迷いの朝
――お前の目には、純粋に人殺しをして生き残ろうという鋭く、狡猾な光が感じられない。
――まるで誰かに操られているように、暗く沈んでいる。
朝焼けで輝く平原を風の如く移動するジェイの脳裏には、先ほど戦った少年剣士のそんな言葉が焼きついていた。
――まるで誰かに操られているように、暗く沈んでいる。
朝焼けで輝く平原を風の如く移動するジェイの脳裏には、先ほど戦った少年剣士のそんな言葉が焼きついていた。
育ての親であるソロンの言葉に逆らえずに、ただ言われるがままに行動してきた自分。
そんな日々も、遺跡船でモフモフ族の皆、そしてセネル達仲間と出会い同じ時を過ごす事によって変わった。
そして、遂には周囲の手助けもあってソロンと永遠の決別を果たしたはず――だった。
そんな日々も、遺跡船でモフモフ族の皆、そしてセネル達仲間と出会い同じ時を過ごす事によって変わった。
そして、遂には周囲の手助けもあってソロンと永遠の決別を果たしたはず――だった。
しかし現在――
確かに決別したはずのソロンは三度自分のもとに現れた。
しかも、仲間であったセネルやモーゼスはもうこの世にいないという。
頼れる仲間が消えてゆく中で、甘い言葉をかけてくるソロン。
ジェイはその言葉にただ従うことしか出来なかった…………。
今も、そのソロンの命令に従って、ある人を殺す為に移動している。
僅かな時間であったが、確かに自分と行動を共にした清楚な感じの少女。
自分が裏切る最後の瞬間まで、自分を信じていたその少女を確実に仕留めるのが命令だった。
確かに決別したはずのソロンは三度自分のもとに現れた。
しかも、仲間であったセネルやモーゼスはもうこの世にいないという。
頼れる仲間が消えてゆく中で、甘い言葉をかけてくるソロン。
ジェイはその言葉にただ従うことしか出来なかった…………。
今も、そのソロンの命令に従って、ある人を殺す為に移動している。
僅かな時間であったが、確かに自分と行動を共にした清楚な感じの少女。
自分が裏切る最後の瞬間まで、自分を信じていたその少女を確実に仕留めるのが命令だった。
しかし、あんな人を殺す事など微塵にも考えていないような少女を自分は本当に殺せるのだろうか?
だが、殺さなければソロンの命令に背く事になる……。
だが、殺さなければソロンの命令に背く事になる……。
ジェイがそんな葛藤をしながら走っていると、彼は不運にも歩く人影を見つけてしまう。
出会った者は殺す――その命令に逆らえないジェイは、葛藤の中でその人影へ音も無く近づいていった…………。
出会った者は殺す――その命令に逆らえないジェイは、葛藤の中でその人影へ音も無く近づいていった…………。
モリスンは、黙々と歩いていた。
デミテルから受けたダメージはまだ完治していないが、彼の打倒ダオスの念が彼を突き動かしていた。
しかし、彼は悩んでいた。
先ほどのデミテルとの戦いで割り込んできた緑色の青年。彼は、明らかにデミテルを庇うべくモリスンに攻撃していた。
そして彼は言った、――デミテルが島から出る方法を知っている――と。
無論、それはデミテルが彼を騙す為の狂言だろう。
しかし、青年にとってはそれは真実で、デミテルを倒そうとしている自分が敵であったのだ。
デミテルから受けたダメージはまだ完治していないが、彼の打倒ダオスの念が彼を突き動かしていた。
しかし、彼は悩んでいた。
先ほどのデミテルとの戦いで割り込んできた緑色の青年。彼は、明らかにデミテルを庇うべくモリスンに攻撃していた。
そして彼は言った、――デミテルが島から出る方法を知っている――と。
無論、それはデミテルが彼を騙す為の狂言だろう。
しかし、青年にとってはそれは真実で、デミテルを倒そうとしている自分が敵であったのだ。
ダオス軍団のみの討伐を目指している彼にとって、騙されている青年を倒すということは出来れば避けたかった。
しかし、倒さなければダオス討伐の目的が果たせなくなる。
では、やはりあの青年を躊躇い無く倒すべきだったのか?
しかし、倒さなければダオス討伐の目的が果たせなくなる。
では、やはりあの青年を躊躇い無く倒すべきだったのか?
モリスンもまた、殺人の葛藤をしていたのであった。
しかし、葛藤する彼の歩みは、突如足元の地面に刀が刺さった事によって止められた。
――どこから飛んできた!?
彼は周囲を見渡していると、刺さった刀へと稲妻が落ちてきた。
「何っ!?」
紙一重で、その雷撃を避けられたモリスンであったが、避けた所で今度は背中に鋭い痛みが走る。
「ぐぁっ!?」
何事かと思い、背中に手を回すとクナイが二つ刺さっていた。
そして、背中に注意を向けていると今度は左上腕にクナイが刺さってきた。
「くっ……。どこだ、何処にいる!? 出て来い!」
モリスンが、辺りを見渡すが、相手は一向に出てこない。
すると、何を思ったかモリスンはザックから何かを取り出し、それを地面に叩きつけた。
そして叩きつけたそれは、勢い良く煙を出しはじめたのだった……。
しかし、葛藤する彼の歩みは、突如足元の地面に刀が刺さった事によって止められた。
――どこから飛んできた!?
彼は周囲を見渡していると、刺さった刀へと稲妻が落ちてきた。
「何っ!?」
紙一重で、その雷撃を避けられたモリスンであったが、避けた所で今度は背中に鋭い痛みが走る。
「ぐぁっ!?」
何事かと思い、背中に手を回すとクナイが二つ刺さっていた。
そして、背中に注意を向けていると今度は左上腕にクナイが刺さってきた。
「くっ……。どこだ、何処にいる!? 出て来い!」
モリスンが、辺りを見渡すが、相手は一向に出てこない。
すると、何を思ったかモリスンはザックから何かを取り出し、それを地面に叩きつけた。
そして叩きつけたそれは、勢い良く煙を出しはじめたのだった……。
ジェイは突然煙が吹き出た事に僅かながらにも体が止まった。
「…………煙玉とは、随分面白いものを持っていますね」
煙を出す玉――煙玉。それは忍の者であるジェイが知らないわけがなく、その煙の中で人を見つけることにも慣れていた。
そして、案の定ジェイは、男をすぐに見つけることが出来た。……が、ジェイは男の様子がおかしい事に気付く。
彼は逃げるでもなく、ただその場に立ち尽くしていた――否、彼は杖を手にとって、何かを呟いていたのだ。
(……これは……ブレス系爪術? いや爪は光っていない……。だけど……)
直感で、ジェイはすぐさま後ろへ飛び退いた。
そして、次の瞬間!
「サイクロン!!」
男の声と同時に、男の周囲を風が煙を巻き込み、勢いを増しながら渦巻き、巨大な竜巻に成長し、大気を切り裂いていった。
暗闇を作り出すことで僅かの間襲撃者の目をくらませ、その隙に範囲系の魔術を詠唱して周囲の敵を威嚇、攻撃する――これが、男――モリスンの作戦だった。
その作戦に不覚にもはまってしまったジェイは、早めに魔術に気付いていた為、竜巻の直撃こそ受けなかったが、それでも飛び退くのが多少遅れたせいで右腕右足を切り裂かれた。
そして足に怪我をしたため、着地するときに転倒してしまった。
「そこか!?」
その転倒音に気付き、モリスンはそちらの方を向いた。
すると彼の方が、ジェイの姿を見て驚いた。
「子供だと!? ……お前が私を襲ったのか?」
モリスンが自分の腕に刺さっていたクナイを引き抜き、見せる。
するとジェイは黙って頷いた。
「……これは驚いたな……。まさか子供だったとは……」
「子供で悪かったですね」
ジェイは皮肉を込めてそう言うと、立ち上がりクナイを構える。
足を怪我している為、先ほどのような軽快なステップを使えない状況下、彼はクナイを投げるタイミングを見計らっていた。
するとモリスンも杖を構えなおし、術発動がすぐにでも出来るようにした状態にする。
忍と魔術師の戦いは第二ラウンドを迎えようとしていた……。
「…………煙玉とは、随分面白いものを持っていますね」
煙を出す玉――煙玉。それは忍の者であるジェイが知らないわけがなく、その煙の中で人を見つけることにも慣れていた。
そして、案の定ジェイは、男をすぐに見つけることが出来た。……が、ジェイは男の様子がおかしい事に気付く。
彼は逃げるでもなく、ただその場に立ち尽くしていた――否、彼は杖を手にとって、何かを呟いていたのだ。
(……これは……ブレス系爪術? いや爪は光っていない……。だけど……)
直感で、ジェイはすぐさま後ろへ飛び退いた。
そして、次の瞬間!
「サイクロン!!」
男の声と同時に、男の周囲を風が煙を巻き込み、勢いを増しながら渦巻き、巨大な竜巻に成長し、大気を切り裂いていった。
暗闇を作り出すことで僅かの間襲撃者の目をくらませ、その隙に範囲系の魔術を詠唱して周囲の敵を威嚇、攻撃する――これが、男――モリスンの作戦だった。
その作戦に不覚にもはまってしまったジェイは、早めに魔術に気付いていた為、竜巻の直撃こそ受けなかったが、それでも飛び退くのが多少遅れたせいで右腕右足を切り裂かれた。
そして足に怪我をしたため、着地するときに転倒してしまった。
「そこか!?」
その転倒音に気付き、モリスンはそちらの方を向いた。
すると彼の方が、ジェイの姿を見て驚いた。
「子供だと!? ……お前が私を襲ったのか?」
モリスンが自分の腕に刺さっていたクナイを引き抜き、見せる。
するとジェイは黙って頷いた。
「……これは驚いたな……。まさか子供だったとは……」
「子供で悪かったですね」
ジェイは皮肉を込めてそう言うと、立ち上がりクナイを構える。
足を怪我している為、先ほどのような軽快なステップを使えない状況下、彼はクナイを投げるタイミングを見計らっていた。
するとモリスンも杖を構えなおし、術発動がすぐにでも出来るようにした状態にする。
忍と魔術師の戦いは第二ラウンドを迎えようとしていた……。
「何故、私を襲う? 君と私は面識すらないと思ったが?」
「面白い事を言いますね。殺さなければ殺される、それがバトル・ロワイアルの鉄則だと思いましたが?」
そう言って、クナイを投げつけるジェイ。
しかし、クナイの飛ぶ軌道を先読みしてモリスンはこれをあっさり避ける。
「君はこのゲームとやらに乗っているのか!?」
モリスンが短い詠唱で火球を生み出し、ジェイへ向かって飛ばす。
一方のジェイも、足をかばいながらそれを避ける。
「僕を殺そうとしているのだから、あなただって乗っているんじゃないですか!?」
火球を避けた足で、地面に刺したままの刀を回収し、それを構え直した。
すると、今度はモリスンが雷撃を加える。
「私だって出来れば殺したくない!」
「綺麗事ですか!? 聞きたくも無い!」
素早くモリスンの懐に入り、刀を突きつけるジェイ。
しかし、刀はモリスンの杖によって防がれる。
刀と杖による息もつかせぬ攻防が繰り広げられる。
「君だって本当は殺したくないのだろう!?」
「だから言ってるでしょう! ここではそんな綺麗事が通じる訳が――」
「だが、君の目からは、人を殺す覚悟が見受けられない。そうだな……まるで誰かに操られているような――」
「あなたに僕の何が分かると言うんです!?」
その瞬間、動揺したのかジェイが少し押され気味となる。
そのチャンスをモリスンは見逃さなかった。
「分かるわけがなかろう! だが…………」
一気に押してゆくモリスン。
杖はミシミシと悲鳴を上げるが、それでも押し続ける。
「私にはやるべきことがあるのだよ! だから、ここで殺されるわけにはいかない!」
モリスンの杖の渾身の一撃がジェイの刀を吹き飛ばした。
得物を失ったジェイは咄嗟にクナイを取ろうとするが、その手をモリスンが掴む。
そしてそのまま、モリスンはジェイの手をひねり上げた。
「……だから私を、いや他の参加者達も出来れば襲ってほしくはないのだがね」
「それは出来ない相談ですね。僕が生きている限りは……。どうしても止めたいのならいっそ僕のことを殺してくださいよ」
ここで死ねば、呪縛から解放される。そして、あの少女を殺さなくても済む。
それならば死んでもいいか……。それがジェイの心の内だった。
しかし、モリスンは困惑の表情をする。
「だが……しかし……」
いまだにモリスンは殺す事について迷っていた。
ましてや相手は、まだ年端もいっていない少年だ。なおさら躊躇いはある。
そして、そんなモリスンの煮え切らない態度を見ると、渾身の力を込めてひねり上げられた手を振りほどき、モリスンと向かい合うように立つ。
「あなた、そんな風に迷っていると、その“やるべきこと”とやらをする前に死にますよ。あなたが殺さないなら、僕があなたを殺します!」
クナイを再び構えるジェイ。
「…………やはり、戦うしかないのか」
二人は、目に迷いを浮かべながらも対峙した。
「面白い事を言いますね。殺さなければ殺される、それがバトル・ロワイアルの鉄則だと思いましたが?」
そう言って、クナイを投げつけるジェイ。
しかし、クナイの飛ぶ軌道を先読みしてモリスンはこれをあっさり避ける。
「君はこのゲームとやらに乗っているのか!?」
モリスンが短い詠唱で火球を生み出し、ジェイへ向かって飛ばす。
一方のジェイも、足をかばいながらそれを避ける。
「僕を殺そうとしているのだから、あなただって乗っているんじゃないですか!?」
火球を避けた足で、地面に刺したままの刀を回収し、それを構え直した。
すると、今度はモリスンが雷撃を加える。
「私だって出来れば殺したくない!」
「綺麗事ですか!? 聞きたくも無い!」
素早くモリスンの懐に入り、刀を突きつけるジェイ。
しかし、刀はモリスンの杖によって防がれる。
刀と杖による息もつかせぬ攻防が繰り広げられる。
「君だって本当は殺したくないのだろう!?」
「だから言ってるでしょう! ここではそんな綺麗事が通じる訳が――」
「だが、君の目からは、人を殺す覚悟が見受けられない。そうだな……まるで誰かに操られているような――」
「あなたに僕の何が分かると言うんです!?」
その瞬間、動揺したのかジェイが少し押され気味となる。
そのチャンスをモリスンは見逃さなかった。
「分かるわけがなかろう! だが…………」
一気に押してゆくモリスン。
杖はミシミシと悲鳴を上げるが、それでも押し続ける。
「私にはやるべきことがあるのだよ! だから、ここで殺されるわけにはいかない!」
モリスンの杖の渾身の一撃がジェイの刀を吹き飛ばした。
得物を失ったジェイは咄嗟にクナイを取ろうとするが、その手をモリスンが掴む。
そしてそのまま、モリスンはジェイの手をひねり上げた。
「……だから私を、いや他の参加者達も出来れば襲ってほしくはないのだがね」
「それは出来ない相談ですね。僕が生きている限りは……。どうしても止めたいのならいっそ僕のことを殺してくださいよ」
ここで死ねば、呪縛から解放される。そして、あの少女を殺さなくても済む。
それならば死んでもいいか……。それがジェイの心の内だった。
しかし、モリスンは困惑の表情をする。
「だが……しかし……」
いまだにモリスンは殺す事について迷っていた。
ましてや相手は、まだ年端もいっていない少年だ。なおさら躊躇いはある。
そして、そんなモリスンの煮え切らない態度を見ると、渾身の力を込めてひねり上げられた手を振りほどき、モリスンと向かい合うように立つ。
「あなた、そんな風に迷っていると、その“やるべきこと”とやらをする前に死にますよ。あなたが殺さないなら、僕があなたを殺します!」
クナイを再び構えるジェイ。
「…………やはり、戦うしかないのか」
二人は、目に迷いを浮かべながらも対峙した。
時まさに、第二回放送の始まる直前の事であった…………。
【ジェイ 生存確認】
状態:迷い 頸部に切傷 全身にあざ、生傷 右腕右足に深めの裂傷(出血多)
所持品:ダーツセット 辞書 クナイ(残り三枚)
※忍刀・紫電は地面に落ちた状態
基本行動方針:ソロンに従う
第一行動方針:モリスンを殺す
第二行動方針:ソロンに従い、ミントを殺す
第三行動方針:ソロンに従い、遭遇した参加者を殺す
第四行動方針:シャーリィを探す
状態:迷い 頸部に切傷 全身にあざ、生傷 右腕右足に深めの裂傷(出血多)
所持品:ダーツセット 辞書 クナイ(残り三枚)
※忍刀・紫電は地面に落ちた状態
基本行動方針:ソロンに従う
第一行動方針:モリスンを殺す
第二行動方針:ソロンに従い、ミントを殺す
第三行動方針:ソロンに従い、遭遇した参加者を殺す
第四行動方針:シャーリィを探す
【エドワード・D・モリスン 生存確認】
状態:迷い 全身に裂傷とアザ 背中と左上腕に刺し傷
所持品:魔杖ケイオスハート 割れたリバースドール 煙玉(残り二つ) クナイ(一枚)
基本行動方針:ダオス討伐
第一行動方針:ジェイと戦う
第二行動方針:出来れば無関係の人々は殺したくない
状態:迷い 全身に裂傷とアザ 背中と左上腕に刺し傷
所持品:魔杖ケイオスハート 割れたリバースドール 煙玉(残り二つ) クナイ(一枚)
基本行動方針:ダオス討伐
第一行動方針:ジェイと戦う
第二行動方針:出来れば無関係の人々は殺したくない
現在位置:E3平原