夜叉は笑う
「ふふ……あはははははは!!!!!!」
暗闇の草原の中をひたすらに走る。
闇の中を笑い声と地面を蹴る音だけが辺りに響きわたる。
長い金髪の少女の姿はロングスカートであり、片手にはマシンガン。
途中、小さな木の枝の木々が服や顔に引っかかっても、気にすることなくひたすらに走る。
眼は見開かれ、笑う口は頬まで裂けている。本来なら端正な顔の少女、シャーリィの面影はもうそこにはなく、歪んだ狂気の表情が露わになっていた。
「お兄ちゃん、お兄ちゃん、お兄ちゃん…!!!」
「待っていてね」
「生き残ればお兄ちゃんに会えるんだから…!!」
「早く、早く会いたいよ…!!ははははは!!!」
シャーリィはもう完全に気がふれてしまっていた。
唐突に繰り広げられたゲーム。
戦い。
血。
そして、最愛の兄の死―――
いつもは辛いとき、シャーリィの隣には常にセネルがいた。泣いたら優しく頭を撫でてくれていた。
今だって。
姿はないけれどセネルはシャーリィの胸の中にいた。シャーリィの中ではセネルは死んではいない。ちょっとだけ遠いところにいるだけだ。
そしていつの時みたいに優しく笑っているのだ。
今自分は沢山走っていて、そうしたらセネルは転ぶなよってちょっと心配そうな顔をしている。そんなに急がなくても、会えるからって。
「うん、分かっているよ、だけど、私は、早くお兄ちゃんの顔がみたいよ」
暗闇の草原の中をひたすらに走る。
闇の中を笑い声と地面を蹴る音だけが辺りに響きわたる。
長い金髪の少女の姿はロングスカートであり、片手にはマシンガン。
途中、小さな木の枝の木々が服や顔に引っかかっても、気にすることなくひたすらに走る。
眼は見開かれ、笑う口は頬まで裂けている。本来なら端正な顔の少女、シャーリィの面影はもうそこにはなく、歪んだ狂気の表情が露わになっていた。
「お兄ちゃん、お兄ちゃん、お兄ちゃん…!!!」
「待っていてね」
「生き残ればお兄ちゃんに会えるんだから…!!」
「早く、早く会いたいよ…!!ははははは!!!」
シャーリィはもう完全に気がふれてしまっていた。
唐突に繰り広げられたゲーム。
戦い。
血。
そして、最愛の兄の死―――
いつもは辛いとき、シャーリィの隣には常にセネルがいた。泣いたら優しく頭を撫でてくれていた。
今だって。
姿はないけれどセネルはシャーリィの胸の中にいた。シャーリィの中ではセネルは死んではいない。ちょっとだけ遠いところにいるだけだ。
そしていつの時みたいに優しく笑っているのだ。
今自分は沢山走っていて、そうしたらセネルは転ぶなよってちょっと心配そうな顔をしている。そんなに急がなくても、会えるからって。
「うん、分かっているよ、だけど、私は、早くお兄ちゃんの顔がみたいよ」
シャーリィはただただ兄に会いたい一心だった。
きっと誰かを殺せばそれは兄の姿に一歩近づく。それが嬉しくて仕方ない。
あの紫色の髪の少女は取り逃してしまったけど、いいや。違う誰かを殺せばいいだけだもの。
考えこそ邪悪であったが、その向こうの想いは限りなく純粋なものだった。
きっと誰かを殺せばそれは兄の姿に一歩近づく。それが嬉しくて仕方ない。
あの紫色の髪の少女は取り逃してしまったけど、いいや。違う誰かを殺せばいいだけだもの。
考えこそ邪悪であったが、その向こうの想いは限りなく純粋なものだった。
その時だった。
空を銀の衝撃が一閃し、無我夢中で走っていたシャーリィの頬を掠める。
シャーリィは足を止めて、呆然としたように頬の傷に触れる。生暖かい血が指に絡み付く。
「………誰?」
何も見えない前方に呼びかける。
「やれやれ、また少女か…たしかお前はシャーリィ、と言ったか」
その攻撃の主の影が、シャーリィの数メートル前に立ち塞がる。
覆面をした男、カッシェルは、ショートソードを構え、溜め息をした。
血を見てシャーリィの髪がざわりと揺れた。
「まあいい。このゲームの頭数だけでも減ら――」
「私の邪魔をする奴は誰って言ってんのよぉ!!!!!!!」
「何!!!??」
いきなり火が付いたようにシャーリィは叫び、マシンガンをカッシェルに向けて撃ちまくった。
「く――!!?」
余りに突発的な事態に狼狽える暇もなく、地面を蹴って驚くべきスピードと跳躍力で横に跳ぶ。しかしいくら幽玄と呼ばれども、毎秒に幾発もの弾を発射するマシンガンを乱発されてはカッシェルもかわすのは楽ではなかった。
一見すると非力そうな少女だ。
しかし今はトチ狂ったような形相をしている。
「ふざけないで!!!」
素早く弾から逃げる影をマシンガンで追い、シャーリィは叫ぶ。
「私の邪魔をしないでッ!!!
お兄ちゃんに会わせてッ!!!!」
マシンガンの威力は凄まじいものだった。
小さな若木ならばいとも簡単に裂かせては薙ぎ、地面は衝撃で砂塵や石が吹っ飛ぶ。
自分の知っているこの娘はこんな少女だっただろうか。自分の記憶とは恐ろしく遠くて当てはまらない今のシャーリィを見て、カッシェルは些か戸惑う。
だがその戸惑いが隙を生んだ。
「私がお兄ちゃんに会うために…死んでッッ!!!!!」
「ぐああ!!」
とうとう弾がカッシェルの左脚のふくらはぎを捉えた。
弾は貫通は免れたものの、酷く筋組織にめり込んで骨を砕き、激痛が走る。
体制を崩して、だがなんとか右足を踏みしめて着地した。
あの飛び道具、見掛けだけに限らずとんでもない威力だ。
これでは右脚はもう使いものにならない。
骨の神経を傷つけた事で、全身に痺れる様な痛みがめぐり、じわりと脂汗をかく。
シャーリィは静かにマシンガンを下げた。
空を銀の衝撃が一閃し、無我夢中で走っていたシャーリィの頬を掠める。
シャーリィは足を止めて、呆然としたように頬の傷に触れる。生暖かい血が指に絡み付く。
「………誰?」
何も見えない前方に呼びかける。
「やれやれ、また少女か…たしかお前はシャーリィ、と言ったか」
その攻撃の主の影が、シャーリィの数メートル前に立ち塞がる。
覆面をした男、カッシェルは、ショートソードを構え、溜め息をした。
血を見てシャーリィの髪がざわりと揺れた。
「まあいい。このゲームの頭数だけでも減ら――」
「私の邪魔をする奴は誰って言ってんのよぉ!!!!!!!」
「何!!!??」
いきなり火が付いたようにシャーリィは叫び、マシンガンをカッシェルに向けて撃ちまくった。
「く――!!?」
余りに突発的な事態に狼狽える暇もなく、地面を蹴って驚くべきスピードと跳躍力で横に跳ぶ。しかしいくら幽玄と呼ばれども、毎秒に幾発もの弾を発射するマシンガンを乱発されてはカッシェルもかわすのは楽ではなかった。
一見すると非力そうな少女だ。
しかし今はトチ狂ったような形相をしている。
「ふざけないで!!!」
素早く弾から逃げる影をマシンガンで追い、シャーリィは叫ぶ。
「私の邪魔をしないでッ!!!
お兄ちゃんに会わせてッ!!!!」
マシンガンの威力は凄まじいものだった。
小さな若木ならばいとも簡単に裂かせては薙ぎ、地面は衝撃で砂塵や石が吹っ飛ぶ。
自分の知っているこの娘はこんな少女だっただろうか。自分の記憶とは恐ろしく遠くて当てはまらない今のシャーリィを見て、カッシェルは些か戸惑う。
だがその戸惑いが隙を生んだ。
「私がお兄ちゃんに会うために…死んでッッ!!!!!」
「ぐああ!!」
とうとう弾がカッシェルの左脚のふくらはぎを捉えた。
弾は貫通は免れたものの、酷く筋組織にめり込んで骨を砕き、激痛が走る。
体制を崩して、だがなんとか右足を踏みしめて着地した。
あの飛び道具、見掛けだけに限らずとんでもない威力だ。
これでは右脚はもう使いものにならない。
骨の神経を傷つけた事で、全身に痺れる様な痛みがめぐり、じわりと脂汗をかく。
シャーリィは静かにマシンガンを下げた。
「ねえ…、お願いなの」
左手を胸元で握り、悲しげな表情でカッシェルに懇願する。
先ほどの狂気に歪んだ顔は一気に引き、その顔は紛れもなく、小鳥の様に弱々しい少女のもの。
先ほどの荒れ様が嘘の様に辺りは静まり返り、しかし草木は殆ど原型を留めておらず、まさに一陣の嵐の後といった状態だった。
「お願い、お願い。お兄ちゃんに会わせて」
先程何か叫びながら顔を引き吊らせてマシンガンを連発してきた者と同一人物とはとても思えない。
その余りのギャップにカッシェルから言いようのない感情が溢れてくる。
体が震える。
痛みのせいだろうか。
いや、違う。
これは、今までに自分が感じた事のない類の、恐怖だった。
「貴様……」
虚勢をはり、シャーリィを睨み付ける。
いや、認めはしない。
虚勢なんて、この俺がこんな少女に遅れをとるなんて。
カッシェルは覆面の下で奥歯を噛みしめた。
シャーリィは憐れむ様にカッシェルに視線を落とす。
「そうだよね、死ぬなんて怖いもんね、ごめんね」
そして悲しげににこりと笑った。
左手を胸元で握り、悲しげな表情でカッシェルに懇願する。
先ほどの狂気に歪んだ顔は一気に引き、その顔は紛れもなく、小鳥の様に弱々しい少女のもの。
先ほどの荒れ様が嘘の様に辺りは静まり返り、しかし草木は殆ど原型を留めておらず、まさに一陣の嵐の後といった状態だった。
「お願い、お願い。お兄ちゃんに会わせて」
先程何か叫びながら顔を引き吊らせてマシンガンを連発してきた者と同一人物とはとても思えない。
その余りのギャップにカッシェルから言いようのない感情が溢れてくる。
体が震える。
痛みのせいだろうか。
いや、違う。
これは、今までに自分が感じた事のない類の、恐怖だった。
「貴様……」
虚勢をはり、シャーリィを睨み付ける。
いや、認めはしない。
虚勢なんて、この俺がこんな少女に遅れをとるなんて。
カッシェルは覆面の下で奥歯を噛みしめた。
シャーリィは憐れむ様にカッシェルに視線を落とす。
「そうだよね、死ぬなんて怖いもんね、ごめんね」
そして悲しげににこりと笑った。
しかし
すぐにその顔は夜叉の様に残酷に歪んだ。
すぐにその顔は夜叉の様に残酷に歪んだ。
笑っている。
それは、つい今し方見せた微笑みなどではもちろんなく――――
それは、つい今し方見せた微笑みなどではもちろんなく――――
「だったら苦しまない様にすぐに頭を割ってあげる」
【シャーリィ 生存確認】
所持品:TP中消費 UZI SMG(30連マガジン残り4つ) ????
状態:狂気
第一行動方針:カッシェルの殺害
第二行動方針:セネルとの再会(手段は一切選ばない)
現在位置:C4草原
所持品:TP中消費 UZI SMG(30連マガジン残り4つ) ????
状態:狂気
第一行動方針:カッシェルの殺害
第二行動方針:セネルとの再会(手段は一切選ばない)
現在位置:C4草原
【幽幻のカッシェル 生存確認】
状態:左脚損傷 全身に軽い裂傷 覆面損傷
所持品:ショートソード アワーグラス
第一行動方針:できればシャーリィの殺害
第二行動方針:ゲームに乗る
第三行動方針:決して徒党を組まない
現在地:C4草原
状態:左脚損傷 全身に軽い裂傷 覆面損傷
所持品:ショートソード アワーグラス
第一行動方針:できればシャーリィの殺害
第二行動方針:ゲームに乗る
第三行動方針:決して徒党を組まない
現在地:C4草原