ランスロット・タルタロスは自身を取り巻くの環境の変化が
予想以上に遅々として進まない事にイラつきを感じていた。
半日やそこらでの劇的な変化こそ期待してはいなかったが、
先程の
ホームズとかいう青年達との遭遇は彼にとって、
少なくとも自分の存在に敵意を感じる者を作ってしまったという
不都合な部分ばかりを残し、彼が今後行動を起こす際の障害の一つに
なる可能性すらある。
更に自分の傍らにいる男、
マグナの能天気振りがそのイラつきに拍車をかける。
(いっそ、殺してしまおうか?)
そう考えた事は既に数え切れない程である。
だが、彼は結局その手を下す事をしなかった。
(マグナには利用価値がある。)
マグナが語った「
ネスティ」という特殊な人間の存在。
それは彼の今後の身の振り方を決める重要な可能性を持っていると言うのである。
自分の首に纏わりつく忌々しい物体…首輪。
あの
ヴォルマルフという男の演出は際だっていた、自身より遥かに大きな怪物を
一瞬の下に葬り去る圧倒的な破壊力を最初に見せ付ける事で、
逆らう事はできないと自分達の脳裏に刷り込んでいるのである。
その首輪を解除する事ができるかもしれないと言われれば、
ただ指を咥えて待っているほど彼は愚かではない。
放っておけば他の者によって殺害される可能性もある。
出来るだけ早期に自分の手元に置いておくに越した事はないのである。
もし、その「ネスティ」という男を確保できなかったときは、
そのときこそマグナを殺してしまっても構わないだろう。
…だが、
彼は傍らで先程ホームズ達と合流できなかった事を
蒸し返して愚痴っているマグナを横目で見る。
(やはり、こちらを見るか。)
彼がマグナを殺そうとはしないもう一つの理由。
マグナの肩に止まる小さな一羽の鳥の存在。
この小鳥は自分がマグナに殺意を感じたときに、
決まってこちらを覗き込んでいる。
物理的な妨害ではないが、何故か其処に酷くやり難さを感じてしまう。
小鳥にまるで自分を咎める様な意思を感じてしまうのである。
(…いや、咎めるのとは少し違うな。
あれはまるで私に「本当に殺すのか?」と純粋に質問しているかのようだ。
どちらにせよ、この私が小鳥程度に屈服しているとはな。)
自嘲めいて彼が自分の口元を微かに歪ませたときだった。
「あっ!ちょ、あれ!?」
マグナが素っ頓狂な声を上げた。
マグナが声を上げた理由を説明しようとするよりも早く、
マグナの言わんとしていた事は前方を注視した際に理解できた。
「…人だな。」
ここからでは遠くてまだ細かい判別は難しいが、
どうやら少年と鳥らしきものを前方に確認できる。
「よ~し、今度こそ俺が説得してみせる。」
「…待て。」
マグナが息巻いて声をかけようとしていたが、即座に止める。
「私達より先行しているはずのホームズたちの姿が見当たらない。
…という事は彼らはあの少年達をわざわざやり過ごした事になる。
それをどう思う?」
「それは、え~っと…」
「あの少年達が私達の予想以上に危険な存在なのかもしれない、
という事だ。」
冷静に状況から判断した事をマグナに伝える。
いくら馬鹿でもこれくらいは理解できるだろうと思ったが、
こちらが説明を終えた時の彼の顔は明らかに不満一色だった。
「…それだって、偶々ホームズたちが
通り過ぎちゃっただけかもしれないじゃないか。」
この男の頭の中にはお花畑でも生えているのか?と本気で疑いたくなったが
それは一先ず置いておき簡潔に返す。
「あの様に目立つ者達をか?」
「うっ!!」
そう目立つのである。
街道の真ん中に君臨するかのように陣取るその姿は
「見つけてください」と言っているようなものである。
それをするということはよほど自分達に自信があるものか愚か者のどちらかである。
…若しくは両者なのかもしれないが。
ホームズ達はあの少年達を前者と捉えた上で、
何かあの少年達に関する情報を持っていたからやり過ごしたのであろう。
(ここは、やり過ごすべきだな。)
そう彼が判断したとき、彼の視界にまた別な人物が飛び込んできた。
茶髪の青年、見覚えは無い。
マグナに振り返るが彼も流石に察したのか首を振ることで、
やはり見覚えは無い事をこちらに伝える。
「どうする、アルフォンス?」
やり過ごすつもりだったが、この状況は使えるかもしれない。
どう転ぶにせよ、あの者達の動向を探るには十分である。
敵意がありそうな者達ならやはりやり過ごす。
利用できそうならマグナ以外の「駒」を確保する。
「…様子を見よう。」
この回答に直ぐにでも自分もあの輪に参加したかったのであろうマグナが
またしても不満顔を見せているが渋々でも同意させる。
マグナを先程のように送り込んだとしても利は全くなさそうだったからである。
傍目から見た少年達の状況は酷く奇妙なものであった。
マフラーの少年はどうやら好戦的な様子であり、後から来た茶髪の青年を
挑発している様子が目に映る。
逆に、先程まで鳥だと思っていた者の中から金髪の少年が出てきて、
こちらは茶髪の青年を説得しようとしていた。
自分からこの二人に接触しようとした茶髪の青年は金髪の少年に
何か声を掛けられると酷く困惑したようであり、
直ぐに踵を返し少年達から離れていった。
「ど、どうする、アルフォンス!?」
傍らでマグナが一人焦っている。
それを放っておき、考えを纏める。
一通りの状況から見て大体の状況は理解できた。
あのマフラーの少年はどうやら利用するのは難しそうだ、
好戦的な輩は何をしでかすか分からない。
あのバルバスの様にこちらの寝首をかこうとする可能性もある、
やり過ごすに越した事はない。
それにあの金髪の少年、彼はあのヴォルマルフに面識があるようだったが、
どうやら頭の切れる人物のようでもある。
どこからホームズのようにこちらに敵意を持たれてしまうか分からない、
やはりやり過ごすべきだ。
ならば、あの茶髪の青年。
あの青年が一番理解し難かった、
まるで自分の行動が自分でも理解できていない。
そんな印象を受けた。
だが、それは私にとっては好都合だ。
混乱している人物ほど利用しやすくなる者はいない。
自分の本当の境遇を知らされ、混乱した
カチュアも自分の義理の弟に
歪んだ愛情を抱き、こちらの都合の良い様に動いてくれた。
人など所詮誰かに与えられなければ考える事も
まともに出来ない愚者ばかりなのだから。
「追うぞ!」
「駒」を増やす機会をみすみす逃すべきではない。
迅速に行動を開始する。
「ど、どっちを?」
だが、如何してこの男は私の琴線を刺激するのだろうか?
「…貴公はその場に留まる者と離れていく者、
どちらに追うという言葉を使うのだ?」
わざと慇懃無礼に返す、
今はこの程度で我慢するしかないのだから。
「あ、あぁ、分かったよ。
…何だよ、そんな言い方しなくたっていいじゃないか、ネスみたいな奴だな。」
「不満は後で聞く、あの人物を見逃すべきではないのでね。」
横目でマグナの肩に止まる小鳥を確認する。
小鳥は真っ直ぐに自分を直視している。
忌々しい、そう思った。
【F-3/平原/1日目・夕方】
【マグナ@サモンナイト2】
[状態]:健康 衣服に赤いワインが付着
[装備]:割れたワインボトル
[道具]:支給品一式(食料を1食分消費しています) 浄化の杖@TO
予備のワインボトル一つ・小麦粉の入った袋一つ・ビン数個(中身はジャムや薬)
[思考]1:仲間を探す(ネスティ優先)
2:皆とともにゲームを脱出したい
[備考]:ユンヌ@暁の女神 が肩に止まっています
【ランスロット・タルタロス@タクティクスオウガ】
[状態]:健康
[装備]:ロンバルディア@TO
[道具]:支給品一式(食料を1食分消費しています) ドラゴンアイズ@TO外伝
[思考]1:生存を最優先
2:参加者と接触し情報収集
3:ネスティとの接触
4:脱出が不可能な場合は優勝をする
5:茶髪の青年(
リュナン)を「駒」にできるか確かめる
最終更新:2009年06月19日 09:27