エシュガル語の法(ムード)

 エシュガル語の動詞は直説法、仮定法、命令法からなる。

  • 直説法
 動詞は無標であり、助動詞はriハァ)を伴う。

 【例文】 `pi fuek por ri voir. / あの鳥は飛ぶ事が出来る。
 【解説】 fuekpor可能、ここでは助動詞。voir飛行、ここでは本動詞。なお格関係が明示されていない為「あの鳥は(何かを)飛ばす事が出来る」という解釈も可能ではある。

  • 仮定法
 動詞はro)を、助動詞はruホゥ)を伴う。
 何らかの仮定(現実性が乏しいか否かは問わない)を前提とした帰結を示す。

 【例文】 `ji voir ro và fuek. / 鳥ならば私は飛ぶ。
 【解説】 は仮定節に前置される標識であり、仮定の内容を示す。通常は節だが口語ならばこのような省略も可能。仮定節自体は(さらに別の仮定を前提とする入れ子構造でない限り)通常は直説法で表す。

  • 命令法
 動詞はra)を、助動詞はreヘィ)を伴う。
 話者の意志や希望を示す。命令文に用いられる事が主であるため命令法と呼ばれるが、本来的には希求法ないし願望法と呼ぶ方が正確なのかもしれない。
 主語には命令対象が入る。 二人称に対する命令であれば主語が省略される場合も多い。

 【例文】 `ju voir ra. / 私達は飛ぶべきである。
 【解説】 英訳するとLet's fly.となる。上では「飛ぶべきである」などという訳が付いているが、これは伝統的な日本式エシュガル語教育で、最初に一旦「~すべき」とか「~でありますように」と訳しておいて、その後こなれた日本語に変換する、と云う手法が初学者には判りやすい、とされている為である。

  • 否定縮約
 roおよびraには否定極性の形が存在する。roの否定形はであり、raの否定形はである。

 【例文】 `voir nè. / 飛ぶな。
 【解説】 否定極性の命令、すなわち禁止である。肯定・否定に関わらず命令文の主語は原則として命令対象であり、そこが空白である場合は原則としてtuまたはteが省略されていると解釈される。

 は単なるne ~ rone ~ raの縮約形ではなく、別のニュアンスを表現する語である。ne ~ roは「(もし~ならば)~だっただろう」を丸ごと否定する表現であり、その意味は「(もし~ならば)~ではなかっただろう」ではなく「(もし~だったとしても)~だったとは限らない」である。ne ~ raは「~すべき」を丸ごと否定する表現であり、その意味は「~すべきでない」ではなく「~すべきだというわけではない」すなわち「~しなくてもよい(が、したければ別にしてもよい)」である。



 ※ 直接法動詞を示す標識であるハン)という語もある(またはあった)が、無標で自動的に直接法動詞なので現在では普通の使い方はせず、機能語動名詞と同様に非限定修飾専用となっている。詳しくは機能語動詞を参照のこと。




  • 特殊なニュアンスの命令文
 命令法に諾否疑問を表すを組み合わせると勧めるニュアンスになる。

 【例文】 `mar ra ki beir qù? / このビールは如何ですか?
 【解説】 もし貴方がそうしたいのであれば是非そうして下さい、あたりのニュアンス。命令対象が二人称なので主語のtuまたはteは省略されている。






最終更新:2025年05月26日 23:54