まるで、夢の中にいる気分だった。
自分は今ふわふわと浮いている、そんな風に意識だけがあるかのような状態だった。
白昼夢とはまさに、このような感じなのだろうか。
そんな感覚を、何十もの意識が感じていた。
自分は今ふわふわと浮いている、そんな風に意識だけがあるかのような状態だった。
白昼夢とはまさに、このような感じなのだろうか。
そんな感覚を、何十もの意識が感じていた。
やがて、ぼんやりとある景色が見えてきた。
見えたのは青く晴れて白い雲がいくつか空、
緑に染まった草原とその奥の方にある一つの丘、
そして、その丘の上にある一本の樹だ。
見えたのは青く晴れて白い雲がいくつか空、
緑に染まった草原とその奥の方にある一つの丘、
そして、その丘の上にある一本の樹だ。
その木のある方向から、一人の人物が歩いてきた。
その人物は女だった。
その人物は女だった。
女は白いワンピース服の上に左右赤とピンクの色をしたパーカージャケットを羽織っている。
髪は長く、色は右側が赤、左側が白だ。
また、髪は後頭部の方で二つのリング状に結ばれている。
前髪は左の白い方だけ長く、左目を隠している。
髪は長く、色は右側が赤、左側が白だ。
また、髪は後頭部の方で二つのリング状に結ばれている。
前髪は左の白い方だけ長く、左目を隠している。
ある世界の住む者達ならば、その姿を見てこの女が何者なのかを察することができる者がほとんどだろう。
大海賊時代において彼女の名を知らぬ者はいない。
彼女はひとつなぎの大秘宝(ワンピース)をめぐるこの混沌の時代において、世界中で苦しむ人々の心を歌で救い、やがては救世主とも呼ばれた。
大海賊時代において彼女の名を知らぬ者はいない。
彼女はひとつなぎの大秘宝(ワンピース)をめぐるこの混沌の時代において、世界中で苦しむ人々の心を歌で救い、やがては救世主とも呼ばれた。
彼女は、世界の歌姫と呼ばれた少女、『ウタ』だった。
しかし、どこか様子や雰囲気がおかしかった。
彼女は、これまで彼女がしたこともないような形の妖しい笑みを浮かべていた。
彼女は、これまで彼女がしたこともないような形の妖しい笑みを浮かべていた。
木のある丘から歩いて近づいてきた彼女は、やがて言葉を発した。
「こんばんは。今から、君たちに殺し合いをしてもらうよ」
それは、本来の彼女の口からは絶対に出ない言葉だった。
「ただし、普通の殺し合いじゃない」
「今からお前たちにしてもらうのは、自分とは別の者の身体で戦う殺し合いだ」
「一応言っておくと、二人の人物が一対一で身体が入れ替わっているわけではないよ」
「今からお前たちにしてもらうのは、自分とは別の者の身体で戦う殺し合いだ」
「一応言っておくと、二人の人物が一対一で身体が入れ替わっているわけではないよ」
続け様に語られたのは、より信じられない内容の説明だった。
「実は俺も、本来のものとは別の身体になっているんだ」
「俺の名は魘夢。元十二鬼月の下弦の壱だった男だ」
「そして今の俺の身体の女の名はウタという」
「確かこのウタは世界の歌姫だの何だの言われているみたいだけど……まあ、今そんなことは関係ない」
「俺の名は魘夢。元十二鬼月の下弦の壱だった男だ」
「そして今の俺の身体の女の名はウタという」
「確かこのウタは世界の歌姫だの何だの言われているみたいだけど……まあ、今そんなことは関係ない」
「重要なのは、別人の身体になっているということが事実ということだけ」
「この女のことをよく知っていれば、こんなことは絶対に言わないことは分かるだろうからね」
「この女のことをよく知っていれば、こんなことは絶対に言わないことは分かるだろうからね」
ウタ…否、魘夢は顔に張り付けたような笑顔を浮かべたまま説明を続ける。
彼の声を聞いているものがどう感じているのかも無視し、話し続ける。
彼の声を聞いているものがどう感じているのかも無視し、話し続ける。
「信じられなくても、この後目を覚まして自分の身体を確認すれば、俺の言っていることが真実かどうかはすぐに分かるだろうね」
「支給品に手鏡を用意したから、自分が今どんな顔になっているかもすぐに確認できるようにしてあるからね」
「支給品に手鏡を用意したから、自分が今どんな顔になっているかもすぐに確認できるようにしてあるからね」
「基本的な支給品には他に、ここで説明する殺し合いの決まりが記された"でーたふぁいる"というものが入った"たぶれっと"というものがあるから、それもよく確認することだね」
「ついでに言うけど、この殺し合いでは最初のうちに参加者の名簿や地図は配らないことになっているんだ」
「お前たちが目覚めてから一時間、この間は新しい身体に慣れるための時間ということにするんだ」
「その後に、先に述べた"たぶれっと"に名簿や地図を入れる予定だ」
「それ以降が、この殺し合いの本番って考えてくれたらいいよ」
「まあ別に、この一時間の間に始めてくれても構わないけどね」
「一時間経ったら、こっちの方から連絡するからそれまで待っていてね」
「ついでに言うけど、この殺し合いでは最初のうちに参加者の名簿や地図は配らないことになっているんだ」
「お前たちが目覚めてから一時間、この間は新しい身体に慣れるための時間ということにするんだ」
「その後に、先に述べた"たぶれっと"に名簿や地図を入れる予定だ」
「それ以降が、この殺し合いの本番って考えてくれたらいいよ」
「まあ別に、この一時間の間に始めてくれても構わないけどね」
「一時間経ったら、こっちの方から連絡するからそれまで待っていてね」
「それと、一時間後の連絡の他にも、六時間ごとの定期放送というものがある」
「最初の定期放送は、最初の一時間も含んでの、目覚めてから六時間後に行われる」
「ややこしいと感じるかもだけど、我慢することだね」
「最初の定期放送は、最初の一時間も含んでの、目覚めてから六時間後に行われる」
「ややこしいと感じるかもだけど、我慢することだね」
「この定期放送では、"禁止区域(エリア)"というものが発表される」
「一度の放送で指定される数は三つ、有効になるのはそれぞれ定期放送から一時間、三時間、五時間後になる」
「このように立ち入りを禁止された区域は、時間になると"見えない壁"で囲まれる」
「そして、時間になるまでに中から出なかった者は例外なく消滅、死亡する」
「こっちとしてもあまりつまらない死に方は望まないから、十分注意して放送を聞くことだね」
「ついでに言っておくと、後で配る地図の範囲外の場所は、さっき述べた"見えない壁"で通り抜けできないようになっているから、逃げようと考えても意味がないことを予め理解しておいてね」
「一度の放送で指定される数は三つ、有効になるのはそれぞれ定期放送から一時間、三時間、五時間後になる」
「このように立ち入りを禁止された区域は、時間になると"見えない壁"で囲まれる」
「そして、時間になるまでに中から出なかった者は例外なく消滅、死亡する」
「こっちとしてもあまりつまらない死に方は望まないから、十分注意して放送を聞くことだね」
「ついでに言っておくと、後で配る地図の範囲外の場所は、さっき述べた"見えない壁"で通り抜けできないようになっているから、逃げようと考えても意味がないことを予め理解しておいてね」
「次に、報酬についての話をしようか」
「この殺し合いに最後まで残った生存者一人…優勝者には【元の身体に戻る権利】と【どんな願いでも叶えられる権利】を別々に譲渡することを約束しよう」
「一応言っておくけど、もし自分の身体が他の参加者のものになっていて、殺し合いの過程でそれが死亡してしまったとしても、それを蘇生することと願いの権利は別とする」
「また、今の身体のままで良いのなら、そのままにしておくのも可能ということににしておくよ」
「そういった点については考える必要は無いからね」
「この殺し合いに最後まで残った生存者一人…優勝者には【元の身体に戻る権利】と【どんな願いでも叶えられる権利】を別々に譲渡することを約束しよう」
「一応言っておくけど、もし自分の身体が他の参加者のものになっていて、殺し合いの過程でそれが死亡してしまったとしても、それを蘇生することと願いの権利は別とする」
「また、今の身体のままで良いのなら、そのままにしておくのも可能ということににしておくよ」
「そういった点については考える必要は無いからね」
「それからもう一つ言っておくと、この殺し合いにおいては参加者とされる者達以外にも本来の身体とは別物になっている精神がいる可能性がある」
「一つは、支給品の一種にある意思を持つものが身体となっているもの」
「もう一つは、主となる参加者に与えられた身体が元は多重人格であったために発生する、副人格に割り当てられる精神だ」
「まあ、そうとは言えないものも便宜上"副人格"として扱うこともあるかもしれないけど」
「そんな『参加者以外で精神が別の存在になっている者達』についてだけど、これらは"殺し合いの優勝者が許可する"ならば、元の身体に戻れるものとしておこうか」
「一つは、支給品の一種にある意思を持つものが身体となっているもの」
「もう一つは、主となる参加者に与えられた身体が元は多重人格であったために発生する、副人格に割り当てられる精神だ」
「まあ、そうとは言えないものも便宜上"副人格"として扱うこともあるかもしれないけど」
「そんな『参加者以外で精神が別の存在になっている者達』についてだけど、これらは"殺し合いの優勝者が許可する"ならば、元の身体に戻れるものとしておこうか」
◆
「さて、これで殺し合いのために必要な情報は大体伝えられたかな」
「それじゃあ、お前たちの健闘を…」
「それじゃあ、お前たちの健闘を…」
『待て』
魘夢が話を切り上げようとしたその時、新たな人物が突如としてこの空間に現れた。
そいつは魘夢の後ろの方から来て、彼の隣に並び立った。
そいつは魘夢の後ろの方から来て、彼の隣に並び立った。
それは白い服を着た子供だった。
ただし、明らかに普通の子供ではないことを、雰囲気とその顔に装着されている物から感じ取れた。
ただし、明らかに普通の子供ではないことを、雰囲気とその顔に装着されている物から感じ取れた。
子供は顔に仮面を被っていた。
ハート型、そこからいくつかの棘が左右対称についている。
紫色を基調としており、不気味な目と模様を有している。
ハート型、そこからいくつかの棘が左右対称についている。
紫色を基調としており、不気味な目と模様を有している。
その仮面は、名を『ムジュラの仮面』と言った。
「どうしたの?」
仮面を被ったこの子供がここに来るとは思っていなかったらしき魘夢は不思議そうに尋ねる。
『まだ、緊迫感が足りない』
『禁止エリア以外に参加者の命を縛る方法が無い』
『禁止エリア以外に参加者の命を縛る方法が無い』
子供は自分が何者であるかも教えずに新たな説明を続ける。
『だからここで、もっと視覚的にも分かりやすい『タイムリミット』を入れることにする』
『これから目を覚ました後、空も見上げてみるといい』
『そこにはきっと、『月』が浮かんでいるのが見えるだろう』
『そこにはきっと、『月』が浮かんでいるのが見えるだろう』
『その『月』は、お前たちが目を覚ましてから3日後の深夜0時に地上に落下する』
『その時、世界は消滅する』
『その時、世界は消滅する』
『止めたければ、この殺し合いを完遂し、最後の一人になることだ』
「……なるほど、それはとても良いね」
仮面の子供の説明を聞いた魘夢は何かを理解したのか、顔を少しにやつかせながら自身の顎を撫でる。
「でも、"あの人"にそのことは話した?」
『その心配はない。既に了承は得ている』
「じゃあ、大丈夫か」
『その心配はない。既に了承は得ている』
「じゃあ、大丈夫か」
少しだけ疑問に思うことがあるのか、仮面の子供に質問を投げかける。
「今説明された通り、この殺し合いに『時間制限』ができることになった」
「世界ごと消え去りたくなければ、殺し合いをしっかりと進めることだ」
「世界ごと消え去りたくなければ、殺し合いをしっかりと進めることだ」
「それじゃあ、お前たちの健闘と、極上の悪夢を見てくれることを期待しているよ」
魘夢は手を振りながら言ったその言葉を最後に、この光景を見ていた者達…殺し合いの参加者達の視界は再び暗転した。
◆◇
そして、彼らは目覚める。
草原、山、森、雪原、街、村…その他様々な場所でだ。
スタート地点はバラバラ、それぞれの都合なんか考慮していないランダムなものだ。
草原、山、森、雪原、街、村…その他様々な場所でだ。
スタート地点はバラバラ、それぞれの都合なんか考慮していないランダムなものだ。
そこで彼らは、きっとすぐに自分の顔・身体を確認することになるだろう。
やがて先ほどの、ウタから身体を奪ったと思われる魘夢が話していたことが、真実であることを理解するだろう。
やがて先ほどの、ウタから身体を奪ったと思われる魘夢が話していたことが、真実であることを理解するだろう。
参加者達が目覚める時間は深夜0時、漆黒の闇が支配する夜の時間帯だ。
天候は晴れており、見上げれば黒い空と小さく輝くたくさんの星々があることを確認できるだろう。
そして、彼らが見るものはそれだけではない。
空を見て"それ"を確認した者達は、きっとより深く自分達が本当に殺し合いをしなければならないことが分かるだろう。
天候は晴れており、見上げれば黒い空と小さく輝くたくさんの星々があることを確認できるだろう。
そして、彼らが見るものはそれだけではない。
空を見て"それ"を確認した者達は、きっとより深く自分達が本当に殺し合いをしなければならないことが分かるだろう。
空には確かに月が浮かんでいる。
世にも恐ろしい顔を持つ、不気味な月が。
その月はゆっくりと僅かずつにだが、けれども確かに、地上に顔を向けながら近づいてきていた。
◆
0時になる少し前、殺し合いの舞台となる場所の上空に浮かぶ一つの影があった。
その影は、人の姿をしていない。
けれども、それは確かに生物のようだった。
そいつは、白い煙のような頭部と黒い体を持っている。
その影は、人の姿をしていない。
けれども、それは確かに生物のようだった。
そいつは、白い煙のような頭部と黒い体を持っている。
それの名は、『ダークライ』といった。
ダークライは本来、新月の時にのみ活動する、ポケモンという生物の一種だ。
しかし、普通のものではないとはいえ、月があるのに確かにここにいた。
しかし、普通のものではないとはいえ、月があるのに確かにここにいた。
実は、こいつはダークライではない。
けれども、確かにダークライの姿をしていた。
けれども、確かにダークライの姿をしていた。
「………」
ダークライの姿をしたその存在は、月を背に向けて地上を一瞥する。
ある程度地上の様子を俯瞰した後、そのままそいつは、煙のように消えた。
まだ眠っている地上にいる者達がそいつがそこにいたということを認識することもない。
まだ眠っている地上にいる者達がそいつがそこにいたということを認識することもない。
この者が一体何なのか、その話はまたしばらく後だ。
◆
【主催陣営】
- ムジュラの仮面@ゼルダの伝説ムジュラの仮面
- 魘夢@鬼滅の刃(身体:ウタ@ONE PIECE FILM RED)
- ???(身体:ダークライ@ポケットモンスターシリーズ)
※コンペ時の候補作において、精神側としてウタやダークライ、身体側として魘夢を登場させることは可能とします。
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