Tender
「・・・この位走れば大丈夫だろう」
と、ゼェゼェと息を切らしながらトーマは辺りに人の気配がないことを確認しながら呟いた
と、ゼェゼェと息を切らしながらトーマは辺りに人の気配がないことを確認しながら呟いた
-走り続けている間、ミクトランの放送があったのだが…彼にはそれを聞く余裕は無かった様だ-
「とりあえずコイツをどこかに寝かせるか…いい加減、手がパンパンだぜ…」
そういう彼の腕を中を見ると、死んだ(と思い続けている)ミミーの姿があった。
トーマはティトレイの暴走から逃げるさい、この少女を抱えながらずっと走り続けてきたのだ。
そういう彼の腕を中を見ると、死んだ(と思い続けている)ミミーの姿があった。
トーマはティトレイの暴走から逃げるさい、この少女を抱えながらずっと走り続けてきたのだ。
トーマは草が生い茂っており、地面が直接露出していない場所を見つけると
そこにミミーをそっと寝かせた。
「さて、どうしたもんか…って、コイツ……」
ヤレヤレと溜息をつきながら、ミミーの顔を覗き込むとなんと…
とても気持ち良さそうに寝ているではないか!
そこにミミーをそっと寝かせた。
「さて、どうしたもんか…って、コイツ……」
ヤレヤレと溜息をつきながら、ミミーの顔を覗き込むとなんと…
とても気持ち良さそうに寝ているではないか!
「人が苦労して抱きかかえながらにげてるって時にコイツは…こうなったら叩き起こしてやる!」
少し頭にきたのか、トーマは思いっきり手を振り上げミミーの顔をひっぱ叩いて起そうとした
が、…その時ミミーが発した言葉に思わず手を止めてしまった。
少し頭にきたのか、トーマは思いっきり手を振り上げミミーの顔をひっぱ叩いて起そうとした
が、…その時ミミーが発した言葉に思わず手を止めてしまった。
「牛さ~ん、どうパン?ホタテパンはおいしいパンかぁ……」
どうやら彼女は、自分の作ったパンをトーマに食べてもらう夢を見ているようだ。
その顔はとても幸せそうだった
。 「……本当パン?喜んで貰えて…嬉しいパン!……それ…次…作る……待って…パンね」
どうやら彼女は、自分の作ったパンをトーマに食べてもらう夢を見ているようだ。
その顔はとても幸せそうだった
。 「……本当パン?喜んで貰えて…嬉しいパン!……それ…次…作る……待って…パンね」
その言葉を聞いたトーマは振り上げた手をそっと下ろし、ポリポリと頬を掻きだした。
「…畜生、そんなこと言われたら無理矢理起せねぇじゃねぇか。」
柄にもなく照れると、突然手を組んで考え出した。
「引っ叩けねぇと来ると、どうして起したものかなあ…
」 他の起し方を考えるために、過去に自分が行った起し方を思い出してみるが…
暴力以外で起した記憶が一向に見つからない。
確かにそうだ、俺が他の誰かを優しく起してる所なんて考えただけでも反吐が出る
むしろ、力加減を間違えてそのまま永遠の眠りにつかせてしまった事があるくらいだ。
「う~むぅぅぅぅぅぅ…」
トーマが考え続けること約10分。あることを思い出した。
「そういや、いつかジルバがアガーテにこんな話をしてたな…。」
「…畜生、そんなこと言われたら無理矢理起せねぇじゃねぇか。」
柄にもなく照れると、突然手を組んで考え出した。
「引っ叩けねぇと来ると、どうして起したものかなあ…
」 他の起し方を考えるために、過去に自分が行った起し方を思い出してみるが…
暴力以外で起した記憶が一向に見つからない。
確かにそうだ、俺が他の誰かを優しく起してる所なんて考えただけでも反吐が出る
むしろ、力加減を間違えてそのまま永遠の眠りにつかせてしまった事があるくらいだ。
「う~むぅぅぅぅぅぅ…」
トーマが考え続けること約10分。あることを思い出した。
「そういや、いつかジルバがアガーテにこんな話をしてたな…。」
-…眠れるお姫様は、彼女を心から愛する殿方のくちづけによって目が覚めたのです。-
「よし、他の方法も思いつかねぇしソイツをやってみるか!」
もちろんこの話は、某有名な御伽噺の一説なのだが…トーマはそんな事知るはずもなく
すっかり信じている。
「おおし、行くぞ!」
そう意気込みミミーにくちづけを行おうとするが…彼女の顔を見るとなぜか体が動かなくなった
「…?」
体が動かない事に疑問を持ち、無理矢理動かそうとするが…やはり結果は同じだった
-何故だ?このまま顔を近づけるだけじゃねぇか!何故それができない!-
そう苦悩するトーマの顔を見ると真っ赤になっており、脂汗までかいている。
もちろんこの話は、某有名な御伽噺の一説なのだが…トーマはそんな事知るはずもなく
すっかり信じている。
「おおし、行くぞ!」
そう意気込みミミーにくちづけを行おうとするが…彼女の顔を見るとなぜか体が動かなくなった
「…?」
体が動かない事に疑問を持ち、無理矢理動かそうとするが…やはり結果は同じだった
-何故だ?このまま顔を近づけるだけじゃねぇか!何故それができない!-
そう苦悩するトーマの顔を見ると真っ赤になっており、脂汗までかいている。
…実はこのトーマ、生まれて○○年。愛のある恋愛などしたことがない。
それが原因なのかどうかは分からないが、実際彼は「くちづけ」と言う未知の行動に 戸惑っている。
それが原因なのかどうかは分からないが、実際彼は「くちづけ」と言う未知の行動に 戸惑っている。
「畜生…動け!動け!!動け!!!」
プルプルと体を震えさせながらキスをしようと必至になっている姿は傍から見ると
なんともコミカルだが…それは言わないでおく。
プルプルと体を震えさせながらキスをしようと必至になっている姿は傍から見ると
なんともコミカルだが…それは言わないでおく。
トーマは一度ミミーから身を離すと、何がいけないのか考え出した。
「…」
「……」
「………そうか、分かった!分かったぞ!!眼を瞑らないのがいけなかったんだな!!
そうに違いねぇ!!!!」
「…」
「……」
「………そうか、分かった!分かったぞ!!眼を瞑らないのがいけなかったんだな!!
そうに違いねぇ!!!!」
そう結論を出すと早速行動に移る。
「ミミー…いい加減眼を覚ましてくれ。
……いい加減、抱きながら走るのは疲れるんだ」
最後に本音を言いながらも、トーマはミミーの唇に自分の唇を
…30センチ…20センチ…と徐々に近付けていく。
そしてその距離があと10センチとなったとき突然!
ミミーのつけているマジカルポーチから"何か"が上空へと勢いよく飛び出した。
「ミミー…いい加減眼を覚ましてくれ。
……いい加減、抱きながら走るのは疲れるんだ」
最後に本音を言いながらも、トーマはミミーの唇に自分の唇を
…30センチ…20センチ…と徐々に近付けていく。
そしてその距離があと10センチとなったとき突然!
ミミーのつけているマジカルポーチから"何か"が上空へと勢いよく飛び出した。
眼を瞑っているトーマはそれに気付いていないが、その"何か"は上空へと飛び出したあと
勢いをつけてトーマへと向かっている。
「…ミミー」
トーマとミミーの距離があと5センチとなった時その悲劇は起こった。
-どごっ!-
勢いをつけてトーマへと向かっている。
「…ミミー」
トーマとミミーの距離があと5センチとなった時その悲劇は起こった。
-どごっ!-
上空に飛び出した"何か"がトーマの後頭部にクリティカルヒットしたのだ。
「…な、なんだ?」
トーマは突然の衝撃に顔をあげ手当たりを見渡すが…何も無い。
不審に思いながらも、中断した行為を再開しようとミミーに眼を向けると
そこには驚くべき光景があった。
なんとミミーの顔に透明な液体の入った瓶が直撃しているではないか。
そう、先ほどミミーのマジカルポーチから飛び出したもの…それはライフボトルであった。
ライフボトルはミミーの顔からぽとりと落ちると、コロコロと転がっていった…
「…な、なんだ?」
トーマは突然の衝撃に顔をあげ手当たりを見渡すが…何も無い。
不審に思いながらも、中断した行為を再開しようとミミーに眼を向けると
そこには驚くべき光景があった。
なんとミミーの顔に透明な液体の入った瓶が直撃しているではないか。
そう、先ほどミミーのマジカルポーチから飛び出したもの…それはライフボトルであった。
ライフボトルはミミーの顔からぽとりと落ちると、コロコロと転がっていった…
そんな状況をトーマはポカンとした表情で見ていると、ミミーに変化が訪れた。
「…ン」
「なんだと?」
「…い…パン」
「胃パン?それもなんかパンの種類か?」
そういった次の瞬間、トーマの右頬に強烈な右ストレートが決まった。
「んなっ!?」
「痛いパン!何するパンか!死人に暴力振るうなんて最低パン!!」
「…ン」
「なんだと?」
「…い…パン」
「胃パン?それもなんかパンの種類か?」
そういった次の瞬間、トーマの右頬に強烈な右ストレートが決まった。
「んなっ!?」
「痛いパン!何するパンか!死人に暴力振るうなんて最低パン!!」
トーマはミミーの突然の癇癪に最初はオロオロしていたが、すぐに平静を取り戻して
ここまでの状況を説明した。
ここまでの状況を説明した。
-ミミーが樹の蔓に潰されかけた事-
「えっ…パン?」
「えっ…パン?」
-トーマが間一髪の所で救い逃げてきた事-
「ええっ…パン!?」
「ええっ…パン!?」
-そして…最後にライフボトルが齎した不幸について-
「ええええっだパン!!」
「ええええっだパン!!」
それを聞いたミミーはさっきまでの態度は何処へやら、突然シュンとなって
「ごめんなさいだパン…いきなり殴ったりして悪かったパン」
元気の無いミミーの姿を見ると…
「いっいや、いいんだ。気にすることはねぇ…眼ぇ覚ましてくれただけで十分だ」
とフォローを入れた。
「…ありがとうパン。牛さんはやさしいパンね」
「…そんなんじゃねぇよ」
照れくさそうにトーマはそう言い放ったが、その顔は真っ赤である。
「ごめんなさいだパン…いきなり殴ったりして悪かったパン」
元気の無いミミーの姿を見ると…
「いっいや、いいんだ。気にすることはねぇ…眼ぇ覚ましてくれただけで十分だ」
とフォローを入れた。
「…ありがとうパン。牛さんはやさしいパンね」
「…そんなんじゃねぇよ」
照れくさそうにトーマはそう言い放ったが、その顔は真っ赤である。
「ところで、そのライフボトルは何処にいったパン?」
最初に支給されたもの以外、何も与えられないこの戦い(ミミーは楽観的に捉えているが)
このような形で新しいアイテムが手に入ったのは幸運だと思ったのか、
珍しくもミミーが正論を上げる。
「あぁ、それなら確かあっちに…ほら、あった………ぜっ!?」
トーマがライフボトルの転がっていった方へ行くと、そこには確かにライフボトルがあった。
「牛さん、突然変な声上げてどうしたパ………ンんんんんん!?」
…あったのだが、その傍らには何と別の筒状の物が落ちていた。
トーマが恐る恐る手に取ると、ミミーが尋ねた。
「それ…武器パン?」
「…あぁ、コイツはスゲェ武器だぜ!」
そういう彼の手の中にある武器は『メガグランチャー』
この戦いが始まってすぐ、自分の手にもてあましたプリムラがこの森の中に放置していった
超高威力の弾丸を飛ばす事ができる武器である。
最初に支給されたもの以外、何も与えられないこの戦い(ミミーは楽観的に捉えているが)
このような形で新しいアイテムが手に入ったのは幸運だと思ったのか、
珍しくもミミーが正論を上げる。
「あぁ、それなら確かあっちに…ほら、あった………ぜっ!?」
トーマがライフボトルの転がっていった方へ行くと、そこには確かにライフボトルがあった。
「牛さん、突然変な声上げてどうしたパ………ンんんんんん!?」
…あったのだが、その傍らには何と別の筒状の物が落ちていた。
トーマが恐る恐る手に取ると、ミミーが尋ねた。
「それ…武器パン?」
「…あぁ、コイツはスゲェ武器だぜ!」
そういう彼の手の中にある武器は『メガグランチャー』
この戦いが始まってすぐ、自分の手にもてあましたプリムラがこの森の中に放置していった
超高威力の弾丸を飛ばす事ができる武器である。
「…ちょっと怖いパン」
ミミーが正直な感想を上げると、トーマは…
「大丈夫だ、こいつは俺と…ミミー、お前の身を守るために使う
無闇につかわねぇと約束するから、安心しろ!」
ミミーが正直な感想を上げると、トーマは…
「大丈夫だ、こいつは俺と…ミミー、お前の身を守るために使う
無闇につかわねぇと約束するから、安心しろ!」
暴君トーマのこのセリフに、何処までの真実が含まれているかは分からない。
本来ならこんな事を言うような人物では絶対にないからだ…
しかし、今まで共に行動してきて自分の感じたトーマに対する印象と、
自分に向けられるこの言葉に優しさの様なものを感じたのかミミーは…
本来ならこんな事を言うような人物では絶対にないからだ…
しかし、今まで共に行動してきて自分の感じたトーマに対する印象と、
自分に向けられるこの言葉に優しさの様なものを感じたのかミミーは…
「分かったパン。小生は…牛さんを信じるパン。」
と答えた。
と答えた。
トーマはミミーのその言葉に満足したのか、『メガグランチャーを』脇に抱えると
草むらに落ちていた『ライフボトル』を拾い上げ、それをミミーに差し出した。
「ほらよ、コイツはお前が…」
草むらに落ちていた『ライフボトル』を拾い上げ、それをミミーに差し出した。
「ほらよ、コイツはお前が…」
トーマがミミーにライフボトルを渡そうとするとミミーが言葉を遮った。
「それは牛さんに持ってて欲しいパン」
「それは牛さんに持ってて欲しいパン」
「いや、しかし…」
-俺は一人だ…だから俺には使うような機会が無い-
そう言葉を続けようとしたが、次に発せられたミミーの言葉によりそれが叶う事は無かった。
-俺は一人だ…だから俺には使うような機会が無い-
そう言葉を続けようとしたが、次に発せられたミミーの言葉によりそれが叶う事は無かった。
「小生は、小生のことを助けてくれた牛さんに酷いことしたパン。
…それでも、牛さんは特に咎めることなく許してくれたパン。
だから小生の感謝の気持ち…というかパン。…仲直りの証ということで
牛さんにはそのライフボトルを持ってて欲しいパン」
…それでも、牛さんは特に咎めることなく許してくれたパン。
だから小生の感謝の気持ち…というかパン。…仲直りの証ということで
牛さんにはそのライフボトルを持ってて欲しいパン」
「感謝」「仲直り」…普段自分とはかけ離れた言葉にトーマは一時呆然としたが
体のそこから暖かい何かを感じたトーマはミミーに素直に自分の気持ちを伝えた。
体のそこから暖かい何かを感じたトーマはミミーに素直に自分の気持ちを伝えた。
「有難うよ。こいつは確かに受け取った。大事に使わせてもらうぜ。
…もちろん、このアイテムを使うような事になるのが一番だがな!」
「うん!そうだパンね!」
…もちろん、このアイテムを使うような事になるのが一番だがな!」
「うん!そうだパンね!」
そうして笑い声を上げると、この戦いの場には似合わないほどの笑顔をお互いに与えあった。
そして、二人は今後のことについて話しをする事に決めたのだった。
そして、二人は今後のことについて話しをする事に決めたのだった。
…このライフボトルが、二人に凄惨な運命を叩きつける事をこの時は知る由も無かった…
【ミミー 生存確認】
所持品:ウィングパック×2 イクストリーム
金のフライパン マジカルポーチ ペルシャブーツ
現在位置:G6の森林地帯
状態:おでこに小さなたんこぶ。
第一行動方針:トーマと共に今後の方針を決める
所持品:ウィングパック×2 イクストリーム
金のフライパン マジカルポーチ ペルシャブーツ
現在位置:G6の森林地帯
状態:おでこに小さなたんこぶ。
第一行動方針:トーマと共に今後の方針を決める
【四星トーマ 生存確認】
所持品:メガグランチャー ライフボトル
現在位置:G6の森林地帯
状態:後頭部に小さなたんこぶ。右頬に擦り傷。
行動方針:ミミーと共に今後の方針を決める
所持品:メガグランチャー ライフボトル
現在位置:G6の森林地帯
状態:後頭部に小さなたんこぶ。右頬に擦り傷。
行動方針:ミミーと共に今後の方針を決める