空っぽのココロ
サレ達がティトレイのいた場所に戻ってきた時、既に彼の姿は忽然と消えていた。
ならば彼はどこへ行ったのだろうか?
ならば彼はどこへ行ったのだろうか?
時は遡り小一時間前、ちょうどクレス達とマグニス達が戦っている頃。
サレがティトレイの縄を切り立ち去った後、一つの轟音が響いた。
ちょうどそれに導かれるように、ティトレイも意識を深淵から呼び戻される
。 状況を確認しようと辺りを見回すと、高くそびえる木々が静かに彼を見守っており、他には切れている縄と…赤黒くなり始めた血痕。
血。
──そう、これは一緒にいたしいなの血。
サレがティトレイの縄を切り立ち去った後、一つの轟音が響いた。
ちょうどそれに導かれるように、ティトレイも意識を深淵から呼び戻される
。 状況を確認しようと辺りを見回すと、高くそびえる木々が静かに彼を見守っており、他には切れている縄と…赤黒くなり始めた血痕。
血。
──そう、これは一緒にいたしいなの血。
彼に異常が起きていた。
先程はしいなが刺されたことによって膨れ上がった怒りが、今は全く湧いてこない。
じゃあ悲しみか? それも違う。
じゃあ苦しみか? それも違う。
じゃあ喜びか? それも違う。
何も、湧き上がってこないのである。
喜怒哀楽の激しいティトレイの顔には、人形から取って付けたような無表情が張り付いていた。
仲間のヴェイグと似た、いやそれ以上の。
しいなの死と、それに伴うフォルスの暴走。
それが彼から「感情」を奪った要因だった。
もっとも、彼が暴走し始めた時はまだしいなは生きていたのだが、目覚めた彼は彼女の姿を見れなかった。
闇と同化し始めた血痕を目で追う。
途中で完全に同化し見えなくなると、そこで彼の動作は途切れた。
彼女が「いない」ということは、今の彼には、彼女が「死んだ」ということに繋がった。
記憶に残るしいなの姿は間違いなく瀕死だったから。
木をかき分け探そうとはせず、ぼおっと立ちすくんでいた。
先程はしいなが刺されたことによって膨れ上がった怒りが、今は全く湧いてこない。
じゃあ悲しみか? それも違う。
じゃあ苦しみか? それも違う。
じゃあ喜びか? それも違う。
何も、湧き上がってこないのである。
喜怒哀楽の激しいティトレイの顔には、人形から取って付けたような無表情が張り付いていた。
仲間のヴェイグと似た、いやそれ以上の。
しいなの死と、それに伴うフォルスの暴走。
それが彼から「感情」を奪った要因だった。
もっとも、彼が暴走し始めた時はまだしいなは生きていたのだが、目覚めた彼は彼女の姿を見れなかった。
闇と同化し始めた血痕を目で追う。
途中で完全に同化し見えなくなると、そこで彼の動作は途切れた。
彼女が「いない」ということは、今の彼には、彼女が「死んだ」ということに繋がった。
記憶に残るしいなの姿は間違いなく瀕死だったから。
木をかき分け探そうとはせず、ぼおっと立ちすくんでいた。
彼の表情は変わらない。変わるとすれば、打ち付けられた体が痛み、微かに眉をひそめる程度だろうか。
自分でも分かっていた。感情を失ってしまったことが。
笑おうとしてみる。
心も体も動かない。
手で口元を上げてみる。
完成したのは作り物の笑顔。
離してしまえば、また元の無表情に戻る。
残念という気持ちも湧いてこない。それが残念というのも勿論ない。
自分でも分かっていた。感情を失ってしまったことが。
笑おうとしてみる。
心も体も動かない。
手で口元を上げてみる。
完成したのは作り物の笑顔。
離してしまえば、また元の無表情に戻る。
残念という気持ちも湧いてこない。それが残念というのも勿論ない。
ふと、視界に支給品の袋が入った。ティトレイは鈍い動きで開ける。
幸い、と言うべきなのか彼の荷物はロープ以外失くなっていなかった。
中には腕輪が一個と、薄い本。ぱっと見では大した物でなさげだ。
自分を襲った奴らが持っていかなかった理由がそれなのかは謎だが、良いに越したことはない。
立ち上がり、荷物を持ちふらふらと歩き出す。
ただ何の目的も持たず、何の意味もなく。
どこに行こうとか、誰かに会おうとか、何をしようとか、そんなのは微塵もなかった。
虚ろな彼の瞳に映るは、ただの風景。
何か存在があるというだけの事実。
彼はただ、歩き続けた。
幸い、と言うべきなのか彼の荷物はロープ以外失くなっていなかった。
中には腕輪が一個と、薄い本。ぱっと見では大した物でなさげだ。
自分を襲った奴らが持っていかなかった理由がそれなのかは謎だが、良いに越したことはない。
立ち上がり、荷物を持ちふらふらと歩き出す。
ただ何の目的も持たず、何の意味もなく。
どこに行こうとか、誰かに会おうとか、何をしようとか、そんなのは微塵もなかった。
虚ろな彼の瞳に映るは、ただの風景。
何か存在があるというだけの事実。
彼はただ、歩き続けた。
開けてきた視界の先に見えたのは、海。
漆黒に染まった海。
得体の知れぬそれは恐怖の対象でしかなくて、しかしティトレイはそれを感じることもなくて。
さざ波の音でさえ、彼に何ももたらさない。
立ち止まる。そして考え始める。
自分は何をしたいのだろうか?
今の自分だったら、何の躊躇いもなく人を殺すことが出来る。
正義の名の下に人を守りマーダーを殺す者になろうとも思わないし、逆に人を乱し殺戮を楽しむ者になろうとも思わない。
情けも罪悪感も狂気も善悪もない、いわば只の機械。
昔の自分はどうだっただろうか。
今の自分が失ったものを、多く持っていた気がする。
しかし、もうそれらは戻らないのかもしれない。
それほど今の彼は、昔と違い過ぎていた──。
漆黒に染まった海。
得体の知れぬそれは恐怖の対象でしかなくて、しかしティトレイはそれを感じることもなくて。
さざ波の音でさえ、彼に何ももたらさない。
立ち止まる。そして考え始める。
自分は何をしたいのだろうか?
今の自分だったら、何の躊躇いもなく人を殺すことが出来る。
正義の名の下に人を守りマーダーを殺す者になろうとも思わないし、逆に人を乱し殺戮を楽しむ者になろうとも思わない。
情けも罪悪感も狂気も善悪もない、いわば只の機械。
昔の自分はどうだっただろうか。
今の自分が失ったものを、多く持っていた気がする。
しかし、もうそれらは戻らないのかもしれない。
それほど今の彼は、昔と違い過ぎていた──。
【ティトレイ 生存確認】
所持品:メンタルバングル、バトルブック
状態:感情喪失、全身の痛み、TP消費(中)
第一行動方針:海を眺める
第二行動方針:不明
現在位置:G4海辺
所持品:メンタルバングル、バトルブック
状態:感情喪失、全身の痛み、TP消費(中)
第一行動方針:海を眺める
第二行動方針:不明
現在位置:G4海辺