「さて、どうしたものか……」
その手に巨大な禍々しい剣を携えながら、
カーチスは呟いた。
たしかに自分は死んだはずだが、気がついたらあの会場にいた。
呆然としていると、
ヴォルマルフとかいう男は殺し合いゲームの説明を淡々と述べていった。
同じ場にいた魔王
ラハールが軽くあしらわれていたことから察するに、この催しの主催者は魔王以上の力を持っているということか。
「……どうする」
再び自問をしながら、カーチスは両手で剣を柄を握った。
振り上げ、振り下ろす。
その剣の重量を知っていれば、どれだけ鍛えていようがふつうの人間では彼と同じようなスピードで振るうことは不可能であると分かるだろう。
彼はサイボーグだ。ゆえに常人とは比べ物にならないほどのパワーを持っている。
「――なるほどな」
そう、そのはずだ。しかし大剣を難なく振るえはしても、その力は本来のものよりかなり落ちていた。ついでに、体重に関しても変化しているとわかった。
参加者の能力差をできるだけなだらかにするための仕組みなのだろう。たしかに体重に関しても、400kgに近い重量ではそれだけで凶器になり得る。
カーチスは一旦大剣を草原に置くと、足元に置いていた袋を手に取り中身を再確認した。
水や食料、地図や名簿に混ざって、一つだけ違うものがあった。
鍵だ。しかし何に使うかは一切わからない。どこで使うかを記した紙もなければ、どうしようもなかった。
取り出したものを袋にしまい、それを背負うとカーチスは大剣を右手に持った。
東に橋が見えたので、現在位置はわかっている。向かうべきところは既に決めていた。
――そして、すべきことも。
ゴードン、アンタの地球勇者魂はオレの心にも届いた。
一度死んだ身だ、どうなっても構いやしない。
オレはアンタから教えられたものを持ってして、このクソッタレなゲームから皆を助けることに尽力しよう。
ゴードン、お前もそうするだろう。だがお願いだ、アンタは死ぬなよ――
ただ広がる草原の向こうに人影を認めたのは、それから十数分後だった。
遠目ではよくわからなかったが、近づくにつれてその影が何をしているかが見えてきた。
うずくまっていた。その場で微動だにせず、手に何かを持ちながら。両者の距離が十メートルほどになるまで近づくと、カーチスは歩みを止めた。
こちらに気づいているのかいないのか、ずっと同じ姿勢のままでいる眼前の人物を観察する。
長い赤髪に白い帽子、白いマント、白いブーツ。あの会場で、“ディエルゴ”と呼ばれる何かについて反応していた女性だった。
その時の様子からすると、彼女は信ずるに値する人間だろう。彼女と情報交換をして協力すべきだ。
「大丈夫か?」
カーチスは声をかけながら、ゆっくりと女性に歩み寄った。しかしそれでも反応はない。
歩みを続けながら、カーチスは女性が震えていることに気づいた。精神的なショックか何かで情態を乱しているのか。
「おい……」
距離にして二メートルもない両者の位置。そこまで来て、やっと女性は動きを見せた。
手にした槍をこちらに突き出して。
「…………ッ!」
その行動は予測していた。だが予想外だったのは、その速度だった。
槍の先の両側には左右対称に三日月状の刃が付いている、ハルバードに近い武器だ。その長さと形から察するに重さはこの大剣並、いやそれ以上のはずだった。
にも関わらず、女性の力とは思えない速度で槍を繰り出してきた。
一瞬でも遅れていたら凶刃に貫かれていただろう。カーチスは全力で振るった大剣で槍を弾いていた。
その衝撃に、女性は地に伏した。そしてうめき声を上げながら頭を抑える。
もう襲ってくる心配はないだろう、そう判断してカーチスは吹き飛んだ槍に駆け寄った。
しゃがみ、ゆっくりとその柄に触れる。
――――ッ!
脊髄反射の如く、手を引っ込めていた。やはりまともな代物ではない。迂闊に触ることもできないので、放置するしかないようだ。
原因の確認を終えて、カーチスは女性のもとへ戻った。相変わらず頭を抱えていたが、なんとか言葉は出せるようだった。
「大丈夫か?」
「……はい。……すみません、わけもわからなくなって……」
「気にするな。いろいろと訊きたいことはあるが、ここじゃゆっくり話せねぇ。近くに村があるはずだ、そこまで行く」
女性はコクリと頷いた。だが顔色はかなり悪い。早めに辿り着いて休ませたほうがいいだろう。
「名前は」
「……
アティ、です」
「オレはカーチスだ」
「カーチスさん……。ありがとうございます……」
「気にするな」
それだけを話して、二人はC-3の村に向かって黙々と歩き始めた。
【C-4/草原/1日目・朝】
【カーチス@魔界戦記ディスガイア】
[状態]:健康
[装備]:オウガブレード@タクティクスオウガ
[道具]:支給品一式、鍵
[思考]1:C-3/村へ向かい、アティを休ませる
2:仲間を集め、脱出方法を見つける
[備考]:死亡直後からの参戦
【アティ@サモンナイト3】
[状態]:神経衰弱
[装備]:なし
[道具]:支給品一式(不明アイテム)
[思考]1:カーチスと行動をともにする
2:仲間が心配、特に
ベルフラウ
3:ディエルゴのことが本当ならば、なんとかしなくては
【備考】
近くにイービルスピアが落ちています。
【オウガブレード@タクティクスオウガ】
悪魔の代名詞とされるオウガがきたえた巨大な剣。
装備者は自分の身体と敵の身体を入れ替えるボディスナッチを行使できる。
【イービルスピア@タクティクスオウガ】
邪神が自らの使い魔に持たせたと伝わる槍。悲しみや、絶望を増幅して力に変換する。
オウガブレードよりも重い。槍の先の両側に三日月状の刃が備えられている。
最終更新:2009年04月17日 08:50