「一体どうなっているのかしら……」
チャットは混乱の真っただ中にいた。
何しろ、時を巻き戻し、その果てに倒したはずのムジュラの仮面がいたのだから。
おまけに悪いことに、あの時消えたはずの巨大な月まであった。
何しろ、時を巻き戻し、その果てに倒したはずのムジュラの仮面がいたのだから。
おまけに悪いことに、あの時消えたはずの巨大な月まであった。
あの時と違う点は、旅の途中のパートナーがいないこと。
そして何より、自分が人間の姿になっていること。
そして何より、自分が人間の姿になっていること。
どんな人間なのか分からないので、一先ず鏡と人物紹介の紙を見ることにした。
パッチリした瞳と、くすみのない金髪。そして健康的な小麦色の肌。
妖精であるチャットでさえも、美女であると分かった。
見た目は良いが、どんな人物かはまだ分からない。極悪人ならばあまりよろしくないものだ。
パッチリした瞳と、くすみのない金髪。そして健康的な小麦色の肌。
妖精であるチャットでさえも、美女であると分かった。
見た目は良いが、どんな人物かはまだ分からない。極悪人ならばあまりよろしくないものだ。
「え?これって……。」
文章を読んでも、途中までは特に違和感を覚えなかった。
何でも彼女の身体の持ち主は、テトラという名前でかつて海賊団の頭だったという。
別にそれがどうしたというわけでもない。彼女も海賊ぐらいはグレートベイで見たことがある。
だが、後半の文章に、どこか引っかかるものがあった。
何でも彼女の身体の持ち主は、テトラという名前でかつて海賊団の頭だったという。
別にそれがどうしたというわけでもない。彼女も海賊ぐらいはグレートベイで見たことがある。
だが、後半の文章に、どこか引っかかるものがあった。
(あいつが言ってたゼルダって……この人なの?
というか今の私の身体がテトラで、テトラの正体がゼルダ?ややこしいわね……。)
というか今の私の身体がテトラで、テトラの正体がゼルダ?ややこしいわね……。)
そこに書いてあったのは、旅の仲間から何度も聞いた名前。
そして、彼女の冒険のカギになった、時のオカリナの持ち主の名前。
そして、彼女の冒険のカギになった、時のオカリナの持ち主の名前。
「ふ~ん。あいつ、こんな綺麗な人と会っていたんだ……。でも、どこかイメージと違うわね。」
チャットには知る由もないことだが、彼女が相棒から聞いたゼルダと、今の肉体は違う者だ。
尤も、少なくとも今はどうでもいいことだが。
続いて支給品を探るも、武器らしい武器は無かった。
旅仲間が使っていたものが1つだけあったぐらいだ。
尤も、少なくとも今はどうでもいいことだが。
続いて支給品を探るも、武器らしい武器は無かった。
旅仲間が使っていたものが1つだけあったぐらいだ。
(あ~、人間の身体って、不便なのね!!)
それからすぐに、チャットの目の前に降りかかったのは、疲労だった。
肉体は体力に優れた海賊であるが、、それはそうとして妖精であった彼女は、道を歩くという行為に慣れていない。
何度か石や木の根っこに躓き、道で滑り落ちかけた。
しかも場所は、足場の悪い山道だ。
羽のある生物なら平地も坂道も、全く関係なく進めるが、二本足で歩くとそういうわけにはいかない。
肉体は体力に優れた海賊であるが、、それはそうとして妖精であった彼女は、道を歩くという行為に慣れていない。
何度か石や木の根っこに躓き、道で滑り落ちかけた。
しかも場所は、足場の悪い山道だ。
羽のある生物なら平地も坂道も、全く関係なく進めるが、二本足で歩くとそういうわけにはいかない。
とりあえず、山を下りて誰か探そうとした。
リンクやタルミナの住人達も、別の肉体でいるかもしれないと考えて。
リンクやタルミナの住人達も、別の肉体でいるかもしれないと考えて。
身体をあちこちぶつけながらも、山を下りて行くと、その向こうに人が見えた。
「そ、そこに誰かいるの!?」
声の主は、チャットが近づく前に話かけてきた。
暗い中姿を掴むのに手間取ったが、その姿はチャットにとって、奇妙に映った。
姿形は人間のものだが、衣装は完全に異なっている。
袖口がやたら広く、腰の部分にベルト状の布を巻いている。
手足の裾が山を歩くのには向いてないほど長く、歩くたびに装身具がじゃらじゃらと鳴る。
リンク達が来ているのが洋服だとするなら、和服というものに近い。
暗い中姿を掴むのに手間取ったが、その姿はチャットにとって、奇妙に映った。
姿形は人間のものだが、衣装は完全に異なっている。
袖口がやたら広く、腰の部分にベルト状の布を巻いている。
手足の裾が山を歩くのには向いてないほど長く、歩くたびに装身具がじゃらじゃらと鳴る。
リンク達が来ているのが洋服だとするなら、和服というものに近い。
「ここにいるわ。早速だけど一つ聞きたいことがあるの。」
そして面立ちも人間のものだが、あまりチャットが見たことの無い雰囲気だった。
リンクや多くのタルミナの住人のように眼鼻のくっきりした顔立ちではなく、どちらかというと細い目と平たい顔をしている。
髪はカラスの羽毛のような黒色で、頭上でリボンのような形に結ってあった。
リンクや多くのタルミナの住人のように眼鼻のくっきりした顔立ちではなく、どちらかというと細い目と平たい顔をしている。
髪はカラスの羽毛のような黒色で、頭上でリボンのような形に結ってあった。
「この私に向かってそんな口の利き方を……いや、いいわ。何でも聞きなさい。」
目の前の女性の正体は、チャットが知っている人では無いことは察しがついた。
彼女はゆっくりとチャットの所に近づいてくる。
彼女はゆっくりとチャットの所に近づいてくる。
「ここに来るまで、誰かに会わなかった?」
「いえ、会ったのはあなただけよ。それよりも……。」
「どうかし……!!」
「いえ、会ったのはあなただけよ。それよりも……。」
「どうかし……!!」
平たい顔の女性が全て言葉を話し終わる前に、チャットはすぐに飛び退いた。
それは、彼女が冒険で身に着けた、観察力によるものだ。
目の前の相手が、ずっと右腕の先を見せていないことに、違和感を覚えたのだ。
それは、彼女が冒険で身に着けた、観察力によるものだ。
目の前の相手が、ずっと右腕の先を見せていないことに、違和感を覚えたのだ。
「アンタ…どうして……。」
「私が永遠の命を得るために決まっているじゃないの。」
「私が永遠の命を得るために決まっているじゃないの。」
彼女の表情は、邪悪そのものだった。
4人の巨人に取りついた怪物みたく、この女性の肉体にも悪が宿っているのか。
それとも、元々悪の肉体だったのか。はたまた、肉体精神どちらも悪なのか。
4人の巨人に取りついた怪物みたく、この女性の肉体にも悪が宿っているのか。
それとも、元々悪の肉体だったのか。はたまた、肉体精神どちらも悪なのか。
敵が殺し合いに乗っていたことを見破れたのは良い。
だが、その先が問題だ。
観察力だけで相手に勝てるのなら、格闘技の試合を繰り返し見て、寝てれば問題ない。
ザックから道具を取り出すことが出来ず、おまけに慣れない人間の身体。
初動は良くても、第二、第三の動作となると、必然的にボロが出てくる。
だが、その先が問題だ。
観察力だけで相手に勝てるのなら、格闘技の試合を繰り返し見て、寝てれば問題ない。
ザックから道具を取り出すことが出来ず、おまけに慣れない人間の身体。
初動は良くても、第二、第三の動作となると、必然的にボロが出てくる。
「きゃっ…」
逃げようとした矢先に、石に躓いて転んでしまった。
妖精というのは、大体足元に気をくばらなくても転ばない生き物だから、そうなるのも仕方がない。
妖精というのは、大体足元に気をくばらなくても転ばない生き物だから、そうなるのも仕方がない。
「死ね!!」
「ウソでしょ……リンク…たすけ……。」
「ウソでしょ……リンク…たすけ……。」
手にした包丁で、チャットを刺そうとする。
だが、破裂音が山に響いたと思うと、武器は明後日の方に飛んで行った。
だが、破裂音が山に響いたと思うと、武器は明後日の方に飛んで行った。
□
「助けてくれたの?」
破裂音の方にいたのは、またもや黒目黒髪の少女だった。
着こなしこそは全く違うものの、同じ国かもしれないとチャットは思う。
着こなしこそは全く違うものの、同じ国かもしれないとチャットは思う。
「私はただ近くを通っただけだ。」
その手に握られていたのは、長い鉄の棒だった。
いや、その言い方は間違いがある。
鉄の棒ならば破裂音を出したり、煙を吐き出したり、何かを飛ばしたりすることは無い。
チャットも、包丁を持った女性、ヒミコも知らない銃という武器だ。
いや、その言い方は間違いがある。
鉄の棒ならば破裂音を出したり、煙を吐き出したり、何かを飛ばしたりすることは無い。
チャットも、包丁を持った女性、ヒミコも知らない銃という武器だ。
「私の願いを邪魔するか!!」
口の中の唾をすべて吐き出さんばかりの勢いで、少女目掛けて怒鳴る。
年配の人間に怒鳴られても、少女は慌てず騒がず、じっとその顔を見据えていた。
いや、正確には顔ではない。その後ろだ。
マタギをやっていた少女には、常人には見えない物、業の炎が見えた。
ヒミコを見つけられたのも、その力によるものだ。
それは肉体が変わっても、ずっとそのままだった。
年配の人間に怒鳴られても、少女は慌てず騒がず、じっとその顔を見据えていた。
いや、正確には顔ではない。その後ろだ。
マタギをやっていた少女には、常人には見えない物、業の炎が見えた。
ヒミコを見つけられたのも、その力によるものだ。
それは肉体が変わっても、ずっとそのままだった。
「異形に願いを望むか。」
その声は静かで、それでいて重かった。
いくつ修羅場をくぐれば、刃物を持った人間と面と向かって話せるだろうか。
リンクと同じように冒険をしたチャットでさえ、割り込むことが出来なかった。
いくつ修羅場をくぐれば、刃物を持った人間と面と向かって話せるだろうか。
リンクと同じように冒険をしたチャットでさえ、割り込むことが出来なかった。
「その通りじゃ!ヤマタイ国の女王として、いつまでも若く、美しくあらねばならぬ!!」
「無意味な願いだ。人は死んで、承ったものを土に返さねばならない。」
「無意味な願いだ。人は死んで、承ったものを土に返さねばならない。」
銃口は、なおもヒミコを狙っていた。
撃つつもりはない。殺す為ではなく、救うための銃だ。
撃つつもりはない。殺す為ではなく、救うための銃だ。
「老いの恐怖すら感じたことの無い餓鬼が!そこまで言うなら食ろうてくれるわ!!」
(業の炎が……!!)
(業の炎が……!!)
彼女がそう叫ぶと、邪悪な力が集まって行った。
並の人間ならばそれだけで嘔吐してしまうほどの不快な空気を、2人の少女は肌で感じる。
そこにはヒミコの姿はなく、代わりに巨大な怪物が立っていた。
並の人間ならばそれだけで嘔吐してしまうほどの不快な空気を、2人の少女は肌で感じる。
そこにはヒミコの姿はなく、代わりに巨大な怪物が立っていた。
「八岐大蛇……まさか本物に出会うことになるとはな。」
そこにいたのは、日本人なら誰もが知る神話の怪物。
緑色の鱗を持ち、真っ赤に光る10の目と、5つの鎌首をもたげている。
5つの蛇の尾が集まる先に、どっしりとした身体があり、一歩歩いただけで山が揺れた。
緑色の鱗を持ち、真っ赤に光る10の目と、5つの鎌首をもたげている。
5つの蛇の尾が集まる先に、どっしりとした身体があり、一歩歩いただけで山が揺れた。
「こ、こんなの弱点なんて分からないよ!!」
立ち上がったチャットは、その姿に震える。
かつてリンクと共に戦って来た怪物と酷似しているが、戦いを打破して来たお面もなく、そもそも彼自身がいない。
かつてリンクと共に戦って来た怪物と酷似しているが、戦いを打破して来たお面もなく、そもそも彼自身がいない。
「私がどうにかする!!」
マタギの少女は地面を蹴り、オロチへと向かって行った。
目の前の相手は、山の理を無視した怪物だ。
それがあまつさえ人に害を齎すというのならば、殺さねばならない。
鬼となり、大蛇(おろち)を討つ。それが少女の、椿鬼の役目だ。
目の前の相手は、山の理を無視した怪物だ。
それがあまつさえ人に害を齎すというのならば、殺さねばならない。
鬼となり、大蛇(おろち)を討つ。それが少女の、椿鬼の役目だ。
銃が再びうなりを上げ、銃弾がオロチの鼻先に命中する。
だが、大してダメージを受けた様子は無い。緑の鱗が僅かながら剥げただけだ。
だが、大してダメージを受けた様子は無い。緑の鱗が僅かながら剥げただけだ。
5つの頭のうち、1つが彼女を噛み砕こうとする。
人間の子供など一飲みに出来る大きさからして、一撃でも食らえば致命傷だ。
直線的な動きしか出来ないことを見破り、すっと横に躱す。
人間の子供など一飲みに出来る大きさからして、一撃でも食らえば致命傷だ。
直線的な動きしか出来ないことを見破り、すっと横に躱す。
「まだ!次来るよ!!」
チャットが声を出す。
だが、大蛇の恐ろしい所は、人間の5倍の索敵範囲を持つところだ。
続けざまに躱した先から、別の頭が迫り来る。
だが、大蛇の恐ろしい所は、人間の5倍の索敵範囲を持つところだ。
続けざまに躱した先から、別の頭が迫り来る。
「顔に銃を撃っても効かない…だが……!!」
二発目に狙ったのは、オロチの舌だ。
先端が大きく裂けた舌を撃たれ、けたたましい悲鳴が上がる。
先端が大きく裂けた舌を撃たれ、けたたましい悲鳴が上がる。
(口の中が外より柔らかいのは変わらないか……)
椿鬼が撃ったことがあるのは、山に住む動物だけではない。
憎しみに囚われ夜叉になった人間や、山の念が具現化した怪物とも戦ったことがある。
憎しみに囚われ夜叉になった人間や、山の念が具現化した怪物とも戦ったことがある。
「こ……こむすめぇぇっ!!」
口の先から血を垂らし、怪物は怒る。
だが、5つの頭を振り回した攻撃を、椿鬼は一つ一つ躱していく。
だが、5つの頭を振り回した攻撃を、椿鬼は一つ一つ躱していく。
「後ろから来てるよ!!」
「助かる!!」
「助かる!!」
チャットの助言もあり、未だ傷一つその身に付いていない。
もしもの話、本物のやまたのおろちならば、彼女でも太刀打ち出来なかっただろう。
だが、チャットが人間の身体を動かすのに苦労したのと同様、ヒミコもまた怪物を動かすのに苦労しているのだ。
もしもの話、本物のやまたのおろちならば、彼女でも太刀打ち出来なかっただろう。
だが、チャットが人間の身体を動かすのに苦労したのと同様、ヒミコもまた怪物を動かすのに苦労しているのだ。
(しかし……この身体……。)
縦横無尽に迫り来るおろちの攻撃をいなしながら、椿鬼は一つの疑問が浮かんだ。
自分の身体が、異様なほど危機に対して敏感だということだ。
そして、攻撃に対して躊躇いがないということだ。
それがマタギとしての経験ではなく、この少女の経験だとは身体で分かった。
自分の身体が、異様なほど危機に対して敏感だということだ。
そして、攻撃に対して躊躇いがないということだ。
それがマタギとしての経験ではなく、この少女の経験だとは身体で分かった。
(一体、どんな修羅場を潜って来たんだ?)
見た目は普通の少女だった。だというのに、全く戦うのに苦労がいらない。
脚力こそは劣るが、危機察知能力のおかげで相手の先を読むことが出来る。
椿鬼は自分の肉体の説明書を読んでいない。
読む前にヒミコが出す業の炎を察知し、いち早くその場所へ向かったのだ。
だが、今の肉体の持ち主が、過酷な運命を生きた人間なのは分かった。
脚力こそは劣るが、危機察知能力のおかげで相手の先を読むことが出来る。
椿鬼は自分の肉体の説明書を読んでいない。
読む前にヒミコが出す業の炎を察知し、いち早くその場所へ向かったのだ。
だが、今の肉体の持ち主が、過酷な運命を生きた人間なのは分かった。
「上からくるよ!!」
「分かった!!」
「分かった!!」
頭上から迫るオロチの噛みつきを、地面を転がって躱す。
オロチの牙にかかったのは、人では無く土のみだ。
すかさず片目に、銃弾を撃ち込む。
甲高い悲鳴と共に、血の涙を流した。
オロチの牙にかかったのは、人では無く土のみだ。
すかさず片目に、銃弾を撃ち込む。
甲高い悲鳴と共に、血の涙を流した。
(目玉になら通じるか……。)
いくら頑丈な骨や筋肉、鱗を持つ怪物でも、どうしても強化できない部分はある。
全身の全てが石のように硬いのならば、動くことは難しい。
目玉はそのよい例だ。
全身の全てが石のように硬いのならば、動くことは難しい。
目玉はそのよい例だ。
「こむすめぇ!!よくも私の顔を!!」
10ある目玉の内、1つを潰されたヒミコが、さらなる怒りを燃やす。
再び口を大きく開け、噛みついて来るかと思ったらそれは違った。
再び口を大きく開け、噛みついて来るかと思ったらそれは違った。
「気を付けて!あいつ、火を吐いて来る!!」
チャットはオロチと戦った経験はないが、様々な異形と戦った経験はある。
口元がドドンゴに似ていたから、噛みついて来るだけじゃなく、遠距離から炎を吐いて来るのだと考えた。
事実、彼女の言う通り、オロチは炎を吐いて来た。
椿鬼の見える業の炎ではない。人を焼き殺す本物の炎だ。
チャットの助言があったため、いち早く椿鬼は後方に退き、炎の範囲から逃れた。
口元がドドンゴに似ていたから、噛みついて来るだけじゃなく、遠距離から炎を吐いて来るのだと考えた。
事実、彼女の言う通り、オロチは炎を吐いて来た。
椿鬼の見える業の炎ではない。人を焼き殺す本物の炎だ。
チャットの助言があったため、いち早く椿鬼は後方に退き、炎の範囲から逃れた。
「ホホホ……見た目は醜いが凄い力だ……。」
獲物を殺すことこそ出来なかったヒミコだが、悦に浸っている。
炎を吐いたということは、銃を撃てば最悪の場合、暴発も免れないということだ。
だが、問題はそれだけではないことを、2人はすぐに気づいた。
炎を吐いたということは、銃を撃てば最悪の場合、暴発も免れないということだ。
だが、問題はそれだけではないことを、2人はすぐに気づいた。
「ちょっと、大丈夫?すごい汗よ!!?」
燃える草や木を見た瞬間か、はたまたパチパチという焼ける音を聞いた瞬間か。
突然、椿鬼の動悸が異様に激しくなった。
息が思うように吸えないし、吐けない。
辺りが炎により熱されたというのに、身体が異様なほど冷え、それでいて汗が噴き出てくる。
そして、今にもオロチを殺さねばならないという衝動に駆られる。
突然、椿鬼の動悸が異様に激しくなった。
息が思うように吸えないし、吐けない。
辺りが炎により熱されたというのに、身体が異様なほど冷え、それでいて汗が噴き出てくる。
そして、今にもオロチを殺さねばならないという衝動に駆られる。
「心配ない……少し疲れただけだ……。」
どうにか心を鎮めようとする。
すぐに分かった。
自分の肉体は、炎に対して特別なトラウマを持っているのだと。
事実、彼女の肉体の野崎春花という少女は、家を家族ごと燃やされた地獄を経験している。
たとえ魂が変わろうと、骨の髄まで刻み込まれた想いは消えない。
すぐに分かった。
自分の肉体は、炎に対して特別なトラウマを持っているのだと。
事実、彼女の肉体の野崎春花という少女は、家を家族ごと燃やされた地獄を経験している。
たとえ魂が変わろうと、骨の髄まで刻み込まれた想いは消えない。
やってはいけないと分かっているのに、衝動的に銃の引き金を引こうとする。
「やめて!!」
チャットは銃の仕組みについて知らない。
だが、リンクが持っていた爆弾のように、何らかの破裂を用いた武器なのは分かった。
そして彼が、火が付いた状態で爆弾を間違って出してしまい、自分がその爆発を受けた失敗を目の当たりにしている。
だが、リンクが持っていた爆弾のように、何らかの破裂を用いた武器なのは分かった。
そして彼が、火が付いた状態で爆弾を間違って出してしまい、自分がその爆発を受けた失敗を目の当たりにしている。
「……!!…すまない!!」
耳元で大声を出したため、どうにか我に返ることが出来た。
だが、晒した隙は大きい。正面からオロチの大口が、2人まとめて飲み込もうとしてくる。
だが、晒した隙は大きい。正面からオロチの大口が、2人まとめて飲み込もうとしてくる。
「そうだ……これで!!」
チャットはザックから、旅の仲間が持っていた道具を取り出した。
パン、という破裂音と、激しい閃光が走る。
パン、という破裂音と、激しい閃光が走る。
「な……。」
予想通り、オロチは一瞬怯んだ。
チャットが投げたデクの実は、攻撃力こそ無いが、モンスターを怯ませる力がある。
視覚も聴覚も、人間の5倍はあるが、それ故デクの実から受ける影響も大きい。
チャットが投げたデクの実は、攻撃力こそ無いが、モンスターを怯ませる力がある。
視覚も聴覚も、人間の5倍はあるが、それ故デクの実から受ける影響も大きい。
「逃げるわよ!!」
チャットは椿鬼の上着の袖を掴み、すぐに走り出した。
今の状況では、明らかに自分たちが不利だ。
銃が使えない上に、仲間の精神が不安定な状態だ。
逃げ道はある以上は、逃げた方が良いと判断した。
今の状況では、明らかに自分たちが不利だ。
銃が使えない上に、仲間の精神が不安定な状態だ。
逃げ道はある以上は、逃げた方が良いと判断した。
やはり二本足で走るのは難しい。
何度か地面に躓いて、転びそうになった。
人を引っ張っているのだから猶更である。
何度か地面に躓いて、転びそうになった。
人を引っ張っているのだから猶更である。
「前!!前見ろ!!」
「え?」
「え?」
だが、今度は足元にばかり注意していたため、前に気を配っていなかった。
椿鬼は冷静さを取り戻すも、時すでに遅し。
2人で崖から、真っ逆さまに落ちていった。
椿鬼は冷静さを取り戻すも、時すでに遅し。
2人で崖から、真っ逆さまに落ちていった。
「わああああああああ!!!」
チャットの旅仲間が、高所から落ちていた時のような叫びだ。
椿鬼は叫ばない。重力の言いなりになっている中、カバンに猟銃を持ってない方の手を伸ばした。
出したのは、取っ手の付いた、茶色の布地のようなもの。
これまたチャットが知らぬハイラルで作られたものだ。
椿鬼は叫ばない。重力の言いなりになっている中、カバンに猟銃を持ってない方の手を伸ばした。
出したのは、取っ手の付いた、茶色の布地のようなもの。
これまたチャットが知らぬハイラルで作られたものだ。
「掴まれ!!」
2つある取っ手の内、それぞれ1つずつの手で掴む。
どうにかして、怪我することなく山から出ることに成功した。
どうにかして、怪我することなく山から出ることに成功した。
(いつもと勝手が違うからといって、あんなことになるとは…自分が嫌になる。まだまだ未熟だ。)
「助かったわ。ありがとうね。」
「礼を言うのは私の方だ。アンタが助けてくれなければ、あの化け物に食われていた。」
「助かったわ。ありがとうね。」
「礼を言うのは私の方だ。アンタが助けてくれなければ、あの化け物に食われていた。」
互いに感謝を告げると、すぐに椿鬼は山の方に向かって歩き出した。
必死でチャットは引き止める。
必死でチャットは引き止める。
「ちょっと待ってよ!?どこに行くの?」
「あの化け物を殺しに行く。世話になった。」
「待って待って!!アンタ一人じゃアイツを倒せないって分かったばかりじゃないの!!」
「だからと言って、山まで傷付ける不浄の者を止めぬわけにはいかない。」
「あの化け物を殺しに行く。世話になった。」
「待って待って!!アンタ一人じゃアイツを倒せないって分かったばかりじゃないの!!」
「だからと言って、山まで傷付ける不浄の者を止めぬわけにはいかない。」
あの5つ頭の大蛇は、自然の理を逸したどころか、平然と踏み躙るということが分かった。
普通の動物は飢えを満たす以外には自然を壊さない。
だが怪物が吐く炎は、山を焼き、木々を燃やした。
不死を求めることといい、自然の中で生きる生物ではなく、災害のようなものだ。
普通の動物は飢えを満たす以外には自然を壊さない。
だが怪物が吐く炎は、山を焼き、木々を燃やした。
不死を求めることといい、自然の中で生きる生物ではなく、災害のようなものだ。
「待ってって言ってるでしょ!!」
チャットは頭を痛める。
自分に会う人たちは、なぜこうも向こう見ずばかりなのだろう。
困っている者あれば事あるごとに話しかけ、悪意をばらまいている者あれば退治しに行こうとする、緑帽子の少年を思い出した。
自分に会う人たちは、なぜこうも向こう見ずばかりなのだろう。
困っている者あれば事あるごとに話しかけ、悪意をばらまいている者あれば退治しに行こうとする、緑帽子の少年を思い出した。
「あのね。協力して欲しいことがあるの。」
チャットは話をつづけた。
「私、2人ほど探している人がいるのよね。1人だけじゃさっきみたいな危ないヤツに襲われるかもしれないし、一緒に探して欲しいの。」
彼女は休むことなく話を続ける。
椿鬼が歩みを止めると、さらに言葉を畳みかけた。
椿鬼が歩みを止めると、さらに言葉を畳みかけた。
「一人は私の弟で、もう一人は私の……なんというか、その、仲間なのよ!
感謝の気持ちがあるなら、少しぐらい付き合ってくれてもいいんじゃないの?」
(………。)
感謝の気持ちがあるなら、少しぐらい付き合ってくれてもいいんじゃないの?」
(………。)
何処か図々しさを感じたが、悪い気持ちは感じなかった。
かつて罠にかかった時、老婆の一団に助けられたことがあるが、あの時のような不自然な感じはしなかった。
かつて罠にかかった時、老婆の一団に助けられたことがあるが、あの時のような不自然な感じはしなかった。
「はい、キマリ!!私チャット。よろしくね!!」
「……仕方がない。探しに行こう。」
「そうと決まったらグズグズしないで、アイツと弟を見つけるわよ!!」
「……仕方がない。探しに行こう。」
「そうと決まったらグズグズしないで、アイツと弟を見つけるわよ!!」
【チャット@ゼルダの伝説 ムジュラの仮面】
[身体]:テトラ@ゼルダの伝説 風のタクト
[状態]:疲労(中)
[装備]:なし
[道具]:基本支給品、デクの実×9@ゼルダの伝説 ムジュラの仮面ランダム支給品0~2(武器類はない)
[思考・状況]基本方針:殺し合いには乗らない。どうにかして脱出する。
1:弟(トレイル)や相棒(リンク)もここにいるのかしら?
2:とりあえず椿鬼と共に行動する。
3:白装束と黒髪の女性(ヒミコ)には警戒
[備考]ムジュラの魔神討伐後の参戦です。
[身体]:テトラ@ゼルダの伝説 風のタクト
[状態]:疲労(中)
[装備]:なし
[道具]:基本支給品、デクの実×9@ゼルダの伝説 ムジュラの仮面ランダム支給品0~2(武器類はない)
[思考・状況]基本方針:殺し合いには乗らない。どうにかして脱出する。
1:弟(トレイル)や相棒(リンク)もここにいるのかしら?
2:とりあえず椿鬼と共に行動する。
3:白装束と黒髪の女性(ヒミコ)には警戒
[備考]ムジュラの魔神討伐後の参戦です。
【椿鬼@ツバキ】
[身体]:野崎春花@ミスミソウ
[状態]:疲労(中)
[装備]:谷垣源次郎の猟銃@ゴールデンカムイ
[道具]:基本支給品、パラセール@ゼルダの伝説 ブレスオブザワイルド ランダム支給品0~1
[思考・状況]基本方針:殺し合いには乗らない。人の道を外れる者がいれば救う
1:ひとまずはチャットと行動する
2:この世界は一体?
3:白装束と黒髪の女性(ヒミコ)には警戒
[備考]
少なくとも『一輪花』,『臓腑の檻』の話は経験済みです。
[身体]:野崎春花@ミスミソウ
[状態]:疲労(中)
[装備]:谷垣源次郎の猟銃@ゴールデンカムイ
[道具]:基本支給品、パラセール@ゼルダの伝説 ブレスオブザワイルド ランダム支給品0~1
[思考・状況]基本方針:殺し合いには乗らない。人の道を外れる者がいれば救う
1:ひとまずはチャットと行動する
2:この世界は一体?
3:白装束と黒髪の女性(ヒミコ)には警戒
[備考]
少なくとも『一輪花』,『臓腑の檻』の話は経験済みです。
【ヒミコ@火の鳥 黎明編】
[身体]:ヒミコ@ドラゴンクエストIII そして伝説へ
[状態]:健康 愉悦
[装備]:アリシアのナイフ@LIVE A LIVE
[道具]:基本支給品、ランダム支給品0~2
[思考・状況]基本方針:優勝し、永遠の命を得る
1:オロチに変身するのは醜いが、いざという時は仕方がない
2:あの小娘共。次会えば喰ってやる。
[備考]本編死亡後からの参戦です。
[身体]:ヒミコ@ドラゴンクエストIII そして伝説へ
[状態]:健康 愉悦
[装備]:アリシアのナイフ@LIVE A LIVE
[道具]:基本支給品、ランダム支給品0~2
[思考・状況]基本方針:優勝し、永遠の命を得る
1:オロチに変身するのは醜いが、いざという時は仕方がない
2:あの小娘共。次会えば喰ってやる。
[備考]本編死亡後からの参戦です。
【支給品紹介】
【谷垣源次郎の猟銃@ゴールデンカムイ】
椿鬼に支給された猟銃。同じマタギが持っていた武器で、村田銃という種類である。
これは巧妙にコピーされた銃なのか谷垣の物なのかは不明だが、後者ならば彼がドジマタギだったということでいいだろう。
椿鬼に支給された猟銃。同じマタギが持っていた武器で、村田銃という種類である。
これは巧妙にコピーされた銃なのか谷垣の物なのかは不明だが、後者ならば彼がドジマタギだったということでいいだろう。
【デクの実×9@ゼルダの伝説シリーズ】
チャットに支給されたアイテム。投げても威力は無いが、大きな音と光を出す為、敵を怯ませる力がある。
チャットに支給されたアイテム。投げても威力は無いが、大きな音と光を出す為、敵を怯ませる力がある。
【パラセール@ゼルダの伝説 ブレスオブザワイルド】
椿鬼に支給された道具。空中で掲げればたちどころに開き、落下死を防ぐことが出来る。
また、風向きと持ち主の能力次第で、一定時間滑空が可能。
椿鬼に支給された道具。空中で掲げればたちどころに開き、落下死を防ぐことが出来る。
また、風向きと持ち主の能力次第で、一定時間滑空が可能。
【アリシアのナイフ@LIVE A LIVE】
ヒミコに支給されたナイフ。特に能力は無いが、持ち主はこのナイフで自殺しているが、この世界での新たな持ち主はどうなのだろうか?
ヒミコに支給されたナイフ。特に能力は無いが、持ち主はこのナイフで自殺しているが、この世界での新たな持ち主はどうなのだろうか?
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