罪の最後は涙じゃないよ ◆lDtTkFh3nc
「……なぜだ?なぜ俺をここへ?」
「僕としては反乱の意思表示のつもりだが…これもレシピ通りなのかもしれないね」
「……娘二人はどうなった?」
「一人は死んだ。もう一人は知らない。残念ながら僕の管轄外だ」
「……貴様らは何を考えている。貴様らの言う神とは誰の事だ」
「言っても理解できないだろう。ただ一つ言えるのは、『未来は神様のレシピで決まる』。
僕の役割が何かじっくりと考えて、行動したに過ぎない。
まぁ君の命だ。良く考えて好きにすればいい」
僕の役割が何かじっくりと考えて、行動したに過ぎない。
まぁ君の命だ。良く考えて好きにすればいい」
「……いいだろう。それが『何か』の掌の上だとしても……
俺は強者との戦いを望むだけだ」
俺は強者との戦いを望むだけだ」
「……度し難いね。いや、だからこそ僕は君を選んだ…つもりだよ」
「言葉は無粋……行かせてもらおう」
★ ★ ★ ★ ★
ついてねぇ…
思わずそう呟きたくなるような状況に、一匹の獣がため息をつく。
思えば彼が目覚めてから今まで、出会った人間はロクなのがいなかった。
状況も理解できない酔っぱらいに変態仮面。
大嫌いな白面の匂いの女に、極めつけがこの勘違い女。
自分をこともあろうに「かわいい」などと表現した上、変化を見せたらそちらを正体と思い込む始末。
決めた。今後人間相手に自分が化物であることを示すときは変化以外の手段にしよう。
そんなミョーな決意を胸に、普通の高校生の格好をしたとらはため息をもう一つ。
思わずそう呟きたくなるような状況に、一匹の獣がため息をつく。
思えば彼が目覚めてから今まで、出会った人間はロクなのがいなかった。
状況も理解できない酔っぱらいに変態仮面。
大嫌いな白面の匂いの女に、極めつけがこの勘違い女。
自分をこともあろうに「かわいい」などと表現した上、変化を見せたらそちらを正体と思い込む始末。
決めた。今後人間相手に自分が化物であることを示すときは変化以外の手段にしよう。
そんなミョーな決意を胸に、普通の高校生の格好をしたとらはため息をもう一つ。
「『自分』を『獣』に変える力…?とにかくその能力…貴方、もしや参加者ですの?」
勝手に盛り上がり質問をしてくる相手に、心から面倒くさそうな顔で一応答える。
「あぁ…?サンカシャ?わしゃそんな名前じゃないぞ。大体、仮の姿はこっちだ、こっち」
そう言ってなんとかわからせようとするものの、勝手に興奮している相手には通じない。
そういえばさっきからなにやら憎たらしい声もどこかでペラペラ喋っている。
一応内容は耳に入れるが、大したことでもなさそうだ。
そういえばさっきからなにやら憎たらしい声もどこかでペラペラ喋っている。
一応内容は耳に入れるが、大したことでもなさそうだ。
「…もういいですわ。貴方がなんであれ、この場にいる以上私の敵であることは明白!
私はロベルトの為にも…勝たねばならないのです!覚悟!!」
私はロベルトの為にも…勝たねばならないのです!覚悟!!」
そう叫ぶと、少女は何も持たずに突進してくる。
それをひらりと飛び上がりかわす…ハズが、おかしなことに。
姿を人間にしていたのにそのまま飛び上がろうとしたものだから、とらはバランスを崩し、
おっとっと、と人間のような言葉をはきつつ横に転がるように突進をかわした。
それをひらりと飛び上がりかわす…ハズが、おかしなことに。
姿を人間にしていたのにそのまま飛び上がろうとしたものだから、とらはバランスを崩し、
おっとっと、と人間のような言葉をはきつつ横に転がるように突進をかわした。
ズシャ、と不思議な音が響く。見るととらが立っていた背後の壁に刀傷のような後がついていた。
「くっ!」
「なんだぁ?お前、ただの人間じゃないな?」
「なんだぁ?お前、ただの人間じゃないな?」
改めて身構える相手にひとまず距離をとると、とらは変化を解除する。
「!!」
「あー、もう人間に変化するのやめようかね、まったく」
「か、かぁいいですわ…ハッ!そ、そんな姿で私をごまかせるとでも…!」
「あー、もう人間に変化するのやめようかね、まったく」
「か、かぁいいですわ…ハッ!そ、そんな姿で私をごまかせるとでも…!」
まーたおかしなこと言ってやがる、と呆れつつ、とらは相手の処遇に考えを巡らせる。
とりあえず今自分は腹が減っている。そして目の前には人間の、それも女。これを喰わない手はない。
問題は女が身につけている臭っせぇ着物だが、あんなもん食うときにひっぺがしゃいいだろう。
最悪我慢できる程度だ。「おーでころん」とかに比べりゃちょっとはマシなものである。
しかし、ととらは歯噛みする。
この女からはそれ以上に嫌な臭がする。
さっきの奇妙な力といい、どうみても人間であるはずのこの女にはおかしな所がある。
具体的に言えば、食ってもうまくなさそうな気がするのである。
とらは知る由もないが、鈴子は「悪魔の実」を食した事でただの人間ではなくなっており、
それがとらの「食物」を見る目に不審にうつったのであろう。
思案の末、とらはひとつの決断をくだす。
とりあえず今自分は腹が減っている。そして目の前には人間の、それも女。これを喰わない手はない。
問題は女が身につけている臭っせぇ着物だが、あんなもん食うときにひっぺがしゃいいだろう。
最悪我慢できる程度だ。「おーでころん」とかに比べりゃちょっとはマシなものである。
しかし、ととらは歯噛みする。
この女からはそれ以上に嫌な臭がする。
さっきの奇妙な力といい、どうみても人間であるはずのこの女にはおかしな所がある。
具体的に言えば、食ってもうまくなさそうな気がするのである。
とらは知る由もないが、鈴子は「悪魔の実」を食した事でただの人間ではなくなっており、
それがとらの「食物」を見る目に不審にうつったのであろう。
思案の末、とらはひとつの決断をくだす。
「やーめた」
そう言って身を翻すと、高々と空へと飛びたってしまった。
驚いたのは鈴子である。戦闘態勢に入っていたのに放置され、呆気にとられて立ち尽くす。
驚いたのは鈴子である。戦闘態勢に入っていたのに放置され、呆気にとられて立ち尽くす。
「な、なにを…え?あ、ま、待ちなさい!!」
叫んだもののどこ吹く風、獣は気持ちよさそうに飛んでいく。
追いかけようと足を刃に変え、先程の要領で移動を開始した時だった。
彼女はこの移動方法で、先程思い出したくもない事故を起こしている。
それが心にあったからか、動き出してすぐ集中力が乱れた。
だから路上の段差に気がつかず、躓いて今日何度目かのズッコケをやって…
追いかけようと足を刃に変え、先程の要領で移動を開始した時だった。
彼女はこの移動方法で、先程思い出したくもない事故を起こしている。
それが心にあったからか、動き出してすぐ集中力が乱れた。
だから路上の段差に気がつかず、躓いて今日何度目かのズッコケをやって…
結果的に巨大な剣の一撃をかわしていた。
☆ ☆ ☆ ☆ ☆
から回る少女を残して獣は悠々と空中散歩中。
あの女を殺して食っても構わなかったのだが…
やはりあまりウマそうでなかったのと、実はもう一つ。
近くに非常に忌々しい気配を感じたことも原因だった。
まだある程度距離はあるようだが…長い永い付き合いだ。
これくらい近づけばわかる。「獣の槍」が、そこにいると。
ということはあのクソ忌々しいちび人間も近くにいる可能性があって…
そんなセットの近くで人間を食おうものなら、どうなるかわかったもんじゃない。
あの女を殺して食っても構わなかったのだが…
やはりあまりウマそうでなかったのと、実はもう一つ。
近くに非常に忌々しい気配を感じたことも原因だった。
まだある程度距離はあるようだが…長い永い付き合いだ。
これくらい近づけばわかる。「獣の槍」が、そこにいると。
ということはあのクソ忌々しいちび人間も近くにいる可能性があって…
そんなセットの近くで人間を食おうものなら、どうなるかわかったもんじゃない。
そこでふと、ならば攫ってどこかで食っちまえばよかったのだと気づく。
きゅ、と急ブレーキで止まり腕を組むと、ぽんと手を叩く。
きゅ、と急ブレーキで止まり腕を組むと、ぽんと手を叩く。
(そうだよ、攫ってどっか遠くでゆっくり食えばいい。簡単な話じゃねーか。
どうせ殺し合いとかいうのをやってるんだし、一人くらいわかるめぇ。
よし、そうと決まればこの辺でいいから適当な食いもんをさがすとするか)
どうせ殺し合いとかいうのをやってるんだし、一人くらいわかるめぇ。
よし、そうと決まればこの辺でいいから適当な食いもんをさがすとするか)
舌なめずりをして嬉しそうに飛んでいくその様は、バイキングを前にした少年のようだった。
☆ ☆ ☆ ☆ ☆
頭上を通り抜けた鉄塊に冷や汗が吹き出る。
四つん這いでシャカシャカと距離をとった鈴子が振り返ると、そこには一人の男が立っていた。
その男の姿はぼろぼろであったが、射ぬくような視線が鈴子に軽い恐怖を与えた。
先程振り抜かれたと思しき剣…?を支えにやっと立っている姿は弱々しいものの、
明らかに危険な雰囲気が漂っている。
四つん這いでシャカシャカと距離をとった鈴子が振り返ると、そこには一人の男が立っていた。
その男の姿はぼろぼろであったが、射ぬくような視線が鈴子に軽い恐怖を与えた。
先程振り抜かれたと思しき剣…?を支えにやっと立っている姿は弱々しいものの、
明らかに危険な雰囲気が漂っている。
「な、な、だ、誰ですっ!あなたは!」
「てめぇこそ、その力…化物か?ならば…」
「てめぇこそ、その力…化物か?ならば…」
その力、とは先程見せた「スパスパの実」の力の事だろうか?
化物か、とは失礼な話である。確かに奇妙な力は幾つかもっているが…
彼女はれっきとした人間だった。
化物か、とは失礼な話である。確かに奇妙な力は幾つかもっているが…
彼女はれっきとした人間だった。
「化物だなんて…失礼な!それを言うならそんな物を振り回す貴方の方がよほど…」
豪ッ!!!
言い切る前に風切り音がなり、またしても鉄塊が振り回される。
今度は正確に狙い澄まされ、彼女の眼前に突き立てられた。
今度は正確に狙い澄まされ、彼女の眼前に突き立てられた。
「ヒィっ!」
「なら答えな。その力…どうやって身につけた。まさかてめぇ…『捧げた』のか?
それとも『もどき』のほうか?」
「なら答えな。その力…どうやって身につけた。まさかてめぇ…『捧げた』のか?
それとも『もどき』のほうか?」
意味がわからなかったが、相手はどうやらこの力の出所を教えろと言っているらしい。
驚きのあまり話してしまいそうになるが…思いとどまる。
なぜ自分がこんな男にそんな重大な情報を話さねばならないのか。
よく見れば相手は傷だらけで見るからに疲れきっている。
巨大な武器のプレッシャーについ飲み込まれていたが、屈する必要はないのだ。
驚きのあまり話してしまいそうになるが…思いとどまる。
なぜ自分がこんな男にそんな重大な情報を話さねばならないのか。
よく見れば相手は傷だらけで見るからに疲れきっている。
巨大な武器のプレッシャーについ飲み込まれていたが、屈する必要はないのだ。
「…貴方に話す義理はありませんわ」
「そうかい」
「そうかい」
そう呟くと、男は剣を抜き去り鈴子に向けて突きを繰り出した。
すかさず両手を交差し、ガードする。
本来ならこんな防御は愚の骨頂である。しかし今の鈴子には効果的だった。
なぜなら彼女の体は「全身刃物」。それはすなわち「全身鉄の硬度」を意味する。
鉄を切れる人間でない限り、決して剣ではダメージを負わせられないのだ。
事実相手の突きは鈴子の腕を切断することはなく、少し後ろに吹き飛ばされただけで済む。
すかさず両手を交差し、ガードする。
本来ならこんな防御は愚の骨頂である。しかし今の鈴子には効果的だった。
なぜなら彼女の体は「全身刃物」。それはすなわち「全身鉄の硬度」を意味する。
鉄を切れる人間でない限り、決して剣ではダメージを負わせられないのだ。
事実相手の突きは鈴子の腕を切断することはなく、少し後ろに吹き飛ばされただけで済む。
「チッ…やはりただの人間じゃねーな」
「問答無用で攻撃とは…貴方は危険ですね。申し訳ありませんけど…排除します!」
「問答無用で攻撃とは…貴方は危険ですね。申し訳ありませんけど…排除します!」
立ち上がった鈴子は両腕を刃物に変え、男に切りかかる。
攻撃を「かわす」必要がない以上、こちらの有利は絶対。そう確信しての攻撃だった。
それ故に、男の対処は想定内。剣を構えなおし、横薙ぎでの攻撃。
腕以外の全ても刃物に変え、攻撃に備える。「斬撃」は自分に通じないと思い知ればいい。
本日始めて物事が上手く進んでいる実感をもった鈴子。
そういう時こそ危ないものである。
攻撃を「かわす」必要がない以上、こちらの有利は絶対。そう確信しての攻撃だった。
それ故に、男の対処は想定内。剣を構えなおし、横薙ぎでの攻撃。
腕以外の全ても刃物に変え、攻撃に備える。「斬撃」は自分に通じないと思い知ればいい。
本日始めて物事が上手く進んでいる実感をもった鈴子。
そういう時こそ危ないものである。
結論から言えば、鈴子は敗北した。これでもかという程に。
襲撃者…ガッツのドラゴンころしによる一撃は「斬撃」ではなく「打撃」だったのだ。
もともと切れ味で勝負するわけではない剣である。その重量とそれを操るガッツの腕力。
それがそろえば鉄を切れぬとしても、ヘタをすれば砕ける位の威力は生まれる。
弱りきった今の彼でも、鈴子を吹き飛ばすくらいの一撃は放つことが出来た。
内臓を思い切り揺さぶられ、吐くに吐けない最悪の嘔吐感を与えられて鈴子は踞る。
襲撃者…ガッツのドラゴンころしによる一撃は「斬撃」ではなく「打撃」だったのだ。
もともと切れ味で勝負するわけではない剣である。その重量とそれを操るガッツの腕力。
それがそろえば鉄を切れぬとしても、ヘタをすれば砕ける位の威力は生まれる。
弱りきった今の彼でも、鈴子を吹き飛ばすくらいの一撃は放つことが出来た。
内臓を思い切り揺さぶられ、吐くに吐けない最悪の嘔吐感を与えられて鈴子は踞る。
「う、ケハッ」
そんなまともに動けない彼女の後ろ手を相手が掴み、何かで縛った。
拘束し、情報を奪うつもりだろうか。これはツイている。
神はまだ自分を見放していないと、鈴子は内心でほくそ笑んだ。
体が回復したら縛ったものを刃物に変えたこの身で切り、奇襲をかければいい。
あるいは相手が尋問の為に自分に触れてきたらそれを切り裂いてやる。
対抗手段はまだいくらでもある。希望は捨てませんわ、と力強く誓った。
拘束し、情報を奪うつもりだろうか。これはツイている。
神はまだ自分を見放していないと、鈴子は内心でほくそ笑んだ。
体が回復したら縛ったものを刃物に変えたこの身で切り、奇襲をかければいい。
あるいは相手が尋問の為に自分に触れてきたらそれを切り裂いてやる。
対抗手段はまだいくらでもある。希望は捨てませんわ、と力強く誓った。
結論から言えば、これも失敗。
ガッツが彼女を拘束したのはどこから調達したのか「鉄線」であった。
こんなもの切るにはニッパのようにテコの原理や勢いが必要だ。
こんな状態ではそのどちらも難しい。
鉄に「斬撃」が効かないことに苦しめられるのは自分だった。
ガッツが彼女を拘束したのはどこから調達したのか「鉄線」であった。
こんなもの切るにはニッパのようにテコの原理や勢いが必要だ。
こんな状態ではそのどちらも難しい。
鉄に「斬撃」が効かないことに苦しめられるのは自分だった。
ならば、相手が接触してきた時に反撃を…と身構える。
予想外にガッツがつかんできたのは頭だった。
真上から抑えるように腕を後頭部に突きつけてくる。
予想外にガッツがつかんできたのは頭だった。
真上から抑えるように腕を後頭部に突きつけてくる。
「(今ですわ)喰らいなさい!!」
叫びと同時に後頭部周辺を一気に刃物へ。そして背筋を全開にして頭を持ち上げる。
これで指くらいは切り飛ばせるはず…しかし、というか。
やはり、というか。これもまた、失敗だった。
これで指くらいは切り飛ばせるはず…しかし、というか。
やはり、というか。これもまた、失敗だった。
「…金属音…それに先刻の動き…どういう理屈かしらねぇが…体を刃物にできる、ってとこか?」
「え、えーーーー!どうして!?」
「生憎、こっちは義手でな」
「え、えーーーー!どうして!?」
「生憎、こっちは義手でな」
ご、と力強く地面に押し付けられ、鈴子は短く悲鳴をあげる。
ツイてない、とことんツイてなかった。
これで万策尽きた。もはや座して死を待つのみである。
ツイてない、とことんツイてなかった。
これで万策尽きた。もはや座して死を待つのみである。
「さて…その力について詳しく教えてもらう。ついでに知ってることは全部言え」
一段低くなった男の声。それが再び彼女に恐怖をもたらす。
「利用価値がねぇなら…」
そこでさらに込められる力。
抵抗むなしく、鈴子の情報は漏れていく。
抵抗むなしく、鈴子の情報は漏れていく。
「悪魔の実」について、それを食べた経緯…さらに、神を決める戦いについて。
あるいは先程の変身能力者のこと。診療所で入手した首輪のこと。
鈴子は正直に話す。実はある程度ごまかそうとしてはいたのだが…ガッツがそれを許さない。
少しでも胡散臭いと感じれば容赦なくその顔面を固い地面に叩きつけた。
御丁寧にメガネを外してくれていたとはいえ、その痛みは凄まじい。
なにより、顔は女の命である。それを傷つけられるのは…辛かった。
しかし、彼女は危険を承知でロベルトに関する情報だけは一切漏らさなかった。
それで殺されても本望。そのくらいの覚悟で臨んでいた。
結局ロベルトに関する事以外のほとんどの情報を奪われ、尋問は終わる。
あるいは先程の変身能力者のこと。診療所で入手した首輪のこと。
鈴子は正直に話す。実はある程度ごまかそうとしてはいたのだが…ガッツがそれを許さない。
少しでも胡散臭いと感じれば容赦なくその顔面を固い地面に叩きつけた。
御丁寧にメガネを外してくれていたとはいえ、その痛みは凄まじい。
なにより、顔は女の命である。それを傷つけられるのは…辛かった。
しかし、彼女は危険を承知でロベルトに関する情報だけは一切漏らさなかった。
それで殺されても本望。そのくらいの覚悟で臨んでいた。
結局ロベルトに関する事以外のほとんどの情報を奪われ、尋問は終わる。
「…もう十分だな」
その言葉に、鈴子は寒気を覚える。それが意味することは単純明快。
用済みとなった情報源の始末、これにほかならないだろう。
死ぬ。自分は死ぬのだ。
そう思うと恐怖と悲しみとがないまぜとなった涙が溢れ出す。
どうしてこんなことに…あぁ、助けてロベルト!と嘆くばかり。
ただ彼の力になりたかったのに…何も、何も出来ない。
結局一人で出来ることなんて限りがあった。
かといって、誰かを、ロベルト以外の誰かを頼る気にもなれなかった。
用済みとなった情報源の始末、これにほかならないだろう。
死ぬ。自分は死ぬのだ。
そう思うと恐怖と悲しみとがないまぜとなった涙が溢れ出す。
どうしてこんなことに…あぁ、助けてロベルト!と嘆くばかり。
ただ彼の力になりたかったのに…何も、何も出来ない。
結局一人で出来ることなんて限りがあった。
かといって、誰かを、ロベルト以外の誰かを頼る気にもなれなかった。
だってそうでしょう?死んだ仲間の首をはねたり、裏切ったり、裏切られたり…
そんな関係に神経をすり減らすなんて御免ですもの。
そんな関係に神経をすり減らすなんて御免ですもの。
そう鈴子は考えていた。本当は、『友達』が欲しい。
だがこの時点の彼女が知る『仲間』はとても『友達』とは呼べない者達ばかりだったが故に…
彼女の歪んだ人間観は孤独を選んでしまった。
それでも最期に思い出されるのは…ロベルトの顔。
最後に彼に会いたかった…そうつぶやこうとした時だった。
だがこの時点の彼女が知る『仲間』はとても『友達』とは呼べない者達ばかりだったが故に…
彼女の歪んだ人間観は孤独を選んでしまった。
それでも最期に思い出されるのは…ロベルトの顔。
最後に彼に会いたかった…そうつぶやこうとした時だった。
グルリ、と仰向けに向き直されると、顔に何かをかけられる。
「けほけほ…な、なんですの?」
「妖精の燐粉だ…持ち主は生意気な奴だが…効果は本物だからな」
「妖精の燐粉だ…持ち主は生意気な奴だが…効果は本物だからな」
答えたのはガッツだった。
本人も体の至る所に粉を塗っている。
本人も体の至る所に粉を塗っている。
「こ、これは確か私の支給品のハズ…」
「だからお前にも使ってやっただろうが。命と引き換えだと思えば安いもんだろ」
「だからお前にも使ってやっただろうが。命と引き換えだと思えば安いもんだろ」
その言葉を理解するのに少し時間がかかった。
「こ、殺さないんですの?」
「ふん…さぁな。後で殺すかもしれないぜ。妙な事をしたらな」
「ふん…さぁな。後で殺すかもしれないぜ。妙な事をしたらな」
言いながら乱暴に鈴子の身を起こすガッツ。
顔面の傷は随分と回復していた。
顔面の傷は随分と回復していた。
「例えばこういう時に余計な真似をするとかな。どの道逃げられねぇんだから、変な気は起こすなよ」
確かに両手を縛られた状態では逃げるにも満足に出来ない。
今半端な反撃をしても無駄ではある。しかし…
今半端な反撃をしても無駄ではある。しかし…
「で、でもそんな事をして、貴方になんの利があると言うのです?」
「…俺が聞きたいくらいだな。ほらよ」
「…俺が聞きたいくらいだな。ほらよ」
鈴子を壁に寄りかからせ、何かを探し出すガッツ。
彼がこんな行動をとったのは、決して気まぐれではない。
気まぐれでこんな行動をとる男ではない。ではなぜか?
彼がこんな行動をとったのは、決して気まぐれではない。
気まぐれでこんな行動をとる男ではない。ではなぜか?
生真面目な態度のくせに、どこか抜けたところのある少女。
それがどこかの誰かさんを思い起こさせたのである。
聞けばまだ誰も殺していないという少女。決して化物ではなく、奇妙な力を持っただけの人間。
信じがたい話も混じってはいたが、あの状況で「嘘」はつくまい。
「隠し事」はあるかもしれないが…
とにかく、なにも殺すことはない。そんな風に思えてしまったのである。
それは、直前に仮初とはいえ『仲間』との共闘をしていたのも大きいのだろう。
ガッツは見つけたそれを、元の場所へ戻す。
それがどこかの誰かさんを思い起こさせたのである。
聞けばまだ誰も殺していないという少女。決して化物ではなく、奇妙な力を持っただけの人間。
信じがたい話も混じってはいたが、あの状況で「嘘」はつくまい。
「隠し事」はあるかもしれないが…
とにかく、なにも殺すことはない。そんな風に思えてしまったのである。
それは、直前に仮初とはいえ『仲間』との共闘をしていたのも大きいのだろう。
ガッツは見つけたそれを、元の場所へ戻す。
「あ…」
「なきゃ見えねぇんだろ」
「なきゃ見えねぇんだろ」
メガネをかけて貰い視界に映った男の姿は、信じられないくらいに優しげに見えた。
ドカッ!
ザクッ!
ザクッ!
ほぼ同時に発生した二つの音。
鈴子の体当たりによって突き飛ばされたガッツが尻餅をつきかけて踏みとどまる。
ふと手を見れば、血がついていた。
鈴子の体当たりによって突き飛ばされたガッツが尻餅をつきかけて踏みとどまる。
ふと手を見れば、血がついていた。
「な…」
「…バカ、ですわ」
「…バカ、ですわ」
ズルリ、と音を立てて、倒れる。
まるでスローモーションのビデオのようにゆっくりと。
ガッツは何が起こったのか必死で考える。なぜ、こうなった?
まるでスローモーションのビデオのようにゆっくりと。
ガッツは何が起こったのか必死で考える。なぜ、こうなった?
全身刃物のハズの少女の脇腹に、深々とナイフが突き刺さっていた。
「う、うぉおおおおおお!!!」
背後に走り、立てかけておいた得物を手にとると闇雲に振り回すガッツ。
今近くには誰もいなかった。しかし、目の前で少女は刺された。
そこから導き出される答えは、姿の見えない襲撃者。
その可能性に対処するための行動である。これは正解だった。
姿を消していた襲撃者はその攻撃に驚き、ナイフを鈴子の脇腹に残したまま離れてしまう。
ガッツは剣を振り回し続け、相手の接近を拒んだ。
今近くには誰もいなかった。しかし、目の前で少女は刺された。
そこから導き出される答えは、姿の見えない襲撃者。
その可能性に対処するための行動である。これは正解だった。
姿を消していた襲撃者はその攻撃に驚き、ナイフを鈴子の脇腹に残したまま離れてしまう。
ガッツは剣を振り回し続け、相手の接近を拒んだ。
まさしく虫の息の鈴子は思う。
なぜこんな馬鹿な事をしたのだろう、と。
メガネをかけられて、相手と目があって…なぜか照れくさくて目をそらした。
そこで偶然視界に入ったのは、転がる石ころ。それはあまりに不自然で…
直感的に、そこに誰か『居る』と思った。そしてその誰かが男に接近してると気づいた時には…
もう動いていた。
なぜこんな馬鹿な事をしたのだろう、と。
メガネをかけられて、相手と目があって…なぜか照れくさくて目をそらした。
そこで偶然視界に入ったのは、転がる石ころ。それはあまりに不自然で…
直感的に、そこに誰か『居る』と思った。そしてその誰かが男に接近してると気づいた時には…
もう動いていた。
もう、今度こそ本当に死ぬだろう。
結局自分は何も出来なかった。ロベルトの為に何一つ出来なかった…
これは、報いなのだろうか。
自分が腕を切断した少女…首輪を奪った死体…
それらが目の前で渦を巻いているような気がした。
その渦の向こうで、男は剣を振り回している。
上半身裸で包帯だけ巻いて…なんとも男っぽい姿だった。
そういえば、なぜ彼は逃げないのだろう。
結局自分は何も出来なかった。ロベルトの為に何一つ出来なかった…
これは、報いなのだろうか。
自分が腕を切断した少女…首輪を奪った死体…
それらが目の前で渦を巻いているような気がした。
その渦の向こうで、男は剣を振り回している。
上半身裸で包帯だけ巻いて…なんとも男っぽい姿だった。
そういえば、なぜ彼は逃げないのだろう。
そこで気がつく、男が少しずつ自分に近づいていることに。
あの人は、まさか自分を助けようとしてくれているのだろうか。
あの人は、まさか自分を助けようとしてくれているのだろうか。
いいえ、それは少し夢を見すぎですわね…けれど…
今際の際くらい…夢をみさせてください。
今際の際くらい…夢をみさせてください。
自嘲気味な笑顔を浮かべて、鈴子はもう少し近くを見渡す。
(ありました、わ)
そこには先程ばらまかれた変態写真の一部が落ちていた。
と同時に飛び出した大量の「あるもの」も。
先程の変身能力者に支給されたのだろうか。なんとも奇妙な偶然だ。
鈴子は最後の力でズルズルと動き、ありったけの「それら」に手で触れる。
そしてその上にゴロンと仰向けになおると、少し清々し気な顔をして叫んだ。
と同時に飛び出した大量の「あるもの」も。
先程の変身能力者に支給されたのだろうか。なんとも奇妙な偶然だ。
鈴子は最後の力でズルズルと動き、ありったけの「それら」に手で触れる。
そしてその上にゴロンと仰向けになおると、少し清々し気な顔をして叫んだ。
「ケホッ!あ、あの…貴方のお名前を…教えて…ゴホッ!」
血でむせてしまい上手く言えない。伝わっただろうか。
「何言ってやがる!今はそれどころじゃ…」
「お、お願い…です!!」
「お、お願い…です!!」
鬼気迫る声に圧倒されたか、ガッツは剣を振るう手は止めずに応える。
彼自身も疲労が蓄積し、足元が覚束ない状況だった。
彼自身も疲労が蓄積し、足元が覚束ない状況だった。
「…ガッツだ」
「ガッツ、さん、です…か、ゴホッ!わ、私は…鈴子…鈴子・ジェラード、です…」
「ガッツ、さん、です…か、ゴホッ!わ、私は…鈴子…鈴子・ジェラード、です…」
そこまで言い切ると、目を閉じる。
あの人が、助かるように。ここから逃げ出せるように。
自分は行動するんだ。そう決めた。今ここにいないロベルトにするように…
ここにきて初めてまともに会話をすることが出来た、この男性の為に。
鈴子はうっすら、笑みを浮かべる。
あの人が、助かるように。ここから逃げ出せるように。
自分は行動するんだ。そう決めた。今ここにいないロベルトにするように…
ここにきて初めてまともに会話をすることが出来た、この男性の為に。
鈴子はうっすら、笑みを浮かべる。
「ごめんなさい…ロベルト」
その言葉が終わるか終わらないかのうちに、彼女の体の下から光が爆ぜる。
爆風とそれに煽られた砂煙が周囲を飲み込んだ。
爆風とそれに煽られた砂煙が周囲を飲み込んだ。
煙が晴れると、そこには誰もいなかった。
少女の死体も、剣士の姿も、文字通り見えない襲撃者の姿も。
やがてガラッと音をたて瓦礫の下からガッツが姿を表した。
先程までの襲撃者の気配はない。爆発に飲まれて死んだか…恐れをなして逃げたか。
どの道、姿が見えないだけで戦闘力は高く無さそうだな、と感じた。
要警戒であることに変わりはなかったが。
少女の死体も、剣士の姿も、文字通り見えない襲撃者の姿も。
やがてガラッと音をたて瓦礫の下からガッツが姿を表した。
先程までの襲撃者の気配はない。爆発に飲まれて死んだか…恐れをなして逃げたか。
どの道、姿が見えないだけで戦闘力は高く無さそうだな、と感じた。
要警戒であることに変わりはなかったが。
なぜあの少女がこんな真似をしたのかわからなかった。
自分を突き飛ばしたのはあの攻撃から守るためだったのか。
最後に自爆したのはジリ貧となりつつあった状況を打破する為だったのか。
もはや誰にも聞くことは出来ない。
しかし、一つの事実として少女が死んだ。それだけが残った。
彼女に接近したのは情報収集の為。
放送を聞きつつ様子を確認し、人外である可能性を感じて襲撃、情報を奪おうとした。
特にグリフィスに関する情報はしっかりと吟味したが、大した物は得られなかった。
結果として奇妙な関係となってしまったが…
自分を突き飛ばしたのはあの攻撃から守るためだったのか。
最後に自爆したのはジリ貧となりつつあった状況を打破する為だったのか。
もはや誰にも聞くことは出来ない。
しかし、一つの事実として少女が死んだ。それだけが残った。
彼女に接近したのは情報収集の為。
放送を聞きつつ様子を確認し、人外である可能性を感じて襲撃、情報を奪おうとした。
特にグリフィスに関する情報はしっかりと吟味したが、大した物は得られなかった。
結果として奇妙な関係となってしまったが…
ガッツは思う。
あの焔の男も、放送によればブラックジャックはじめあの病院にいた連中もほとんど死んだらしい。
先程共に戦った者達も、敗れたのか相討ちかはわからないが倒れたという。
……事実、あの減らず口野郎の死体は自分の近くで見つけた。
そして今の少女も。
あの焔の男も、放送によればブラックジャックはじめあの病院にいた連中もほとんど死んだらしい。
先程共に戦った者達も、敗れたのか相討ちかはわからないが倒れたという。
……事実、あの減らず口野郎の死体は自分の近くで見つけた。
そして今の少女も。
自分に関わった人間は皆死ぬ。
『あの連中』に言わせればこれも因果律という奴だろうか。
『あの連中』に言わせればこれも因果律という奴だろうか。
「……クソッ喰らえだ」
それは、ガッツが最も憎むもの。
定められた運命……そんな物に従って、アイツらは死んだっていうのか?
もともと死ぬ定めだったというのか……捧げられた、『鷹の団』のように。
定められた運命……そんな物に従って、アイツらは死んだっていうのか?
もともと死ぬ定めだったというのか……捧げられた、『鷹の団』のように。
そんなことを認めてたまるものか。
改めて湧き上がる怒りを静かに胸に秘め、ガッツは立ち上がる。
改めて湧き上がる怒りを静かに胸に秘め、ガッツは立ち上がる。
「何度だって言うぜ。そのしたり顔で御託を並べるのは、オレが取り殺されてからにしな」
いつの間にかそこには馬に跨った一人の騎士がいる。
一瞥すらすることなく、ガッツは騎士に言い放っていた。
一瞥すらすることなく、ガッツは騎士に言い放っていた。
「……ならば命燃え尽きるまで戦うがいい。それこそが唯一の望みなり」
そう言い残し、髑髏の騎士は消える。
先程まで彼がいたその場所に鉄塊を叩き込むと、ガッツは吠えた。
先程まで彼がいたその場所に鉄塊を叩き込むと、ガッツは吠えた。
【鈴子・ジェラード@うえきの法則 死亡】
【I-8/路上/1日目/日中】
【ガッツ@ベルセルク】
[状態]:疲労(特大)
[服装]:上半身裸
[装備]:衝撃貝(インパクトダイアル)@ONE PIECE ドラゴンころし@ベルセルク
[道具]:支給品一式、炸裂弾×2@ベルセルク、折れたキリバチ@ONE PIECE、青雲剣@封神演義、妖精の燐粉(残り50%)@ベルセルク
[思考]
基本:グリフィスと、“神”に鉄塊をぶち込む。
1:運命に反逆する。
2:グリフィスを殺す。
3:グリフィスの部下の使徒どもも殺す。
4:なんか、夢に見たか?
5:なぜヤツが関わっている?
[備考]
※原作32巻、ゾッドと共にガニシュカを撃退した後からの参戦です。
※左手の義手に仕込まれた火砲と矢、身に着けていた狂戦士の甲冑は没収されています。
※紅煉を使徒ではないかと思っています。
※妙と、簡単な情報交換をしました。
※左手の義手に衝撃貝が仕込まれています。
※鈴子からロベルト関係以外の様々な情報を得ました。
[状態]:疲労(特大)
[服装]:上半身裸
[装備]:衝撃貝(インパクトダイアル)@ONE PIECE ドラゴンころし@ベルセルク
[道具]:支給品一式、炸裂弾×2@ベルセルク、折れたキリバチ@ONE PIECE、青雲剣@封神演義、妖精の燐粉(残り50%)@ベルセルク
[思考]
基本:グリフィスと、“神”に鉄塊をぶち込む。
1:運命に反逆する。
2:グリフィスを殺す。
3:グリフィスの部下の使徒どもも殺す。
4:なんか、夢に見たか?
5:なぜヤツが関わっている?
[備考]
※原作32巻、ゾッドと共にガニシュカを撃退した後からの参戦です。
※左手の義手に仕込まれた火砲と矢、身に着けていた狂戦士の甲冑は没収されています。
※紅煉を使徒ではないかと思っています。
※妙と、簡単な情報交換をしました。
※左手の義手に衝撃貝が仕込まれています。
※鈴子からロベルト関係以外の様々な情報を得ました。
※鈴子の死体と荷物、ビーズ、蝉のナイフは近くに転がっています。損傷の可能性アリ。
※ビーズ@うえきの法則はとらの不明支給品の一つです。
※ビーズ@うえきの法則はとらの不明支給品の一つです。
【ビーズ@うえきの法則】
普通のビーズ。洋服の装飾などに用いることも当然可能。
普通のビーズ。洋服の装飾などに用いることも当然可能。
☆ ☆ ☆ ☆ ☆
ハァハァと息を切らし、三千院ナギは透明化を解除。
民家のソファにへたりこんだ。
民家のソファにへたりこんだ。
失敗だった。
戦っている者同士のスキを突き、まず強そうな方から倒す。
作戦自体は悪くなかった。問題は、なぜか敗者が勝者を庇ったこと。
それで随分と予定が狂ってしまった。しかし……
戦っている者同士のスキを突き、まず強そうな方から倒す。
作戦自体は悪くなかった。問題は、なぜか敗者が勝者を庇ったこと。
それで随分と予定が狂ってしまった。しかし……
(あの強そうな大男だって、結局私に攻撃をすることは出来なかったじゃないか)
見るからに普段の自分では倒せそうにない男だった。
それを追い込み、翻弄したのだ。これは自信につながることだった。
次はしっかりと強者から倒していこう、と決意も新たに、ひとまず武器を探す。
台所で数本の包丁を入手し、カバンに収めた。
それを追い込み、翻弄したのだ。これは自信につながることだった。
次はしっかりと強者から倒していこう、と決意も新たに、ひとまず武器を探す。
台所で数本の包丁を入手し、カバンに収めた。
落ち着こう落ち着こうと思ってはいるものの、やはり気が焦る。
休憩もそこそこに家を出ると、ナギは市街地を慎重に探索しはじめた。
休憩もそこそこに家を出ると、ナギは市街地を慎重に探索しはじめた。
姿は消していない。
常に姿を消しているとなぜかやたらと疲れる気がしたからだ。
本人としては全力で警戒しながらの行動だったが、常に命のやりとりをしてきた
猛者から見れば格好の獲物になっただろう。
運良く今の所遭遇してはいないが…
常に姿を消しているとなぜかやたらと疲れる気がしたからだ。
本人としては全力で警戒しながらの行動だったが、常に命のやりとりをしてきた
猛者から見れば格好の獲物になっただろう。
運良く今の所遭遇してはいないが…
大きな通りには人が見受けられず、焦りを覚えたナギは路地裏に入った。
そこで奇妙な光景を目にする。金網の前に突然男が現れたのだ。
その男は全裸で片膝をついた状態で姿を現すと、一切を隠すことなく周囲を見渡す。
物陰からその様子を見ていたナギは赤面しつつも、すぐにブンブンと頭を振って観察を始めた。
そこで奇妙な光景を目にする。金網の前に突然男が現れたのだ。
その男は全裸で片膝をついた状態で姿を現すと、一切を隠すことなく周囲を見渡す。
物陰からその様子を見ていたナギは赤面しつつも、すぐにブンブンと頭を振って観察を始めた。
相手は先程の男にも勝る大男だった。しかし化物という訳ではない。
武器などを所持している様子はなく、その格好から何かを隠し持っている可能性が
限りなくゼロに近いことは容易にわかる。
武器などを所持している様子はなく、その格好から何かを隠し持っている可能性が
限りなくゼロに近いことは容易にわかる。
ナギは姿を消し、包丁を二本構えてゆっくりと男に近づく。
(慌てるな…三千院ナギ…大丈夫、うまくやれる)
男はまるでロボットが動作確認でもするみたいに手や足を動かしている。
チャンスは今だ。これを逃す手はない。
先程のように発見されるようなマヌケをしないよう慎重に歩を進め、遂に手が届く所まできた。
嫌な感じが全身を覆う。人を刺す。そんな行為を少女の体が拒否している。
それでも、たどり着きたい場所があるから…
チャンスは今だ。これを逃す手はない。
先程のように発見されるようなマヌケをしないよう慎重に歩を進め、遂に手が届く所まできた。
嫌な感じが全身を覆う。人を刺す。そんな行為を少女の体が拒否している。
それでも、たどり着きたい場所があるから…
息を浅く一吸い。そして、刃を男の脇腹に突き立てる!
見事、刃は男に刺さった。
手応えを感じナギはやや高い位置、心臓付近に第二撃の狙いを定める。
だが…
手応えを感じナギはやや高い位置、心臓付近に第二撃の狙いを定める。
だが…
ゾワッ!!!!!!
見上げた獲物と目が合った瞬間、覚えのある寒気が彼女を襲う。
とっさに包丁を手放し全力で相手から離れたが、少し遅かった。
男は腕をふるい、その指先がわずかにナギに触れる。
とっさに包丁を手放し全力で相手から離れたが、少し遅かった。
男は腕をふるい、その指先がわずかにナギに触れる。
それだけで命を持っていかれたかと勘違いする所だった。
驚きと恐怖に思わず尻餅をつく。
息が荒い。このままでは気づかれてしまう。
ナギは深呼吸を繰り返す。
驚きと恐怖に思わず尻餅をつく。
息が荒い。このままでは気づかれてしまう。
ナギは深呼吸を繰り返す。
(お、落ち着け…相手はこっちの位置がわからないんだ。ここは一旦逃げれば…)
冷静に、努めて冷静に対処しようとするナギ。
その彼女の目の前で男の姿に異変が起こる。
最初は何が起こったのかわからなかった。しかしすぐに化物が擬態していたと気づく。
その彼女の目の前で男の姿に異変が起こる。
最初は何が起こったのかわからなかった。しかしすぐに化物が擬態していたと気づく。
腕が、足が、胴体が…全身が何回りも大きく膨れ、
男の姿は人間でない『何か』へと変貌していく。
男の姿は人間でない『何か』へと変貌していく。
その様を見て彼女の中の憎悪もまた…同様に膨れていった。
三千院ナギの戦いは終わらない。
☆ ☆ ☆ ☆ ☆
寒い。
カタカタと体を震わせながら西沢歩は歩いていた。
ほぼ裸同然だった状態から、ナイブズにマントを貰ったおかげで恥ずかしさは随分減った。
しかし寒さはどうしようもない。薄いマント一枚ではとても防寒着とは言えなかった。
それはナイブズにも言えることのハズだが、彼は顔色ひとつ変えていない。
カタカタと体を震わせながら西沢歩は歩いていた。
ほぼ裸同然だった状態から、ナイブズにマントを貰ったおかげで恥ずかしさは随分減った。
しかし寒さはどうしようもない。薄いマント一枚ではとても防寒着とは言えなかった。
それはナイブズにも言えることのハズだが、彼は顔色ひとつ変えていない。
(やっぱり、人間じゃない…のかな)
先程の襲撃者が楽しげにペラペラと語った内容によれば、ナイブズは人間ではないらしい。
それならばあの強さ、威圧感、そして自分を助けてくれた謎の力と、あらゆることに納得がいく。
それならばあの強さ、威圧感、そして自分を助けてくれた謎の力と、あらゆることに納得がいく。
少しは恐怖もあった。自分が今人外の何かと行動している。それは怖い。
しかし、それはもともとだ。彼に感じる恐怖はある程度わかっていたこと。
それでも、彼女はついてきたのだ。
打算や自暴自棄、あるいは恩返し。様々な感情をないまぜにして。
だから今更その事実がハッキリしたところで接し方は変わらなかった。
なにより彼女自身が、そんなことに気を配っていられる状態ではない。
しかし、それはもともとだ。彼に感じる恐怖はある程度わかっていたこと。
それでも、彼女はついてきたのだ。
打算や自暴自棄、あるいは恩返し。様々な感情をないまぜにして。
だから今更その事実がハッキリしたところで接し方は変わらなかった。
なにより彼女自身が、そんなことに気を配っていられる状態ではない。
三千院ナギを守る。
考えてはみたものの、それが自分に出来るだろうか。
ハヤテ君の代わりに、と軽々しく思いはしたものの、それがどれだけ大変なことかはよく知っている。
それでも、今の彼女にはそれくらいしかすがるところがなくて。
なにより、理解し合えた友人を失いたくはなくて。
考えてはみたものの、それが自分に出来るだろうか。
ハヤテ君の代わりに、と軽々しく思いはしたものの、それがどれだけ大変なことかはよく知っている。
それでも、今の彼女にはそれくらいしかすがるところがなくて。
なにより、理解し合えた友人を失いたくはなくて。
(う~、もうやめよう。これ以上考えてたら耐えられないよ。
今は目の前の、あの人たちに何ができるかの方が大事じゃないかな)
今は目の前の、あの人たちに何ができるかの方が大事じゃないかな)
結局考えはまとまらず、とりあえず保留しておく。
先程の放送で、とりあえずナギの名は呼ばれなかった。
しかし、一つ知った名前が呼ばれてしまう。
Mr.2ボン・クレー。ボンさんの名だ。
何があったかは分からない。ただ、悪い人ではなかった。
もう絶対会えないと思うと、自分でもびっくりするほど悲しくて…
自然と涙がこみ上げてきた。
しかし立ち止まり泣いている暇はない。
ゴシゴシと目にたまった涙を拭うと、ナイブズの背を追い歩き続ける。
先程の放送で、とりあえずナギの名は呼ばれなかった。
しかし、一つ知った名前が呼ばれてしまう。
Mr.2ボン・クレー。ボンさんの名だ。
何があったかは分からない。ただ、悪い人ではなかった。
もう絶対会えないと思うと、自分でもびっくりするほど悲しくて…
自然と涙がこみ上げてきた。
しかし立ち止まり泣いている暇はない。
ゴシゴシと目にたまった涙を拭うと、ナイブズの背を追い歩き続ける。
その時だった。
凄まじい雷鳴が天空で鳴り響く。
凄まじい雷鳴が天空で鳴り響く。
「きゃあああ!!ま、また!?一体な、なんなのかな!?」
思わず上を見上げると、そこを駆け抜ける二つの影。
ひとつは漆黒の、巨大な影。もうひとつは金色の、美しい風。
その二つが踊るように絡み合いながら、どこかへと飛んでいく。
ひとつは漆黒の、巨大な影。もうひとつは金色の、美しい風。
その二つが踊るように絡み合いながら、どこかへと飛んでいく。
「ナ、ナイブズさん…」
「……人間ではあるまい。だが同胞でもない…」
「……人間ではあるまい。だが同胞でもない…」
それだけ呟き、影がみえなくなると興味がないと行った感じでナイブズは再び歩き出した。
あわてて彼女も追いかける。気にはなったがもう見えなくなっていたし、なにより怖い。
影が、というよりも、一人になるのが。だからついていった。
それが普通だろう。
あわてて彼女も追いかける。気にはなったがもう見えなくなっていたし、なにより怖い。
影が、というよりも、一人になるのが。だからついていった。
それが普通だろう。
☆ ☆ ☆ ☆ ☆
崩壊したデパートを眺めて、趙公明は嬉しそうに呟く。
「さぞ、楽しかっただろうね。僕も動かずここにいればよかったかな」
そこに見受けられる様々な戦闘の痕跡に胸踊らせる。
これは多対多、しかも実にバラエティに富んだ兵装のぶつかり合いだったようだ。
先程のナイブズとの戦いといい、まったく退屈しない。
これは多対多、しかも実にバラエティに富んだ兵装のぶつかり合いだったようだ。
先程のナイブズとの戦いといい、まったく退屈しない。
「しかしここにあったワープポイントは使えない。競技場に行くにも歩くしかないね」
彼がデパートを目指したのはそのワープポイントを利用して移動することが目的。
禁止エリアに囲まれ動きづらくなる前にさっさと抜け出そうと思ったのである。
別に競技場に向かう必要はない。
しかしナイブズという非常に興味深い存在にその情報を与えた以上、多少の価値はある。
そこにトレビアンな細工を施して、強者達を迎える舞台とするのも悪くないだろう。
映像宝貝は気になるが、獲得の目が薄いことはキンブリーに知らされている。
何者かがあの場へ襲撃を仕掛けたようだがその後はいたって静かだ。
あまり盛り上がってはいないのかもしれない。
だったら禁止エリアが進入禁止になる前にさっさと北上したほうがいいかもしれない。
禁止エリアに囲まれ動きづらくなる前にさっさと抜け出そうと思ったのである。
別に競技場に向かう必要はない。
しかしナイブズという非常に興味深い存在にその情報を与えた以上、多少の価値はある。
そこにトレビアンな細工を施して、強者達を迎える舞台とするのも悪くないだろう。
映像宝貝は気になるが、獲得の目が薄いことはキンブリーに知らされている。
何者かがあの場へ襲撃を仕掛けたようだがその後はいたって静かだ。
あまり盛り上がってはいないのかもしれない。
だったら禁止エリアが進入禁止になる前にさっさと北上したほうがいいかもしれない。
その為の移動に、神の陣営からある程度知らされていたワープを有効活用しようとした訳だ。
しかしデパートは完全に崩壊し、ワープポイントの形跡などほとんど無い。
しかしデパートは完全に崩壊し、ワープポイントの形跡などほとんど無い。
と、そこで足元に何かの気配を感じ、趙公明はしゃがみ込む。
そしてしばらく瓦礫の山を触った後、鞄から盤古幡を取り出した。
あまり力を無駄遣いしない程度に重力を操り、重い瓦礫をどかしていく。
中から出てきたのは一人の男の死体と、鎧だった。
そしてしばらく瓦礫の山を触った後、鞄から盤古幡を取り出した。
あまり力を無駄遣いしない程度に重力を操り、重い瓦礫をどかしていく。
中から出てきたのは一人の男の死体と、鎧だった。
「ふむ、中々面白そうな道具じゃないか。確か…狂戦士の甲冑!
僕が着るには少々華やかさが足りないが…誰かに貸して上げるのも悪くない」
僕が着るには少々華やかさが足りないが…誰かに貸して上げるのも悪くない」
そう言って鎧を拾い上げ鞄に収める。
その時、彼の携帯電話から着信音がなる。
その時、彼の携帯電話から着信音がなる。
「もしもし、やぁ君か。なんの用だい?え?
僕と似た立場の参加者を用意した?どういう事だい?」
僕と似た立場の参加者を用意した?どういう事だい?」
不審な内容にも関わらず、趙公明の顔は明るい。
「なるほど…参加者を利用してね。それで、僕に何を求めてるのかな?
…その彼と無駄な戦いはしないで欲しいと。ハハハハ!!それは無理だよ」
…その彼と無駄な戦いはしないで欲しいと。ハハハハ!!それは無理だよ」
何かが空中を通り抜ける気配を感じ、空を見上げる。
その目にもまた、二つの影が通り過ぎるのが映った。
その目にもまた、二つの影が通り過ぎるのが映った。
「強いんだろう?だから選んだのだろう?なら、戦いたいじゃないか!
君や『彼』が何を考えていようとも、僕は強者との華麗な闘いを望む!それだけさ!
それが掌の上というのなら…大歓迎だよ!
なんだい、嬉しそうだね。いや、僕も嬉しい。君ともいずれ闘いたいものだ。
何がしたいのか知らないけれど、頑張ってくれたまえ」
君や『彼』が何を考えていようとも、僕は強者との華麗な闘いを望む!それだけさ!
それが掌の上というのなら…大歓迎だよ!
なんだい、嬉しそうだね。いや、僕も嬉しい。君ともいずれ闘いたいものだ。
何がしたいのか知らないけれど、頑張ってくれたまえ」
本当に嬉しそうに笑いながら会話を終え、電話をきる。
しばらく携帯を手の中で弄んだ後、瓦礫の山からヒラリと飛び降りた。
しばらく携帯を手の中で弄んだ後、瓦礫の山からヒラリと飛び降りた。
「二枚目のジョーカーという訳か。ますます楽しくなってきたね」
【I-7/デパート跡地/1日目/日中】
【趙公明@封神演義】
[状態]:薬指と小指喪失、脇腹に裂傷
[服装]:貴族風の服
[装備]:オームの剣@ONE PIECE、交換日記“マルコ”(現所有者名:趙公明)@未来日記
[道具]:支給品一式、ティーセット、盤古幡@封神演義、狂戦士の甲冑@ベルセルク、橘文の単行本、小説と漫画多数
[思考]
基本:闘いを楽しむ、ジョーカーとしての役割を果たす。
1:闘う相手を捜す。
2:競技場に向かう?
3:カノンと再戦する。
4:ヴァッシュ、ナイブズに非常に強い興味。
5:特殊な力のない人間には宝貝を使わない。
6:宝貝持ちの仙人や、特殊な能力を持った存在には全力で相手をする。
7:キンブリーが決闘を申し込んできたら、喜んで応じる。
8:ネットを通じて遊べないか考える。
9:狂戦士の甲冑で遊ぶ。
10:二人目のジョーカーに興味。
[備考]
※今ロワにはジョーカーとして参戦しています。主催について口を開くつもりはしばらくはありません。
※参加者の戦闘に関わらないプロフィールを知っているようです。
※会場の隠し施設や支給品についても「ある程度」知識があるようです。
[状態]:薬指と小指喪失、脇腹に裂傷
[服装]:貴族風の服
[装備]:オームの剣@ONE PIECE、交換日記“マルコ”(現所有者名:趙公明)@未来日記
[道具]:支給品一式、ティーセット、盤古幡@封神演義、狂戦士の甲冑@ベルセルク、橘文の単行本、小説と漫画多数
[思考]
基本:闘いを楽しむ、ジョーカーとしての役割を果たす。
1:闘う相手を捜す。
2:競技場に向かう?
3:カノンと再戦する。
4:ヴァッシュ、ナイブズに非常に強い興味。
5:特殊な力のない人間には宝貝を使わない。
6:宝貝持ちの仙人や、特殊な能力を持った存在には全力で相手をする。
7:キンブリーが決闘を申し込んできたら、喜んで応じる。
8:ネットを通じて遊べないか考える。
9:狂戦士の甲冑で遊ぶ。
10:二人目のジョーカーに興味。
[備考]
※今ロワにはジョーカーとして参戦しています。主催について口を開くつもりはしばらくはありません。
※参加者の戦闘に関わらないプロフィールを知っているようです。
※会場の隠し施設や支給品についても「ある程度」知識があるようです。
☆ ☆ ☆ ☆ ☆
真っ暗闇で、遠くに人影が見える。
あれは…とても見覚えのある影だ。とても大切な影だ。
そう、あれは……ハヤテだ。
ハヤテ!!そう、ハヤテだ!!!
あれは…とても見覚えのある影だ。とても大切な影だ。
そう、あれは……ハヤテだ。
ハヤテ!!そう、ハヤテだ!!!
やっぱり生きてた!やっと会えた!
まったくあいつは、まったく!!
まったくあいつは、まったく!!
ハヤテだけじゃない。伊澄もサクも、マリアもヒナギクも皆いる。
やっぱり私の仮説は合ってたんだ。別の世界ではみんな生きてる。
あの中心に私も……ん?
やっぱり私の仮説は合ってたんだ。別の世界ではみんな生きてる。
あの中心に私も……ん?
誰だ、あそこにいるのは。そこは私の場所だぞ!勝手に居座るな!!
誰だ、誰だ、誰だ!!
あれは…あれは、
あれは、私だ。
私がいる。
そりゃそうか。他のハヤテ達がいるなら、他の私がいても何もおかしくない。
でも慌てることもない。『神』とやらに頼んで、アイツと私の立場を入れ替えればいいんだ。
冴えてるな、今の私。だからとりあえず、一度近づかなくっちゃな。
そりゃそうか。他のハヤテ達がいるなら、他の私がいても何もおかしくない。
でも慌てることもない。『神』とやらに頼んで、アイツと私の立場を入れ替えればいいんだ。
冴えてるな、今の私。だからとりあえず、一度近づかなくっちゃな。
あ、あれ?なんだこれは?
壁…か?見えない壁みたいなのが…A○フィールド?
邪魔だなぁ…なんでこんな物があるんだ。
消えてくれ!私はハヤテ達に会いたいんだ!!!
消えろ、消えろ、消えろ!!!
壁…か?見えない壁みたいなのが…A○フィールド?
邪魔だなぁ…なんでこんな物があるんだ。
消えてくれ!私はハヤテ達に会いたいんだ!!!
消えろ、消えろ、消えろ!!!
あっちであんなに楽しそうに話をしてるのに…
近づけないなんて非道い話があるか。誰か、誰か!おーい!!
私はここにいるぞ!ハヤテ!マリア!サク!伊澄!みんな!!!
どうして…どうして近づけない……なんで……
近づけないなんて非道い話があるか。誰か、誰か!おーい!!
私はここにいるぞ!ハヤテ!マリア!サク!伊澄!みんな!!!
どうして…どうして近づけない……なんで……
あ!ハヤテが!ハヤテが近づいてきてくれる!
やっぱり、やっぱりアイツは、最高の執事だ!!!
ハヤテ、ハヤテ、ハヤテーーーーーー!!!
やっぱり、やっぱりアイツは、最高の執事だ!!!
ハヤテ、ハヤテ、ハヤテーーーーーー!!!
こんな壁、壊してくれ!!
みんなに会いたい、皆に触れたいんだ。
ハヤテ、お前と……手を、繋ぎたいんだ。
みんなに会いたい、皆に触れたいんだ。
ハヤテ、お前と……手を、繋ぎたいんだ。
ハハ…なんだか今日の私、いやに素直だな。
なに、少し嫌な目にあってな…みんながいることの有り難さがよくわかったよ。
だから、な?この壁を壊してくれよ。
なに、少し嫌な目にあってな…みんながいることの有り難さがよくわかったよ。
だから、な?この壁を壊してくれよ。
……え?なんで?なんで壊せないんだ!!!
ハヤテ、お前はハヤテだろう?私の最高の執事じゃないか!
どうして……
この壁は、私が作った物?バカな、そんな訳あるか。
私が何を、何をしたって言うんだ。冗談はよせ。
ハヤテ、お前はハヤテだろう?私の最高の執事じゃないか!
どうして……
この壁は、私が作った物?バカな、そんな訳あるか。
私が何を、何をしたって言うんだ。冗談はよせ。
……なぁ、冗談だろう?そんなの聞いてなかったぞ。
私はただみんなに会いたくて…必死で…自分に出来ることをしようと思って…
それが一番だって!一番あるべき姿だって思って!!だから!!!
私はただみんなに会いたくて…必死で…自分に出来ることをしようと思って…
それが一番だって!一番あるべき姿だって思って!!だから!!!
だから人まで殺したのに
それがこの壁を作ったっていうのか
もうみんなに触れられないのか。
楽しく喋れないのか。自慢話も、漫画の話も…何も話せないのか。
楽しく喋れないのか。自慢話も、漫画の話も…何も話せないのか。
ハヤテ、お前にも……もう、なにも出来ないのか?
手が、手が繋ぎたかったのに…私の手…握って欲しかったのに…
手が、手が繋ぎたかったのに…私の手…握って欲しかったのに…
そうか、ホントだ。
よく見たら、私の手、真っ赤じゃないか。
こんな手じゃ、ハヤテも嫌だよな。
ハハ、当たり前の事なのに、どうして気がつかなかったんだろう。
こんなことして…なにも変わらない世界に戻れる訳なんてないのに。
だって、私自身が一番変わってしまったんだからな。
ハハハハ、可笑しいな。ハヤテも笑え。面白いだろう?
よく見たら、私の手、真っ赤じゃないか。
こんな手じゃ、ハヤテも嫌だよな。
ハハ、当たり前の事なのに、どうして気がつかなかったんだろう。
こんなことして…なにも変わらない世界に戻れる訳なんてないのに。
だって、私自身が一番変わってしまったんだからな。
ハハハハ、可笑しいな。ハヤテも笑え。面白いだろう?
ハハハハ……ハ、ハハハッ……
……グスッ、う、うわぁ……うわぁああああん!!!
……グスッ、う、うわぁ……うわぁああああん!!!
どうして優しく微笑んでくれるんだ!
触れることも出来ないのに!もう二度と近づけないのに!!
どうしてそう優しいんだ、お前は!!
触れることも出来ないのに!もう二度と近づけないのに!!
どうしてそう優しいんだ、お前は!!
……壁越しでもいい。ハヤテ。
その手を、触らせてくれ。
その手を、触らせてくれ。
ゆっくりとその手を伸ばし、手と手が触れ合う。
その手をぎゅっと握り、閉じていた瞼を静かに開く。
そこにはよくある顔が見えた。でも、知っている顔だった。
自分の手を握ってくれていたのがその顔だとわかって、思わず苦笑しながらナギは呟く。
その手をぎゅっと握り、閉じていた瞼を静かに開く。
そこにはよくある顔が見えた。でも、知っている顔だった。
自分の手を握ってくれていたのがその顔だとわかって、思わず苦笑しながらナギは呟く。
「……なんだ、お前か」
【三千院ナギ@ハヤテのごとく! 死亡】
時系列順で読む
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投下順で読む
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123:花の命は結構長い。女ですもの! | 鈴子・ジェラード | GAME OVER |
131:番長たちの挽歌(下) | ガッツ | 138:素晴らしき日々~不連続存在~ |
131:番長たちの挽歌(下) | 三千院ナギ | GAME OVER |
130:運命よそこを退け、俺が通る | 趙公明 | 140:『戦おうじゃないかっ、趙公明1番!!』作詞 C.公明 / 作曲 魔礼海 |
123:花の命は結構長い。女ですもの! | とら | 136:味わうのは勝利の美酒か それとも敗北の苦汁か |
130:運命よそこを退け、俺が通る | 西沢歩 | 136:味わうのは勝利の美酒か それとも敗北の苦汁か |
130:運命よそこを退け、俺が通る | ミリオンズ・ナイブズ | 136:味わうのは勝利の美酒か それとも敗北の苦汁か |