Paradise Lost ◆yuVy4gPLQo
木立ちの合間を縫うように男は走る。
傷付いた少女を抱きかかえ、未だ太陽の光射さぬ森の中でもその疾走が緩むことはない。
一刻も早く、この少女に治療を。
男にあるのはその一念のみ。
健脚に力を込め、疾風の如く旅館を目指して駆け抜ける。
傷付いた少女を抱きかかえ、未だ太陽の光射さぬ森の中でもその疾走が緩むことはない。
一刻も早く、この少女に治療を。
男にあるのはその一念のみ。
健脚に力を込め、疾風の如く旅館を目指して駆け抜ける。
実際の所、ナギの負傷はそれほどのものではない。
殺し屋の少女、スズメバチの施した拷問。
針による刺し傷は臓器などに傷を付けたりはしていない。
生命維持には支障がなく、それでいて痛覚が発達した部分を集中して刺された事に因る
ショックが原因で気を失いはしたものの、傷自体は放置していても2~3週間もすれば
治る程度だ。
殺し屋の少女、スズメバチの施した拷問。
針による刺し傷は臓器などに傷を付けたりはしていない。
生命維持には支障がなく、それでいて痛覚が発達した部分を集中して刺された事に因る
ショックが原因で気を失いはしたものの、傷自体は放置していても2~3週間もすれば
治る程度だ。
むしろサンジの右目の負傷のほうがよほど重傷だ。
不意打ちによる針の一撃は完全にまぶたを切り裂き、眼球にまで達している。
船医・チョッパーによる治療を受けたとしても、もはやサンジの右目が光を取り戻すことはないだろう。
不意打ちによる針の一撃は完全にまぶたを切り裂き、眼球にまで達している。
船医・チョッパーによる治療を受けたとしても、もはやサンジの右目が光を取り戻すことはないだろう。
だがそんな事は後回しだ。
女性のためとあらば夢も、命すらも投げ出せる。
それがこの男の骨の髄まで染み込んだ騎士道精神。
それを良しと称賛するか、悪しきと侮蔑するか。
見通せるのは全てを支配する神のみであろうか。
女性のためとあらば夢も、命すらも投げ出せる。
それがこの男の骨の髄まで染み込んだ騎士道精神。
それを良しと称賛するか、悪しきと侮蔑するか。
見通せるのは全てを支配する神のみであろうか。
「ナギちゃん、待ってろ! すぐに温泉に連れてってやるからな!」
気を失っている少女に励ましの言葉をかけながら、ようやくサンジは深い暗闇の森を抜ける。
そろそろ日も昇る頃合いだろうか。
柔らかな色調に染まる草原。
むせ返るようだった森の匂いに、潮の香りが混ざりはじめる。
ここまでくればもはや障害物もない。
十分もせずに旅館までたどり着けるだろう。
そろそろ日も昇る頃合いだろうか。
柔らかな色調に染まる草原。
むせ返るようだった森の匂いに、潮の香りが混ざりはじめる。
ここまでくればもはや障害物もない。
十分もせずに旅館までたどり着けるだろう。
サンジは暗い森の中から、淡い光の世界へと踏み出し……
刹那、大地を蹴り飛ばし後方に大きく飛び退いた。
刹那、大地を蹴り飛ばし後方に大きく飛び退いた。
なぜ、そんな事をしたのかと問われればサンジ自身にも説明は出来ない。
ただ、偉大なる航路でさまざまな経験を積んだ戦士の勘が告げていた。
避けろと。
それはあの小さな蜂の針など問題にならないほどの脅威だと。
ただ、偉大なる航路でさまざまな経験を積んだ戦士の勘が告げていた。
避けろと。
それはあの小さな蜂の針など問題にならないほどの脅威だと。
果たしてその勘がサンジとナギ、二人の命を救う。
天空より飛来した一本の剛槍が、サンジが先ほどまでいた地点に
落雷の如き勢いで叩きつけられたのだ。
天空より飛来した一本の剛槍が、サンジが先ほどまでいた地点に
落雷の如き勢いで叩きつけられたのだ。
大地が爆ぜ、それに遅れて空気の壁を切り裂く爆音が轟く。
五感で感知してからでは間に合わぬ攻撃を回避出来たのは、サンジが超一流の戦士であるがゆえ。
しかし、だからこそ、この邂逅があったのかもしれない。
しかし、だからこそ、この邂逅があったのかもしれない。
殺し合いその物に引き寄せられる狂人。
誰よりも強者に飢え、その血を渇望する者。
いまだ土煙立ち込める大地に、地響きとともに舞い降りた魔獣。
彼の者こそ不死のゾッド。
闘争に魅せられし狂戦士(ベルセルク)。
誰よりも強者に飢え、その血を渇望する者。
いまだ土煙立ち込める大地に、地響きとともに舞い降りた魔獣。
彼の者こそ不死のゾッド。
闘争に魅せられし狂戦士(ベルセルク)。
◇ ◇ ◇
「ッ!」
投槍の直撃こそ避けられたものの、砕かれた大地は礫となり二人を襲う。
子猫のように無防備なナギを守るため、サンジはそれを背中で受ける。
子猫のように無防備なナギを守るため、サンジはそれを背中で受ける。
「大丈夫か!? ナギちゃん!」
一連の回避運動の際、怪我など負わせていないだろうか。
心配してナギの様子を見たサンジの隻眼が驚愕に見開かれる。
心配してナギの様子を見たサンジの隻眼が驚愕に見開かれる。
「……え、天使!?」
美しい金髪のキューティクルが天使の輪のような光沢を形作り、腕の中で眠る
いとけない少女を神秘的に演出する。
いとけない少女を神秘的に演出する。
「い、いや違った。ナギちゃんか。
ああ、びっくりした。天使を抱っこしてるかと思った!」
ああ、びっくりした。天使を抱っこしてるかと思った!」
思わず安堵の息を漏らすサンジの背後で再び大地が鳴動する。
今度は何かと振り向くサンジの眼が、またも驚愕に見開かれる。
今度は何かと振り向くサンジの眼が、またも驚愕に見開かれる。
土煙の中に何かがいる。
煙を引き裂き、現れるのは一本の巨大な角。
全身を覆うは鋼の如き剛毛。
それは紛うことなき 異形の怪物。
煙を引き裂き、現れるのは一本の巨大な角。
全身を覆うは鋼の如き剛毛。
それは紛うことなき 異形の怪物。
「よくぞ、先の一撃をかわした! 貴様もまた、名のある兵と見たぞ!
さぁ、このオレと戦え!」
さぁ、このオレと戦え!」
宣戦布告と共に、巨体が木々をへし折りながら迫る。
◇ ◇ ◇
巨大な生物など、サンジは見慣れている。
例えば、偉大なる航路の大自然に育まれた大型海王類などは目前の存在に比しても尚、圧倒的な
大きさを誇るし、人間をそのまま大きくしたような巨人族とも面識がある。
オーズと呼ばれる巨人族の中でも特別大きい死体を使った特別ゾンビと戦ったことすらあった。
例えば、偉大なる航路の大自然に育まれた大型海王類などは目前の存在に比しても尚、圧倒的な
大きさを誇るし、人間をそのまま大きくしたような巨人族とも面識がある。
オーズと呼ばれる巨人族の中でも特別大きい死体を使った特別ゾンビと戦ったことすらあった。
ウシのような異形の姿も、悪魔の実シリーズの動物系の能力者と考えれば理解出来る。
だが、この悪寒はなんだ?
目前の存在から感じる、拭いきれない違和感。
悪夢の中から抜け出してきたかのような、異形の風体。
目前の存在から感じる、拭いきれない違和感。
悪夢の中から抜け出してきたかのような、異形の風体。
こんな生き物がいていいはずがない。
海王類や、巨人族がいくら巨大と言っても、それはそういう生き物をも育んでしまう
偉大なる航路という驚異の大自然があればこそ。
そこに驚きはあっても、違和感はなかった。
偉大なる航路という驚異の大自然があればこそ。
そこに驚きはあっても、違和感はなかった。
この世ならざるもの。
あえて言うならスリラーバークのゾンビどもに印象としては近いか。
この化け物から、あの影の国に引っ張り込まれてしまいそうな……
魔気、とでもいうのだろうか。
そんな強烈な威圧感を感じる。
あえて言うならスリラーバークのゾンビどもに印象としては近いか。
この化け物から、あの影の国に引っ張り込まれてしまいそうな……
魔気、とでもいうのだろうか。
そんな強烈な威圧感を感じる。
悪魔の実の能力者というよりは。
こいつこそは悪魔そのものなのではないのだろうか。
こいつこそは悪魔そのものなのではないのだろうか。
(だがよ……相手がなんだろうが、やられるわけにはいかねーんだ)
苦しげに呻く、胸の中の少女。
今、この少女の命運も自分が担っているのだ。
今、この少女の命運も自分が担っているのだ。
「そこをどきやがれ、このウシ野郎!!」
迫りくるゾッドに対し、サンジも駆けよる。
振り下ろされる剛腕。
掠っただけで挽き肉にされてしまいそうなソレを避けると、助走の勢いを利用して跳躍。
振り下ろされる剛腕。
掠っただけで挽き肉にされてしまいそうなソレを避けると、助走の勢いを利用して跳躍。
「肩ロース(バース・コート)」
「腰肉(ロンジュ)」
「後バラ肉(タンドロン)」
「腹肉(フランシェ)」
「上部もも肉(カジ)」
「尾肉(クー)」
「もも肉(キュイソー)」
「すね肉(ジャレ)」
最初に肩を蹴り、落下しながら身体の急所たる部位を蹴りまくる。そして
「牛肉(ブッフ)ショット!」
後ろ向きで着地すると、そのまま背後のゾッドに止めの一撃。
並みの相手であれば、これを受ければ吹き飛ばされるが必定。
並みの相手であれば、これを受ければ吹き飛ばされるが必定。
しかし、この敵は並みの相手ではない。
サンジは蹴りあげた敵の感触からそれを知る。
まるで鋼の塊でも蹴っているような、異常な手ごたえ。
おそらく、この攻撃で敵がダウンすることはあるまい。
サンジは蹴りあげた敵の感触からそれを知る。
まるで鋼の塊でも蹴っているような、異常な手ごたえ。
おそらく、この攻撃で敵がダウンすることはあるまい。
故に。
最後の一撃は、敵ではなく、己が跳躍するための一撃。
最後の一撃は、敵ではなく、己が跳躍するための一撃。
両足を揃えて背後のゾッドを蹴り飛ばすと、サンジの身体は砲弾のように撃ち出される。
ナギを抱えたまま、一瞬で100mは移動するとそのまま逃走。
今のままではあの敵とは戦えない。
ナギの安全を最優先に考えた結果、サンジの出した結論はそれだった。
ナギを抱えたまま、一瞬で100mは移動するとそのまま逃走。
今のままではあの敵とは戦えない。
ナギの安全を最優先に考えた結果、サンジの出した結論はそれだった。
◇ ◇ ◇
素晴らしい、まったく素晴らしいぞ、この宴は。
不可思議な力を使う少女。
かつて使徒と化した己の腕を切り落とすほどの剣の冴えを見せた鷹。
そして少女を手で抱いたまま、足技のみで、このオレに挑みかかってくる男。
かつて使徒と化した己の腕を切り落とすほどの剣の冴えを見せた鷹。
そして少女を手で抱いたまま、足技のみで、このオレに挑みかかってくる男。
300年もの間、戦い続けてきたがこれほどの強者が集う戦場はなかった。
今の一撃もなかなか良かった。
信じられぬ事に、自分のこの巨体が僅かに浮かされたほどだ。
まだまだ楽しませてもらえそうだ。
今の一撃もなかなか良かった。
信じられぬ事に、自分のこの巨体が僅かに浮かされたほどだ。
まだまだ楽しませてもらえそうだ。
ゾッドは遥か彼方へと移動した男を、目で捕捉する。
「むぅ!?」
男は着地すると、そのまま駆け出し……背中を見せる。
「どこへ行く気だ、このオレを失望させるか!」
ゾッドは未だ地面に突き立ったままの槍――穿心角を引き抜くと構えを取る。
かつて、一つの戦いがあった。
ミッドランド王国とチューダー帝国。
100年にも渡る戦争の趨勢を決めたのはチューダーの将ボスコーンと、ミッドランドが傭兵部隊
鷹の団・切り込み隊長ガッツの一騎打ちだった。
その歴史に残る闘いで、ゾッドの果たした貢献を知る者はいない。
ミッドランド王国とチューダー帝国。
100年にも渡る戦争の趨勢を決めたのはチューダーの将ボスコーンと、ミッドランドが傭兵部隊
鷹の団・切り込み隊長ガッツの一騎打ちだった。
その歴史に残る闘いで、ゾッドの果たした貢献を知る者はいない。
剣を失ったガッツの為、戦場よりはるか離れた地より、己の剣をガッツに向けて投擲したのだ。
狙い過たずガッツの足元に突き刺さるゾッドの剛剣。
そして、その剣を使いガッツはボスコーンに勝利を収めた。
狙い過たずガッツの足元に突き刺さるゾッドの剛剣。
そして、その剣を使いガッツはボスコーンに勝利を収めた。
その、ガッツの命を救った無双の戦技が、此度はサンジの命を奪わんとする。
音速を超えるゾッドの投槍。
再びサンジの元へと着弾したその槍が直撃を外したのは、はたしてゾッドの過ちか
サンジの回避故か。
しかし、直撃は避け得ても、爆撃の如きゾッドの投擲が引き起こした衝撃までは殺し得ない。
爆風に吹き飛ばされた二人の元へ、再び魔獣が迫る。
再びサンジの元へと着弾したその槍が直撃を外したのは、はたしてゾッドの過ちか
サンジの回避故か。
しかし、直撃は避け得ても、爆撃の如きゾッドの投擲が引き起こした衝撃までは殺し得ない。
爆風に吹き飛ばされた二人の元へ、再び魔獣が迫る。
◇ ◇ ◇
「クソ、ナギちゃん、大丈夫か!?」
敵の遠隔攻撃によって、サンジはナギと共に地面に叩きつけられる。
女性を守る事をなによりの信条とするサンジにとっては痛恨の失態。
女性を守る事をなによりの信条とするサンジにとっては痛恨の失態。
「ん、んぅ?」
しかし、その衝撃でナギの意識が戻る。
目を覚ました直後に思い出すのは、意識を失う直前のもっとも鮮烈な感情。
すなわち恐怖。
ナギは未だ、スズメバチの恐怖の中にいた。
目を覚ました直後に思い出すのは、意識を失う直前のもっとも鮮烈な感情。
すなわち恐怖。
ナギは未だ、スズメバチの恐怖の中にいた。
「あ、ああ。あああああ!!
い、いやだ、もう止めてくれ……助けて……ハヤテェ……」
い、いやだ、もう止めてくれ……助けて……ハヤテェ……」
「ナギちゃん! ナギちゃん! 大丈夫だから、落ち着け!」
「ハ、ハヤテ!?」
まだ、ぼんやりする視界に男性の顔が目に入る。
その血に濡れた右眼を見て、ナギの意識は覚醒する。
この場所に連れてこられて初めて会った、同じ境遇の参加者。
数々の冒険譚を聞かせてくれた優しいコック。
そして……自分のせいで傷付いてしまった男。
その血に濡れた右眼を見て、ナギの意識は覚醒する。
この場所に連れてこられて初めて会った、同じ境遇の参加者。
数々の冒険譚を聞かせてくれた優しいコック。
そして……自分のせいで傷付いてしまった男。
「サ、サンジ……助けて……くれたのか?」
「ああ……もっとも、新しい敵に襲われてる真っ最中だけどな。
――話は後だ、逃げるぞ!」
――話は後だ、逃げるぞ!」
サンジはナギを抱えて三度、森に入る。
「サンジ、目は……目は大丈夫なのか?
スマナイ……お前をやり過ごすだけだって言われたから言われたから……私は……」
スマナイ……お前をやり過ごすだけだって言われたから言われたから……私は……」
頬を伝う血を拭うように、ナギはサンジの顔に手を当てる。
サンジの顔を見つめる瞳は潤み、声は震える。
サンジの顔を見つめる瞳は潤み、声は震える。
知っている。
取り返しのつかない、自分の過失で誰かを傷付けてしまった子供の顔を。
鏡写しの、幼いころの自分の顔を。
取り返しのつかない、自分の過失で誰かを傷付けてしまった子供の顔を。
鏡写しの、幼いころの自分の顔を。
「クソ平気だよ、まぶたが少し切れただけさ」
だから嘘をついた。
いずれはバレるかもしれないとしても。
今だけは罪悪感を抱かせることなく、休ませてやりたいから。
笑顔の似合う、この少女の顔を自分のせいで曇らせたくはないから。
いずれはバレるかもしれないとしても。
今だけは罪悪感を抱かせることなく、休ませてやりたいから。
笑顔の似合う、この少女の顔を自分のせいで曇らせたくはないから。
「そ、そうか。良かった……」
純真無垢。悪く言えば世間知らずなナギはそのセリフをそのまま受け入れる。
安心したのか、顔が少し綻ぶ。
安心したのか、顔が少し綻ぶ。
「……だが、その傷は残ってしまいそうだな。元の世界に戻れたら腕のいい整形外科を探してやるぞ。
もちろん手術代も私が払ってやる」
もちろん手術代も私が払ってやる」
「はっ、好意は有難いけど、俺は海賊だぜ? こんな傷は勲章みたいなもんだ」
二人の間の空気が、あの旅館の頃の物に戻る。
だが、それを打ち破るかのように、重厚な足音が迫ってくる。
だが、それを打ち破るかのように、重厚な足音が迫ってくる。
「さ、サンジ……なんだ、あれは……」
いまだ距離があるというのに、森の中でもはっきりと視認出来る巨獣。
ナギにしてみれば、生まれて初めて見るファンタジーの世界に棲まう住人。
そこに当初考えていたような期待感など皆無。
ただ、恐怖に顔が引きつるばかりだ。
ナギにしてみれば、生まれて初めて見るファンタジーの世界に棲まう住人。
そこに当初考えていたような期待感など皆無。
ただ、恐怖に顔が引きつるばかりだ。
「大丈夫、言っただろ?」
「……え?」
「どんな怪物がきても守ってやるってよ」
「……サンジ」
ナギはサンジのシャツにキュッとしがみつく。
執事がこの地にいるかどうかもわからない現状、ナギが頼れるのはこの男のみ。
だが。
執事がこの地にいるかどうかもわからない現状、ナギが頼れるのはこの男のみ。
だが。
「ナギちゃん、自分で歩けるか?」
「え? あ、ああ。」
「俺があいつと戦って時間を稼ぐ。
その間に、ナギちゃんは姿を消してあの旅館に行っててくれ」
その間に、ナギちゃんは姿を消してあの旅館に行っててくれ」
「だ、駄目だ、あんなのと戦うなんて!
死んじゃうぞ! 私の能力で姿を消せば……」
死んじゃうぞ! 私の能力で姿を消せば……」
「いや、あの手の奴は鼻が効く。
ナギちゃん、その能力に頼りすぎちゃ駄目だぜ、感覚の鋭い奴にはバレちまう。
悪魔の実の能力としては、大した能力じゃないんだ、それは」
ナギちゃん、その能力に頼りすぎちゃ駄目だぜ、感覚の鋭い奴にはバレちまう。
悪魔の実の能力としては、大した能力じゃないんだ、それは」
あの旅館での闘い。
自分が得た能力に浮かれたナギの立てた、無茶な作戦を強行してしまった自戒を込めて
サンジはナギに忠告する。
自分が得た能力に浮かれたナギの立てた、無茶な作戦を強行してしまった自戒を込めて
サンジはナギに忠告する。
「旅館のお湯には治癒効果がある。
悪魔の実能力者になっちまったナギちゃんは掛け湯くらいにしといたほうがいいかもしれないけど、
そこで傷を癒しながら待っててくれ。
あいつを倒したらすぐ迎えに行くからな」
悪魔の実能力者になっちまったナギちゃんは掛け湯くらいにしといたほうがいいかもしれないけど、
そこで傷を癒しながら待っててくれ。
あいつを倒したらすぐ迎えに行くからな」
「……ぜ、絶対だぞ、ちゃんと戻ってこい。約束だからな!」
「ああ、約束だ」
「ああ、約束だ」
小指と小指を絡める。
約束を現すボディーランゲージは異世界の住人同士の間でも通用した。
約束を現すボディーランゲージは異世界の住人同士の間でも通用した。
「サンジ、一つ聞かせてくれ。
なぜ、お前は見ず知らずの私にそんなに優しくしてくれるのだ?
私は足手まといではないのか?」
なぜ、お前は見ず知らずの私にそんなに優しくしてくれるのだ?
私は足手まといではないのか?」
「さて、なんでかな……
絶海の孤島に、一人分にも満たない食料だけで、見知らぬガキと共に放りだされたら
ナギちゃんならどうする?」
絶海の孤島に、一人分にも満たない食料だけで、見知らぬガキと共に放りだされたら
ナギちゃんならどうする?」
問いかけを逆に問いで返される。
何かの謎かけかと考え込むナギに、サンジは笑いかける。
それはサンジの生い立ち。
この身は一人の男の力と夢を奪い、生き延びた命。
救われて、育てられて、色々な事を教えられた。
ならばその生きざまに少年が憧れるのは当然。
あのクソ爺なら、この島でも生き残れる席を誰かに与え、自身は自力で生き延びていただろう。
何かの謎かけかと考え込むナギに、サンジは笑いかける。
それはサンジの生い立ち。
この身は一人の男の力と夢を奪い、生き延びた命。
救われて、育てられて、色々な事を教えられた。
ならばその生きざまに少年が憧れるのは当然。
あのクソ爺なら、この島でも生き残れる席を誰かに与え、自身は自力で生き延びていただろう。
「どういうことなのだ?」
「追いつかれちまう。後で話してやるよ。旅館でまた会おうぜ」
デイパックの中からコンパスだけを抜き取ると、残りをナギに手渡す。
ナギが姿を消し、その気配が自分から遠ざかっていくのを感じると、サンジは手近な木を蹴り倒すと
ひょいと、その上に飛び乗る。
ナギが姿を消し、その気配が自分から遠ざかっていくのを感じると、サンジは手近な木を蹴り倒すと
ひょいと、その上に飛び乗る。
せいぜい30kg程度。
軽いとはいえ、意識を失った少女を宝物のように抱きかかえていた時とはまるで違う身体のキレ。
ここにきてようやく、サンジに遠慮なし、手加減抜きの実力を発揮する機会がやってくる。
スズメバチとの連戦、ナギを抱えての逃走の疲労を感じさせない動きで、サンジの身体が
独楽のように回転する。
軽いとはいえ、意識を失った少女を宝物のように抱きかかえていた時とはまるで違う身体のキレ。
ここにきてようやく、サンジに遠慮なし、手加減抜きの実力を発揮する機会がやってくる。
スズメバチとの連戦、ナギを抱えての逃走の疲労を感じさせない動きで、サンジの身体が
独楽のように回転する。
「よう、待たせたな、大将」
ゾッドが目にするのは、赤熱化する己の右脚を軽く上げるファイティングポーズを取る男の姿。
世界政府によって名付けられた異名は黒足のサンジ。
世界政府によって名付けられた異名は黒足のサンジ。
「ようやくその気になったか……
心配せずとも、今オレが興味あるのは貴様だけだ。
もっとも貴様を喰らった後は知らんがな……」
心配せずとも、今オレが興味あるのは貴様だけだ。
もっとも貴様を喰らった後は知らんがな……」
「やらせるかよ……悪魔風脚(ディアブルジャンブ)」
やはり、消えたナギの存在に気付いているらしき魔獣を蹴り飛ばさんと、サンジが飛翔する。
「まず、下拵えしておいた牛肉を軽く炒める」
赤熱化した右足で、先ほど蹴った個所をなぞるように、再び蹴る。
先ほどは鋼鉄の肉体の前に弾かれたサンジの蹴り、だが此度は右脚の熱がしっかりとゾッドの肉体に伝達する。
先ほどは鋼鉄の肉体の前に弾かれたサンジの蹴り、だが此度は右脚の熱がしっかりとゾッドの肉体に伝達する。
「ぐおっ!? あ、熱い! なんだ、これは……血が……血が沸き立つようだ!!」
「次にマリネするのに使っていたワインを沸騰させ、弱火で煮込む!」
連続で放つ右脚が今度はゾッドの心臓に命中する。
沸騰した血液が全身を駆け巡る。
300年に渡る戦いの日々でも経験した事のないダメージ。
苦悶の声を上げるゾッドに止めの一撃が迫る。
沸騰した血液が全身を駆け巡る。
300年に渡る戦いの日々でも経験した事のないダメージ。
苦悶の声を上げるゾッドに止めの一撃が迫る。
「肉が柔らかくなるまで野菜と一緒にじっくり煮込めば完成だ!
名付けて……悪魔風牛肉の赤ワイン煮(ディアブル・ブッフブルギニヨン)!!」
名付けて……悪魔風牛肉の赤ワイン煮(ディアブル・ブッフブルギニヨン)!!」
◇ ◇ ◇
止めの一撃を叩きこんだサンジの顔が焦燥に歪む。
浅い。
格闘者に取り、重要な間合いの把握。
隻眼となっても、慣れればそれは可能だったかもしれない。
通常のサイズの人間が相手であれば、数え切れないほどの対戦経験から間合いを推し量る事も出来ただろう。
だが――
隻眼となっても、慣れればそれは可能だったかもしれない。
通常のサイズの人間が相手であれば、数え切れないほどの対戦経験から間合いを推し量る事も出来ただろう。
だが――
サンジは全力で放った止めの一撃から、姿勢を立て直そうとし……
荒れ狂う猛牛の角に肩を刺され、上空へとかちあげられた。
荒れ狂う猛牛の角に肩を刺され、上空へとかちあげられた。
◇ ◇ ◇
シャツの胸ポケットから煙草の箱を取りだすと、慣れた仕草で箱の角を軽く叩き、一本取りだす。
右脚の熱で火を付けると、サンジは煙を吸い込んだ。
ここは島の上空。
上昇の最高点まで達したサンジはつかの間の休息を得る。
森の中では気付かなかったが、朝日が姿を現し、海がキラキラと輝きを放つ。
長かった夜は明けたのだ。
右脚の熱で火を付けると、サンジは煙を吸い込んだ。
ここは島の上空。
上昇の最高点まで達したサンジはつかの間の休息を得る。
森の中では気付かなかったが、朝日が姿を現し、海がキラキラと輝きを放つ。
長かった夜は明けたのだ。
やれやれ、また無茶やっちまったかもな。
ルフィーにまた怒られちまう。
水面に仲間たちの顔が浮かんでは消える。
別にサンジとしては、死ぬつもりなどサラサラないのだが、走馬灯というものは
こういう時、勝手に流れるものなのだろうか。
ルフィーにまた怒られちまう。
水面に仲間たちの顔が浮かんでは消える。
別にサンジとしては、死ぬつもりなどサラサラないのだが、走馬灯というものは
こういう時、勝手に流れるものなのだろうか。
幸い、軽く放物線を描いて落下するだろう地点は川だ。
深さがどれくらいあるかは知らないが、助かる可能性はある。
深さがどれくらいあるかは知らないが、助かる可能性はある。
だがあの魔獣がこのまま大人しく見ているはずがない。
必ず追撃をかけてくるはずだ。
必ず追撃をかけてくるはずだ。
サンジが狙っているのも、まさにそれだ。
恐らく頭から突っ込んでくるだろうゾッドの角をかわし、かかと落としのカウンターをかける。
その反動を利用して落下の衝撃を緩め、川に着水。
それがサンジの立てたプランだ。
どんな劣勢にあっても、死の瞬間まで勝負を諦めるものなど麦わら海賊団には一人もいない。
自由落下が始まり、煙草があっというまに灰と化す。
恐らく頭から突っ込んでくるだろうゾッドの角をかわし、かかと落としのカウンターをかける。
その反動を利用して落下の衝撃を緩め、川に着水。
それがサンジの立てたプランだ。
どんな劣勢にあっても、死の瞬間まで勝負を諦めるものなど麦わら海賊団には一人もいない。
自由落下が始まり、煙草があっというまに灰と化す。
来た。
蝙蝠のような羽をはためかせ、飛翔する姿はまさに悪魔。
蝙蝠のような羽をはためかせ、飛翔する姿はまさに悪魔。
「悪魔風脚(ディアブルジャンブ)」
落下に合わせ、脚を身体ごと回転させる。
「粗砕(コンカッセ)!!」
しかし回転する視界の中でサンジは見た。
朝の光を吸い込むが如き黒き刀身。
ゾッドが持つと、まるで小刀のように見えるがアレはそんなものではない。
サンジもよく知る、大業物21工の一振り。
ゾッドが持つと、まるで小刀のように見えるがアレはそんなものではない。
サンジもよく知る、大業物21工の一振り。
「まさか……あの、クソまりも野郎ーーーー!!」
◇ ◇ ◇
川のほとりに魔獣が佇む。
空中での最後の交錯。
黒足を叩きこもうとするサンジの脚を黒刀・秋水で切り飛ばし、肉体をかみ砕いた。
素晴らしき闘争の終焉。
空中での最後の交錯。
黒足を叩きこもうとするサンジの脚を黒刀・秋水で切り飛ばし、肉体をかみ砕いた。
素晴らしき闘争の終焉。
他の使徒とは違い、ゾッドに食人の習慣はない。
死体は川に流して、簡単な弔いの代わりとする。
徒手空拳で最後まであきらめず、ゾッドと戦った男への手向けであった。
死体は川に流して、簡単な弔いの代わりとする。
徒手空拳で最後まであきらめず、ゾッドと戦った男への手向けであった。
灼熱と化した体内の熱はしばらく収まりそうにない。
だが、それを上回る歓喜がゾッドの肉体を支配していた。
だが、それを上回る歓喜がゾッドの肉体を支配していた。
ヴァオオオオオオオオオオオオオオオオオ!!
咆哮。
魔獣は血と勝利の味に酔いしれる。
満たされぬ長き日々。
その無聊からついに解放されたのだ。
まさに人生最良の日。
その無聊からついに解放されたのだ。
まさに人生最良の日。
素晴らしき一日の始まりをゾッドは祝う。
血の祝杯を掲げて。
血の祝杯を掲げて。
【サンジ@ONE PIECE 死亡】
【G-6/川のほとり/一日目 早朝(放送直前)】
【ゾッド@ベルセルク】
[装備]穿心角@うしおととら、秋水@ONE PIECE
[支給品]支給品一式、手榴弾x3@現実、未確認(0~1)
[状態]疲労(中) 悪魔風脚による内臓へのダメージ(中・再生中)使徒化
[思考・行動]
基本:強者との戦いを楽しむ
1:出会った者全てに戦いを挑み、強者ならばその者との戦いを楽しむ。
2:グリフィスが再び覇王の卵を手にしたら……
[備考]
※未知の異能に対し、警戒と期待をしています。
[装備]穿心角@うしおととら、秋水@ONE PIECE
[支給品]支給品一式、手榴弾x3@現実、未確認(0~1)
[状態]疲労(中) 悪魔風脚による内臓へのダメージ(中・再生中)使徒化
[思考・行動]
基本:強者との戦いを楽しむ
1:出会った者全てに戦いを挑み、強者ならばその者との戦いを楽しむ。
2:グリフィスが再び覇王の卵を手にしたら……
[備考]
※未知の異能に対し、警戒と期待をしています。
◇ ◇ ◇
サンジと別れたあと、ナギは旅館に向けて走り出す。
走るのは苦手だったが、一人で暗い森の中に居る事に耐えられなかったのだ。
このゲームに乗った敵への恐怖。
一人残ったサンジへの心配。
そうしたものを、振り払うかのようにナギの脚が勝手に動く。
走るのは苦手だったが、一人で暗い森の中に居る事に耐えられなかったのだ。
このゲームに乗った敵への恐怖。
一人残ったサンジへの心配。
そうしたものを、振り払うかのようにナギの脚が勝手に動く。
だが、森の出口が見える前に息が切れる。
気付けばサンジの上着に守られていない白い太ももには、小枝でひっかいたような
赤い腫れが出来ていた。
足の裏は小石かなにかで切れたのか、いくつかの切り傷が出来ている。
気付けばサンジの上着に守られていない白い太ももには、小枝でひっかいたような
赤い腫れが出来ていた。
足の裏は小石かなにかで切れたのか、いくつかの切り傷が出来ている。
いつも美しい血色を保っていた爪の中は鬱血し、ようやく遅い成長が
始まったばかりの二つの膨らみは、見るのが怖いほどの拷問の跡が残っている。
始まったばかりの二つの膨らみは、見るのが怖いほどの拷問の跡が残っている。
いくら、命に別状がないとはいえ、女の子である。
自分の肉体が傷付く事に、男のように無頓着ではいられない。
悲しくなって、涙がこぼれた。
こんな事態だというのに、そんな事で泣いている自分が嫌で、更に涙腺が緩む。
自分の肉体が傷付く事に、男のように無頓着ではいられない。
悲しくなって、涙がこぼれた。
こんな事態だというのに、そんな事で泣いている自分が嫌で、更に涙腺が緩む。
平凡な少年少女が異世界で自分の秘められし力に覚醒し、世界を救う。
そんなよくある漫画や小説の筋書きを自分に重ねた事もあった。
そんなよくある漫画や小説の筋書きを自分に重ねた事もあった。
だがやはり、自分は自分でしかなかった。
背は低い。運動も出来ない。自分の身を自分で守ることすらできない無力な子供。
家に帰りたい。
自分を傷つけるものは誰もいない、あの場所に。
背は低い。運動も出来ない。自分の身を自分で守ることすらできない無力な子供。
家に帰りたい。
自分を傷つけるものは誰もいない、あの場所に。
「マリア……ハヤテ……早く迎えに来てくれ……
私はここだ、ここにいるぞ……」
私はここだ、ここにいるぞ……」
とぼとぼと、歩く。
いつもピンチの時はすぐやってきてくれるハヤテがこない。
神に召喚されたのは、自分だけなのか。
この世界に味方と言えるのはサンジしかいないのか。
誰も彼もが問答無用で襲い掛かってくる世界。
ならば、やはりサンジの傍を離れるべきではなかったのかもしれない。
いつもピンチの時はすぐやってきてくれるハヤテがこない。
神に召喚されたのは、自分だけなのか。
この世界に味方と言えるのはサンジしかいないのか。
誰も彼もが問答無用で襲い掛かってくる世界。
ならば、やはりサンジの傍を離れるべきではなかったのかもしれない。
だが、自分が足手まといになって、またサンジを傷付けるようなことがあったら?
(大丈夫……大丈夫だ。
だって約束したんだ。旅館に迎えにきてくれるって……)
だって約束したんだ。旅館に迎えにきてくれるって……)
だから、待っていよう。いい子で待っていれば、必ずサンジが助けてくれる。
ここに来てから、ずっとそうしてくれていたように。
ここに来てから、ずっとそうしてくれていたように。
友人である鷺ノ宮伊澄とは違い、方向音痴に自覚的なナギは地図とコンパスを見ながら
慎重に足取りを進める。
いつのまにか、朝日が昇っていた。
夜型人間のナギにとって、朝日を見る機会などそうそうあるものではない。
その光は、強く、優しく、ささくれだったナギの心を癒してくれる。
ナギは目を閉じると深呼吸する。
慎重に足取りを進める。
いつのまにか、朝日が昇っていた。
夜型人間のナギにとって、朝日を見る機会などそうそうあるものではない。
その光は、強く、優しく、ささくれだったナギの心を癒してくれる。
ナギは目を閉じると深呼吸する。
「……ふぅ」
少し気分が落ち着く。
そうだ、うちに帰ったらたまには早起きしてマリアを驚かせてやろう。
それで、朝の日の光を浴びながらハヤテに紅茶を淹れて貰うんだ。
クラシックでも流しながら、気の置けない二人と一緒に過ごす優雅な朝のひと時。
そうだ、うちに帰ったらたまには早起きしてマリアを驚かせてやろう。
それで、朝の日の光を浴びながらハヤテに紅茶を淹れて貰うんだ。
クラシックでも流しながら、気の置けない二人と一緒に過ごす優雅な朝のひと時。
そう、こんな風にリストの……って、え?
気が付くと、どこからか音楽が流れてくる。
超絶技巧の練習曲で有名な、リストの孤独の中の神の祝福。
超絶技巧の練習曲で有名な、リストの孤独の中の神の祝福。
第一回の放送が始まる。
◇ ◇ ◇
知らない女の声で説明が始まる。
まず、死者の発表に先駆けて、名簿に名前が浮き出てくるというのだ。
どんな技術が使われているのかわからないが、ようやくどんな人間が参加しているかわかる。
まず、死者の発表に先駆けて、名簿に名前が浮き出てくるというのだ。
どんな技術が使われているのかわからないが、ようやくどんな人間が参加しているかわかる。
まず目に入るのは、親戚にして幼馴染の愛沢咲夜。
どうやら50音順で並べられているらしい名簿の、一番最初に見知った人間の名はあった。
そして少し離れた所に
どうやら50音順で並べられているらしい名簿の、一番最初に見知った人間の名はあった。
そして少し離れた所に
ハヤテ! ハヤテハヤテハヤテ!
なんだ。やっぱりいるんじゃないか。
私を不安にさせて! 早く来てくれ!
まったくハヤテはどうしようもないな!
まったく、ハヤテはまったく!
なんだ。やっぱりいるんじゃないか。
私を不安にさせて! 早く来てくれ!
まったくハヤテはどうしようもないな!
まったく、ハヤテはまったく!
そして鷺ノ宮伊澄、サンジ、三千院ナギの名が並んでいる。
……スズメバチの名も傍にあった。
……スズメバチの名も傍にあった。
伊澄もいるのか。あいつはぽややんだからなぁ。
大丈夫かな……
大丈夫かな……
ニコ・ロビン、西沢歩
この名前には覚えがある。サンジが話してた名前だ。
その話をしている時のサンジときたら、本当にだらしない顔で……
少し腹がたったものだ。
その話をしている時のサンジときたら、本当にだらしない顔で……
少し腹がたったものだ。
あと知ってるのは……モンキー・D・ルフィ。
凄く強いっていうサンジの船の船長。海賊だ。
凄く強いっていうサンジの船の船長。海賊だ。
……おっと、見落としてたけど桂先生もいるのか。
あんな人間だけど、スペックはヒナギク並みだ。
まぁ、大丈夫だろう。
うむ、知っている人間はこれだけだな。
……ていうか、結構いるな。
私の狭い知り合いの範囲で、ほとんど全員いるじゃないか。
マリアとワタル、ヒナギク、それにクラウスがいないくらいか。
あんな人間だけど、スペックはヒナギク並みだ。
まぁ、大丈夫だろう。
うむ、知っている人間はこれだけだな。
……ていうか、結構いるな。
私の狭い知り合いの範囲で、ほとんど全員いるじゃないか。
マリアとワタル、ヒナギク、それにクラウスがいないくらいか。
いくつものパラレルワールドから人間が呼ばれているとするなら、私の世界からは
私の知り合いばかりが狙って呼ばれているのか?
いったい、どういうつもりなんだ……なぜ、私の知り合いばかりが……
私の知り合いばかりが狙って呼ばれているのか?
いったい、どういうつもりなんだ……なぜ、私の知り合いばかりが……
だが、いつまでも思考に耽る時間はない。
参加者が名簿をチェックしおえる絶妙のタイミングで死者の発表が行われる。
参加者が名簿をチェックしおえる絶妙のタイミングで死者の発表が行われる。
『……そして、そこから更に名前は削れるの。悲しんでも進み続ける覚悟はできている?
今回の死亡者は、……以下の通り。
今回の死亡者は、……以下の通り。
え?
いま、なんて?
え?
何かの聞き間違えかと思い、名簿に目を落とすと先ほどまで黒文字で書かれていた
咲夜とハヤテの名が赤く変色している。
まるで血のような赤い文字。
咲夜とハヤテの名が赤く変色している。
まるで血のような赤い文字。
ナギの顔色が蒼白になる。
その間もいくつかの名が呼ばれ……
その間もいくつかの名が呼ばれ……
鷺ノ宮伊澄
二人目の大切な幼馴染の名
「やめろ……」
サンジ
旅館で会おうと約束した同行者の名
「やめろ……」
10人を超えて、放送はなお続く。
「放送をやめろ! 名前を呼ぶのをやめろーーーーーーーー!!!!」
絶叫。
先ほどチェックした知り合いのほとんど全ての名が赤く染まっている。
先ほどチェックした知り合いのほとんど全ての名が赤く染まっている。
ナギは続く放送から耳を閉ざし、逃げだすように走り出す。
◇ ◇ ◇
はぁ、はぁ、はぁ
息が荒い。
顔からは色々な液体が流れ落ちるがまま。
恐らく今日は人生で一番走った日になっただろう。
だが、それだけ走ってもまだ耳の中で放送が続いている。
息が荒い。
顔からは色々な液体が流れ落ちるがまま。
恐らく今日は人生で一番走った日になっただろう。
だが、それだけ走ってもまだ耳の中で放送が続いている。
『今回の死亡者は、……愛沢咲夜、綾崎ハヤテ……』
(やめろ、やめろ、やめろ!)
『鷺ノ宮伊澄、サンジ』
(やめて、嘘だ、だってそんな!)
『愛沢咲夜』
思い出すのは悪戯っぽい、小悪魔めいた笑顔。
いつも私やハヤテ、伊澄やワタルをからかって……
でもお姉さんみたいに頼りにしていた。
いつも私やハヤテ、伊澄やワタルをからかって……
でもお姉さんみたいに頼りにしていた。
(サク! いつものどっきりなんだろ? そう言ってくれ!)
『綾崎ハヤテ』
少し困ったような笑顔。
不幸体質で、でもそれを物ともしないくらい強くて優しい……
あの日の運命的な出会いを、私は忘れる事はないだろう。
不幸体質で、でもそれを物ともしないくらい強くて優しい……
あの日の運命的な出会いを、私は忘れる事はないだろう。
(あのハヤテが私を残して死ぬはずがない、だって約束した! ずっと一緒にいてくれるって!)
『鷺ノ宮伊澄』
子供のころからいつも傍にいてくれて……
一番気の合う物静かな親友。
おしとやかで着物がよく似合う、守ってあげたくなるような可憐な女の子。
一番気の合う物静かな親友。
おしとやかで着物がよく似合う、守ってあげたくなるような可憐な女の子。
(いすみぃ……なんでお前が死ななきゃならないんだっ)
『サンジ』
この島に来てから、常に私を助けてくれた。ハヤテくらい頼りになる人。
別れ際にちゃんと戻ってくるって約束したのにっ!
うそつきか!? サンジはうそつきなのか!?
別れ際にちゃんと戻ってくるって約束したのにっ!
うそつきか!? サンジはうそつきなのか!?
(サンジ、迎えに来てくれるんだろ? 私が道に迷ったから怒ってるのか?)
みんなの顔と、名簿の赤い文字が頭の中をぐるぐる回る。
(そうだ、同姓同名の知らない人たちなんだ、あんな放送なんか信じられるものか!)
体力の限界。
視界もぐるぐる回る。
ナギはその場に崩れ落ちる。
視界もぐるぐる回る。
ナギはその場に崩れ落ちる。
体内からこみあげてくるものがある。
ナギはそれに逆らわない、否、逆らう体力も残っていなかった。
吐瀉
昨晩から何も食べてない少女の小さな胃には、ほとんど何も残っていなかったが全てを吐き出す。
そして全てを吐き切って気付く。
周囲の異臭に。
己の吐瀉物の匂いではない。
ナギが初めて嗅ぐ種類の匂い。
それは人間の脂肪が焼けた時の異臭。
臓腑をぶちまけた時の匂いだった。
ナギはそれに逆らわない、否、逆らう体力も残っていなかった。
吐瀉
昨晩から何も食べてない少女の小さな胃には、ほとんど何も残っていなかったが全てを吐き出す。
そして全てを吐き切って気付く。
周囲の異臭に。
己の吐瀉物の匂いではない。
ナギが初めて嗅ぐ種類の匂い。
それは人間の脂肪が焼けた時の異臭。
臓腑をぶちまけた時の匂いだった。
◇ ◇ ◇
すぐ傍に視線を感じる。
ナギは周囲を見渡すと、すぐ傍にソレはあった。
人間の頭部。
あの、始まりの会場で首輪が爆発した少年のような。
ナギは周囲を見渡すと、すぐ傍にソレはあった。
人間の頭部。
あの、始まりの会場で首輪が爆発した少年のような。
頭部だけとなった少女がそこにいた。
「い…すみ……?」
あの特徴的な、つややかで長いストレートの黒髪は半ばまで焼きこげている。
だが、確かにそれはナギの幼馴染、鷺ノ宮伊澄だった。
ただし、首から下がない、物言う事のない存在となり果てた……
だが、確かにそれはナギの幼馴染、鷺ノ宮伊澄だった。
ただし、首から下がない、物言う事のない存在となり果てた……
「伊澄! 伊澄! うあああああああああーーーーーー!!」
ナギは知る由もなかったが、先ほどの怪物……ゾッドに敗れ、死を悟った伊澄は手榴弾での
自爆を敢行したのだ。
せめてこの魔を道連れにしようと。
最強の退魔の家系の嫡子として、この魔がこれ以上人に仇為すことのないように。
そしてナギに、大切な親友に累が及ばぬようにと。
だが、その最後の願いも叶わず肉体は四散。
誘爆した首輪が爆発する事で、かろうじて首から上だけが、こうして奇跡的に原形を留めたのだ。
自爆を敢行したのだ。
せめてこの魔を道連れにしようと。
最強の退魔の家系の嫡子として、この魔がこれ以上人に仇為すことのないように。
そしてナギに、大切な親友に累が及ばぬようにと。
だが、その最後の願いも叶わず肉体は四散。
誘爆した首輪が爆発する事で、かろうじて首から上だけが、こうして奇跡的に原形を留めたのだ。
ナギは伊澄の頭部を抱きしめる。
怖いとか、気持ち悪いとかいう感情はなかった。
そんなものはとっくに麻痺していた。
怖いとか、気持ち悪いとかいう感情はなかった。
そんなものはとっくに麻痺していた。
ただ、やっと会えた親友……たった6時間の内に変わり果てた姿になった少女を抱きしめたかった。
「伊澄……本当にお前なのか? じゃあ、やっぱりさっきの放送は……」
ナギの瞳が絶望に染まる。
伊澄も、咲夜も、サンジも……そしてハヤテも本当に死んだのだ。
伊澄も、咲夜も、サンジも……そしてハヤテも本当に死んだのだ。
「そっか……伊澄、こんなところでひとりぼっちじゃ、さびしいよな……」
ナギがのろのろと、立ち上がる。
伊澄の頭部を抱えたまま。
伊澄の頭部を抱えたまま。
「私も、もうそっちにいくよ……そうだな、海に入ろう。
私は金槌だし、悪魔の実を食べたから海に入れば絶対死ねる
一緒にいこう、伊澄……」
私は金槌だし、悪魔の実を食べたから海に入れば絶対死ねる
一緒にいこう、伊澄……」
◇ ◇ ◇
歩く。
サンジのような超人ではなく、普通の成人でもなんでもない距離でも、このひきこもりの少女には
つらい道のりだ。
既に太ももはガチガチに固まり、足は棒のよう。
だが、それがなんだというのだ。
どうせこれから死ぬのだ。
そう考えたら、これまで死ぬほど嫌だった運動もつらくはなかった。
その行く手に岬が、そして輝く水面が現れる。
サンジのような超人ではなく、普通の成人でもなんでもない距離でも、このひきこもりの少女には
つらい道のりだ。
既に太ももはガチガチに固まり、足は棒のよう。
だが、それがなんだというのだ。
どうせこれから死ぬのだ。
そう考えたら、これまで死ぬほど嫌だった運動もつらくはなかった。
その行く手に岬が、そして輝く水面が現れる。
「伊澄、咲夜、サンジ……ハヤテ……今そっちに行くぞ」
(待って……ナギ、あなたは、本当にそれでいいの?)
「え? ……伊澄?」
伊澄の声が聞こえた気がして、思わずナギは伊澄の死に顔を覗き込む。
だが、首だけの死体が喋るわけがない。
だからきっと、勘違いだと納得し、再び歩を進めようとし……
ナギは再び伊澄の顔を見る。
だが、首だけの死体が喋るわけがない。
だからきっと、勘違いだと納得し、再び歩を進めようとし……
ナギは再び伊澄の顔を見る。
伊澄の顔は凛々しかった。
こんな悲惨な、理不尽な死を迎えたというのに、その表情には嘆きも、恐怖のひとかけらもない。
それはナギの知っている伊澄という少女にはそぐわない感じがして……
ナギの頭に天啓のような一つの仮説が閃く。
こんな悲惨な、理不尽な死を迎えたというのに、その表情には嘆きも、恐怖のひとかけらもない。
それはナギの知っている伊澄という少女にはそぐわない感じがして……
ナギの頭に天啓のような一つの仮説が閃く。
やはり、この伊澄は私の知る伊澄ではないのではないか。
別人だというわけではない。
サンジにも説明したパラレルワールド。
その理論はサンジの世界のようなまるっきり違う世界にも当てはまるが、自分の知る世界と
限りなく近いパラレルワールドというものも存在するのだ。
別人だというわけではない。
サンジにも説明したパラレルワールド。
その理論はサンジの世界のようなまるっきり違う世界にも当てはまるが、自分の知る世界と
限りなく近いパラレルワールドというものも存在するのだ。
つまり、この伊澄は自分の世界の伊澄ではなく、少しだけ違う世界の伊澄……
そこでの伊澄は、魔法少女とか機動兵器のパイロットをしていたのかもしれない世界。
だとするなら、最後の一人になるまで生き残って自分の世界に帰れれば、そこには変わらぬ
自分の世界があるのかもしれない。
ハヤテがいて、マリアがいて、伊澄が、咲夜が、ワタルがいる世界だ。
そこでの伊澄は、魔法少女とか機動兵器のパイロットをしていたのかもしれない世界。
だとするなら、最後の一人になるまで生き残って自分の世界に帰れれば、そこには変わらぬ
自分の世界があるのかもしれない。
ハヤテがいて、マリアがいて、伊澄が、咲夜が、ワタルがいる世界だ。
よしんば、自分の世界の住人が欠けていたとしても、神に頼み全員が揃ってる世界、
そこには母も生きている世界があるかもしれない。
そんな世界に帰してもらえばいいのだ。
神というならば、人の願いのひとつくらいは叶えてくれるだろう。
そこには母も生きている世界があるかもしれない。
そんな世界に帰してもらえばいいのだ。
神というならば、人の願いのひとつくらいは叶えてくれるだろう。
「そうか……伊澄、そうなのか……」
ナギはぶつぶつと呟きながら踵を返す。
死ぬのは止めだ。
足掻けるだけ足掻いてやるぞ。
神よ。お前が人殺しを所望するというのなら……
やってやろうじゃないか。この三千院ナギが、お前の願いを叶えてやる。
死ぬのは止めだ。
足掻けるだけ足掻いてやるぞ。
神よ。お前が人殺しを所望するというのなら……
やってやろうじゃないか。この三千院ナギが、お前の願いを叶えてやる。
だから神よ。
全てが終わったなら。
私の願いを一つだけ、叶えてください。
全てが終わったなら。
私の願いを一つだけ、叶えてください。
(ナギ……)
少女の立ち去った岬。そこに残るのは少し悲しげな少女の声。
その声が潮風に紛れて消えた。
その声が潮風に紛れて消えた。
【I-10川の北側/岬/1日目 朝】
【三千院ナギ@ハヤテのごとく!】
[状態]:疲労(極大)、精神疲労(極大)全身(特に胸周辺)に多数の刺傷
[服装]:全裸(サンジの上着がかけられている)
[装備]:伊澄の頭
[道具]:支給品一式×2、ノートパソコン@現実 旅館のパンフレット 特製スタンガン@スパイラル ~推理の絆~、不明支給品0~1
[思考]
基本:なんとかして最後の一人になり、神にみんなが生きている世界に帰して貰う
[備考]
※ サンジからワンピース世界についてかなり詳しく聞きました。
※ 拷問の影響で精神が非常に不安定になっています。
※ スズメバチに対して激しい恐怖を抱いています。
※ 放置しておいても命に関わる傷は受けていません。
[状態]:疲労(極大)、精神疲労(極大)全身(特に胸周辺)に多数の刺傷
[服装]:全裸(サンジの上着がかけられている)
[装備]:伊澄の頭
[道具]:支給品一式×2、ノートパソコン@現実 旅館のパンフレット 特製スタンガン@スパイラル ~推理の絆~、不明支給品0~1
[思考]
基本:なんとかして最後の一人になり、神にみんなが生きている世界に帰して貰う
[備考]
※ サンジからワンピース世界についてかなり詳しく聞きました。
※ 拷問の影響で精神が非常に不安定になっています。
※ スズメバチに対して激しい恐怖を抱いています。
※ 放置しておいても命に関わる傷は受けていません。
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| 061:Chuckle and Tears | サンジ | GAME OVER |
| 061:Chuckle and Tears | 三千院ナギ | 088:ブラック・ジャックによろしく |
| 059:まろやか牛風味 | ゾッド | 103:F.O.E."Nosferatu" |