卓上ゲーム板作品スレ 保管庫

第06話

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《~Epilogue~ 君を想えること》


 そして、今―――異界から帰還し、本来の日常に帰ってきたばかりだというのに。
 彼はまた、知られざる戦いへと向かってゆく。―――黒ベンツに無理やり乗せられて。
「―――まーったく………柊らしいんだから」
 走り去るベンツを、くれははそう呟いて、笑顔で見送る。
 彼は最後までぎゃーぎゃーと、単位だ何だと喚いて嫌がっていたけれど、くれはは知っている。
 彼は結局、困っている人が自分の手の届くところにいる限り、手を伸ばさずにはいられないのだから。
 任務そのものは嫌々でも、結局、誰かを助けるというその行為は、彼自身の意志であり、彼の在り方そのもので。
 だから、くれはは止めないで、笑顔で見送るのだ。

 ―――ただ、彼が彼らしく、彼の在り方を何者にも穢されないように―――

 あの誓いは、今でもくれはの中で生きているから。
 彼がどこへ飛び出していっても、ちゃんとここに帰れるよう、くれははこの場所を守り抜く。
 いつまでだってここで待ってる。―――彼に、待ってろと言われた訳ではないけれど、くれは自身がそうしたいから、待ち続ける。
 例え、彼が彼の在り方を貫いたことで、ここに帰ってこなくても―――ここが彼にとって大切な場所であるのには変わりないから。
 それだけで、くれはがここを守る意味は十分だから。

 誰に憚ることも、自分の感情を殺す必要もなく―――

 ―――ただ、あなたを想えるこの幸福(シアワセ)を抱いて、ここで待ってる―――

 今はまだその勇気はないけれど、告げたいと思った時に告げられる、この想いを抱きしめて。

 くれはは、彼が見苦しく喚いてまで行きたがった校舎を見上げて、笑う。
 ―――とりあえず、今日はあいつの分まで学校生活を楽しむことにしようかな―――
 そんな風に思って―――くれはは一人、彼が思いを馳せる場所へと歩き出した。

 彼への三度目の恋―――想うことを許されたその恋を、その胸に大切に抱きしめて―――



Fin






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