機能語動詞
機能語動詞は機能語の形をした動詞であり、それ単独で動詞として働く。日本の伝統的なエシュガル語教育の現場では俗に繋辞と呼ばれる事も多いが、これらが本当に全て繋辞の一種であるのかについては慎重な意見も少なくない。
基本的な機能語動詞は4個( zi, si, bi, wi )であり、それぞれに相(アスペクト)に応じた縮約形が2種類ずつあるため元々の形と合わせて3倍で12個( zo, zi, za, so, si, sa, bo, bi, ba, wo, wi, wa )になり、それら全てに動名詞形があるので動詞形と合わせて2倍で24個( zo, zò, zi, zì, za, zà, so, sò, si, sì, sa, sà, bo, bò, bi, bì, ba, bà, wo, wò, wi, wì, wa, wà )になる。
存在を示す動詞。基本的には `△△ zi. の形で「△△(対格)が存在する。」とか `△△ zi ◇◇. の形で「△△(対格)が◇◇(与格)に居る。」という意味になる。この場合、与格は場所を示す格を代替している。
形容詞を補語として伴う繋辞。基本的には `△△ si ◇◇. の形で「△△(対格)が◇◇(形容詞補語)(与格?)だ。」という訳になる。この場合、◇◇は形容詞なので本来ならば格は存在しないはずであるが、もし必要であれば与格とする。
名詞を補語として伴う繋辞。基本的には `△△ bi ◇◇. の形で「△△(対格)が◇◇(名詞補語)(与格)だ。」という訳になる。
いわゆるウナギ文を作るための動詞。例えば `ji wi peòk. とすれば「私は魚だ。」と訳す事が出来る文になる。無論、この文は話者が本当に魚である事を意味するわけではない。
直後に相標識 jo, ja, gò, gà が続く場合には縮約形が存在する。
zi jo および zi gò の縮約形は zo であり、 zi ja および zi gà の縮約形は za である。
si jo および si gò の縮約形は so であり、 si ja および si gà の縮約形は sa である。
bi jo および bi gò の縮約形は bo であり、 bi ja および bi gà の縮約形は ba である。
wi jo および wi gò の縮約形は wo であり、 wi ja および wi gà の縮約形は wa である。
縮約形に文法規則上の使用義務は無いが、あえて使わない理由が特に無ければ使うのが普通。理由というのは例えば、ニュアンスの違いから bi ja ではなく bi gà の方だと明示したいのであれば ba は使わずに bi gà を使えばよい。逆に云うと、この場合は縮約形を使わなかったことで ja と gà の違いを重視したと解釈される可能性が高い。
動詞の口母音を鼻母音にすれば動名詞になる。機能語動名詞は非限定修飾に用いられる。例えば `Tiniki-da zà di Okenivi sa mòc qù? とすれば「オキナワ(中性固有名詞)に居るタナカ(女性固有名詞)は元気か?」の意味になる。この場合 zà di Okenivi の部分はオキナワに居るタナカ氏とそうでないタナカ氏を区別するためのものではなく、単なる付け足しと云うか補足説明なので非限定修飾である。もちろん実際には他にもタナカという名前の女性がオキナワの外に存在するはずだが、固有名詞は文法上の考え方としてはそれ単独で特定されているのだ。
法(ムード)で言及されている
rì であるが、現代語では動詞による非限定修飾を示す標識となっている。例えば
`do Yimidi mar rì ja vì peòk juìkvàt ra. で「魚を食べたヤマダ(男性固有名詞)は帰りなさい。」となる。動詞
mar の直後に標識
rì が続き、以下
peòk までの
mar rì ja vì peòk が
do Yimidi に対する非限定修飾(=補足説明)となっている。
最終更新:2025年05月10日 22:56