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倉持5日目・No.2

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私のやんごとなき王子様












 初めて入ったスイートルームは、生徒用の部屋でも十分豪華なのだけれどそれの何十倍も豪華だった。

 部屋の数は何部屋もあって、シャワールームも何故か2つあった。おまけにカウンターキッチンも冷蔵庫もあって料理が出来ちゃう。


「うわあ~すごい!」


 感嘆の声を上げていると、理事長がキッチンの奥の冷蔵庫からジュースを取り出して渡してくれた。


「こんなに広くなくていいんだけどね。一人だと広いのは何かと不便だし」

「確かにそうかも知れないですけど、私みたいな一般人では一生入れないようなお部屋だから、何だか得した気分です」


 ジュースを受け取りながらそう言うと、理事長は可笑しそうに笑った。

 結構子どもっぽい笑顔だな。36歳、だったっけ……案外年上だけど本当に真壁先生の言う通り話しやすい人だなあ。


「小日向さんは、確か奨学金を受けていたね」

「あ、はい!」


 ぼけっと理事長の整った顔を見て一人物思いにふけっていると、唐突に言われて驚いた。

 すごい、そんなことまで知ってるなんて。一体理事長って生徒のことどのくらい把握してるんだろう。

 そんなに多い生徒数じゃないとはいえ、学園のことにばかりかかり切りではないだろうに、本当にこの人はすごい人なんだと改めて思った。


「うちの学園は楽しい?」

「はい、とっても」

「そう。君の笑顔はとてもキュートだね。楽しさがこちらにまで伝わって来る。さて、取材が来るまでまだ時間がある。困ったことに僕は仕事があるから、小日向さんには取材用の部屋の準備をしてもらいたいんだけど」


 持って来ていたビジネスバックの中からノートパソコンと書類の束を取り出すと、理事長は困ったように笑った。


「あの……はい、分かりました、隣りの部屋でいいんですよね。それでは準備が終わったら一度真壁先生の手伝いに戻ります」

「すまないね。よろしく頼むよ」


 理事長にお辞儀をして、私は急いで準備に取りかかった。


 いつもはこういう仕事も秘書の人がするんだな。知らなかった……だけど笑顔がキュートだなんて、恥ずかしいけど嬉しいな。

 そんな言葉をもらったことなんてなくて、大人の男性の気遣いがとても新鮮でドキドキと私の胸を躍らせた。


















 気付けば取材の時間。取材は学生の様子を一通り見て写真やインタビューをして一番最後に理事長と話しをするという流れ。

 合宿の取材も全部終わり、残すは理事長へのインタビューだけ。

 私はバタバタと理事長のいる部屋へと急ぐと、部屋のチャイムを鳴らした。

 普通の部屋ならノックでいいんだけど、このスイートルームは広いからノックでは奥にいる人まで音が届かないのだ。本当、すごい。

 ブーというどこか間の抜けた音がドアの向こうに聞こえてしばらく、ドアが開いた。


「やあ、小日向さん」

「理事長、もうじき取材の方がこちらへ見えます」

「おや、もうそんな時間かい?」

「はい、お部屋の準備も終わってますし、実行委員の子も待機してくれています」


 私が少し早口で言うと、理事長はうんと頷いて廊下へ出て来た。


「それじゃあ行こうか。仕事を頼んですまなかったね」

「いいえ、とんでもないです」

「取材が終わるまで、部屋にいてくれるかな?」

「あ、はい。もう一人の子と一緒に何かあったらすぐ動けるように待機してます」

「助かるよ」


 ふわりと髪をかきあげる仕草がまるでモデルのように素敵で、私は驚いた。

 遠くで見てもカッコいいと思ってたけど、こうして間近で見るとその整った顔立ちは直視出来ないほど綺麗だ。

 また理事長の顔を見てぼんやりしちゃった! いけない、ちゃんと仕事しなきゃ!

 私は頭を振ると、取材用に準備した部屋のドアを開けた。













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