乱れる三つ巴
ダオスがマーテル達の居た場所へと戻ると、そこには目の下を赤く腫らした見慣れぬ女性が樹の根元にうずくまっていた。
その両腕には赤い装飾に細い刀身の剣を抱えている。
「戻られたのですね」
彼女の脇にはマーテルが宥める様に座り込み、ミトスが立っていた。
「お前、何処に行っていたんだ?」
ミトスが訝しげにダオスに訊くが、ダオスは、「いや」と軽く返事をするだけで先程の事態を話す事は無かった。
しかしダオスの外套はヴェイグの氷刃により少々痛んでおり、それはダオスが何かしらの攻撃を受けてきた事をミトスに窺わせる。
「まあいいけどさ」
ダオスもマーテルに気を遣われたくないのだろう、そう察してそれはミトスも同じだったので話を流した。
「それより放送を聞いたか」
「うん…知っている人いたよ…。
ゼロスって人」
吐き出す様にミトスは言った。
「そうか…」
ゼロスという名前を聞くと、うずくまる女性――マリアンが目を見開いた。
「そんな……」
体はがくがくと震え、顔を両手で覆った。
その女性は下女の様な格好をしており、とても戦いの場にそぐわない様相だった。
マーテルはまだ興奮から冷めぬマリアンの頭を優しく撫で、大丈夫よと声を掛ける。
「この女性は?」
ダオスが女性に視線を落とす。
そこで何者かが喋りだした。
『今…、彼女は混乱しているみたいだから私から状況を話すわ』
「誰!?」
その両腕には赤い装飾に細い刀身の剣を抱えている。
「戻られたのですね」
彼女の脇にはマーテルが宥める様に座り込み、ミトスが立っていた。
「お前、何処に行っていたんだ?」
ミトスが訝しげにダオスに訊くが、ダオスは、「いや」と軽く返事をするだけで先程の事態を話す事は無かった。
しかしダオスの外套はヴェイグの氷刃により少々痛んでおり、それはダオスが何かしらの攻撃を受けてきた事をミトスに窺わせる。
「まあいいけどさ」
ダオスもマーテルに気を遣われたくないのだろう、そう察してそれはミトスも同じだったので話を流した。
「それより放送を聞いたか」
「うん…知っている人いたよ…。
ゼロスって人」
吐き出す様にミトスは言った。
「そうか…」
ゼロスという名前を聞くと、うずくまる女性――マリアンが目を見開いた。
「そんな……」
体はがくがくと震え、顔を両手で覆った。
その女性は下女の様な格好をしており、とても戦いの場にそぐわない様相だった。
マーテルはまだ興奮から冷めぬマリアンの頭を優しく撫で、大丈夫よと声を掛ける。
「この女性は?」
ダオスが女性に視線を落とす。
そこで何者かが喋りだした。
『今…、彼女は混乱しているみたいだから私から状況を話すわ』
「誰!?」
ミトスは驚き、周囲を見渡して体を構える。
『私よ、彼女の持っている剣。大丈夫よ、驚かないで』
その剣、アトワイトは冷静に周りに語り掛けた。
「嘘…剣がお話するなんて…」
「意志を持つ剣か…。よかろう、話して欲しい」
ダオスはアトワイトにそう促した。
『私よ、彼女の持っている剣。大丈夫よ、驚かないで』
その剣、アトワイトは冷静に周りに語り掛けた。
「嘘…剣がお話するなんて…」
「意志を持つ剣か…。よかろう、話して欲しい」
ダオスはアトワイトにそう促した。
それは長い長い話だった。
先程の放送で死亡が確認されたゼロスという男との出会い、その男が襲われた事、襲った主はマリアンと親しい少年だった事、そして白蛇の髪の男―――
彼女が必死でここまで逃げてきた事も。
半刻程掛けてアトワイトは事を詳細に語った。
「…本当に…そんな戦いが……」
マーテルは悲しげに口を噛みしめる。
震えるマリアンを抱きしめ、背中を撫でた。
「よく…本当に良く頑張ったわね」
するとマリアンはマーテルの胸に体を預け、嗚咽を上げながらぼろぼろと泣いた。
そこには現実に打ちひしがれたひたすらにえづく弱々しい女性の姿があった。
「信じるに足る様だな」
「凄く可哀想だよ、この人…。どうかな、僕達と一緒に行こうよ。多分、力になれると思うから」
ミトスはマリアンに話掛ける。
マーテルは優しくマリアンに言う。
「…ゼロスさんというお方が命をかけてあなたを守ってくれたのね。
辛いけれど…頑張って生きましょう、ね」
一通り泣き通し、マリアンはようやく落ち着いたのか三人に頭を下げる。
「……ありがとうございます…」
先程の放送で死亡が確認されたゼロスという男との出会い、その男が襲われた事、襲った主はマリアンと親しい少年だった事、そして白蛇の髪の男―――
彼女が必死でここまで逃げてきた事も。
半刻程掛けてアトワイトは事を詳細に語った。
「…本当に…そんな戦いが……」
マーテルは悲しげに口を噛みしめる。
震えるマリアンを抱きしめ、背中を撫でた。
「よく…本当に良く頑張ったわね」
するとマリアンはマーテルの胸に体を預け、嗚咽を上げながらぼろぼろと泣いた。
そこには現実に打ちひしがれたひたすらにえづく弱々しい女性の姿があった。
「信じるに足る様だな」
「凄く可哀想だよ、この人…。どうかな、僕達と一緒に行こうよ。多分、力になれると思うから」
ミトスはマリアンに話掛ける。
マーテルは優しくマリアンに言う。
「…ゼロスさんというお方が命をかけてあなたを守ってくれたのね。
辛いけれど…頑張って生きましょう、ね」
一通り泣き通し、マリアンはようやく落ち着いたのか三人に頭を下げる。
「……ありがとうございます…」
しかし眼はまだ虚ろで、どこか気の抜けた様な表情だった。
「ミトス…、少しよいか」
マーテルとマリアンが何とか浅く寝付いた頃、ダオスはミトスに静かにミトスに語り掛けた。
「何?」
ミトスも静かに返す。
「少々、気になる事がある。あの女性を襲った者の事だ。お前には話しておきたい」
「…お前もそう思う?」
「やはり気付いているか」
彼女の話によるとマリアンは三人の男と出会った。
ソロンという男はあの白蛇の髪の男の事だろう。以前、ダオスは彼と接触した。それについてはもう安心だ。
しかし二人は死亡が確認されたが――
そのうちゼロスという赤髪を襲ったエミリオという少年は、まだ生きている。それにマリアンに対しては殺意があったかどうかも不明瞭だ。
何よりいくら全速力とはいえ、戦いを知らない女の脚だ。まだ近くに彼がいるかもしれない。
最悪、マリアンを殺す為に。
「…今は極めて危険な状況だ」
「そうだね」
ミトスはそれでもきっ、とダオスを睨んだ。
「マリアンさんを見捨てようだなんて考えないでよ」
「…随分と冷たく見られたものだな」
ミトスが少しむくれてふん、と顔を伏せた。しかしゆっくりとまた顔を上げて、遠くを見た。
「正直、あんたに嫉妬してたよ。僕より強いし、…姉さんといるし。姉さんを守れるのは僕だけって思っていたから」
はあ、と溜め息を吐いてダオスを見る。
「先程…あんた本当は誰かと戦っていたんでしょ?
黙っていてくれてありがとう。きっと姉さん知ったら悲しむから」
ダオスはふん、と視線を逸らした。
「この程度で嫉妬か。子供だな」
「なっ…!」
しかしダオスは少しだけ、口角を上げた。
今までに見ることのなかった彼の僅かな微笑みにミトスは一瞬目を丸くする。
「お前が姉を守ろうとする気持ちは本物だ。
私はお前の腕も確かだと思っている。これからも協力して欲しい」
ミトスはダオスの意外な発言に暫し黙ってしまったが、うん、と素直に頷いた。
そしてその直後、二人の眼は厳しいものになった。
その眼が睨む先は―――――
マーテルとマリアンが何とか浅く寝付いた頃、ダオスはミトスに静かにミトスに語り掛けた。
「何?」
ミトスも静かに返す。
「少々、気になる事がある。あの女性を襲った者の事だ。お前には話しておきたい」
「…お前もそう思う?」
「やはり気付いているか」
彼女の話によるとマリアンは三人の男と出会った。
ソロンという男はあの白蛇の髪の男の事だろう。以前、ダオスは彼と接触した。それについてはもう安心だ。
しかし二人は死亡が確認されたが――
そのうちゼロスという赤髪を襲ったエミリオという少年は、まだ生きている。それにマリアンに対しては殺意があったかどうかも不明瞭だ。
何よりいくら全速力とはいえ、戦いを知らない女の脚だ。まだ近くに彼がいるかもしれない。
最悪、マリアンを殺す為に。
「…今は極めて危険な状況だ」
「そうだね」
ミトスはそれでもきっ、とダオスを睨んだ。
「マリアンさんを見捨てようだなんて考えないでよ」
「…随分と冷たく見られたものだな」
ミトスが少しむくれてふん、と顔を伏せた。しかしゆっくりとまた顔を上げて、遠くを見た。
「正直、あんたに嫉妬してたよ。僕より強いし、…姉さんといるし。姉さんを守れるのは僕だけって思っていたから」
はあ、と溜め息を吐いてダオスを見る。
「先程…あんた本当は誰かと戦っていたんでしょ?
黙っていてくれてありがとう。きっと姉さん知ったら悲しむから」
ダオスはふん、と視線を逸らした。
「この程度で嫉妬か。子供だな」
「なっ…!」
しかしダオスは少しだけ、口角を上げた。
今までに見ることのなかった彼の僅かな微笑みにミトスは一瞬目を丸くする。
「お前が姉を守ろうとする気持ちは本物だ。
私はお前の腕も確かだと思っている。これからも協力して欲しい」
ミトスはダオスの意外な発言に暫し黙ってしまったが、うん、と素直に頷いた。
そしてその直後、二人の眼は厳しいものになった。
その眼が睨む先は―――――
四人の居る場所を、遠くから見ていた者が居た。
凄まじい殺気を押し殺して。
凄まじい殺気を押し殺して。
その者の目には、マーテルとマリアンが映っていた
「なんで…?」
その少女―――シャーリィはわなわなと震えている。
マリアンとマーテルを映していた視界が、やがてマーテルに寄り添うマリアンに絞られる。
「やっぱり…私、見捨てられちゃうんだあ…」
マーテル。それはこの少女を最初に助けてくれた女性。
そのマーテルの横で体を預けて眠るマリアンにふつふつと嫉妬の炎が燃え上がってきた。
「ひどいよひどいよ。やっぱり私にはお兄ちゃんしかいないんだ、お兄ちゃん…」
尤も、シャーリィ自身がマーテルに刃を向けて三人の元から去ったというのに、シャーリィにはそんな事は関係なかった。
ただ、自分に初めて優しくしてくれた女性を自分の知らない女性に取られたようで悔しくて仕方なかった。
見れば見るほど、苛々する。
「私の…私のものを取るなんて…許せない…あの女…!!
お兄ちゃん、そんな人殺しちゃってもいいよね」
「どうせみんな殺しちゃうんだし」
「だけどあの女は今すぐに始末してあげるんだから」
ぶつぶつと独り言を繰り返し、シャーリィは握り締めていたマシンガンのトリガーを引く。
「なんで…?」
その少女―――シャーリィはわなわなと震えている。
マリアンとマーテルを映していた視界が、やがてマーテルに寄り添うマリアンに絞られる。
「やっぱり…私、見捨てられちゃうんだあ…」
マーテル。それはこの少女を最初に助けてくれた女性。
そのマーテルの横で体を預けて眠るマリアンにふつふつと嫉妬の炎が燃え上がってきた。
「ひどいよひどいよ。やっぱり私にはお兄ちゃんしかいないんだ、お兄ちゃん…」
尤も、シャーリィ自身がマーテルに刃を向けて三人の元から去ったというのに、シャーリィにはそんな事は関係なかった。
ただ、自分に初めて優しくしてくれた女性を自分の知らない女性に取られたようで悔しくて仕方なかった。
見れば見るほど、苛々する。
「私の…私のものを取るなんて…許せない…あの女…!!
お兄ちゃん、そんな人殺しちゃってもいいよね」
「どうせみんな殺しちゃうんだし」
「だけどあの女は今すぐに始末してあげるんだから」
ぶつぶつと独り言を繰り返し、シャーリィは握り締めていたマシンガンのトリガーを引く。
ばらら、と黒い音が森に響いた。
「なんだ…?」
その音を聞いて一人の少年が起きる。
近い。
眠っていたと言っても一刻ほどしか経ってはいないが。まだ体中が痛む。
それでもその痛みよりも胸を覆ってゆく得体の知れない不安の方が恐ろしかった。
嫌な予感がする。
その音を聞いて一人の少年が起きる。
近い。
眠っていたと言っても一刻ほどしか経ってはいないが。まだ体中が痛む。
それでもその痛みよりも胸を覆ってゆく得体の知れない不安の方が恐ろしかった。
嫌な予感がする。
「マ…リ…アン?」
直感的にその予感の意味を理解し、少年は起き上がった。
そして走り出す。
その銃声を追って。
直感的にその予感の意味を理解し、少年は起き上がった。
そして走り出す。
その銃声を追って。
【ダオス 生存確認】
所持品:エメラルドリング
現在位置:B7の森林地帯
状態:多少TP消費 精神の緊張
第一行動方針:マーテルを守る
第二行動方針:マーテルと行動
第三行動方針:打開策を考える
第四行動方針:敵は殺す
所持品:エメラルドリング
現在位置:B7の森林地帯
状態:多少TP消費 精神の緊張
第一行動方針:マーテルを守る
第二行動方針:マーテルと行動
第三行動方針:打開策を考える
第四行動方針:敵は殺す
【ミトス 生存確認】
所持品:ロングソード ????
現在位置:B7の森林地帯
状態:擦り傷、足に軽裂傷、緊張
行動方針:マーテルを守る
第一行動方針:マーテルと行動
第二行動方針:打開策を考える
第三行動方針:クラトスとの合流
所持品:ロングソード ????
現在位置:B7の森林地帯
状態:擦り傷、足に軽裂傷、緊張
行動方針:マーテルを守る
第一行動方針:マーテルと行動
第二行動方針:打開策を考える
第三行動方針:クラトスとの合流
【マーテル 生存確認】
所持品:双眼鏡 邪剣ファフフニール アクアマント
現在位置:B7の森林地帯
状態:緊張、僅かな怯え
行動方針:ダオス達と行動
:ユアン、クラトスとの合流
所持品:双眼鏡 邪剣ファフフニール アクアマント
現在位置:B7の森林地帯
状態:緊張、僅かな怯え
行動方針:ダオス達と行動
:ユアン、クラトスとの合流
【マリアン 生存確認】
所持品:ソーディアン・アトワイト スペクタクルズ×13
状態:混乱 疲労 TP微消耗
第一行動方針:気持ちを収める
第二行動方針:アトワイトの提案した作戦を実行する
現在位置:B7の森林地帯
所持品:ソーディアン・アトワイト スペクタクルズ×13
状態:混乱 疲労 TP微消耗
第一行動方針:気持ちを収める
第二行動方針:アトワイトの提案した作戦を実行する
現在位置:B7の森林地帯
【シャーリィ・フェンネス 生存確認】 所持品:UZI SMG(30連マシンガン残り二つ)???
状態:狂気、TP半減、頬に切り傷、左腕刀傷(共に回復中)
第一行動方針:マリアンの殺害
第二行動方針:セネルとの再会(手段は選ばない)
現在地:B7の森林地帯
状態:狂気、TP半減、頬に切り傷、左腕刀傷(共に回復中)
第一行動方針:マリアンの殺害
第二行動方針:セネルとの再会(手段は選ばない)
現在地:B7の森林地帯
【リオン 生存確認】
状態:極度の疲労 睡眠 全身に軽い火傷 上半身に軽い凍傷 腹部に痛み 右腕に刀傷 肩に刺し傷
所持品:シャルティエ 手榴弾×1 簡易レーダー
第一行動方針:物音を追う
第二行動方針:マリアンとの再会(ただし再会を恐れてもいる)
現在地:C7の森からB7の森へ移動
状態:極度の疲労 睡眠 全身に軽い火傷 上半身に軽い凍傷 腹部に痛み 右腕に刀傷 肩に刺し傷
所持品:シャルティエ 手榴弾×1 簡易レーダー
第一行動方針:物音を追う
第二行動方針:マリアンとの再会(ただし再会を恐れてもいる)
現在地:C7の森からB7の森へ移動