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※オープニングは失われている※

【リプレイ】
●Rechercher
 夜、7人のエンドブレイカー達は放置領域に集結していた。
 花蝶守の黒狗・アキ(c31129)は昼間に放置領域に身を潜めていたが、求めていた情報は無く自らの足で探す他無いと言う事が分かった。
「ガキ相手ってのがねェ……遣る瀬ねぇな」
 これから倒すことになるのはまだ若い少年である。アキの一言が仲間の想いを代弁しているようだった。完全にマスカレイド化していなければまだ救いはあったのだが……。
「例の少年、よく放置領域に行くような子だったのかな?」
 ランタンを手にわんこひつじなブラウニー・クィ(c03420)が呟く。
「何故行く必要があったんだろうな。……一体放置領域に何があるというのだろう」
 その呟きに切り札・エマス(c30188)が言葉を返す。放置領域へ行く前に喫茶店「ミミ」で少年について情報を集めてみたが、アキと同じく有益なものは得られなかった。
「私達双子も食べ物に困った時期がありますから、気持ちは分からないでもないですが……」
 花菖蒲・アヤセ(c01136)が言う。理不尽な暴虐により弟と二人だけで生きてきたアヤセは少年と共感出来る所があるのだろう。
「一緒じゃないけど、寂しく……ない?」
「まあ、依頼でも一緒に仕事する事多いけど、大丈夫だよ?」
 誰が、とは言わずとも分かったのだろう。アヤセがクィの頭を撫でつつ応える。
「……行くわよ。敵は放置領域の何処かに居る。見つけ出して始末しないといけない」
 そう冷たく黒薔薇刑事・シルフィア(c01856)は言い放ち歩き出す。『敵』と、シルフィアは既に少年を敵としか認識していなかった。
 斧のスカイランナー・オラス(c30221)がロープを使って上から探すが、仲間が居る所以外は暗くて誰か居るかは判別出来なかった。
「なぁアンタ、この辺で身形のいい少年を見なかったか?」
 貧民窟之聖女・ノゥールェシィァ(c31097)が放置領域に住まう者へと声を掛ける。
「あぁ? 少年だぁ? そういやここ最近、小さい子がこの辺をウロウロしてたなぁ。冒険好きにゃ見えない子だったが……」
 薄汚い格好の男が言う。最近見た場所を聞くと、近くの広場だそうだ。
「あぁ見かけても近寄らない方がいい、貴族に関わっても良いこと無いだろう?」
 ノゥールェシィアがそう言うと男は不機嫌そうに眉を顰めそっぽを向く。
「ハッ、貴族様の考えてる事は分からんからな! オラぁ、忙しんだ! さっさとどっかへ行ってくれ!」
 怒りを顕にした男はその場から離れ放置領域の奥へ行ってしまった。
 ともあれ、少年の居場所についての有益な情報を得ることは出来た。
「ねね、ノゥールェシィァさん見て、猫さんなんだよう、可愛い~♪」
「ひゃあ! ね……ねこ……?」
 ノゥールェシィアの情報を元に周囲を捜索している時、クィがノゥールェシィアに声をかけた。最も、猫はノゥールェシィアの声に驚いて既に何処かへ行ってしまったのだが。
「む…? 居た。アレだ」
 暫く捜索していると、シルフィアが少年を発見し、皆に伝える。
 清潔感のある白いワイシャツに青のズボン。細部に刺繍が施され、放置領域に来るには些か不自然な出で立ちをしている少年が広場の壁に立っていた。
 そしてエンドブレイカー達にしか見えないモノが何よりの証拠となる。つまり、少年の顔に浮かぶマスカレイドの仮面。
 各々が武器を手に対峙すると、少年は驚いた表情を浮かべるが直ぐに笑顔となる。
「わぁ、どうしたの? 何だか、怖いよ?」
 言葉だけは普通だが、笑顔のままの少年はエンドブレイカー達を前にしても怯む事は無かった。
「これ以上の被害を出さないためにここで……あなたを殺します……」
 その言葉が合図となったのか、少年の周囲に3体のオークが姿を現す。
「そっか。じゃあ、皆は食べてもいい人間なんだね」
 今夜はご馳走だなぁ、と笑顔を浮かべる少年は、仮面さえ無ければ本当に只の少年のままであった。

●Avide
「貴方がこれ以上、罪を犯す前にせめて私達の手で終わらせましょう」
 アヤセがそう言うと少年へと近づき輝く掌が少年の腕を掴む。
「うあっっ……! い、痛いよ! お姉ちゃん……!」
 身を捩り肩を掴む掌から逃れようと藻掻く少年。アヤセが少年へ張り付いている間、他のエンドブレイカー達はオークへと攻撃を集中させていく。
「吹き飛ばすゾ!」
 オラスが大剣を近くに居るオークへと振り回す。体全体を使い大振りに振り回す大剣は他のオークをも巻き込んで行く。
 続けてクィの鞭が毒蛇に変わり大剣に巻き込まれなかったオークへと襲いかかる。
「フギィィーーッ!」
 オークは襲い来る毒蛇を捕まえ、自らの口へと運ぶ。攻撃を避ける又は防ぐ事よりも『食う』事を優先する程、貪欲ということなのだろうか。
「こいつも喰らえっ!」
 アキの魔獣化した腕が大剣を受けたオークの土手っ腹を殴りつける。ブヨブヨした脂肪に守られた腹が激しくヘコむが大したダメージにはなってないようだ。
「ここまで来たら、悪食としか言えないぜ!」
 ノゥールェシィアが繰り出す横薙ぎの一閃が衝撃波を伴い荒れ狂い、オークを全て巻き込む。
 残像を残しつつ2体のオークをカルタ・ムンディに隠された刃で突き刺すエマス。
「フン、薄汚い豚風情がっ!」
 戦闘となり、普段とは雰囲気の異なるシルフィアが実体化させた支配の棘がオークを捕らえ絡みつく。
 コンビネーションの連携で瞬く間にオーク達に打撃を与えていくエンドブレイカー達。
「ブヒッ、ギィィ!」
 しかしオークも負けじと闘気を放ちつつ近くに居るノゥールェシィアへと棍棒を突き上げ鳩尾へと叩きこむ。そこへ1体のオークも続けてハンマーを打ち込むが、咄嗟に餓狼でハンマーを打ち払い距離を取った。
「ブヒィィッ!」
 少年側に居るオークが棍棒の先端に力を込め重力を発生させ、離れてた位置のエマスとシルフィアを地面へと押し潰す。
「どうして? どうして皆邪魔をするの? ボク、何も悪いことしてないよ!?」
 自らと配下のオーク達が攻撃されてる事に心底不思議に思っている少年は声を荒げ、アヤセに拳を振るう。技術も経験も無い子供の一撃。しかしマスカレイド化した少年の一撃は無視出来る程では無い。その拳は確実にアヤセの体力を削っていく。
「人の命まで喰らうようになったら、止めなければならないからです!」
 拳を真正面から受けたアヤセは顔を逸らすこと無く少年を見つめ、ガントレットに力を込める。それに応えるようにガントレットは輝きを増して行き、眩く輝く指が少年を捉えようとするが、少年はしゃがんでアヤセの股下をすり抜け回避する。
「どうして? だって、ボク、誰にも迷惑掛けてないよ!?」
 悪びれた様子もなく、ただ只管自らの潔白を伝えようとする少年。
「纏めて行くゾ! 吹っ飛ぶんだナ!」
 オークの死角からオラスが大剣を振り回す。一撃でオークを浮かせ、回転の勢いを殺さずそのまま二回転し二撃目でオークを廃墟の壁へと吹き飛ばす。
「テメェ、ウマそうだなぁ、オイ?」
 そう行ってアキは魔獣化した腕でオークの腹を力一杯掴み、放り投げるように脂肪の奥を殴打する。
「ケッ、ただの糞不味い豚じゃねーか」
「美味くもない豚など、尚更生きる価値は無いな」
 ドレインで僅かに回復したアキが吐き捨てる。それを聞いたシルフィアが嘲笑するように具現化させた棘を他のオークへと放つ。
「フッ……ハッ!」
 エマスが舞を舞うように軽やかなステップでオークを翻弄し、死角や幻華に紛れてカルタ・ムンディで斬り裂いていく。
「もういっちょ、吹き飛べっ!」
 エマスの後に続くように餓狼を振り回しオークを吹き飛ばすノゥールェシィア。涎とも血ともつかない体液を残し吹き飛ぶオークは頭から壁に減り込み。
「そんなに食べたいなら、これをどうぞっ!」
 クィが毒蛇と化した鞭を打ち付ける。毒蛇はオークの腹に噛み付き、致死毒を何度も送り込む。ビクンビクンと数回痙攣した後、オークは動かなくなり、次第に肌の色が変色していく。
「ブヒッ……ブヒヒッ!?」
 高重力で押し潰そうとするオークだが、シルフィアのギアスにより広域での攻撃が出来ず、クィへ超重圧が迫る。
「っ……! 重いっ……!」
 重圧を何とか凌いだクィだが、体力の半分は持っていかれてしまったようだ。
「プギィィィ! プギィィィッ!」
 吹き飛ばされたオークが見た目には想像もつかない程の速さで戻りその勢いのままアキへとハンマーを打ちつけようとするが、直線的であるが故に読まれやすく、マタドールよろしくアッサリとアキに回避された。
「放置領域の人は居なくなった方が皆が喜ぶんだよ!? だからボクは、皆が喜ぶ為に、食べてあげてるんだよ!?」
 少年はアヤセの腕にしがみつき、腕に噛み付く。人間の顎では到底不可能な程の力が、万力のような力がアヤセの腕に掛かり、食い千切らんと力が入る。
「ぐっ……! アアッ!!」
 必死に腕を振るい少年を引き剥がしたアヤセ。しかし腕からは血が止め処なく流れ出ている。
「「「これでトドメだっ……!」」」
 三者三様、オラスとノゥールェシィアとシルフィアの声が重なり、2体のオークに大剣と餓狼と棘が襲い、瞬殺する。
 残るはマスカレイド化した少年ただ一人である。

●Folie
 クィがアヤセとエマスにコルリ施療院の紋章で傷を癒していく。しかしそれでも、アヤセの傷は完全に塞がらない。
 アキがアヤセと入れ替わるように少年の前に立ち、魔獣化した爪で切り裂く。
「お前は何処から来た、何があった、帰りたくないのか?」
 バトルトークで語りかけられた少年は爪を噛み砕き、応える。
「どうして? どうして帰らないといけないの? こんなに沢山、食べるものがあるのに?」
 根本的な所がズレている。少年の思考と、エンドブレイカー達の思考が重なることは無い。
「……少年よ。君の悪い夢はもうすぐ終わる。……もう眠るんだ」
 説得は不可能と理解したエマスが絞りだす様に呟く。辛そうな表情は今、確固たる決意を秘めたものへと変わっている。
「夢じゃないよ。だからまだ終わらないよ。ボクはお腹いっぱい食べるんだ。そうすれば、皆喜んでくれるんだから!」
 カルタ・ムンディの刃を手で受け止めた少年は嗤う。自分のやってることは、善行だ、皆が喜んでくれる、と。
「うおおぉおぉぉぉおらぁっ!!!」
 ノゥールェシィアの餓狼による二十もの突きが少年を襲う。
「なんで、腹が減ってるんだ? なんで、お前はそんなことになってんだ? 貴族か商人の息子とかあたりだろうけど……欲しい物なら何だって手に入ったはずだ……パンでも菓子でも……なぁ…お前は何でそんなに飢えているんだよ……?」
 孤児であり、貧民層の出であるノゥールェシィアは怒りと悲しみを以って語りかける。何不自由無く生きていける筈の少年がこのような奇行を行う意味が分からない。
「足りないからだよ。皆だって、ご飯食べてもお腹いっぱいならない時があるよね? ボクもそうだもの!」
 体を余すところ無く餓狼で突かれた少年はアッサリと、さも当然のように言い放つ。そう、少年にとって放置領域に住まう者は『人間』では無いと言うのだ。
「そんなのおかしいよ! ここの人達も生きてるんだよ! 誰がそんな事言ったの!?」
 怒りに腕を震わせながら紋章を描く。
「くろがね兵団、攻撃陣形、用意! 突撃!」
 喚び出された黒鉄兵団が少年へと突撃するが、少年はそれらの隙間を縫うように下から潜り抜ける。
「でもひとを襲っちゃいけないんだゾ。おらも、すぐ腹減るけど美味そうな生き物がいても狩っちゃいけないやつは我慢ダ」
 オラスが黒鉄兵団をすり抜けた少年の前に立ち塞がり、大剣を振り回し、不意打ちに蹴りを入れる。
「くぅっ! だって、だって! ここの人達なら食べていいって……!」
「だからどうした? 死ね」
 少年の言葉を遮るようにシルフィアが白蛇を放つ。白蛇は群体となり少年の手足に絡みつき石化させていく。
「くっ……貴方は……貴方はもう、『ヒト』で居る事を辞めてしまったのですね……!」
 飢え死に寸前まで追い込まれた過去を持つアヤセだからこそ、誰よりも少年に共感出来ると思っていた。しかし結果は全くの別だった。『小腹が空くからお菓子を食べる』というのと同じ感覚で、少年は放置領域の者を食べていたのである。否、今の少年にとって、普段の食事がお菓子程度の物なのだろう。
 手足に竜を纏った拳と脚の乱打が少年を襲う。的確に急所だけを狙うその一撃は瞬く間に少年の体力を削り落とす。
「くぅっ! この、わからず屋ぁっ! ボクの言ってることが正しいって、どうしてわかんないのっ!」
 少年は激昂しアヤセへと蹴りや拳を繰り出す。拙いながらもそれは今出したサウザンドアーツの模倣であった。勿論、効果は全く違うが、見た目だけはそっくりだ。
「ぐっ……!」
「拙いか……ならば」
 アヤセが猛攻を受けているのを見てシルフィアが楽園の門を開きアヤセの傷を癒していく。致命傷は免れているものの、回復が追いつく程ではない。
「終わりだっ!」
 アキが巨大化させた魔獣の手で少年を握り力を込める。少年の悲鳴と抵抗が手の中から聞こえるが、すぐにそれも無くなった。
 少年を解放すると、力なく地面に倒れこんだままで、戦う力は残されていないようだ。

●Avenir
 アヤセが少年を抱きかかえるとエマスが近づき話しかけた。
「これは悪い夢だ。……もうお休み」
 エマスが少年の手を取り、優しく声をかける。せめて最期は安らかにという想いからだ。
「おじさんの手……おいしそう、だなぁ……食べたかった、なぁ……」
 その一言に驚きと絶望の交じり合った表情を浮かべるが、それも一瞬のこと。
「そっか……。だが、今はお休み。この悪夢が終われば、喫茶店ミミへおいで。おじさんの手よりも、もっと美味しいものが沢山あるから」
 そう言ってエマスは少年の頭を撫でる。
「おじさんはね、タロット占いが得意なんだ。この悪夢が終わる君を占ってあげるよ」
 そう言うと何処からともなくカードを取り出すエマス。残り少ない灯火が消えぬようにと、内心は焦りを抱きつつもタロットを1枚少年に見せる。
「The Star、星のカードは希望や期待、明るい将来性や可能性を意味するんだ。これからの状況の変化やチャンスの到来を期待させてくれる良いカードなんだよ。現状がどういった状況であったとしても、今後の変化や展開に期待が持てる良いカード。これを、君にプレゼントしよう」
 まくし立てないようにそれでいてなるべく急いでカードの説明をし、星のタロットを少年へ渡すエマス。
「エマスさんのタロットは、凄く当たるんだよぉ~」
 クィがそう言うと他の皆も頷く。
「そっか……。じゃあ……次、は、おなかいっぱい、に……」
 タロットを胸に抱き、期待するように笑みを浮かべた少年はそのままアヤセの胸の中で眠りに就いた。
「……終わったわね。じゃあ……」
 様子を見ていたシルフィアが近付きローズリチュアルで少年の死体を消滅させる。
 最後に残った少年の服が地面に落ちると同時に、深紅の薔薇が咲く。それも、1つではなく2つ3つと複数だ。まるで、今まで奪った放置領域に住まう者を弔う葬花のように。
「なんか腹減ったな! みんなでミミに飯食いに行こうぜ!」
 全てが終わり、敢えてノゥールェシィアが明るく話す。
 オーッ! と元気よくそれに賛同するオラスに、他の仲間も少しずつ続く。
 エンドブレイカー達が放置領域を去り、最後に残されたのは戦闘の痕跡と、地面に咲く数輪の薔薇だけだった。




冒険結果:成功!
最終更新:2013年05月19日 15:23