CardWirth公式シナリオ
part54-313:CardWirth(カードワース)についての基礎知識
part54-314:交易都市リューン
part54-315,316:ゴブリンの洞窟
part54-317~319:見えざる者の願い
part54-320~324、part55-419~424,426:教会の妖姫
- 313 :ゲーム好き名無しさん:2010/11/27(土) 22:44:38 ID:XvxGhAWb0
- 【CardWirth(カードワース)についての基礎知識】
CardWirthは、groupAskにより制作され1998年に公開された、Windows用のフリーウェアです。
基本的には、剣と魔法の世界を舞台にした西洋ファンタジー風のRPGであり、
プレイヤーはキャラクターを作成して「冒険者の宿」に登録します。
それらプレイヤーキャラクター(PC)達でパーティーを組んで
「冒険者の宿」に集まってくる「依頼や厄介ごと」を解決し、
経験・報酬金・アイテムなどを得て成長していく、と言う流れになります。
この「依頼や厄介ごと」ですが、この部分は「シナリオ」として
インターネット上のファイルをダウンロードし、追加していくことができます。
CardWirthの作成者であるgroupAskが制作した公式シナリオもありますが、
ユーザーが作成して配布している「シナリオ」も大量にネット上で見つけることができます。
そう、CardWirthの大きな特色は、ユーザーもこの「シナリオ」を作成できると言う点にあります。
しかもその作成が比較的簡単なので、多くのユーザーによりシナリオが作成されて公開されています。
そのため、プレイヤーは様々な冒険を楽しむことができるというわけです。
以下では、groupAskによる公式シナリオのストーリーを書いていきます。
公式シナリオには「どのくらいの力量の冒険者に適したシナリオなのか」を示す
「対象レベル」と言うものが定まっており、
その対象レベルが低いものから書いていきたいと思います。
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- 314 :CardWirth:2010/11/27(土) 22:46:35 ID:XvxGhAWb0
- 【交易都市リューン】
これは「依頼や厄介ごと」ではなく、リューンという交易都市で買い物をするためのシナリオ。
よって特にストーリーは無く、戦闘もない。
リューンは交通の要所であり有数の大都市である、という設定であり
闘技場、聖北教会、魔術師学連の支部、盗賊ギルド、アイテムショップなど様々な施設が揃っている。
冒険者達はそこで、剣技・魔法・シーフスキルなど能力にあった多様なスキルを身につけたり、
回復アイテム・攻撃アイテムなどを購入して冒険の下準備を整えることができる。
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- 315 :CardWirth:2010/11/27(土) 22:48:59 ID:XvxGhAWb0
- 【ゴブリンの洞窟】 対象レベル1~3
町外れの農家からの依頼。町外れの洞窟にゴブリンらしき妖魔が住み着いたらしく、
夜中に抜け出して暴れたりと被害が出ているので退治して欲しいとのこと。
報酬は銀貨600sp(1sp=100円くらい)。
冒険者の宿の主人は「ありがちな仕事で報酬も安いが、半日で片付くだろうから悪くない仕事」と言う。
ゴブリン程度ならば駆け出しの冒険者である今の自分達でもなんとかなるだろう。
冒険者達は腕試しも兼ねて依頼を引き受けることにした。
問題の洞窟の前に到着すると、一匹のゴブリンが入り口で見張り番をしていた。
まだこちらには気が付いていないようだが、居眠りをしているわけでもない。
君達は、騒がれる前に倒せることを期待して全員で見張りゴブリンに突撃しても良いし、
物音を立てておびき寄せてみてもよい。
パーティーの中の敏捷な者がこっそりと後ろから近づいて首筋を狙っても良いだろうし、
何か使えそうな魔法やスキルなどがあるならば試みてもよい。
どうする?
(どう行動するかや、リューンで購入できるスキルを使うかどうかによって様々に分岐する。
シーフスキル「暗殺の一撃」を使えば密かに近づいて不意打ち、
魔法「眠りの雲」を使えば眠らせたところを一撃、
遠距離攻撃魔法「魔法の矢」「炎の玉」で一撃、など、
適したスキルを使うと他のゴブリンに気づかれることなくこのゴブリンを排除できる。
一方、突撃したり、スキルを使わずにこっそり近づこうとして失敗したりすると見張りが騒ぎ、
中から増援のゴブリンが飛び出して来る上に、これ以後のランダムエンカウント率も上がる。)
冒険者達はなんとか洞窟の中に忍び込むことができた。
洞窟の中ではやはりゴブリンやコボルトといった下級の妖魔がうろついている。
それら下級妖魔より少し手ごわい妖魔「ホブゴブリン」も1匹だけ居たが、
ちょうど居眠りしているところだったため、止めを刺して永遠に眠ってもらう。
(見張りゴブリンに見つかっていたらこのホブゴブリンは起きてしまっており戦闘になる。)
洞窟の片隅では、なにやら金属製の箱が置いてあった。
何かの罠かもしれないと、慎重を期してシーフスキル「盗賊の眼」や魔法「賢者の瞳」で鑑定すると、
鍵はかかっているが罠は無いようだ。
シーフスキル「盗賊の手」で開けると、中から銀貨200spと、ちょっとしたマジックアイテム
「賢者の杖(使用すると所持者の集中力が高まる)」を見つけた。思わぬ副収入だ。
- 316 :CardWirth:2010/11/27(土) 22:51:08 ID:XvxGhAWb0
- 洞窟の最深部では、ゴブリンの群れが待ち構えていた。
その中心には通常のゴブリンより頭が大きく、ローブをまとって杖を持った奇妙なゴブリンが居る。
あれは、ゴブリンの群れに稀に生まれるという知能が優れた上位種、「ゴブリンシャーマン」だ!
このゴブリンシャーマンがこの洞窟に住み着いた妖魔の群れのボスのなのだろう。
ゴブリンシャーマンの駆使する、「眠りの雲」「魔法の矢」「精神破壊」などの多彩な呪文に加え
相手の数の多さにもやや苦労させられたが、なんとか全滅させることができた。
ボス集団を倒したことで残っていた少数のゴブリンも逃げ出し、この洞窟からは
妖魔どもを一掃できたようだ。
宿に戻って主人に報告し、ねぎらいの言葉とともに成功報酬の600spを受け取った。
【ゴブリンの洞窟】 終了
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「対象レベル1~3」なので駆け出し冒険者むけのシナリオ。
それだけに、交易都市リューンで購入したスキルを効果的に使用して進めれば
レベル1パーティーでもなんとかなる。
しかし、ごり押ししたり使用するスキルの判断を間違ったりすると
「ゴブリンに大量にエンカウントしてじわじわと削られたあげく、
ボス戦では居眠りから起きてきたホブゴブリンまでが参戦してしまった」
という踏んだりけったりの状況になり、全滅の憂き目にあいかねない。
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- 317 :CardWirth:2010/11/27(土) 22:53:32 ID:XvxGhAWb0
- 【見えざる者の願い】 対象レベル1~3
旅の途中で、「魔術都市カルバチア」に立ち寄り宿泊した冒険者達。
そこへ、従者を引き連れた肥満体の男が宿を訪れ、こちらを冒険者と見るや話しかけてくる。
彼はガストン・オリバートン男爵と名乗り、ある館の中を調査してきて欲しいと言う。
報酬もちゃんと出すとのことであったので冒険者が引き受けると、
彼は依頼内容の詳細を語り始めた。
カルバチア近郊にある「コフィンの森」に一軒の館が建っており、今は廃屋になっている。
その内部調査をして来て欲しいと言うことだ。
当然、もし内部に妙な動物や怪物が住み着いていたら退治することも求めるが、
内部で見つけたものは冒険者達が好きに持って言っていいという条件で。
わざわざ廃屋を調査する理由について問うと、男爵は一瞬言いよどんでから、
誰も手をつけていない廃屋だし、自分の別荘にするつもりなのだと答える。
そして、調査が終わったら自分の屋敷まで報告に来るように伝えると、
男爵はさっさと立ち去ってしまった。
冒険者達が早速目的の館に向かって出発すると、
「待って、そこの冒険者さん!」
と女の声で呼びかけられた。しかし周りを見渡しても人影はない。
「あぁ、ごめんなさい。今こっちの姿は見えないんだった。
ちょっとまっててね……ブツブツ……」
そう聞こえると同時に、目の前に一人の娘の姿が突然出現した。
彼女はルティアと言う名前で、カルバチアの魔導学院の学生らしい。
彼女の専門とする研究分野は『遮蔽魔法』、つまり姿を隠す事に関する魔法だ。
実はさっきの宿での依頼交渉の際から姿を隠して立ち聞きしていたとのこと。
ルティアの話によると件の館には昔、遮蔽魔法のエキスパートである老人が住んでいた。
遮蔽魔法に関する何かが今でも残っているかもしれないのでルティアも行きたいが、
一人で廃屋を探索するのは怖いので、冒険者達に同行したいと言う。
特に断る理由もないため、この少し臆病な女学生ルティアとも同行することになった。
(以後、NPCとしてルティアも戦闘に参加してくれる。あまり強くないが。)
- 318 :CardWirth:2010/11/27(土) 22:54:50 ID:XvxGhAWb0
- 森の中、問題の館に到着した一行。
館の玄関には鍵がかかっていなかったために中には問題なく進入できた。
早速調査を開始すると、さすがに妖魔が根城にしているようなことはなかったが、
大型のネズミやコウモリといった少し凶暴な動物が数箇所に棲みついている。
また、宝物庫や隠し部屋などでは、ここに住んでいた魔術師が使役していたものか
スケルトンや木製のゴーレムなども襲い掛かってきた。
だが幸い、そこまで戦闘重視の魔術師ではなかったのか、スケルトンやゴーレムは
さほど好戦的ではなく強度も弱かったため、未熟な冒険者たちでも
なんとか対処することができた。もちろん動物程度にやられるわけもない。
宝物庫の宝箱には毒の罠が仕掛けられているものもあったが、
シーフスキルで見破り無事に解除し、中からは宝石や魔法薬品、
火晶石(火の精霊を封じてあり、敵に投げると大爆発する)などを見つけることができた。
そうこうしているうちに、2階の書斎にたどり着いた。
そのとき、老人のゴーストが現れ、冒険者達に誰何の声をかける。
一瞬驚愕したが、そのゴーストは襲ってくる気配がないので話を聞いてみることにする。
ゴーストも、自分を見ることができ、しかも逃げ出すことをしない冒険者達を認めた様子だ。
老人のゴーストは「この館の主にして魔術師、グリシャム・ブロイ」と名乗った。
まさかの館の所有者の出現に恐縮するルティア。
しかし、グリシャムは読心術でルティアが遮蔽魔術師であることを知り、
彼女の正直さを気に入ったこともあって、研究成果を持っていくことを許す。
冒険者達にも館の中の物を持って行くことを許すが、その代わりひとつ頼み事をする。
それは、この館を諦めること。妻との思い出が詰まった屋敷であり、
他人に住んで欲しくないとのことだ。見つからないよう館に封印もして欲しいと言う。
男爵からの元々の依頼に背くことになるため困惑する冒険者だが、
研究成果を譲渡されて感激したルティアが勝手に返事をし、
「いいじゃない、元々お爺さんの家なんだから」と強引に引き受けてしまった。
グリシャムは感謝しつつ、館の「封印」について詳しく説明する。
封印と大げさに言っても、館を見えなくすればそれでいい。つまり遮蔽魔術を使うのだ。
この館の中庭に建つ別館の物置に保管してある、遮蔽魔術装置を持ってきてくれれば
後はグリシャムが起動させるという。そうすれば、この館は通常の時空間からずれ、
この時空に住む物には知覚できなくなるそうだ。
- 319 :CardWirth:2010/11/27(土) 22:56:40 ID:XvxGhAWb0
- 冒険者達は2階の別の部屋にあった鍵を使って中庭に立つ別館に入り、
グリシャムに言われたように別館の物置を探索する。
グリシャム自身は本館に縛られたゴーストであるため、ここまで辿り着けなかったらしい。
件の装置はすぐに見つかったが、そこに邪悪な笑い声が響き、多数のインプが襲い掛かってきた。
使役していたグリシャムが死亡したために、本性としての邪悪さを取り戻しているのだろうか。
だが、インプらの使う「精神破壊」の魔法は少し厄介だったが、所詮肉体的には脆弱な彼らは
冒険者達の敵ではなかった。無事インプたちを全滅させ、遮蔽魔術装置を本館へ持ち帰る。
本館のホールで待っていたグリシャムは冒険者たちに礼を言い、
冒険者達が館を出た後に装置を発動させた。
すると、冒険者達の見る前で館の姿はたちまちのうちに薄れて消えてしまい、
後には森が広がるばかりだった。
ガストン・オリバートン男爵の邸に報告をしに行く一行。
こうなってしまった以上、「聞いていた場所には館などなかった。」と報告するしかない。
その報告を聞いて、「確かにあの場所にあると聞いていたのに」と非常に落胆している男爵。
一応のねぎらいの言葉をかけてくれた後、失敗なのでこれぐらいでいいだろう、と
報酬として1000spをこちらに支払った。
こちらの報告からすると「森に行って何もない場所を見てきただけ」なのだから
少なめの額になるのは致し方ないだろう。
ルティアにも、礼を言われつつ別れを告げ、冒険者達は帰路に着いた。
【見えざる者の願い】 終了
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こちらも駆け出し冒険者向けシナリオ。
遭遇する可能性のある敵キャラクターはネズミやコウモリ、ヘビのような動物と、
生前のグリシャムが使役していたと思われるスケルトン・ゴーレム・インプなど。
どれもそう強くないが、一度に多くの数が出現することもあるので
レベル1だと思わぬ苦戦を強いられるかもしれない。
ただし、動物やスケルトンやゴーレムはあまり好戦的でないのか、
インプ以外は確実に戦闘から逃げることができ、追ってもこない。
なおかつ廃屋内のベッドで休むことで何度でも全回復できるので、
慎重に進めればレベル1でもまず全滅せずクリア可能。
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- 419 :ゲーム好き名無しさん:2011/03/05(土) 23:46:14.12 ID:GFEKVjwk0
- かなり間が空きましたが、CardWirth公式シナリオの続きです
【教会の妖姫】 対象レベル1~3
<プロローグ>
8年前の晩秋、深夜。
激しい雨が降る、宗教都市ラーデックの人気のない裏通り。
美しい女性の顔をした妖魔の死体の横で、雨に打たれながら力なく立ち尽くす一人の神官が居た。
妖魔を仕留めた武器であろう、血に濡れたメイスを取り落とし、神官は苦悩の叫び声をあげた。
「神よ……お救いください……!」
<本編開始>
場面は冒険者の宿。
プレイヤーキャラ達は、宿の壁に珍しい内容の貼り紙があることに気づいた。
普段はモンスター退治や護衛などの、冒険者たちへの依頼の貼り紙が張ってある壁である。
今日張ってある張り紙もいつもと同じく依頼なのだが、「依頼人」の項目ががなぜかこの宿の主人自身になっている。
宿の主人に詳しく話を聞くと、宿の主人が祖父から受け継いだ上質で値打ちもののパイプを、
無類の煙草好きである友人宛てに運送してもらいたいのだそうだ。
その友人は北方にある宗教都市ラーデックで「猫の額亭」という宿を経営しているらしい。
旅費は全て宿の主人が負担、その友人からも報酬が貰えるはずで、割のいい仕事だと言う。
プレイヤーキャラ達はその依頼を引き受けることにした。
数日かけて、ラーデックに到着した一行。
早速猫の額亭を訪れ、猫の額亭の主人にパイプを渡して事情を説明した。
すると彼はパイプの質に満足し、報酬として500spを渡してくれる。
すんなりと依頼を完了した冒険者達は店を出ようとするが、
そのとき十六、七歳ほどの青年二人が大急ぎといった様子で扉を開けて店に入ってきた。
話を聞くと何でも、ラーデックでは冒険者が珍しいらしく
プレイヤーキャラ達が歩いているのを見た人の間で
「冒険者らしい身なりをした者がこのラーデックにやってきた」と噂が出回っているそうだ。
それを聞きつけた彼ら青年二人は、何かを依頼するために
その噂の冒険者達を探し回っていたらしい。
二人のうち、上流階級の出らしい美男子はアルフレートと言い、この街の領主の息子だ。
もう一人の下町育ちの悪ガキといった感じの青年はアルフレートの友人で、名はトービアス。
冒険者達は猫の額亭の奥の席で彼らの話を聞くことにする。
- 420 :ゲーム好き名無しさん:2011/03/05(土) 23:47:48.66 ID:GFEKVjwk0
- ●アルフレートの話●
アルフレートは、数年程前からリアーネと言う少女と交際していた。
リアーネは教会内の庭園に住んでおり、二人は毎日のようにそこで密かに会っていた。
密かにと言うのは、自分のことを誰にも話さないようにと、リアーネがアルフレートに頼んでいたからだ。
リアーネはその庭園から出るのを禁じられているという話だったが、その理由なども詳しくは教えてくれなかった。
だが、つい二日前から庭園に行ってもリアーネと会えなくなってしまった。
心配したアルフレートはとうとう教会の関係者達にリアーネの事を聞いてみる。
しかし、奇妙なことに、リアーネがその庭園に住んでいたことを知るものすら誰も居なかったのだ。
困惑したアルフレートは昨日、トービアスにも秘密を打ち明けて相談し一緒に探し回ってもらったが、素人ができることには限界があった。
そのため、冒険者に依頼することを思いついたのだ。
必死になって頭を下げるアルフレートの熱意に打たれ、冒険者は依頼を受ける。
(断ってとっととラーデックから帰ってしまうことも可能です。)
まずは現場に足を運んでみることにし、リアーネが居たと言う教会の庭園まで行ってみる。
基本的には正規の入り口から、ごくわずかな者のみしか入れないらしい。
しかし目立たないが庭園の壁に崩れたところがあり、そこからアルフレートは出入りしていたらしい。
その崩れた穴から、まずトービアスが中に入ろうとするが……。
いきなり、木陰から現れた神官服の大男が、トービアスをひどく打ちのめした。
当然、食って掛かるトービアスだが、続いてもう一発食らわせられて、ダウンしてしまった。
「そこから先は聖園と呼ばれる区域、庶民のお前達が入っていい場所ではない」
と言って鼻で笑うその大男に、アルフレートが抗議すると
「異端審問官の私に逆らうとは罰当たりな……」とアルフレートまで害しようとした。
見ていられず冒険者達たちが間に入ると、
「さっさと失せろ、次に見たら容赦はしない」と大男はひとまず立ち去っていった。
打撲のひどいトービアスを介抱するために、猫の額亭に戻る一行。
1時間ほどして、トービアスは調子を取り戻したが、「畜生、あの大男め!」と憤懣やるかたない様子だ。
「大男……?」と心当たりがあるかのように聴きかえす猫の額亭の主人にあの男のことを説明すると、「そいつはバルドゥアだ」と言う。
- 421 :ゲーム好き名無しさん:2011/03/05(土) 23:48:48.28 ID:GFEKVjwk0
- バルドゥアは去年の秋ごろからこのラーデックの教会に居ついた異端審問官で、聖職者とは思えない程に乱暴な男らしい。
悪事を行い別の教会から追い出されてここに来たと言う噂まであるそうだ。
この街の教会の司教は住人皆から尊敬されているのだが、
「司教様もあのような男をいつまでも居させるなんて」、とバルドゥアに関する点にだけは不満をもたれているとのこと。
もう一度教会の庭園への入り口に向かったが、入り口には見張りが立っていた。
おそらくバルドゥアの差し金だろう。気に入らないが、しばらく庭園に入ることはできないようだ。
次は、聞き込み調査によって情報を集めてみることにする。
アルフレート本人から得られる情報はわずかで
・リアーネとは7,8年前に出会った
・リアーネには祖父が居る、
・リアーネの瞳は赤い
といった断片的なことしかわからない。リアーネは自分のことをあまり話さず、祖父についても名前は教えてくれなかったそうだ。
まずはリアーネと近いところから聞くべきということで、念のためにもう一度、教会の人々に話を聞いてみることにする。
アルフレートも、さすがにこの教会のトップである司教様には
まだ話を聞いていないということであったため、司教エルンストの執務室にお邪魔する。
司教エルンストはこのラーデックの教会組織を統べる最高責任者でありながら
ラーデックの誰からも慕われる気さくで優しい老人であり、またアルフレートやトービアスとも昔からの顔見知りである。
そのため、突然訪ねても、トービアスが軽口を叩いてもニコニコと応対してくれる。
しかし、司教もリアーネという女の子は知らないと言う。
それどころか、リアーネが居たと言う教会裏の庭園は「聖園」であり、
神がいつでも人目を気にせずに地上に降りて来ることができるよう人が入らないように保ってあり、
毎日司教だけが見回りをしている。その司教もそんな女の子は見たことがないのだ、と言う。
それでもなおアルフレートが聖園でリアーネという女の子と会っていたことを訴えても、
司教は「もしそうなら、それはきっと神様の使いで、もう天に帰ったのだ」と優しくアルフレートを諭した。
また、冒険者たちには、自分の友人である領主の息子、アルフレートのことをよろしくと頼み込む。
それ以上は司教は何も話してくれないため、執務室の外に出る一行。
- 422 :ゲーム好き名無しさん:2011/03/05(土) 23:50:18.95 ID:GFEKVjwk0
- 司教の執務室のすぐ外は礼拝堂になっている。
そこには、司教の部下でありアルフレートとも顔見知りの、ライン司祭が居た。
彼にもリアーネのことを聞いてみるが、やはり彼女のことは知らないようだ。
エルンスト司教の話をしてみると、優しく徳の高い方であると絶賛しつつ、
それなのに数年前に息子家族を事故や病気で次々に亡くしている不幸な方でもある、
と、神が司教に与えた酷な試練について、聖職者の彼でさえ密かに嘆いているようだ。
バルドゥアの話を振ると打って変わって表情を曇らせた。
バルドゥアが以前居た町の教会にライン司祭の知り合いが居り、その筋から聞いたと言う話をしてくれる。
その人によれば、バルドゥアは無辜の市民を魔物扱いして私刑にかけて殺すなど、
異端審問官の権威を笠に着てやりたい放題をした挙句、神前裁判にかけられて追放されたらしい。
それでも本来ならば死罪のはずだったのに、コネを使って難を逃れたとのこと。
「同じ聖職者として恥ずかしい」と吐き捨てるライン司祭。
教会では情報がつかめなかったので、街でしばらく聞き込みを続けると……
一人のおばさんが、リアーネという名前に聞き覚えがあるとのことだった。
なんと、エルンスト司祭の孫娘がそんな名前だったと言う。
赤い瞳をした可愛い女の子だったが、7,8年前に母親と同じ病気で亡くなったのだそうだ。
生きていればアルフレートと同い年くらいだろうと言う。
その話を聞いて、アルフレートは何かに気づいたようだ。
もう一度、教会の司教執務室に戻ってきた一行。アルフレートは、エルンスト司祭を問い詰める。
数年前に病で亡くなったと言う、司祭の孫娘のリアーネは実は死んではおらず、アルフレートと会っていたのはその子ではないのかと。
問い詰められた司教はため息をつくと、君のためにも、ほかならぬあの娘のためにも、
君にだけは話しておくべきだったようだ、と言い、真実をこちらに伝えることを決める。
しかしその時、バルドゥアが「例の件で話があります」と司教を訪ねてきた。
司教は、「バルドゥアとの話合いに行かなくてはならないため席を外して欲しい」と言って、礼拝堂の鍵をアルフレートに渡す。
「今日の夜11時にこの鍵を使って礼拝堂に来てくれれば、そこで真相を話す。」
そう約束し、司教は一旦一行を帰らせた。
- 423 :ゲーム好き名無しさん:2011/03/05(土) 23:51:59.47 ID:GFEKVjwk0
- 夜までの時間を猫の額亭でつぶした一行は、夜11時に約束どおり礼拝堂を訪れた。
礼拝堂内は暗く、司教はまだ来ていないのかと思われたが、中に誰かが居た。
しかし、それは司教ではなく、呆然と立ち尽くすバルドゥアだった。
そして彼もこちらに気づくと、脅えたようにうろたえた。
「ち……違う!俺じゃない!俺がやったんじゃない!」
そう弁明する彼の後ろに横たわる血まみれの老人は……エルンスト司教。
騒ぎを聞きつけてライン司祭や神官戦士達が礼拝堂に駆けつけたが、
司教の体を見て息を呑む。ライン司祭は司教の体に触れ……そして沈痛な表情になった。
バルドゥアはプレイヤーキャラ達を指差して「こいつらが殺したんだ!」と罪を押し付けようとしたが、
バルドゥアの足元には彼の武器である槌矛が血まみれで落ちており、そんな言葉を信じる者は誰も居なかった。
「そ……そうだエルンストが悪いんだ、あいつが私を殺そうと……」
と、証言をころころと変えて逃げようとする往生際の悪いバルドゥアだが、
すぐに神官戦士たちにひっとらえられた。
念のため、プレイヤーキャラ達やアルフレート、トービアスも同行を求められ、事情聴取を受けることになる。
二日後、長かった事情聴取もおわり、冒険者達と青年二人の一行はやっと帰宅を許された。
協力に感謝する旨を告げるライン司教は、心労のためにやつれている。
よほどエルンスト司教のことを敬愛していたのだろう。
バルドゥアのことを聞いてみると、法王庁の許可が下り、バルドゥアは
本日の神前裁判にかけられることになったらしい。おそらく死罪は確定だろうとのことだ。
一行はひとまず猫の額亭に戻り、主人と会話する。
主人たち町の人々の間でも事件の話は広まっており、神前裁判のことも伝わっていた。
本日の朝から既に裁判は始まっており、もうすぐ判決が出る頃だそうだ。
教会は治外法権であるため、通常の裁判ではなく教会法による神前裁判となったが、
それでも、教会法と照らし合わせても、どう考えても死罪は免れないという。
- 424 :ゲーム好き名無しさん:2011/03/05(土) 23:58:04.21 ID:GFEKVjwk0
- 今書きあがってるのはここまで。まだ続きます。