全ての人の魂の戦い(3)
腕から生えた小さな同じような触手が、怪獣に食い込んでいる。徐々に腕の色素が濃く、逆に怪獣の体は薄くなっていく。
――まずい――直接同化して――のっとるつもりだ――あれでは抗いようが無い――
しばらく怪獣は暴れていたが、動かなくなった。
腕は、怪獣を『月』に取り込んだ。
『月』の表面が跳ねた。浮き上がった形は、何処か人の形に見えた。
確実に迫る絶望の化身。
「胎動が始まったということか!?」
――おそらく――もう時間が無い――
状況の悪化が焦りを呼ぶ。
しかし、時は待たない。ガイキングはまた攻撃を仕掛け始めた。
「なぜ、あれの味方をする!?あれが何か分かっているのか!?」
激しく戦いながら、会話は続く。
「分かっているさ!あれが他の参加者を皆殺しにするものだとな!」
ドリルプレッシャーパンチが発射される
「自分は逃れられるとでも思っているのか!?」
それをかわし、ラアム・ショットガンを弾幕を張るように撃つ。
「思っちゃいないさ!だが、その覚悟はある!どの道、皆殺しにするのは変わらん。
一人では骨が折れるようなのでな、力を借りることにした!」
上からガイキングが回り込んできた。
「利用されているというのがなぜ分からん……!」
Z・Oサイズでガイキングの突進をさばく。
「利用されているんじゃない、俺が利用しているだ!そのためにはちょっとは働く必要はあるだろう!」
身をひるがえし、光線が発射された。
「そう考えるよう思考が誘導されていることに気づけ!」
メス・アッシャーでそれをまた迎撃。
「なんだっていいさ!俺が優勝するのならな!」
爆発で、お互い距離が開く。
――力が足りない。
そのことをマシュマーは感じていた。倒すためには、まだ力が足りない。
だが、これ以上は、命つきかけている彼には無理だ。
「今の私には、見ていることしか出来ないというのか……!」
ヴィンデルがコンソールを叩く。
「マジンカイザー、何か打つ手は無いのか!?」
もう一度、マニュアルを読む。レバーを引く、スイッチを押してみる。
コクピットであらゆる方法を検討するが、答えは出ない。
――このままでは、マシュマーが危険だ。先程仲間といったばかりではないか、今応えずしていつ応えるというのだ……!
「コマッテルヨウダナ、アニキ」
「……?」
――通信……?いや、その電源は落ちている。それに、今の声は……?
「オイオイ、ワスレタノカヨ、ヒドイナ」
この声。あの、ピンク色の……
「――まさか、お前たちか?」
「YES!YES!YES!エグザクトリィ!!」
「お前たち……どうして」
「オットアニキ、ツモルハナシモアルダロウガ、イマハナシダ。カンタンニイウゼ、オレタチガアイツヲ、アシドメスル」
「足止め?どうやるというのだ。」
「オレタチハマダ、キュウシュウサレキッタワケジャネェ」
「コノタマシイホノオ!キョクゲンマデタカマレバ!クダケヌモノナドナニモナイ!」
「セキハ!シャフルドーメーケーン!」
「?」
「トニカク、10ビョウゴ、『ツキ』ト、アイツノウゴキヲトメル。……タノムゼ、アニキ」
――落ち着け――今のお前は独りではない――
「マシュマー!何でもいい、あと10秒持たせろ!そうすれば、奴らの動きが止まる!」
その言葉で、マシュマ-あることを思い出した。先程かわした、約束を。
――『これからは、仲間だ。頼ってくれてかまわんぞ』
「どういう意味だ!」
「とにかくとまるんだ!信用しろ!」
自分には、マジンカイザー、ヴィンデル・マウザーという仲間がいることに。
「確実なんだな……?」
「ああ」
その目に、嘘はない。
「分かった、どの道、外せばすべて終わりだ。これにかけるしかない。……撃った後のことを頼む」
「どういう意味だ、マシュマー?」
「……頼むぞ」
そういって通信を切った。
「征くぞ……!」
ガイキングの光弾をかわし、一気に組み付く。体格差もあってこれは無いと思っていたようで、一瞬ガイキングがひるんだ。
「うぉおおおお!!」
零距離でラアム・ショットガンとメス・アッシャーを限界まで撃つ。ガイキングの体があっという間に損傷していく。
だが、ディス・アストラナガンも損傷は大きい。衝撃と反動で肩ごと両腕が吹き飛んだ。
さらに全力でガイキングを横へ蹴り飛ばす。足もまた潰れて破片が落ちていった。
「ディスレヴ、ファイナルオーバードライブ……!! 」
吹き飛んだガイキングが姿勢を立て直している間に力を解放し、エンジンに臨界まで力を貯める。
「ぐッ……!」
目の前が白む。脳の神経がまとめてぶちぶちと千切れていき、視界が薄く、かつ赤くなっていく。
限界を超えた戦闘の果て、すべての生命力をアイン・ソフ・オウルにつぎ込んだ末消耗で体が悲鳴を上げた。
先程までかいていた汗は無くなった。なぜなら、マシュマーの腕は今、老人のように干からび、節くれになっていたから。
息をすることさえ、激痛で堪えられないほどだった。それでも、霊に従い言霊を紡ぐ。
――アイン・ソフ・オウル――さぁ――
「アイン・ソフ・オウル………さぁ……」
この時、ガイキングが姿勢を立て直し、 マシュマーへ攻撃をしようとしていた。しかし、
「やらせん!」
マジンカイザーからルストトルネードが発射、ガイキングの攻撃を防ぎ、さらに正確にある場所へとガイキングを運んだ。
いくら痛めつけところでアイン・ソフ・オウルを撃つまでは時間が足りない。
だから、マジンカイザーの力が必要だった。そして、その助けにより完成した一撃。
――虚無に還れ!!――
「……虚無に!還れ!とどめぇ―――!!」
アイン・ソフ・オウルがガイキングに飛ぶ。
「なんだと……!こんなもの、かわしてやる!」
竜巻から逃れ、回避するガイキング。しかし、高速で消滅は迫る。
そのとき、『時』が来た。
「ラムダドライバと同じやり方なのは気に食わんが、こうするんだな?」
「僕と、彼女が送る役ですか?」
「そのようだな……まさか一年戦争のころのアムロ・レイと会うとはな……」
「はい?」
「いや、なんでもないよ、坊や」
「おっしゃあ!あんな仮面野郎にやらせてなんかたまるか!」
「アラド、落ち着きなさい。無鉄砲なんだからまったく……」
「やらせはせん、やらせはせんぞ!一人でも多く地獄に引きずり込んでくれるわッ!」
「あの、ひきずりこんじゃ駄目なんじゃ……?」
「まるでこれじゃ主人公サイドのモブキャラみたいだっつの、まぁ、手伝ってやるけどな」
「皆さん、ちゃんと手をつなぎましたか?プラーナを落ち着いて高めて……」
「ヴィンデル、後は頼んだぞ」
「親父、いくぜ!」
「ああ、目にモノ見せてやろう」
「外との接続は、イングラムがやってくれているのですね?……では、グランゾンを利用する代価、支払っていただきましょう」
「異星人の暴走をわしがとめてやろう!!」
「心を細く、切っ先として……参る!」
「ソレジャイクゼ……タノムゾ、アニキ!ミンナノタマシイ、オレガアズカル!」
「ダイダルゲートニハ、コウイウツカイカタモアルンダ!!」
『行っけぇぇぇぇぇええええええ!!』
「ッ!なんだ!?ガイキングが動かん!」
突然、動きを完全に止めたガイキング。そこへ、容赦なく迫るアイン・ソフ・オウル。
「動け!動けガイキング!俺は、ここで死ぬわけにはいかないんだ!」
さらに接近するアイン・ソフ・オウル。
「俺は、ミケーネを倒すと……」
それ以上の言葉はなかった。アイン・ソフ・オウルは、ガイキングの頭部を吹き飛ばし、さらに、『月』に直撃した。
「マシュマー……私たちの、いやお前の勝利だ」
ぼんやりと、マシュマーは、ウィンドウを通し、月に穴が穿たれるところを見ていた。
(これで……よかったのか?)
――ああ――これで開放されるはずだ―――
そう一言言い残し、青い髪の男の気配が消えた。
(そうか……最後に、ハマーン様の安全を確認できなかったのは残念だが……これでいい)
とても自分のものとは思えないようになった手で、震えながらもバラを胸から抜く。
バラを握り締めようとしたが、握力が足らなかった。もう、死は目の前であることを知覚し静かに目を閉じる。
そこに、1つの光がディス・アストラナガンの前でとまった。
――マシュマー、大儀だったな――
(その声は……ハマーン様。もしや……!?)
重いまぶたを持ち上げ、もう一度世界を見る。
――よく、あの暗い牢獄から開放してくれた――礼を言うぞ――
水分等残っていない干からびた体だというのに、目からは熱いものがあふれ始めた。
(もったいなきお言葉……感謝いたします……!)
マシュマーの体が灰のように崩れていく。
地面にわだかまった灰は煙となって消えていく。
(この……マシュマー……最高の……幸せ……)
ディス・アストラナガンのコクピットに残ったのは、一輪のバラ。
マシュマーは、消滅した。それは、『無』となったという意味ではない。マシュマーは、大いなる運命の力の一部となったのだ。
『月』にはぽっかりと暗い穴が開いていた。そこからは何筋もの光が外へと尾を引き、飛び出していった。
ぽっかりとあいた黒い穴から、放射状にひびが入る。
「終わったのか……?」
ヴィンデルが、その様子をオーバーヒートしたマジンカイザーから見る。
あの月は、はっきりとした亀裂が入り、崩れようとしている。いったい何故このようなことになったかは見当もつかないが、
分かったことは一つあった。
「……もう、終わりだ。主催者、お前が何を企もうともな」
これで終わった。そう思っていると……
「今度は『門』!?あれを何処かに運ぶつもりか!?」
「クロス・パラダイムゲートシステム座標設定、ヘルモーズにアクセス……使用許可受理。開放空間は、異相番号08……」
『月』の上に、天使が舞い降り、『門』を生み出した。
『門』に沈んでいく『月』。
「ヴィンデル・マウザー……ここまでやるとはな」
「その声は……W17?」
しかし、その答えはない。稲妻のような光が場に包まれ、『月』も『門』も消滅した。
そして、天使もまた何処かへ去っていく。
…………まだ、絶望への時計は、動いている。
「何故だ……!どこでおかしくなったというのだ!」
ユーゼスが握ったコブシを監視パネルへ振り落とす。握り締めた拳から、血が滴っていた。
DG細胞を
ゲッター線を浴びせ、最高の進化を促す。最初はこの世界の負の心を流し、適応させた上で、
負の無限力そのものを食わせることで力の属性と性質を決定させる。
さまざまな世界から心を引っ張ることにより、さまざまなオーバーテクノロジーも取得。
アカシックレコードと接触させ、一度死を経験させることによって、
更なる負の力の引き出し方と、アカシックレコードを打ち破る方向に体を組み替えさせる。
一度、マジンカイザーがデビルガンダムを撃破することさえ計算のうちだった。
このままいけば、完全、究極のゼストが生まれるはずだった。
だが、思わぬところで計画がつまずいた。
1つ目はベターマン。ベターマンは地球単位の破壊者には立ち向かうことは確実、
さらに場所をはっきり認識させるため、アニムスの実まで取り込ませた。
これにより、事前に取り込んだアニムスの実で、スムーズに取り込ませ、確実に接近してくるようになっていたのだ。
「違う、これでは違うのだ!」
ユーゼスが取り込ませたかったのは、究極の存在オルトスだ。決してネブラではない。
ゼストの空中戦闘能力は飛躍的に伸びるだろうが、それはユーゼスの求めるものではなった。
2つ目はディス・アストラナガンの存在。
日の出まで時間をかけ、完全な肉体が生み出されるはずが、奴の一撃により、
鹵獲した魂の一部は逃げ、肉体はまだ固まっていないのにもかかわらず、『卵』は割れた。
このままでは、最悪ゼストは生まれない。
異相空間に送ることは出来たが、あまりにも不安定だ。
「あの時、マシュマーは『ゼスト』と言った……まさか、またお前の差し金か……!」
憎々しげに高いリノリウムの天井を見た。
「イングラム!」
『俺はきっかけを作っただけだ。あとは、マシュマーの執念が起こした奇跡だ』
突然、ウィンドウの一つが砂嵐になり、そこから声が聞こえてきた。
「馬鹿なことをいうな、私やお前のような存在でも、強念者でもない、ただの人間がそんなことが出来るはずが無い」
『いや、出来る。お前は人間というものを軽んじすぎた』
その言葉に続き、次々とウィンドウが砂嵐になる。
『その通り。この程度、グランゾンの力を借りずとも造作もありません』
『驕るのもそこまでだな。恥を知れ、俗物!』
『どんなにつらくても……守りたいものがあるんだ!』
次々と語りかける魂たち。
「黙れ……黙れ黙れ黙れぇ!」
ユーゼスが耳をふさぎ、懐から取り出した銃でモニターをでたらめに撃った。
ステンドガラスのように、ガラスが舞い落ちる。
後に残るは、不快な壊れた機械の音と、無音の静寂のみだった。
「……W17、ある程度直接的な方法をとってかまわん、殺し合いを煽れ」
違うモニターを使い、命令する。
「了解」
短くラミアも答えると、通信を終えた。
「このままでは済まさん……かならずゼストを臨(お)ろす……!そのためには、もっとゲームを進めねば……」
ゼストの補修のためにも、殺し合いを進め、負の心の加速を促進させねば……そのためのゲームなのだ。
最後に残った参加者をゼストで蹂躙、もしくはあらゆる困難を克服し現れたドンキホーテ
――道化の勇者――どもをゼストで相手をしてやろうとも思ったが、
これではそんなことをいっている場合ではない。
ゲームの進行状況や、参加者の心で、大きくこれからは変わる。
――ヴァルシオンか、ジュデッカか。そのあたりを調節する必要があるな。他にも、手を考えねば……
ユーゼスは、格納庫へと向かった。
かくして、主催者ユーゼスもまた、運命に翻弄される。超越者から、参加者たちと形は違うが、同じく抗う者へと堕ちる。
はたして、ゲームは、完遂するのか?破壊されるのか?
完遂すれば、ユーゼスの野望は叶うのか?完遂せずとも叶うのか?はたまた、破壊されても叶うのか?破壊され崩れるのか?
誰にもそれは分からない。
【ヴィンデル・マウザー 登場機体:マジンカイザー(スクランダー装備)(α仕様)
パイロット状況:全身打撲、アバラ骨数本にヒビと骨折(応急手当済み)、 頭部裂傷(大した事はない)
マジンカイザー操縦の反動によるダメージ有 、全身に刺し傷あり。
機体状況:オーバーヒート解除まであと1分
現在位置:E-4
第一行動方針:オーバーヒートが解けるのを待つ
第二行動方針:強力な味方を得る、及び他の参加者と接触し情報を集める
最終行動方針:
バトルロワイアルの破壊 】
【ミオ・サスガ
パイロット状態:気絶
現在位置:E-4
第一行動方針:???
最終行動方針:???】
【ラミア・ラヴレス 搭乗機体:ラーゼフォン(ラーゼフォン)
パイロット状態:良好
機体状態:良好
現在位置:E-4
第一行動方針:参加者達の疑心暗鬼を煽り立て、殺し合いをさせる。ある程度直接的な行動もとる。
第二行動方針:グランゾンの様子を見て、用済み・もしくはユーゼスにとって危険と判断したら破壊する
最終行動方針:ゲームを進行させる
備考:ユーゼスと通信を行い他の参加者の位置、状況などを把握しました 】
【タシロ・タツミ 搭乗機体:ヒュッケバインMK3(パンプレオリジナル)
パイロット状況:死亡
機体状況:消滅】
【副長 搭乗機体:ガンナーユニット(パンプレオリジナル)
パイロット状況:死亡
機体状況:消滅】
【ベターマン・ラミア 搭乗機体:ベターマン・ネブラ
パイロット状態:死亡】
【剣鉄也 搭乗機体:ガイキング後期型(大空魔竜ガイキング)
パイロット状態:死亡
機体状態:コクピット消滅】
【マシュマー・セロ 搭乗機体:ディス・アストラナガン(第3次スーパーロボット大戦α)
パイロット状態:死亡
機体状況:両腕、および左足大腿部以下消滅】
【三日目 4:00】
最終更新:2025年02月14日 03:07