◆
「っぶねぇ……!」
身を捩らせた直後、顔面スレスレの位置を熱線が通過。
生身であれば皮膚が焼け落ち、そもそも躱すことも難しかったろう。
悪態一つを言い切らない内に次弾が発射、舌を打つ暇すら惜しいと回避。
命中を許したとて即死には至らないが、不要に傷を増やす意味もあるまい。
生身であれば皮膚が焼け落ち、そもそも躱すことも難しかったろう。
悪態一つを言い切らない内に次弾が発射、舌を打つ暇すら惜しいと回避。
命中を許したとて即死には至らないが、不要に傷を増やす意味もあるまい。
引き金を引く前じゃない、引かれた後で躱す事が出来る。
如何に身体機能へ優れた者とて、困難を極めるどころじゃない芸当。
正しく超人の域に踏み込めるのが、カードデッキの機能だ。
自身へ向かう熱線の正しく視認して、望んだ通りの動きが可能。
改めてゾルダの性能に舌を巻きながら、こちらも攻撃に移らせてもらう。
如何に身体機能へ優れた者とて、困難を極めるどころじゃない芸当。
正しく超人の域に踏み込めるのが、カードデッキの機能だ。
自身へ向かう熱線の正しく視認して、望んだ通りの動きが可能。
改めてゾルダの性能に舌を巻きながら、こちらも攻撃に移らせてもらう。
右手の召喚機は見た目に違わず、武器としても優秀だ。
Dゲームで磨いた持ち前の技能に加え、備わった機能が射撃をアシスト。
足を止めぬままにトリガーに力を籠め、銃弾を連続し放つ。
ミラーモンスター程度なら全弾命中の蜂の巣だが、敵もまた自我を持たぬとはいえ仮面ライダー。
オルフェノクの王を守る三本のベルトの中でも、最もハイスペックを誇るのがデルタだ。
片手で銃弾を叩き落としながら、執拗にゾルダを狙い撃つ。
Dゲームで磨いた持ち前の技能に加え、備わった機能が射撃をアシスト。
足を止めぬままにトリガーに力を籠め、銃弾を連続し放つ。
ミラーモンスター程度なら全弾命中の蜂の巣だが、敵もまた自我を持たぬとはいえ仮面ライダー。
オルフェノクの王を守る三本のベルトの中でも、最もハイスペックを誇るのがデルタだ。
片手で銃弾を叩き落としながら、執拗にゾルダを狙い撃つ。
遠距離戦が主体のライダー同士、暫しの膠着状態を見せる。
埒が明かないと先に判断を下したのはゾルダ、マグナバイザーの連射以外の方法を選択。
腹部に伸びた手が望みのカードを引き抜き、得物のスロット部分へ装填。
残り一つの動作で読み込みが完了するも、させじとデルタも阻止に動く。
埒が明かないと先に判断を下したのはゾルダ、マグナバイザーの連射以外の方法を選択。
腹部に伸びた手が望みのカードを引き抜き、得物のスロット部分へ装填。
残り一つの動作で読み込みが完了するも、させじとデルタも阻止に動く。
「なっ……」
フォトンブラッド弾を撃ちっ放しで疾走、走力を如何なく発揮し距離を詰める。
カードの読み込みを優先するか、中断し迎撃に移るか。
一瞬の躊躇から生じた隙を掻い潜り、デルタの拳が唸りを上げた。
顔面を揺さぶる衝撃に呻き、すかさず叩き込まれる二撃目の殴打。
殴り飛ばされ大きく後退した瞬間、一気に勝負を決めに出る。
カードの読み込みを優先するか、中断し迎撃に移るか。
一瞬の躊躇から生じた隙を掻い潜り、デルタの拳が唸りを上げた。
顔面を揺さぶる衝撃に呻き、すかさず叩き込まれる二撃目の殴打。
殴り飛ばされ大きく後退した瞬間、一気に勝負を決めに出る。
『EXCEED CHARGE』
銃口部分へフォトンブラッドを収束、撃ち出された弾がゾルダに突き刺さる。
三角錐状のポインダーに固定され、拘束が済めば後はこっちのもの。
数多のオルフェノクを灰に還したように、必殺の蹴りで終わらせに掛かった。
三角錐状のポインダーに固定され、拘束が済めば後はこっちのもの。
数多のオルフェノクを灰に還したように、必殺の蹴りで終わらせに掛かった。
「舐めんな……!」
しかし、簡単に倒されると思ってもらっては困る。
みっともなかろうと足掻き続けるのは、Dゲームの時から変わらない。
右手をどうにか動かし、召喚機のスロット部分を腿に当て強引に押し込んだ。
みっともなかろうと足掻き続けるのは、Dゲームの時から変わらない。
右手をどうにか動かし、召喚機のスロット部分を腿に当て強引に押し込んだ。
『AD VENT』
カードの装填自体は済んでいたのが功を為し、効果を発動。
ミラーワールドより現れた、重武装の召喚モンスター。
マグナギガが主の危機を救うべく、銃弾をばら撒く。
跳躍し蹴りを放つ体勢だったデルタは、予期せぬ横槍で撃ち落とされる。
技が不発に終わった事で、ゾルダの拘束も解除。
同じ目に遭うのは御免、今度はこちらから勝負に出るまで。
ミラーワールドより現れた、重武装の召喚モンスター。
マグナギガが主の危機を救うべく、銃弾をばら撒く。
跳躍し蹴りを放つ体勢だったデルタは、予期せぬ横槍で撃ち落とされる。
技が不発に終わった事で、ゾルダの拘束も解除。
同じ目に遭うのは御免、今度はこちらから勝負に出るまで。
「助かったぜ。ついでにもう少し手伝ってくれや」
『SHOOT VEMT』
マグナギガの横に並び、新たな武装を召喚。
肩部に装着した2門のエネルギー砲は、マグナギガの脚部を模したもの。
主と共にモンスターも標的へ狙いを付け、大砲がデルタを睨み付けた。
起き上がった時には既に手遅れ、ライダーとモンスターによる砲撃は放たれた後。
回避はおろか、咄嗟に身を庇う真似すら出来ずに命中。
消し飛んだ後に残るのは、破壊に巻き込まれたアスファルトだけだった。
肩部に装着した2門のエネルギー砲は、マグナギガの脚部を模したもの。
主と共にモンスターも標的へ狙いを付け、大砲がデルタを睨み付けた。
起き上がった時には既に手遅れ、ライダーとモンスターによる砲撃は放たれた後。
回避はおろか、咄嗟に身を庇う真似すら出来ずに命中。
消し飛んだ後に残るのは、破壊に巻き込まれたアスファルトだけだった。
○
「せやああああああっ!!」
抜け切らない消耗と、予定外の足止め。
それらによって生じる焦燥を、振り払うように気合をあえて声に出す。
思考を乱して勝てる戦いは一つもないと、この半日で十分思い知った。
青い衣装を靡かせ、マジアアズールが斬り掛かる。
それらによって生じる焦燥を、振り払うように気合をあえて声に出す。
思考を乱して勝てる戦いは一つもないと、この半日で十分思い知った。
青い衣装を靡かせ、マジアアズールが斬り掛かる。
デスゲームで繰り広げられるのは、元いた世界での戦いとは全く異なる。
幾度も辱められ、時に被虐体質へ堕ちた事さえあったが。
命だけは奪われずに済んだ、エノルミータ相手の時と違い。
一切の情け容赦なく殺しに掛かられ、死体がまともに残るかも怪しい本物の殺し合いだ。
激怒戦騎に始まり、宇蟲王や救世のライダー。
そして神殺しと対峙して来たマジアアズールが、今になり己が剣に躊躇を宿しはしない。
幾度も辱められ、時に被虐体質へ堕ちた事さえあったが。
命だけは奪われずに済んだ、エノルミータ相手の時と違い。
一切の情け容赦なく殺しに掛かられ、死体がまともに残るかも怪しい本物の殺し合いだ。
激怒戦騎に始まり、宇蟲王や救世のライダー。
そして神殺しと対峙して来たマジアアズールが、今になり己が剣に躊躇を宿しはしない。
戦意に翳り無し、一刀両断で終わらせる気概の斬撃。
だが簡単に決着が付く敵ではないのもまた、揺るぎない事実。
双剣を組み合わせたかの形状の弓が、魔法少女の一撃を防いだ。
だが簡単に決着が付く敵ではないのもまた、揺るぎない事実。
双剣を組み合わせたかの形状の弓が、魔法少女の一撃を防いだ。
ゲイツ・カリスアーマーが語るべき言葉は持たない。
最低最悪の魔王に抗ったレジスタンスに非ず、所詮はデータを実体化させた虚像。
かといって、強さはオリジナルにも引けを取らない。
防御体勢を崩さぬまま弦を引き絞る動作に出て、至近距離で光矢を発射。
不死の生物の強固な外皮も貫く威力だ、マジアアズールの柔肌を焼くのは実に容易い。
最低最悪の魔王に抗ったレジスタンスに非ず、所詮はデータを実体化させた虚像。
かといって、強さはオリジナルにも引けを取らない。
防御体勢を崩さぬまま弦を引き絞る動作に出て、至近距離で光矢を発射。
不死の生物の強固な外皮も貫く威力だ、マジアアズールの柔肌を焼くのは実に容易い。
上体を捩って回避、同時に魔力を操作し氷柱を数本生成。
こちらも間近で射出すれば、空いた片腕でガードし後退。
逃がしはせぬと接近を試みるも、ゲイツはただ逃げただけじゃあない。
仮面ライダーカリスのウォッチを使っているのがどういうことか、思い知らせてやる。
こちらも間近で射出すれば、空いた片腕でガードし後退。
逃がしはせぬと接近を試みるも、ゲイツはただ逃げただけじゃあない。
仮面ライダーカリスのウォッチを使っているのがどういうことか、思い知らせてやる。
構えた弓を向け、複数本の触手を伸ばす。
プラントアンデットの能力、とは露知らず。
マジアベーゼに散々嬲られた際の苦い記憶が蘇り、顔を顰めるのも一瞬。
恐れを踏み越すように突き進み、近付く端から切り裂いていく。
プラントアンデットの能力、とは露知らず。
マジアベーゼに散々嬲られた際の苦い記憶が蘇り、顔を顰めるのも一瞬。
恐れを踏み越すように突き進み、近付く端から切り裂いていく。
「今更こんなもので……!」
止められると思ったら大間違いと、愚行の代償を刃で味合わせる。
研ぎ澄ました魔力の剣の、切れ味の深さは言うまでもない。
ひらがな文字の描かれた仮面目掛け振り下ろし、
研ぎ澄ました魔力の剣の、切れ味の深さは言うまでもない。
ひらがな文字の描かれた仮面目掛け振り下ろし、
「――っ」
背筋が粟立つ、直感的に不吉なナニカを感じた。
命が懸かった闘争を凡そ半日で経験したが故の、危機察知能力か。
理由は何にしろ、咄嗟の判断により得物に掛けた力を弱める。
急な強弱で腕が痛むも、間違いではなかったと即座に思い知った。
命が懸かった闘争を凡そ半日で経験したが故の、危機察知能力か。
理由は何にしろ、咄嗟の判断により得物に掛けた力を弱める。
急な強弱で腕が痛むも、間違いではなかったと即座に思い知った。
「痛っ……!?」
肩に走る鋭い痛みと、視界の端に飛び散る鮮血。
ゲイツを斬った筈が何故か、ダメージを受けたのはマジアアズールの方。
何が起きたかを悠長に考える余裕はなく、しかし同じ力を操る為に察しはすぐに付く。
ゲイツを斬った筈が何故か、ダメージを受けたのはマジアアズールの方。
何が起きたかを悠長に考える余裕はなく、しかし同じ力を操る為に察しはすぐに付く。
(攻撃の反射――!)
儀礼剣に攻撃を吸収する自身の真化とは、別物であるも。
仕留める勢いで斬っていればどうなったか、考えたくはない。
尤も、深々と想像を膨らませるより先にゲイツの手刀が放たれる。
ラウズカードの効果で強化済の威力だ、軽く見ずに飛び退き回避。
仕留める勢いで斬っていればどうなったか、考えたくはない。
尤も、深々と想像を膨らませるより先にゲイツの手刀が放たれる。
ラウズカードの効果で強化済の威力だ、軽く見ずに飛び退き回避。
『FINISH TIME!』
マジアアズールと距離が開いたのは、ゲイツにとって好都合。
ドライバーを操作し、高威力の技で殺しに掛かった。
浮遊するや高速で回転、人力で竜巻を起こしながら蹴りを放つ。
ドライバーを操作し、高威力の技で殺しに掛かった。
浮遊するや高速で回転、人力で竜巻を起こしながら蹴りを放つ。
(真化……ううん、ここは……)
持ち得る中で最も強力な手札を切るか否か、選んだのは後者。
代わりに取り出したのは、ここまで使わずにいた支給品。
真化程でなくとも、力の底上げは叶う。
少々不安の残る副作用はあるも、参加者ですらない虚像に足を取られてる暇はない。
迷いを握り潰し、口の中へと放る。
代わりに取り出したのは、ここまで使わずにいた支給品。
真化程でなくとも、力の底上げは叶う。
少々不安の残る副作用はあるも、参加者ですらない虚像に足を取られてる暇はない。
迷いを握り潰し、口の中へと放る。
「っ!!予想以上、ね……!」
たちまち湧き上がる高揚感と共に、全身へ力が漲る。
衝動に身を委ね剣を振るえば、さぞや快感だろうがそれは御免だ。
喪った命と、今もどこかで戦い続けてる仲間達。
彼ら彼女らの存在が、自分自身を見失わせない。
衝動に身を委ね剣を振るえば、さぞや快感だろうがそれは御免だ。
喪った命と、今もどこかで戦い続けてる仲間達。
彼ら彼女らの存在が、自分自身を見失わせない。
「そっちから向かって来たことを、後悔させてあげる!」
構えた剣に魔力を収束、凍てつく刃を生み出す。
倍以上の幅となった刀身が、ゲイツの蹴り技と激突。
互いに押し込まんと踏ん張り、やがて砕けたのは魔法少女の剣。
所詮は無駄な抵抗に過ぎぬと嗤いもせず、蹴り殺す末路を与えようとし、
倍以上の幅となった刀身が、ゲイツの蹴り技と激突。
互いに押し込まんと踏ん張り、やがて砕けたのは魔法少女の剣。
所詮は無駄な抵抗に過ぎぬと嗤いもせず、蹴り殺す末路を与えようとし、
「後悔させてあげるって言ったでしょう?」
蹴りの勢いを削ぎ、尚且つ大量の氷の破片で一時的に視界を奪う。
目論みを成功させたマジアアズールに呼びかけられ、振り返るも遅い。
もう一本の得物、片太刀バサミに魔力を付与し強化。
回避や防御に移らせる余裕を、誰がくれてやるものか。
顔面を貫き、後頭部まで切っ先が突き抜け決着は付いた。
目論みを成功させたマジアアズールに呼びかけられ、振り返るも遅い。
もう一本の得物、片太刀バサミに魔力を付与し強化。
回避や防御に移らせる余裕を、誰がくれてやるものか。
顔面を貫き、後頭部まで切っ先が突き抜け決着は付いた。
○
抜刀と共にソードスキルを発動し、姫和の身体機能が引き上げられた。
写シの使用時と異なり、肉体は生身のまま。
ダメージの肩代わりは不可能であり、攻撃を受ければ傷が付き痛みも感じる。
もとより慢心を持ち込む少女じゃあないが、刀使としての戦いと同じ感覚を引き摺るのは危険と改めて判断。
奥底で顔を出した小さな油断を踏み潰し、いざ闘争へ臨む。
写シの使用時と異なり、肉体は生身のまま。
ダメージの肩代わりは不可能であり、攻撃を受ければ傷が付き痛みも感じる。
もとより慢心を持ち込む少女じゃあないが、刀使としての戦いと同じ感覚を引き摺るのは危険と改めて判断。
奥底で顔を出した小さな油断を踏み潰し、いざ闘争へ臨む。
――水の呼吸 壱ノ型 水面斬り
鬼狩り達の戦闘技術、全集中の呼吸は日輪刀の使い手が変わっても発動に支障はない。
踏み込むや水平に斬りつける、水の呼吸の基本にして最も安定した技。
此度の敵は鬼に非ずとも、人へ仇為す類とあらば容赦は無用。
頸を狙い駆ける刀身の到達まで、残り僅か。
踏み込むや水平に斬りつける、水の呼吸の基本にして最も安定した技。
此度の敵は鬼に非ずとも、人へ仇為す類とあらば容赦は無用。
頸を狙い駆ける刀身の到達まで、残り僅か。
得物から伝わる手応えは、標的を仕留めたのと別物。
ジオウ・ブレイドアーマーは棒立ちの的ではなく、与えられた命令に従う自我無き兵隊。
召喚主が敵の殲滅を望んだ以上、むざむざと倒されてやる理由は無し。
片手の剣、ジカンギレードが日輪刀を弾き返す。
ジオウ・ブレイドアーマーは棒立ちの的ではなく、与えられた命令に従う自我無き兵隊。
召喚主が敵の殲滅を望んだ以上、むざむざと倒されてやる理由は無し。
片手の剣、ジカンギレードが日輪刀を弾き返す。
(重いな……)
膂力はこちらも強化済だが、ライダーである為か敵の方が上。
マトモに斬り合いへ興じては分が悪い、加えて得物も御刀でないなら破壊は十分起こり得る。
打ち合いは避けるべきと判断を下し、直後ブレイドが仕掛けた。
ウォッチに宿る原典の戦士同様、ラウズカードの力も当然のように使える。
ボアアンデットの能力を付与、暴走車の如き迫力で突進。
マトモに斬り合いへ興じては分が悪い、加えて得物も御刀でないなら破壊は十分起こり得る。
打ち合いは避けるべきと判断を下し、直後ブレイドが仕掛けた。
ウォッチに宿る原典の戦士同様、ラウズカードの力も当然のように使える。
ボアアンデットの能力を付与、暴走車の如き迫力で突進。
――水の呼吸 参ノ型 流流舞
猪突猛進へ、馬鹿正直に付き合ってはやらない。
流れるような足運びは、正に水流の如し。
軽やかにジオウをやり過ごし、躱しながらも一撃加える。
刀身が触れた箇所が火花を散らして、突進を強制的に中断。
小賢しい真似に出た刀使へ振り返るが、姫和が攻撃を止めたと言った覚えはない。
流れるような足運びは、正に水流の如し。
軽やかにジオウをやり過ごし、躱しながらも一撃加える。
刀身が触れた箇所が火花を散らして、突進を強制的に中断。
小賢しい真似に出た刀使へ振り返るが、姫和が攻撃を止めたと言った覚えはない。
現代都市は光源も多く、影を作るのに苦労はしない。
日輪刀を持つのとは反対の手で影絵を作り、術式を構築。
何のつもりか知る由も無いジオウは、得物を帯電し電撃を放つ。
が、寸前で足元より白い大蛇が出現し妨害。
腕に噛み付いたと思えば、振り解かれるより先に勢いを付け放った。
地面への激突を律儀に待たず、姫和も跳躍。
咄嗟の判断でジカンギレードを防御に回されたが、構うものかと技を繰り出す。
日輪刀を持つのとは反対の手で影絵を作り、術式を構築。
何のつもりか知る由も無いジオウは、得物を帯電し電撃を放つ。
が、寸前で足元より白い大蛇が出現し妨害。
腕に噛み付いたと思えば、振り解かれるより先に勢いを付け放った。
地面への激突を律儀に待たず、姫和も跳躍。
咄嗟の判断でジカンギレードを防御に回されたが、構うものかと技を繰り出す。
――水の呼吸 捌ノ型 滝壷
ジオウを見下ろす位置へ跳んでからの、落下の勢いも味方にした振り下ろし。
ジカンギレードがへし折れん程の衝撃が走り、持ち主は真っ逆さまに落下。
しかし虚像とはいえ腐ってもライダー、危うい体勢ながらも受け身を取る。
ジカンギレードがへし折れん程の衝撃が走り、持ち主は真っ逆さまに落下。
しかし虚像とはいえ腐ってもライダー、危うい体勢ながらも受け身を取る。
一方的にやられてばかりのジオウではない、敏捷性と斬撃の威力を強化。
遅れて着地した姫和へ急接近、斬首の末路で終わらせるべく斬り付けた。
尤も、敵がそう来るとは十分予測出来たこと。
ジオウの視覚センサーへ、影絵を作った両手が映り込んだ瞬間に姫和は大きく距離を取った。
人間大サイズの巨カエル、蝦蟇が舌を伸ばし引き離したのである。
遅れて着地した姫和へ急接近、斬首の末路で終わらせるべく斬り付けた。
尤も、敵がそう来るとは十分予測出来たこと。
ジオウの視覚センサーへ、影絵を作った両手が映り込んだ瞬間に姫和は大きく距離を取った。
人間大サイズの巨カエル、蝦蟇が舌を伸ばし引き離したのである。
『FINISH TIME!』
苛立ちこそ抱かないが、埒が明かないとは思ったのか。
ドライバーを操作し必殺のエネルギーを右脚に付与、腰を低くし疾走の構えを取った。
三枚のラウズカードを組み合わせた、仮面ライダーブレイド同様の蹴り技を放つつもりか。
アンデットを一撃で戦闘不能に追い込む威力だ、甘くは見れない。
ドライバーを操作し必殺のエネルギーを右脚に付与、腰を低くし疾走の構えを取った。
三枚のラウズカードを組み合わせた、仮面ライダーブレイド同様の蹴り技を放つつもりか。
アンデットを一撃で戦闘不能に追い込む威力だ、甘くは見れない。
だったらそもそも、打たせなければいい。
駆け出すタイミングを見計らって、再度大蛇を召喚。
出鼻を挫かれたたらを踏むも、もう一度走り出す機会は与えない。
敵の身体機能と手数は弱くないが、姫和とて大荒魂を巡る事件を解決に導いた一人。
意思を持たぬ傀儡に後れを取る程、柔な小娘と侮るのは大間違いだ。
出鼻を挫かれたたらを踏むも、もう一度走り出す機会は与えない。
敵の身体機能と手数は弱くないが、姫和とて大荒魂を巡る事件を解決に導いた一人。
意思を持たぬ傀儡に後れを取る程、柔な小娘と侮るのは大間違いだ。
――水の呼吸 漆ノ型 雫波紋突き
大蛇を召喚しながらも疾走し、ジオウ目掛け一直線に刀を突き刺す。
突き技故に鬼の首を斬るのには適さないが、水の呼吸最速の技だ。
敵に技を使わせる前に勝負を終わらせるのに、これ以上ない手札(カード)。
狙う先は腹部、ライドウォッチが装填されたジクウドライバー。
仮面ライダーにとって、ベルトは正に第二の心臓。
それは虚像でも同じ、存在の核を貫かれれば最早どうにもならない。
黄金の悪魔の道具で終わった己を嘆くでもなく、最後まで沈黙を貫き塵へ還った。
突き技故に鬼の首を斬るのには適さないが、水の呼吸最速の技だ。
敵に技を使わせる前に勝負を終わらせるのに、これ以上ない手札(カード)。
狙う先は腹部、ライドウォッチが装填されたジクウドライバー。
仮面ライダーにとって、ベルトは正に第二の心臓。
それは虚像でも同じ、存在の核を貫かれれば最早どうにもならない。
黄金の悪魔の道具で終わった己を嘆くでもなく、最後まで沈黙を貫き塵へ還った。
○
顔面へ放たれた拳を片腕で捌き、蹴りが相手の腹部を狙う。
爪先を捻じ込んでやる筈が、敵にガッチリと足を掴まれた。
それならそれで問題無い、もう片方の足を地面から離し宙で回転。
体勢が崩れた瞬間に胸部を叩き、蹴り飛ばす。
爪先を捻じ込んでやる筈が、敵にガッチリと足を掴まれた。
それならそれで問題無い、もう片方の足を地面から離し宙で回転。
体勢が崩れた瞬間に胸部を叩き、蹴り飛ばす。
よろけた隙へ手刀を突き出すも、そこまで一方的に攻めさせてはくれないらしい。
腕部装甲で防御され、ならばと反対の腕を振るうも相手の殴打に弾かれた。
続けてタイミングを同じくして、双方脚部が鞭のようにしなる。
足底が胴体を叩き合い揃って後退、改めて敵の姿を視界に閉じ込めたアンクが舌打ちを漏らす。
腕部装甲で防御され、ならばと反対の腕を振るうも相手の殴打に弾かれた。
続けてタイミングを同じくして、双方脚部が鞭のようにしなる。
足底が胴体を叩き合い揃って後退、改めて敵の姿を視界に閉じ込めたアンクが舌打ちを漏らす。
(気に入らねぇ……)
苛立つ原因は、小賢しく抵抗に出られている事ではなく。
対峙する敵の存在そのものにあった。
対峙する敵の存在そのものにあった。
外見に見覚えはなくとも、腹部の道具を知らない訳がない。
長方形の機械と、装填された三枚のメダル。
間違いなく、敵は仮面ライダーオーズだ。
紫のコアメダルを使ってはいるが、『無』を司る恐竜のメダルじゃあない。
未知の力への警戒が強まる一方で、オーズが自分の前に立ち塞がる光景が。
正確に言うと、蛮野なんぞにオーズが利用されてる事実が無性に気に食わなかった。
長方形の機械と、装填された三枚のメダル。
間違いなく、敵は仮面ライダーオーズだ。
紫のコアメダルを使ってはいるが、『無』を司る恐竜のメダルじゃあない。
未知の力への警戒が強まる一方で、オーズが自分の前に立ち塞がる光景が。
正確に言うと、蛮野なんぞにオーズが利用されてる事実が無性に気に食わなかった。
ただのメダルの塊に過ぎなかった自分が、満足感を得て消滅し。
火野映司との出会いが、間違いなく得だったと言えるようになった今では。
例え虚像に過ぎなくとも、映司以外の輩がオーズの力で好き勝手やるのは非常に腹立たしい。
火野映司との出会いが、間違いなく得だったと言えるようになった今では。
例え虚像に過ぎなくとも、映司以外の輩がオーズの力で好き勝手やるのは非常に腹立たしい。
「ソイツはテメェには過ぎた力だ、あの馬鹿でもなけりゃ振り回されんのがオチだろ」
吐き捨てた内容に何を思ったか、気怠そうに首を回しオーズが殴り掛かる。
向こうが殺す気なら望む所、どの道出現させたままを許しはしない。
拳同士が激突、腕を伸ばした体勢で拮抗。
やがて共に後方へ押し出され、再度殴り合いが始まる。
向こうが殺す気なら望む所、どの道出現させたままを許しはしない。
拳同士が激突、腕を伸ばした体勢で拮抗。
やがて共に後方へ押し出され、再度殴り合いが始まる。
「あ?」
かに思われたが、視界の端に映った別の戦場へアンクが動きを止める。
グリードの姿なので見た目の表情は変わらないが、不機嫌さと共に焦りも表れ出す。
グリードの姿なので見た目の表情は変わらないが、不機嫌さと共に焦りも表れ出す。
「チッ!何やってやがんだ……!」
召喚されたライダー達を相手取る、自分達はともかく。
蛮野と戦闘中の龍園達は、マズい事態に陥っているのが明らか。
こちら側の戦力で最強格の伏黒がいれば、大丈夫だろうとは思っていたが。
敵が一枚上手だったらしく、率直に言ってピンチ。
長々とオーズを相手取ってる場合じゃない、捨て置き向こうへ加勢するべきか。
意識が眼前の敵より外れ、視線を逸らした時。
蛮野と戦闘中の龍園達は、マズい事態に陥っているのが明らか。
こちら側の戦力で最強格の伏黒がいれば、大丈夫だろうとは思っていたが。
敵が一枚上手だったらしく、率直に言ってピンチ。
長々とオーズを相手取ってる場合じゃない、捨て置き向こうへ加勢するべきか。
意識が眼前の敵より外れ、視線を逸らした時。
「駄目だろアンク。今お前と遊んでるのは俺だってのに、余所見なんかしたら」
「っ!?」
「っ!?」
掛けられた声へ、身構えるも事は既に起きた後。
ドライバーに装填済のコアメダルが独りでに動き、アンクの元へ飛来。
咄嗟に避ける事すら出来ず、肉体へ触れるや内部へと侵入。
予想外の事態へ混乱を抱くが、まともに考え込む時間は残されていない。
ドライバーに装填済のコアメダルが独りでに動き、アンクの元へ飛来。
咄嗟に避ける事すら出来ず、肉体へ触れるや内部へと侵入。
予想外の事態へ混乱を抱くが、まともに考え込む時間は残されていない。
「これ、は……っ!」
『おっと、抵抗は無駄ってやつだ。多少はメダルを集めたようだが、お前のコアは割れた一枚だけ。それだけじゃあ映司の欲望から生まれた俺に、抗える筈ないだろ?』
「テメェ……がっ、がぁああああああああああああっ!!!??!」
『おっと、抵抗は無駄ってやつだ。多少はメダルを集めたようだが、お前のコアは割れた一枚だけ。それだけじゃあ映司の欲望から生まれた俺に、抗える筈ないだろ?』
「テメェ……がっ、がぁああああああああああああっ!!!??!」
飲み込まれ、侵されていく。
自分の意識が、魂が、欲望が。
奥深くへと追いやられ、搾取されるだけの塊として幽閉される。
赤い鳥の怪物の姿が一変、肉体を借りた刀使へ戻るも最早コレはアンクじゃあない。
自分の意識が、魂が、欲望が。
奥深くへと追いやられ、搾取されるだけの塊として幽閉される。
赤い鳥の怪物の姿が一変、肉体を借りた刀使へ戻るも最早コレはアンクじゃあない。
「こっからは映司(おれ)の欲望を叶えさせてもらう。アンク、お前の欲望なんかじゃ足元にも及ばないものをな」
紫紺色に瞳を輝かせ、無限大の欲望から生まれた怪物(グリード)がおぞましい笑みを浮かべた。
その異変はライダー達を片付けた面々の視界にも届き、急ぎ駆け付ける。
集まる面々を大仰な動作で振り返る様へ、焦りらしきものは皆無。
数の差で不利を強いられた所で、然したる問題じゃあないと踏んでいるからか。
その異変はライダー達を片付けた面々の視界にも届き、急ぎ駆け付ける。
集まる面々を大仰な動作で振り返る様へ、焦りらしきものは皆無。
数の差で不利を強いられた所で、然したる問題じゃあないと踏んでいるからか。
「アンク!?……いや違う、お前は何者だ?」
「はぁ?急に何を言いやがる。どっからどう見ても、俺はお前らも知ってるアンクだろうが」
「舐めたフカシこいてんじゃねぇよ。アンクとそっちの十条に何しやがった?」
「はぁ?急に何を言いやがる。どっからどう見ても、俺はお前らも知ってるアンクだろうが」
「舐めたフカシこいてんじゃねぇよ。アンクとそっちの十条に何しやがった?」
アンクの口調を真似て惚けるも、アッサリと見破られ詰問される。
嘘を見抜くリュージのシギルは、相手が人でなくとも関係無い。
外見こそ姫和のままでも、中身は完全に別物。
自分達の仲間であるグリードじゃあない、もっとロクでもないナニカだ。
嘘を見抜くリュージのシギルは、相手が人でなくとも関係無い。
外見こそ姫和のままでも、中身は完全に別物。
自分達の仲間であるグリードじゃあない、もっとロクでもないナニカだ。
「ま、そりゃバレるよな。ああそうだ、お間らの言う通り俺はアンクじゃない」
視線を返す瞳には、底なしの沼のように昏い色がチラつく。
アンクと同じ欲望の怪物にして、現代で生み出された唯一の個体。
辿る筈だった正史で、火野映司が“最後”に戦ったその者は、
アンクと同じ欲望の怪物にして、現代で生み出された唯一の個体。
辿る筈だった正史で、火野映司が“最後”に戦ったその者は、
「俺はゴーダってんだ。アンクが前に取引した人間、火野映司の欲望を元に生まれたグリードさ」
ゴーダと、そう名乗り自らの出自を明かす。
シギルに反応はない、今度は真実を口にしたらしい。
思った通りアンクじゃあないのが明らかになったが、疑問解決を呑気に喜びはしない。
ゴーダなんて名前が名簿に載ってない点も、蛮野の例があるだけに支給品かNPCの類と察しは付く。
問題となるのは、正規プレイヤーか否かに非ず。
シギルに反応はない、今度は真実を口にしたらしい。
思った通りアンクじゃあないのが明らかになったが、疑問解決を呑気に喜びはしない。
ゴーダなんて名前が名簿に載ってない点も、蛮野の例があるだけに支給品かNPCの類と察しは付く。
問題となるのは、正規プレイヤーか否かに非ず。
「何でアンク達を乗っ取りやがった?蛮野の指示か?」
「違う違う、あんな奴に従う義理なんざねぇよ」
「ならどうして……」
「さっきまで使ってたオーズの体は、蛮野が支給品を使って呼び出した実体だ。操作一つで簡単に消されちまう」
「違う違う、あんな奴に従う義理なんざねぇよ」
「ならどうして……」
「さっきまで使ってたオーズの体は、蛮野が支給品を使って呼び出した実体だ。操作一つで簡単に消されちまう」
だからこそ、代わりとなる体が必要だったのだ。
ゼインカードに意思が移ったとはいえ、大元となるゴーダの核はコアメダル。
既にアンクが憑依し、複数枚のメダルも取り込んだ姫和の肉体は引っ越し先に持って来いだった。
チャンスを逃さず、自身の核たるコアメダルを侵入させ強奪に成功。
先にアンクが憑依していたが、割れたタカメダルと人造の模造メダルだけが向こうの核。
力の差でゴーダに一歩及ばず、青のコアメダルごと支配下に置かれたのである。
ゼインカードに意思が移ったとはいえ、大元となるゴーダの核はコアメダル。
既にアンクが憑依し、複数枚のメダルも取り込んだ姫和の肉体は引っ越し先に持って来いだった。
チャンスを逃さず、自身の核たるコアメダルを侵入させ強奪に成功。
先にアンクが憑依していたが、割れたタカメダルと人造の模造メダルだけが向こうの核。
力の差でゴーダに一歩及ばず、青のコアメダルごと支配下に置かれたのである。
ゴーダの意思が姫和に憑依した時点で、ゼインカードの力は完全に消滅。
蛮野の手を逃れる目的は、無事に果たせたと言って良いだろう。
蛮野の手を逃れる目的は、無事に果たせたと言って良いだろう。
「……あなたが、蛮野の元から逃げたがっていたのは分かったわ。けど、アンクさんと十条さんをどうするつもり?無事に解放する気はあるの?」
アンク達を乗っ取った理由は分かったが、話はまだ終わっていない。
蛮野の支配下を脱し、そこから先は何をする気なのか。
特に小夜はゼインという、身勝手な正義に果穂を利用した参加者を知るだけに。
問い質す表情は非常に険しく、得物を握る手にも自然と力が籠った。
蛮野の支配下を脱し、そこから先は何をする気なのか。
特に小夜はゼインという、身勝手な正義に果穂を利用した参加者を知るだけに。
問い質す表情は非常に険しく、得物を握る手にも自然と力が籠った。
「当たり前だろ?心配しなくても、こいつらの無事は保障して――」
「フカシこくなっつったばっかだろうが」
「フカシこくなっつったばっかだろうが」
最後まで言い切るのを待たず、リュージがマグナバイザーを突き付けた。
今の言葉がシロかクロか、結果を詳細に説明するまでもない。
即座に察した姫和と小夜も、油断ならないグリードを睨み付ける。
今の言葉がシロかクロか、結果を詳細に説明するまでもない。
即座に察した姫和と小夜も、油断ならないグリードを睨み付ける。
「前坂、お前がそんな反応をするということは……」
「想像してる通りだ、こいつにアンク達を解放する気なんざねぇ」
「っ、やっぱりゼインと同じ……!」
「想像してる通りだ、こいつにアンク達を解放する気なんざねぇ」
「っ、やっぱりゼインと同じ……!」
三人からの敵意を集めるゴーダは、肩を竦め癪に障る態度を取るばかり。
リュージが言った事は間違いじゃない、代わりの肉体で姫和は当分必要になる。
それに割れたメダルが核であっても、コアはコア。
映司の欲望を叶える為に使ってやるのだから、解放なんてとんでもない。
リュージが言った事は間違いじゃない、代わりの肉体で姫和は当分必要になる。
それに割れたメダルが核であっても、コアはコア。
映司の欲望を叶える為に使ってやるのだから、解放なんてとんでもない。
「映司(おれ)の邪魔はするな、って言っても無駄か。なら、しょうがねぇよな?」
自身の欲望を阻むとあっては、容赦してやる理由も皆無。
正史にて映司の肉体に潜伏した時と違い、幾つかのコアメダルも取り込んだ状態が影響し。
力を解き放てば、オーズとも異なる姿へ変身。
ムカデ、アリ、ハチのメダルに描かれた虫の特徴を併せ持つ異形となった。
正史にて映司の肉体に潜伏した時と違い、幾つかのコアメダルも取り込んだ状態が影響し。
力を解き放てば、オーズとも異なる姿へ変身。
ムカデ、アリ、ハチのメダルに描かれた虫の特徴を併せ持つ異形となった。
「欲望を叶える為の力が手に入ったんだ、誰が手放すかよ!!」
力を求める貪欲さ、その一点においては己の宿主と同じ。
解き放たれた欲望(グリード)を前に、最早戦い以外の選択は存在しない。
解き放たれた欲望(グリード)を前に、最早戦い以外の選択は存在しない。
「そらよォッ!!」
地を蹴り軽やかに跳躍、異形の見た目だけあって脚力も非常に高い。
一跳びで距離をあっという間に詰め、振り下ろした腕には日本刀。
アンクのデイパックから奪った得物が狙う先には、姫和の細く白い首。
御刀を持たない為に写シは使用不可、首を断たれれば即ゲームオーバー。
一跳びで距離をあっという間に詰め、振り下ろした腕には日本刀。
アンクのデイパックから奪った得物が狙う先には、姫和の細く白い首。
御刀を持たない為に写シは使用不可、首を断たれれば即ゲームオーバー。
――水の呼吸 陸ノ型 ねじれ渦
迎え撃つ術がないと言った覚えは無し、ソードスキルの発動と共に技を繰り出す。
上半身と下半身を反対方向に捩り、回転を加えた斬撃を放った。
威力もさることながら、広範囲をカバー可能な強みを持つ。
得物を防御に翳そうとも構わず砕くが、此度の敵は膂力も決して油断出来ない。
刃の激突音が響き、互いに弾かれるや次撃へ出たのは姫和が速い。
上半身と下半身を反対方向に捩り、回転を加えた斬撃を放った。
威力もさることながら、広範囲をカバー可能な強みを持つ。
得物を防御に翳そうとも構わず砕くが、此度の敵は膂力も決して油断出来ない。
刃の激突音が響き、互いに弾かれるや次撃へ出たのは姫和が速い。
――水の呼吸 壱ノ型 水面斬り
爪先が地面を削らんばかりの勢いで以て、懐に潜り込む。
水平に斬り付けた刀がゴーダの得物を叩き、弾き飛ばさんとする。
しかし武器の損失は起きず、未だ敵の手には刀が握られたまま。
なれば次だと、三撃目に動いた時だ。
相手の姿が視界から消え失せ、別方向よりの殺気が肌を突き刺したのは。
水平に斬り付けた刀がゴーダの得物を叩き、弾き飛ばさんとする。
しかし武器の損失は起きず、未だ敵の手には刀が握られたまま。
なれば次だと、三撃目に動いた時だ。
相手の姿が視界から消え失せ、別方向よりの殺気が肌を突き刺したのは。
「くっ……!」
頭部を動かし、瞳を向けていては間に合わない。
参ノ型【流流舞い】で、水流の如き足運びの回避を実行。
肩と脚を斬られ赤い一本線が刻まれるも、十分軽症の範囲。
動きに支障はなく、反撃に出ようと構え直した時だ。
姫和の目が、信じられぬものを捉えた。
参ノ型【流流舞い】で、水流の如き足運びの回避を実行。
肩と脚を斬られ赤い一本線が刻まれるも、十分軽症の範囲。
動きに支障はなく、反撃に出ようと構え直した時だ。
姫和の目が、信じられぬものを捉えた。
――水の呼吸 壱ノ型 水面斬り
「なっ!?」
呼吸法による技をゴーダが繰り出し、横薙ぎの刀が襲来。
何故相手も使えるのかなどと、考え込んではどうぞ殺してくださいと言ってるも同義。
日輪刀を翳し、防御に出た直後に衝撃を叩き付けられ両足が地面を離れた。
何故相手も使えるのかなどと、考え込んではどうぞ殺してくださいと言ってるも同義。
日輪刀を翳し、防御に出た直後に衝撃を叩き付けられ両足が地面を離れた。
「悪くない技だな。折角プレゼントしてくれたんだ、この先も使ってやるよ」
吹き飛ばされる細身の刀使へ、感謝が全く宿らない軽口を投げる。
ゴーダが振るう得物は衛藤可奈美の支給品にして、人斬り・岡田以蔵の愛刀。
始末剣の効果で水の呼吸を覚え、自分の技術に変えたのだ。
皮肉にも殺し合い開始当初の、五大院宗繁と似通った状況へ姫和が陥った。
ゴーダが振るう得物は衛藤可奈美の支給品にして、人斬り・岡田以蔵の愛刀。
始末剣の効果で水の呼吸を覚え、自分の技術に変えたのだ。
皮肉にも殺し合い開始当初の、五大院宗繁と似通った状況へ姫和が陥った。
だが五大院と違い、姫和には共に戦う仲間がいる。
ゴーダの追撃を阻むべく、片太刀バサミを手にマジアアズールが突撃。
後方ではゾルダが得物の引き金を引き援護、銃弾を防ぐのに意識を割いた隙へ斬り込む。
生命繊維を叩っ斬る刃、ではなく。
剣の腹部分で殴打を打ち込み、無力化を狙う。
ゴーダの追撃を阻むべく、片太刀バサミを手にマジアアズールが突撃。
後方ではゾルダが得物の引き金を引き援護、銃弾を防ぐのに意識を割いた隙へ斬り込む。
生命繊維を叩っ斬る刃、ではなく。
剣の腹部分で殴打を打ち込み、無力化を狙う。
(この感触は……!?)
得物は標的に触れたが、望んだ手応えとは全く別。
異形を殴ったのではなく、水面を叩いたような感触だ。
不可解な現象の答えは一目瞭然、ゴーダの体が液体に変化している。
異形を殴ったのではなく、水面を叩いたような感触だ。
不可解な現象の答えは一目瞭然、ゴーダの体が液体に変化している。
水棲系の生物の女王、メズールが用いる液状化能力。
青のコアメダル三枚を取り込んだ影響が、能力の幅にも表れた。
如何に対生命繊維の刃であろうと、水を断ち切る効果までは備わっていない。
渾身の一撃を難なく無効化し、液体のままの腕を振るい命中の寸前で実体化。
片太刀バサミの防御もすり抜け、拳がマジアアズールの腹を叩く。
青のコアメダル三枚を取り込んだ影響が、能力の幅にも表れた。
如何に対生命繊維の刃であろうと、水を断ち切る効果までは備わっていない。
渾身の一撃を難なく無効化し、液体のままの腕を振るい命中の寸前で実体化。
片太刀バサミの防御もすり抜け、拳がマジアアズールの腹を叩く。
「がふっ……!?」
殴り飛ばされるマジアアズールへ片手を翳し、火球を発射。
赤のコアメダルから引き出した力で、魔法少女を焼き殺す。
生憎とそのような惨い結末は、彼女の仲間が認めない。
マグナバイザーを連射し火球を撃ち落とせば、次の標的へゾルダが選ばれた。
赤のコアメダルから引き出した力で、魔法少女を焼き殺す。
生憎とそのような惨い結末は、彼女の仲間が認めない。
マグナバイザーを連射し火球を撃ち落とせば、次の標的へゾルダが選ばれた。
1分間で120発もの弾を発射可能な、専用召喚機で弾幕を張る。
牽制してる間に取るべき手段を選択、マグナバイザー以上の高火力を出せる武器なら複数所持。
片手でトリガーを引いたまま、腹部のデッキに手を伸ばし、
牽制してる間に取るべき手段を選択、マグナバイザー以上の高火力を出せる武器なら複数所持。
片手でトリガーを引いたまま、腹部のデッキに手を伸ばし、
「……っ」
躊躇が生じ動きを止めた、ほんの一瞬の隙をゴーダは逃さない。
始末剣の効果で得た全集中の呼吸で、身体機能を上昇。
漆ノ型【雫波紋突き】は空いた距離を瞬時に詰め、切っ先が胸部を突く。
最も堅牢な箇所で防いだとは思えない痛みで、ゾルダも小さく悲鳴を零す。
始末剣の効果で得た全集中の呼吸で、身体機能を上昇。
漆ノ型【雫波紋突き】は空いた距離を瞬時に詰め、切っ先が胸部を突く。
最も堅牢な箇所で防いだとは思えない痛みで、ゾルダも小さく悲鳴を零す。
「ク、ソが……!」
『GUARD VENT』
生身で突き刺さるのに比べれば、十分に耐えられる。
痛みを噛み殺し、先までとは別種のカードを読み込む。
契約モンスターの腹部を模した盾を装備、日輪刀の連撃を防ぎながら銃を撃つ。
なれど【流流舞い】で軽やかに避け、躱し様にゾルダを斬り付けた。
痛みを噛み殺し、先までとは別種のカードを読み込む。
契約モンスターの腹部を模した盾を装備、日輪刀の連撃を防ぎながら銃を撃つ。
なれど【流流舞い】で軽やかに避け、躱し様にゾルダを斬り付けた。
「前坂……!」
仲間が刃の餌食と化すのを、黙って見ている訳にはいかない。
姫和の両手が影絵を生み出し、鼻息荒い牡牛を召喚。
貫牛が十種随一の走力を存分に発揮、一定の距離が開いていたのもあってか勢いは増大。
突き飛ばされ宙を舞うまで残り僅かだが、ゴーダは焦らず液状化し難を逃れる。
空振った式神を見送り実体化、そこへすかさずマジアアズールが片太刀バサミを叩き付けた。
姫和の両手が影絵を生み出し、鼻息荒い牡牛を召喚。
貫牛が十種随一の走力を存分に発揮、一定の距離が開いていたのもあってか勢いは増大。
突き飛ばされ宙を舞うまで残り僅かだが、ゴーダは焦らず液状化し難を逃れる。
空振った式神を見送り実体化、そこへすかさずマジアアズールが片太刀バサミを叩き付けた。
「どいつもこいつもお優しいな。優しいついでに早く死ねよ」
先程と変わらず、剣の腹で殴り掛かった事をこれ見よがしに嘲笑い飛翔。
真紅の片翼で空中へ陣取り、垂れ下がった紫の装飾を振り回す。
ゴーダムカデメダルの力によって、大量に増殖。
暴れ狂う鞭が地上を蹂躙、回避に出る者達の足掻きを手数で押し切る。
真紅の片翼で空中へ陣取り、垂れ下がった紫の装飾を振り回す。
ゴーダムカデメダルの力によって、大量に増殖。
暴れ狂う鞭が地上を蹂躙、回避に出る者達の足掻きを手数で押し切る。
「がぁっ!?」
「きゃああああああっ!?」
「きゃああああああっ!?」
直撃を受け、或いは発生した衝撃の余波に巻き込まれ。
破壊された地面の上を転がり、崩れかかった建造物の壁に激突。
鈍痛に呻く三人を見下ろし、余裕たっぷりにゴーダは着地を決める。
破壊された地面の上を転がり、崩れかかった建造物の壁に激突。
鈍痛に呻く三人を見下ろし、余裕たっぷりにゴーダは着地を決める。
「人の体で……好き勝手してくれる……!」
姫和が身に纏う平城学館の制服は地肌を隠しはするも、高度な防御機能は搭載していない。
痛みが駆け巡る体に鞭打って、立ち上がろうと日輪刀を支えに使う。
ゴーダが殺意を籠めた蹂躙に出る一方で、自分達は本気の攻撃が出来ない。
何せ相手はただのNPCなんかじゃあない、アンクともう一人の姫和を乗っ取った存在。
こちらが与えるダメージが大き過ぎた結果、彼らが助からない事態にならないと誰が言えよう。
特にもう一人の姫和はグリードの生命力で、ある程度傷が癒えたとはいえ。
右腕欠損の重症なのに変わりなく、こちらのミス一つで死んでも不思議はないのだから。
痛みが駆け巡る体に鞭打って、立ち上がろうと日輪刀を支えに使う。
ゴーダが殺意を籠めた蹂躙に出る一方で、自分達は本気の攻撃が出来ない。
何せ相手はただのNPCなんかじゃあない、アンクともう一人の姫和を乗っ取った存在。
こちらが与えるダメージが大き過ぎた結果、彼らが助からない事態にならないと誰が言えよう。
特にもう一人の姫和はグリードの生命力で、ある程度傷が癒えたとはいえ。
右腕欠損の重症なのに変わりなく、こちらのミス一つで死んでも不思議はないのだから。
「その思いやりに応えて、手早く始末してやるよ」
当然ゴーダも気付いており、ここぞとばかりにこの状況を有効活用。
本気で倒しに来れないなら好都合、邪魔者の排除を完了するまで。
本気で倒しに来れないなら好都合、邪魔者の排除を完了するまで。
再度両足で立って、構え直すのをあえて待ってやるものか。
武士道精神はお呼びじゃない、機会を見付けさっさと片付ける。
紫の装飾、ムカデバイターを複数本伸ばし姫和を拘束。
抗うべく日輪刀を振るうのも、残る二人が駆け着けるのも遅い。
武士道精神はお呼びじゃない、機会を見付けさっさと片付ける。
紫の装飾、ムカデバイターを複数本伸ばし姫和を拘束。
抗うべく日輪刀を振るうのも、残る二人が駆け着けるのも遅い。
「がっ、あぁあああああああああああああっ!!!」
ムカデバイターを伝い流れ込むエネルギーが、姫和を蝕み抵抗する力を奪う。
体中を駆け巡る激痛は、写シの発動時には味わえない地獄。
少女の絶叫に刺激される罪悪感など、初めから持ち合わせていない。
体中を駆け巡る激痛は、写シの発動時には味わえない地獄。
少女の絶叫に刺激される罪悪感など、初めから持ち合わせていない。
「じゃあな。もう一人のこいつはアンク共々、きっちり使ってやるよ」
ゴーダが刀を振り下ろす動作の方が、圧倒的に速い。
死が間近に迫りつつあるからか、視界がいやにスローに感じる。
黄泉の遣いが首に鎌を添え、亡者達が歓喜を露わに手招く様が目に浮かぶ。
死が間近に迫りつつあるからか、視界がいやにスローに感じる。
黄泉の遣いが首に鎌を添え、亡者達が歓喜を露わに手招く様が目に浮かぶ。
(ふざけるな……私はまだ……!)
死ねない、死を望む意思など欠片も持っていない。
喪失の耐え難い激痛を味わった、生き続けても一番会いたい“彼女”はもういない。
それが分からぬ姫和ではなく、だとしても死へ逃げる真似は御免だ。
諦めを抱かせる為に、生きる事から逃避させる為に“彼女”は、
喪失の耐え難い激痛を味わった、生き続けても一番会いたい“彼女”はもういない。
それが分からぬ姫和ではなく、だとしても死へ逃げる真似は御免だ。
諦めを抱かせる為に、生きる事から逃避させる為に“彼女”は、
可奈美は消えゆく仮初の命で、自分に言葉を遺したんじゃあない。
「私は、まだ死ねないんだ……!!」
「いいや死ぬのさ。映司(おれ)の欲望を邪魔する奴は、誰であろうと容赦しない」
何度生きたいと望んでも、聞き入れる都合の良い神様はいない。
どうあっても手遅れ、そう慈悲の宿らぬ現実に押し潰されても。
この願い/欲望だけは、手放してたまるかと抗う少女へ。
もう一つの欲望が、死という絶対の終わりを届け――
どうあっても手遅れ、そう慈悲の宿らぬ現実に押し潰されても。
この願い/欲望だけは、手放してたまるかと抗う少女へ。
もう一つの欲望が、死という絶対の終わりを届け――
○○○
奇妙な体験だった。
一人ぼっちで座席に座り、スクリーンに映る光景をずっと見ている。
途中退席は不可能、目を閉じようとしても無駄。
自分の瞳で、自分ではない誰かの視界を見せられるという。
言いようのない気味の悪さを、味わい続けた。
一人ぼっちで座席に座り、スクリーンに映る光景をずっと見ている。
途中退席は不可能、目を閉じようとしても無駄。
自分の瞳で、自分ではない誰かの視界を見せられるという。
言いようのない気味の悪さを、味わい続けた。
――『ごめん、ね……』
駆け出せば手が届きそうな距離で、手をすり抜けたあいつの言葉が。
頬を伝う涙が、地面に広がる血だまりに落ちて消えた瞬間が頭から離れない。
頬を伝う涙が、地面に広がる血だまりに落ちて消えた瞬間が頭から離れない。
どうしてお前が謝るんだ、お前は何も悪くない。
化け物と呼ぶ他ない暴君相手に、一歩も引かなかったお前を誰が責めるものか。
私があの時、奴を止められてさえいれば。
倒せなくとも、ほんの僅かだけでももっと上手くやれていれば。
お前だって、死ななかったかもしれないだろう。
刀を握る為の手を、失うことにはならなかった筈なのに。
化け物と呼ぶ他ない暴君相手に、一歩も引かなかったお前を誰が責めるものか。
私があの時、奴を止められてさえいれば。
倒せなくとも、ほんの僅かだけでももっと上手くやれていれば。
お前だって、死ななかったかもしれないだろう。
刀を握る為の手を、失うことにはならなかった筈なのに。
私はもう、分からなくなっていた。
あいつをもっと早くに突き放し、関係を断っていれば。
こんな悪趣味な催しなんぞに、巻き込まれずに済んだのか。
あいつをもっと早くに突き放し、関係を断っていれば。
こんな悪趣味な催しなんぞに、巻き込まれずに済んだのか。
この地の何処かにいたらしい母とは、再会を果たせず。
やがて出会ったもう一人の『私』が語った内容も、簡単に呑み込めない。
長年憎悪を向けていた刀使の心情、大荒魂を巡る戦いの顛末。
私が辿る筈だった未来と、実際に歩んで来た『私』。
やがて出会ったもう一人の『私』が語った内容も、簡単に呑み込めない。
長年憎悪を向けていた刀使の心情、大荒魂を巡る戦いの顛末。
私が辿る筈だった未来と、実際に歩んで来た『私』。
私以上にあいつを――可奈美を深く関わった『私』が。
自棄を起こすでもなく、戦いを投げ出すまいとする姿は。
同じ自分自身でありながら、私とは違うように思えて――
自棄を起こすでもなく、戦いを投げ出すまいとする姿は。
同じ自分自身でありながら、私とは違うように思えて――
そんな『私』が今、死にかかっている。
私の体を奪った怪物は、何の戸惑いも刃には乗せず。
足元の虫を踏み潰すように、簡単に殺すのだろう。
私の体を奪った怪物は、何の戸惑いも刃には乗せず。
足元の虫を踏み潰すように、簡単に殺すのだろう。
『気に入らねぇ……』
傍らで発せられた声に、目を向けはしない。
向こうも私を一瞥もすることなく、瞳が射抜くのは『私』の方。
顔を見ずとも、声色だけで分かる。
心底不愉快気に吐き捨てたこの男の怒りが、まるで自分にも乗り移ったと錯覚せん程に。
私の中、見えない部分の奥深くへ灯るものがあった。
向こうも私を一瞥もすることなく、瞳が射抜くのは『私』の方。
顔を見ずとも、声色だけで分かる。
心底不愉快気に吐き捨てたこの男の怒りが、まるで自分にも乗り移ったと錯覚せん程に。
私の中、見えない部分の奥深くへ灯るものがあった。
『あの馬鹿の欲望から生まれておいて、何一つ分かってないじゃねぇか……』
このまま何もしなければ、奴は『私』の命を終わらせる。
今に至るまでに、どんな戦いがあっただとか。
誰の死を味わって来て、何を考えここまで生き続けただとか。
それら全てを塵同然に見なし、欲望を叶えるべく足蹴にして自分勝手に前へ進む。
今に至るまでに、どんな戦いがあっただとか。
誰の死を味わって来て、何を考えここまで生き続けただとか。
それら全てを塵同然に見なし、欲望を叶えるべく足蹴にして自分勝手に前へ進む。
生きようと思った理由、生きたいと思わせた出会い。
一緒に生きて欲しいと願った、大切な者達。
何もかもが、己の欲望の邪魔という理由一つで否定される。
一緒に生きて欲しいと願った、大切な者達。
何もかもが、己の欲望の邪魔という理由一つで否定される。
ああ、成程確かにこれは。
気に入らないと、吐き捨てる以外にない。
気に入らないと、吐き捨てる以外にない。
鉄塊に変わった如き、重い体を無理やりに起こす。
薄れていた筈の痛みが鮮明となり、体のあらゆる部位が絶叫を上げる。
利き腕を奪われた現実が再び顔を出し、もう一度枷を填め、
薄れていた筈の痛みが鮮明となり、体のあらゆる部位が絶叫を上げる。
利き腕を奪われた現実が再び顔を出し、もう一度枷を填め、
「邪魔を……するな……!」
不格好に片腕を振るって払い除け、引き摺るように歩き出す。
無様であるのは百も承知、恰好が付いてるとは口が裂けても言えまい。
だから何だ、指を咥えて見てるだけの理由になるものか。
無様であるのは百も承知、恰好が付いてるとは口が裂けても言えまい。
だから何だ、指を咥えて見てるだけの理由になるものか。
生きねばならない理由がある、諦めたくない理由がある。
けどこの瞬間、自分が一番にやらねばと思ったソレが。
けどこの瞬間、自分が一番にやらねばと思ったソレが。
私が叶えたい願い――欲望だ。
○
「――――――」
頬に飛び跳ねた赤が、いやに熱く感じる。
生き血を求める人斬りの愛刀の、餌食と化したのは少女の柔肌。
纏った衣服は1秒とて刃の進撃を止められず、単なる布切れでしかない。
肩に食い込み皮膚を裂き、肉を斬って骨まで両断。
バターへナイフを落としたように、驚く程滑らかに進んだ末に。
皮数枚で繋ぎ止めるだけの、避けられぬ絶対の死が与えられたのを。
姫和は確かに、自分の目で見た。
生き血を求める人斬りの愛刀の、餌食と化したのは少女の柔肌。
纏った衣服は1秒とて刃の進撃を止められず、単なる布切れでしかない。
肩に食い込み皮膚を裂き、肉を斬って骨まで両断。
バターへナイフを落としたように、驚く程滑らかに進んだ末に。
皮数枚で繋ぎ止めるだけの、避けられぬ絶対の死が与えられたのを。
姫和は確かに、自分の目で見た。
こちらを殺さんと剣を振るった異形の体から分離した、もう一人の十条姫和が。
我が身を盾にし、人斬りの得物の贄と化す光景は。
悪趣味な幻なんかじゃなく、紛れもない現実であると。
自分ではない自分が流す血の熱さで、残酷なまでに理解してしまった。
我が身を盾にし、人斬りの得物の贄と化す光景は。
悪趣味な幻なんかじゃなく、紛れもない現実であると。
自分ではない自分が流す血の熱さで、残酷なまでに理解してしまった。
「な、に……!?」
予想だにしていない展開へ、偽りの混じらぬ驚愕をゴーダが発するのも。
どこか遠くに聞こえる中、崩れ落ちた『姫和』が顔だけで振り向く。
何故、そう漏らした己の声が。
砂漠を飲まず食わずで渡り歩いたかのように、酷く乾き切ってることに気付けず。
揺れる瞳と共にぶつけた問いへ、『姫和』の口もゆっくりと動く。
恨み言をぶつける為じゃない、投げやりになった訳でもない。
どこか遠くに聞こえる中、崩れ落ちた『姫和』が顔だけで振り向く。
何故、そう漏らした己の声が。
砂漠を飲まず食わずで渡り歩いたかのように、酷く乾き切ってることに気付けず。
揺れる瞳と共にぶつけた問いへ、『姫和』の口もゆっくりと動く。
恨み言をぶつける為じゃない、投げやりになった訳でもない。
「可奈美も、母さんも、お前が生きることを望む筈と……そう思っただけだ……」
「――――それは、お前だって同じだろう!!!」
「――――それは、お前だって同じだろう!!!」
やり切れなさと、納得のいかなさを煮詰めた堪え切れない顔で。
叫んだ姫和へ、少しだけ困ったような。
それでいて後悔を宿らせない、和らいだ笑みを浮かべたまま。
『姫和』の終わりが音もなく訪れる瞬間を、姫和の瞳はハッキリと映し出した。
叫んだ姫和へ、少しだけ困ったような。
それでいて後悔を宿らせない、和らいだ笑みを浮かべたまま。
『姫和』の終わりが音もなく訪れる瞬間を、姫和の瞳はハッキリと映し出した。
「この女……!なに考えてっ!?」
理解が遠く及ばない、いっそ暴挙と言うべき人間への罵りを吐き出し掛け。
体内で起こる明確な異変を感じ取り、言葉がつっかえる。
四肢へ痺れが走り動きが鈍り出す、頑強な鎖が巻き付いたように自由が利かない。
自分自身の存在が徐々に崩れ始めて、保つのが困難へ陥った。
一体何が起きているか、疑問への答えに即座に辿り着く。
体内で起こる明確な異変を感じ取り、言葉がつっかえる。
四肢へ痺れが走り動きが鈍り出す、頑強な鎖が巻き付いたように自由が利かない。
自分自身の存在が徐々に崩れ始めて、保つのが困難へ陥った。
一体何が起きているか、疑問への答えに即座に辿り着く。
「アンク……!俺のコアに手を出してやがるな……!!」
『お前はお呼びじゃないんだよ!映司の欲望を知った気になってるだけの、本物の馬鹿が!!』
『お前はお呼びじゃないんだよ!映司の欲望を知った気になってるだけの、本物の馬鹿が!!』
正解だと言わんばかりに、コアメダルを掴む手に力が籠る。
赤い異形の掌の中で、軋みを上げるゴーダの核(しんぞう)。
終焉が足音を立て近付く感覚を、望まずとも味わう羽目になった。
赤い異形の掌の中で、軋みを上げるゴーダの核(しんぞう)。
終焉が足音を立て近付く感覚を、望まずとも味わう羽目になった。
泉慎吾の例があるように、グリードに憑依された人間は常に意識を奪われてる訳じゃあない。
肉体の自由は取り戻せないが、欲望の怪物が見聞きしたものを共有可能。
『姫和』もまた、傷の治癒が進むにつれ意識は覚醒。
宇蟲王による蹂躙を、もう一人の自分との出会いを、その自分を殺そうとしてる今しがたの光景を。
全て、見て来たが故にこの結果を引き寄せた。
肉体の自由は取り戻せないが、欲望の怪物が見聞きしたものを共有可能。
『姫和』もまた、傷の治癒が進むにつれ意識は覚醒。
宇蟲王による蹂躙を、もう一人の自分との出会いを、その自分を殺そうとしてる今しがたの光景を。
全て、見て来たが故にこの結果を引き寄せた。
『姫和』だけでは、ゴーダの支配から逃れられなかった。
アンクだけなら、ゴーダへ反逆の牙を突き立てられなかった。
「こいつの好きにさせてたまるか」という、両者共通の意志無くして実現不可。
器に利用していた人間を、よにりもよって自分の手で殺し。
割れたメダル一枚だけの脆弱なグリードに、存在を消され掛かっている。
アンクだけなら、ゴーダへ反逆の牙を突き立てられなかった。
「こいつの好きにさせてたまるか」という、両者共通の意志無くして実現不可。
器に利用していた人間を、よにりもよって自分の手で殺し。
割れたメダル一枚だけの脆弱なグリードに、存在を消され掛かっている。
コアメダルの破壊には、紫のメダルの力が本来は必要不可欠であるも。
正史においてゴーダが紫のメダル抜きで、緑のコアメダルを軋ませた例を思えば。
同じグリード同士だったら、コアメダルへダメージを与える事は不可能とは言えまい。
まして此度の舞台は羂索達が始めたデスゲーム。
多岐に渡る制限の一つでコアメダルの破壊耐性に、弱体化を施してないとは言い切れないだろう。
正史においてゴーダが紫のメダル抜きで、緑のコアメダルを軋ませた例を思えば。
同じグリード同士だったら、コアメダルへダメージを与える事は不可能とは言えまい。
まして此度の舞台は羂索達が始めたデスゲーム。
多岐に渡る制限の一つでコアメダルの破壊耐性に、弱体化を施してないとは言い切れないだろう。
「ふざけるなよ……!死にぞこないどもが……!」
細かい事情が何であれ、ゴーダにとっては看破出来る事態じゃない。
枷を付けられたように重い己が身を、焦燥と憤怒で動かす。
欲望の礎に使ってやろうと思ったが予定変更、内より力を漲らせ異物を排除。
活性化したゴーダのメダルに弾かれ、アンクの干渉も強制中断。
おぞましい寄生虫を取り除かんと、身を激しく捩らせれば割れたメダルが体外へ飛び出た。
枷を付けられたように重い己が身を、焦燥と憤怒で動かす。
欲望の礎に使ってやろうと思ったが予定変更、内より力を漲らせ異物を排除。
活性化したゴーダのメダルに弾かれ、アンクの干渉も強制中断。
おぞましい寄生虫を取り除かんと、身を激しく捩らせれば割れたメダルが体外へ飛び出た。
「やってくれるじゃねぇか、アンク……!!」
「アイツの欲望のデカさを甘く見るからだ。そんなザマで映司から生まれたなんざ、お笑いだな」
「アイツの欲望のデカさを甘く見るからだ。そんなザマで映司から生まれたなんざ、お笑いだな」
浮遊する異形の片腕へ、あらん限りの怒りをぶつける。
だが腹が据えかねる思いは、アンクも同じだ。
『姫和』を殺したゴーダへの、何より彼女が自ら肉盾になるのを止められなかった自分への。
迂闊に寄らば焼き殺さん炎に似た怒りが、割れた核に煮え滾っていた。
だが腹が据えかねる思いは、アンクも同じだ。
『姫和』を殺したゴーダへの、何より彼女が自ら肉盾になるのを止められなかった自分への。
迂闊に寄らば焼き殺さん炎に似た怒りが、割れた核に煮え滾っていた。
「はぁああああああああっ!!!」
そして、激情すらも昂る戦意へ変えるのはアンクのみに非ず。
絡み付く百足の拘束を斬り払い、姫和の剣が月光を浴び一層輝く。
可奈美を喪った時とはまた異なる喪失感に、言葉に出来ない痛みが顔を出すも。
捨て置くんじゃあない、背負い込んで倒すべき敵を討つ。
絡み付く百足の拘束を斬り払い、姫和の剣が月光を浴び一層輝く。
可奈美を喪った時とはまた異なる喪失感に、言葉に出来ない痛みが顔を出すも。
捨て置くんじゃあない、背負い込んで倒すべき敵を討つ。
「馬鹿の一つ覚えか――っ!?」
呼吸法なら自分も使えるのを、怒りで頭から抜け落ちでもしたか。
浮かべた嘲りは瞬時に凍り付く、敵が繰り出すのは水の呼吸ではない。
腰に下げた二本目の得物が秘めし力を解放、どちらが錆びと化すかを教えてやろう。
浮かべた嘲りは瞬時に凍り付く、敵が繰り出すのは水の呼吸ではない。
腰に下げた二本目の得物が秘めし力を解放、どちらが錆びと化すかを教えてやろう。
「死色の翅根よ――私を抉れ!!!」
放たれるは鬼狩りの技に非ず、人が人を斬る為に生み出されし奥義。
凶王三成(きょうおうさんせい)、西軍総大将にして豊臣秀吉の左腕。
石田三成の凶刃が、天災を重ねざるを得ない勢いで以て放たれた。
凶王三成(きょうおうさんせい)、西軍総大将にして豊臣秀吉の左腕。
石田三成の凶刃が、天災を重ねざるを得ない勢いで以て放たれた。
「ぐ――オォオオオオオオオオオオオッ!?」
目にも止まらぬとの比喩が、ここまで合う剣技もそうそうあるまい。
刀を持つ手が掻き消え、斬撃が何百もの群れを成し殺到。
斬り殺すだけでは足りぬ、斬滅へ追いやるまで終わることのない悪夢。
得物を振るい死に物狂いで凌ぐも、ゴーダへ掛かる負担は決して軽くなかった。
『姫和』の肉体を使った先程までと違い、今は憑依先を失った不安定な状態。
加えてアンクの干渉を受けた影響も色濃く残り、コアメダルのダメージが残留中。
次第に防御が追い付かなくなり、とうとう得物が弾かれた。
襲い来る刃が体を削り出すも、逃れる手はまだ残っている。
刀を持つ手が掻き消え、斬撃が何百もの群れを成し殺到。
斬り殺すだけでは足りぬ、斬滅へ追いやるまで終わることのない悪夢。
得物を振るい死に物狂いで凌ぐも、ゴーダへ掛かる負担は決して軽くなかった。
『姫和』の肉体を使った先程までと違い、今は憑依先を失った不安定な状態。
加えてアンクの干渉を受けた影響も色濃く残り、コアメダルのダメージが残留中。
次第に防御が追い付かなくなり、とうとう得物が弾かれた。
襲い来る刃が体を削り出すも、逃れる手はまだ残っている。
「どきやがれ……!」
青のコアメダルを抜き取られてないのは、幸運と言う他ないだろう。
物理攻撃を幾度も無効化し、ノーダメージを保った能力を使用。
液状化した体には如何に三成の技と言えども、虚しくすり抜けるだけ。
宙を泳ぎ、姫和から急いで距離を取り、
物理攻撃を幾度も無効化し、ノーダメージを保った能力を使用。
液状化した体には如何に三成の技と言えども、虚しくすり抜けるだけ。
宙を泳ぎ、姫和から急いで距離を取り、
「逃がす訳がないでしょう!!」
魔力のリソースを敏捷性に割き、マジアアズールが急接近。
血の池に伏した少女が視界へ映り、思わず唇を噛む。
まただ、また自分は取り零してしまった。
ディアッカ、果穂、左虎、学郎、カヨコ。
救われてばかりで肝心な時には手を伸ばせない、いつまでも弱い自分に腹が立って仕方ない。
血の池に伏した少女が視界へ映り、思わず唇を噛む。
まただ、また自分は取り零してしまった。
ディアッカ、果穂、左虎、学郎、カヨコ。
救われてばかりで肝心な時には手を伸ばせない、いつまでも弱い自分に腹が立って仕方ない。
(だけど私は――魔法少女(わたし)であることだけは諦めたくない!)
わたしがきたと、そう言って救ってくれたヒーローのように。
強くもなければ格好良くもないけれど、諦めることだけはしたくないから。
振り被った剣は達人を超え、超人の域にまで達して尚も足りない。
音を超え、光を超え、神速へとほんの一瞬到達。
強くもなければ格好良くもないけれど、諦めることだけはしたくないから。
振り被った剣は達人を超え、超人の域にまで達して尚も足りない。
音を超え、光を超え、神速へとほんの一瞬到達。
「――――――っ!!!??!」
絶対零度の刃に触れ、液体に変えたゴーダの体が凍結。
忍者死すとも、継がれた魂(おもい)は死なず。
悪事(わるさ)かます者が現れる時、魔法少女が黙っちゃいない。
忍者死すとも、継がれた魂(おもい)は死なず。
悪事(わるさ)かます者が現れる時、魔法少女が黙っちゃいない。
『SHOOT VENT』
「っとに、役に立たないのは変わんねぇな」
人を殺すのは息を吐くようにこなせても、仲間一人助けられない。
クソの二文字を自分に当て嵌め、延々責め立てたい衝動を抑え付け。
遠慮なしにブチ込むとあらば、そうさせてもらおう。
クソの二文字を自分に当て嵌め、延々責め立てたい衝動を抑え付け。
遠慮なしにブチ込むとあらば、そうさせてもらおう。
「なっ、まっ」
制止を求める声に、耳を貸す者は一人もいない。
銃口が返すのは言葉じゃなく、特大のエネルギー弾だけ。
睨み付けるギガランチャーが火を吹き、鼓膜を劈く爆音が発生。
空気の抜けた風船のように吹き飛ぶ今の己を、復活直後のゴーダは微塵も想像しなかっただろう。
銃口が返すのは言葉じゃなく、特大のエネルギー弾だけ。
睨み付けるギガランチャーが火を吹き、鼓膜を劈く爆音が発生。
空気の抜けた風船のように吹き飛ぶ今の己を、復活直後のゴーダは微塵も想像しなかっただろう。
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