壊れた天才
倒れたランプの灯りがもともとは空洞の中を照らしていた。
もともとひとつに繋がっていた洞窟は爆撃によって崩れ、完全に二つに分断されていた。
もともとひとつに繋がっていた洞窟は爆撃によって崩れ、完全に二つに分断されていた。
そんな中に、金髪の男が気を失って横たわっていた。
男の名前はスタン。
襲撃者のマグニスとバルバトスを相手に圧倒的な力の差を見せ付けられた挙句、無残に敗れ去ってしまったのだった。
そんな彼の傍で、立ち尽くしているひとつの影があった…。
男の名前はスタン。
襲撃者のマグニスとバルバトスを相手に圧倒的な力の差を見せ付けられた挙句、無残に敗れ去ってしまったのだった。
そんな彼の傍で、立ち尽くしているひとつの影があった…。
それから数時間がたって、スタンは意識を取り戻した。
勢いよく起き上がると身体のところどころに鋭い痛みや、焼け付くような痛みを感じた。
自分の身体を改めてみてみると、大きな火傷や無数の擦り傷ができていた。
痛みに顔をしかめながらも起き上がって辺りを見回してみると、土砂の中から腕が伸びていた。
それを見た彼ははっきりと血の気が引いていくことがわかった。
その腕は、気を失うまであの二人と共に戦っていたハロルド=ベルセリオスのものだった。
もう相当な時間が経っているのは分かっている。だが、もしかしたらまだ彼女は生きているかもしれない。
身体の痛みを忘れて、無我夢中で駆け寄る。
勢いよく起き上がると身体のところどころに鋭い痛みや、焼け付くような痛みを感じた。
自分の身体を改めてみてみると、大きな火傷や無数の擦り傷ができていた。
痛みに顔をしかめながらも起き上がって辺りを見回してみると、土砂の中から腕が伸びていた。
それを見た彼ははっきりと血の気が引いていくことがわかった。
その腕は、気を失うまであの二人と共に戦っていたハロルド=ベルセリオスのものだった。
もう相当な時間が経っているのは分かっている。だが、もしかしたらまだ彼女は生きているかもしれない。
身体の痛みを忘れて、無我夢中で駆け寄る。
そのときだった。
いきなりスタンの目の前の土砂が弾けとんだ。
彼の目に飛び込んできたのは、砂だらけになったハロルドだった。
「やっほー、やっと起きた~!?」
なぜか、妙にハイテンションになっている。
あまりのことにスタンの頭の中が真っ白になる。
一瞬、辺りを完全に静寂が包んだ。
彼の目に飛び込んできたのは、砂だらけになったハロルドだった。
「やっほー、やっと起きた~!?」
なぜか、妙にハイテンションになっている。
あまりのことにスタンの頭の中が真っ白になる。
一瞬、辺りを完全に静寂が包んだ。
ハロルドが不思議そうにしていると、スタンは、ようやく口を開いた。
「お前、一体何してるんだ…?」
「何って、悪ふざけよ☆ あんた、まだ寝ぼけてるの?」
悪ふざけ? 全く、本当にふざけてる…。
何でこいつはこんなことができるんだ?
スタンは彼女のあまりにも場違いな行動に、ひどい不快感を覚えた。
そして、彼は彼女のことが良くわからなくなっていった。
「一体どういうつもりだ?」
スタンはさっきよりも強い口調で尋ねた。
「どういうつもりって言われてもねぇ。こんな状況になっちゃったし、この場でも和ませようかと…」
ハロルドが言い終わる前に、スタンは動いていた。
胸ぐらをつかんで、彼女の身体を乱暴に持ち上げる。
「ふざけるな! 目の前で人が、それもあんな小さい子が殺されたんだぞ!?
何でそんなマネができるんだよ!!」
スタンはそういってすぐに気付いた。
ハロルドがあまりにもだるそうにしていることに…。
「あんた、何熱くなってるのよ?」
この言葉を聞いた瞬間、スタンの中で何かが弾けた。
「お前はなんとも思わないのか!?
それとも、お前は最初っからそんなやつだったのかよ!?」
怒りに任せて叫ぶスタン。
胸ぐらをつかんでいる手はより一層硬く握られる。
「お前、一体何してるんだ…?」
「何って、悪ふざけよ☆ あんた、まだ寝ぼけてるの?」
悪ふざけ? 全く、本当にふざけてる…。
何でこいつはこんなことができるんだ?
スタンは彼女のあまりにも場違いな行動に、ひどい不快感を覚えた。
そして、彼は彼女のことが良くわからなくなっていった。
「一体どういうつもりだ?」
スタンはさっきよりも強い口調で尋ねた。
「どういうつもりって言われてもねぇ。こんな状況になっちゃったし、この場でも和ませようかと…」
ハロルドが言い終わる前に、スタンは動いていた。
胸ぐらをつかんで、彼女の身体を乱暴に持ち上げる。
「ふざけるな! 目の前で人が、それもあんな小さい子が殺されたんだぞ!?
何でそんなマネができるんだよ!!」
スタンはそういってすぐに気付いた。
ハロルドがあまりにもだるそうにしていることに…。
「あんた、何熱くなってるのよ?」
この言葉を聞いた瞬間、スタンの中で何かが弾けた。
「お前はなんとも思わないのか!?
それとも、お前は最初っからそんなやつだったのかよ!?」
怒りに任せて叫ぶスタン。
胸ぐらをつかんでいる手はより一層硬く握られる。
しかし、ハロルドはそんな彼に向けてひどく冷静な口調で言った。
「あんた、このゲームを何だと思ってるの?
これははじめからこうなることを意図して開催されたリアルなサバイバルゲームなのよ。
いまさら目の前で人一人殺されたからって、何がどうなるってのよ?」
あまりにも冷たい言い方をするハロルドに、スタンは言葉を失ってしまった。
傍から見れば彼の勢いは納まったように見えるが、彼の心中では怒りが膨れ上がっていた。
「それに、今回のことはあの子が、確かジーニアスとかいったかしら。
そいつが勝手にあたしの罠に引っかかったのがそもそもの原因で、あたしは悪くないわ。
罠に引っかかったやつのせいで罠を仕掛けた人が咎められるのって、ありえないでしょ」
ハロルドはそういうと声を上げて笑い始めた。
それがスタンの昂ぶった心を逆撫でする。
「あんた、このゲームを何だと思ってるの?
これははじめからこうなることを意図して開催されたリアルなサバイバルゲームなのよ。
いまさら目の前で人一人殺されたからって、何がどうなるってのよ?」
あまりにも冷たい言い方をするハロルドに、スタンは言葉を失ってしまった。
傍から見れば彼の勢いは納まったように見えるが、彼の心中では怒りが膨れ上がっていた。
「それに、今回のことはあの子が、確かジーニアスとかいったかしら。
そいつが勝手にあたしの罠に引っかかったのがそもそもの原因で、あたしは悪くないわ。
罠に引っかかったやつのせいで罠を仕掛けた人が咎められるのって、ありえないでしょ」
ハロルドはそういうと声を上げて笑い始めた。
それがスタンの昂ぶった心を逆撫でする。
信じられない…。
初めて会ったときはもっとまともなやつだと思っていたのに…。
いや、こいつはもともとこういうやつだったのだ。
あのときもそうだったじゃないか。
こいつは、ジーニアスみたいな小さな子供が罠にかかってはしゃいでいた。
おまけに今も…こんなことを…!
初めて会ったときはもっとまともなやつだと思っていたのに…。
いや、こいつはもともとこういうやつだったのだ。
あのときもそうだったじゃないか。
こいつは、ジーニアスみたいな小さな子供が罠にかかってはしゃいでいた。
おまけに今も…こんなことを…!
こんな最低なやつを仲間だと思っていた自分を恥ずかしく思った。
もう、こんなやつとは一緒にいたくないし、いられない!!
スタンは笑い続ける彼女を突き飛ばした。
そして近くに転がっていたディフェンサーを手に取り、鞘に収めた。
「何するのよ?」
耳障りな声が聞こえる。だが、こんなやつに答える気はもうさらさらない。
ザックを拾い上げると、彼は無言で洞窟の出口を目指して歩き始めた。
「一人で行くつもり? ま、せいぜいのたれ死なないようにがんばりなさい」
スタンが立ち止まる。
まだこいつはこんなふざけたことをぬかすのか…。
無言で立ち去るつもりだったが、どうにも腹の虫が収まらない。
振り向いて、ハロルドを見下すように睨む。
「お前みたいな最低なやつこそ、とっととどっかでのたれ死んじまえ!!」
罵声を吐き出して、それから再び前を向いて歩を進めていった。
しばらくして、ランプの光と共に彼の姿は完全に闇に消えていった。
そして近くに転がっていたディフェンサーを手に取り、鞘に収めた。
「何するのよ?」
耳障りな声が聞こえる。だが、こんなやつに答える気はもうさらさらない。
ザックを拾い上げると、彼は無言で洞窟の出口を目指して歩き始めた。
「一人で行くつもり? ま、せいぜいのたれ死なないようにがんばりなさい」
スタンが立ち止まる。
まだこいつはこんなふざけたことをぬかすのか…。
無言で立ち去るつもりだったが、どうにも腹の虫が収まらない。
振り向いて、ハロルドを見下すように睨む。
「お前みたいな最低なやつこそ、とっととどっかでのたれ死んじまえ!!」
罵声を吐き出して、それから再び前を向いて歩を進めていった。
しばらくして、ランプの光と共に彼の姿は完全に闇に消えていった。
スタンの姿が完全に見えなくなってから、ハロルドはうつむいた。
先ほどまでの彼女からは想像も付かないような、真剣な表情になっていた。
先ほどまでの彼女からは想像も付かないような、真剣な表情になっていた。
あれは数時間前。
ハロルドは目覚めたとき、ここは地獄だと、真面目にそう思った。
光のない、完全な闇の世界は彼女が本当に死んだものだと錯覚させるほどに深く、静かだったからだ。
「罰が当たったのね。あたしが、あたしさえしっかりしていれば、みんなを危険にも巻き込まなかったし、
それに、あの子は…ジーニアスはあの二人に殺されることなんてなかっただろうし…」
そこまで言って、彼女は自分の頬を伝うものがあることに気付いた。
まさか、地獄でも普通に涙なんか流れるとは…。これは興味深いデータだ…。
そんなことでも考えないとやりきれない気持ちになる。
そんな時、近くから呻き声が聞こえた。
その声は、彼女がこの島にやってきてからもっとも長く聞いていたものであった。
もしかして、まだあたしって生きている?
それに気付いたとき、急に身体中に痛みが走った。
「痛っ! これだけ痛けりゃ本当に生きてるみたいね…」
灯りをともそうとするが、近くにザックがないことに気付いた。
あの爆撃で崩れた土砂の下に埋もれてしまったかもしれないと、焦って周りを探そうと立ち上がろうとするが、
想像以上にダメージが大きかったらしい。
身体中に言いようのない痛みが走る。
「よくさっきまでこんな痛みを感じなかったわね…」
そう言いながら、まず最初に自分自身に回復術のキュアをかけることにした。
ハロルドは目覚めたとき、ここは地獄だと、真面目にそう思った。
光のない、完全な闇の世界は彼女が本当に死んだものだと錯覚させるほどに深く、静かだったからだ。
「罰が当たったのね。あたしが、あたしさえしっかりしていれば、みんなを危険にも巻き込まなかったし、
それに、あの子は…ジーニアスはあの二人に殺されることなんてなかっただろうし…」
そこまで言って、彼女は自分の頬を伝うものがあることに気付いた。
まさか、地獄でも普通に涙なんか流れるとは…。これは興味深いデータだ…。
そんなことでも考えないとやりきれない気持ちになる。
そんな時、近くから呻き声が聞こえた。
その声は、彼女がこの島にやってきてからもっとも長く聞いていたものであった。
もしかして、まだあたしって生きている?
それに気付いたとき、急に身体中に痛みが走った。
「痛っ! これだけ痛けりゃ本当に生きてるみたいね…」
灯りをともそうとするが、近くにザックがないことに気付いた。
あの爆撃で崩れた土砂の下に埋もれてしまったかもしれないと、焦って周りを探そうと立ち上がろうとするが、
想像以上にダメージが大きかったらしい。
身体中に言いようのない痛みが走る。
「よくさっきまでこんな痛みを感じなかったわね…」
そう言いながら、まず最初に自分自身に回復術のキュアをかけることにした。
2,3回ほど術を重ねると、先ほどまでの激痛がそれなりに治まってきた。
とりあえず動けるようにはなったので、手探りでザックを探す。
しばらくして、ひとつのザックに手がぶつかった。
すぐさまそのザックを掴み取ると、中身をごそごそと探った。
植物やらなにやらが手に当たることから、どうやらこれは自分のザックのようだ。
彼女は中からランプを引っ張り出したが、ひとつ重要なことに気付いた。
着火装置がないのだ。罠を仕掛けたときに自分のとミントのを使っていたことを思い出す。
共に行動する機会が多かったスタンのザックに着火器具を残しておいて、正解だったと思った。
改めて手探りでザックを探す。
再び土砂とは違うものが手に当たった。
ザックの中をごそごそと探すと、ハロルドのザックよりも入っているものがないのですぐに目的のものが見つかった。
それを利用して、ランプに灯りをつけるとようやく今の状況が把握できた。
辺りの壁や天井は砕け散り、先ほどまで通路であったはずのところは完全に土砂で埋もれていたのだ。
ふと自分の方を見てみると、服は焼け焦げ、あちらこちらから肌が見えていた。
こういえば大胆な服装をしているにも聞こえるが、そこから除く肌の色は白ではなく、妙な褐色をしていた。
どうやら、かなりの火傷を負っていたようだ。
それから、スタンの姿を捜すとすぐに見つかった。
彼に駆け寄ると自分よりもひどい状態にあることが一目で分かった。
そんな姿を見て、彼女の心は痛んだ。
あたしが、あたしが彼らを…。
再びこみ上げてくるものがある。目頭が熱くなるのを抑えて、彼女はスタンに術をかけ始めた。
とりあえず動けるようにはなったので、手探りでザックを探す。
しばらくして、ひとつのザックに手がぶつかった。
すぐさまそのザックを掴み取ると、中身をごそごそと探った。
植物やらなにやらが手に当たることから、どうやらこれは自分のザックのようだ。
彼女は中からランプを引っ張り出したが、ひとつ重要なことに気付いた。
着火装置がないのだ。罠を仕掛けたときに自分のとミントのを使っていたことを思い出す。
共に行動する機会が多かったスタンのザックに着火器具を残しておいて、正解だったと思った。
改めて手探りでザックを探す。
再び土砂とは違うものが手に当たった。
ザックの中をごそごそと探すと、ハロルドのザックよりも入っているものがないのですぐに目的のものが見つかった。
それを利用して、ランプに灯りをつけるとようやく今の状況が把握できた。
辺りの壁や天井は砕け散り、先ほどまで通路であったはずのところは完全に土砂で埋もれていたのだ。
ふと自分の方を見てみると、服は焼け焦げ、あちらこちらから肌が見えていた。
こういえば大胆な服装をしているにも聞こえるが、そこから除く肌の色は白ではなく、妙な褐色をしていた。
どうやら、かなりの火傷を負っていたようだ。
それから、スタンの姿を捜すとすぐに見つかった。
彼に駆け寄ると自分よりもひどい状態にあることが一目で分かった。
そんな姿を見て、彼女の心は痛んだ。
あたしが、あたしが彼らを…。
再びこみ上げてくるものがある。目頭が熱くなるのを抑えて、彼女はスタンに術をかけ始めた。
はじめに目立っていた火傷を大体治し、それからあの二人に打撃をもらっていた部分に術をかけ始めた。
相当な衝撃だったのだろう、殴られていたところの骨は綺麗に折られていた。
何回か、術を重ねて折れていた骨を完全に治した。
まだ、火傷などが治りきってはいないがこれ以上の術の使用は行動に支障をきたすと思い、
彼女は持っていたグミ彼に与えた。
それでも、彼の身体は完全には治らなかった。
腕にはまだ火傷が残っており、全身には多くの擦り傷がある。
それだけ彼の傷が酷かったということだろう。
目の前の事実を思い知らされてハロルドは、またあたしのせいだ…と思った。
相当な衝撃だったのだろう、殴られていたところの骨は綺麗に折られていた。
何回か、術を重ねて折れていた骨を完全に治した。
まだ、火傷などが治りきってはいないがこれ以上の術の使用は行動に支障をきたすと思い、
彼女は持っていたグミ彼に与えた。
それでも、彼の身体は完全には治らなかった。
腕にはまだ火傷が残っており、全身には多くの擦り傷がある。
それだけ彼の傷が酷かったということだろう。
目の前の事実を思い知らされてハロルドは、またあたしのせいだ…と思った。
「もうあなたたちを巻き込みたくない。あたしのせいで誰かが殺されるなんてもうごめんよ」
思っていたことが口からこぼれてしまった。
そして、
そして、
「あたしは、あなたたちとはもう一緒にいられない」
彼女は静かに呟いた。
そしてこの言葉と共に、彼女はもうひとつ、あることを決意したのであった。
そしてこの言葉と共に、彼女はもうひとつ、あることを決意したのであった。
そして、今に至る。
先ほどの彼女のふざけた行動は、全てスタンが自分から離れるように仕向けるためのものだった。
(もちろん、ずっと土の中に埋まっていたわけではないが)
「最低なやつ、か。全くその通りね」
自嘲気味に呟く。
今でもなお頭の中ではずっとあたしが…、あたしが…と終わることなく響き続けていた。
「あたしがあの子を殺した…」
目を閉じると、勝手にあのときの光景が浮かんできた。
闇に包まれたあの子、ズタズタになったその頭部を貫く石柱、マグニスの挙げた歓喜の声…。
そこまで来ると、また最初から繰り返される。
頭が痛い。割れるように…。
しかし、こんな頭痛に苦しんでいるばかりではいけない。
あたしにはやるべきことがあるから…。
「あいつはあの子を笑いながら殺した。
まさか、あたしがこんなことを考えるなんて、想像すらしていなかったわ…」
そういうと彼女は頭を抑えた。口元には自嘲の笑みが浮かんでいた。
「あいつらは、もう絶対に許さない…」
無論、今からあたしがしようとしている事は主催者のあいつの思う壺にはまることである。
だが、このままあいつらを野放しにするわけにはいかない。
「あいつら…、特にマグニス。絶対にあたしが仕留める!
それからのことは全てを終わらせてからでも間に合うから…」
もう二度と、あんな思いをしないためにもあいつらには死んでもらう。
今のハロルドからは、自分でも信じられないほどの憎悪と殺気を放っていた。
「スタン、あんたには悪いけど勝手にこれをもらっていくわよ…」
そう言った彼女の手に握られていたものは、釣り糸だった。
これで再び罠を作り出してあいつらを誘い出し、確実に仕留める。
もちろん、こんな風に単純にことが進むとは分かっている。
だからこそ、幾重にも策と罠をめぐらせて、確率を少しでも上げていく。
先ほどの彼女のふざけた行動は、全てスタンが自分から離れるように仕向けるためのものだった。
(もちろん、ずっと土の中に埋まっていたわけではないが)
「最低なやつ、か。全くその通りね」
自嘲気味に呟く。
今でもなお頭の中ではずっとあたしが…、あたしが…と終わることなく響き続けていた。
「あたしがあの子を殺した…」
目を閉じると、勝手にあのときの光景が浮かんできた。
闇に包まれたあの子、ズタズタになったその頭部を貫く石柱、マグニスの挙げた歓喜の声…。
そこまで来ると、また最初から繰り返される。
頭が痛い。割れるように…。
しかし、こんな頭痛に苦しんでいるばかりではいけない。
あたしにはやるべきことがあるから…。
「あいつはあの子を笑いながら殺した。
まさか、あたしがこんなことを考えるなんて、想像すらしていなかったわ…」
そういうと彼女は頭を抑えた。口元には自嘲の笑みが浮かんでいた。
「あいつらは、もう絶対に許さない…」
無論、今からあたしがしようとしている事は主催者のあいつの思う壺にはまることである。
だが、このままあいつらを野放しにするわけにはいかない。
「あいつら…、特にマグニス。絶対にあたしが仕留める!
それからのことは全てを終わらせてからでも間に合うから…」
もう二度と、あんな思いをしないためにもあいつらには死んでもらう。
今のハロルドからは、自分でも信じられないほどの憎悪と殺気を放っていた。
「スタン、あんたには悪いけど勝手にこれをもらっていくわよ…」
そう言った彼女の手に握られていたものは、釣り糸だった。
これで再び罠を作り出してあいつらを誘い出し、確実に仕留める。
もちろん、こんな風に単純にことが進むとは分かっている。
だからこそ、幾重にも策と罠をめぐらせて、確率を少しでも上げていく。
ソーディアンを作り出した天才は、確実にこのバトルロワイアルに毒されていた…。
【スタン 生存確認】
状態:腕に火傷(中程度) 全身に擦り傷 動くと痛み ハロルドに対して憎しみに似た怒り
所持品:ディフェンサー ガーネット
現在位置:G3のジースリ洞窟内部を移動中
第一行動方針:ミントの無事を確認しに行く
第二行動方針:仲間との合流
状態:腕に火傷(中程度) 全身に擦り傷 動くと痛み ハロルドに対して憎しみに似た怒り
所持品:ディフェンサー ガーネット
現在位置:G3のジースリ洞窟内部を移動中
第一行動方針:ミントの無事を確認しに行く
第二行動方針:仲間との合流
【ハロルド 生存確認】
状態:全身に軽い火傷 擦り傷 痛み 強い復讐心
所持品:短剣 実験サンプル(燃える植物はほとんど無い その他の詳細不明) 釣り糸
現在位置:G3のジースリ洞窟崩壊した位置
第一行動方針:マグニス、バルバトスを確実に殺す
第二行動方針:目標以外とは極力接しない。仮に仲間と出会ってもマーダーの振りをして追い返す
第三行動方針:不明
状態:全身に軽い火傷 擦り傷 痛み 強い復讐心
所持品:短剣 実験サンプル(燃える植物はほとんど無い その他の詳細不明) 釣り糸
現在位置:G3のジースリ洞窟崩壊した位置
第一行動方針:マグニス、バルバトスを確実に殺す
第二行動方針:目標以外とは極力接しない。仮に仲間と出会ってもマーダーの振りをして追い返す
第三行動方針:不明