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capter4 「アークの覚醒」 プロローグ

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蝉の声が響く夜。山岳地帯の下腹部にある森の中で月の光が薄らと差し掛かるテントが張られている。
その中で少女がくうくうと寝息をたてているのを確認して、男はテントの中に入った。
目の前に少女がいる。それに気付かれぬように彼はゆっくりと彼女の前に立った。

―――ああ、いた。

そうして歪んだ笑みを浮かべた男の心を焦がすのは憎悪の青い炎。
それは日が立つごとに強く淡く燃えて、周囲の全てを焼き尽くさんとする地獄の業火だった。

―憎い。

喉の渇きを感じ、唾液を飲み込む。

「――――んや」

少女は寝返りを打って、静かしに幸せそうに寝言を言っていた。
その一挙一動が憎いと男は思う。
何故、そのような顔をしていられるのか?
何故、そのように無防備でいられるのか?
何故、幸せそうに微睡みにいる事が出来るのか?
その顔を見て、怒りが男の中に込み上げる。そう思う。

―憎い。

目の前にいる少女こそが自分から全てを奪った元凶であるというのに…。
父を殺し、母を殺し、それを悪びれもせず世界で虐殺を繰り返す元凶だというのに…。
それをまるで知らないとでもいうかのように少女は安らかに眠っている。
安らぎ、そんなものを少女が得る事自体、男には許せなかった。
男はゆっくりと少女を起こさないようにして、彼女の首にその両の掌を伸ばした。
もう少しでこの手が彼女の首の骨にかかる。
怒りと憎悪で震える手を努めて―――――

――――憎い!!!!!!!!!!

指先が少女の首を覆うようにして掴む。
力を入れる掌に感じるのは柔らかい皮膚の感触と頚椎の固い感触。
少女が急な事に目を覚まし、男の手を反射的に掴み暴れようとする。
男は構わず体で暴れる彼女を抑え込み、全身全霊を込めて首を締め上げる。
死ね、死ね、死ね!貴様は死ね!
そう吠えるようにして言いながら力を込める。
男の中から溢れ出る殺意。目は血走り、頬は紅潮し、歯を噛み締めてただ、少女を殺すことだけに注力する。
少女は何が起こっているか理解出来ず抵抗し苦しみながらも、開いた瞳でおぼろげに男を見つめる。
そして男を見て、少女は全てを理解して―――抵抗をやめた。
そして顔から血の気が引き真っ青な表情になりながらも…本当に嬉しそうに笑った。
ああ、良かったと…それが自分にとっての幸せなのだと…おそらくは自分を殺そうとするその男の行為の全てに感謝して、男の仇とまるで同じ顔を持った少女は幸福感に包まれた。
その笑顔に、男は、黒峰潤也は耐える事が出来なくて――――

「ふざけるな!!!」

そう言って手を離して、怒鳴った。
少女、琴峰藍はけほけほと咳をしながら潤也を見つめる。

「否定しろ、怒れ、なんでそんな嬉しそうにする!俺は今、お前を殺そうとしたんだぞ!それも琴峰咲を殺す為の予行として!」

そう叫ぶ潤也、その瞳は今にも泣き出しそうな弱さがあった。

「けほ、けほ、で、だって、わたしは死なない体…だし、それに何よりこんな私でも潤也の役に立てると思ったらそれだけで…嬉しくなっちゃって…。」

咳をしながら、それでも嬉しそうに言う藍。

「お前は俺を恨んでいいんだ!お前は俺を憎むべきなんだ!なんでそんな俺をそんなに大切にする。なんでそんなにお前はそんなに自分をないがしろにする!」

そう叫ぶ潤也にさも当然のように藍は言った。

「そんなの当然だよ。あの日、あの地獄から潤也が助けてくれたからわたしはここにいる。だからこの体は潤也の為にある。どんなに酷使してくれたっていい、憎いのならば殺す練習に使ってくれたっていい。わたしには潤也が全部なんだよ。だから潤也の為だったらなんだって出来る。」
「それが―――――」

間違っている。
そう喉から出かかった言葉を潤也は抑えた。
黒峰咲への復讐、その炎をこのような事をしなければ保てない自分の弱さが結局今回のような事態を招いている。
結果、全てが中途半端に終わってしまい、そうした最大の原因は自分だ。
だからこそ、そんな事をいう資格が自分にはない。
そう、黒峰潤也は理解している。
潤也は立ち上がり、テントを後にしようと膝をついて俯き咳をしている藍の後ろに去る。
そして外にあった巨木を八つ当たりのように右拳で乱暴に殴りつけた。
拳が裂けて血がる。しかし構わず潤也は何度も何度も何度も殴り続けた…。
自分の弱さに苛立ちを覚えながら。
琴峰藍は、テントの中で乱れた呼吸を戻し、仰向きになって寝転がって言う。

「潤也、今日はもういいのかな?私を殺そうとしないで…。」

そう黒峰潤也の事を案じて告げる藍。それ事態が異常であるという事をまるで自覚せずに…。
黒峰咲との決戦を迎える2日前の出来事であった。


CR code Revegeon 第4章『アークの覚醒』 プロローグ 了


これは全ての終わりの物語だ。
無限に広がり、全てを飲み込み染める闇だけがそこにある。

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