「なかなかに見事な槍捌きだった。だが、この私相手では、遠く及ばなかったようだがな」
聖堂騎士団の騎士団長、マルチェロは、つい先程打ち倒した魚人の少女――アンダインの首元に、漆黒の刀身を当てながらそう投げかける。
「……」
アンダインは俯いたまま、何も答えない。マルチェロはああ言ったものの、実際のところはアンダインが殺し合いの場に呼ばれて動揺していた所にマルチェロの不意打ちを受け、すぐさま支給品の槍を手に応戦したものの、フラウィーの気まぐれにより一般人程度には肉体が強化されているとはいえ、元より死線を超えているマルチェロとの実力差は如何ともし難く。
加えて、戦いの舞台が気温の高いさばんなちほーだった事も相まって、アンダインとマルチェロの戦いはマルチェロの勝利と終わった。
加えて、戦いの舞台が気温の高いさばんなちほーだった事も相まって、アンダインとマルチェロの戦いはマルチェロの勝利と終わった。
「さらばだ」
そう言って、マルチェロは刀を引く。するとアンダインの首元から鮮血が吹き出し、アンダインの体がゆっくりと後ろに倒れていく。
◆
(私、は……)
アンダインの体から力が抜けていき、視界が狭まるのがわかる。
(パピルス……アルフィー……アズゴア……
私は……もう……ダメ、らしい……)
私は……もう……ダメ、らしい……)
脳裏に浮かぶのは、自らの弟子、大切なモンスター、そして、自らの主。
皆、この殺し合いに巻き込まれ、どうなってしまうのか、とアンダインは憂いを持った。
皆、この殺し合いに巻き込まれ、どうなってしまうのか、とアンダインは憂いを持った。
特にパピルスは優しすぎる。例えこの男のようにゲームに乗った者に出会っても、笑顔でズタズタにされるのがオチだ。
(私はお前たちの……期待には応えられなかったな……)
そして、アンダインはその生を終わらせる……
筈だった。
(いや……)
「まだ、だ……」
「……ん? 何だと…!」
「……ん? 何だと…!」
確実に仕留めた筈の、アンダインの声が聞こえた事に驚愕し、目を見開くマルチェロ。
そこには、明らかな致命傷を負いながらも、それでも尚立ち上がろうとするアンダインの姿があった。
そこには、明らかな致命傷を負いながらも、それでも尚立ち上がろうとするアンダインの姿があった。
「今にも私の体は……粉々になって砕け散ってしまいそうだ……
それでも、まだこの魂の奥には、何故か力が燃えたぎっている……
私はまだ、死ぬ訳にはいかない…!
今、私がここでお前を止めなければ……お前は他の参加者も殺し尽くす……そうだろう?
夢も……希望も……一瞬で握りつぶす……
だが、この私がさせはしない」
それでも、まだこの魂の奥には、何故か力が燃えたぎっている……
私はまだ、死ぬ訳にはいかない…!
今、私がここでお前を止めなければ……お前は他の参加者も殺し尽くす……そうだろう?
夢も……希望も……一瞬で握りつぶす……
だが、この私がさせはしない」
マルチェロを強く睨みつけるアンダイン。そこには、命を賭してもマルチェロを止めようとする、強い『ケツイ』が宿っていた。
「例え……お前が何であろうとも、私が必ず、貴様を打ち倒す!」
『ケツイ』を胸に、顔を上げるアンダイン。
そして、『騎士』は『勇者』へと進化を遂げる。
そして、『騎士』は『勇者』へと進化を遂げる。
「……さあ、貴様の本気を見せてみろ」
ゆうしゃが あらわれた。
胸にハートのついた漆黒の鎧を身にまとい、左目からは眼光が迸るアンダインの姿を見て、マルチェロは口角を上げた。
「……そう来なくては。勇者よ、どこからでもかかってこい!」
初手は、アンダインだった。
アンダインが槍を掲げると、マルチェロの周囲に魔力で作られた槍が現れ、容赦なくマルチェロに襲いかかる。
(その技は先程見た……が、速度も威力も桁違いだ!)
漆黒の刀で槍を弾いていくマルチェロ。しかし威力も速度も急激に増した槍に対応しきれず、何発かは被弾する。
「なるほど、少し貴様を見くびりすぎていたようだな。今度はこちらから行く」
アンダインに肉薄し、切りつけるマルチェロ。アンダインはそれを槍で防ぐと、続けて突きを繰り出す。
「ぐっ……!」
槍が左肩に直撃し、マルチェロは一旦距離を取る。それを追うように、アンダインは槍を掲げ、魔法の槍がマルチェロに向かっていく。
それを見たマルチェロは刀を一旦収め、右手でかまいたちを放つ。次々と消されていく槍。
そして、槍の雨をくぐり抜けた風の刃が、アンダインを襲う。
それを見たマルチェロは刀を一旦収め、右手でかまいたちを放つ。次々と消されていく槍。
そして、槍の雨をくぐり抜けた風の刃が、アンダインを襲う。
「……まだだ!」
風の刃を喰らい、一度は吹き飛ばされるも立ち上がるアンダイン。しかし同時に全身に痛みが走り、片膝をつく。
決してマルチェロが何かをした訳では無い。アンダインの体そのものが、壊れそうだったものを無理やり押しとどめたものであるが故に、限界が迫っているのだと。
決してマルチェロが何かをした訳では無い。アンダインの体そのものが、壊れそうだったものを無理やり押しとどめたものであるが故に、限界が迫っているのだと。
アンダインが顔を上げると、眼前に大きな火球が迫っていた。咄嗟に回避体制をとるアンダインだが、完全には避けきれず、左腕を火球が飲み込む。
「ぐあああぁぁぁぁ!」
あまりの熱さにのたうち回るアンダイン。回避行動をとっていなければ、一瞬のうちに灰になっていただろう。
(もう……私は長くない……この一撃に、全てを賭ける!)
霞む視界、思うように動かない体。それでもなお、アンダインは立ち上がる。
全てはこの男、マルチェロを倒すために。
全てはこの男、マルチェロを倒すために。
「まだ立ち上がるか……良いだろう。私も全力をもって、貴様を葬ってくれよう!」
アンダインはこれまで以上に多くの魔法の槍を生み出し、
マルチェロは祈りを込めて、十字を切る。
マルチェロは祈りを込めて、十字を切る。
「これが私の、ケツイだぁぁぁぁぁぁぁ!」
「グランド……クロォォォォォス!」
「グランド……クロォォォォォス!」
槍と十字が、至近距離でぶつかり合い、大きな土埃を起こる。
やがて、土埃が晴れた先には――
やがて、土埃が晴れた先には――
肩で息をし、身体中から血を流しながらも立っているマルチェロ。
そして……
そして……
元々瀕死の体だった上に、無理やりケツイの力で砕けそうな体を押しとどめ、更にマルチェロとの戦いにより致命傷を負い、体がケツイの力に耐えられずに体が殆ど溶けているアンダインの姿があった。
(くっ……
これほどまでの力を持ってしても、届かなかったか……!
だが……)
これほどまでの力を持ってしても、届かなかったか……!
だが……)
段々と溶けていく体、薄れゆく意識の中でも、アンダインは希望を捨てない。
――きっと、私のように殺し合いに肯定意見を持たない者達が、この男やフラウィーを止めてくれるだろう。
そう、自分のように、殺し合いに反旗を翻そうとする者達に、自らの希望を託し。
アンダインは笑顔で、その命を散らした。
アンダインは笑顔で、その命を散らした。
【アンダイン@UNDERTALE 死亡】
【残り33人】
【残り33人】
「終わった、か……」
マルチェロは息を吐き、その場に座り込む。
アンダインを倒したとはいえ、自らも無傷ではない。
すぐさまベホイミで自らの傷を癒そうとするが……
アンダインを倒したとはいえ、自らも無傷ではない。
すぐさまベホイミで自らの傷を癒そうとするが……
(回復力が……明らかに落ちている……!
糞っ、フラウィーとやらめ、何をした……?)
糞っ、フラウィーとやらめ、何をした……?)
フラウィーの手により、回復力の落ちた呪文を見て、苛立ちを覚えるマルチェロ。
(いや……ひとまず落ち着け。私が最優先で殺すべきはククールだ。変にあの花に当たっても仕方ない)
この殺し合いには、自らの居場所を奪った、憎きククールも呼ばれている。
少なくともククールは自らの手で殺し、最終的には優勝を目指すというのに、こんな所で苛立っていては先が思いやられる。
少なくともククールは自らの手で殺し、最終的には優勝を目指すというのに、こんな所で苛立っていては先が思いやられる。
十数回の詠唱を経て、ようやくある程度まで回復したマルチェロは立ち上がり、アンダインの支給品を手に、優勝するというケツイを定めたのであった……
【G-2/さばんなちほー/一日目/深夜】
【マルチェロ@ドラゴンクエストVIII 空と海と大地と呪われし姫君】
[状態]:槍による刺し傷(中、ベホイミである程度回復)、MP消費(中)
[服装]:騎士団長の服
[装備]:竈門炭治郎の日輪刀@鬼滅の刃
[道具]:基本支給品一式、不明支給品0~4、英雄の槍@ドラゴンクエストVIII 空と海と大地と呪われし姫君
[思考]
基本:ゲームに乗り、優勝する
1:ククールは自らの手で殺す
[備考]
参戦時期は後続の書き手様にお任せします
[状態]:槍による刺し傷(中、ベホイミである程度回復)、MP消費(中)
[服装]:騎士団長の服
[装備]:竈門炭治郎の日輪刀@鬼滅の刃
[道具]:基本支給品一式、不明支給品0~4、英雄の槍@ドラゴンクエストVIII 空と海と大地と呪われし姫君
[思考]
基本:ゲームに乗り、優勝する
1:ククールは自らの手で殺す
[備考]
参戦時期は後続の書き手様にお任せします
【支給品紹介】
竈門炭治郎の日輪刀@鬼滅の刃
マルチェロに支給された。
竈門炭治郎が使う日輪刀。漆黒の刀身をしている。
何度か破損し、その度に新たな日輪刀が支給されているが、マルチェロに支給されたのは半天狗戦後のもので、刀に『滅』という字と炎のような鍔がついている。
竈門炭治郎の日輪刀@鬼滅の刃
マルチェロに支給された。
竈門炭治郎が使う日輪刀。漆黒の刀身をしている。
何度か破損し、その度に新たな日輪刀が支給されているが、マルチェロに支給されたのは半天狗戦後のもので、刀に『滅』という字と炎のような鍔がついている。
英雄の槍@ドラゴンクエストVIII 空と海と大地と呪われし姫君
アンダインに支給された。
攻撃力+100、更に与えたダメージの25%を回復する。
ただし、制限により回復量はかなり抑えられている。
アンダインに支給された。
攻撃力+100、更に与えたダメージの25%を回復する。
ただし、制限により回復量はかなり抑えられている。
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