《~Prologue~ 三度目》
「ちっくしょおおおぉおおっ、こんなに早くかよ―――っ!」
学校の単位がー! と絶叫を上げながら黒服の男達に黒リムジンへ連れられていく少年を、笑顔で少女は見送る。
「んじゃ、あたし先に行ってるねー♪」
彼女の名を赤羽くれは。陰陽道の名家、赤羽家の長女。つい先日まで、彼女の意志とは全く関係のなく負わされた“星の巫女”という数奇な宿命に翻弄され―――永き悲劇を繰り返してきたその宿命から、奇跡的に解放されたウィザードの少女。
「満面の笑顔で見送るな薄情者―――――ッ!?」
彼女の言葉に、絶叫で返すのは連れ去られていく少年。
彼の名を柊蓮司。くれはの幼馴染で、多少水準より裕福だったり片親だったりしても、血統という点では何のしがらみも持たない家庭に生まれた、二人姉弟の下。本来なら世界の真実に触れることもなく、ごく普通の人生を歩んでいたはずだろう少年。
しかし、彼は選ばれた。―――“星の巫女”を護る宿命を負う魔剣に。
そして、彼は受け入れた。―――その宿命を知らぬまま、しかし、目の前で傷つけられそうな誰かを護るために。
そうして、彼は―――ウィザードになった。
くれはは、彼の手によって“星の巫女”の宿命から解かれ、それにより彼の魔剣ももはやその宿命を失った。
だがそれで、魔剣そのものが、魔剣に因って目覚めた彼の力が、消えるわけではない。
故に、彼は本来ならば知ることもなかったはずの知られざる戦いへと借り出されてゆくのだ。―――半ば強制的に。
悲哀すら感じさせる様子で連れ去られてゆく幼馴染を笑顔で見送るくれはは、確かに傍から見れば薄情に見えるかもしれない。
だが、くれはは柊に対して薄情などではない。―――彼に対して“情が薄い”などということは、有り得ない。
学校の単位がー! と絶叫を上げながら黒服の男達に黒リムジンへ連れられていく少年を、笑顔で少女は見送る。
「んじゃ、あたし先に行ってるねー♪」
彼女の名を赤羽くれは。陰陽道の名家、赤羽家の長女。つい先日まで、彼女の意志とは全く関係のなく負わされた“星の巫女”という数奇な宿命に翻弄され―――永き悲劇を繰り返してきたその宿命から、奇跡的に解放されたウィザードの少女。
「満面の笑顔で見送るな薄情者―――――ッ!?」
彼女の言葉に、絶叫で返すのは連れ去られていく少年。
彼の名を柊蓮司。くれはの幼馴染で、多少水準より裕福だったり片親だったりしても、血統という点では何のしがらみも持たない家庭に生まれた、二人姉弟の下。本来なら世界の真実に触れることもなく、ごく普通の人生を歩んでいたはずだろう少年。
しかし、彼は選ばれた。―――“星の巫女”を護る宿命を負う魔剣に。
そして、彼は受け入れた。―――その宿命を知らぬまま、しかし、目の前で傷つけられそうな誰かを護るために。
そうして、彼は―――ウィザードになった。
くれはは、彼の手によって“星の巫女”の宿命から解かれ、それにより彼の魔剣ももはやその宿命を失った。
だがそれで、魔剣そのものが、魔剣に因って目覚めた彼の力が、消えるわけではない。
故に、彼は本来ならば知ることもなかったはずの知られざる戦いへと借り出されてゆくのだ。―――半ば強制的に。
悲哀すら感じさせる様子で連れ去られてゆく幼馴染を笑顔で見送るくれはは、確かに傍から見れば薄情に見えるかもしれない。
だが、くれはは柊に対して薄情などではない。―――彼に対して“情が薄い”などということは、有り得ない。
何故なら―――くれはは、彼に恋をしているのだから。
くれははずっと柊が好きだった。彼は一向に気づいてくれないけれど、幼い頃からずっと、他の誰かが心に入る余地もないほど好きだった。
けれど今、彼女が彼に抱いている恋心は、彼女の十七年と少しの人生で、三度目の恋だ。
けれど今、彼女が彼に抱いている恋心は、彼女の十七年と少しの人生で、三度目の恋だ。
そう―――彼女は二度、彼に失恋している。