気付けば図書館にいた。この図書館が前回のあの図書館であるかは彼女――無限桃花にはわからない。
両サイドには高い本棚が並んでおり、隙間なくぎっしりと色とりどりの本が入っている。
桃花は試しに近くの本を取り出してみるか、理解出来る云々の前に表紙の言葉が理解出来ない。
そして何よりも本が開かない。違和感を感じつつ諦めて本棚に本を戻す。
余談ではあるが日本以外の図書館を見たことあるだろうか?
我が国日本は地震大国が故に本棚をあまり高く作らない。それゆえにどこかこじんまりした印象を人に与える。
ただ他国において、地震の少ない国ではこれでもかと言うくらい本棚を高く作る。高く作れば当然本がたくさん入る。
もしも興味があるならば一度調べて見れはいかがだろうか。豪華な図書館も物語の中ではないのである。
話を戻そう。
桃花は本を眺めながら歩いていた。残念なことに読めそうな彼女に読める本はない。
視点を動かしてみよう。この図書館はかなり広い。装飾もかなり豪華に作ってあり、所謂『外国の図書館』と言った感じがする。
ちなみにだがここは図書館ではない。とある館の図書室なのである。最もここを主に利用するのは図書室の主とその仲間達と言ったとこか。
本棚の並びは綺麗に整頓されているため物を探す上でわかりやすい。が、膨大な書物があるにも関わらず看板や目印があるわけではないので
何がどこにあるかちゃんと把握しているのはここの主とその使い魔(だと思われる)くらいである。
桃花が何個目かの曲がり角を折れると少女が本を棚に戻しているのを見つけた。
「すみません」
「え、あれ? どなたですか?」
当然の疑問であろう。別に全ての窓が開かれているわけではない。入り口以外から入るとしたらやはりドアを開けなければいけないのだ。
ドアを開ければ主か、もしくはこの使い魔(仮)が気付くであろう。
「いや、私も何がどうだかわからないんだが……かくかくじかじかなんだ」
「テラスから跳んだらここに来たんですか。不思議な話ですね」
「全くだ。まぁこんなことは慣れてきたから特に気にすることでもないが……」
「ちょうど紅茶を入れようと思ってたんですよ。一緒にどうですか?」
「……失礼だが見知らぬ人間をお茶に誘うなんて無用心だな」
「いえ、ここではよく乱入者が来るのでおかしくないんですよ」
「乱入者ねぇ」
「はい、本をたくさん借りて返さない乱入者が」
桃花は素直に興味が沸いたのでお誘いに乗ることにした。
案内された先は三方が本棚に囲まれた広間で中央にはテーブルが置いてあった。
テーブルのある一方だけ本が高く積んであり、本の隙間からちらちらと薄紫の帽子が見えている。
そしてそのテーブルは一階部分にあり、自分が二階部分にいることを知った。
何か違和感をする。さきほどから感じているものだ。本に対してのものかと思ったがそうではない。
桃花が来た道を振り向く。だがそこには本棚しかない。そう、道がないのだ。
先導する使い魔(仮)に話そうとするが少女はどういうわけか階段を使わず、ふわふわと飛んで降りていった。
階段を使って追いかける。下りながら少女の姿を良く見る。
赤い髪が肩口ぐらいまでは伸びている。それ以上は短くはない。白い長袖に黒のワンピースだろうか。
頭と背中に小さな羽がある。そこまでは何回見ても同じものだ。ただ他のところがおかしい。
髪は肩口で終わりかと思ったら腰まで伸びた。かと思うと短くなっていく。
体型も常に変化している。ここで違和感の正体に気付く。
両サイドには高い本棚が並んでおり、隙間なくぎっしりと色とりどりの本が入っている。
桃花は試しに近くの本を取り出してみるか、理解出来る云々の前に表紙の言葉が理解出来ない。
そして何よりも本が開かない。違和感を感じつつ諦めて本棚に本を戻す。
余談ではあるが日本以外の図書館を見たことあるだろうか?
我が国日本は地震大国が故に本棚をあまり高く作らない。それゆえにどこかこじんまりした印象を人に与える。
ただ他国において、地震の少ない国ではこれでもかと言うくらい本棚を高く作る。高く作れば当然本がたくさん入る。
もしも興味があるならば一度調べて見れはいかがだろうか。豪華な図書館も物語の中ではないのである。
話を戻そう。
桃花は本を眺めながら歩いていた。残念なことに読めそうな彼女に読める本はない。
視点を動かしてみよう。この図書館はかなり広い。装飾もかなり豪華に作ってあり、所謂『外国の図書館』と言った感じがする。
ちなみにだがここは図書館ではない。とある館の図書室なのである。最もここを主に利用するのは図書室の主とその仲間達と言ったとこか。
本棚の並びは綺麗に整頓されているため物を探す上でわかりやすい。が、膨大な書物があるにも関わらず看板や目印があるわけではないので
何がどこにあるかちゃんと把握しているのはここの主とその使い魔(だと思われる)くらいである。
桃花が何個目かの曲がり角を折れると少女が本を棚に戻しているのを見つけた。
「すみません」
「え、あれ? どなたですか?」
当然の疑問であろう。別に全ての窓が開かれているわけではない。入り口以外から入るとしたらやはりドアを開けなければいけないのだ。
ドアを開ければ主か、もしくはこの使い魔(仮)が気付くであろう。
「いや、私も何がどうだかわからないんだが……かくかくじかじかなんだ」
「テラスから跳んだらここに来たんですか。不思議な話ですね」
「全くだ。まぁこんなことは慣れてきたから特に気にすることでもないが……」
「ちょうど紅茶を入れようと思ってたんですよ。一緒にどうですか?」
「……失礼だが見知らぬ人間をお茶に誘うなんて無用心だな」
「いえ、ここではよく乱入者が来るのでおかしくないんですよ」
「乱入者ねぇ」
「はい、本をたくさん借りて返さない乱入者が」
桃花は素直に興味が沸いたのでお誘いに乗ることにした。
案内された先は三方が本棚に囲まれた広間で中央にはテーブルが置いてあった。
テーブルのある一方だけ本が高く積んであり、本の隙間からちらちらと薄紫の帽子が見えている。
そしてそのテーブルは一階部分にあり、自分が二階部分にいることを知った。
何か違和感をする。さきほどから感じているものだ。本に対してのものかと思ったがそうではない。
桃花が来た道を振り向く。だがそこには本棚しかない。そう、道がないのだ。
先導する使い魔(仮)に話そうとするが少女はどういうわけか階段を使わず、ふわふわと飛んで降りていった。
階段を使って追いかける。下りながら少女の姿を良く見る。
赤い髪が肩口ぐらいまでは伸びている。それ以上は短くはない。白い長袖に黒のワンピースだろうか。
頭と背中に小さな羽がある。そこまでは何回見ても同じものだ。ただ他のところがおかしい。
髪は肩口で終わりかと思ったら腰まで伸びた。かと思うと短くなっていく。
体型も常に変化している。ここで違和感の正体に気付く。
この図書館も彼女も存在が、いや、存在が不安定なのだ。
ある程度までは決まっているようだが、それ以上は自由が利いているのだ。
特にこの図書室。今は階段を下っているが、一階部分についたと同時に一階建ての図書室になってしまうかもしれない。
こんなに大きなものが一定の形を保っていない。なぜこのように存在が不安定なものなのか。桃花にはわからない。
一階に着き、テーブルに向かう。本に埋れていた薄紫の帽子を被った主がこちらを見る。
「客人?」
「そうですよ。どうやら違う世界から迷い込んできたみたいです」
「突然すまない。私も何がなんだか……」
「違う世界、ねぇ……」
薄紫の少女が立ち上がり、桃花の前に来る。帽子だけではなく全身薄紫の服を来た少女も先ほどの使い魔(仮)
と同じく、体型髪型。そういったものが常時変化している。
「少し聞きたいのだが……こちらの世界ではモノは常に変化しているのか?」
「時間が経過する限り、物事は変化し続けるわ」
「言い方を変えよう。君も含め、彼女も。そしてこの図書館も一瞬たりとも一定の形を保つことはないのか?」
「質問の意味がわからないけど私から見たら、その子も図書館もずっと同じ形をしているわね」
彼女たちの見る世界と桃花の見る世界。不安定な世界と一定の世界。
この場合、どちらが正しいのだろうか。普通に考えてみれば薄紫の少女の言い分が正しいだろう。
だが、桃花において言えば。あらゆる世界を渡ってきた桃花から見れば。
おかしいのはこの世界なのだ。
桃花は頭を振る。常に変化するものを見ていると眼が疲れるのだ。さらに頭も疲れる。
「あなたには私がどんな風に見える?」
「全身薄紫の服に紫色の長髪。ただし、髪は結ばれたり結ばれなかったりを繰り返している。
身長も上下している。見た目も幼かったり大人びていたりと一定しない」
「そう……」
薄紫の少女が自分の席に戻る。桃花も近くにあった席を念入りに調べて座る。
使い魔(仮)が彼女の前に紅茶を置く。さすがにこんな世界の飲み物を取る気はしない。
「今までの世界ではこんなことなかったの?」
「なかった。全てが一定の形をして……」
何か引っ掛かる。そういえばもう一箇所。明確に記憶しているはずなのによく思い出せない場所がある。
最初の場所だ。桃花は思い出す。あの空間。暗かったような気がするがそれ以上を思い出せない。
ただ明確に記憶はしているはずなのだ。なのに思い出せない。矛盾している。
「心当たりがあるみたいね。多分ここはそこと同じような場所なのよ」
「同じような場所……」
薄紫の少女が自分の紅茶を飲む。意味ありげなことを言う薄紫の少女だが彼女も特に何かをわかっているわけではない。
彼女の視点から桃花を見ても特にぶれてはいない。安定している。桃花の狂言かもしれない。
だがどちらにしろやることは決まっている。
「飛べないの? 他の世界に」
「跳び方がわからない。あの時もなんで跳んだかわからないし普段も歩いてると気付いたら、だったからな」
「そう。それじゃあ気付かなければいいんじゃないかしら」
薄紫の提案に桃花が首を傾げる。
「つまり外への意識を切るの。ひたすら内面を見続ける」
「それは寝ろということか?」
「違う。寝てるときもどこに寝ているかって意識するでしょ。だからそういうのを全て断ち切るの」
「全て……」
桃花が腕を組み、目をつぶる。視覚は消えた。嗅覚も、味覚も、触覚も、聴覚も。全て。全て。
静かに。なにもなく。ただ静かに。安定していて。不変で。近く。遠く。明るく。暗く。大きく。小さく。
「……やっぱりこのやり方はむr」
眼を開けた桃花は見知らぬ町のカフェにいた。
ある程度までは決まっているようだが、それ以上は自由が利いているのだ。
特にこの図書室。今は階段を下っているが、一階部分についたと同時に一階建ての図書室になってしまうかもしれない。
こんなに大きなものが一定の形を保っていない。なぜこのように存在が不安定なものなのか。桃花にはわからない。
一階に着き、テーブルに向かう。本に埋れていた薄紫の帽子を被った主がこちらを見る。
「客人?」
「そうですよ。どうやら違う世界から迷い込んできたみたいです」
「突然すまない。私も何がなんだか……」
「違う世界、ねぇ……」
薄紫の少女が立ち上がり、桃花の前に来る。帽子だけではなく全身薄紫の服を来た少女も先ほどの使い魔(仮)
と同じく、体型髪型。そういったものが常時変化している。
「少し聞きたいのだが……こちらの世界ではモノは常に変化しているのか?」
「時間が経過する限り、物事は変化し続けるわ」
「言い方を変えよう。君も含め、彼女も。そしてこの図書館も一瞬たりとも一定の形を保つことはないのか?」
「質問の意味がわからないけど私から見たら、その子も図書館もずっと同じ形をしているわね」
彼女たちの見る世界と桃花の見る世界。不安定な世界と一定の世界。
この場合、どちらが正しいのだろうか。普通に考えてみれば薄紫の少女の言い分が正しいだろう。
だが、桃花において言えば。あらゆる世界を渡ってきた桃花から見れば。
おかしいのはこの世界なのだ。
桃花は頭を振る。常に変化するものを見ていると眼が疲れるのだ。さらに頭も疲れる。
「あなたには私がどんな風に見える?」
「全身薄紫の服に紫色の長髪。ただし、髪は結ばれたり結ばれなかったりを繰り返している。
身長も上下している。見た目も幼かったり大人びていたりと一定しない」
「そう……」
薄紫の少女が自分の席に戻る。桃花も近くにあった席を念入りに調べて座る。
使い魔(仮)が彼女の前に紅茶を置く。さすがにこんな世界の飲み物を取る気はしない。
「今までの世界ではこんなことなかったの?」
「なかった。全てが一定の形をして……」
何か引っ掛かる。そういえばもう一箇所。明確に記憶しているはずなのによく思い出せない場所がある。
最初の場所だ。桃花は思い出す。あの空間。暗かったような気がするがそれ以上を思い出せない。
ただ明確に記憶はしているはずなのだ。なのに思い出せない。矛盾している。
「心当たりがあるみたいね。多分ここはそこと同じような場所なのよ」
「同じような場所……」
薄紫の少女が自分の紅茶を飲む。意味ありげなことを言う薄紫の少女だが彼女も特に何かをわかっているわけではない。
彼女の視点から桃花を見ても特にぶれてはいない。安定している。桃花の狂言かもしれない。
だがどちらにしろやることは決まっている。
「飛べないの? 他の世界に」
「跳び方がわからない。あの時もなんで跳んだかわからないし普段も歩いてると気付いたら、だったからな」
「そう。それじゃあ気付かなければいいんじゃないかしら」
薄紫の提案に桃花が首を傾げる。
「つまり外への意識を切るの。ひたすら内面を見続ける」
「それは寝ろということか?」
「違う。寝てるときもどこに寝ているかって意識するでしょ。だからそういうのを全て断ち切るの」
「全て……」
桃花が腕を組み、目をつぶる。視覚は消えた。嗅覚も、味覚も、触覚も、聴覚も。全て。全て。
静かに。なにもなく。ただ静かに。安定していて。不変で。近く。遠く。明るく。暗く。大きく。小さく。
「……やっぱりこのやり方はむr」
眼を開けた桃花は見知らぬ町のカフェにいた。
「消えましたね」
「消えたわね」
一方、図書館。眼の前から忽然と消えた桃花のいた席を見る。紅茶がゆらゆらと湯気を立てている。
「夢かしら」
「夢ですかねぇ」
「よぉ! 本を借りに来たぜ!」
「ねぇ、本返してくれない?」
「死んだら返すさ!」
「いつも通りね」
「いつも通りですねぇ」
「え、なにが? お、紅茶用意してくれてたのか。さんきゅーさんきゅーじゃあ遠慮なく頂くぜ」
「消えたわね」
一方、図書館。眼の前から忽然と消えた桃花のいた席を見る。紅茶がゆらゆらと湯気を立てている。
「夢かしら」
「夢ですかねぇ」
「よぉ! 本を借りに来たぜ!」
「ねぇ、本返してくれない?」
「死んだら返すさ!」
「いつも通りね」
「いつも通りですねぇ」
「え、なにが? お、紅茶用意してくれてたのか。さんきゅーさんきゅーじゃあ遠慮なく頂くぜ」