結果とは必ず行動に伴うものである。
途中経過などを考慮したとしても最後に何をしたかで結果というものは
当初の思惑とは一変してしまうものなのである。
それは望むも望まぬも関係なくやってくるものなのだ。

その男が何かに誘われるように近づいてきたとき、
ハミルトンは思わず反射的にその男に対してグラディウスを振るっていた。
男は驚いたようだが、それよりも彼の乗馬が彼よりも早く反応し
大きく仰け反りながら嘶く事で結果としてはハミルトンの攻撃からは
逃れられたが、一連の出来事に彼は上手く対処する事ができずに
落馬して体を強く打ち付けることになってしまった。

「グッ!…ウゥ……」

白馬から落ち、身体を打ち付けた男の苦痛の声を聞いて
それまでは何処か他人事の用に眺めていたハミルトンは自分の
した事にやっと気がついたのである。

(…私は何をしているのだ!?
敵意があったかもどうかも分からない相手にいきなり武器を振るうとは!)

普段の自分だったら絶対に犯さないであろう愚行に自分自身が一番驚いていた。

「すまない、大丈…(今なら、この男に簡単に止めをさせるんじゃないか?)」

ハミルトンが本気で男の安否を心配し、近寄ろうとしたときに彼の脳裏には
その思いとは裏腹の甘い囁きが響き渡ってきていた。

(不用意に近づいて来た様に見せてこの男はこの武器を狙っていたのではないのか?
そもそもこの男は本当にこの争いに乗っていないのか?油断を誘おうとしているだけなのでは?)

次々に聞こえてくる甘い囁きに彼は苦悩する、普段の彼ならばこのような事は
微塵も考えないであろう事も忘れて。

「私は…どうしたというのだ。何故このような事ばかり。」

倒れている男に対して近寄るべきか否かで迷う。
頭の中では(デニム君は無事だろうか?)と考える余裕もあるのにだ。

だが彼は騎士だ、しかも聖騎士の位を授かるほどの気高き人物である。
自分の犯した過ちで目の前の人物に傷を負わせたのなら償わなければならない。
彼は迷いを吹っ切り、男に近寄ろうとした。

だが、

(この男に近寄ってはならない!)

身体がそれを全力で拒否したのである。
それはさっきまでの囁きとは別の感覚、戦場で磨き上げた危機の察知、動物的な本能。
それが今度は近づく事を拒否している。

彼は囁き、本能全てを否定して自分の思いを優先した。

「すまない!大丈夫か?」

自分の思いを再確認するかのようにそう口に出し男に近寄る。

「うっ…大丈夫だ、こちらも不用意だった。」

男は少しよろめきながら立ち上がりこちらに向き直ろうとしていた。
が、その動きが突然止まる。

「おまえ…何を持っている?」

男はハミルトンのある一点だけを見つめていた。

ハミルトンはその言葉に思い当たるところがある。
自分に支給されたものの中で一品だけ用途が分からないものがあった。
何故かそれは大事にしなければならないという考えが頭の中を過ぎり
懐にしまっていたものである。

「これの事か?」

自分がしてしまった事で相手に警戒心を与えてしまっていた事を悔いていた、
だからそれを解くきっかけにでもなればとしまっていた物を相手に見せた。

彼は自分の判断を誤っていた。
そもそも彼は自分の磨き上げ来た本能に従うべきだったのである。
つまり目の前で倒れている男の事を無視しさっさとその場を離れるべきだったのである。
だが彼にはそれは出来ない。
だが、それは間違った行為では無かったかもしれない。
“それ”を取り出しさえしなければ。

“それ”を見せた瞬間、空気が一変した。

男は間合いを詰めるとハミルトンの手から“それ”を奪い取ったのである。

「何を…」

そのあとの言葉がつぐめない。
男の拳が自分の鳩尾へと突き刺さり苦痛で声を発する事ができなくなっていたからだ。
体勢を崩しそうになっていたハミルトンの身体を首を掴む事で強引に支えながら
男はハミルトンに語りかける。

「これは私のものだ…返してもらおう。
そういえばまだ名乗っていなかったな我が名は暗黒皇帝ハーディン
お前の最期を見届けてやる男だ。」

さっきまでの威厳とは別物のまるで人間とは思えないような殺気を発し
ハミルトンにとって最も危惧していた名を告げる男、ハーディンは
話を終えると共にハミルトンを橋から突き落した。

「うおぉぉぉっ……」

急速に落下していくハミルトンを言葉とは裏腹に見届けようともせずに
自分の足元に先ほどハミルトンが落としていったグラディウスを拾い上げると
そのまま白馬に跨りその場を去っていくハーディン。

「くくく…待っていろよマルス。おまえは私の手で葬ってやる!」

彼は気づいていない、いや気づけない。
自分が先程までとは全く逆の考えをしている事を。
最早、彼は引き返すことはできないのかもしれない“それ”いや『闇のオーブ』に
見初められている限りは…

【C-4/橋/1日目・午前】

【ハーディン@紋章の謎】
[状態]:闇のオーブの影響で暗黒皇帝化
[装備]:グラディウス@紋章の謎、アッサルト&弾薬10発分@タクティクスオウガ
[道具]:支給品一式 闇のオーブ@紋章の謎 、白馬@紋章の謎
[思考]1:マルスを殺す
     2:全ての参加者の皆殺し






水の冷たさで目が覚める。

(私は助かったのか?)

橋は結構な高さがあった、助かったのは下が海だったからもあるが
奇跡といっても過言ではないだろう。

(上がらなくては…)

そう思い海から上がろうとしたところで全身に激痛が走る。
助かったとは言っても無傷ではなかったらしい、肋骨が数本、それに右足は動かす事ができない。

「私はただ死ぬ訳にはいかない…デニム君…カチュア…」

激痛が襲う中、極力負担にならない動きで海から砂浜まで這い上がりハミルトンはそこで再び気を失った。


【D-4/岸辺/1日目・昼】

【ランスロット・ハミルトン@タクティクスオウガ】
[状態]:重症(肋骨と右足を骨折)
[装備]:無し
[道具]:無し
[思考]3:ゲームの破壊、脱出
支給品の入ったザックは流されていってしまいました。
闇のオーブからの影響からは脱しています。

040 アルガスの受難 投下順 042 誤解絡む情報交換
040 アルガスの受難 時系列順 029 希望の先へと
025 ソウルフル・ブリッジ ハーディン 050 誰がための戦い
025 ソウルフル・ブリッジ ランスロット・ハミルトン 062 鷹と竜と聖騎士と
最終更新:2009年04月17日 09:32