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花の命は結構長い。女ですもの!

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花の命は結構長い。女ですもの! ◆RLphhZZi3Y



サバイバルナイフはあえて切れ味を落としている。
切れ味を持たせると、傷を負ったときにサバイバル環境から病院へ行く間に手遅れになるからだ。

このデチューンが生死の分かれ目なのをスパスパの実能力者が聞いたら、威力を落として欲しいと願うだろうか?
悪魔の実がある元の世界ではありえない話だが……


   ++++++


「さすがに疲れましたわ……」
鈴子は刃の足を元に戻した。立体映像を目指していたら、具合よく市街地に入ることができた。
三人組に出会うことがなかったのは幸運やら不運やら。

右も左も家、家、家。しかも人の気配というか、破壊の跡が無い。鈴子の指針が揺らいだ。
ここを虱潰しに探して行けばビーズの1個2個どうってことないじゃないのか。ネックレスでもあれば引き千切ればいい話だ。
……たぶん。

せっかく生き残っているのだ。チャンスは逃しちゃいけない。
寄り道ぐらい許されたっていいだろう。仲間を作らない自分にとって、身を守る攻撃は最大の防御なのだから。
あのフサフサした可愛い子はアニソンに合いの手を入れている。まだ余裕はありそうだ。
あの酔っ払いは騒音の条例違反で逮捕でもされればいいのに、と現状とはかけ離れた愚痴を漏らす。
「待っててください。ビーズが手に入ったら必ず貴方を保護しますわ」


眼鏡のつるに汗が溜った。
拭っても気持ち悪い。どこかの家にお邪魔して服を拝借しよう。
「あら、何でしょう?」

   ←診療所

小さい看板が、海の方角に向かって立てられていた。
きっと離れ孤島にふさわしく、小さな診療所があるのだろう。
薬。万能薬は持ってるが使いすぎは考えものだ。消毒液や赤チンぐらい欲しい。さびれた診療所でもこれぐらいは望める。
連なった民家の間を縫って舗装されてない道を進むと、離れた場所に診療所が見えた。
薬をいただいてさっさとビーズ探しを始めたいが、剥き出しの赤土の道は、刃を滑らすにはあまり向いていなかった。鈴子は己の足で駆けた。

「きゃっ!?」

何かに足を取られた。身体の前面を全て使って、盛大にスライディング。汗だらけの服に砂がこびりつく。今ここで着替えたくなった。
すりむいた膝の砂も軽く払う。診療所に向かう理由が増えた。それにしても、何に蹴つまづいた?

「お、お地蔵さん?」
祠からせり出て、地蔵がうつ伏せに倒れていた。祠の隣に土が盛ってあり、こぶし大の石が乗っていた。
手向けのつもりなのか、造花が刺さっている。

察した。
これはお墓。
きっと放送で呼ばれた誰かの。
無償に苦しくなった。墓を作ってくれる『仲間』が、ここに眠る人にはいたのだ。一人しか生き残れないと言われているにも関わらずだ。
一緒にいただけの烏合の集でも、こんな状況下で組めば情でも移るものなのか?
長くてもせいぜい半日の付き合いなのに。
鈴子の考えはひとつの不安にたどりついた。

もしかして、仲間を作ってないのは自分だけなのではないだろうか。

三人組は理由は知るよしもないが固まっていたし、立体映像の子は酔っ払いと(考えたくもないが)コンビを組んでいるようにも見える。
教会で見かけた男たちだって二人組だった。

例え『独り』を選んだ道が正しくとも、不安は消えず増すばかりだ。
(それでも、仲間はいりませんわ。私の全てはロベルトのためのものですもの。
それに腕に刃を接触させてしまった女の子だって一人でした。誰かに裏切られて身ぐるみ剥がれたのでしょう)
割りきれない自分に嘘をつき奮い立った。
地蔵を起こし、手を合わせる。縁起担ぎのつもりでもあったし、隣の墓の主に粗相がないようにしたかった。
が、鈴子はそもそもの問題に気づいた。

「このお地蔵さん、急に倒れて来なかったかしら!?」

確証はない。ただの足元不注意だったかもしれない。
けど、地蔵が倒れていればさすがに目につくはずだ。
祠の中を確認するも、特別な仕掛けは無さげだ。
気味が悪い。鈴子は祠を後にした。


誰も見ていなかったが、ささやかな幸運が水面下でおこっていた。
鈴子が転んだ直後、診療所からツインテールの少女が逆方向へ走り去っていた。
その少女がとっくに殺し合いに乗っていたのは、黄泉路をたった今歩き出した医者だけが知ること。
もしこのまま鈴子が進んでいたら、いくら精神がまいった少女でも気づいただろう。
姿を消し、スタンガンを構えていたかもしれない。


          ◇ ◇ ◇


「少しだけお邪魔しますわ~」
誰に断るでもなくそろそろ声をかけ、診療所のドアをくぐる。
無音。
さすが海近郊の診療所といったところか、防音工事がされているようだ。
これなら医者も安心して聴音器らでの誤診を防げる。あのうるさい酔っ払いの歌もほとんど聞こえない。
玄関のすぐ右手に待合室が控えていた。L字にソファーが並び、テレビが置いてある。壁には額に入ったモノクロの集合写真がかけてあった。これまでここに住んでいた島民が集合したところか。
「いえ、違いますね……この顔は見覚えがありますわ」
わかりにくいが、最初に集められた場所で女の子を焼失させた奴と、色黒の幼女が混じっていた。
申公豹とムルムルといったか。
その他の人間は知らない人ばかりだ。
何の気なしにテレビのスイッチを入れた。

『ムルムルのお天気情報!』

鈴子は目をかっ開いてテレビの側面を掴んだ。あの悪夢の元凶が、ブラウン管の向こうで楽しげに笑っていた。
殺し合いに引きずり出した張本人が、憎々しいほど可愛い顔で電波に乗っている。
ビーズがあればテレビをぶっとばすぐらいに頭にきた。
トウモロコシをマイク代わりに、島の地図を指さすムルムル。
『本日午前中の天気は晴れじゃったが、昼からは曇り、夕方には雪が降るぞ。
氷点下5度まで下がるのじゃ。積雪は島全体に少なくとも1、2センチはあるじゃろう!山の方は特に防寒が必要じゃ!
今、あられもない恰好をしてる奴が多いでのー、そのままならとても持たないじゃろうなぁ』
「何を言っているんです?海のそばには雪は降っても積もらないのですよ?
簡単な理科の問題ではないですか!
それ以前に日本海側ならともかく、こんな小さな島に雪雲が作られるのもおかしいですわ!」

そこまで一人まくしたてた鈴子は、画面を殴ってうずくまった。
『神』は天気なんて、ものともしないんだ。
こんな重要な情報も、あいつらにとっては近づく手掛りにもならないのか。

とぼとぼと診察室へ向かう。廊下に転々と赤い液体が滴っているのにやっと気づいたのはこの時だった。
血の跡は片道だ。出血してる人が入ってきたか出ていったかのどちらか。
未だ診療所は無音である。出ていったと考えるのが自然だが……
誰もいない、誰もいない。
そう念じて鈴子は診察室入り口の壁へ背中を張り付けた。
息を整える。診察室に何があってもおどろかないように。
そろそろと覗く。

「あ、ああ……やっぱり……」

色鮮やかな水溜まりが、真っ白な診察室に映えた。
医療関係の匂いに間違いないとはいえ、離れ小島の診療所にはあまりに似つかわしくない鉄分臭。
血にまみれた男が、医者の椅子に座ったまま俯いていた。
髪の束を拾ったときよりも、女の子の腕をぶった切ってしまったときよりも強く感じる直接的な死への恐怖。腹の底から冷えていく。
ぴち、とまだ血が滴る。
息はもうしていない。けど小説なんかで見る死斑も出ていない。
今しがた、命がすれ違った。
誰かに襲われて傷を負いながら診療所にきたが、成す術なく死んでいったのだろう。
目当ての医療品はほとんど持ち去られていたのだから。

鈴子は精神だけ痛めつけ、無駄足を踏んだことになる。
だが天使でも悪魔でもない自分が囁く。
この人の首輪を取って解析したらどうだろう。本格的な爆弾は専門外だが、爆弾の能力者ではある。一般人より知識はあるつもりだ。
それを三人組に会った時に伝えてみれば、介入できる可能性も高くなる。
ヒトゴロシと罵られる筋合いは無いし、あっちは少なくとも一人(植木)以上殺している。
そう考えると、首輪もきっといくつか持っているだろう。解析に使うにしたって、専門分野の人材とサンプルは多い方がいいに決まっている。

痩せた男の、血に濡れてない肩に触れてみた。まだ温かい。
もう亡くなっているが、首を落とす決心はなかなかつかない。

普通、肉塊を斬るには鋭い刃かノコギリが必要だが、鈴子はすでに全身刃物人間になっている。
研がずとも切れ味は下手な日本刀に勝る。逆にそれが原因で鈴子を迷わせた。
道具を使わず自身の腕で、直接斬る罪悪が襲う。
女の子にぶつかった感触を思い出してしまう。

スパスパの実の能力は鋭過ぎた。
異常に滑らかな切り口から、ほんの少しの間が空いた後吹き出す血潮。
皮膚に食い込み、筋を垂直方向から両断し、骨がぬるりと斬れた。カミソリで紙を切る方がまだ手応えがある。
かえって生々しい感触がないことがこんなに気持ち悪いなんて。たったこれだけで人を刻める能力が怖い。

女の子の腕の場合は事故であり、過失は自分にある。だがあくまで故意ではないので、保身のため精神の逃げ道は残されていた。
これから選ぼうとしているのは、もう一度、今度は自らの意思で腕の惨劇を繰り返す道だ。
それも検死解剖の仕事か、気の違えた人間以外なら絶対にやりたくない肉体解体作業。
腕を刃にしては戻す。
冷や汗にまみれ、震える。
頬に手を当て、崩れた。

できない。
悪魔の実を食べるのを、もっと後にすればよかった。
そうすれば女の子の件も悩まずに済んだし、首を落とすのもすっぱり諦められたのに。

鈴子は自分を呪った。
窓辺に造花が飾られているのを見るまでは。

「あの造花……」
墓に添えられたものと一緒だ。
首を落とすか否かと考えるまで、墓の大きさに気が回らなかった。

(大の人間を埋めたには、土の盛り方が小さすぎでした。首だけが埋まっているに違いありません。
それなら墓の主を埋めたおナカマ様は十中八九首輪を持っていったでしょう。
あぁ、ナカマなんてそんなものですわ。
所詮他人、死んだら奪うも自由ということなのですね!)

全身を刃に変えた。

(仲間はいりません。
もう迷いません)

鈴子は無理矢理道を切り開いた。
ツインテールの少女が進むような修羅の道でも、
重すぎる愛を捧げる少女が進む地獄の道でも、
絶望を味あわせたい男が進む魔物の道でもない。


ただのひん曲がった下り坂だった。


      ++++++


街を妖怪が駆ける。
腹を減らした金色の風は、食料を探しつつよだれを垂らした。
若い女を食べたい。
できるなら香水も飾りもつけてない奴がいい。
ゲロまみれは流石に嫌だ。

「早くうしおを食いてぇ。お?」

ずいぶん遠くで、女が両手を大きく振ってこっちに向かってくる。
星を飛ばして輝かんばかりの笑顔で、舞い踊ってくる。獣の姿のとらに、警戒心も抱いてないようだ。
とらは足を止めた。
というか、このまま口を開けて待っていれば、女が勝手に胃袋へ収まってくれる勢いだった。
爪を構え、こっちも諸手を広げた。顎が落ちんばかりに口を開ける。

「かわゆいですわ──!!」
(……可愛い?今可愛いと言ったか?)
女はとらの期待と少しズレ、口ではなく胸にすっぽり収まった。体毛に顔をうずめ、体を抱きしめてくる。
いまいち女の言動を理解できないとらをよそに、女は歓喜と恍惚の溜め息を漏らす。
「はぁ~~、ふわふわですわ……」
「く……臭せぇぇえ!!」
女の真っ白い着物から、鼻につく薬の匂いが立ち上ってくる。ごろごろ摺り寄る女は臭いを意にも介さない。

──女は汗と血だらけになった服を捨て、病院着と白衣を拝借していたのだ──

もったいないとも思ったが、とらは女を一度ひっぺがした。
まだ懲りないのか、次は背中に抱きついてきた。
このまま仰向けに倒れて潰してやったら気絶するか?
背中の荷に女が引っかかった。荷ごと下ろし、振り回す。
とらの力と遠心力が釣り合うはずもなく、ベルトがぶち切れて嬌声と共に飛んで行った。
衝撃で荷から大量の紙が吹き出る。

「っへ……
変態ですわ────!!!!」

気分が高揚していた女は叫んだ。
それが本来、森あいの専売特許である変態認定ゼリフだったのは皮肉か因果か成り行きか。
卑怯番長も利用価値を見出せかった支給品が、そこら一帯に散らかった。
全て一人の少年の写真だった。

冷蔵庫を物色する少年の写真。
料理を味見する少年の写真。
家計簿をつけたまま寝ている少年の写真。
教科書を持って微笑む少年の写真。
汗ばんで水道水を飲む少年の写真。
耳かきを向けてあおりのアングルで撮られた少年の写真。
更に、洗濯物を干す少年の写真を引き延ばしたポスター。
被写体は誰なのか?
何の目的で撮ったのか?
どうしてこんな盗撮くさいのか?
それ以前に、なんでこんなのが支給されるのだ?
言いたいことが多すぎて、話題に出すのが面倒だ。
それより。

「あ゛あ゛あ゛あ゛、臭ぇ!消毒液臭ぇ!香水より臭ぇ!」
「静かにしてください!貴方は私が保護します!」
「めんどくせぇ、とりあえず離れて脱げこれでもか!」

腹は減ってるが、かわゆい扱いする女には闘志も減る。しっかり訂正してやろう。
常人の感覚で言うなら『恐ろしくも猛々しい、見たこともない獣』、
鈴子に言わせれば『ふわふわでさらさらな、ちょっと隈取みたいな模様をしたかわゆい生き物』が、ぎゅるぎゅると姿を変えていった。
金色の体毛を漆黒に。
身体は人間の四肢として伸びる。
白いシャツ、黒いベスト、赤いスラックスを纏う。

「貴方……人間だったのですか!?騙したのですね!!」
「が───ッッ!!!!今日はどいつもこいつも変態野郎だ白面だ女だでろくでもねぇ!!
わしは化け物だ!」
「どんな能力か知りませんが、もう騙されませんわ!」

とらが「これなら一発でわしが動物じゃないかわかるだろ」と変身したのは、散らばった写真の人間だった。
写真では体格がわからないので身体の特徴は適当。
さぁ舌を巻け!と変身をお披露目したら、きゃー!でもぎゃー!でもない妙なことを騒ぎたてる。
ゲロまみれ女よりマシな反応にしても、もう少しいい騒ぎ方してくれたって……



時は放送直前。
依然空回りする少女は、空腹の野獣を前にしても我が道を転がりゆく。


【I-8/路上/1日目 昼(放送数分前)】

【鈴子・ジェラード@うえきの法則】
[状態]:疲労(小)、左足首捻挫 、膝に擦り傷、スパスパの実の能力、カナズチ化
[服装]:白衣
[装備]:なし
[道具]:支給品一式、妖精の鱗粉@ベルセルク 、手ぬぐい×10 首輪×1
[思考]
基本:このゲームの優勝賞品が空白の才ならそれをロベルトの元へと持ちかえる
1:自身の悪評が流れない内に三人組の口封じをする。ゆのは……
2:他人は信用できない。だが集団に入り込む努力はする
3:このゲームが自分達の戦いの延長にあるかを確かめる。
4:ビーズやその他の道具の確保は一時保留、折を見て探索する。
5:情報を集め今後どうするかを考える。特に他の参加者への接触は慎重に行う。
6:この戦いが空白の才を廻る戦いであり、自分に勝てない参加者がいるようなら誰も死ななかった時の全員死亡を狙う。
[備考]
※第50話ロベルトへの報告後、植木の所に向かう途中からの参戦です。その為、森とは面識がありません。
※能力者以外を能力で傷付けても才が減らない可能性を考えています。実際に才が減るかどうかは次の書き手に任せます。
※気絶させても能力を失わない可能性を考えています。気絶したらどうなるかは次の書き手に任せます。
※とら=安藤(兄)だと思っています。
※とらが人間の変身能力者だと思っています。参加者に人間以外が混ざってると思い至っていません。

【とら@うしおととら】
[状態]:ダメージ(小、回復中)、安藤(兄)の姿(背丈は適当)
[服装]:
[装備]:万里起雲煙@封神演義
[道具]:支給品一式×7、再会の才@うえきの法則、砂虫の筋弛緩毒(注射器×1)@トライガン・マキシマム、逃亡日記@未来日記、
マスター・Cの銃(残弾数50%・銃身射出済)@トライガン・マキシマム、デザートイーグル(残弾数5/12)@現実
マスター・Cの銃の予備弾丸3セット、不明支給品×2、詳細不明衣服×?
[思考]
基本:白面をぶっちめる。
1:だめだこいつ。早くなんとか食わねーと。
2:臭え!
3:人間、特に若い娘を食って腹を満たしたい
4:強いやつと戦う。
5:うしおを捜して食う。
[備考]
※再生能力が弱まっています。
※餓眠様との対決後、ひょうと会う前からの参戦です。


※I-9に伊澄の墓、その隣に地蔵があります。
伊澄と地蔵に関係があるかどうかは次の書き手さんにお任せします。
※診療所に参加作品に関係ある人間数人(特に『神』に関係ある人物の)集合写真が飾られています。


【安藤(兄)写真コレクション@魔王 JUVENILE REMIX】
安藤(兄)遺影ポスターと、膨大な量のスナップ写真。
安藤潤也撮影・所有物。限りなく黒に近い盗撮くささ以外は、なんの変哲もないただの写真。



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