アットウィキロゴ
チェンジ・ザ・ワールド☆
掲示板 掲示板 ページ検索 ページ検索 メニュー メニュー

チェンジ・ザ・ワールド☆

波江5日目・No.3

最終更新:

streetpoint

- view
管理者のみ編集可
私のやんごとなき王子様












「先輩っ! 大丈夫ですか? 僕、送りますっ」


 ふいに右手に温かいものが触れた。

 ふと視線を向けると、そこにあったのは――


「潤君……?」


 どうして潤君が……? いつの間に?

 戸惑う私の手を引くと、潤君は廊下に向って歩き出していた。


「潤君? 取材は?」

「風名先輩達にお任せしてあります」

「……そんな、潤君にだって……チャンスなのに」


 何を言ってるんだろう。自分で自分が分からなかった。


「チャンス? ……先輩、僕は芸能界に興味なんてありません。そんなもの見てません。僕は――いつだって先輩を……」


 私? 私を?


「えっと、先輩の方見たら顔色がすごく悪かったから。だから……その……」

「……」



 ……変な間が空いてしまった。しばらく黙ったまま、部屋の方へと歩みを進める。


 気付けば私の部屋の前に着いていた。


「えっと……やっぱり環境が変わったりすると、体調って崩しやすかったりしますよね! 少し、休んで下さい。僕、また呼びに来ますから!」


 潤君の優しい手が私の手からそっと離れる。


「潤く……」

「美羽っ!?」


 突然前方から飛んで来たさなぎの叫び声によって、私の声は見事にかき消されてしまった。


「あ……さなぎ」


 驚いていると、さなぎはすぐに潤君とは反対側の私の隣りに並ぶと、眉間に皺を寄せて私のおでこに手を当てた。


「あんた顔真っ青だよ! どうしたのよっ!」

「何でも無いよ」

「んな訳ないでしょ?! 波江君、美羽を運んできてくれてありがとう!」


 大げさな事言うな。なんて思っていると、さなぎは私の腕を肩に回して目の前のドアを開けた。


「ほら美羽、波江君にちゃんとお礼言いなよ」

「ん……潤君、あの、本当に有難う」

「いえっ! 何かあれば僕、すぐにまた呼びに来ますんで! ゆっくり休んで下さい!」


 そういうと潤君は小さく微笑んで、くるりと踵を返して行った。



 部屋に入ると私は、さなぎによってベッドへ投げ出された。


「……痛い」


 ベッドに顔から倒れ、それでも体を動かす気力もなかった私は取りあえず大きなため息と一緒に顔をしかめた。


「美羽~。何かあったの?」


 さなぎの言葉が胸に刺さる。私はゆっくりと体を仰向けにすると、天井を見つめて心の中に溜めた思いを吐き出した。


「なんかさ、違うんだよね」

「何が?」

「風名君や亜里沙様や……それに潤君も」

「はあ? どういう意味?」


 チラリとさなぎを見ると、椅子に座って訝しそうに私を見下ろしていた。


「最初から分かってた事だよ。本当に分かってたの……。住む世界が違うって」

「……」


 黙ったままさなぎは私の話に耳を傾けてくれている。


「さっき取材の人達が来たの。たくさんの人にいっぱいワケ分んない事聞かれて……私、完全にパニックだった。」


 思い出すだけでも嫌な汗がにじんでくる。


「そしたら潤君が助けてくれたの。すっごい明るく応対して、取材の人達も、その場の空気も全部飲みこんでた。そんな事は風名君や亜里沙様だから出来る事だって思ってた。でも違ったの。潤君は本当に自然に――私なんかを庇ってくれて……それで」


 もう言葉が出なかった。代わりに涙がボロボロと瞳から零れ落ちていく。


「美羽……」


 さなぎが悲しそうな顔でこっちを見ている。さなぎにまでこんな思いさせて、私は本当に何がしたいんだろう。


「美羽、私達はさ……そりゃ違うよ。芸能人でも無ければ良家の令嬢でもないし。なんてったって電車で現地集合だし?」


 そう言って少しだけおどけた表情を作るさなぎ。


「でもさ、そんな私達を――美羽を波江君は駅まで迎えに来てくれたじゃん。亜里沙様だってそうだよ。とりまきはともかく、亜里沙様はうちらにも優しいじゃん?」

「うん……」


 さなぎは私の顔を見つめると、にっこりと笑った。


「それってさ、きっと同じ学校に通う、同じ生徒だと思ってるからだと思う。芸能人だとかオジョーとか関係なくてさ、大切な――友達だって思ってくれてるんじゃないかな?」


 友達……?


「波江君は別に芸能界に通じてるとか、次期王子様とかそういう事じゃ無くてさ――きっと単純に‘そういう男の子’としてそこで取材を受けた方が、困ってる美羽を助けられるって思ってくれたんじゃないのかな。きっとあの子は……美羽の為にそういう役回りを演じてくれたんだと思うよ」

「私の為……?」

「うん。だってさっき別れ際、波江君――笑ってたけどすごく心配そうだった。波江君は、本当に美羽の事を思ってくれてるんだなって、波江君と美羽が同じ担当で良かったって。私なんか少し安心したくらいなんだから!」

「さなぎ……」

「美羽と風名君や亜里沙様や波江君が違う事なんてないよ。ていうか、そりゃ違うんだけど、でもそうじゃないっていうか――あー、もうっ!  私ってば何言ってんの!? 自分でもワケ分んなくなってきた~~!」


 大げさに髪を振り乱して叫ぶさなぎを見て、私は思わずくすくすと笑ってしまう。


「そうそう! 美羽は笑ってんのが一番だよっ」


 さなぎはそう言って本当に優しく微笑んでくれた。


「ありがと……さなぎ。いつもゴメン」

「なーに言ってんの! なにかあったらいつでもさなぎお姉さまに相談なさい!」


 そう言って自分の胸を大きく叩くさなぎ。そんなさなぎと私はお互いに顔を見合せると、同時に噴き出した。

 ほがらかな笑が部屋いっぱいに響き渡る。


「美羽、本当にさ――思いつめたらダメだかんね? 担当は違うけど、何かあったらいつでも私のトコに来なよ? 約束だよ?」

「うん」


 私は笑顔で頷いた。













ブラウザを閉じてお戻りくださいv
私のやんごとなき王子様トップへ戻る
最近更新されたスレッド
ウィキ募集バナー