰も死ななかったというのはラッキーだった。
カノン君には注意しなきゃだけど、亮子ちゃんや弟さんは殺し合いには乗っていないはずだ。
こーすけ君はバカだから乗っているかもしれないけど、その時はあたしが止めればいい。
彼らと合流して協力体制を取れば、きっと今より格段に状況はよくなるはず。

blogの管理人からの連絡はまだこない。
出来れば急いで欲しいところだ。
10:30を持ってB-4が封鎖されるのは痛い。
ここが封鎖されると島の北西にある市街地への出入りがかなり制限されることになる。
もし「彼」もしくは「彼女」が、市街地にいるなら時間が経つほど合流は難しくなるかもしれない。
南の市街地付近で指定されている禁止エリアでもそれは言える。

 7:30よりI-6。
 9:00よりF-7。
 10:30よりB-4。

この配置を見れば、誰でも市街地を取り囲むように禁止エリアが指定されていくものだと思うだろう。
次の放送でE-1あたりが指定されれば北の市街地はほとんど封殺。
出る事も、入る事も難しくなる。

だから今、市街地で籠城を決め込んでいた人は禁止エリアに取り囲まれる前に脱出を。
市街地に用のある人は、禁止エリアに囲まれて入れなくなる前に用を済ませようと考えるはず。
そしてそれこそが主催者たちの狙い。
狭い範囲に限定された移動経路で、そんな焦りを抱えた人たちが出会えばどうなるか……
考えるまでもないよね。

喜媚ちゃんみたいに飛べるなら話は別だけど、いくらなんでもそんな参加者ばかりじゃないと思う。
それならこんな交通の要衝ばかりを禁止エリアにするはずがない。

幸いあたしたちは喜媚ちゃんの能力で飛んで移動することだって出来るんだから、もし市街地に
入らざるを得ない状況になっても橋以外の場所から侵入する事が可能。
今は焦らず連絡を待つべきなのだ。

だからあたしのこれからの方針はこれまでと同じ、「待ち」だ。
……さっき攻めなきゃ駄目って言っておきながらそれはどうなんだって思うけど、それも一つの
戦術として有りだと思う。


それにあたしは禁止エリアがどういうことになるのか、一度見ておきたい。
禁止エリアに入ると首輪が作動すると言う。
それはたぶん、首輪に付けられたセンサーが禁止エリアに指定された区画に張り巡らされる
「何か」に反応して作動するんだろう。
あの沢山の参加者の中からたった一人の首輪を遠隔爆破したように。
それはたぶん極めて指向性の強い、例えれば電波のような波長だと思う。
もし、その波長を解析する事が出来れば首輪の解体しなくても対策が可能だ。
波長の妨害をしたり、首輪の回りに波長を反射するような物で覆ってしまえばいいのだ。

もちろん問題はある。
マップ上ではB-4は判り易く格子で区切られているが、実際にはどこからがB-4だなんて標識はない。
うかつには近づけない以上、波長を受信するアンテナを予め禁止エリア予定地に立てておく必要がある。
今回は到底間に合わないだろうから、本当に見るだけだ。
測定器具も自作する必要がある。
アンテナと解析用のソフト……コンピューターはここにあるものを使えばいいとして、最低限
これらは自前の物を用意しなければならないだろう。
そして最大の問題はその波長が、あたしの知る科学知識にない場合だ。
あの宝貝のように、あたしの知らない法則に基づいたものであったらお手上げだ。

「でも……首輪の解体よりは目があるはず……だよね」

あたしは一人うなずくと、これからの方針を纏める。
1.“螺旋楽譜”の管理人からの連絡を待つ
2.禁止エリアの観察
3.測定器具の用意

少し考えて4を付け足す。
4.未知の知識を持つ人材の確保

とりあえずの候補としては、喜媚ちゃんの信頼する妲己という女性だろうが、
籠城を選んだ以上、これは“探偵日記”の管理人に任せるほかはないかもしれない。
あるいはこの計画自体を“探偵日記”の管理人に伝え、協力を仰ぐべきなのかもしれないが……
今はまだ、成功するかどうかもわからないあやふやな計画だ。
せめて禁止エリアを実際に見てみるまではやめておこう。


考えを纏め終えると、あたしは椅子の背もたれに寄りかかる。
……そういえば喜媚ちゃん、遅いな……
まだあの子を信じたわけじゃない。
あの得体の知れない力があたしを不安にさせる。
でもそれはブレチルを不安視するハンターたちと同じ考えだ。
まだ何もしていないのに、ただ力を持っているから怖いだなんて……

うん、いきなり信頼は出来ないけど、信頼するための努力はしよう。
あたしも勇気を持たなくちゃ。
あの時、首輪が爆発する直前まで微笑んでいた弟さんのように。



あたしは喜媚ちゃんを探す為に競技場を出る。
……あんな事が起こるだなんて思っていなかったんだ。
遠くから聞こえる女の子の泣き声。
その方角に向かって走り出した、この時はまだ。


       ◇       ◇       ◇


ボタリ、ボタリ
ずぶ濡れの身体から水滴が落ちる。
意識はさっきから覚醒したり、途切れたりを繰り返している。
寝起きはいい方なんだけど、どうにもだるくて目蓋が開かない。
どうしてこんなにだるいんだろ。
どうしてあたしはずぶ濡れなんだっけ?

ズンチャラッカホーイホーイホヒッホヒッ♪
ズンチャラッカホーイホーイホヒッホヒッ♪

ああ、さっきからうるさいなぁ。
あたしゃ疲れてるんだ。静かにしてくれ……

悪徳ロリータ
ロリッ☆ロリッ☆

耳元で、気色の悪い歌を延々と繰り返される。
何がロリだ。
男ってのはそんなにロリ好きなのか?
そりゃあたしはおっきくて可愛げがないかもしれないけど……

「う、うぅ……」

あまりの気色悪さに一言だけ文句を言ってやろうと、あたしは重たい目蓋をこじ開ける。
ぼんやりする視界に映るのは、誰かの背中。
どうやらあたしは、誰かに背負われているらしい。
いったい、誰が……
あたしは顔を持ち上げる。

すると男はこちらを振り返り、ニィィ……と顔を笑みの形に歪ませて

「あ、お姉ちゃん、目を覚ましっ☆」

あたしに、話しかけてきた。

「う、うわああああああああっ!?」

くっつきそうなほどの至近距離に、あの男の顔があった。
さっきまで、戦っていた相手。
人間の命を、あたしの目の前で刈り取った男。

あたしが武器を奪って、奪い返されて、川の中に叩き込まれて……
それから後の事はよく思い出せない。
驚きと混乱の中、あたしは男の背中を両手で叩き、身体を離す。

――どうなってんの!?
……わからない

――どうして!?
……わからない

――どうする!?
1 ハンサムな高町亮子は突如として反撃のアイディアを思いつく
2 仲間が来て助けてくれる
3 助からない。現実は非情である

「あ……」

頭の中はぐちゃぐちゃだ。冴えたアイディアなんて、閃きそうもない。
エド、聞仲。この地で知り合った同行者たち。
あいつらが無事かどうかもわからない。
では、残された答えは一つしかない。

諦めよう。
あたしは頑張った。
頑張って、これならしょうがない。

「ああ……」

疲労は甚大。
身体はまるで鉛で出来ているように重い。
意識も朦朧としている。
武器も、道具もなにもない。
相手は4人がかりでも叶わなかった化け物。
どうしようもないじゃないか。
呪われた血を持つあたしが、誰も殺さずにここまでこれたんだ。
もう、楽になろう。

「あああああああああああっ!!」

朦朧とする脳幹を叩き起こすように雄たけびを上げる。
胡乱だった眼差しに力が戻る。
萎えた身体に気合が入った。

嫌だ、諦めるなんて嫌だ。
そんなのは高町亮子じゃない。
最後まで負けたくない。
運命にも。
自分にも。


ドロップキック。
軽く助走をつけて放ったあたしの十八番は、意外とたやすく男に決まった。
吹っ飛ぶ男。

「……て、あれ?」

吹っ飛ばされて、ゴロンゴロンと回転。
目を回して延びていたのは、あの男ではなく……
理緒くらいの小さな女の子だった。

「……あれ?」

きょろきょろと、あたりを見回す。
あの男はどこにもいない。
いるのはあたしと、あたしの攻撃で倒れた女の子だけ。

「えーと、……見間違えた?」

あたしは、慌てて女の子を抱き起こす。

「ね、ねぇ、大丈夫?」

背中にでっかい羽根のオブジェ。
あたしには絶対似合わなそうな、ひらひらの服。
なんでこんな子を、あの男と間違えたんだろう。
女の子は目を開けると、その瞳がうるうると潤みだす。
あ、ヤバい。

「ひ、ひどい! 喜媚、何にもしてないのに〜〜〜!!」

ロリィィィィィ☆と妙な泣き声を上げながら号泣する女の子。
滝のような涙が途切れることなく溢れだす。

「ご、ごめんね〜、あたし寝ぼけちゃってたみたいで〜」

女の子の頭を撫でながら、あたしは困り果てていた。
本気で体調が悪い。
熱っぽい。
それなのに寒気がする。
あ〜、マジヤバい。
目の前を羽根が舞っているような、おとめちっくな幻まで見えてきた……

「……びちゃーん!! 喜媚ちゃーん!!」

お、誰かきた。
この声は……理緒?

「おーい! 理緒ーー!!」

こっちにやってくる、ちっこい人影。
特徴的なツインテールが揺れる。
ああ、理緒、あんたもここに連れてこられたのか。

泣いていた女の子は、理緒が来るとピタリと泣きやんで理緒に抱きつく。
やれやれ、助かったよ。
でも、この状況はちょっと誤解されるかも。

「理緒。この子、あんたの連れだったのかい? 
 あたしのはやとちりで、けっとばしちゃったんだ。悪かった。ごめんよ。
 ……でも、あんたにとっちゃ不運だったろうけど、いてくれて助かったよー。
 ほら、この首輪。あんたなら解除できるだろ?」

「……あなた、誰ですか?」

は?
理緒は、まるで敵でも見るような冷たい眼差しであたしを見る。

「何言ってんだい!? ふざけてるの? 亮子だよ、高町亮子!」

「あなたが……亮子ちゃん?」

「そーだよ、見りゃわかるだろ!?」

あたしは本気で憤慨する。
いつも変な所でおふざけモードに入る子だけど、ちょっとそれはないんじゃないの?
そりゃ、あたしも悪かったと思ってるけど……

「……あたしの知ってる亮子ちゃんはもっと背が高くて、かっこいいよ
 あなた、あたしよりちっちゃいじゃない」

はぁ? 何ふざけてるの?
あたしが理緒よりちっちゃいだって!?
そんなことあるわけが……

あたしは背筋を伸ばして理緒を見据える。
……あれ。
いやいやいや、ちょっと待って。
なんで視線の高さが一緒なの?

手を見る。
ぶかぶかな袖が、水で濡れて張り付いている。

下を見る。
制服のスカートが、今にもずり落ちそう。

恐る恐る、胸に手をあててみる。
ささやかながらも確かに存在していたふくらみが、今はぺたんこだ。

「な、な、な、なんじゃこりゃーーーーーー!!!!」

――今まで育ててくれたお母さん、ごめんなさい。
あたし、高町亮子は……ろりぺたな子供に、戻ってしまいました……




――もし、この場に亮子の同行者、聞仲がいればこの現象を説明する事が出来ただろう。
妲己三姉妹の次女、胡喜媚
妖怪仙人である彼女の正体は、雉鶏精という未来過去へと時間を自由に行き来出来る極めて珍しい
鳥の妖怪なのだ。
言い伝えではその羽根に触れたものは時間的な退行を起こすという。

しかし、齢70を超える太公望を一瞬で胎児にまで戻したその力も、この場では制限されていたようだ。
下手をすれば知らぬ間に死んでいたであろうその能力を受けて、この程度で済んだのは幸運だったとも
言えるだろう。


だが果たして彼女が元の姿に戻る事が出来るのか否か。
それは聞仲の知識を持ってしてもわからない。





       ◇       ◇       ◇


後ろ手にベレッタを構え、あたしは高町亮子を名乗る女の子を注意深く見つめる。

着ている服は、ぶかぶかのサイズ違いながらも月臣学園の女子制服。
ずぶ濡れなのは、川にでも落ちたのか。
あたしの名前や、爆薬に詳しい事を知っていた事。
口調やリアクションなども確かに亮子ちゃんを思わせる。

でも、なんで子供になってるの?
亮子ちゃんまで知らない間に魔法少女にでもなっちゃったの?
あたしは、高町亮子しか知り得ないであろう質問をいくつかしてみる。
結論は……

「確かに亮子ちゃんみたい、だね……なんでそんな格好になってるの?」

「そんなの、あたしのほうが聞きたいよ……」

二人して、大きな溜息。
ちょいちょいと、服を引っ張られる。

「この子、理緒ちゃんのお友だちっ?☆」

さっきまでべそをかいていた喜媚ちゃんが、にぱっと笑いながら問いかけてくる。

「ええ、どうやらそうみたいです……
 この子があたしの友達の高町亮子ちゃんです。仲良くしてあげてね、喜媚ちゃん」

「子供扱いすんなよ……。えっと、さっきは悪かった……ね。
 高町亮子。よろ……しく」

「うんっ☆ 理緒ちゃんのお友だちなら、喜媚ともお友だちっ☆ 仲良くしっ☆」

だが二人が握手しかけた所で、亮子ちゃんの姿勢が崩れる。
危うく喜媚ちゃんが抱きとめてくれたが、亮子ちゃんの様子がおかしい。

息が荒い。額を触ってみると酷い熱だった。

「亮子ちゃん?」

返事はない。
……亮子ちゃんは意識を失っていた。
病気……かな?破壊専門のあたしの知識じゃ判断出来ないけど……
水に濡れて風邪をひいちゃったとか?
それなら寝かせておけば治ると思うけど、こんな場所で治るまで悠長に寝かせてなんていられるわけがない。
それにもし、子供返り病とかそんな変な病気だったらどうすればいいの?

「亮子ちゃん、しっかりして! 亮子ちゃん!」

「喜媚、こんな時どうすればいいのか知ってりっ☆
 亮子ちゃんをお医者さんに見せに行きっ☆」

お医者さん……そんな人が、この場に居合わせているかどうか。
協力してくれるかどうかはわからない。
でも亮子ちゃんを、このままにはしておけない。

そう、せめて病院に行って、医学書と薬でも手に入れば……
危険かもしれなかったが、亮子ちゃんを見捨てられるはずがない。
そんなことしたらこーすけ君に殺されちゃうよ。

「喜媚ちゃん、病院に行こう。亮子ちゃんにお薬を飲ませてあげなきゃ。
 亮子ちゃんを乗せられるような姿に変身してくれる?」

「はーいっ☆、ロリロリロリったロリロリリン☆
 スープーちゃんになーりっ☆」

ぴろぱろぴろぱろ どろろんっ☆

煙の中から現れたのは、なんともファンシーな空飛ぶカバ。
これが噂のスープーちゃんですか……

「理緒ちゃんも喜媚に乗りっ☆
 喜媚、スープーちゃんみたいに病院までひとっ飛びしっ☆」

「あんまり目立たないようにお願いしますね……」



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